説明

杭の水平方向の地盤の剛性算出方法

【課題】 従来の水平静的載荷試験に比べて、杭の水平方向の地盤の剛性を簡単に求めること。
【解決手段】 杭1の鉛直載荷試験により杭1の周面抵抗を求め、前記周面抵抗から水平方向の地盤11の剛性を算出する、杭の水平方向の地盤の剛性算出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭の水平方向の地盤の剛性の算出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
杭の水平載荷試験は、本杭又は試験杭(施工現場で実施)を用いて、水平方向に杭を載荷し、地盤の剛性を求める試験である。載荷方法で、静的と動的の水平載荷試験に分類される。静的載荷試験は、加力方向が一方向のみの水平載荷試験とプラスマイナスの二方向の交番水平載荷試験がある。また、動的載荷試験は、載荷時間で衝撃載荷試験と急速載荷試験に分類される。通常、これらの試験で求めた載荷荷重と変位から、弾性一様地盤を仮定した式(チャンの式)を用いて、水平方向の地盤の剛性を求めることが多い。
【0003】
水平静的載荷試験は、例えば図3(A)に示し、杭の複数箇所に歪ゲージ2を取り付け、杭頭に水平の静的な力である水平押圧力Fcを与えて行われる。歪ゲージ2の測定値から水平方向の地盤11の剛性を算出する。水平方向の地盤11の剛性は、等価回路(Lc1、・・・、Lcn、Lcn+1)(なお、図にはバネを記載しているが、スライダを加えてもよい。)として、地盤11の伸縮力に起因しているバネ51と回転系バネ511で表現される。図3(A)の測定では、地盤11の剛性を測定し、地盤11が均質として、杭1が接する全地盤で剛性が同一(Lc1=・・・=Lcn)として扱うことが多い。
【0004】
水平衝撃載荷試験は、例えば図3(B)に示し、例えば杭1に歪ゲージ2と加速度計3を取り付け、杭頭に水平打撃力Fdを加えて行われる(なお、図3(B)では、歪ゲージ2と加速度計3の一対のセンサが1箇所に配置してあるが、杭の複数箇所に配置してもよい。)。歪ゲージ2と加速度計3の時間的な測定値から杭1の周面に対向する地盤11の剛性を算出する。その剛性は、等価回路(Ld1、・・・、Ldn、Ldn+1)(なお、図にはバネとダッシュポットを記載しているが、スライダを加えてもよい。)として、例えばバネ51、ダッシュポット52と回転系バネ511で表現される。図3(B)の測定では、複数箇所の地盤の異なる剛性が求まる。
【0005】
しかし、従来の水平静的載荷試験では、杭頭に水平方向の静的な力を作用するため、反力装置などの仮設費が高くつき、かつ、準備を含めた実験に日数がかかっている。また、水平動的載荷試験では、杭頭に水平方向に短時間に大きな力を作用するため、杭が折れるなどの恐れがある。また、水平載荷試験では、静的でも動的でも、杭の深い地盤までの剛性を求めることが難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の水平載荷試験の問題点を解決するものである。
(1)従来の水平静的載荷試験に比べて、水平方向の地盤の剛性を簡単に求めることにある。
(2)深い地盤の剛性まで求められるようにすることにある。
(3)大きい載荷荷重に対する地盤の剛性を求めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、杭の水平方向の地盤の剛性算出方法において、鉛直載荷試験により地盤抵抗を求め、前記地盤抵抗から水平方向の地盤の剛性を算出することを特徴とする、杭の水平方向の地盤の剛性算出方法にある。また、本発明は、杭の水平方向の地盤の剛性算出方法において、杭の鉛直載荷試験により杭の周面抵抗を求め、前記周面抵抗から水平方向の地盤の剛性を算出することを特徴とする、杭の水平方向の地盤の剛性算出方法にある。
【発明の効果】
【0008】
(1)本発明は、従来の水平静的載荷試験に比べて、杭の水平方向の地盤の剛性を簡単に求めることができる。
(2)また、本発明は、杭頭付近だけでなく、深い水平方向の地盤の剛性を求めることができる。
(3)また、本発明は、大きい載荷荷重に対する地盤の剛性を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
杭の水平載荷試験と鉛直載荷試験で求める地盤の物性は、ほぼ同一の地盤領域に関係するので、相互に関係すると考えられる。そこで、本発明は、水平方向の地盤の剛性を、水平載荷試験の代わりに、測定が簡単で深い地盤まで測定可能な鉛直載荷試験で行うことにある。
【0010】
杭の水平方向の地盤の剛性算出方法は、杭の鉛直載荷試験や棒のコーン貫入試験などの鉛直載荷試験により杭や棒の地盤抵抗を求め、この地盤抵抗から水平方向の地盤の剛性を算出して行う。地盤抵抗は、杭や棒の周面抵抗、先端抵抗などがある。鉛直載荷試験は、静的鉛直載荷試験でも動的鉛直載荷試験でもよい。特に、鉛直動的載荷試験の場合、簡単な装置でもって深い地盤の周面抵抗まで測定することができる。
【0011】
(鉛直載荷試験による周面抵抗)
鉛直載荷試験の構成は、まず、杭の鉛直静的載荷試験を例にとると、図1(A)に示すことができる。杭1の複数箇所に歪ゲージ2を取り付け、杭頭に鉛直方向から鉛直押圧力Faを加える。それにより、杭1と地盤11との摩擦などに起因する周面抵抗が発生する。周面抵抗は、歪ゲージ2により、杭の複数箇所(m、・・・、m)で測定される。その周面抵抗の等価回路4(La1、・・・、Lan)は、例えば図1(A)のように、バネ41とスライダ42で表すことができる。
【0012】
また、鉛直動的載荷試験の中の鉛直衝撃載荷試験を例にとると、図1(B)に示すことができる。杭頭に加速度計3と歪ゲージ2を取り付ける。杭頭に鉛直方向から鉛直打撃力Fbを加える。それにより、杭1と地盤11との摩擦などに起因する周面抵抗が発生する。その周面抵抗の等価回路4(Lb1、・・・、Lbn)は、例えば図1(B)のように、バネ41、スライダ42及びダッシュポット43で表すことができる。このダッシュポット43は粘性減衰と散逸減衰を表している。
【0013】
この他に等価回路は、種々の形式があり、例えば図2がある。図2は、杭1と杭周面に接する地盤12との間にスライダ42と粘性減衰のダッシュポット431を並列に接続した第1等価回路と、更に、杭周面に接する地盤12と杭1から離れた地盤11との間にバネ41と逸散減衰のダッシュポット432を並列に接続した第2等価回路を設け、それら等価回路を直列に接続して表現している。周面抵抗は、簡略な記載として、バネで表すことができ、そのバネの係数kで強度を表すことができる。
【0014】
(鉛直方向の周面抵抗と水平方向の地盤剛性の関係)
水平方向の地盤の剛性の中、伸縮力に関するバネの係数kと、鉛直方向の周面抵抗のバネの係数kの相互の関係を、関係式k=f(k)で表す。kは水平方向のバネの係数を表し、kは、鉛直方向のバネの係数を表している。関数fは、地盤の特性に依存するが、通常、水平方向と鉛直方向とでは、一次の関係にあると考えられ、k=ak+bとして表す。ここで、aとbは定数を表している。
【0015】
この関係式は、例えば、水平載荷試験と鉛直載荷試験とを複数回行い、得られた計測データを、最小二乗法などの統計処理で求めることができる。水平載荷試験は、動的でも静的でもよく、また、杭の載荷試験、地盤の要素試験などの試験でもよい。鉛直載荷試験も、動的でも静的でもよく、また、杭の載荷試験、コーン貫入試験などの試験でもよい。水平載荷試験と鉛直載荷試験において、地盤を層に分割し、層分割を密にして多数の位置で計測データを求めるとよい。
【0016】
例えば、関係式k=ak+bは、水平載荷試験と鉛直載荷試験とを複数回行い、kh1、kh2、・・・、及びkv1、kv2、・・・が求まるので、関係式に代入し、最小二乗法など統計処理により定数aとbを求める。定数aとbは、砂、粘土別に分類したり、又は、地域、深さ別に分類して求めることができる。深さについては、地盤の層分割の分割数だけkとkの対の計測データが求まる。
【0017】
(鉛直載荷試験による鉛直方向のバネの係数の算出)
図1(A)を用いて、鉛直方向の衝撃載荷試験の例について説明する。地盤中に埋設された杭1において、杭頭に鉛直方向から押圧力Faを加える。杭1の複数箇所(m、・・・、m)の歪ゲージ2の測定値から、一般に知られている方法を用いて、バネ41、スライダ42などの値が算出され、鉛直方向の地盤の周面抵抗の等価回路4(La1、・・・、Lan)を求めることができる。なお、杭の鉛直載荷試験は、(社)地盤工学会の「杭の鉛直載荷試験方法・同解説(平成14年5月)」に示されている。
【0018】
又は、図1(B)を用いて、鉛直方向の衝撃載荷試験の例について説明する。杭1の杭頭に鉛直方向から打撃力Fbを加える。杭1には、歪ゲージ2と加速度計3の一対が取り付けてある。これらのセンサの測定値から、一般に知られている方法を用いて、バネ41、スライダ42、ダッシュポット43などの値が算出され、鉛直方向の地盤の周面抵抗の等価回路4(Lb1、・・・、Lbn)を求めることができる。なお、センサは、歪ゲージ2と加速度計3の一対に限るものではなく、複数対でもよく、また、別のセンサでもよい。いずれにしろ、周面抵抗が求められればよい。
【0019】
杭の鉛直載荷試験の際、地盤を層に分割して、層毎(m、m、・・・、m)に周面抵抗を算出する。例えば、層の間隙を1m間隔にする。層の間隙(算出箇所の地盤領域)を狭く密にすると、水平方向と鉛直方法との地盤の特性の相違を小さくできる。
【0020】
(水平方向のバネ係数の算出)
算出した鉛直方向の地盤の周面抵抗と水平方向の地盤の剛性との関係式から水平方向の地盤の剛性を算出できる。例えば、鉛直方向のバネ係数kが鉛直載荷試験から求まると、関係式k=ak+bに代入して、kを算出して、水平方向の地盤の剛性を求めることができる。鉛直載荷試験で測定するので、水平載荷試験に比べて、バネ係数kは、深い地盤まで求めることができ、水平方向のバネ係数kも、深い地盤まで算出できる。
【0021】
以上、杭の鉛直載荷試験における周面抵抗を例に取り説明しているが、それに限らず、杭の鉛直載荷試験の先端抵抗(Lan+1、Lbn+1)、コーン貫入試験の周面抵抗や先端抵抗を求めてもよい。このように、本発明は、上記例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲でいろいろの変形を採ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】鉛直衝撃載荷試験の説明図
【図2】鉛の鉛直方向の周面抵抗の等価回路の説明図
【図3】水平載荷試験の説明図
【符号の説明】
【0023】
Fa・・鉛直押圧力
Fb・・鉛直打撃力
Fc・・水平押圧力
Fd・・水平打撃力
1・・・杭
11・・地盤
12・・杭周面に接する地盤
2・・・歪ゲージ
3・・・加速度計
4・・・周面抵抗の等価回路
41・・周面抵抗によるバネ(バネ係数k
42・・スライダ
43・・ダッシュポット(粘性減衰+逸散減衰)
431・ダッシュポット(粘性減衰)
432・ダッシュポット(逸散減衰)
51・・伸縮力によるバネ(バネ係数k
511・コイルバネ
52・・ダッシュポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭の水平方向の地盤の剛性算出方法において、
鉛直載荷試験により地盤抵抗を求め、
前記地盤抵抗から水平方向の地盤の剛性を算出することを特徴とする、杭の水平方向の地盤の剛性算出方法。
【請求項2】
杭の水平方向の地盤の剛性算出方法において、
杭の鉛直載荷試験により杭の周面抵抗を求め、
前記周面抵抗から水平方向の地盤の剛性を算出することを特徴とする、杭の水平方向の地盤の剛性算出方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の杭の水平方向の地盤の剛性算出方法において、
鉛直載荷試験は、動的鉛直載荷試験で行うことを特徴とする、杭の水平方向の地盤の剛性算出方法。
【請求項4】
請求項1に記載の杭の水平方向の地盤の剛性算出方法において、
水平方向の地盤の剛性のバネの係数は、前記地盤抵抗のバネの係数と一次の関係式で表すことを特徴とする、杭の水平方向の地盤の剛性算出方法。
【請求項5】
請求項2に記載の杭の水平方向の地盤の剛性算出方法において、
水平方向の地盤の剛性のバネの係数は、前記周面抵抗のバネの係数と一次の関係式で表すことを特徴とする、杭の水平方向の地盤の剛性算出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−83637(P2006−83637A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271056(P2004−271056)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000154440)株式会社ジオトップ (28)
【Fターム(参考)】