説明

材料加工のためのレーザ装置並びにこの種のレーザ装置を伴うレーザ加工機械

【課題】ビーム空間内の温度状態に依存した、レーザビームのパラメータの制御を最適化すること
【解決手段】温度検出装置が、複数の測定装置を前記ビーム空間に沿って有することで、温度検出装置は、ビーム空間内のガス内の温度状態をビーム空間横断面にわたって検出し、複数の測定装置は、ビーム空間内のガスの温度を、レーザビームのビーム伝播方向に沿って、レーザビームからの種々異なる半径方向間隔で測定するレーザ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料加工、殊に金属の薄板を加工するためのレーザ装置に関し、
・レーザビームを生成するためのレーザビーム源と、
・当該レーザビーム源によって生成されたレーザビームが内部を伝播し、ガスを含んでいるビーム空間と、
・ビーム空間内でのガスの温度状態(Temperaturverhaeltnisse)を検出し、制御装置と接続されている温度検出装置と、
・温度調整装置とを有しており、
前記制御装置は、温度検出装置によって検出された温度状態に依存して、温度調整装置を制御し、それに従って当該温度調整装置はビーム空間内のガスの温度状態を調整する。
【0002】
本発明はさらに、材料加工、殊に薄板加工のためのレーザ加工機械に関する。これは上述した様式のレーザ装置を含んでいる。
【背景技術】
【0003】
上位概念に記載された従来技術は、JP11−277286A号に開示されている。この文献は、レーザ加工装置を開示している。ここでは、レーザ加工ビームが、レーザ発振器とレーザビームのレーザ加工ヘッドの間で、閉鎖されているビーム空間内に案内される。レーザビームの伝播方向において、ビーム空間に沿って、ビーム空間の壁部に、複数の温度測定器が、レーザビーム軸から統一の間隔を伴って配置されている。
【0004】
別の従来技術は、US2005/0150882A1号並びにUS2006/0027537A1号およびUS2005/0061778A1号から公知である。
【0005】
US2005/0150882A1号の装置では、レーザビーム源によって生成されたレーザビームが、ガスが満たされているビーム空間内にミラーによって導かれ、光学系によって、加工されるべき対象物に焦点合わせされる。ビーム空間のためにバイパスが設けられ、このバイパス内にベンチレータとフィルタが配置されている。択一的な実施形態として、この文献は、フィルタの代わりに「熱交換器」を有している装置を記載している。この従来技術のケースでは、レーザビームの制御がビーム空間の領域内で、ガス交換レートによって影響される。ガス交換レートによって、ビーム空間内で循環しているガスの体積流があらわされる。このガスはベンチレータによって動かされ、フィルタによって清浄化される。この文献は式を示しており、この式に従ってガス交換レートが計算され、レーザビームの散乱が最小化される。ガス交換レートを一度定義した後に、ビームパラメータが自動的に後から調整されることはない。
【0006】
US2006/0027537A1号およびUS2005/0061778A1号は、レーザ装置およびこのレーザ装置が設けられているレーザ加工装置に関する。これは、ビームガイド空間を有しており、このビームガイド空間はガス、例えば窒素ガスによって満たされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】JP11−277286A号
【特許文献2】US2005/0150882A1号
【特許文献3】US2006/0027537A1号
【特許文献4】US2005/0061778A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上位概念に記載された従来技術から出発して、本発明の課題は、ビーム空間内の温度状態に依存した、レーザビームのパラメータの制御を最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では上述の課題は、材料加工、殊に薄板加工のためのレーザ装置であって、
・レーザビームを生成するためのレーザビーム源と、
・当該レーザビーム源によって生成されたレーザビームが内部で伝播し、ガスを含んでいるビーム空間と、
・当該ビーム空間内のガスの温度状態を検出し、制御装置と接続されている温度検出装置と、
・温度調整装置とを有しており、
前記制御装置は、前記温度検出装置によって検出された温度状態に依存して、前記温度調整装置を制御し、従って、当該温度調整装置が前記ビーム空間内のガスの温度状態を調整する形式のものにおいて、
前記温度検出装置が、複数の測定装置を前記ビーム空間に沿って有することで、前記温度検出装置は、前記ビーム空間内のガス内の温度状態をビーム空間横断面にわたって検出し、前記複数の測定装置は、前記ビーム空間内のガスの温度を、前記レーザビームのビーム伝播方向に沿って、前記レーザビームからの種々異なる半径方向間隔で測定する、ことを特徴とするレーザ装置によって解決される。
【0010】
さらに本発明の課題は、請求項1から8までのいずれか1項に記載されたレーザ装置(4)を含んでいる、材料加工、殊に薄板加工のためのレーザ加工装置によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】2つのレーザ装置を有する、薄板加工のためのレーザ加工装置の等尺図
【図2】図1に示されたレーザ装置の側面図
【図3】図2に示されたレーザ装置の等尺図
【発明を実施するための形態】
【0012】
温度検出装置を制御装置および温度調整装置と組み合わせることによって、温度状態に依存してビームパラメータを制御することが可能になる。測定装置は、制御装置による温度調整装置の制御のために必要な測定値の検出を可能にする。ガスの温度をビーム空間内で、ガス空間横断面の異なっている、相互に重なっている領域において検出することが可能である。温度状態の検出は、ビーム空間内部での有利な温度状態の実現の基礎を提供する。例えば変化する周辺パラメータに自動的に応答し、この場合にはビームパラメータへの所期の影響が得られる。
【0013】
ビーム空間における温度状態の調整の目的は例えば、レーザビームの散乱を、ビーム空間内のガス内の温度状態を均一にすることによって低減することである。このような作用を、ガスの温度状態を不均一にすることによって所期のように逆にすることもできる。
【0014】
この散乱によって、レーザビーム直径が拡大する。用途固有に、高エネルギーのレーザビームが必要である場合には、これはレーザビームのビームガイド部の領域内の散乱を低減することによって実現される。これに対して別の用途では、拡大されたレーザビームが望まれる。このような場合には、ビーム空間内のガスの不均一な温度状態によって、より強い散乱、ひいてはレーザビームの拡大が得られる。
【0015】
レーザ装置をモジュール様式で構成する場合には、同一のレーザ加工機械で複数のレーザ装置を使用することが可能になる。
【0016】
独立請求項に記載されている発明の特別な構成様式は従属請求項2〜8に記載されている。
【0017】
請求項2に従って、ビーム空間内の温度状態を均一にすることによって、ビーム空間横断面における温度勾配が阻止され、これによってビーム空間内のガスの異なる計算指標が形成される。この結果、レーザビームの散乱が最小化され、レーザビームはできるだけ僅かな損失で加工場所に導かれる。
【0018】
請求項3では、温度調整装置は、渦形成装置および/または、ビーム空間内のガスの流速を調整するための装置を有している。ビーム空間内のガスが渦巻くことによって、異なって温度調整されたガス層が混合され、これによって温度が統一される。流速を変化させることによって、ビーム空間の縁部領域におけるガス温度の、周辺温度への適応調整が影響される。特に、渦形成装置はビーム空間横断面にわたった温度勾配の形成を回避し、これによってビーム発散装置に対して横向きの、温度によって生じるガス流を回避する。
【0019】
請求項4では、温度調整装置は、本発明の発展形態においてベンチレータを有している。ベンチレータの使用は特に有利である。なぜならこれは、ビーム空間内でのガスの渦巻き形成も、流速の調整も励起させからである。
【0020】
請求項5では、本発明によるレーザ装置の温度調整装置は、冷却装置および/または加熱装置を有している。このような装置によって、ビーム空間内のガスの有利な温度を所期のようにかつ迅速に調整することができる。
【0021】
請求項6では、本発明の発展形態において、ビーム空間はビームガイド部として構成される。このようなビーム空間では、レーザビームは例えば、ミラーによって導かれる。レーザビームは、温度状態が最適に調整される、周囲に対して分断された領域内にある。
【0022】
請求項7では、本発明のレーザ装置は、バイパスを有している。これによって、温度調整装置を、レーザビームの影響領域外に構造的に容易に収容することが可能になる。
【0023】
請求項8では、ガスとして、ビーム空間内に空気または窒素ガスが設けられる。特に、空気の渦は、レーザ装置の低コストの作動を可能にする。さらならコスト低減のために、空気を、清浄化後に再び使用することができる。
【0024】
本発明のさらなる特徴および利点を、本発明の有利な実施例の後続の説明に、本発明の本質を成す細部を示す図面に基づいて記載する。本発明の実施例を概略的に図示する。
【実施例】
【0025】
図1では、レーザ加工装置1は薄板2の加工のためにレーザビーム源3を有している。このレーザビーム源は、2つのレーザビーム16を生成する。レーザビーム16は図1では、そのビーム軸とともに示されている。レーザビーム源3は、2つのレーザ装置4の共通のレーザビーム源3として設けられている。しかし、各レーザ装置4に対してそれぞれ1つのレーザビーム源3が設けられていてもよい。各レーザ装置4は、ビーム空間6を備えたビームガイド部5を有する。このビーム空間内では、該当するレーザビーム16が伝播する。ビーム空間6はビーム管部分7、上方の剛性壁部あるビーム管8および下方のベロー(Faltenbalg)9によって制限されている。
【0026】
レーザビーム16はビーム空間6の内部で、ガス雰囲気内に導かれ、薄板2に配向される。有利にはビーム空間6は清浄化された空気または窒素ガスによって満たされている。ビーム空間6内のガスの圧力は、ビーム空間6外の圧力を僅かに上回る。
【0027】
図1では、2つのビームガイド部5のビーム管8とベロー9との間に、ブリッジ10が配置されている。ブリッジ10には2つのレーザ切断ヘッド11が設けられている。これらのレーザ切断ヘッド11では、作動時に各レーザビーム16が流出し、薄板2に当たる。薄板2は被加工品机12上に置かれている。レーザ切断ヘッド11は、ブリッジ10に沿って双方向矢印13の方向で動いても、ブリッジ10と共に矢印方向14で動いてもいい。矢印方向14で動く場合には、ブリッジ10は長手方向ガイド部15に沿って動く。
【0028】
図2および図3では、各レーザ装置4に、レーザビーム源3から生成されたレーザビーム16が、上方ビーム管8内の接続部17を介して達する。図2におけるその左側終端部では、レーザビーム16がミラーによって、ベロー9内で偏向される。ここではレーザビーム16は、結合部18へと進む、ここでベロー9がブリッジ10(図1)と接続されている。ビーム空間6を満たしているガスは接続部19を介してビーム空間6内に導入される。
【0029】
ビーム空間6のベロー9は、折り畳まれている材料20から成る。これはガス漏れしないように構成されており、使用されているガスのできるだけ僅かなリーケージ損失を保証する。ベロー9は、結合部18の運動、引いては矢印方向14におけるブリッジ10の運動を可能にする。
【0030】
図2に示されたレーザ装置4の右側終端部にはバイパス21が設けられている。ここでこのバイパスは上方ビーム管8をベロー9と接続する。全体的に、閉鎖されたシステムが実現される。ビーム空間6のガスは、上方ビーム管8、ベロー9およびバイパス21を通って循環する。
【0031】
レーザ装置4が1つだけ使用されている場合、ないしは、それぞれ1つの固有のレーザビーム源3を有している2つの別個のレーザ装置4がバイパス21と接続されている場合にも、閉鎖されたシステムが存在する。
【0032】
温度調整装置22はベンチレータ23と、冷却装置および/または加熱装置24を含んでいる。ここでこのベンチレータは、ビーム空間6内のガスを循環させ、冷却装置および/または加熱装置は、ビーム空間6内のガスを暖めるまたは冷却する。ベンチレータ23も冷却装置および/または加熱装置24も、バイパス21の下方終端部で、ハウジング25内に収容されている。ベンチレータ23および冷却装置および/または加熱装置24は、市販されている装置であり、図ではハウジング25の壁によって隠されている。
【0033】
各レーザ装置4は、温度センサ27の形の測定装置を具備する温度検出装置26を有している。温度センサ27は、ビーム空間6内のガスの温度状態を求めるために使用され、上方ビーム管8に沿って、複数の測定箇所に配置されている。これらの複数の温度センサ27は、レーザビーム16のビーム伝播方向に沿って、レーザビーム16からの異なる半径方向間隔で、ビーム空間6内のガスの温度を測定する。これによって、ビーム空間6内のガスの温度を種々異なる、相互に重なったガス空間横断面領域内で検出することができる。測定値は、制御装置28に伝達される。この制御装置は測定値を評価ユニット内で評価し、評価の結果に基づいて、温度調整装置22に対する制御信号を生成する。制御装置28はCNC制御部29の一部であり、これがコンピュータによってサポートされている制御プログラムの使用を可能にする。
【0034】
この制御信号によって、制御装置28はベンチレータ23の回転数を制御する。これによってガスの渦巻きおよび、ビーム空間6におけるその流速が影響される。ガスの渦巻きによって、ビーム空間6内のガスの温度が均一になる。レーザビーム16の散乱はこれによって最小化される。
【0035】
ビーム空間6内でのガスの流速ないしは流速の変化は、ビーム空間6内のガスの温度を周辺温度に合わせる調整の程度に影響を与える。流速が大きくなればなるほど、温度調整は迅速に行われる。
【0036】
さらに、制御装置28は冷却装置および/または加熱装置24を制御する。これは例えば、レーザ加工装置の開始過程時に接続され、ビーム空間6内のガスをできるだけ迅速に、最適な動作温度まで加熱する。レーザ作動時にガス温度が最適条件を越えると、ガスが冷却される。この手法は、レーザビーム16の制御損失を回避するために使用される。冷却装置および/または加熱装置24の制御は、ベンチレータ23の制御と同じように、ビーム空間6内の温度状態の検出によって、および冷却装置および/加熱装置24を駆動制御する制御装置28への測定値の伝達によって、ビーム空間6内で最適なガス温度に達するまで行われる。
【0037】
ビームパラメータの所期の影響は、各加工ケースに合うように調整される。有利である限りは、ビーム空間6内のガスの温度状態を、温度調整装置22を制御することによって、ビーム空間6内で不均一な温度状態になるように調整することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 レーザ加工装置、 2 金属薄板、 3 レーザビーム源、 4 レーザ装置、 5 ビームガイド部、 6 ビーム空間、 7 ビーム管部分、 8 ビーム管、 9 ベロー、 10 ブリッジ、 11 レーザ切断ヘッド、 12 被加工品机、 15 長手方向ガイド部、 16 レーザビーム、 17 接続部、 18 結合部、 19 接続部、 20 材料、 21 バイパス、 22 温度調整装置、 23 ベンチレータ、 24 冷却装置および/または加熱装置、 25 ハウジング、 26 温度検出装置、 27 測定装置、 28 制御装置、 29 CNC制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料加工、殊に薄板加工のためのレーザ装置であって、
・レーザビーム(16)を生成するためのレーザビーム源(3)と、
・当該レーザビーム源(3)によって生成されたレーザビーム(16)が内部で伝播し、ガスを含んでいるビーム空間(6)と、
・当該ビーム空間(6)内のガスの温度状態を検出し、制御装置(28)と接続されている温度検出装置(26)と、
・温度調整装置(22)とを有しており、
前記制御装置(28)は、前記温度検出装置(26)によって検出された温度状態に依存して、前記温度調整装置(22)を制御し、従って、当該温度調整装置が前記ビーム空間(6)内のガスの温度状態を調整する形式のものにおいて、
前記温度検出装置(26)が、複数の測定装置(27)を前記ビーム空間(6)に沿って有することで、前記温度検出装置(26)は、前記ビーム空間(6)内のガス内の温度状態をビーム空間横断面にわたって検出し、前記複数の測定装置は、前記ビーム空間(6)内のガスの温度を、前記レーザビーム(16)のビーム伝播方向に沿って、前記レーザビーム(16)からの種々異なる半径方向間隔で測定する、
ことを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
前記温度調整装置(22)は、前記制御装置(28)による前記制御に基づいて、前記ビーム空間(6)内のガスの温度状態を、前記ビーム空間(6)内のガスの温度状態が均一になるように調整する、請求項1記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記温度調整装置(22)は渦形成装置を有しており、当該渦形成装置によって、前記ビーム空間内のガスが渦状にされるおよび/または前記温度調整装置(22)は、前記ビーム空間(6)内のガスの流速を調整する装置を有している、請求項1または2記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記温度調整装置(22)はベンチレータ(23)を有しており、当該ベンチレータによって前記ビーム空間(6)内のガスが渦状にさるおよび/または前記ビーム空間(6)内のガスの流速が調整される、請求項1から3までのいずれか1項記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記温度調整装置(22)は冷却装置および/または加熱装置(24)を有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記ビーム空間(6)はビームガイド部を構成し、前記レーザビーム源(3)を離れた後、前記レーザビーム(16)は当該ビームガイド部内を伝播する、請求項1から5までのいずれか1項記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記ビーム空間(6)に対してバイパス(21)が設けられており、当該バイパス内に前記温度調整装置(22)が配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記ビーム空間(6)内のガスとして空気または窒素ガスが設けられている、請求項1から7までのいずれか1項記載のレーザ装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載のレーザ装置(4)を含んでいる、材料加工、殊に薄板加工のためのレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−260103(P2010−260103A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103022(P2010−103022)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(307043577)トルンプフ ザクセン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)
【氏名又は名称原語表記】Trumpf Sachsen GmbH
【住所又は居所原語表記】Strasse der Freundschaft 13, D−01904 Neukirch, Germany
【Fターム(参考)】