説明

条件致死遺伝子を利用する組成物及び方法

【課題】組換え体レトロウイルスベクターを用いてT細胞をインビトロで破壊する方法を提供する。
【解決手段】温血動物由来のT細胞を組換え体レトロウイルスベクターを用いてインビトロで破壊する方法であって、該組換え体レトロウイルスベクターがベクター構築物を保有するものであり、ここで該ベクター構築物は、T細胞の存在下でほとんどまたは全く細胞毒性を持たない化合物を毒性産物へと活性化する遺伝子産物の発現を指示するものであるか、あるいは、該ベクター構築物は、T細胞に対して細胞毒性である細胞毒性遺伝子をイベント特異性プロモーターおよび/または組織特異性プロモーターの転写制御下に含み、該イベント特異性プロモーターが活性化する該細胞毒性遺伝子が発現されるようになっている、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的にウイルスベクター、特にベクター構築物を感染し易い標的細胞に供給することができる組換え体ウイルスベクターに関する。これらのベクター構築物は典型的には、殆ど又は全く活性を持たない化合物を活性物質に活性化することができる遺伝子物質を供給するよう意図される。
【背景技術】
【0002】
多くの細菌性疾患は概して抗生物質で容易に治療されるけれども、遺伝性疾患を含めた多数のウイルス性、癌性及び他の疾患に対しては有効な治療法は極わずかしかない。例えば癌は今日では米国の総死亡率の5分の1を占め、死因の第二位である。要するに癌は一般的には細胞の一集団の非制御分裂を特徴とする。この非制御分裂は一般的に腫瘍の形成を引き起こし、これはその後他の部位に転移し得る。
【0003】
癌は、概して治療が非常に難しいある種の疾患を表す。例えば原発性固体腫瘍は外科的切除により処置し得るが、しかし固体腫瘍を有する相当数の患者が原発性腫瘍部位の範囲外に微小転移を有する。外科的処置だけの場合、これらの患者の多数が癌を再発する。したがって外科的処置の他にさらに、今日、多数の癌が細胞毒性化学療法薬(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、シスプラチン、メトトレキセート、5-FU等)、及び/又は放射線療法で処置される。しかしながらこのアプローチに伴う困難の1つは、放射線療法及び化学療法薬が正常組織に対して毒性を有し、しばしば生命を脅かす副作用を生じることである。さらにこれらのアプローチはしばしば、非常に高い不全/緩解率を示す(癌の種類により90%まで)。
【0004】
したがって、癌細胞を除去するために個々人の免疫系を補強又は増強する努力において、種々の他の療法が試みられてきた。いくつかのこのような療法は、免疫系を刺激して腫瘍細胞を破壊するために、アジュバントとして細菌又はウイルス成分を利用した。このような成分の例としては、BCG、内毒素、混合細菌ワクチン、インターフェロン(α,β及びχ)、インターフェロン誘導体(例えばBrucella abortus及び種々のウイルス)、及び胸腺因子(例えばチモシン分画5及びチモシンアルファ−1)が挙げられる(一般に、非特許文献1参照)。このような作用物質は一般に、動物腫瘍モデルにおけるアジュバントとして及び非特異的刺激剤として有用であるが、しかしヒトにおいて一般的に有効であることは未だ立証されていない。
【0005】
リンフォカインも癌の治療に利用されている。手短にいえば、リンフォカインは種々の細胞により分泌され、一般に免疫反応の発生において特定の細胞に作用を及ぼす。リンフォカインの例としては、インターロイキン(IL)−1、−2、−3及び−4、並びにコロニー刺激因子、例えば G-CSF、GM-CSF及びM-CSFが挙げられる。近年、あるグループが、腫瘍細胞に対して細胞毒性を有する大量の細胞を伸展及び産生するために、IL-2を用いて末梢血細胞を刺激した(非特許文献2)。
【0006】
他のものは、抗体媒介性抗癌療法の使用を示唆している。手短にいえば、独特の又は正常細胞に比して癌細胞上でより優勢なある種の細胞表面抗原を認識する抗体を開発し得る。これらの抗体、あるいは“魔法の小球”は、腫瘍細胞を特異的に標的にし殺すために、単独で又は毒素と抱合させて用い得る(非特許文献3参照)。例えばBall等(非特許文献4)は、数名の急性骨髄性白血病患者を1つ又はそれ以上の白血病に特異的ないくつかのモノクローナル抗体で処置し、その結果処置中に循環白血病細胞の顕著な減少を生じた。同様に、他のものは、例えば黒色腫、結腸直腸癌、前立腺癌、乳癌及び肺癌を含めた種々の腫瘍を治療的に処置するために毒素抱合抗体を用いた(Dillman(非特許文献3)参照)。しかしながら1つの難しい点は、殆どのモノクローナル抗体がネズミ起源であり、したがってネズミ抗体に対する過敏性が、特に反復治療後にその効力を限定するおそれがあることである。一般的副作用としては、発熱、発汗及び悪寒、皮膚発疹、関節炎及び神経麻痺が挙げられる。
【0007】
したがって、癌は、一般原則として、慣用的又は実験的製剤組成物を用いて治療するのが非常に難しかった。
【0008】
同様に、ウイルス性疾患は、慣用的製剤組成物で治療するのが非常に難しかった。概してこのような製剤は特異性を欠き、高い全般的毒性を示し、そして一般に治療的に有効でないことが判明している。
【0009】
ウイルス性疾患を治療するために開発された他の技術は、非感染形態(例えば死ウイルス)のウイルスの投与により病原因子(即ちウイルス)に対する免疫反応を引出し、それにより免疫刺激剤として作用する抗原を提供することを包含する。このようなアプローチはある種のウイルス(例えばポリオ)に有用であることが立証されているが、しかし他のウイルス(例えばHIV)には有効ではない。
【0010】
後天性免疫不全症候群(AIDS)のようなウイルス性疾患に対するより最新のアプローチは、ウイルスエンベロープタンパク質との複合体を受容するか又は形成することから HIVによる感染を受け易い細胞上の受容体を遮断することを包含する。例えばLifson等(非特許文献5)は、CD4(T4)受容体に対する抗体がin vitroで感染及び非感染CD4表示細胞間の細胞融合(シンシチウム)を阻害することを立証した。モノクローナル抗体を用いた同様のCD4遮断作用は、McDougal等(非特許文献6)により示唆されている。あるいはPert等(非特許文献7)は、合成ペプチドを用いてT4受容体を結合し、ヒトT細胞の HIV感染を遮断することを報告し、そしてLifson等( )は、ウイルスエンベロープ糖タンパク質と相互作用するレクチンを用いてシンシチウム及びウイルス/T4の両細胞融合を遮断し、それによりそれがCD4受容体に受容されないようにすることを報告した。
【0011】
例えばウイルス(RNAを転写する)のような病原因子を阻害するための別の技法は、転写 RNAの少なくとも1つのタンパク質を補足するアンチセンス RNAを提供し、それにより翻訳を阻害することである(非特許文献8)。
【0012】
しかしながら上記の技法の大きな欠点は、それらが、薬剤、抗原、遮断剤又はアンチセンス RNAが用いられる時間、位置又は程度をそれ自体容易に制御させないことである。特に上記の技法は治療薬の外生的適用(即ちin vitro情況での試料に対して外生的な)を要するため、病原因子の存在に対してそれらは直接反応しない。例えば病原因子による感染直後に漸増量で発現される免疫刺激剤を有するのが望ましい。さらにアンチセンス RNAの場合、動物における有用な治療のためには多量を要し、これは最新技術下では、それが実際に必要とされる、即ち病原因子に感染された細胞における位置とは関係なく投与される。
【0013】
外生的適用の代替物として、治療剤を内生的に産生するための技法が示唆された。さらに DNAウイルス、例えばアデノウイルス、サルウイルス40、ウシ乳頭腫及びワクシニアウイルスを基礎にしたウイルスベクターから発現されるタンパク質が研究された。例として、Panicale等(非特許文献9)はワクシニアゲノム中にインフルエンザウイルスヘマグルチニン及びB型肝炎表面抗原を導入し、このような組換え体遺伝子から産生されたウイルス粒子で動物を感染させた。感染後、動物は、ワクシニアウイルスとB型肝炎抗原の両方に対する免疫を獲得した。
【非特許文献1】“Principles of Cancer Biotherapy,”Oldham(ed.),Raven Press,New York,1987
【非特許文献2】Rosenberg et al.,N.Engl.J.Med.313:1485-1492,1985
【非特許文献3】Dillman,“Antibody Therapy,”Principles of Cancer Biotherapy. Oldham (ed.),Raven Press,Ltd.,New York,1987
【非特許文献4】Ball et al., Blood 62:1203-1210,1983
【非特許文献5】Lifson et al., Science 232:1123-1127,1986
【非特許文献6】McDougal et al., Science 231:382-385,1986
【非特許文献7】Pert et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:9254-9258,1986
【非特許文献8】To et al.,Mol.Cell.Biol.6:758,1986
【非特許文献9】Panicale et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:5364,1983
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら今日までに DNAウイルスを基礎にしたウイルスベクターに関しては多数の困難が伴った。これらの困難の例を以下に挙げる:(a)病原又は所望のタンパク質の抑制を引き起こす他のウイルスタンパク質の産生;(b)宿主中で非制御的に複製するベクターの能力及びこのような非制御複製の病原的作用;(c)ウイルス血症を引き起こす野性型ウイルスの存在;並びに(d)これらの系における発現の一時的性質。これらの困難は、遺伝性疾患を含めたウイルス性、癌性及び他の非細菌性疾患の治療における DNAウイルスを基礎にしたウイルスベクターの使用を事実上妨げた。
【0015】
感染標的細胞中でのそれらの非一時的性質のために、レトロウイルスが遺伝性疾患の治療のための有用なビヒクルとして示唆されている(例えば、F.Ledley,The Journal of Pediatrics 110:1,1987参照)。しかしながら多数の問題を顧慮して、遺伝性疾患の治療におけるレトロウイルスの使用は未だ広範には受け入れられていない。このような問題は、以下のことがらに関する:(a)容易に入手できない組織(例えば脳)において多数の細胞を感染させる明らかな必要性;(b)これらのベクターを非常に制御された恒久的様式で発現させる必要性;(c)クローン化遺伝子の欠如;(d)代謝異常のための組織及び器官に対する不可逆的損傷;並びに(e)ある場合に他の部分的に有効な療法の利用の可能性。
【0016】
本発明は、種々の疾患(例えばウイルス性疾患、癌、遺伝性疾患等)を治療するための新規の組成物及び方法を提供し、そしてさらにその他の関連した利益を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
1.そうでなければ不活性な前駆体を病原因子の活性化阻害剤に活性化し得る遺伝子物質の発現を指示するベクター構築物を保有する組換え体レトロウイルスベクター。
【0018】
2.そうでなければ不活性な前駆体を病原因子の活性化阻害剤に活性化し得る遺伝子物質の発現を指示するベクター構築物を保有する組換え体アデノウイルスベクター。
【0019】
3.上記病原因子がウイルス感染細胞である項目1又は2記載の組換え体ベクター。
【0020】
4.上記遺伝子物質が単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼである項目1又は2記載の組換え体ベクター。
【0021】
5.上記遺伝子物質が水疱帯状疱疹ウイルスチミジンキナーゼである項目1又は2記載の組換え体ベクター。
【0022】
6.上記不活性前駆体が AZTである項目1又は2記載の組換え体ベクター。
【0023】
7.殆ど又は全く細胞毒性を持たない化合物を毒性物質に活性化する遺伝子物質の発現を指示するベクター構築物を保有する組換え体レトロウイルスベクター。
【0024】
8.病原因子の存在下で殆ど又は全く細胞毒性を持たない化合物を毒性物質に活性化する遺伝子物質の発現を指示し、それにより病原因子に局所療法を作用させるベクター構築物を保有する組換え体レトロウイルスベクター。
【0025】
9.殆ど又は全く細胞毒性を持たない化合物を毒性物質に活性化する遺伝子物質の発現を指示するベクター構築物を保有する組換え体アデノウイルスベクター。
【0026】
10.病原因子の存在下で殆ど又は全く細胞毒性を持たない化合物を毒性物質に活性化する遺伝子物質の発現を指示し、それにより病原因子に局所療法を作用させるベクター構築物を保有する組換え体アデノウイルスベクター。
【0027】
11.上記遺伝子物質が単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼである項目7,8,9又は10記載の組換え体ベクター。
【0028】
12.上記遺伝子物質が水疱帯状疱疹ウイルスチミジンキナーゼである項目7,8,9又は10記載の組換え体ベクター。
【0029】
13.上記遺伝子物質がアルカリ性ホスファターゼ、真菌類シトシンデアミナーゼ、カルボキシペプチダーゼG2及びペニシリン−Vアミダーゼから成る群から選択される項目7,8,9又は10記載の組換え体ベクター。
【0030】
14.上記病原因子がウイルス感染細胞である項目8又は10記載の組換え体ベクター。
【0031】
15.上記病原因子が細菌に感染された細胞である項目8又は10記載の組換え体ベクター。
【0032】
16.上記病原因子が腫瘍細胞である項目8又は10記載の組換え体ベクター。
【0033】
17.上記病原因子が寄生生物に感染された細胞である項目8又は10記載の組換え体ベクター。
【0034】
18.病原因子に由来するタンパク質によるプロセッシング又は修飾時に毒性を示すタンパク質の発現を指示するベクター構築物を保有する組換え体レトロウイルスベクター。
【0035】
19.病原因子に由来するタンパク質によるプロセッシング又は修飾時に毒性を示すタンパク質の発現を指示するベクター構築物を保有する組換え体アデノウイルスベクター。
【0036】
20.プロセッシング又は修飾時に毒性を示す上記タンパク質がプロリシンである項目18又は19記載の組換え体ベクター。
【0037】
21.イベント特異性プロモーターを活性化すると細胞毒性遺伝子が発現されるように、イベント特異性プロモーターの転写制御下で上記細胞毒性遺伝子を包含するベクター構築物を保有する組換え体レトロウイルスベクター。
【0038】
22.イベント特異性プロモーターを活性化すると細胞毒性遺伝子が発現されるように、イベント特異性プロモーターの転写制御下で上記細胞毒性遺伝子を包含するベクター構築物を保有する組換え体アデノウイルスベクター。
【0039】
23.上記イベント特異性プロモーターが細胞性チミジンキナーゼプロモーターである項目21又は22記載の組換え体ベクター。
【0040】
24.上記イベント特異性プロモーターがチミジル酸シンターゼプロモーターである項目21又は22記載の組換え体ベクター。
【0041】
25.上記イベント特異性プロモーターがホルモンにより活性化される項目21又は22記載の組換え体ベクター。
【0042】
26.上記細胞毒性遺伝子がリシン(rici)、アブリン(abrin)、ジフテリアトキシン、コレラトキシン、ゲロニン(gelonin)、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、トリチン、赤痢菌毒素及びプソイドモナス属外毒素Aから成る群から選択される項目21又は22記載の組換え体ベクター。
【0043】
27.組織特異性プロモーターを活性化すると細胞毒性遺伝子が発現されるように、組織特異性プロモーターの転写制御下で上記細胞毒性遺伝子を包含するベクター構築物を保有する組換え体レトロウイルスベクター。
【0044】
28.組織特異性プロモーターを活性化すると細胞毒性遺伝子が発現されるように、組織特異性プロモーターの転写制御下で上記細胞毒性遺伝子を包含するベクター構築物を保有する組換え体アデノウイルスベクター。
【0045】
29.上記組織特異性プロモーターが PEPCKプロモーターである項目27又は28記載の組換え体ベクター。
【0046】
30.上記組織特異性プロモーターがHER2/neu プロモーター及びカゼインプロモーターから成る群から選択される項目27又は28記載の組換え体ベクター。
【0047】
31.上記組織特異性プロモーターがIgGプロモーター、絨毛膜性胚抗原プロモーター、エラスターゼプロモーター、ポルホビリノーゲンデアミナーゼプロモーター、インシュリンプロモーター、成長ホルモン因子プロモーター、チロシンヒドロキシラーゼプロモーター、アルブミンプロモーター、アルファフェトプロテインプロモーター、アセチルコリン受容体プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、α又はβグロビンプロモーター、T細胞受容体プロモーター及びオステオカルシンプロモーターから成る群から選択される項目27又は28記載の組換え体ベクター。
【0048】
32.上記細胞毒性遺伝子がリシン(ricin)、アブリン(abrin)、ジフテリアトキシン、コレラトキシン、ゲロニン(gelonin)、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、トリチン、赤痢菌毒素及びプソイドモナス属外毒素Aから成る群から選択される項目27又は28記載の組換え体ベクター。
【0049】
33.イベント特異性プロモーター及び組織特異性プロモーターを活性化した場合にのみ細胞毒性遺伝子が最大限発現されるように、イベント特異性プロモーター及び組織特異性プロモーターの両方の転写制御下で上記細胞毒性遺伝子を包含するベクター構築物を保有する組換え体レトロウイルスベクター。
【0050】
34.イベント特異性プロモーター及び組織特異性プロモーターを活性化した場合にのみ細胞毒性遺伝子が最大限発現されるように、イベント特異性プロモーター及び組織特異性プロモーターの両方の転写制御下で上記細胞毒性遺伝子を包含するベクター構築物を保有する組換え体アデノウイルスベクター。
【0051】
35.上記イベント特異性プロモーターがチミジンキナーゼであり、上記組織特異性プロモーターがカゼインプロモーター及びHER2/neu プロモーターから成る群から選択される項目33又は34記載の組換え体ベクター。
【0052】
36.上記細胞毒性遺伝子がリシン(ricin)、アブリン(abrin)、ジフテリアトキシン、コレラトキシン、ゲロニン(gelonin)、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、トリチン、赤痢菌毒素及びプソイドモナス属外毒素Aから成る群から選択される項目33又は34記載の組換え体ベクター。
【0053】
37.細胞毒性を殆ど又は全く持たない化合物を毒性物質に活性化する遺伝子物質を包含するベクター構築物を保有する組換え体レトロウイルスベクターであって、イベント特異性プロモーターを活性化すると上記遺伝子物質が発現されるように、遺伝子物質がイベント特異性プロモーターの転写制御下にある組換え体レトロウイルスベクター。
【0054】
38.細胞毒性を殆ど又は全く持たない化合物を毒性物質に活性化する遺伝子物質を包含するベクター構築物を保有する組換え体アデノウイルスベクターであって、イベント特異性プロモーターを活性化すると上記遺伝子物質が発現されるように、遺伝子物質がイベント特異性プロモーターの転写制御下にある組換え体アデノウイルスベクター。
【0055】
39.上記イベント特異性プロモーターが細胞性チミジンキナーゼプロモーターである項目37又は38記載の組換え体ベクター。
【0056】
40.上記組織特異性プロモーターがチミジル酸シンターゼプロモーターである項目37又は38記載の組換え体ベクター。
【0057】
41.上記イベント特異性プロモーターがホルモンにより活性化される項目37又は38記載の組換え体ベクター。
【0058】
42.上記遺伝子物質が大腸菌グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、真菌類シトシンデアミナーゼ、カルボキシペプチダーゼG2及びペニシリン−Vアミダーゼから成る群から選択される項目37又は38記載の組換え体ベクター。
【0059】
43.細胞毒性を殆ど又は全く持たない化合物を細胞毒性物質に活性化する遺伝子物質を包含するベクター構築物を保有する組換え体レトロイルスベクターであって、組織特異性プロモーターを活性化すると上記遺伝子物質が発現されるように、遺伝子物質が組織特異性プロモーターの転写制御下にある組換え体レトロウイルスベクター。
【0060】
44.細胞毒性を殆ど又は全く持たない化合物を細胞毒性物質に活性化する遺伝子物質を包含するベクター構築物を保有する組換え体アデノウイルスベクターであって、組織特異性プロモーターを活性化すると上記遺伝子物質が発現されるように、遺伝子物質が組織特異性プロモーターの転写制御下にある組換え体アデノウイルスベクター。
【0061】
45.上記組織特異性プロモーターが PEPCKプロモーターである項目43又は44記載の組換え体ベクター。
【0062】
46.上記組織特異性プロモーターがHER2/neuプロモーター及びカゼインプロモーターから成る群から選択される項目43又は44記載の組換え体ベクター。
【0063】
46.上記組織特異性プロモーターが IgGプロモーター、絨毛膜性胚抗原プロモーター、エラスターゼプロモーター、ポルホビリノーゲンデアミナーゼプロモーター、インシュリンプロモーター、成長ホルモン因子プロモーター、チロシンヒドロキシラーゼプロモーター、アルブミンプロモーター、アルファフェトプロテインプロモーター、アセチルコリン受容体プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、α又はβグロビンプロモーター、T細胞受容体プロモーター及びオステオカルシンプロモーターから成る群から選択される項目43又は44記載の組換え体ベクター。
【0064】
48.上記遺伝子物質が大腸菌グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、真菌類シトシンデアミナーゼ、カルボキシペプチダーゼG2及びペニシリン−Vアミダーゼから成る群から選択される項目43又は44記載の組換え体ベクター。
【0065】
49.イベント特異性プロモーター及び組織特異性プロモーターを活性化した場合にのみ遺伝子物質が最大限発現されるように、遺伝子物質がイベント特異性プロモーター及び組織特異性プロモーターの両方の転写制御下にある、細胞毒性を殆ど又は全く持たない化合物を毒性物質に活性化する遺伝子物質を包含するベクター構築物を保有する組換え体レトロウイルスベクター。
【0066】
50.イベント特異性プロモーター及び組織特異性プロモーターを活性化した場合にのみ遺伝子物質が最大限発現されるように、遺伝子物質がイベント特異性プロモーター及び組織特異性プロモーターの両方の転写制御下にある、細胞毒性を殆ど又は全く持たない化合物を毒性物質に活性化する遺伝子物質を包含するベクター構築物を保有する組換え体アデノウイルスベクター。
【0067】
51.上記イベント特異性プロモーターがチミジンキナーゼであり、上記組織特異性プロモーターがカゼインプロモーターである項目49又は50記載の組換え体ベクター。
【0068】
52.上記遺伝子物質がアルカリ性ホスファターゼ、真菌類シトシンデアミナーゼ、カルボキシペプチダーゼG2及びペニシリンVアミダーゼから成る群から選択される項目49又は50記載の組換え体ベクター。
【0069】
53.上記ベクター構築物が付加的非ベクター由来遺伝子の発現を指示する項目1,2,7,8,9,10,18,19,21,22,27,28,33,34,37,38,43,44,49又は50のいずれかに記載の組換え体ベクター。
【0070】
54.上記付加的遺伝子がタンパク質をコードする項目53記載の組換え体ベクター。
【0071】
55.上記タンパク質が免疫補助分子である項目54記載の組換え体ベクター。
【0072】
56.上記免疫補助分子が、IL-1,IL-2,IL-3,IL-4,IL-5,IL-6,IL-7,IL-8,IL-9,IL-10,IL-11,IL-12,B7,B7-2,GM-CSF,CD3,ICAM-1,β−ミクログロブリン、LFA-3,HLA クラスI及びHLA クラスII分子から成る群から選択される項目55記載の組換え体ベクター。
【0073】
57.上記タンパク質がガンマ−インターフェロンである項目54記載の組換え体ベクター。
【0074】
58.温血動物における病原因子の阻害に用いるための項目1〜6のいずれかに記載の組換え体ウイルスベクター。
【0075】
59.温血動物における病原因子の破壊方法に用いるための項目7〜57のいずれかに記載の組換え体ウイルスベクター。
【0076】
60.上記病原因子がウイルス感染細胞及び細菌に感染された細胞から成る群から選択される項目58又は59記載の組換え体ウイルスベクター。
【0077】
61.上記病原因子が腫瘍細胞である項目58又は59記載の組換え体ウイルスベクター。
【0078】
62.上記病原因子が自己反応性免疫細胞である項目58又は59記載の組換え体ウイルスベクター。
【0079】
63.項目1〜57のいずれかに記載の組換え体ウイルスベクターを生成するプロデューサー細胞。
【0080】
64.温血動物における病原因子の破壊方法に用いるための項目63記載のプロデューサー細胞。
【0081】
65.項目1〜57のいずれかに記載の組換え体ウイルスベクター、及び製薬上許容可能なキャリアー又は希釈剤を包含する製剤組成物。
【0082】
発明の要約
手短にいえば、本発明は、組換え体ウイルスベクター及び広範な病原因子の治療のためのこのようなベクターの使用方法を提供する。本発明の一態様内では、そうでなければ不活性な前駆体を病原因子の活性阻害剤に活性化し得る遺伝子物質の発現を指示するベクター構築物を保有する組換え体ウイルスベクターが提供される。本発明の一態様内では、病原因子はウイルス感染細胞である。別の態様では、遺伝子物質は単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ又は水疱帯状疱疹ウイルスチミジンキナーゼである。さらに別の態様では、不活性前駆体はAZTである。
【0083】
本発明の別の態様内では、殆ど又は全く細胞毒性を持たない化合物を毒性物質に活性化する遺伝子物質の発現を指示するベクター構築物を保有する組換え体ウイルスベクターが提供される。別の態様では、病原因子の存在下で殆ど又は全く細胞毒性を持たない化合物を毒性物質に活性化する遺伝子物質の発現を指示し、それにより病原因子に局所療法を作用させるベクター構築物を保有する組換え体ウイルスベクターが提供される。一態様内において、遺伝子物質は単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ又は水疱帯状疱疹ウイルスチミジンキナーゼである。
【0084】
他の態様では、遺伝子物質は大腸菌グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、大腸菌 Deo D、大腸菌lacZ、シトクロム P4502B1遺伝子、アルカリ性ホスファターゼ、真菌類シトシンデアミナーゼ、カルボキシペプチダーゼG2及びペニシリン Vアミダーゼから成る群から選択される。さらに別の態様では、病原因子はウイルス感染細胞、細菌に感染された細胞、腫瘍細胞又は寄生生物に感染された細胞である。
【0085】
本発明の別の態様では、病原因子に由来するタンパク質によるプロセッシング又は修飾時に毒性を示すタンパク質の発現を指示する組換え体ウイルスベクターが提供される。一態様内で、プロセッシング又は修飾時に毒性を示すタンパク質は、プロリシンである。
【0086】
本発明のさらに別の態様では、イベント特異性プロモーターを活性化すると細胞毒性遺伝子が発現されるように、イベント特異性プロモーターの転写制御下で細胞毒性遺伝子を包含するベクター構築物を保有する組換え体ウイルスベクターが提供される。種々の態様において、イベント特異性プロモーターが細胞性チミジンキナーゼプロモーター又はチミジル酸シンターゼプロモーターである。別の態様では、イベント特異性プロモーターはホルモンにより活性化される。さらに別の態様では、細胞毒性遺伝子はリシン(ricin)、アブリン(abrin)、ジフテリアトキシン、コレラトキシン、ゲロニン(gelonin)、ヨウシュヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、トリチン、赤痢菌毒素及びプソイドモナス属外毒素Aから成る群から選択される。
【0087】
本発明の別の態様において、組織特異性プロモーターを活性化すると細胞毒性遺伝子が発現されるように、組織特異性プロモーターの転写制御下で細胞毒性遺伝子を包含する組換え体ウイルスベクターが提供される。種々の態様において、組織特異性プロモーターは PEPCKプロモーター、HER2/neuプロモーター、カゼインプロモーター、IgGプロモーター、絨毛膜性胚抗原プロモーター、エラスターゼプロモーター、ERB B2プロモーター、ポルホビリノーゲンデアミナーゼプロモーター、インシュリンプロモーター、成長ホルモン因子プロモーター、チロシンヒドロキシラーゼプロモーター、アルブミンプロモーター、アルファフェトプロテインプロモーター、アセチルコリン受容体プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、α又はβグロビンプロモーター、T細胞受容体プロモーター、オステオカルシンプロモーター、IL-2プロモーター、IL-2受容体プロモーター、ホエー(wap)プロモーター及びMHC クラスIIプロモーターである。
【0088】
本発明のさらに別の態様では、イベント特異性プロモーター及び組織特異性プロモーターを活性化した場合にのみ細胞毒性遺伝子が最大限発現されるように、イベント特異性プロモーター及び組織特異性プロモーターの両方の転写制御下で細胞毒性遺伝子を包含するベクター構築物を保有するウイルスベクターが提供される。代表的イベント特異性プロモーター及び組織特異性プロモーターは上記の通りである。好ましい一態様では、イベント特異性プロモーターはチミジンキナーゼであり、組織特異性プロモーターはカゼインプロモーター及びHER2/neuプロモーターから成る群から選択される。
【0089】
本発明の他の態様では、細胞毒性遺伝子の発現を指示するベクター構築物の代わりに(の他に)、ウイルスベクターが細胞毒性を殆ど又は全く持たない化合物を有毒物質に活性化する遺伝子物質の発現を指示するベクター構築物を保有する以外は上記と同様のウイルスベクターが提供される。
【0090】
本発明の他の態様において、上記のベクター構築物は付加的非ベクター由来遺伝子の発現を指示し得る。一態様において、非ベクター由来遺伝子は免疫補助分子のようなタンパク質をコードする。免疫補助分子の代表的例としては、IL-1,IL-2,IL-3,IL-4,IL-5,IL-6,IL-7,IL-8,IL-9,IL-10,IL-11,IL-12,B7,B7-2,GM-CSF,CD3,ICAM-1、β−ミクログロブリン、LFA-3、HLA クラスI及びHLA クラスII分子が挙げられる。好ましい一態様において、タンパク質はガンマ−インターフェロンである。
【0091】
本発明の他の態様では、病原因子が阻害又は破壊されるように上記組換え体ウイルスベクターを温血動物に投与することを包含する、温血動物における病原因子を阻害又は破壊するための方法が提供される。本明細書中で用いる場合、“破壊される”という用語は、疾病状態に寄与する細胞の破壊を意味し、破壊は疾病の部分的破壊を引き起こすに過ぎない(例えば腫瘍は部分的に破壊されるだけである)と理解されるべきである。種々の態様において、組換え体ウイルスベクターは in vivoに、あるいは ex vivoに投与される。さらに他の態様では、病原因子はウイルス感染細胞、細菌に感染された細胞、又は腫瘍細胞である。
【0092】
本発明の他の態様では、上記のような組換え体ウイルスベクターを生成するプロデューサー細胞が提供される。別の態様においては、病原因子を破壊するために、このようなプロデューサ-細胞を動物に投与することを包含する、温血動物における病原因子の破壊方法が提供される。
【0093】
本発明の別の態様では、病原因子が破壊されるように、殆ど又は全く細胞毒性を持たない化合物を毒性物質に活性化する遺伝子物質をコードする核酸を温血動物に投与する工程から成る温血動物における病原因子の破壊方法が提供される。
【0094】
本発明のさらに別の態様では、上記のような組換え体ウイルスベクターを製薬上許容可能なキャリアー又は希釈剤と組み合わせて包含する製剤組成物が提供される。
【0095】
以下の詳述及び添付の図面を参照すると、本発明のこれらのそして他の態様が明らかになる。さらにより詳細な手法又は組成物(例えばプラスミド等)を記載する多数の特許、特許出願及び他の印刷物を以下に開示する(その記載内容は参照により本明細書中に含まれるものとする)。
【発明の効果】
【0096】
本発明によって、種々の疾患(例えばウイルス性疾患、癌、遺伝性疾患等)を治療するための新規の組成物及び方法が提供され、そしてさらにその他の関連した利益を提供した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0097】
発明の詳細な説明
本発明を説明する前に、それを理解しやすくするために下記で用語の定義を先ず行うことにする。
【0098】
“ベクター構築物”という用語は、問題の配列(単数又は複数)又は遺伝子(単数又は複数)の発現を指示することができる集合体を意味する。ベクター構築物は転写プロモーター/エンハンサー又は遺伝子座限定要素(単数又は複数)、あるいは交互スプライシング、核 RNA輸出、メッセンジャーの翻訳後修飾、又はタンパク質の転写後修飾といったような他の手段により遺伝子発現を制御するその他の要素を含まねばならない。さらにベクター構築物は、転写された場合に問題の配列(単数又は複数)又は遺伝子(単数又は複数)と操作可能的に結合され、翻訳開始配列として作用する配列を含まねばならない。任意に、ベクター構築物はポリアデニール化、 Neo,TK、ハイグロマイシン、フレオマイシン、ヒスチジノール又はDHFRのような選択性マーカー、並びに1つ又はそれ以上の制限部位、及び翻訳終結配列を含んでもよい。さらにベクター構築物がレトロウイルス中に入れられた場合には、ベクター構築物は使用するレトロウイルスに適したパッケージングシグナル、LTR(長末端反復)、並びに正及び負鎖プライマー結合部位を含まねばならない(これらがすでに存在してはいない場合)。
【0099】
“病原因子”という用語は、疾病状態に関与する細胞を意味する。病原因子の代表例としては、腫瘍細胞、自己反応性免疫細胞、ホルモン分泌細胞、それらが一般に有している機能を欠く細胞、その種の細胞では一般には起きない付加的不適切遺伝子発現を有する細胞、及び細菌、ウイルス又は他の細胞内寄生生物に感染された細胞が挙げられる。さらに本明細書で用いる場合、“病原因子”という用語はレトロウイルスベクターを過剰に発現するか又は不適切に発現する(例えば悪細胞型の)、あるいは宿主細胞のゲノム中への不適切な挿入により腫瘍化した細胞を意味する。
【0100】
“組織特異性プロモーター”は、転写プロモーター/エンハンサー又は遺伝子座限定要素、あるいは上記のような遺伝子発現を制御し、好ましくは限定数の組織型において活性であるその他の要素を意味する。このような組織特異性プロモーターの代表例としては、PEPCKプロモーター、HER2/neuプロモーター、カゼインプロモーター、IgGプロモーター、絨毛膜性胚抗原プロモーター、エラスターゼプロモーター、ERB B2プロモーター、ムチンプロモーター、PEMプロモーター、ポルホビリノーゲンデアミナーゼプロモーター、インシュリンプロモーター、成長ホルモン因子プロモーター、チロシンヒドロキシラーゼプロモーター、アルブミンプロモーター、アルファフェトプロテインプロモーター、アセチルコリン受容体プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、α又はβグロビンプロモーター、T細胞受容体プロモーター、あるいはオステオカルシンプロモーターが挙げられる。
【0101】
“イベント特異性プロモーター”は、転写プロモーター/エンハンサー又は遺伝子座限定要素、あるいは上記のような遺伝子発現を制御し、その転写活性が細胞刺激に反応して変化するその他の要素を意味する。このようなイベント特異性プロモーターの代表例としては、チミジンキナーゼ又はチミジル酸シンターゼプロモーター、α又はβインターフェロンプロモーター、あるいはホルモン(天然の、合成の又は他の非宿主生物からのホルモン、例えば昆虫ホルモン)の存在に反応するプロモーターが挙げられる。
【0102】
上記のように、本発明は、組換え体ウイルスベクター及び広範な病原因子の治療のためのこのようなベクターの使用方法を提供する。本発明の一態様において、そうでなければ不活性な前駆体を病原因子の活性阻害剤に活性化し得る遺伝子物質の発現を指示するベクター構築物を保有する組換え体ウイルスベクターが提供される。本明細書の開示により当業者には明らかなように、広範な不活性前駆体は、病原因子の活性阻害体中に変換し得る。例えば抗ウイルスヌクレオシド類似体、例えば AZT又は ddCは、レトロウイルス逆転写酵素したがってウイルス複製を特異的に阻害するために、細胞機序によりヌクレオチドトリホスフェート形態に代謝される(Furmam et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8333-8337,1986)。抗ウイルスヌクレオシド類似体をそれらの活性形態に代謝するのを助ける単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVTK)又は水疱帯状疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(VZVTK)のような遺伝子物質(例えばタンパク質)の発現を指示する組換え体ウイルスベクターは、したがってその活性化形態にヌクレオシド類似体前駆体(例えば AZT又はddT)を活性化するのに有用である。
【0103】
本発明の一態様では、HSVTK遺伝子は構成マクロファージ又はT細胞特異性プロモーターの制御下で発現され、マクロファージ又はT細胞中に導入される。HSVTKの構成性発現は、AZT又はddCのようなヌクレオチド類似体のそれらの生物学的活性ヌクレオチドトリホスフェート形態へのより有効な代謝を引き起こし、それによりさらに大きな効力を提供し、低用量を供給し、毒性の生成を低減し、生産的感染に対する可能性を高める。そのヌクレオチドトリホスフェート形態がレトロウイルス逆転写酵素に対する選択性を示すがしかし細胞ヌクレオシド及びヌクレオチドキナーゼの基質特異性の結果としてリン酸化されない付加的ヌクレオシド類似体も、本発明の情況においては利用し得る。いくつかの代表的ウイルスベクターの詳細は、実施例1に後述する。
【0104】
本発明の関連する態様において、殆ど又は全く細胞毒性を持たない化合物を毒性物質に活性化する遺伝子物質の発現を指示するベクター構築物を保有する組換え体ウイルスベクターが提供される。手短にいえば、本発明の情況では、殆ど又は全く細胞毒性を持たない化合物を毒性物質に直接的に又は間接的に活性化する広範な遺伝子物質を利用し得る。このような遺伝子物質の代表例としては、あるプリンアラビノシド及び置換ピリミジン化合物を選択的に−リン酸化して、それらを細胞毒性又は細胞増殖抑制性代謝物質に変換する HSVTK及び VZVTKが挙げられる。さらに薬剤ganciclovir,acyclovir又はそれらのあらゆる類似体(例えばFIAU,FIAC,DHPG)を HSVTKに曝露すると、薬剤がその対応する活性ヌクレオチドトリホスフェート形態にリン酸化される。
【0105】
本発明に利用し得る他の遺伝子物質の代表例としては、以下のものが挙げられる:チオキサンチンを毒性チオキサンチンモノホスフェートに変換する大腸菌グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Besnard et al.,Mol.Cell.Biol.7:4139-4141,1987);ミトマイシンホスフェート及びドキソルビシンホスフェートのような不活性リン酸化化合物を毒性二リン酸化化合物に変換するをアルカリ性ホスファターゼ;5−フルオロシトシンを毒性化合物5−フルオロウラシルに変換する真菌(例えばFusarium oxysporum)又は細菌シトシンデアミナーゼ(Mullen,PNAS 89:33,1992);非毒性プロドラッグ6−メチルプリン−2’−デオキシリボヌクレオシド(MeP-dr)を毒性プリン類似体6−メチルプリンに変換する大腸菌DeoD(Moolten,Cancer Gene Therapy1(4):279-287,1994);シクロホスファミド(CPA)を細胞毒性代謝物質に変換するシトクロム P4502B1(Moolten,Cancer Gene Therapy1(4):279-287,1994);araC及びデオキシシトシンのガラクトシドを細胞毒性因子に変換するベータ−ガラクトシダーゼ(lacZ)遺伝子(Moolten,Cancer Gene Therapy 1(4):279-287,1994);パラ−N−ビス(2−クロロエチル)アミノベンジルグルタミン酸からグルタミン酸を切断し、それにより毒性安息香酸マスタードを生成するヌカルボキシペプチダーゼG2;及びドキソルビシン及びメルファランのフェノキシアセタビド誘導体を毒性化合物に変換するペニシリン−Vアミダーゼ(一般的には、Vrudhula et al.,J.of Med.Chem.36(7):919-923,1993;Kern et al.,Canc.Immun.Immunother.31(4):202-206,1990 参照)。
【0106】
本発明の関連した態様において、病原因子の存在下で殆ど又は全く細胞毒性を持たない化合物を毒性物質に活性する遺伝子物質の発現を指示し、それにより病原因子に局所療法を作用させるベクター構築物を保有する組換え体ウイルスベクターが提供される。この場合、組換え体ウイルスベクターからの遺伝子物質の発現は、病原的状態を同定する細胞内シグナルのような病原因子に関連した存在物が存在し、それにより非病原性細胞が破壊されない情況に限定される。この細胞型特異性は、病原状態を有するか又はかかりやすい細胞に組換え体ウイルス保有ベクターの標的を合わせることにより、感染のレベルで関与し得る。
【0107】
本方法の一態様において、イベント特異性プロモーターを活性化すると細胞毒性遺伝子が発現されるように、イベント特異性プロモーターの転写制御下で細胞毒性遺伝子を包含するベクター構築物を保有する組換え体ウイルスベクターが提供される。例えば細胞増殖により活性化される(又は別の方法で細胞周期依存性である)プロモーター、例えばチミジンキナーゼ又はチミジル酸シンターゼプロモーター(Merrill,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:4987 191,1989;Deng et al.,Mol.Cell.Biol.9:4079-82,1989);細胞がウイルスに感染した場合に活性化されるα又はβインターフェロンプロモーターのようなプロモーター(Fan and Maniatis,EMBO J,8(1):101-110,1989;Goodbourn et al.,Cell 45:60j1-610,1986);並びにホルモンの存在により活性化されるプロモーター(例えばエストロゲン反応プロモーター;Toohey et al.,Mol.Cell.Biol.6:4526-38,1986 参照)を含めた多数のイベント特異性プロモーターが、本発明に用い得る。
【0108】
好ましい態様において、組換え体ウイルスベクター(好ましくは、しかし必然的ではないが、組換え体 MLVレトロウイルス)は、腫瘍のような急速に増殖中の細胞において主に転写的に活性である細胞周期依存性プロモーター(例えばヒト細胞チミジンキナーゼ又はトランスフェリン受容体プロモーター)のようなイベント特異性プロモーターから発現される細胞毒性遺伝子を含有するベクター構築物を保有する。このように、これらのプロモーターからの転写を活性化できる因子を含有する急速に複製中の細胞は、好ましくはベクター構築物により生成される細胞毒性剤により破壊される。
【0109】
本発明の別の態様では、組織特異性プロモーターを活性化すると細胞毒性遺伝子が発現されるように、組織特異性プロモーターの転写制御下で細胞毒性遺伝子を包含する組換え体ウイルスベクターが提供される。本発明の情況では広範な組織特異性プロモーターを使用し得る。このようなプロモーターの代表例を以下に挙げる:肝特異性プロモーター、例えばホスホ エノール−ピルベートカルボキシキナーゼ(“PEPCK”)(Hatzogiou et al.,J.Biol.Chem.263:17798 808,1988;Benvenisty et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1118 22,1989;Vaulont et al.,Mol.Cell.Biol.9:4409-15,1989);B細胞特異性プロモーター、例えば IgGプロモーター;乳癌又は肝細胞癌特異性プロモーター、例えば癌胚性抗原プロモーター(CEA)(Schrewe et al.,Mol.and Cell.Biol.10:2738,1990);膵臓腺房細胞特異性プロモーター、例えばエラスターゼプロモーター(Swift et al.,Genes Develop.3:687-96,1989);胸上皮特異性プロモーター、例えばカゼインプロモーター(Doppler et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:104-08,1989);赤血球細胞中で活性な赤血球特異性転写プロモーター、例えばポルホビリノーゲンデアミナーゼプロモーター(Mignotte et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:6458-52,1990);α又はβグロビン特異性プロモーター(van Assendelft et al.,Cell 56:969-77,1989;Forrester et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5439-43,1989);膵臓のβ細胞に特異的なプロモーター、例えばインシュリンプロモーター(Ohlsson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4228-31,1988;Karlsson et al.,Mol.Cell.Biol.9:823-27,1989);下垂体に特異的なプロモーター、例えば成長ホルモン因子プロモーター(Ingraham et al.,Cell55:519-29,1988;Bodner et al.,Cell55:505-18,1988);メラノソームに特異的なプロモーター、例えばチロシンヒドロキシラーゼプロモーター;肝特異性プロモーター、例えばアルブミンプロモーター及びアルファフェトタンパク質プロモーター(Feuerman et al.,Mol.Cell.Biol.9:4204 12,1989;
Camper and Tilghman,Genes Develop.3:537 46,1989);乳癌特異性プロモーター、例えばHER2/ neuプロモーター(Tal et al.,Mol.and Cell.Biol.7:2597,1987);肝特異性プロモーター、例えばアルコールデヒドロゲナーゼプロモーター(Felder,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5903-07,1989);T細胞特異性プロモーター、例えばT細胞受容体プロモーター(Anderson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3551-54,1988;Winoto and Baltimore.EMBO J.8:729-33,1989);骨特異性プロモーター、例えばオステオクラシンプロモーター(Markose et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1701-1705,1990;McDonnell et al.,Mol.Cell.Biol.9:3517-23,1989;Kerner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:4455-59,1989);IL-2 プロモーター、IL-2受容体プロモーター、ホエー(wap)プロモーター、並びにMHC クラスIIプロモーター。
【0110】
例えば遺伝子座限定要素、例えばβグロビン遺伝子及びT細胞マーカーCD2を含めた、遺伝子発現を制御する種々の他の要素が、本発明の情況では用い得る。さらにスプライシング及び核輸出のレベルで発現を制御する要素は、βグロビンイントロン配列、 HIVニオケル rev及び rrc要素、D型 masonpfizerサルレトロウイルス中の CTE要素である。
【0111】
本発明の好ましい態様において、細胞毒性剤を生成する遺伝子は、組織特異性プロモーターの制御下にあり、この場合、組織特異性は腫瘍オリジンの組織に対応する。ウイルスベクターは好ましくは複製中の細胞のゲノムに組み込むため(例えば正常肝細胞は複製中ではないが、一方肝癌の場合は複製中である)、特異性のこれら2つのレベル(ウイルス組み込み/複製及び組織特異性転写調節)が腫瘍細胞の選択的死を引き起こす。
【0112】
本発明のさらに別の態様では、イベント特異性プロモーター及び組織特異性プロモーターを活性化した場合にのみ細胞毒性遺伝子が最大限発現されるように、イベント特異性プロモーター及び組織特異性プロモーターの両方の転写制御下で細胞毒性遺伝子を包含するベクター構築物を保有するウイルスベクターが提供される。特にこのようなベクターを用いることにより、細胞毒性遺伝子物質は両判定基準を満たす細胞型においてのみ発現される(例えば、上記の例では、併合プロモーター要素は急速に分裂中の肝細胞においてのみ機能する)。本発明の好ましい態様において、転写プロモーター要素の数は、細胞型特異性の厳格さを改良するために、増大される。
【0113】
上記のような転写プロモーター/エンハンサー要素は、内部プロモーターとして必ずしも存在する(レトロウイルスに関するウイルス LTR間にある)必要はないが、しかし条件特異性(即ちイベント又は組織特異性)転写発現が修飾ウイルス LTRから直接起きるように、それ自体が転写プロモーターであるウイルス LTRにおいて転写制御要素に加えられるか又は取り替えられる。この場合、最大発現のための条件はレトロウイルスパッケージング細胞株で模倣される必要はなく(例えば成長条件を変え、発現に必要なトランスレギュレーターを供給し、又はパッケージング株用の親として適切な細胞株を用いることにより)、あるいは LTR修飾は3’LTR U3領域に限定されて最大組換え体ウイルス力価を得る。後者の場合、1回感染/組み込み後は、3’LTR U3はここでは5’LTR U3となり、所望の組織特異性発現を示す。同様に、他のウイルスベクターに関しては、プロモーターは外生的であるか、又は正常ウイルスプロモーター要素とのハイブリッドである。
【0114】
本発明の情況では、広範な細胞毒性遺伝子を用い得る。代表例としては、リシン ricin(Lamb et al.,Eur.J.Biochem.148:265-270,1985)、アブリン abrin(Wood et al.,Eur.J.Biochem.198:723-732,1991;Evensen,et al.,J.of Biol.Chem.266:6848-6852,1991;Collins et al.,J.of Biol.Chem.265:8665-8669,1990;Chen et al.,Fed.of Eur.Biochem.Soc.309:115-118,1992)、ジフテリアトキシン(Tweten et al.,J.Biol.Chem.260:10392-10394,1985)、コレラトキシン(Mekalanols et al.,Nature 306:551-557,1983:Sanchez & Holmgren,PNAS 86:481-485,1989)、ゲロニン gelonin(Stirpe et al.,J.Biol.Chem.255:6947 6953,1980)、ヨウシュヤマゴボウ(Irvin,Pharmac.Ther.21:371-387,1983)、抗ウイルスタンパク質(Barbieri et al.,Biochem.J.203:55-59,1982;Irvin et al.,Arch.Biochem.& Biophys.200:418-425,1980;Irvin,Arch.Biochem.& Biophys.169:522-528,1975)、トリチン、赤痢菌毒素(Calderwood et al.,PNAS 84:4364-4368,1987;Jackson et al.,Microb.Path.2:147-153,1987)及びプソイドモナス属外毒素A(Carroll and Collier,J.Biol.Chem.262:8707-8711,1987)、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVTK)(Field et al.,J.Gen.Virol.49:115-124,1980)、及び大腸菌グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼのようなタンパク質が挙げられる。
【0115】
本発明の他の態様において、細胞毒性遺伝子は、細胞成長に必要な重大なタンパク質の細胞合成を防止することにより、例えば腫瘍細胞成長、ウイルス複製又は遺伝性疾患を阻害するアンチセンス配列である。このようなアンチセンス配列の例としては、アンチセンスチミジンキナーゼ、アンチセンスジヒドロフォレート(Maher and Dolnick,Arch.Biochem.& Biophys.253:214-220,1987;Bziket al.,PNAS 84:8360-8364,1987)、アンチセンスHER2(Coussens et al.,230:1132 1139,1985)、アンチセンスABL(Fainstein et al.,Oncogene 4:1477-1481,1989)、アンチセンス Myc(Stanton et al.,Nature 310:423-425,1984)、及びアンチセンス ras、並びにヌクレオチド生合成経路のあらゆる酵素を遮断するアンチセンス配列があげられる。さらに細胞毒性遺伝子は、腫瘍増殖阻害物、例えばp53、網膜芽腫(Rb)、並びに結腸直腸癌に関するMCC及び APCをコードする。
【0116】
本発明のさらに別の態様では、強力なクラスI制限反応を誘発するために、アンチセンス RNAを細胞毒性遺伝子として用いる。手短にいえば、RNAを結合し、それにより特異的mRNAの翻訳を阻止する他に、多量の二重鎖 RNAの生成のために、高レベルの特異的アンチセンス配列を用いてインターフェロン(ガンマ−インターフェロンを含む)の発現増大を誘発する。ガンマインターフェロンの発現増大は、次いで MHCクラスI抗原の発現を増強する。これに関して使用するのに好ましいアンチセンス配列としては、アクチン RNA、ミオシン RNA及びヒストン RNAが挙げられる。アクチンRNAとの不適合を形成するアンチセンス RNAが特に好ましい。
【0117】
本発明の他の態様では、殆ど又は全く細胞毒性を持たない化合物を毒性物質に活性化する遺伝子物質の発現を指示するベクター構築物を保有する組換え体ウイルスベクターが提供される。本発明の好ましい態様において、組換え体ウイルスベクターは、病原因子の存在下で、殆ど又は全く細胞毒性を持たない化合物を毒性物質に活性化する遺伝子物質の発現を指示し、それにより病原因子に局所療法を作用させる。
【0118】
例えば、本発明の一態様においては、組換え体ウイルスベクターは、HIVプロモーター(HIV tatタンパク質により活性化される場合を除いては転写的にサイレントであることが公知である)の下流での、且つ転写制御下での単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(“HSVTK”)遺伝子の発現を指示するベクター構築物を保有する。要するに、 HIVに感染され、ベクター構築物を保有するヒト細胞中の tat遺伝子物質の発現は、 HSVTKの産生増大を起こす。次に細胞をganciclovir,acyclovir又はその類似体(FIAU,FIAC,DHPG)のような薬剤に曝露する。上記のように、これらの薬剤は HSVTKにより(細胞チミジンキナーゼによらずに)
それらの対応する活性ヌクレオチドトリホスフェート形態にリン酸化されることは公知である。Acyclovir及びFIAUトリホスフェートは細胞ポリメラーゼを阻害し、概してトランスジェニックマウスにおいて HSVTKを発現する細胞の特異的破壊を引き起こす(Borrelli et al.,Proc. Natl.Acad.Sci.USA 85:7572,1988)。組換え体ベクターを含有し、HIV tatタンパク質を発現する細胞は、特異的用量のこれらの薬剤の存在により、選択的に殺される。
【0119】
本発明の一態様において、条件致死 HSVTK遺伝子の発現は、転写体(“CRS/CAR”)に cis作用要素を含めることにより、より HIV特異性にし得るが、これには最適活性のための付加的 HIV遺伝子物質revを要する(Rosen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2071,1988)。このような tat及び rev反応性ベクター(RRKTVIH)が構築され(図17参照)、両栄養性amphotrophicウイルスが生成された。さらにmRNA中に存在する cis要素は、いくつかの場合にはmRNA安定性又は翻訳可能性を調節することが示されている。
【0120】
ベクター遺伝子発現のイベント−又は組織特異性調節のために、この種の配列(即ち遺伝子発現の翻訳後調節)を用い得る。さらに、より大きな特異性を生じるために、これらの配列(即ち HIVに関するrev反応“CRS/CAR”又は tat反応性“TAR”要素)のマルチメライゼーションを用い得る。
【0121】
細胞中での不活性前駆体の活性物質へのこれらの種類の条件活性化はすべて、短期効力を有するものを含めたアデノ関連ウイルスベクターのような他のウイルスベクター、例えばアデノウイルスベクター及び下記のものを用いて達成し得る。このようなベクターは、効率的に細胞に入り、一両日から一ヵ月やそこらの期間中、ベクターによりコードされるタンパク質を発現する。この期間は、HIV及び組換え体ウイルスの両方により感染された細胞を殺させるのに十分であることが必要で、これにより組換え体ウイルスに保有される遺伝子の発現の HIV依存性活性化が生じる。この遺伝子発現は、次に不活性前駆体を活性(例えば致死)物質に変換させる。さらに、それらが十分に有効である場合には、遺伝子転移の物理的方法を用いてもよい。
【0122】
前述の態様と同様の方法で、プリン−又はピリミジン−ベースの薬剤のリン酸化、ホスホリボシル化、リボシル化又は他の代謝のための遺伝子を保有するベクター構築物を生成し得る。このような遺伝子は哺乳類細胞における等価物を有さず、ウイルス、細菌、真菌又は原生動物のような生物から得られる。代表例を以下に挙げる:チオキサンチンをチオキサンチンモノホスフェートに変換する大腸菌グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(“gpt”)遺伝子物質(Besnard et al.,Mol.Cell.Biol.7:4139-4141,1987参照);ミトマイシンホスフェート及びドキソルビシンホスフェートのような不活性リン酸化化合物を毒性二リン酸化化合物に変換するアルカリ性ホスファターゼ;5−フルオロシトシンを毒性化合物5−フルオロウラシルに変換する真菌(例えばFusarium oxysporum)又は細菌シトシンデアミナーゼ(Mullen,PNAS 89:33,1992);パラ N−ビス(2−クロロエチル)アミノベンジルグルタミン酸からグルタミン酸を切断し、それにより毒性安息香酸マスタードを生成するヌカルボキシペプチダーゼG2;及びドキソルビシン及びメルファランのフェノキシアセタビド誘導体を毒性化合物に変換するペニシリン Vアミダーゼ。この種の条件致死遺伝子物質は、現在公知の多数のプリン−又はピリミジンベースの抗ガン剤に有望な用途を有するが、有効な細胞毒性剤となるためには、細胞内リボシル化又はリン酸化をしばしば要する。条件致死遺伝子物質はさらに、プリン又はピリミジン類似体ではない非毒性剤を細胞毒性形態に代謝し得る(Searle et al.,Brit.J.Cancer 53:377-384,1986参照)。
【0123】
哺乳類ウイルスは、概して他のウイルスプロモーター要素からのその後の転写活性化に必要な“直前”遺伝子を有する傾向がある。この性質の遺伝子物質は、ウイルス感染の細胞内シグナル(又は“同定剤”)の優れた候補である。したがってこれらのウイルス“直前”遺伝子物質に反応する転写プロモーター要素からの条件致死遺伝子は、任意の特定ウイルスに感染させた細胞を特異的に殺し得る。さらにヒトα及びβインターフェロンプロモーター要素は広範な非関連ウイルスによる感染に反応して転写的に活性化されるため、例えばこれらのウイルス反応性要素(VRE)からのHSVTKのような条件致死遺伝子物質を発現するベクターの導入は、種々の異なるウイルスに感染された細胞の破壊を引き起こす。
【0124】
本発明の他の態様では、それ自体は毒性ではないが、しかしタンパク質、例えばウイルス又は他の病原に特異的なプロテアーゼによりプロセッシング又は修飾された場合に、毒性形態に変換される物質を特定する遺伝子を保有する組換え体ウイルスベクターが提供される。例えば組換え体レトロウイルスは、HIVプロテアーゼでプロセッシングシンすると毒性になるリシンA鎖に対するプロタンパク質をコードする遺伝子を保有する。さらに合成不活性プロタンパク質形態の毒性リシン又はジフテリアA鎖を、 HIVウイルスコード化プロテアーゼに関して並べて、適切な“プロ”要素を認識し、切り離すことにより、活性形態に切断し得る。
【0125】
本発明のさらに別の態様において、細胞中の同定剤(例えばHIVtatタンパク質)の存在に反応して標的細胞の表面に“リポーティング物質”を発現するウイルスベクターが提供される。この表面タンパク質は、細胞毒性剤、例えばリポーティング物質に対する抗体により、又は細胞毒性T細胞によって認識し得る。同様の方法で、このような系を検出系として用いて、同定タンパク質を発現する特定の遺伝子、例えばHIVtat遺伝子を有する細胞を簡単に同定し得る。
【0126】
本発明の他の態様では、ベクター感染細胞の生存能力に必須の RNA分子を切断し、不活性化するリボザイムをコードするベクター構築物の発現を指示する組換え体ウイルスベクターが提供される。リボザイムをHIVtatのような病原状態に対応する細胞内シグナルに依って産生させることにより、毒性は病原状態に特異的となる。
【0127】
組換え体ウイルスベクターの生成
上記のように、本発明は組換え体ウイルスベクターを包含する組成物及び方法を提供する。本発明に用いるのに特に好ましい組換え体ウイルスベクターとしては、組換え体レトロウイルスベクター及び組換え体アデノウイルスベクターが挙げられる。組換え体レトロウイルスベクターの構築は、“組換え体レトロウイルス”という表題の出願(U.S.S.N.07/586,603、1990年9月21日提出)(この記載内容は参照によりホン明細書に含めるものとする)に詳述されている。これらの組換え体レトロウイルスベクターを用いて、それらを適切なパッケージング細胞株に導入することにより、形質導入コンピテントレトロウイルスベクター粒子を生成し得る(U.S.S.N.07/800,921 参照)(この記載内容は参照によりホン明細書に含めるものとする)。同様に、本明細書に開示されたアデノウイルスベクターも容易に調製し、使用し得る(Berkner,Biotechniques6:616-627,1988 及び Rosenfeld et al.,Science 252:431-434,1991,WO 93/07283,WO 93/06223 及び WO 93/07282 参照)(この記載内容は参照によりホン明細書に含めるものとする)。
【0128】
本発明のベクター構築物は、例えばポリオウイルス(Evans et al.,Nature 339:385-388,1989 及び Sabin,J.of Biol.Standardization1:115-118,1973);ライノウイルス(Arnold,J.Cell.Biochem.L401-405,1990);ポックスウイルス、例えばカナリアポックスウイルス又はワクシニアウイルス(Fisher Hoch et al.,PNAS 86:317-321,1989;Flexner et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.569:86-103,1989;Flexneretal.,Vaccine8:17-21,1990;米国特許第 4,603,112号及び第 4,769,330号;WO 89/01973);SV40(Mulligan et al.,Nature 277:108-114,1979);インフルエンザウイルス(Luyties et al.,Cell 59:1107-1113,1989;McMicheal et al.,The New England Journal of Medicine 309:13-17,1983;及びYap et al.,Nature 273:238-239,1978);パロウイルス、例えばアデノ関連ウイルス(Samulski et al.,Journal of Virology 63:3822-3828,1989 及びMendelson et al.,Virology 166:154-165,1988);ヘルペス(Kit,Adv.Exp.Med.Biol.215:219-236,1989);SV40;HIV;麻疹(欧州特許第 0440219号);コロナウイルス及び Sindbisウイルス(Xiong et al.,Science 234:1188-1191,1989;米国特許第 5,091,309号及び第 5,217,879号
)を含めた他のウイルスベクターとともに用い得る。
【0129】
本発明の別の態様では、上記のベクター構築物は、別の非ベクター由来遺伝子の発現を指示し得る。一態様において、非ベクター由来遺伝子はタンパク質、例えば免疫補助分子をコードする。免疫補助分子の代表例を以下に挙げる:IL-1,IL-2,IL-3,IL-4,IL-5,IL-6,IL-7(米国特許第 4,965,195号),IL-8,IL-9,IL-10,IL-11,IL-12,B7,B7-2,GM-CSF,CD3(Krissanen et al.,Immunogenetics 26:258-266,1987),ICAM-1(Simmons et al.,Nature 331:624 627,1988)、β−ミクログロブリン(Parnes et al.,PNAS 78:2253-2257,1981)、LFA3(Wallner et al.,J.Exp.Med.166(4):923-932,1987)、 HLAクラスI及び HLAクラスII分子。好ましい態様において、非ベクター由来遺伝子はガンマインターフェロンをコードする。
【0130】
上記の非ベクター由来遺伝子(例えば免疫補助分子)、並びに上記の細胞毒性遺伝子をコードする配列は、種々の供給源から容易に得られる。例えば免疫補助分子をコードする配列を含有するプラスミドは、American Type Culture Collection(ATCC,Rockville,Maryland)のような保管所から、又はBritish Bio-Technology Limmited(Cowley,Oxford England)のような商業的供給元から得られる。
【0131】
上記の抗腫瘍剤をコードする代表的供給源配列としては、BBG12(127アミノ酸の成熟タンパク質をコードするGM-CSF遺伝子を含有)、BBG6(ガンマインターフェロンをコードする配列を含有する)、ATCC No.39656(TNFをコードする配列を含有)、ATCC No.20663(アルファ−インターフェロンをコードする配列を含有)、ATCC No.31902及び39517(ベータインターフェロンをコードする配列を含有)、ATCC No.67024(インターロイキン−1をコードする配列を含有)、ATCC No.39405,39452,39516,39626及び39673(インターロイキン−2をコードする配列を含有)、ATCC No.59399,59398及び67326(インターロイキン−3をコードする配列を含有)、ATCCNo.57592(インターロイキン−4をコードする配列を含有)、ATCC No.59394及び59395(インターロイキン−5をコードする配列を含有)、ATCC No.67153(インターロイキン−6をコードする配列を含有)が挙げられる。タンパク質の全配列、又は生物学的活性を有するタンパク質をコードするその適切な部分を用い得ることは、当業者には明らかである。
【0132】
あるいは、細胞毒性遺伝子又は他の非ベクター由来遺伝子をコードする公知のcDNA配列は、このような配列を発現又は含有する細胞から得られる。要するに、一態様においては、問題の遺伝子を発現する細胞からのmRNAを、オリゴdT又は無作為プライマーを用いて逆転写酵素により逆転写する。次にPCR(米国特許第 4,683,202号、第4,683,195号及び第 4,800,159号参照)により一本鎖cDNAを増幅する。所望の配列の一端上の配列と相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCR Technology:Principles and Applications for DNA Amplification,Erlich(ed.),Stockton Press,1989 も参照(これらの記載内容はすべて、参照により本明細書中に含めるものとする)。特に熱安定性 Taqポリメラーゼ、配列特異的 DNAプライマー、 ATP,CTP,GTP及び TTPの存在下で加熱することにより、二重鎖 DNAを変性する。二重鎖 DNAは、合成が完了すると生成される。この周期を何度も反復すると、所望の DNAが階乗増幅される。
【0133】
上記の遺伝子をコードする配列は、例えば Applied BiosystemsInc.DNA合成機(例えば ABI DNA合成機 392型(Foster City,California))で合成し得る。
【0134】
製剤組成物
本発明の別の態様では、上記のような組換え体ウイルスベクターを製薬上許容可能なキャリアー又は希釈剤と組み合わせて包含する製剤組成物が提供される。
【0135】
このような製剤組成物は、液体溶液として、又は投与前に溶液中に懸濁される固体形態(例えば親液化)として調製し得る。さらに本組成物は、表面投与、注射、経口又は直腸投与に適したキャリアー又は希釈剤とともに調製し得る。
【0136】
製薬上許容可能なキャリアー又は希釈剤は、使用する用量及び濃度では受容者には非毒性である。注射溶液のためのキャリアー及び希釈剤の代表例としては、水、好ましくは生理学的pHに緩衝される等張食塩水(例えばリン酸塩緩衝食塩水又はTris緩衝食塩水)、マンニトール、デキストロース、グリセロール及びエタノール、並びにヒト血清アルブミンのようなポリペプチド又はタンパク質が挙げられる。特に好ましい組成物は、10mg/mlマンニトール、1mg/ml HSA、20mM Tris、pH 7.2及び150mM NaCl中にベクター又は組換え体ウイルスを包含する。この場合、組換え体ベクターは約1mgの物質を示すため、それは高分子物質の1%未満、及び総物質(水を含む)の1/100,000未満である。この組成物は、−70℃で少なくとも6か月間安定である。
【0137】
本発明の製剤組成物は、細胞分裂、並びにその後の組換え体レトロウイルスベクターの摂取及び組み込むを刺激する因子を付加的に含んでもよい。代表例としては、黒色腫に対するメラノサイト刺激ホルモン(MSH)、あるいは乳癌又は上皮性癌に対する表皮成長因子が挙げられる。
【0138】
組換え体ベクターを保存するための特に好ましい方法及び組成物は、“Methods for Preserving Recombinant Viruses”と表題が付けられた米国出願に記載されている(1993年10月12日提出の米国特許第08/135,938号及び1993年11月15日提出の米国特許第 号)(これらの記載内容はすべて、参照により本明細書中に含めるものとする)。
【0139】
投与方法
本発明の他の態様において、病原因子が阻害又は破壊されるように、温血動物に上記のような組換え体ウイルスベクターを投与することを包含する、温血動物における病原因子を阻害又は破壊するための方法が提供される。本発明の種々の態様においては、組換え体ウイルスベクターは下記に詳述するようにin vivoで又はex vivoで投与し得る。あるいは本発明の細胞毒性遺伝子、遺伝子物質、ベクター構築物又はウイルスベクターを、種々の方法により患者に投与し得る。代表例としては、種々の物理的方法によるトランスフェクション、例えばリポフェクション(Felgner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413 7417,1989);直接 DNA注入(Acsadi et al.,Nature 352:815-818,1991);微小発射ボンバード(Williams et al.,PNAS 88:2726 2730,1991);いくつかの型のリポソーム(例えばWang et al.,PNAS 84:7851-7855,1987参照);CaPO4(Dubensky et al.,PNAS 81:7529-7533,1984);DNA配位子(Wu et al.,J.of Biol.Chem.264:16985-16987,1989);核酸単独投与(WO 90/11092);又は死アデノウイルスと結合させた DNAの投与(Curiel et al.,Hum.Gene Ther.3:147-154,1992)が挙げられる。
【0140】
本発明の一態様において、非転移性の、しかしそうでなければ治療不可能な腫瘍、例えばグリア芽腫、星状細胞腫又は他の脳腫瘍に罹患した患者は、精製濃縮 HSVTKベクターを腫瘍に直接注入することにより治療し得る。成長中の細胞だけがレトロウイルスベクターで形質導入可能であるために、ベクターは、好ましくは腫瘍に組み込まれ、発現される。ベクターは非調節様式で HSVTKを発現するか、又は腫瘍特異性をより大きくするために、組織からの HSVTKを又は好ましくは腫瘍中で発現される特異的プロモーターをさえ発現する。例えば CEAプロモーターからの HSVTKを発現するベクターを用いて、乳癌又は肝癌を治療し得る。精製ベクターが非免疫原性量のタンパク質(<1mgタンパク質/1x107cfu)を含有するために、時間を延長して多数回(>10)に分けてベクター(約1mlで力価は1x107〜1x108cfu)を供給する。したがって注射は、大分画の腫瘍細胞が形質導入されるまで継続する。ベクターは、脱塊手術又は化学療法の前後に定位的に供給する。 in vivo形質導入が生じた後に、 HSVTKにより活性化されるプロドラッグ、例えば acyclovir又はganciclovirで患者を治療して、形質導入化腫瘍細胞を排除する。
【0141】
本発明の別の態様では、病原因子を破壊するために、動物にベクター産生細胞(“VCL”又は“プロデューサー細胞”と呼ぶ)を投与することを包含する、温血動物における病原因子を破壊するための方法が提供される。好ましい態様においては、VCLを腫瘍に直接注入し、それよりin vivoでのレトロウイルスベクターを継続的に産生させて、形質導入の効率を増大させる。
【0142】
しかしながら VCLの直接注入に伴う困難の一つは、ある場合に非常に強力な免疫反応が生じ、したがってこのような療法を非常に短期間(<2週間)だけ実行可能にする。したがって本発明の好ましい態様においては、VCLに対する免疫反応は、自系の又は HLA適合ヒト細胞から作られるパッケージング細胞株を選択することにより最小限にされる。さらに VCLにより発現されるウイルス構造タンパク質に対する免疫反応をもっと限定するために、半透性膜を有するビーズ又は袋のような構造中に細胞を封入して、ベクター粒子を腫瘍中に拡散させるが、しかし宿主免疫細胞は膜を通過しないようにして、それにより免疫反応を招じる。免疫反応を低減する方法により in vivo形質導入のための時間をさらに取って、療法を改良する。々の場合、VCLは好ましくは、細胞のin vivo形質導入におけるその役割を成し終えたのちに、アシル又はganciclovirで処置することにより破壊される。
【0143】
本発明の別の態様において、転移性ではあるがしかし高度に局在化された癌、例えば卵巣癌、神経芽腫及び頚部癌(これらは転移性ではあるがしかし一般に腹腔に局在化されたままである)は、本発明の方法により処置し得る。この態様において、ベクター又は VCLは腹腔内に直接注入する。特に好ましいアプローチにおいて、急速に増殖中の腫瘍は、好ましくは HSVTKベクターにより in vivoに形質導入されて、その後患者に acyclovir又は ganciclovirを投入することにより破壊される。
【0144】
本発明のさらに別の態様において、肺癌、乳癌又は結腸癌から生じる胸膜癌腫症の治療のために、ウイルスベクター又は VCLを胸膜腔中に注入するか、あるいは髄膜癌腫症の治療のためには鞘内注入による。
【0145】
本発明の別の態様では、転移性散在性癌患者も本発明の方法により治療し得る。例えば肝臓に転移した原発性膵臓癌又は結腸直腸癌には、定位法で狙いを定めて体壁を通して注射器を挿入して、本発明のウイルスベクター又はVCLを直接注入する。肺又は結腸の腫瘍も同様に、それぞれ気管支鏡検査又はS状結腸鏡検査により査定し得る。例えばHSVTKを発現するベクターにより in vivoに形質導入された腫瘍細胞を、次にacyclovir又はganciclovirを患者に投与することにより破壊する。
【0146】
本発明の好ましい態様では、上記のような細胞毒性遺伝子又は遺伝子物質(例えばHSVTK)の投与の他に、病原因子を阻害又は破壊するために、種々の付加的治療組成物を動物に同時投与するか又は引き続き投与する。このような治療組成物は、直接投与し得るか、又は他の態様においては別々のベクター構築物から発現される。あるいは、病原因子を阻害又は破壊するために、細胞毒性遺伝子又は遺伝子物質の両方の発現を指示する単一ベクター、又は治療組成物をコードする遺伝子(例えば上記の非ベクター由来遺伝子)を温血動物に投与する。特に好ましい態様においては、HSVTK遺伝子及びヒトχ−IFN のような免疫補助分子をコードする遺伝子の両方を供給及び発現するベクター又は VCLを患者に投与する。このような構築物においては、ある遺伝子はベクター LTRから発現され、他のものはLTRs間に見出される付加的転写プロモーターを利用するか、あるいは、おそらくは内部リボソーム結合部位を用いて、ポリシストロニックmRNAとして発現される。このようなプロベクターの一例は実施例10に認められる。 in vivo遺伝子転移後、患者の免疫系はχ−IFN の発現により活性化される。これが起きた後に、全体的腫瘍の苦しみそれ自体は患者を acyclovir又は ganciclovirで治療することにより低減され、腫瘍をより有効に免疫攻撃できる。炎症細胞を伴う死腫瘍の浸潤は、次いで免疫表出(例えば MHCクラスII又は HLA表出)を増大し、腫瘍に対する患者の免疫反応をさらに改良する。さらに免疫表出は腫瘍の再発に対する患者の耐性を改良する。
【0147】
癌の他に、上記のように本発明の方法を使用して他の病原因子を破壊又は阻害し得る。ウイルスベクター処置を用いない同一細胞と比較した場合の、AZT又はddCの存在下で HIVに対するそれらの耐性を増大するために、例えば本発明のウイルスベクターをヒトT細胞及び/又はマクロファージ/単核球株に投与する。AZTによる処置は、毒性副作用を避けるためには正常レベルより低レベルであるが、しかし依然として効率よく HIVの拡散を阻害する。
【0148】
本発明の好ましい態様においては、ベクター粒子のCD4+ 細胞への吸収を指示するために、感染し易いT細胞又は単核球を VSVG,HIV env又はハイブリッド envを保有するベクターで標的にする。例えば受容体として HIV envタンパク質(gp120)を用いて細胞を感染させるベクター粒子を産生することにより、ウイルスベクターを標的化する。このような HIV向性ウイルスは、好ましい態様においては、その細胞膜中に高レベルのCD4タンパク質を天然に有する細胞(例えばSup T1細胞)及び/又はCD26タンパク質を有する細胞から、あるいはこのようなタンパク質を発現するために“遺伝子工学的に処理される”任意の細胞型から構築される MLVベースのパッケージング細胞株から産生される。その結果生じるビリオン(細胞膜それ自体からの出芽によりできる)は、その膜中にCD4(及び/又はCD26)タンパク質を含有する。CD4(及びCD26)を含有する膜はHIVenvを保有する膜と融合することが公知であるため、これらのビリオンはHIVenvを含有する細胞と融合すべきであり、それらの表面に gp120を有する HIV感染細胞の特異的感染を引き起こす。このようなパッケージング細胞株は、適切なビリオン集合体及び出芽を感染性ビリオン中に生じさせるためには、MLVenvタンパク質の存在を必要とする。そのような場合、ウイルス進入がCD4(及び/又はCDCC)/HIVenv相互作用によってのみ生じ、MLVenv細胞受容体によっては生じないように(これは恐らくは感染に対するHIVenvの存在に依るものではない)、ヒト細胞に感染しないMLVenv(例えばエコトロピックenv)を用いる。あるいは、MLVenvの要件は、ハイブリッドエンベロープにより満たされるが、この場合アミノ末端結合ドメインはCD4及び/又はCD26のアミノ末端HIVVenv結合ドメインに置き換えられていた。正常ウイルス受容体相互作用のこの逆は、その対応する細胞受容体が同定されている全種類のウイルスに関して用い得る。
【0149】
本明細書に提示された開示を示せば当業者には理解されるように、本明細書に記載のベクター構築物はすべて、ウイルスベクターとしてだけでなく、直接核酸ベクターとして供給される。このようなベクターは、遺伝子転移の任意の適切な物理的方法を用いて供給し得る。
【0150】
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0151】
実施例1 ベクターの構築
A.ベクター LTR配列を含有するプラスミドの構築
以下のレトロウイルスベクターはすべて、N2ベクターを基礎にしている(Keller et al.,Nature 318:149-154,1985)。手短にいえば5’及び3’ EcoRI LTR断片(それぞれ 2.8及び1.0kb)(Armentano,J.Vir.61:1647,1987;Bglitis,Science 230:1395,1985)を最初にプラスミドSK+(Stratagene,San Diego,CA)及び pUC31のEcoRIVにサブクローニングする、 pUC31は、ポリリンカーのEcoRI及び SacI間に別の制限部位(XhoI,BglII 及び NcoI)を保有するpUC19(Stratagene San Diego,CA)の修飾体である。それによりSK+ プラスミドと1.0kb 3’LTR断片との結紮からプラスミドN2R3+/−を作る。プラスミド p31N2R5+/−及びp31N2R3+/−は、それぞれpUC31と2.8kb 5’LTR 及びパッケージングシグナル(Ω)又は1.0kb 3’LTR 断片との結紮から構築される。各々の場合、N2はベクター源を示し、Rは断片がEcoRI断片であるという事実を示し、5及び3は、5’又は3’LTRsを示し、そして+又は−は挿入体の配向を示す(LTRサブクローンの例に関しては図1〜6参照)。
【0152】
ある場合には、1.2kb ClaI/EcoRI 5′LTR及びN2からのφ断片をSK+ ベクターの同一部位にサブクローニングする。このベクターをpN2CR5と呼ぶ。いま一つの場合、スプライスドナー配列の6bp欠失を含有する5′LTR(Yee et al.,Cold Spring Harbor,QuanLitative Biology,51:1021,1986)を1.8kb EcoRI断片として pUC31中にサブクローニングする。このベクターをp31N25Δ〔+〕と呼ぶ(図6)。
【0153】
B. HSVTK及び HIVプロモーターを含有するプラスミドの構築
HS部位−1チミジンキナーゼ遺伝子(HSVTK)のコード領域及び転写終結シグナルを、pBR322(ATCC No.31344)中にクローニングしたプラスミド322TK(HS部位−1(McKnight等)の3.5kb BamHI断片)から1.8kb BglII/PvuII 断片として単離し、そしてBglII/SmaI消化 pUC31中にクローニングした。この構築物を pUCTKと呼ぶ。ターミネーターシグナルの欠失を要する構築物のために、pUCTKをSmaI及びBamHIで消化し、(A)nシグナルを含有する 0.3kb断片を除去した。以下のオリゴマーから作られる二重鎖オリゴヌクレオチドで残りのコード配列及び付着端BamHIオーバーハングを再構築する:
【化1】

【0154】
その結果生じる構築物を pTKΔA(図7)と呼ぶ。
【0155】
診断のために、オリゴ体は SmaI部位を破壊するよう意図され、一方翻訳タンパク質を変えずに AvaI部位を保持する。
【0156】
HSVTKプロモーター及びコード配列((A)nシグナルを欠く)を含有するプラスミド pTKΔA(図8)を以下のように構築する。
【0157】
1. pTKΔAをアルカリ性ホスファターゼで処理したBglIIで線状化し、ゲル精製する。
【0158】
2. HSVTK翻訳プロモーターを含有した0.8kg断片をp322TKからBamHI/BglII断片として単離する。
【0159】
3.(1)及び(2)からの生成物を結紮し、細菌中に形質転換して、プロモーター領域の適切な配向に関して陽性クローンをスクリーニングする。その結果生じるクローンをpPrTKΔA(図8)と呼ぶ。
【0160】
0.6kb HIVプロモーター配列をpCV-1(Arya et al.,Science 229:69-73,1985)からのDraI/HindIII 断片としてHincII/HindIII-切断 SK+中にクローニングする。その結果生じる構築物を pSKHLと呼ぶ。
【0161】
C.構成プロモーターからの HSVTKを発現するレトロウイルスプロベクターの構築
レトロウイルスプロベクター pTK-1,pTK-2及び pTK-3を、本質的には下記のように構築する: 1.5kb XhoI/HindIII 5’LTR及びプラスミド配列をp31N2R5(+)(図1)から単離する。
【0162】
2.転写終結配列を欠く HSVTKコード配列を 1.2kb XhoI/BamHI断片としてpTKΔA(図2)から単離する。
【0163】
3.3′LTR 配列を1.0kb BamHI/HindIII 断片としてpN2R3(−)(図2)から単離する。
【0164】
4.工程1〜3からの断片を混合し、結紮して、細菌中に形質転換し、個々のクローンを制限酵素分析により同定する。構築物をTK1(図9)と呼ぶ。
【0165】
5. pTK 3をBamHIでTK-1を線状化することにより構築し、5’オーバーハングに充填し、細菌 lac UV5プロモーター、S部位40初期プロモーター+pAFVXMレトロウイルスベクターから得られた Tn5Neo’遺伝子を含有する5’充填ClaI/ClaI断片を盲端結紮する(Krieger et al.,Cell 39:483,1984;St.Louis et al.,PNAS 85:3150,1988)。カナマイシン耐性クローンを単離し、個々のクローンを適切な配向に関して制限酵素分析によりスクリーニングする(図9参照)。
【0166】
本質的に下記のように pTK 2を構築する(図10参照): 1.プラスミドp31N2R5(+)(図1)をXhoI及びHindIIIで切断する。
【0167】
2. HSVTKコード配列(その(A)n配列を欠く)を含有する2.0kb 断片及び HSVTK転写プロモーターを XhoI/ HindIII切断 pPrTKΔ(図8)から単離する。
【0168】
3.3’LTRを 1.0kb断片としてBamHI/HindIII 断片pN2R3(−)(図2)から単離する。
【0169】
4.上記の1,2及び3からの断片を結紮し、細菌中に形質転換して、適切な構造のamp’クローンを制限酵素分析により同定する。
【0170】
これらの構築物を用いて感染性組換え体ベクター粒子をパッケージング細胞株とともに生成する。
【0171】
D.pKTVIHAXの構築
レトロウイルスベクターpKTVIHAXを本質的に下記のように構築する(図11参照)。
【0172】
1. 9.2kb AsuII/XhoI断片をN2ベクターDNAから単離する(Keller et al.,Nature 318:149,1985)。
【0173】
2. 0.6kb XhoI/BamHI プロモーター断片を実施例1Bからのプラスミド pSKHLから単離する。
【0174】
3. 0.3kb BglII/AccI及び 1.5kb AccI/AccI断片を実施例1BからのpUCTKから精製する。
【0175】
4.1,2及び3からの断片を結紮し、細菌中に形質転換して、既知の構造を有する適切なアンピシリン耐性クローンを制限酵素分析により同定する。
【0176】
E.pKTVIH-5及び pKTVIH5 Neoレトロウイルスベクターの構築
レトロウイルスベクターpKTVIH 5及び pKTVIH5 Neoを本質的に下記のように構築する(図12参照)。
【0177】
1.5’LTR 及びベクター断片を、 4.5kb XhoI/BamHI断片としてベクターp31N25Δ (+)(図6)から単離する。
【0178】
2.3’LTR を1.0kb ApaI/BamHI断片としてpN2R3(+)(図4)から単離する。
【0179】
3. 0.6kb HIVプロモーター要素をApaI/EcoRI断片として実施例1Bから単離する。
【0180】
4. HSVTKコード配列及び転写終結配列を1.8kb EcoRI/SalI断片として実施例1BからのpUCTKから単離する。
【0181】
5.1〜4からの断片を併合し、細菌中に形質転換して、所望の構造のクローンを制限酵素分析により同定する。構築物をpKTVIH-5(図12)と呼ぶ。
【0182】
6. pKTVIH5をClaIで線状化し、細菌lac UV5プロモーター、SV40初期プロモーター及びpAFVXMから得られるTn5Neo′マーカーを含有する1.8kb ClaI断片と混合して、結紮し、細菌を形質転換し、カナマイシン耐性に関してスクリーニングして、プラスミドpKTVIH5Neoを構築する。指示された配向に挿入物を有するクローンを制限分析により同定する(図12)。
【0183】
F. MHMTK Neoレトロウイルスベクターの構築
レトロウイルスベクター MHMTK Neoを本質的に下記のように構築する(図14参照)。
【0184】
1.中間生成物プラスミド MHM-1 LTRの構築 a)実施例1AからのプラスミドpN2CR5を FokIで消化して線状化し、クレノウ DNAポリメラーゼを用いて5’オーバーハングをデオキシヌクレオチドトリホスフェートで充填し、HindIIIリンカーを挿入する。細菌に形質転換後、MLV LTRFokIVに挿入したHindIIIリンカーを有するクローンを、制限酵素分析により同定する。このプラスミドをpN2CR5FHと呼ぶ。
【0185】
b)プラスミドpN2CR5FHを NheIで線状化し、クレノウポリメラーゼで5′オーバーハングを充填し、HindIIIで消化し、プロモーター無含有 LTR配列の 4.3kb断片を単離する。
【0186】
c)0.5kb EcoRI/HindIII HIV プロモーター配列を実施例1Bからの pSKHLから単離する。
【0187】
d)b及びcを混合し、結紮して、細菌中に形質転換するのに用い、MHM-1の構造を制限酵素分析により確証する(図13参照)。
【0188】
2. MHM-1から単離した0.7kb EcoRV/BalI断片を修復し、プラスミドI30BのEcoRV部位にサブクローニングする。I30Bは、ポリリンカー中に付加的 BglII,BstII,NcoI及び NdeI部位を含有する修飾化 IBI30プラスミドである。細菌に形質転換後、所望の配向のクローンを制限腔嘘分析により同定する。この構築物をpMHMBと呼ぶ。
【0189】
3.プラスミド pMHMBを ApaI及び XhoIで消化して、 0.8kb断片(3’LTR として用いられる)をゲル精製する。
【0190】
4. MHM-1 LTRを ApaI/BamHIで消化し、1.8kb MHM-1 LTR(図13)パッケージング配列をゲル精製する。
【0191】
5.SV40初期プロモーター駆動 Neo’の上流の HSVTKコード領域を含有する 2.8kb BglII/ SalI断片を pTK-3から得る(図9参照)。
【0192】
6.3〜5をと混合し、結紮して、細菌を形質転換するのに用い、所望のクローンを制限分析により同定する。
【0193】
このベクター及びそれらの LTRに誘導要素を含有する同様のベクターは、安全性を付加する。要するにLTRはHIVの非存在下では不活性であるため、望ましくない宿主遺伝子(例えばプロト腫瘍遺伝子)の挿入性下流活性化は起きない。しかしながらパッケージング細胞株における tat発現は、組織培養におけるビリオンの操作を楽にする。
【0194】
G. RRKTVIHレトロウイルスベクターの構築
レトロウイルスベクターRRKTVIHを本質的に下記のように構築する(図17参照)。
【0195】
1. 9.2kb AsuII/XhoI断片をN2ベクター DNAから単離する(Keller et al.,Nature 318:149,1985)。
【0196】
2. 0.6kb XhoI/BamHI プロモーター断片を実施例1BからのプラスミドpSKHLから単離する。
【0197】
3.HIVrev反応性HSVTK(RRTK)を以下の方法で構築する:
a) HSVTK遺伝子を1.8kb HincII/PvuII 断片としてベクターSK+ のEcoRV部位にサブクローニングする。この構築物をpSTK(−)(図15)と呼ぶ。
【0198】
b) HIV IIIBenvからのCRS/CAR 要素を含有する 1.8kb KpnI/HindIII断片を修復し、ベクターI30Bの SmaI部位に盲端結紮する。この構築物をpCRS/CAR(−)と呼ぶ。I30Bは、pUC31と同じ付加的制限部位を含有する修飾IBI30プラスミドで、IBI30XhoI部位の代りに NdeI部位を有する。
【0199】
c)ベクター及び HSVTKポリアデニル化シグナルを含有する3.6kb BssHII/EcoRI断片をpSTKから単離する。
【0200】
d)1.8kb BamHI/BssHII CRS/CAR 断片をpCRS/CAR-(図16)から単離する。
【0201】
e)1.2kb EcoRI/BamHIコード配列断片をpTKΔA(図7)から単離する。
【0202】
f)c,d及びeを結紮し、所望の組換え体ベクター構築物を制限酵素分析によりスクリーニングする。
【0203】
4. Rev反応性 HSVTKを3.6kb EcoRI/ClaI断片として単離する。
【0204】
5.1,2及び4を結紮し、適切な組換え体を制限酵素分析により同定する。
【0205】
H. tat及び抗 tat発現ベクターの構築
発現ベクター tat及び抗 tatを本質的に下記のように構築する(図18参照)。
【0206】
これらのベクターを擬 HIVとして用いてtat依存性 HSVTKベクターを試験活性化する。
【0207】
1. His’発現ベクター pBamHisをBamHIで線状化し、ウシ腸アルカリ性ホスファターゼで処理する。
【0208】
2. pCV-1(Arya et al.,Science 229:69-73,1985)の SacI部位を突然変異化してBamHI部位とし、HIVtatの350bp BamHIコード配列を単離する。
【0209】
3.工程1及び2で精製した断片を混合し、結紮して、細菌を形質転換するのに用い、両配向で tatを有するクローン(tat又は“アンチセンス”tatを発現する)を制限酵素分析で同定する。
【0210】
これらの構築物を用いて、本質的に以下のようにして、パッケージング細胞株、例えばPA317(ATCC No.9078)とともに感染性組換え体ベクター粒子を生成する。要するに10μgのプラスミドプロベクターをφ2細胞上でのリン酸カルシウム沈降によりトランスフェクトさせて、上清を用いて PA317を感染させる。これらのベクターは一般に安定で、感染細胞の個々のクローンからの制限酵素消化ゲノム DNAのサザーンブロット分析で判定した場合に予測可能なプロウイルス構造を生じる(試験した39/40クローンが予測したサイズのプロウイルスを有した)。
【0211】
実施例2 ベクター構築物のパッケージング
これらのレトロウイルスベクターの生物学的特性を以下に記載する。HIV tat遺伝子(“tathis”ベクター:図18参照)をマウスPA317細胞中にトランスフェクトする。5つの個々のヒスチジノール耐性サブクローンを生成し、THI-5と名付けたが、これらはHIVtatを発現する。これらの細胞はしたがってHIV感染細胞の実験的見積もりである。 次いでベクターKTVIHAX(実施例1Dから)、KTVIH5Neo(実施例1Eから)及びMHMTKNeo(実施例1Fから)をこれらの tat発現細胞株並びにtatを欠いたその親細胞株への感染により導入する。次に細胞生育能力を種々の濃度のHSVTK特異的細胞毒性剤acyclovir(ACV)で確定する。データはここではLD50(50%毒性が観察される薬剤濃度)として報告し、生育可能細胞対 ACV濃度のグラフに内挿した。HSVTKを含有するがしかし tatを欠いた親細胞株(非 HIV感染モデル)は、試験濃度ではACVによる検出可能な毒性を示さなかった。したがってこれらの細胞は細胞毒性に関しては100μM又はそれ以上の ACVを要する。これは、ベクターを欠いたこれらの細胞に関して真実である。したがってベクター単独、ACV単独、又はベクター+ACV でさえも細胞毒性を示さない。
【0212】
しかしながらHIVtatを発現する(HIV感染の実験的表出)細胞株は、ACVに有効に殺される(図19)。これは、試験した3つのベクター全てに関する程度を変えるのが正しい。これらのデータは、HIV感染細胞が ACV及び“ポテンシエイター”ベクターの存在下で殺されることを示す。
【0213】
同様の実験では、ベクターKTVIHAX及び KTVIH5Neoを、ヒトT細胞及び単核球細胞株 Sup T1(Science 234:1123),H9,HL60(ATCC No.CCL240),H9(ATCC No.HTB176)及びU937(ATCC No.CRL1593)細胞への感染により導入する。次にこの細胞をtathis又は抗 tatベクターに感染させて、ヒスチジノール中で選択し、種々の濃度の ACV類似体 フルオロ−ヨード−アラビノシド−ウリジン(FIAU)で細胞生育能力を確定する。表1(下記)に報告したLD50は、FIAU中でのベクター依存性増大がHistatの非存在下で起きたが、しかしtatが存在する場合にはさらに10倍〜20倍増大することを示す。これは、HL60細胞以外の全てで基準HSVTK発現が認められるが、しかし発現はHIVtat存在下ではより大きくさえある。HSVTKベクター単独を付加しても、HIVtatの非存在下ではHL60における ACV毒性の検出可能な増大は認められなかった。
【表1】

【0214】
同様に、HSVTKベクターKTVIHAX+/−FIAUを含有するヒトT細胞株H9の HIV感染は、FIAUの存在下で感染の5倍の選択的阻害(細胞死による)を示す。培養を先ずベクターで処理し、次いで HIVを用いて(FIAU含有又はなしで)4日間試験する。次にウイルス上清を、下記の可溶性アルカリ性ホスファターゼ検定を用いて滴定する。
【0215】
可溶性アルカリ性ホスファターゼ検定
培地を感染細胞から除去し、10秒間微小遠心分離して、次に68℃に10分間加熱して、内生的ホスファターゼを破壊した。次いで培地を2分間微小遠心分離して、検定のためにアリコート(10〜50μl)を取り出した。緩衝液(1Mジエタノールアミン、pH 9.8;0.5mM MgCl2;10mM L−ホモアルギニン)100μlを加え、その後、120mM P ニトロフェニルホスフェート(緩衝液中)を20μl加えた。反応混合物のA405を自動プレート読み取り機を用いてモニタリングした。
【0216】
図7及び8は、種々の濃度の抗ウイルス剤の存在下でのアルカリ性ホスファターゼ検定を用いたSup T1細胞のHIV感染の時間経過の典型的結果を示す。6日目の“+”及び“−”は、それぞれシンシチウムの存在又は非存在を示す。
【0217】
実施例3 pBH-1及びpMχ-IFN/TKベクターの構築
HSVTK遺伝子を含有する1.2kb断片を得るために、実施例1Gからの pRRTKを XhoI及びBamHIで消化する。この断片を、ポリリンカー中に見出される XhoI及びBamHI制限部位でpSP72(Promega Corp.,Madison,WI)に結紮する。このプラスミドを pRRTK Bと呼ぶ。pRRTK-Bを XhoI及び ClaIで消化して、 HSVTK遺伝子を含有する1.2kb 断片を得る。次に、 XhoI及び ClaI部位で消化後に、この断片をKT3(このベクターの構築物はWO 91/02805に記載されている)に結紮する。ゲル精製によりKbHIVgag/prot断片を取り出す。このプラスミドを pBH1と呼ぶ。
【0218】
実施例4 DA/TK-3,DA/BH-1,DA Mχ-IFN/TK及びHA Hχ-IFN/TKの構築
プロデューサー細胞株
pTK-3DNA(図9)10μg及びpMLP-G DNA(このベクターの構築物は WO 92/14829 に記載されている)10μgを、標準CaPO4を用いて293 2 3(293細胞(ATCC No.CRL 1573,WO 92/05266)に由来する細胞株)にトランスフェクトする。48時間トランスフェクション後、上清を収集し、0.45μmの円筒濾紙を通して濾過する。この上清は、新たに調製されたDA(D 17 ATCC No.CCL 183,WO 92/05266 由来の細胞株)細胞を感染させるのに用いられるG−擬似型TK-3ベクターを含有する。ウイルス上清付加後24時間目にDA細胞をG-418選択(800μg/ml)下に置く。7〜9日後、G-418選択非クローン性プールが得られ、これをDA/TK 3と呼ぶ。ベクターがHSVTKを発現する最高力価に関して個々の単離物を限定希釈クローニング及びスクリーニングにより高力価クローンを同定する。これは、3 T3 TK- 又は Hela TK- のような細胞チミジンキナーゼを欠いた細胞株を形質導入し、細胞をゲネチシン及び HAT培地中に入れるすることにより Neoコロニー形成を測定して達成し得る。これらの条件下で成長するコロニーの数は、 Neo及び HSVTKを発現する形質導入細胞の数を反映する。
【0219】
DA/BH-1 VCLはDA/TK-3と同様に生成されたが、pTK-3の代わりに pBH-1が入る。mχ−IFN 及びhχ IFNに対する VCLの生成は、ベクターが容易に選択可能な薬剤耐性マーカー(例えばNeo)を含有しないという事実によると考えられる。HSVTKに対する唯一の公知の選択は、内生的TKを欠いた(TK−)細胞を含有する HAT培地を用いる。mχ−IFN及びhχ−IFN のようなプロベクターに対するVCLsを生成する方法がある。
【0220】
1. VCLを生成するために用いられるPCLは、TK−である。例えばDA細胞(TK+)はプロモデオキシウリジンの存在下で増殖し得る。このヌクレオチド類似体は、特にTKを発現する細胞に対して有毒で、したがってDHのTK遺伝子における滅多にない突然変異体が培養のために選択される。この突然変異体の頻度は、UV又はX線照射といった物理的手段により、又は化学的突然変異原への曝露といった化学的手段により突然変異誘発前までに増大する。DAのTK変異体が一旦生成されると、mχ−IFN 又はhχ−IFN のようなベクターで形質導入された細胞が HAT培地中に選択される。
【0221】
2.相対的に低レベルの内生的TKを含有し、相対的に高レベルでベクター HSVTKを発現し得るTK+細胞の選択がいくつかの細胞で考え得る。非常に活性の高い転写プロモーターを用いて HSVTKが発現される、例えばプロモーター直前の LTR又は CMVから発現されるTKの場合には、これは特に確かである。この場合、標準レベル以下のチミジンを含む修飾 HAT培地は、形質導入細胞を HAT培地のアイニノペルテリンから選択的に救出する。
【0222】
3. HSVTKの基質特異性が細胞性TKの場合よりも広いために、 HSVTKを発現する細胞の選択は、細胞TK(“ドメイン選択)を発現する細胞においてさえ生じ得る。この差異は、Eco gpt(Stuhlmann et al.,PNAS 81:7151,1984)の選択に用いたのと同様の選択培地を用いて HSVTKを選択するのに活用し得る。この洗濯培地は、ミコフェノール酸(Sigma Chem.Co.,St.Louis,MO)を利用して、細胞死を引き起こすプリンヌクレオチド生合成を阻害する。細胞が HSVTKを発現する場合、プリンヌクレオチド、例えばキサントシンを HSVTKによりリン酸化して、AMP 及び GMPの両方の前駆体である XMPを産生する。したがって HSVTKを発現する細胞は、Eco gpt選択に用いられるのと同一(キサンチンの代わりにキサントシン)培地中で選択し得る。
【0223】
4.VCLsは、HSVTK遺伝子以外のベクター遺伝子の発現に対する選択により生成し得る。例えば膜結合タンパク質を発現するベクター(KT1/KT)を含有する VCLは、蛍光活性化細胞分類により分類される。あるいはhχ−IFN 形質導入VCLsは、MHCクラスI及びクラスIIの公知の増大により分類し得る(PCLがヒトであるかぎりは、χ−IFN は高度種特異的であるため)。
【0224】
5.さらにクローン性VCLsは、選択の非存在下で生成し、同定し得る。このアプローチは、上記のように 293 2-3で生成去れるVSVG擬似型化ベクターを用いたが、但しDA細胞は高M.O.I.で形質導入する。例えば一時的トランスフェクションにより生成されるベクター1ml(3T3TK−で約1xlO5cfu/ml)を用いて1x104個の細胞を1回、3回又は10回形質導入して、多数の細胞が少なくとも1回の培養で形質導入されるのを確実にする。次に限定希釈により細胞をクローニングし、HAT培地中で 3T3TK−細胞(又はキセノ向性ベクターの場合は Hela TK−)の高力価に関して個々の単離物をスクリーニングする。
【0225】
実施例5 TK-3を含有する場合又は含有しない場合のCT26に及ぼすganciclovirの作用の測定
DA/TK 3で形質導入したCT26細胞(CT26 TKneo)にGanciclovirが作用を及ぼすか否かを調べるために、CT26TKneo細胞を6つの10cm2プレートに2.5x106/プレートで植え付けた。対比した場合、2つの他の細胞型 CT26及びCT26Bgal(この細胞株は大腸菌からの受容体遺伝子βガラクトシダーゼを保有するウイルスで形質導入された)を各々、対照として6つの10cm2プレートに植え付けた。各細胞型の5つのプレートを1日2回、4連続日間、100μg/ml,50μg/ml,25μg/ml,12.5μg/ml及び6.25μg/mlの濃度のganciclovirで処置した。各細胞型の1つのプレートは未処置のままにしておいた。その後、トリプシン処理して各皿から細胞を取り出し、10% FBSを含有するDMEMに再懸濁して、計数した。図22に示したデータは、最低用量のganciclovirでも CT26TKneo細胞に劇的な細胞毒性作用を及ぼすことを示す。この用量(6.25μg/ml)又は次に高い用量(12.5μg/ml)のganciclovirでもCT26及びCT26Bgal細胞に作用しなかった。しかしながら25μg/mlの用量で開始すると、細胞成長に用量依存性減少が認められたが、しかしCT26TKneo細胞は常に薬剤に対して感受性がより高かった。
【0226】
実施例6 CT26TKNeo 細胞を注入されたマウスの治療のためのganciclovir用量の確定
ネズミ腫瘍のin vivo形質導入を用いて疾患を治療し得るか否かを調べるために、形質導入され、100%形質導入を保証するためにin vitro選択された腫瘍を排除するのに必要なganciclovirの最適濃度を確定するための実験を実施した。
【0227】
結腸腫瘍26即ちCT26(Brattain,Baylor College of Medicine,Houston,TX)細胞をG擬似型TK-3ベクターて形質導入した。ウイルス上清を付加後24時間目に G-418選択(450μg/ml)下に置いた。10日間インキュベーション後、 G-418選択プールを得て、CT26TKNeoと名付けた。各3匹12群のマウスに2x105 CT26TKNeo細胞を注入した。6群のマウスにこれらの細胞を腹腔内(I.P.)注入し、6群のマウスには皮下(S.C.)注入した。各3匹の他の2群にはI.P.又はS.C.で2x105 個の未修飾CT26細胞(対照として)を注入した。
【0228】
CT26又は CT26TKNeo細胞のこれらの群のマウスに注入後10日目に、いくつかの濃度のganciclovir治療を開始した。各投与レジメンは、1日2回午前と午後にganciclovirをI.P.注入するものであった。実線を下の表Aに要約する。
【0229】

【0230】
5日後に、125mg/kg、 250mg/kg及び 500mg/kg処置群のマウスすべてが、 ganciclovirの毒性作用のために死亡した。15.63mg/kg, 31.25mg/kg及び62.5mg/kg処置群のマウスはさらに7日間処置され、治療に耐容できた。23日目に腫瘍測定をおこなった(図23)。 CT26TKNeoは未修飾CT26より僅かにゆっくり増殖しただけであった。完全腫瘍退行は、62.5mg/kgレジメンで処置したマウスの群に認められた。部分的腫瘍退行は、 31.25mg/kg処置群に観察された。2つの未処置対照群と比較した場合、 15.63mg/kg処置群では作用は殆ど又は全く認められなかった。62.5mg/kg群では多少の毒性が観察されたけれども、生命を脅かすものではなく、治療を中断すると元に戻ったので、この濃度を用いてさらに調べた(図23)。24日後、I.P.注入動物を屠殺し、評価した。図24及び25に示すように、抗腫瘍作用に関する最適濃度は腫瘍がI.P.で増殖したか又はS.C.であったかにかかわらず同様であった。
【0231】
実施例7 CT26及び CT26TKNeoにおける細胞毒性の比較
in vivo腫瘍成長
Ganciclovirが in vivoで未修飾CT26腫瘍細胞の成長に作用を及ぼすか否かを調べるために、各7匹の2群に2x106 個の未修飾CT26細胞をS.C.注入し、各7匹の2群には2x105 個の未修飾 CT26TKNeo細胞をS.C.注入した。腫瘍を植え付けて数日後に、CT26注入マウスの1群及び CT26TKNeo注入マウスの1群に、62.5mg/kgでのI.P.ganciclovirの1日2回(午前と午後)レジメンを施した。これらのマウスを12日間、又は CT26TKNeo注入動物が検出可能な腫瘍の苦しみを示さなくなるまで、処置した。3週間に亘って腫瘍成長をモニタリングした。CT26を注入し ganciclovirで処置したマウスはCT26を注入した未処置マウスよりもいくぶん小さい腫瘍を有したが、これは腫瘍成長のHSVTK非依存性阻害が小さいことを示す(図26)。しかしながら CT26TKneo含有マウスを ganciclovirで処置した場合に、そしてこの場合にのみ、腫瘍の苦しみの劇的減少が観察された(図26)。
【0232】
実施例8 CT26腫瘍細胞注入マウスへのβ−GAL 直接ベクターの注入
ベクターの直接注入により腫瘍細胞が in vivo形質導入去れたか否かを査定するために、大腸菌β ガラクトシダーゼ遺伝子を発現するリポーターベクター(CB β−gal)を用いた。各2匹の5群に2x105 個のCT26腫瘍細胞をS.C.注入した。各2匹の別の群には、β−gal染色の対照として、2x105 個のCT26β−gal 発現細胞を注入した。各マウスの注入領域を耐水性マーカーで丸く印を付けた。腫瘍細胞接種2日後、マウスに PBS+ポリブレン(4μg/ml)、ポリブレン含有又は無しの場合のCBβ−gal(5x106 コロニー形成単位(CFU)ml)、あるいはポリブレン含有又は無しの場合のDAhχ−IFN#15を注入した。各群のマウスにそれぞれの接種物を2日毎に耐水性マーカーで印を付けた領域内に注入した。各群は、合計4回の注射を受けた。最終注射の2日後、各群のマウスの腫瘍を取り除き、細かく切って、DMEM+10% FBS及び抗生物質を含有する10cm2の2つのプレートに植え付けた。これらの腫瘍外植片をin vitroで1週間増殖させた。1週間後、細胞を収穫し、2%ホルムアルデヒドで固定して、X-galで一夜染色した。この実験の結果を以下に示す。
【0233】

【0234】
一夜染色により、未修飾CT26又は染色対照としてhχ−IFN ベクターを注入したCT26(3%)の実質的バックグラウンド染色が認められた。これらの条件下で、最大正味量17%の細胞が染まった(20分 3%バックグラウンド)。陽性対照(100%形質導入)は28.6%染まっただけで、17%染色は(17/28.6)x100又は60%の細胞が in vivoで形質導入されたことを示す。形質導入された腫瘍細胞は対数相であり、したがって複数同感染(M.O.I.)は腫瘍成長に伴って減少するということに留意することは重要である。この実験からのこれらの結果を用いて、次の実験を計画した。
【0235】
実施例9 TK-3直接ベクターによるCT26腫瘍細胞の in vivo形質導入
TK-3ベクターが in vivoで標的細胞に HSVTK遺伝子を供給し、ganciclovirの存在下で腫瘍成長を阻害し得ることを調べるために、本実験を計画した。要するに、各10匹の6群に1x105 CT26腫瘍細胞をS.C.注入した。さらに各10匹の1群に、対照として1x105 CT26TKNeo細胞をS.C.注入した。S.C.注入領域を耐水性マーカーで丸く印を付けた。腫瘍接種24時間後、ポリブレン(4μg/ml)とともに処方したTK-3又はβ−gal ウイルス上清を耐水性マーカーで印を付けた領域内に注入した。1日1回のベクター投与を4連続日間継続した。各ベクター用量は、2x105CFU/mlを含有した。最終ベクター処置の24時間後、これらのマウスに8日間、1日2回(午前と午後)、62.5mg/kgで ganciclovirをI.P.注入した。最後に、実験終了まで、62.5mg/kgのganciclovirをマウスに1回投与した。
【0236】
4週間に亘って腫瘍成長を測定した(図27)。実験を下記の表Bに要約する。
【0237】

【0238】
データは、動物にTK-3及びganciclovirを注入した場合にのみCT26の相当率の成長が生じたことを示す。阻害レベルは、in vivo 100%未満形質導入のために、in vitroで形質導入され、選択されたCT26に関して観察されたものほど大きくはなかった。意外にも、対照ベクター、CB−β−gal及びganciclovirで処置した場合に腫瘍成長の低減が認められた。これは、付加された上清無含有ベクターによる腫瘍成長の何らかの阻害を示し、ganciclovir単独により引き起こされる小減少は予め観察された(図26)。観察にかかわらず、平均腫瘍サイズはCB−β−gal/ganciclovir 処置動物よりもTK-3/ganciclovir 処置動物で有意に小さかった(それぞれ14及び21日の時点で7倍及び10倍及び75倍小さい)。したがって HSVTK発現レトロウイルスベクターの直接注入による in vivo形質導入は、ganciclovir投与と組み合わせて腫瘍成長の阻害を引き起こすと思われる。
【0239】
ベクターの直接注入を用いた問題の遺伝子のin vivo供給の他に、DAのような PCLからのベクタープロデューサー細胞株を腫瘍中に又は腫瘍周囲に(あるいはその両方に)注入することによりマウスを処置し得る。種々の数の照射又は未照射ベクタープロデューサー細胞を、ポリ陽イオン試薬とともに又は伴わずに注入して形質導入効率を改良し得る。対照マウスにはTK-3及びCB−β−gal VCL で形質導入した希釈D17(親非PCL)を注入した。十分時間を掛けて invivo形質導入(約2週間)後、ganciclovir注入を開始し、腫瘍測定及び/又は全体生存率により効力を調べた。
【0240】
実施例10 耐性マーカー以外の随伴遺伝子を含有するHSVTKベクターの構築
HSVTKのような条件致死遺伝子を含有する不全−安全能力を伴うレトロウイルスベクターを設計する目的は、患者に投与された後に、治療遺伝子の発現を制御させることである。単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子を発現する細胞はganciclovirに感受性になり、一方正常細胞は影響を受けない(Moolten et al.,Cancer Res.46:5276,1986)。治療遺伝子が発現される時間の長さは、修飾細胞が有害になった場合には限定されるか打ち切られる。
【0241】
ベクターによるHSVTKの発現は、感受性(例えばベクター産生細胞株における ganciclovirに対する)を付与する。VCLがin vivo形質導入のために直接注入された場合、それらは次いでその目的達成後にganciclovirに破壊される。
【0242】
A. HIV III/Benv及びHSVIチミジンキナーゼを発現するレトロウイルスプロベクターpKT1 TKの構築
先ずTK-2を XhoIで消化し、その後クレノウ処理して、子牛腸アルカリ性ホスファターゼで脱リン酸化することにより、レトロウイルスプロベクター pKT1-TKを構築した。処置線状化TK-2を次にリン酸化ClaIリンカーと結紮し、その後細菌を形質転換した。制限酵素分析により正しい個々のクローンを同定し、TK-2と名付けた(ClaI(図10))。TKプロモーター及びTKコード配列の両方を含有する2.0kb ClaI断片を次に手 K-2から単離した(ClaI)。ClaIで消化し、その後子牛腸アルカリ性ホスファターゼで処理して、1%アガロースゲル上でゲル精製して、HIV IIIBenvを含有するKT1レトロウイルスベクター(RecombinantRetrovirusesPatent Application#586,603)を調製した。TK 2からの 2.0kb単離 ClaI断片を次に前処理KT1ベクターと結紮し、細菌中に形質転換して、制限酵素分析により正しい個々のクローンを同定した。その結果生じたレトロウイルスベクターをKT1-TKと名付けた(図28参照)。もちろん他のプロモーター、例えば CMV直前プロモーターをHSVTKプロモーターの代わりに用い得る。この性質のベクターを用いて、HIVenvに対する免疫反応を誘発し得る一方、ganciclovirの投与により何時でも形質導入細胞を破壊し得る。
【0243】
B. HBVコア遺伝子及びHSVIチミジンキナーゼを発現するレトロウイルスプロベクターpKTHBc/TKの構築
pKT1-HBc“Neoless”プロベクターDNA(1993年8月4日提出の米国特許出願第08/102,132号参照)をClaIで切断してレトロウイルスプロベクター pKT-HBc/TKを生成した。次にこれをpTK-2(ClaI)からの2.0kb ClaI断片と結紮し、細菌の形質転換に用いて、個々のクローンを正しい配向に関してスクリーニングした(図29参照)。
【0244】
C.それぞれヒト又はネズミχ IFN及び HSVTK遺伝子を発現するレトロウイルスベクターphχTK及びpmχTKの構築
レトロウイルスプロベクターpmχTK及びphχTKを、以下の工程で生成した。
【0245】
1. pKT-1をClaIで切断した。線状プラスミドを次に子牛腸ホスファターゼ(CIPで処理して、ClaI部位でホスホリル部分を取り出した。フェノール:クロロホルム抽出によるCIPの抽出後、プラスミドをXhoIで切断した。その結果生じたpUCベクター5’及び3’LTRs及びパッケージング配列を含有する5kb断片を小HIVenv及びSVNeo’断片からゲル精製した。
【0246】
2.プラスミドpSP72mχ−IFN 又はpSP72hχ IFN(1993年3月17日提出の米国特許出願第08/032,846 号 参照)をそれぞれClaIで切断後に、ネズミ又はヒトχ−IFN に関するコード配列をゲル精製した。次に線状化プラスミドをCIPで処理してClaI部位からホスホリル部分を取り出した。フェノール:クロロホルム抽出によるCIPの抽出後、プラスミドをXhoIで切断し、その結果生じた0.5kb断片をゲル電気泳動で精製した。
【0247】
3. HSVTKプロモーター及びコード領域をClaI切断pTK-2(ClaI)から単離した。
【0248】
4.1,2及び3をよく混合し、結紮して、細菌の形質転換に用い、プラスミドをクローニングして、クローン性形質転換体をHSVTKプロモーター/遺伝子の適切な配向に関してスクリーニングした(図30参照)。
【0249】
実施例11 TKベクター及び ganciclovirで処置したマウスにおける免疫反応の誘発
A.TKレトロウイルスベクター構築物の構築
単純ヘルペス1型ウイルスのチミジンキナーゼをコードする原遺伝子は、プラスミド 322TKからの1.8kb BglII/PvuII断片であった(McKnight et al)(実施例1参照)。5’プロモーター及び3’ポリアデニル化シグナルを取り出し、遺伝子をさらに修飾して5’ XhoI部位並びに3’ClaI部位を有した。この新規の修飾HSV-TK遺伝子を次に、gag発現を阻害するために ATTに対して突然変異を起こさせた gag発現に対する正常 ATGメチオニンイニシエーターコドンを有するMoloney Murine LeukemiaVirusから得たN2ベースのベクター骨格のXhoI及びClaI部位にクローニングした(BHI-TK構築物)。
【0250】
レトロウイルス LTRはHSV-TK遺伝子の発現を制御し、下流SV40プロモーターはネオマイシン耐性マーカーの発現を駆動する。これらのベクターを、本質的には実施例4と同様に、パッケージング細胞(DA及びHX。WO 92/14829 参照)に導入した。
【0251】
B.細胞毒性検定
ネズミ脾臓エフェクター細胞に関する 51Crm放出細胞毒性検定を以下のように実施した。要するに、CT26TKを注入し、ganciclovirで処置したマウスにおける完全腫瘍切除後種々の時間に、マウスを屠殺し、脾臓細胞(3x106 /ml)を未修飾照射CT26細胞(6x104/ml)とともに T-25cm2フラスコ(Corning,Corning,NY)中で invitro培養した。培地は RPMI-1640、5%加熱不活性化ウシ胎児血清(Hyclone,Logan,UT)、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、1x非必須アミノ酸、10mM HEPES、ゲンタマイシン(50mg/ml)、及び2−メルカプトエタノール(10-6M)で構成された。エフェクター細胞を4〜7日後に収穫し、幾つかのエフェクター:標的比(E:T 100:1,30:1,10:1,3:1及び1:1.各比率は3通りウエルに用意した)を96ウエル微小滴定プレートに入れて標準4−6時間検定に用いて試験した。検定は、最終容積 200ml中にNa251 CrO4(Amersham,Arlingtyon Heights,IL)−標識化CT26又はCT26TK標的細胞(1x104 細胞/ウエル)を用いた。インキュベーション後、検定培養上清を採集し、特異的51クロミウム放出(計数/分)に関して Beckmanガンマ分光計を用いて検定した。標的1培地からの1分当たりの計数として自発性放出を測定し、典型的には最大放出の10〜20%であった。最大放出値を標的+1M HClからの1分当たりの計数として測定した。パーセント標的細胞溶解を(実験放出−自発的放出)/(最大放出−自発的放出)x100として算出した。
【0252】
C.結果
CT26TK細胞を注入し、 ganciclovirで処置したマウスにおける完全腫瘍切除後に、それぞれの脾臓細胞を収穫し、in vitroで再刺激して、その結果生じたエフェクター細胞を、未修飾CT26又はCT26TK細胞を溶解するその能力に関して分析した。CT26及びCT26TK細胞の両方に対する有意の細胞毒性反応が、CT26TK腫瘍をganciclovirにより取り除かれたマウスから得た脾臓細胞で観察された(図32参照)、一方CT26腫瘍保有マウスからの脾臓細胞をCT26で再刺激すると、極わずかの溶解を示した(図3)。これらの結果は、TKプロドラッグベクター、その後のプロドラッグ自体の導入による腫瘍細胞の除去は、未修飾腫瘍細胞に対する有効且つ強力な CTL反応を生じた。
【0253】
前述のように、本発明の説明のために特定の態様を記載したが、本発明の精神及び範囲を逸脱しないかぎり、種々の修正が成されうる。したがって本発明は、添付の請求の範囲以外には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】図1は、p31N2R5(+)の模式図である。
【図2】図2は、pN2R3(−)の模式図である。
【図3】図3は、p31N25Δ(+)の模式図である。
【図4】図4は、pN2R3(+)の模式図である。
【図5】図5は、pN2R5(−)の模式図である。
【図6】図6は、p31N25Δ(+)の模式図である。
【図7】図7は、pTKΔA の模式図である。
【図8】図8は、pPrTKΔA の模式図である。
【図9】図9は、pTK-1及び pTK-3の模式図である。
【図10】図10は、pTK-2及びpTK-2(ClaI)の模式図である。
【図11】図11は、pKTVIHAXの模式図である。
【図12】図12は、pKTVIH-5及び pKTVIH5 Neoの模式図である。
【図13】図13は、pMHM-1 LTR及び pMHMBの模式図である。
【図14】図14は、pMHMTK Neoの模式図である。
【図15】図15は、pSTK(-)の模式図である。
【図16】図16は、pCRS/CAR(-)の模式図である。
【図17】図17は、pRRKTVIHの模式図である。
【図18】図18は、tathis及びアンチ−tatの模式図である。
【図19】図19は、条件致死ベクターを含有する細胞における ACV毒性の作用を示す棒グラフである。
【図20】図20は、HIV感染に及ぼす ddCの作用を示す棒グラフである。
【図21】図21は、HIV感染に及ぼす AZTの作用を示す棒グラフである。
【図22】図22は、CT26,CT26 βgal 及びCT26TK Neo細胞に及ぼす Ganciclovirの作用を示す棒グラフである。
【図23】図23は、CT26TK Neoに感染させたマウスの Ganciclovir投与試験における時間中の腫瘍容積の作用を示す棒グラフである。
【図24】図24は、腹腔内腫瘍成長に及ぼすGanciclovirの異なる投与レジメンの作用を示すマウスの4枚組写真である。
【図25】図25は、皮下腫瘍成長に及ぼすGanciclovirの異なる投与レジメンの作用を示すマウスの4枚組写真である。
【図26】図26は、CT26対CT26TK Neo細胞におけるGanciclovirの作用を示すグラフである。
【図27】図27は、HSVTK遺伝子を含有するTK-3ウイルスの注入によるinvivo形質導入化CT26細胞に及ぼすGanciclovirの作用を示すグラフである。
【図28】図28は、pKT1-TKの模式図である。
【図29】図29は、pKT1/Hbe /TKの模式図である。
【図30】図30は、pmχTK及びphχTKの模式図である。
【図31】図31は、CT26腫瘍保有マウスにおけるCT26腫瘍細胞に対する極わずかなレベルの活性を示すグラフである。
【図32】図32は、CT26TK+細胞に感染させ、Ganciclovirで処置したマウスにおける溶菌活性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温血動物由来のT細胞を組換え体レトロウイルスベクターを用いてインビトロで破壊する方法であって、該組換え体レトロウイルスベクターがベクター構築物を保有するものであり、ここで該ベクター構築物は、T細胞の存在下でほとんどまたは全く細胞毒性を持たない化合物を毒性産物へと活性化する遺伝子産物の発現を指示するものである、前記方法。
【請求項2】
前記遺伝子産物は、イベント特異性プロモーターの転写制御下にあり、該イベント特異性プロモーターが活性化すると該遺伝子産物が発現されるようになっている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遺伝子産物は、組織特異性プロモーターの転写制御下にあり、該組織特異性プロモーターが活性化すると該遺伝子産物が発現されるようになっている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記遺伝子産物は、イベント特異性プロモーターおよび組織特異性プロモーターの両方の転写制御下にあり、該イベント特異性プロモーターおよび該組織特異性プロモーターの両方が活性化した場合にのみ、該遺伝子産物が最大限に発現されるようになっている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記遺伝子産物は、大腸菌グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、真菌類シトシンデアミナーゼ、カルボキシペプチダーゼG2、およびペニシリン−Vアミダーゼからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
温血動物由来のT細胞を組換え体レトロウイルスベクターを用いてインビトロで破壊する方法であって、該組換え体レトロウイルスベクターがベクター構築物を保有するものであり、ここで該ベクター構築物は、T細胞に対して細胞毒性である細胞毒性遺伝子をイベント特異性プロモーターの転写制御下に含み、該イベント特異性プロモーターが活性化する該細胞毒性遺伝子が発現されるようになっている、前記方法。
【請求項7】
温血動物由来のT細胞を組換え体レトロウイルスベクターを用いてインビトロで破壊する方法であって、該組換え体レトロウイルスベクターがベクター構築物を保有するものであり、ここで該ベクター構築物は、T細胞に対して細胞毒性である細胞毒性遺伝子を組織特異性プロモーターの転写制御下に含み、該組織特異性プロモーターが活性化する該細胞毒性遺伝子が発現されるようになっている、前記方法。
【請求項8】
温血動物由来のT細胞を組換え体レトロウイルスベクターを用いてインビトロで破壊する方法であって、該組換え体レトロウイルスベクターがベクター構築物を保有するものであり、ここで該ベクター構築物は、T細胞に対して細胞毒性である細胞毒性遺伝子をイベント特異性プロモーターおよび組織特異性プロモーターの両方の転写制御下に含み、該イベント特異性プロモーターおよび該組織特異性プロモーターの両方が活性化した場合にのみ、該細胞毒性遺伝子が最大限に発現されるようになっている、前記方法。
【請求項9】
前記細胞毒性遺伝子は、リシン、アブリン、ジフテリアトキシン、コレラトキシン、ゲロニン、ヨウシュヤマゴボウ、抗ウイルスタンパク質、トリチン、赤痢菌毒素、およびプソイドモナス属外毒素Aからなる群から選択される、請求項6、7または8のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記イベント特異性プロモーターは、細胞性チミジンキナーゼプロモーターであるか、チミジル酸シンターゼプロモーターであるか、またはホルモンにより活性化される、請求項2または請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記組織特異性プロモーターは、ホスホエノール−ピルベートカルボキシナーゼ(PEPCK)プロモーター、HER2/neuプロモーター、またはカゼインプロモーターである、請求項3または請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記組織特異性プロモーターは、IgGプロモーター、絨毛膜性胚抗原プロモーター、エラスターゼプロモーター、ポルホビリノーゲンデアミナーゼプロモーター、インシュリンプロモーター、成長ホルモン因子プロモーター、チロシンヒドロキシラーゼプロモーター、アルブミンプロモーター、アルファフェトプロテインプロモーター、アセチルコリン受容体プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、αグロビンプロモーター、βグロビンプロモーター、T細胞受容体プロモーター、およびオステオカルシンプロモーターからなる群より選択される、請求項3または請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記イベント特異性プロモーターは、チミジンキナーゼプロモーターであり、前記組織特異性プロモーターは、カゼインプロモーターおよびHER2/neuプロモーターからなる群より選択される、請求項4または請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記ベクター構築物は、T細胞に由来するタンパク質によるプロセッシングまたは修飾時に毒性を示すタンパク質の発現を指示する、請求項1、請求項6、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記プロセッシングまたは修飾時に毒性を示すタンパク質は、プロリシンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ベクター構築物は、付加的な非ベクター由来遺伝子の発現を指示する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記付加的な非ベクター由来遺伝子は、タンパク質をコードする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記タンパク質は、免疫補助分子である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫補助分子は、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、B7、B7-2、GM-CSF、CD3、ICAM-1、β−ミクログロブリン、LFA-3、HLAクラスIおよびHLAクラスII分子からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記免疫補助分子は、γ−インターフェロンである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
温血動物由来のT細胞を組換え体レトロウイルスベクターを用いてインビトロで破壊する方法であって、該組換え体レトロウイルスベクターは、3’LTR、5’LTR、およびチミジンキナーゼをコードする遺伝子を含むベクター構築物を含むものであり、また、該チミジンキナーゼをコードする遺伝子は、イベント特異性プロモーターおよび/または組織特異性プロモーターの転写制御下にあり、該プロモーターが活性化すると発現されるようになっており、該チミジンキナーゼは、該T細胞の存在下でほとんどまたは全く細胞毒性を持たない化合物を毒性産物へと活性化するものである、前記方法。
【請求項22】
前記イベント特異性プロモーターおよび/または組織特異性プロモーターは、チミジンキナーゼプロモーターである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ベクター構築物は、免疫補助分子をコードする遺伝子をさらに含み、該遺伝子の発現を指示する、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫補助分子は、γ−インターフェロンである、請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2007−75121(P2007−75121A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291856(P2006−291856)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【分割の表示】特願2004−227289(P2004−227289)の分割
【原出願日】平成6年11月18日(1994.11.18)
【出願人】(306034996)オックスフォード バイオメディカ(ユーケー)リミテッド (8)
【Fターム(参考)】