説明

材料供給装置及び材料供給方法

【課題】室内の気密を保持しながら成膜材料を補充する材料供給装置を提供する。
【解決手段】材料供給装置100は、有機材料305が収納された材料容器300と、材料容器300を投入する材料投入室110と、蒸着源ヘッド200aに連結された連結管120bの内部通路と連通し、その連通した部分を材料気化部として、投入された材料容器300を材料気化部まで搬送させる搬送路120aを有し、材料気化部にて気化された有機分子を連結管120bの内部通路を介して蒸着源ヘッド200aに向けて送り出す材料輸送室120と、材料輸送室130から材料容器300を取り出す材料取出室130と、を有する。材料投入室110と材料輸送室120と材料取出室130とは、それぞれ所望の減圧状態に維持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜材料を供給する材料供給装置及び材料供給方法に関し、特に、減圧かつ高温状態にて材料を供給する材料供給装置及び材料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイなどを製造する際、成膜材料の気化分子によって基板を成膜する蒸着法が広く用いられている。このような技術を用いて製造した機器のうち、特に、有機ELディスプレイは、自発光し、反応速度が早く、消費電力が少ない等の優れた長所を有している。このため、フラットパネルディスプレイの製造業界では、有機ELディスプレイに関して、今後ますますの需要が期待されるとともに大型化の要請が強まっている。
【0003】
有機ELディスプレイ用の基板に有機膜を成膜する工程は、蒸着源を加熱し、蒸着源に収納された有機材料を気化させ、その有機分子を成膜室まで搬送し、成膜室内の基板に向けて吹き出させ、基板に付着させることにより実行される。この工程中、蒸着源は、成膜材料を気化させるために200℃〜500℃程度の高温になる。このため、大気中で成膜処理すると成膜材料の分子は基板に達する前に成膜室内の残存気体分子に衝突する。このようにして発生する衝突の連鎖により、蒸着源から発生した高熱が成膜室内の、たとえば各種センサ等の部品に伝わり、各部品の特性を悪化させたり、部品自体の破損を招いたりする。これを防ぐために成膜室内を所定の真空度に保持した状態にて成膜処理を実行する必要があった(たとえば、特許文献1を参照。)。つまり、成膜室内を所定の真空度に制御すれば、真空断熱により成膜材料の分子と成膜室内の残存気体分子との衝突は控えられ、蒸着源から発生した熱は成膜室内の他の部品に伝わらない。これによれば、成膜時の温度制御性を高め、良質な膜を成膜することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−282219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、成膜時、蒸着源に納められた成膜材料は、気化されて成膜に消費されていくため、随時、成膜材料を補充する必要がある。このとき、従来の装置構成では、材料補充のたびに蒸着源や成膜室内を大気に解放しなければならないため、材料補充の度に蒸着源や成膜室内の真空度が低下していた。このため、材料補充後、再び蒸着源や成膜室内を所定の真空度まで減圧するために多くの時間を必要としていた。たとえば、大型基板を処理する大型装置の場合、装置内部の容積も大きくなる。このため、装置内部を所定の真空度まで減圧するために丸一日要する場合もあった。よって、材料補充時の大気開放は、成膜前の準備時間を増大させるという点でスループットを低下させ、製品の生産性を低下させる要因となっていた。
【0006】
また、材料補充時、装置内部を大気に開放する度に放射熱及び伝熱により成膜室内部の温度が低下していた。このため、成膜室に搬送中の気化分子が、基板まで到達する前に搬送路の内壁に付着してしまい、材料の使用効率が低下する要因となっていた。
【0007】
また、従来の装置では、材料補充時、装置内の大気解放に連動して排気装置の電源をオン、オフする必要があった。排気装置の電源のオン、オフには多大な投入エネルギーが必要となる。よって、従来の装置では、材料補充に応じて排気装置の再起動に必要なエネルギーが無駄に消費されるという点においても排気効率を悪化させる要因となっていた。
【0008】
上記問題を解消するために、本発明では、装置内の気密を保持しながら成膜材料を補充する材料供給装置及び材料供給方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、上記課題を解決するために、本発明のある態様によれば、成膜材料が収納された材料容器と、前記材料容器を投入する材料投入室と、蒸着源ヘッドに連結された連結管の内部通路と連通し、前記連通した部分を材料気化部として前記投入された材料容器を前記材料気化部まで搬送させる搬送路を有し、前記材料気化部まで搬送させた材料容器内の成膜材料を前記材料気化部にて気化し、前記連結管の内部通路から前記蒸着源ヘッドに向けて送り出す材料輸送室と、前記材料輸送室から材料容器を取り出す材料取出室と、を備える材料供給装置が提供される。前記材料投入室と前記材料輸送室と前記材料取出室とは、それぞれ所望の減圧状態に制御されている。
【0010】
ここで、気化とは、液体が気体に変わる現象だけでなく、固体が液体の状態を経ずに直接気体に変わる現象(すなわち、昇華)も含んでいる。
【0011】
かかる構成によれば、材料投入室と材料輸送室と材料取出室とは、それぞれに定められた所望の減圧状態に維持されている。材料容器は、材料投入室から材料輸送室に投入され、材料輸送室内の搬送路を用いて材料気化部まで搬送される。材料容器内の成膜材料は、材料気化部にて気化される。気化分子は、材料気化部から連結管の内部通路を介して蒸着源ヘッドまで輸送され、蒸着源ヘッドから被処理体に向けて吹き出される。これにより被処理体に成膜処理が施される。
【0012】
これによれば、材料輸送室に対して材料投入室及び材料取出室を所望の減圧状態に維持されたロードロック室として機能させることができる。これにより、材料輸送室を大気に開放することなく、材料輸送室に材料を補充することができる。この結果、材料供給装置の排気時間及び排気エネルギー等の排気効率を効果的に向上させることができる。また、材料補充時、装置内部の温度低下を防止することができる。このため、搬送中の気化分子が、各部品に付着することを防止して、気化分子を確実に被処理体に付着させることができ、材料の使用効率を高めることができる。特に、有機材料を用いた成膜の場合、有機材料は高価であるため、排気効率及び材料の使用効率の向上により、量産により適した装置を構成することができる。
【0013】
前記搬送路は、前記材料輸送室を貫通し、両端に連結された第1及び第2の開閉機構を介して前記材料投入室及び前記材料取出室と開閉可能に連結されていてもよい。
【0014】
前記材料容器には、キャリアガス供給口が設けられ、前記材料輸送室は前記キャリアガス供給口から供給されたキャリアガスを用いて前記材料容器にて気化された成膜材料を前記蒸着源ヘッドに向けて送り出してもよい。
【0015】
前記蒸着源ヘッドは、気化された成膜材料の吹き出し口が処理中の被処理体の上面に対向するように前記連結管に連結されていてもよい。
【0016】
前記材料輸送室は、前記連結管の内部通路と連通する複数の搬送路を有し、前記複数の搬送路にそれぞれ投入された材料容器の成膜材料を前記連結管の内部通路中にて混ぜ合わされながら前記蒸着源ヘッドに向けて送り出してもよい。
【0017】
前記材料輸送室は、前記材料気化部に対して一対一に前記連結管に取り付けられた第3の開閉機構を有し、前記第3の開閉機構は、前記材料気化部にて気化されかつ前記連結管の内部通路を通過する成膜材料の流量を調整してもよい。
【0018】
前記第3の開閉機構は、前記材料気化部にて気化されかつ前記連結管の内部通路を通過する成膜材料の流量を調整してもよい。
【0019】
前記第3の開閉機構は、前記搬送路の長手方向に平行に前記搬送路と並んで前記連結管に装着されていてもよい。
【0020】
前記材料容器は、伸縮可能な棒状部材により押されることにより前記搬送路内を搬送されていてもよい。
【0021】
前記材料容器は、伸縮可能な棒状部材により引かれることにより前記搬送路内を搬送されていてもよい。
【0022】
前記材料気化部は、前記第3の開閉機構に対向する位置であって、前記搬送路の長手方向に平行に前記搬送路と並んで前記連結管に装着されていてもよい。
【0023】
前記材料取出室は、二重構造であってもよい。
【0024】
前記材料容器又は前記材料気化部の少なくともいずれかに前記成膜材料を加熱する加熱部材が装着されていてもよい。
【0025】
前記材料容器は、前記材料容器に収納された成膜材料を押圧する蓋部を有していてもよい。
【0026】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の態様によれば、所望の減圧状態に制御された材料投入室内の材料容器を所望の減圧状態に制御された材料輸送室に投入するステップと、蒸着源ヘッドに連結された連結管の内部通路と連通し、前記連通した部分を材料気化部として前記投入された材料容器を前記材料輸送室内の搬送路を用いて前記材料気化部まで搬送させるステップと、前記材料気化部にて材料容器内の成膜材料を気化し、気化された成膜材料を前記連結管から前記蒸着源ヘッドに向けて送り出すステップと、前記材料容器を所望の減圧状態に制御された材料取出室に取り出すステップと、を含む材料供給方法が提供される。
【0027】
これによれば、材料輸送室に対して材料投入室及び材料取出室をロードロック室として機能させることができる。これにより、材料輸送室を大気に開放することなく、材料輸送室に材料を補充することができる。この結果、排気効率を向上させることができるとともに、室内の温度低下を抑止して膜の制御性を高めることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、装置内の気密を保持しながら成膜材料を補充することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の構成及び機能を有する構成要素については、同一符号を付することにより、重複説明を省略する。
【0030】
なお、説明は以下の順序で行う。
<第1の実施形態>
1.6層連続成膜装置の全体構成
2.材料容器の内部構成
3.材料輸送室の内部構成
4.材料容器の搬送方法
<第1の実施形態の変形例1>
材料供給装置の内部構成の第1の変形例
<第1の実施形態の変形例2>
材料供給装置の内部構成の第2の変形例
<第2の実施形態>
材料供給装置の他の構成
【0031】
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態に係る6層連続成膜装置の全体構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、6層連続成膜装置の斜視図を示している。図2は、図1の1−1断面を示している。
【0032】
[6層連続成膜装置の全体構成]
6層連続成膜装置10は、材料供給装置100及び成膜室200を有している。材料供給装置100は、材料投入室110、材料輸送室120及び材料取出室130の三区画に分かれている。
【0033】
(材料投入室)
まず、材料投入室110の概略構成について説明する。材料投入室110には、成膜材料が収納された材料容器300を載置するステージ110aが三段設けられている。ステージ110aの材料輸送室側の側面以外の面は、材料投入室110の壁面に接していない。
【0034】
材料投入室110と材料輸送室120との間の側壁には、横方向に6つずつ並べられたゲートバルブ110bが三段設けられている。この6×3個のゲートバルブ110bは、6×3個の材料容器300を材料輸送室120に投入する投入口となっている。各ゲートバルブ110bに対向する材料投入室110の側壁にも、図2に示した6×3個のゲートバルブ110cが設けられている。この6×3個のゲートバルブ110cは、6×3個の材料容器300を大気側から受け入れる入口となっている。かかる構成により、6×3個の材料容器300は、各ゲートバルブ110cを開閉して材料投入室110に投入され、各ステージ110aのゲートバルブ110bの前面に配置された後、各ゲートバルブ110bをそれぞれ開閉して材料輸送室120に搬入される。
【0035】
図2の2−2断面を示した図3を参照すると、材料投入室110には排気管110dが2カ所に設けられている。図示しない排気装置は、排気管110dから材料投入室110の内部を所望の真空度まで排気する。材料容器300の出し入れの際、ゲートバルブ110b及びゲートバルブ110cの開閉動作により、材料輸送室120の気密は保持される。かかる構成によれば、材料輸送室120に対して材料投入室110を所望の減圧状態に維持されたロードロック室として機能させることができる。
【0036】
次に、材料輸送室120の概略構成について説明する。材料輸送室120には、互いに平行に並べられた6本の搬送路120aが三段に設けられている。各ゲートバルブ110bに対向する材料輸送室120と材料取出室130との間の側壁には、図2に示したゲートバルブ130aが設けられている。6×3個のゲートバルブ130aは、6×3個の材料容器300の取出口となっている。つまり、各搬送路120aは、材料輸送室120を貫通していて、その一端にて各ゲートバルブ110bに連結され、他端にて各ゲートバルブ130aに連結されている。各材料容器300は、各ゲートバルブ110bを経由して材料投入室側から搬送路120aに投入され、搬送路120aを移動後、各ゲートバルブ130aを経由して材料取出室側へ取り出される。材料輸送室120の内部構成については後程詳述する。
【0037】
最後に、材料取出室130の概略構成について説明する。材料取出室130には、取り出された材料容器300を載置する、図2に示したステージ130bが三段設けられている。各ゲートバルブ130aに対向する材料取出室130の側壁には、ゲートバルブ130cが設けられている。6×3個のゲートバルブ130cは、6×3個の材料容器300を大気側に取り出す出口となっている。かかる構成により、6×3個の材料容器300は、各ゲートバルブ130aを開閉して材料取出室130に取り出され、各ステージ130bに載置されてある程度温度が下がった時点で各ゲートバルブ130cをそれぞれ開閉して外部に搬出される。
【0038】
材料取出室130は、二重構造になっている(以下、魔法瓶方式とも称呼する。)。具体的には、材料取出室130は、外壁130e1及び内壁130e2を有し、外壁130e1と内壁130e2との間は真空状態となっている。
【0039】
図3を参照すると、材料取出室130には排気管130dが2カ所に設けられている。図示しない排気装置は、ガスラインから排気管130dを経て窒素ガスをパージし、材料取出室130の内壁130e2の内部を大気解放後、ゲートバルブ130cを開閉して材料容器300を外部に搬出する。材料容器300を材料輸送室120から取り出す際、ゲートバルブ130a及びゲートバルブ130cの開閉により材料輸送室120の気密は保持される。かかる構成によれば、材料輸送室120に対して材料取出室130を所望の減圧状態に維持されたロードロック室として機能させることができる。ゲートバルブ110bは、すべてが一体的に開閉してもよく、それぞれが別々に開閉してもよい。ゲートバルブ110cも、同様にして、すべてが一体的に開閉してもよく、それぞれが別々に開閉してもよい。ゲートバルブ130a及びゲートバルブ130cも、同様にして、一体的に開閉してもよく、別々に開閉してもよい。なお、搬送路120aの両端に設けられたゲートバルブ110b及びゲートバルブ130aは、第1の開閉機構及び第2の開閉機構に相当する。
【0040】
かかる構成によれば、材料供給装置100を3つの室に分けたことにより、各室内の減圧状態を室毎に調整することができる。材料容器の投入口、搬送路、取出口は一直線上にあり、各室を仕切るゲートゲートバルブ110b、130aにより各室の気密を維持しながら、直線上の経路を使用して材料の補充が可能となる。
【0041】
[材料容器の内部構成]
次に、材料容器300の内部構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、図1に示した材料容器300の3−3断面である。材料容器300は矩形状であって、SUS等の金属から形成されている。石英等は有機材料と反応しにくいため、材料容器300は、石英等でコーティングされた金属から形成されていてもよい。
【0042】
材料容器300の内部には有機材料305が収納されている。図4(a)に示したように、材料容器の側壁は二重300aになっていて、材料が材料容器300から漏れることを抑止するようになっている。紙面の手前側の側面は、有機材料305の収納位置の上部が開口している。紙面の奥側の側壁には、アルゴンガスを紙面の奥側から手前側へ向かって導入するための多数の細孔300bが略中央に形成されている。細孔300bは、キャリアガス供給口の一例であり、キャリアガス供給口は、たとえば、スリットやポーラスであってもよい。材料容器300の底壁には、シースヒータ等の加熱部材300cが埋設されている。このように、加熱部材300cは、材料容器側のみに取り付けられていてもよく、搬送路120a側のみに取り付けられていてもよく、両方に設けられていてもよい。特に、材料容器側に加熱部材300cが取り付けられていると、材料容器自身を直接に加熱するため、接触熱抵抗が生じず、温度制御が容易になる。なお、図4(b)に示したように、収納された有機材料305は、プレス用の蓋部300dにより材料表面全体を上部から圧縮した状態で搬送されてもよい。
【0043】
かかる構成によれば、材料容器300は、加熱部材300cにより200℃〜500℃程度まで加熱され、これにより、有機材料305が気化される。ただし、有機材料は、分解や重合しやすい種類も多いため、過度に加熱しすぎない方がよく、また、材料容器は大きすぎない方がよい。気化された有機分子は、多数の細孔300bを介して外部から導入されたアルゴンガスをキャリアガスとして成膜室側に向けて搬送される。有機分子及びキャリアガスの搬送経路については後述する。
【0044】
[材料輸送室の内部構成]
次に、材料輸送室120の内部構成について説明する。図1に示したように、鉛直方向に平行して並んだ3本の搬送路120aの一側面には、連結管120bが連結されている。連結管120bは、図2に示したように、材料供給装置100の底部を貫通し、さらに材料供給装置100の下方に設けられた成膜室200の天井部を貫通して、その下端部にて蒸着源ヘッド200aに連結されている。連結管120bの貫通部分には、材料供給装置側及び成膜室側にそれぞれOリング400,405が設けられていて、材料供給装置内及び成膜室内の気密を確保するようになっている。このようにして、材料輸送室120の内部では、3本×6組の連結管120bが等間隔に平行して配設されている。また、成膜室200の内部においても、6つの蒸着源ヘッド200aが連結管120bに連結された状態にて等間隔に配設されている。図1に示したように、蒸着源ヘッド200aは、下方に向かって開口するスリット状の吹き出し口200a1を有している。
【0045】
成膜室200には排気管200bが設けられている。図示しない排気装置は、排気管200bから成膜室200の内部を所望の真空度まで排気する。成膜室200の内部と連通する材料輸送室120も成膜室200と同様、所望の真空度に維持される。
【0046】
図1に示した搬送路120aの略中央には、アルゴンガスを共有するガス供給管120cが配設されている。ガス供給管120cは、図示しないガス供給源から搬送路内にアルゴンガスを供給する。アルゴンガスは、有機分子を蒸着源ヘッド200aまで搬送させるキャリアガスとして機能する。なお、キャリアガスは、アルゴンガスに限られず、たとえば、クリプトンやキセノン等の不活性ガスでもよい。
【0047】
材料投入室110から投入された材料容器300は、搬送路120aを容器毎進行し、搬送路120aと連結管120bの内部通路とガス供給管120cとが連通する部分に載置される。鉛直方向に上部、中間、下部に設けられた搬送路120aの内部の材料容器300の載置場所を、以下、材料気化部PA,PB,PCと称呼する。
【0048】
材料輸送室120及び成膜室200を所定の真空度に保持して成膜処理を実行すると、真空断熱により、有機分子が搬送中に装置内の残存気体分子と衝突する確率は顕著に低くなり、材料気化部PA,PB,PCから発生した熱が材料輸送室120及び成膜室200の内部の他の部品に伝わらない。これにより、成膜時の室内の温度制御性を高めることができる。この結果、基板Gに良質な膜を形成することができる。
【0049】
以上に説明した、6組の蒸着源ヘッド200a及び各蒸着源ヘッド200a上部の搬送機構は同一であるため、以下では、1組の蒸着源ヘッド200a及び搬送機構500について図5を参照しながら更に詳しく説明する。図5(a)は、1組の蒸着源ヘッド200a及び搬送機構500の斜視図、図5(b)は、図5(a)の4−4断面である。搬送機構500は、搬送路120a、連結管120b、ガス供給管120c及び流量調整バルブ120dを有している。
【0050】
連結管120bには、鉛直方向に並べられた3本の搬送路120aと連結する側面と反対の側面に3つの流量調整バルブ120dが一対一に取り付けられている。流量調整バルブ120dは、耐熱性のステンレス等から形成されている。
【0051】
図5(b)に示したように、搬送路120aは、連結管120bの内部通路と連通する。連結管120bの内部通路は、蒸着源ヘッド200aに設けられた図2のバッファ空間Sを介してスリット状の吹き出し口200a1に連通する。材料気化部PA,PB,PCに対向して取り付けられた流量調整バルブ120dは、材料気化部PA,PB,PCに連通する連結管120bの内部通路をそれぞれ開閉する。たとえば、材料気化部PCに材料容器300が投入されなかった場合、最下に位置する流量調整バルブ120dを閉め、中間及び最上に位置する流量調整バルブ120dを開く。これにより、材料気化部PA,PBにて気化された有機分子を蒸着源ヘッド200aへ向けて通過させるとともに材料気化部PCにこれらの気化分子が入り込むことを防止することができる。これにより、最下の流量調整バルブ120dを経て搬送路120a等の内壁に気化分子が付着することを回避することができる。なお、流量調整バルブ120dは、材料気化部PA,PB,PCに対して一対一に連結管120bに取り付けられた第3の開閉機構に相当する。
【0052】
気化された有機分子は、連結管120bの内部を通って、蒸着源ヘッド200aまで搬送され、蒸着源ヘッド200a内に形成された複数の通路を経て、バッファ空間Sにて一時滞留した後、スリット状の吹き出し口200a1から下方に向けて吹き出される。基板Gは、6つの蒸着源ヘッド200aの下方をある速度で進行する。これにより、図6に示したように、基板GのITO上に順に、第1層のホール注入層、第2層のホール輸送層、第3層の青発光層、第4層の緑発光層、第5層の赤発光層、第6層の電子輸送層が形成される。このうち、第3層〜第5層の青発光層、緑発光層、赤発光層は、ホールと電子の再結合により発光を生じさせる発光層である。なお、第1層〜第6層の有機層上のメタル層は、スパッタリングにより成膜されてもよく、蒸着により成膜されてもよい。
【0053】
これにより、有機層を陽極(アノード)および陰極(カソード)にてサンドイッチした構造の有機EL素子がガラス基板上に形成される。有機EL素子の陽極および陰極に電圧を印加すると、陽極からはホール(正孔)が有機層に注入され、陰極からは電子が有機層に注入される。注入されたホールおよび電子は有機層にて再結合し、このとき発光が生じる。大型基板であっても、図6の有機層及びメタル層、さらにこれらの層を封止する封止層(図示せず)の連続成膜処理が可能となり、量産体制に合致した構成となる。
【0054】
かかる構成によれば、基板Gをフェイスアップ方式(基板Gの上面に成膜)にて処理することができる。これによれば、被処理体が大型基板であっても、基板Gをフェイスアップにて処理することができるため、フェイスダウン方式のように基板がたわんで搬送や成膜処理が困難になることなく、大型基板に向いた搬送及び成膜を実現できる。また、図6の有機層及びメタル層、さらにこれらの層を封止する封止層(図示せず)の連続成膜処理が可能となり、量産体制に合致した構成となる。
【0055】
[材料容器の搬送方法]
次に、材料容器の搬送方法について図7及び図8を参照しながら説明する。図7は、材料容器300を材料投入室110から材料輸送室120に搬入する動作の一例を示し、図8は、材料容器300を材料輸送室120から材料取出室130に搬出する動作の一例を示す。
【0056】
(材料の搬入)
材料を搬入する前に、まず、材料投入室110を窒素ガスにてパージすることにより、材料投入室110の内部を大気に開放する次に、ゲートバルブ110cを開き、材料を補充したいゲートバルブ110bの前に補充したい種類の有機材料の入った材料容器300を配置する。6×3個のゲートバルブ110bのすべての前に6×3個の材料容器300を配置してもよく、6×3個のゲートバルブ110bの1つ以上の前に材料容器300を配置してもよい。これにより、補充したい箇所に同時に材料を補充することができる。
材料容器300を配置した後、図2に示したように、ゲートバルブ110cを閉じ、排気を開始し、材料投入室110を所望の減圧状態にする。
【0057】
図7に示したように、材料投入室110には伸縮性の棒状部材410が各ゲートバルブ110bに対一対一に取り付けられている。材料容器を材料輸送室120に搬入する際には、ゲートバルブ110bを開き、棒状部材410を用いて材料容器300を押し出し、搬送路120aの内部を移動する材料容器300を材料気化部PA.PB,PCの位置まで押動させる。材料容器300を材料輸送室120に搬入後、ゲートバルブ110bを閉じ、材料投入室110及び材料輸送室120の真空度をそれぞれ維持する。伸縮性の棒状部材410は、たとえば、ベローズから構成されていてもよい。伸縮性の棒状部材410は、材料容器300を材料気化部PA,PB,PCまで押動させた後、図8に示したように、収縮した状態にて次の材料容器300の搬入に備える。
【0058】
(材料の輸送及び気化)
材料気化部PA,PB,PCまで移動した材料容器300は加熱される。これにより、材料容器300に収納された有機材料は、気化し、その気化分子は、ガス供給管120cから導入されたアルゴンガスにより連結管120bの内部通路側に押し出される。押し出された有機分子は、流量調整バルブ120dにより流量調整され、蒸着源ヘッド200aまで運ばれ、スリット状の吹き出し口200a1から吹き出されて、基板Gの上面に付着して成膜に使われる。3本の搬送路120aにそれぞれ投入された有機材料の気化分子は、搬送中に混ぜ合わされながら蒸着源ヘッド200aに向けて搬送される。搬送路120aは、材料容器毎に完全に分離されているので、ある組の蒸着源ヘッド200a及びその上部の搬送機構500にて気化された有機分子と、他の組の蒸着源ヘッド200a及びその上部の搬送機構500にて気化された有機分子と、が搬送中に混ざり合うことはない。
【0059】
(材料の搬出)
材料容器300の内部の有機材料が消費され、材料の補充が必要になったら高温のまま材料容器300を搬出する。図7及び図8に示したように、材料取出室130には伸縮性の棒状部材420が各ゲートバルブ130aに対して一対一に取り付けられている。棒状部材420は、たとえば、ベローズから構成されていてもよい。棒状部材420の先端には、材料容器300を電気的に吸着する吸着部材420aが設けられている。たとえば、吸着部材420aは吸盤であってもよく、静電チャック機構であってもよい。また、棒状部材420の先端には、吸着部材420aに替えて材料容器300を機械的に把持するアームや材料容器300を機械的に固定するクランプ(フック)を有していてもよい。
【0060】
搬出時には、ゲートバルブ130aを開き、棒状部材420を伸ばして材料容器300を吸着部材420aに吸着させた状態で引っ張り、材料取出室130に引き入れる。材料容器300を材料取出室130に引き入れ後、ゲートバルブ130aを閉じる。材料取出室130へ取り出された材料容器300は高温状態である。一方、前述したように、外壁130e1と内壁130e2との間は真空状態に保たれている。したがって、外壁130e1と内壁130e2との間の真空断熱(魔法瓶方式)により、材料容器300の熱を外部に逃がさず、これにより、処理時の安全性を確保することができる。材料容器300の温度がある程度低下した後、外壁130e1と内壁130e2との間の真空状態は維持しつつ、図3の排気管130dから内壁130e2の内部へパージガスを導入することにより、内壁130e2の内部をパージする。
【0061】
また、材料容器300を高温状態のまま材料輸送室120から材料取出室130へ取り出すため、たとえ材料容器300から気化した有機材料が漏れだしても、それが搬送路120aと材料容器300との間で冷やされて固化することを防止できる。これにより、材料容器300が搬送路120aに固着して材料輸送室120から取り出せなくなることを回避できる。
【0062】
また、材料容器300を材料取出室130に引き入れ後、所定期間、ゲートバルブ130aを開いたままにして、材料取出室130を排気することにより、搬送路内に残留した気化分子およびキャリアガスを排気することができる。
【0063】
前述したように、材料容器300は、材料取出室130のステージ130b上に一時的に載置され冷やされる。冷却方法は、自然冷却でもよいし、不活性ガスを投入してもよいし、材料取出室130に図示しない冷却機構を設けて材料取出室130の壁面などに冷媒を循環させることにより冷却させてもよい。冷却後、図示しないガスラインから窒素ガスをパージし、材料取出室130を大気解放後、ゲートバルブ130cを開閉して材料容器300を外部に搬出する。材料取出室130は、材料輸送室120とは別系統で完全に独立した室になっているため、成膜中であっても、材料容器300を外部に取り出すことができる。棒状部材420は、材料容器300を引き込み後、図7に示したように、再び収縮した状態にて次の材料容器300の取り出しに備える。なお、材料容器300は、棒状部材420を用いずに棒状部材410のみによって搬送路内を搬送されてもよいし、棒状部材410を用いずに棒状部材420のみによって搬送路内を搬送されてもよい。
【0064】
以上に説明したように、本実施形態に係る材料供給装置100によれば、材料投入室110と材料輸送室120と材料取出室130とをそれぞれ所望の減圧状態に制御することができる。各室の真空圧は同じであってもよく、異なっていてもよい。材料容器300は、材料輸送室120に設けられた搬送路120aを介して材料気化部PA、PB,PCまで搬送される。材料容器内の成膜材料は、材料気化部PA、PB,PCにて加熱され、気化する。気化された有機分子は、材料気化部PA、PB,PCから連結管120bの内部通路を介して蒸着源ヘッド200aまで輸送され、蒸着源ヘッド200aの真下を移動中の基板Gに付着する。これにより、基板Gに有機膜が成膜される。
【0065】
これによれば、材料輸送室120に対して材料投入室110及び材料取出室130を所望の減圧状態に制御されたロードロック室として機能させることができる。これにより、成膜材料を真空下にて材料容器ごと材料気化部に投入するという斬新な材料供給方法により、材料輸送室120を大気に開放することなく、材料補充時に蒸着源ヘッド200a及びその上部の搬送機構500の温度が低下することを防ぐことができる。
【0066】
これにより、排気時間を短縮してスループットを向上させ、生産性を高めることができる。また、排気エネルギーのロスを減らすことができる。また、成膜材料の気化速度を精度よく制御することができる。また、材料容器300を高温のまま取り出すので、材料容器の取り出し時に材料が固化して材料容器自身や搬送路等にこびりつくことを解消して、メンテナンス性を向上させることができるとともに、材料の使用効率を高めることができる。特に、有機材料を用いた成膜の場合、有機材料は高価であるため、量産時、大きなコストダウンを図ることができる。
【0067】
また、成膜処理時にフェイスアップ方式を採用することにより、フェイスダウン方式のように大型基板がたわんで搬送や成膜処理が困難になることなく、大型基板に向いた搬送及び成膜を実現できる。また、大型基板であっても、図6の有機層及びメタル層、さらにこれらの層を封止する封止層(図示せず)の連続成膜処理が可能となり、量産体制に合致した構成となる。
【0068】
さらに、一連のプロセスを真空下にて行うため、材料容器300や蒸着源ヘッド200aや搬送路120a等を高温加熱した際の放射熱を真空断熱により遮断して、6層連続成膜装置10の外部に熱を伝えないようにすることができる。これにより、成膜処理時の安全性を高めることができる。
【0069】
また、本実施形態に係る6層連続成膜装置10によれば、蒸着源ヘッド200aの吹き出し位置を下向きに配置することにより、よりフレキシブルな設計が可能になるため、材料気化部PA,PB,PCから蒸着源ヘッド200aの吹き出し口200a1までの経路の長さを短くすることができる。これにより、搬送中の有機分子及びキャリアガスのコンダクタンスを向上させることができる。
【0070】
<第1の実施形態の第1の変形例>
次に、第1の実施形態の第1の変形例について、図9を参照しながら説明する。図9(a)は、第1の変形例に係る1組の蒸着源ヘッド200a及びその上部の搬送機構500を示す。図9(b)は、第1の変形例に係る材料供給装置100の横断面の一部を示す。
【0071】
第1の実施形態に係る流量調整バルブ120dは、図5(a)に示したように、連結管120bに対向する位置にて各搬送路120aに垂直に取り付けられていた。これに対して、第1の変形例に係る流量調整バルブ120dは、図9(a)に示したように、搬送路120aの長手方向に平行に搬送路120aと並んで連結管120bに装着されている。
【0072】
第1の実施形態に係る材料供給装置100では、図3に示したように、搬送路120a、連結管120b及び流量調整バルブ120dが、搬送路120aの長手方向に対して垂直な方向に並んで配置されていた。これに対して、第1の変形例に係る材料供給装置100によれば、図9(b)に示したように、流量調整バルブ120dが、蒸着源ヘッド200aの上部のスペースに位置づけられる。
【0073】
これにより、第1の変形例では、第1の実施形態にて流量調整バルブ120dが突出していたスペース分だけ隣接する蒸着源ヘッド200a間の距離を短くすることができる。これにより、材料供給装置100を小型化することができる。この結果、省スペース化を図り、かつ排気効率を高めることができる。一方、スペースに余裕がある場合には、第1の実施形態に係る材料供給装置100と同サイズの材料供給装置100に、より多くの蒸着源ヘッド200aを配設することができる。また、連結管120b及び流量調整バルブ120dの位置によっては、材料気化部PA,PB,PCから蒸着源ヘッド200aまでの搬送経路を第1の実施形態の場合の材料気化部PA,PB,PCから蒸着源ヘッド200aまでの搬送経路よりも短縮することができる。
【0074】
<第1の実施形態の第2の変形例>
次に、第1の実施形態の第2の変形例について、図10を参照しながら説明する。図10(a)は、第2の変形例に係る1組の蒸着源ヘッド200a及びその上部の搬送機構500を示す。図10(b)は、第2の変形例に係る材料供給装置100の横断面の一部を示す。
【0075】
第1の変形例に係る流量調整バルブ120dは、図9(a)に示したように、搬送路120aの長手方向に平行に搬送路120aと並んで連結管120bに装着されていた。一方、図10(a)に示したように、第2の変形例に係る流量調整バルブ120dも、第1の変形例に係る流量調整バルブ120dと同様、搬送路120aの長手方向に平行に搬送路120aと並んで連結管120bに装着されている。これに加えて、第2の変形例では、材料気化部PA,PB,PCが、搬送路120aと別体で形成され、連結管120bに対して流量調整バルブ120dと対向する位置であって、搬送路120aの長手方向に平行に搬送路120aと並んで連結管120bに装着されている。
【0076】
これによれば、図10(b)に示したように、流量調整バルブ120d及び材料気化部PA,PB,PCが、蒸着源ヘッド200aの上部のスペースに位置づけられる。これにより、第2の変形例では、流量調整バルブ120dが突出していたスペース分だけ隣接する蒸着源ヘッド200a間の距離を短くすることができる。これにより、第2の変形例においても、第1の変形例と同様に第1の実施形態に比べて材料供給装置100を小型化することができる。
【0077】
この結果、省スペース化を図り、かつ排気効率を高めることができる。また、第2の変形例では、材料気化部PA,PB,PCが搬送路120aと別体に設けられているので、ヒータ等の加熱部材300cの取り付けやメンテナンスが容易になる。一方、スペースに余裕がある場合には、第2の変形例においても、第1の実施形態に係る材料供給装置100と同サイズの材料供給装置100に、より多くの蒸着源ヘッド200a及びその上部の搬送機構500を配設することができる。
【0078】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る6層連続成膜装置10について、図11を参照しながら説明する。第2の実施形態に係る6層連続成膜装置10では、第1の実施形態に係る材料投入室110及び材料取出室130が1つにまとめられ、材料入替室140として構成されている。材料気化部PAを有する成膜室200,冷却室150、アームArmは、処理容器Ch内に置かれていて、図示しない排気装置により排気され、真空状態になっている。材料入替室140は、処理容器Chとは別系統の空間を形成し、図示しない排気装置により排気され真空状態になっている。材料入替室140の内部構成は、第1の実施形態の材料投入室110の内部構成と同様である。材料入替室140は、材料容器300の投入及び取り出しの両方の機能を有する。
【0079】
材料入替室140に投入された材料容器300は、アームArmにより把持されて成膜室200の内部の材料気化部PAに搬送される。一連の成膜処理を繰り返し実行した結果、成膜材料がほぼすべて消費された際には、料容器300を高温状態のまま材冷却室150まで運び、所定の低温状態になるまで自然冷却又は図示しない冷却機構により強制冷却する。
【0080】
その間に、新たな材料容器300を材料気化部PAに投入する。冷却室150にて冷却された材料容器300は、冷却後、再びアームArmを用いて材料入替室140まで搬送され、材料入替室140を大気開放して材料容器300を外部に取り出す。第2の実施形態に係る6層連続成膜装置10によれば、効率の良い材料の補充及び入れ替えが可能になる。また、真空断熱により成膜処理時に外部に熱を漏らさず、安全性の高い装置を構築することができる。
【0081】
以上に説明したように、各実施形態及びその変形例に係る材料供給装置100によれば、材料輸送室120に対して材料投入室110及び材料取出室130を別区間にし、それぞれ所望の減圧状態に制御されたロードロック室として機能させる。これにより材料補充時にあっても、材料供給装置内を真空状態に保つことができる。この結果、安定した温度管理が可能となり、メンテナンス性及び材料の使用効率を向上させることができる。また、材料補充時、材料供給装置内を大気に解放しないため、排気効率を向上させることができる。この結果、量産時に大きなコストダウンを図ることができる。
【0082】
また、基板のフェイスアップ方式を採用したことにより大型基板の搬送及び連続成膜に有利な構成とすることができる。また、材料容器の二重構造及び材料容器を高温のまま搬送することにより、材料の漏れ防止と温度の均一性確保を図ることができ、材料のこびり付きを防止するとともに有機材料の気化速度を精度よく制御することができる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
たとえば、本発明に係る成膜装置では、蒸着源ヘッド及び各蒸着源ヘッド上部の搬送機構の個数は、6組に限られない。例えば、蒸着源及び搬送機構の組数は、1組であってもよく、2以上の複数組であってもよい。
【0085】
また、本発明に係る成膜装置の成膜材料には、パウダー状(固体)の有機材料を用いることができる。成膜材料に主に液体の有機金属を用い、気化させた成膜材料を加熱された被処理体上で分解させることにより、被処理体上に薄膜を成長させるMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長法)に用いることもできる。また、本発明に係る成膜装置の成膜材料は、有機材料に限られず、たとえば、銀等の電極用の成膜材料や封止膜用の成膜材料であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施形態及びその変形例に係る成膜装置の概略斜視図である。
【図2】同実施形態及びその変形例に係る成膜装置の縦断面図(図1の1−1断面)である。
【図3】同実施形態に係る材料供給装置の横断面図(図2の2−2断面)である。
【図4】各実施形態及びその変形例に係る材料容器の断面図(図1の3−3断面)である。
【図5】図5(a)は、第1の実施形態に係る蒸着源ヘッド及びその周辺の斜視図であり、図5(b)は、同蒸着源ヘッド及びその周辺の縦断面図(図5(a)の4−4断面)である。
【図6】各実施形態及びその変形例に係る成膜装置により成膜された膜構造の模式図である。
【図7】第1の実施形態及びその変形例に係る材料供給装置の搬入及び搬出動作を説明するための図である。
【図8】第1の実施形態及びその変形例に係る材料供給装置の搬入及び搬出動作を説明するための図である。
【図9】図9(a)は、第1の実施形態の第1の変形例に係る蒸着源ヘッド及びその周辺の斜視図であり、図9(b)は、同変形例に係る材料供給装置の横断面の一部を示した図である。
【図10】図10(a)は、第1の実施形態の第2の変形例に係る蒸着源ヘッド及びその周辺の斜視図であり、図10(b)は、同変形例に係る材料供給装置の横断面の一部を示した図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る成膜装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0087】
10 6層連続成膜装置
100 材料供給装置
110 材料投入室
110b,110c ゲートバルブ
110a ステージ
120 材料輸送室
120a 搬送路
120b 連結管
120c ガス供給管
120d 流量調整バルブ
130 材料取出室
130a,130c ゲートバルブ
130b ステージ
140 材料入替室
150 冷却室
200 成膜室
200a 蒸着源ヘッド
200a1 吹き出し口
300 材料容器
300b 細孔
300c 加熱部材
300d 蓋部
305 有機材料
410,420 棒状部材
420a 吸着部材
PA,PB,PC 材料気化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜材料が収納された材料容器と、
前記材料容器を投入する材料投入室と、
蒸着源ヘッドに連結された連結管の内部通路と連通し、前記連通した部分を材料気化部として前記投入された材料容器を前記材料気化部まで搬送させる搬送路を有し、前記材料気化部まで搬送させた材料容器内の成膜材料を前記材料気化部にて気化し、前記連結管の内部通路から前記蒸着源ヘッドに向けて送り出す材料輸送室と、
前材料輸送室から材料容器を取り出す材料取出室と、を備え、
前記材料投入室と前記材料輸送室と前記材料取出室とは、それぞれ所望の減圧状態に制御されている材料供給装置。
【請求項2】
前記搬送路は、前記材料輸送室を貫通し、両端に連結された第1及び第2の開閉機構を介して前記材料投入室及び前記材料取出室と開閉可能に連結されている請求項1に記載された材料供給装置。
【請求項3】
前記材料容器には、キャリアガス供給口が設けられ、
前記材料輸送室は前記キャリアガス供給口から供給されたキャリアガスを用いて前記材料容器にて気化された成膜材料を前記蒸着源ヘッドに向けて送り出す請求項1又は請求項2のいずれかに記載された材料供給装置。
【請求項4】
前記蒸着源ヘッドは、気化された成膜材料の吹き出し口が処理中の被処理体の上面に対向するように前記連結管に連結されている請求項1〜3のいずれかに記載された材料供給装置。
【請求項5】
前記材料輸送室は、前記連結管の内部通路と連通する複数の搬送路を有し、前記複数の搬送路にそれぞれ投入された材料容器の成膜材料を前記連結管の内部通路中にて混ぜ合わされながら前記蒸着源ヘッドに向けて送り出す請求項1〜4のいずれかに記載された材料供給装置。
【請求項6】
前記材料輸送室は、前記材料気化部に対して一対一に前記連結管に取り付けられた第3の開閉機構を有し、
前記第3の開閉機構は、前記材料気化部にて気化されたかつ前記連結管の内部通路を通過する成膜材料の流量を調整する請求項1〜5のいずれかに記載された材料供給装置。
【請求項7】
前記第3の開閉機構は、前記連結管を挟んで前記搬送路に対向して前記連結管に装着されている請求項6に記載された材料供給装置。
【請求項8】
前記第3の開閉機構は、前記搬送路の長手方向に平行に前記搬送路と並んで前記連結管に装着されている請求項6に記載された材料供給装置。
【請求項9】
前記材料容器は、伸縮可能な棒状部材により押されることにより前記搬送路内を搬送される請求項1〜8のいずれかに記載された材料供給装置。
【請求項10】
前記材料容器は、伸縮可能な棒状部材により引かれることにより前記搬送路内を搬送される請求項1〜9のいずれかに記載された材料供給装置。
【請求項11】
前記材料気化部は、前記第3の開閉機構に対向する位置であって、前記搬送路の長手方向に平行に前記搬送路と並んで前記連結管に装着されている請求項8〜10のいずれかに記載された材料供給装置。
【請求項12】
前記材料取出室は、二重構造である請求項1〜11のいずれかに記載された材料供給装置。
【請求項13】
前記材料容器又は前記材料気化部の少なくともいずれかに前記成膜材料を加熱する加熱部材が装着されている請求項1〜12のいずれかに記載された材料供給装置。
【請求項14】
前記材料容器は、前記材料容器に収納された成膜材料を押圧する蓋部を有する請求項1〜13のいずれかに記載された材料供給装置。
【請求項15】
所望の減圧状態に制御された材料投入室内の材料容器を所望の減圧状態に制御された材料輸送室に投入するステップと、
蒸着源ヘッドに連結された連結管の内部通路と連通し、前記連通した部分を材料気化部として前記投入された材料容器を前記材料輸送室内の搬送路を用いて前記材料気化部まで搬送させるステップと、
前記材料気化部にて材料容器内の成膜材料を気化し、気化された成膜材料を前記連結管から前記蒸着源ヘッドに向けて送り出すステップと、
前記材料容器を所望の減圧状態に制御された材料取出室に取り出すステップと、を含む材料供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−144212(P2010−144212A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322282(P2008−322282)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】