説明

杭孔掘削方法

【課題】管を圧入するための大掛かりな設備を不要とし、かつ、より短期間で杭孔を掘削することができる杭孔掘削方法を提供することを目的とする
【解決手段】本発明は、掘削機2のロッド24を回転駆動させると共に下降させ、ロッド24の下端に設けられたビット25により場所打ち杭用の杭孔10を掘削する杭孔掘削方法において、掘削機2におけるビット25の下降に合わせて、杭孔10内の所定の深さまで杭孔10の孔径より小径の孔壁保護管11を挿入することを特徴とする。この杭孔掘削方法によれば、杭孔10の掘削と孔壁の保護を同時に施工することが可能となるので、より短期間で杭孔10の掘削を行うことができる。また、この杭孔掘削方法における孔壁保護管11は、杭孔10の孔径より小径であり、杭孔10に対して圧入ではなく挿入される。このことは、圧入のための大掛かりな設備を不要とするので、掘削装置1の小型化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ち杭用の杭孔の掘削に利用される杭孔掘削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
場所打ち杭の杭孔を掘削するにあたり、鉄道の軌道等の既設構造物に近接した場所や地盤が軟弱な場所においては、特に地表付近の孔壁が崩壊しないように孔壁の保護が図られる。例えば特許文献1に記載の場所打ち杭の造成方法では、地盤に先行掘りを行った後、杭孔に円管状のケーシングを建て込むことで、掘削時における孔壁の崩壊を防止して孔壁の保護を図っている。このようなケーシングの建て込み方法としては、例えば円管状のケーシングを地盤に圧入する方法や、作業員が孔内で弧状のライナープレートを複数連結させることで、孔壁に沿ってケーシングを組み立てる方法が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−273411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の場所打ち杭の造成方法には、次のような課題が存在している。すなわち、孔径に応じた大きさのケーシングを地盤に圧入するためには、比較的大型の設備が必要となり、軌道に近接した場所等、空間に制約のある場所での利用は難しい。また、作業員によって孔内でケーシングを組み立てる方法では、列車が運行していない夜間の短時間に行う必要があり、深くまで設置する場合には工期が長くなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記した事情を鑑みてなされたものであり、管を圧入するための大掛かりな設備を不要とし、かつ、より短期間で杭孔を掘削することができる杭孔掘削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、掘削機のロッドを回転駆動させると共に下降させ、ロッドの下端に設けられたビットにより場所打ち杭用の杭孔を掘削する杭孔掘削方法において、掘削機におけるビットの下降に合わせて、杭孔内の所定の深さまで杭孔の孔径より小径の孔壁保護管を挿入することを特徴とする。
【0007】
この杭孔掘削方法によれば、掘削機のロッドを回転駆動させると共に下降させることで、ロッド下端のビットにより杭孔の掘削を行いながら、孔壁保護管の挿入によって孔壁の保護を図ることができる。その結果、杭孔の掘削とその孔壁の保護とを同時に行うことが可能となるので、より短期間で杭孔の掘削を行うことができる。また、この杭孔掘削方法における孔壁保護管は、杭孔の孔径より小径であり、杭孔に対して圧入ではなく挿入される。このことは、孔壁保護管を圧入するための大掛かりな設備を不要とするので、施工設備の小型化を図ることができる。
【0008】
また、孔壁保護管は、複数の壁体を連結してなることが好ましい。このように、孔壁保護管が複数の壁体から組み立てられる構成とすることで、既製の孔壁保護管を使用する場合と比べて、運搬時や保管時における孔壁保護管の省スペース化が図られる。
【0009】
また、掘削機は、杭孔を跨ぐように配置された門型の固定部と、固定部に沿って上下移動すると共に、ロッドの上端が固定される可動部と、を有し、可動部を下降させながらビットによる掘削を行い、所定距離分の掘削を終えた後でロッドと可動部との固定を解除し、可動部を上昇させた後、固定を解除したロッドと可動部との間に新たなロッドを継ぎ足して、再び可動部を下降させることで掘削を進めるものであり、可動部を上昇させた状態では、可動部に固定されたロッドを囲むように複数の壁体を連結して孔壁保護管を形成し、孔壁保護管を可動部に吊り下げ、可動部を下降させることによって、ビットの下降に合わせて杭孔内に孔壁保護管を挿入した後、挿入された孔壁保護管を他の吊具により吊り下げた状態で可動部による吊り下げを解除し、可動部を上昇させた後、新たに継足されるロッドを囲むように孔壁保護管を形成し、孔壁保護管を可動部に吊り下げて、既に挿入された孔壁保護管側に連結した上で、他の吊具による吊り下げを解除し、ビットの下降に合わせて再び杭孔内への孔壁保護管の挿入を進める、ことが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、上昇した状態の可動部とビットとの間において、ロッドの継ぎ足し及び孔壁保護管の追加を行った後、可動部を下降させる作業を繰り返すことで、ビットによる掘削に合わせた杭孔内への孔壁保護管の挿入を実現することができる。また、可動部は、所定距離分の可動距離を有する構成であればよいので、ボーリングマシン等を利用する場合と比べて掘削機の低背化を図ることができ、高さ制限のある場所であっても本発明を好適に適用することができる。
【0011】
また、可動部の下降途中において、既に形成された孔壁保護管の上端に複数の壁体を連結して孔壁保護管を延長することが好ましい。可動部の下降途中すなわちビットの掘削途中において孔壁保護管を延長することで、より短期間で杭孔の掘削及び孔壁保護管の挿入を行うことができる。
【0012】
また、ビットは、ロッドの中心軸線を回転中心として径方向に広がる回転体であり、その外周部が内側に入り込むことで、孔壁保護管の内径より小さくなるように縮径可能であり、ビットを吊り上げて回収する際には、ビットの外周部を孔壁保護管の内径より小さくすることが好ましい。このように、ビットを吊り上げて回収する際に、ビットの外周部を孔壁保護管の内径より小さくすることにより、杭孔内に挿入した孔壁保護管を維持したまま容易にビットを回収することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、管を圧入するための大掛かりな設備を不要とし、かつ、より短期間で杭孔を掘削することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る杭孔掘削方法を説明するための平面図、図2は、本実施形態に係る杭孔掘削方法を説明するための側面断面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る杭孔掘削方法は、場所打ち杭工法によるコンクリート杭基礎用の杭孔10の掘削に利用される。本実施形態に係る杭孔10が形成される現場は、既設構造物である鉄道用軌道Tの近傍に位置し、その地層は、掘削時に孔壁の保護が必要な軟弱地層である地表近傍のA層と堅固な地層である深部のB層とに分けられる。また、杭孔10は、上下方向で連続する先行掘り孔10A、中間杭孔10B、深部杭孔10Cから構成されており、先行掘り孔10A、中間杭孔10B、深部杭孔10Cの順番にその孔径が小さくなるように形成されている。先行掘り孔10A及び中間杭孔10BはA層に形成され、深部杭孔10CはB層に形成されている。
【0016】
この杭孔掘削方法に用いられる掘削装置1は、杭孔10上に設置された掘削機2と、図示しない泥水タンクから泥水を杭孔10内に供給するための給泥水管3と、杭孔10から掘削した土砂や泥水を吸い出すための排泥水管4とを備えている。更に、この掘削装置1は、排泥水管4を通じて掘削土砂や泥水を泥水タンクに送るポンプ部5と、後述する孔壁保護管11を仮受けするための仮受け梁(他の吊り具)6とを備えている。
【0017】
掘削機2は、地面に設置された2本の柱部20aと、柱部20aの先端部を連結する連結部20bとからなる門型の固定部20を有している。一方の柱部20aの根元には、掘削機2を操作するための操作盤21が設けられている。固定部20における2本の柱部20aの間には、水平方向に延在する梁状の可動部22が掛け渡されている。可動部22の両端には、2本の柱部20aに沿って移動する駆動部22aが設けられており、これらの駆動部22aの協働によって可動部22が上下移動する。
【0018】
可動部22における両端近傍の下方には、孔壁保護管11を吊り下げるための長尺状の保護管吊下げ部23がそれぞれ取り付けられている。これらの保護管吊下げ部23は、可動部22に対して着脱自在に構成されている。また、保護管吊下げ部23は、杭孔10内に孔壁保護管11を吊り下げるための吊りワイヤー26を取り付け可能に構成されている。
【0019】
孔壁保護管11は、杭孔10における中間杭孔10Bの孔径より小さな外径を有する円管形状の部材であり、杭孔10の中間杭孔10Bの孔壁に沿って配置されて掘削時における孔壁の崩壊を防止する。この孔壁保護管11と中間杭孔10Bの孔壁との間隔は、特に5cm〜10cmの範囲内であることが好ましい。この間隔が5cm以下の場合には、中間杭孔10Bの形成誤差により、孔壁保護管11が中間杭孔10B内に入りにくくなる可能性が高くなり、間隔が10cm以上の場合には、掘削時に孔壁が崩壊する可能性が高くなる。
【0020】
また、孔壁保護管11は、その中心軸線C方向(上下方向)に分割された複数の管セグメント12を連結して形成されている。複数の管セグメント12の各々は、周方向に分割された鋼製のライナープレート(壁体)13を環状に連結して形成さている。孔壁保護管11は、中心軸線C方向に連結する管セグメント12の数を変更することで、その長さを変えることができる。
【0021】
可動部22の中央には、上下方向に延在するロッド管(ロッド)24の上端が連結されるロッド管連結部22bが設けられている。ロッド管24は、その両端にフランジ部を有しており、フランジ部を介して長さの等しい複数のロッド管24が複数連結されている。これらのロッド管24は、ロッド管連結部22bから杭孔10に向かって延在するように連結されており、最も下方に位置するロッド管24の下端には、地盤を掘削するためのウイングビット25が固定されている。また、ロッド管連結部22bには、連結されたロッド管24を周方向に回転駆動させるためのモータが備えられている。
【0022】
ウイングビット25は、ロッド管24の中心軸線を回転中心として径方向に広がる傘状の部材であり、モータによるロッド管24の回転駆動に伴って周方向に回転する回転体として構成されている。ウイングビット25は、その中心から上方に突出する軸部25bを有しており、この軸部25bにロッド管24の下端が連結されている。また、ウイングビット25は、その外周部25aが内側に向かって引き込み可能に構成されており、外周部25aが内側に入り込むことで、ウイングビット25の直径は孔壁保護管11の内径より小さく縮径される。
【0023】
ロッド管連結部22bの上部には、掘削した土砂や泥水を吸い出すための排泥水管4が連結されている。この排泥水管4の内部とロッド管24の内部とは、ロッド管連結部22bを介して連通されている。また、ロッド管24が連結されるウイングビット25の軸部25bには、ウイングビット25が掘削した土砂や泥水を吸い込んで地上に排出するための吸引口25cが設けられている。
【0024】
次に、前述した掘削装置1を用いて場所打ち杭の杭孔を掘削する杭孔掘削方法について図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図3は、先行掘りの状態を示す側面断面図、図4は、図1に示す掘削機を設置した状態を示す側面断面図、図5は、図2に示す可動部にロッド管を連結した状態を示す側面断面図、図6は、孔壁保護管を組み立てた状態を示す側面断面図である。また、図7は、図6に示す孔壁保護管を先行掘りした孔内に挿入した状態を示す側面断面図、図8は、孔壁保護管を仮受けした状態を示す正面断面図、図9は、ロッド管を継ぎ足した状態を示す側面断面図、図10は、必要な深さまで孔壁保護管を挿入した状態を示す側面断面図、図11は、杭孔の掘削が終了した状態を示す側面断面図である。
【0026】
図3に示すように、本実施形態における杭孔掘削方法では、先ず場所打ち杭用の杭孔10を形成する地盤に対して、油圧ショベルや人力による先行掘りを行う。この先行掘りでは、非縮径状態のウイングビット25の直径より孔径が大きく、かつ、ウイングビット25の全体が入り込む深さを有する先行掘り孔10Aが形成される。
【0027】
その後、先行掘り孔10Aの孔壁に沿って円筒状のガイドパイプ15を設ける。このガイドパイプ15は、例えば複数のライナープレートを連結することで構成されてもよく、また既製のガイドパイプを挿入して構成されてもよい。このとき、水平土圧等に対するガイドパイプ15の安定性を向上させるため、先行掘り孔10Aの孔壁とガイドパイプ14との間にモルタル等を裏込めする。
【0028】
次に、図4に示すように、先行掘り孔10Aの底面に複数の支持ブロック16を設置した後、これらの支持ブロック16上において、軸部25bが上を向くようにウイングビット25を配置する。その後、先行掘り孔10Aを跨ぐようにして、門型の固定部20を有する掘削機2を設置する。また、先行掘り孔10A内に配置された給泥水管3から、先行掘り孔10A内に泥水の供給を開始する。
【0029】
次に、図5に示すように、掘削機2の可動部22を上昇させ、この状態でロッド管連結部22bにロッド管24の上端を連結する。その後、図6に示すように、可動部22を適切な高さまで下降させ、ロッド管24の下端とウイングビット25の軸部25bとを連結させる。
【0030】
続いて、可動部22を上昇させ、可動部22の両側近傍の下方に2つの保護管吊下げ部23をそれぞれ取り付ける。そして、保護管吊下げ部23によって吊り下げた状態で、ロッド管24を囲むように複数のライナープレート13を環状に連結し、外側から管セグメント12を形成する。ここで、ライナープレート13を外側から連結する作業者が先行掘り孔10A内に転落することを防止する半円柱形状の転落防止枠(図示せず)を固定部20の連結部20bの左右に吊り下げる。このような転落防止枠には、形成される管セグメント12の内面に沿う円弧状のガイド枠が備えられている。作業者は、複数のライナープレート13をガイド枠でガイドしながら連結し、非縮径状態のウイングビット25の直径すなわち挿入される中間杭孔10の孔径より小さい外径の管セグメント12を形成する。その後、上下方向に連結された3段の管セグメント12によって、ロッド管24の長さに応じた長さの孔壁保護管11が形成される。このように、孔壁保護管11がライナープレート13から組み立てられる構成とすることで、既製の孔壁保護管を使用する場合と比べて、運搬時や保管時における孔壁保護管11の省スペース化が図られる。
【0031】
次に、図7に示すように、モータによりウイングビット25を回転させながら可動部22を下降させることで、先行掘り孔10Aの底面より中間杭孔10Bの掘削を開始する。このとき、可動部22の下降すなわちウイングビット25の下降に合わせて、孔壁保護管11が先行掘り孔10A内に挿入される。
【0032】
また、掘削の開始時には、ポンプ部5を作動させて、ウイングビット25の吸引口25cから掘削した土砂や泥水の吸引を行う。吸引口25cに吸引された土砂や泥水は、ロッド管24及び排泥水管4を通じて地上の泥水タンクに排出される。更に、掘削の開始時において、ウイングビット25が掘削した中間杭孔10Bの孔壁と中間杭孔10B内に挿入される孔壁保護管11との間に図示しないパイプを差し込み、パイプを通じて流動性のある充填剤を流し込む。この充填剤によって中間杭孔10Bの孔壁が崩れにくくなり、より確実に孔壁の保護が図られる。このような充填剤としては、時間経過によって硬化するものが用いられ、施工中は十分な流動性を有し、施工終了後に硬化するものが選択される。
【0033】
続いて、図1及び図8に示すように、孔壁保護管11が挿入された後、先行掘り孔10Aの孔口上に2本の仮受け梁6が掛け渡される。2本の仮受け梁6は、固定部20の連結部20bに対して略平行に配置され、先行掘り孔10A内の孔壁保護管11を吊り下げた状態で仮受けする。この状態で、保護管吊下げ部23による孔壁保護管11の吊り下げを解除する。また、ウイングビット25の回転及び泥水の給排水を停止し、ロッド管連結部22bにおけるロッド管24の固定を解除する。
【0034】
次に、図9に示すように、可動部22を上昇させ、上昇した状態の可動部22におけるロッド管連結部22bに新たなロッド管24の上端を連結する。その後、可動部22を適切な高さに下降させ、ロッド管連結部22bに連結された新たなロッド管24の下端とウイングビット25の軸部25bに連結されたロッド管24の上端とを連結することで、ウイングビット25と可動部22との間に新たなロッド管24を継ぎ足す。
【0035】
その後、可動部22における保護管吊下げ部23において、新たなロッド管24を囲うように複数のライナープレート13から管セグメント12を形成し、所定の新たなロッド管24の長さに応じた長さを有する新たな孔壁保護管11を3段の管セグメント12から形成する。
【0036】
続いて、保護管吊下げ部23に吊り下げられた新たな孔壁保護管11の下端と既に杭孔10内に挿入された孔壁保護管11の上端とを連結することで、可動部22と既に挿入された孔壁保護管11との間に新たな孔壁保護管11を追加する。その後、仮受け梁6による挿入された孔壁保護管11の吊り下げを解除する。このようにして、可動部22とウイングビット25の間で新たなロッド管24及び新たな孔壁保護管11が追加される。この状態でウイングビット25を回転させ、可動部22を下降させることで、追加された新たなロッド管24の長さ分ウイングビット25がより深くまで押し込まれ、中間杭孔10Bの掘削が進行する。そして、このウイングビット25の下降に合わせて、上下に連結された2つの孔壁保護管11が中間杭孔10B内に挿入される。
【0037】
その後、図10に示すように、所定のA層下端の深さ近傍まで、ウイングビット25による掘削及び孔壁保護管11の挿入作業を繰り返す。そして、可動部22が下降した状態で、仮受け梁6により杭孔10内の孔壁保護管11を吊り下げ、保護管吊下げ部23による孔壁保護管11の吊り下げを解除する。その後、保護管吊下げ部23を可動部22から取り外し、地面に対して固定する。そして、地面に固定した保護管吊下げ部23と杭孔10内の孔壁保護管11とを吊りワイヤー26によって繋ぎ、仮受け梁6による孔壁保護管11の吊り下げを解除する。
【0038】
その後、上昇させた可動部22において、孔壁保護管11を追加せずに新たなロッド管24のみを追加して、可動部22を下降させ、A層の下端まで中間杭孔10Bを掘削すると共に、この中間杭孔10Bの孔壁全体を覆うように上下に連結された複数の孔壁保護管11を挿入する。
【0039】
次に、図11に示すように、中間杭孔10Bの掘削が終了した後、ウイングビット25の外周部25aを内側に引き込み、ウイングビット25を縮径させる。この状態でB層の深部杭孔10Cを掘削して、コンクリート杭基礎を形成するために必要な深さまで杭孔10の掘削を行う。
【0040】
その後、杭孔10の掘削終了後、孔壁保護管11の孔径より小さく縮径した状態のウイングビット25と複数のロッド管24とを地上に回収する。具体的には、先ず可動部22を上昇させ、ロッド管連結部22bに連結された最上方のロッド管24の一つ下のロッド管24をクレーン等により吊り上げた状態(すなわちウイングビット25及び最上方のロッド管24を除くウイングビット25に連結された全てのロッド管24を吊り上げた状態)で、最上方のロッド管24を一つ下のロッド管24及びロッド管連結部22bから取り外す。その後、可動部22を下降させて新たに最上方となったロッド管24の上端をロッド管連結部22bに連結する。そして、クレーン等による吊り上げ状態を解除した後、可動部22を上昇させる。その後、再びクレーン等により新たに最上方となったロッド管24の一つ下のロッド管24を吊り上げ、最上方のロッド管24を一つ下のロッド管24及びロッド管連結部22bから取り外す。そして、可動部22を下降させて新たに最上方となったロッド管24の上端をロッド管連結部22bに連結し、可動部22を上昇させる。
【0041】
以上のようにして、孔壁保護管11の内部を通じて順次複数のロッド管24が回収され、最後にウイングビット25が回収される。このように、ウイングビット25を吊り上げて回収する際に、ウイングビット25の外周部25aを孔壁保護管11の内径より小さくすることにより、杭孔10内に挿入した孔壁保護管11を維持したまま容易にウイングビット25を回収することができる。
【0042】
そして、ウイングビット25の回収後、孔壁保護管11が挿入された状態の杭孔10に対して、従来の方法によりコンクリートの打設を行うことで、コンクリート杭基礎が成形される。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る杭孔掘削方法では、ウイングビット25により杭孔10の掘削を行いながら、孔壁保護管11の挿入によって孔壁の保護を図ることができる。その結果、杭孔10の掘削とその孔壁の保護とを同時に行うことが可能となるので、より短期間で杭孔10の掘削を行うことができる。
【0044】
また、この杭孔掘削方法における孔壁保護管11は、孔壁の保護が必要な中間杭孔10Bの孔径より小径であり、中間杭孔10Bに対して圧入ではなく挿入される。このことは、孔壁保護管11を圧入するための大掛かりな設備を不要とするので、掘削装置1の小型化を図ることができる。
【0045】
また、この杭孔掘削方法では、上昇した状態の可動部22とウイングビット25との間において、ロッド管24の継ぎ足し及び孔壁保護管11の追加を行った後、可動部22を下降させる作業を繰り返すことで、ウイングビット25による掘削に合わせた杭孔10内への孔壁保護管11の挿入を実現することができる。また、掘削機2は、可動部22が所定のロッド管24の長さ分の可動距離を有する構成であればよいので、ボーリングマシン等を利用する場合と比べて掘削機2の低背化を図ることができ、高さ制限のある場所であっても好適に適用することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、可動部22を上昇させた状態でのみ孔壁保護管11を形成していたが、可動部22の下降中すなわちウイングビット25による中間杭孔10Bの掘削中に、挿入途中の孔壁保護管11の上に複数のライナープレート13を連結して管セグメント12を形成し、孔壁保護管11を延長する態様であってもよい。このような態様によれば、より短期間で杭孔10の掘削及び孔壁保護管11の挿入を施工することができる。なお、この場合において、保護管吊下げ部23は、孔壁保護管11の上端ではなく、内側や外側に取り付けられて孔壁保護管11を吊り下げる。
【0047】
また、上記実施形態では、掘削した土砂や泥水をウイングビット25の吸引口25cから吸引して地上に排出していたが、ロッド管24を通じてウイングビット25から泥水等を杭孔10内に供給し、掘削された土砂を上昇水流によって杭孔10の孔口から排出する態様であってもよい。
【0048】
また、孔壁保護管11は、3段の管セグメントからではなく、2段や4段以上の管セグメントから形成されてもよく、また1段の管セグメントすなわちライナープレート13を環状に連結して形成されてもよい。また、鋼製のライナープレート13に代えて、FRP(Fiber Reinforced Plastics)製の壁体等により孔壁保護管が形成されてもよい。
【0049】
また、管セグメント12やライナープレート13の連結は、ボルト締めに限られず、ライナープレート13へりに形成されたフランジ部同士を挟み込むコの字状の連結金具やクリップ、磁石等を利用したワンタッチ機構によって行われてもよく、溶接や接着剤によって行われてもよい。
【0050】
また、中空のロッド管24に代えて棒状のロッドを用いてもよい。この場合、別途、土砂等の排出のための設備を設ける必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施形態に係る杭孔掘削方法を説明するための平面図である。
【図2】本実施形態に係る杭孔掘削方法を説明するための側面断面図である。
【図3】先行掘りの状態を示す側面断面図である。
【図4】図1に示す掘削機を設置した状態を示す側面断面図である。
【図5】図2に示す可動部にロッド管を連結した状態を示す側面断面図である。
【図6】孔壁保護管を組み立てた状態を示す側面断面図である。
【図7】図6に示す孔壁保護管を先行掘りした孔内に挿入した状態を示す側面断面図である。
【図8】孔壁保護管を仮受けした状態を示す正面断面図である。
【図9】ロッド管を継ぎ足した状態を示す側面断面図である。
【図10】必要な深さまで孔壁保護管を挿入した状態を示す側面断面図である。
【図11】杭孔の掘削が終了した状態を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1…掘削装置、2…掘削機、6…仮受け梁(他の吊り具)、10…杭孔、10A…先行掘り孔、10B…中間杭孔、10C…深部杭孔、11…孔壁保護管、12…管セグメント、13…ライナープレート(壁体)、20…固定部、22…可動部、23…保護管吊下げ部、24…ロッド管(ロッド)、25…ウイングビット、25a…外周部、T…軌道。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機のロッドを回転駆動させると共に下降させ、前記ロッドの下端に設けられたビットにより場所打ち杭用の杭孔を掘削する杭孔掘削方法において、
前記掘削機における前記ビットの下降に合わせて、前記杭孔内の所定の深さまで前記杭孔の孔径より小径の孔壁保護管を挿入することを特徴とする杭孔掘削方法。
【請求項2】
前記孔壁保護管は、複数の壁体を連結してなることを特徴とする請求項1記載の杭孔掘削方法。
【請求項3】
前記掘削機は、前記杭孔を跨ぐように配置された門型の固定部と、前記固定部に沿って上下移動すると共に、前記ロッドの上端が固定される可動部と、を有し、
前記可動部を下降させながら前記ビットによる掘削を行い、所定距離分の掘削を終えた後で前記ロッドと前記可動部との固定を解除し、前記可動部を上昇させた後、固定を解除した前記ロッドと前記可動部との間に新たなロッドを継ぎ足して、再び前記可動部を下降させることで掘削を進めるものであり、
前記可動部を上昇させた状態では、前記可動部に固定された前記ロッドを囲むように前記複数の壁体を連結して前記孔壁保護管を形成し、前記孔壁保護管を前記可動部に吊り下げ、前記可動部を下降させることによって、前記ビットの下降に合わせて前記杭孔内に前記孔壁保護管を挿入した後、挿入された前記孔壁保護管を他の吊具により吊り下げた状態で前記可動部による吊り下げを解除し、前記可動部を上昇させた後、新たに継足されるロッドを囲むように前記孔壁保護管を形成し、前記孔壁保護管を前記可動部に吊り下げて、既に挿入された孔壁保護管側に連結した上で、前記他の吊具による吊り下げを解除し、前記ビットの下降に合わせて再び前記杭孔内への前記孔壁保護管の挿入を進める、ことを特徴とする請求項2記載の杭孔掘削方法。
【請求項4】
前記可動部の下降途中において、既に形成された前記孔壁保護管の上端に前記複数の壁体を連結して前記孔壁保護管を延長することを特徴とする請求項3記載の杭孔掘削方法。
【請求項5】
前記ビットは、前記ロッドの中心軸線を回転中心として径方向に広がる回転体であり、その外周部が内側に入り込むことで、前記孔壁保護管の内径より小さくなるように縮径可能であり、
前記ビットを吊り上げて回収する際には、前記ビットの外周部を前記孔壁保護管の内径より小さくすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の杭孔掘削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−90588(P2010−90588A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260697(P2008−260697)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】