説明

杭打ち船及び杭の打設方法

【課題】 吊荷重が変化しても杭体に傾きを発生させることがなく、精度よく杭体を打設することが可能な杭打ち船、及びそれを使用した杭の打設方法を提供すること。
【解決手段】 間隔を置いて並列させた船体11,11と、その船体11,11間を船首及び船尾付近で連結させる連結部12,13と、該連結部12,13間に立設された杭打ちリーダ15と、前記船体11,11間であって前記船体11の長手方向の略中央に杭打ち動作線を設定できるように前記杭打ちリーダ15に取り付けられた杭打ち機16A,16Bと、を有する杭打ち船10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水底地盤に杭体を打設する際に使用する杭打ち船、及びその杭打ち船を使用した杭の打設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図9に示すように、杭打ち船1を使用して水底地盤8に杭体5を打設する方法が知られている(特許文献1など参照)。
【0003】
この方法では、まず、杭体5の打設位置を決める台船6を、スパット6b,・・・によって所定の位置に定着させる。この台船6には、杭体5を所定の平面位置に配置させるためのガイド枠6a,6aが取り付けられている。このガイド枠6aは、側部が開放された平面視C字型の部材で、側方から杭体5をセットすることができる。
【0004】
そして、船体1aの側方からクレーン1bのジブ2を張り出し、そのジブ2の先端から吊り下げた吊具3Aによって、運搬船(図示せず)上に横積みされた杭体5を建て起こして吊り上げ、ガイド枠6aの一つにセットする。
【0005】
さらに、別の吊具3Bに吊り下げたバイブロハンマ4を、起立させた杭体5の頭部に装着し、図9に示すようにバイブロハンマ4を稼動して杭体5を水底地盤8に打設する。
【特許文献1】特開2004−27548号公報(0002段落乃至0006段落)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した従来の杭の打設方法では、船体1aの船首から前方に張り出されたジブ2を使用して杭体5を打設するため、以下のような問題が生じる。
【0007】
すなわち、杭体5の吊荷重は、杭体5を沈める際は浮力の増加によって変化し、杭体5を打設する際は、吊具3Bを吊るワイヤロープを送り出す速度と杭体5の打設速度の差などによって変化する。
【0008】
このように、杭体5の打設の進行により発生する吊荷重の変化によって、船体1a及びジブ2が揺動し、杭体5に水平方向の力が作用する。この水平力によって杭体5は傾けられ、正確な位置に打設することが難しくなる。このような船体1aの揺動を抑えようとすれば、オペレータの技量に頼るしかなかった。
【0009】
そこで、本発明は、吊荷重が変化しても杭体に傾きを発生させることがなく、精度よく杭体を打設することが可能な杭打ち船、及びそれを使用した杭の打設方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、間隔を置いて並列させた船体と、その船体間を船首及び船尾付近で連結させる連結部と、該連結部間に立設されて前記船体に取り付けられた杭打ちリーダと、前記船体間であって前記船体の長手方向の略中央に杭打ち動作線を設定できるように前記杭打ちリーダに取り付けられた杭打ち機と、を有する杭打ち船であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載のものは、前記杭打ちリーダは、前記船体間に架け渡された支持台の上に設置された櫓部を介して前記船体に取り付けられた請求項1に記載の杭打ち船であることを特徴とする。
【0012】
そして、請求項3に記載のものは、前記杭打ちリーダ及びそれに取り付けられた前記杭打ち機は、前記それぞれの船体上にそれぞれ設置された請求項1に記載の杭打ち船であることを特徴とする。
【0013】
さらに、請求項4に記載のものは、前記杭打ちリーダは、前記船体間に架け渡された櫓部を介して前記船体に取り付けられた請求項1に記載の杭打ち船であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に記載のものは、前記杭打ちリーダは、軸方向に沿って伸縮自在に形成された請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の杭打ち船であることを特徴とする。
【0015】
そして、請求項6に記載のものは、前記杭打ち機は、複数配備され、面内移動させることによっていずれか一台の杭打ち機が杭打ち動作線上に配置されるように、前記杭打ちリーダに設けた張出部に取り付けられた請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の杭打ち船であることを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項7に記載のものは、前記連結部の少なくとも一方は、開閉自在に形成された請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の杭打ち船であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項8に記載された発明は、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の杭打ち船を使用した杭の打設方法であって、前記船体間の水面に杭体を浮かべ、該杭体を前記船体間で建て起こして前記船体の長手方向の略中央に配設し、該杭体の頭部に前記杭打ち機を装着して杭体を打設する杭の打設方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
このように構成された請求項1の発明は、並列された船体間であって、前記船体の長手方向の略中央に杭体を打設することが可能なように構成されている。
【0019】
このため、杭体の沈設、及び打設の進行に伴って吊荷重が変化しても、船体が傾くことがほとんどなく、正確な位置に精度よく杭体を打設することができる。
【0020】
また、杭体を打設中に船体間の隙間に次に打設する杭体を引き込み、待機させておくことができるので、連続して効率よく杭を打設することができる。
【0021】
そして、請求項2に記載されたものは、前記船体間に支持台を架け渡し、その上に設置された櫓部に前記杭打ちリーダが取り付けられる。
【0022】
このため、杭打ち船の中央付近に、重量の大きな装置が配設されるため、安定性がよく、吊荷重が変化しても船体がほとんど傾くことはないため、精度よく杭体を打設することができる。
【0023】
さらに、請求項3に記載されたものは、2体の船体のそれぞれに、前記杭打ちリーダ及び前記杭打ち機を設置する。
【0024】
このため、2本の杭体を並行又は連続して打設することが可能となり、工期の短縮化を図ることができる。
【0025】
また、請求項4に記載されたものは、前記船体間に櫓部を架け渡し、その櫓部に前記杭打ちリーダを取り付ける。
【0026】
このため、船体間の連結と杭打ちリーダの支持を兼用させることができる上に、杭体の建て込み、又は打設に支障となる水面近くの部材がほとんど発生しない。
【0027】
そして、請求項5に記載されたものは、前記杭打ちリーダが伸縮自在に形成されている。
【0028】
このため、航空機の発着時間帯における高さ制限(高度制限)を受ける場所で杭打ちを行なう場合であっても、制限時間内は杭打ちリーダを縮めた状態で出来る範囲の作業をおこない、制限が解除された後に杭打ちリーダを伸長して、杭打ち作業に即座に取り掛かることができるので、効率的に作業を実施できる。
【0029】
さらに、請求項6に記載されたものは、複数の杭打ち機を前記杭打ちリーダに設けた張出部に取り付け、水平移動又は回転移動させることによって杭体の状態に適した杭打ち機が配置できる。
【0030】
このため、短時間で杭打ち機を切り替えることが可能になり、作業の効率化を図ることができる。
【0031】
また、請求項7に記載されたものは、前記連結部が開閉自在に形成されている。
【0032】
このため、船体間に運び込まれた杭体を起立させる際に、前記連結部が支障となる場合は開放することによって杭体を迅速に建て起こすことができる。
【0033】
そして、請求項8に記載の発明は、前記杭打ち船を使用して、船体間の水面に浮かべられた杭体を建て起こし、船体の長手方向の略中央に位置決めした杭体の頭部に杭打ち機を装着して杭打ち作業をおこなう。
【0034】
このため、待ち時間が発生することなく、一連の作業として効率的に正確な杭打ち作業をおこなうことができ、工期の短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0036】
なお、前記従来例と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0037】
図1及び図2は、本実施の形態の杭打ち船10の構成を示した図である。
【0038】
まず、構成から説明すると、このような本実施の形態の杭打ち船10は、間隔を置いて並列させた船体11,11と、その船体11,11間を連結させる船首連結部12及び船尾連結部13と、その連結部12,13間に立設された杭打ちリーダ15と、前記船体11,11間であって前記船体11の長手方向の略中央に杭打ち動作線を設定できるように前記杭打ちリーダ15に取り付けられた、杭打ち機としての油圧ハンマ16A又はバイブロハンマ16Bと、を有する。
【0039】
本実施の形態の船体11は、平面視略長方形の台船であって、この船体11は、間隔を置いて2体が略平行に並べられる。この間隔は、船体11,11間に打設される杭体18の直径よりも広く、杭体18の打設中にも、船体11,11間の水面7に次に打設される杭体18を浮かべておくことができる間隔が確保されるように設定される。
【0040】
また、船首連結部12、及び船尾連結部13は、船体11,11の船首付近又は船尾付近の船体11,11間を連結させる部材であり、この連結部12,13によって2体の船体11,11は一体化される。
【0041】
一方、これらの連結部12,13は、船体11の長さと杭体18の長さの関係にもよるが、杭体18を建て起こす際の障害になる場合がある。このため、例えば船首連結部12を以下のように開閉自在に構成する。
【0042】
すなわち、船首連結部12は、端部に凸部を設けた凸桁部12aと、端部にその凸部が嵌る凹部を設けた凹桁部12bとによって形成させる。また、凸桁部12a及び凹桁部12bの他端は、ヒンジ構造によってそれぞれの船体11,11の切り込みに固定される。
【0043】
このように構成された船首連結部12は、図1に示すように、連結時は凸桁部12aと凹桁部12bが嵌りあって連結され、開放時は凸桁部12a及び凹桁部12bがヒンジを中心に回動して起き上がって開放される。
【0044】
また、船首連結部12と船尾連結部13の間の船体11,11間には、支持台14が架け渡され、その上には櫓部17が設置される。この支持台14は、櫓部17が設置できる程度の平面積を有する部材で、船首連結部12側の側面の略中央付近を切り欠いて、杭体18を櫓部17の近傍に配設できるように構成される(図1参照)。
【0045】
そして、櫓部17は、長尺状の鋼材等を高く組み上げて構築される。この櫓部17は、ヒンジ17b,・・・を介して支持台14上に固定される。
【0046】
さらに、櫓部17の船尾側の脚部には、伸縮自在な油圧シリンダ17a,17aが配備され、その油圧シリンダ17a,17aを伸縮させることによって、櫓部17を傾けることができるように構成される。
【0047】
また、この櫓部17の船首側であって船体11,11間の略中央部には、柱状の杭打ちリーダ15が支持台14上面に対して略垂直となるように取り付けられる。さらに、杭打ちリーダ15は、杭打ち動作線が船体11,11の長手方向の略中央に設定されるような位置に取り付けられる。
【0048】
この杭打ちリーダ15は、外筒に収納された内筒が上昇又は下降することで伸縮するように構成されており、高度制限のある場所においては縮められ、制限が解除された際に伸長される。
【0049】
また、杭打ちリーダ15の櫓部17よりも上方に突出した部分には、張出部としての回動張出部15bが取り付けられる。この回動張出部15bは、杭打ちリーダ15の軸を中心に回動可能に、かつ軸直交方向に張り出されるように取り付けられる。
【0050】
この回動張出部15bには、杭体18の頭部を打撃することによって打設する油圧ハンマ16Aが吊り下げられる。
【0051】
また、杭打ちリーダ15の回動張出部15bよりも上方には、軸直交方向に張り出されるように上段張出部15cが設けられる。この上段張出部15cには、杭体18を振動によって打設するバイブロハンマ16Bが吊り下げられる。
【0052】
そして、この上段張出部15cは、杭体18の建て込み時に頭部を通過させることができるように、平面視V字型に形成される。
【0053】
さらに、上段張出部15cには、油圧シリンダの伸縮によって、船首及び船尾方向に傾斜可能に固定された上部リーダ15dが設けられる。この上部リーダ15dの上部から張り出された架台からは、先端にフックを有する吊具15eが吊り下げられる。
【0054】
また、杭打ちリーダ15の下端付近には、打設される杭体18を把持させるパイルキーパ15aが取り付けられる。このパイルキーパ15aは、杭体18を側方から取り込めるように開放部を設けた平面視略C字型の装置であって、杭体18の横方向の移動を制限することができる。
【0055】
このパイルキーパ15aは、杭打ちリーダ15の軸方向に沿って間隔を置いて、複数取り付けられる。
【0056】
また、船体11には、船体11を所定の位置に係留させるために使用する係留用ウインチ19が、船首及び船尾付近に取り付けられる。
【0057】
そして、建て起こし時に杭体18の下部を吊る移動ウインチ20が、櫓部17よりも船尾側の船体11,11間に設けられる。この移動ウインチ20は、船体11の船首・船尾方向にスライド移動させることができる。
【0058】
次に、本実施の形態の杭打ち船10を使用した杭の打設方法について説明すると共に、その作用について説明する。
【0059】
図3及び図4は、杭の打設方法の作業工程を示した図である。
【0060】
まず、図3(a)に示すように、杭打ち船10を所定の位置に係留する。係留は、先端に錨を付けたワイヤロープ19aと、それを巻き取る係留ウインチ19を使用しておこなう。
【0061】
また、船体11,11間には、浮体を付けて水面7に浮かべて運搬された杭体18を引き込み、船体11,11と並列させておく。これらの作業は、高度制限以下の高さになるまで杭打ちリーダ15を縮めておくことで、制限時間内であっても行なうことができる。そして、制限が解除された後に、杭打ちリーダ15を所定の高さまで伸長させる。
【0062】
図3(b)は、船体11,11間に浮かべた杭体18を吊り上げる作業工程を示した図である。
【0063】
まず、油圧シリンダ17aを伸長させることによって、櫓部17を船首方向に傾斜させる。この際、上部リーダ15dは、船尾方向に傾斜させる。
【0064】
そして、上段張出部15cから吊り下げた吊具15fを杭体18の上部に玉掛ける。さらに、杭体18の下部には、移動ウインチ20から吊り下げた吊具20aを玉掛ける。
【0065】
次に、図3(c)に示すように、杭体18を建て起こす。この際、船首連結部12(12a,12b)は開放して、建て込みの支障にならないようにする。
【0066】
そして、吊具15fの巻き上げ、又は櫓部17の起立によって、杭体18の上部を持ち上げ、櫓部17に引き寄せる。これに伴って、杭体18の下部を吊る吊具20aを取り付けた移動ウインチ20は、船首方向に移動する。この際、移動ウインチ20は、吊具20a側にワイヤロープを送り出す。
【0067】
次に、垂直に起立させた杭体18の頭部に、図4(a)に示すように上部リーダ15dから吊り下げた吊具15eを玉掛ける。そして、上部リーダ15dの吊具15eによって杭体18を所定の高さまで引き上げる。
【0068】
このようにして建て起こされた杭体18は、杭打ちリーダ15に取り付けられたパイルキーパ15a,15aで把持され、位置及び傾斜の微調整が行なわれる。
【0069】
さらに、図4(b)に示すように、杭体18の頭部にバイブロハンマ16Bを装着する。このバイブロハンマ16Bを稼動させることによって杭体18の頭部が下降した分は、杭打ちリーダ15を縮めることによって追従させる。
【0070】
杭打ちリーダ15が最も低い高さまで縮められた後は、バイブロハンマ16Bを吊り下げているワイヤを送り出すことで、杭体18の打設を継続させる。このようなバイブロハンマ16Bによる打設は、例えば上段のパイルキーパ15aを杭頭が通過するまでおこなう。
【0071】
そして、杭打ち機の切り替え位置まで到達した時点で、バイブロハンマ16Bを杭頭から解除して、上段張出部15cまで巻き上げる。さらに、油圧ハンマ16Aが杭体18の直上に配置される位置まで、回動張出部15bを杭打ちリーダ15まわりに回動させる。
【0072】
次に、図4(c)に示すように、油圧ハンマ16Aが杭体18の頭部に当接されるまで下降させて、油圧ハンマ16Aによる打設をおこなう。また、この油圧ハンマ16Aによる打設と併行して、船体11,11間に杭体18を引き込む作業をおこない、次の杭体18の打設作業に備える。
【0073】
以上に示したように、本実施の形態によれば、船体11,11間であって船体11の長手方向の略中央で杭体18を打設するので、杭体18の沈設、及び打設の進行に伴って吊荷重が変化しても、船体11,11及び杭体18が傾くことがほとんどなく、正確な位置に精度よく杭体18を打設することができる。
【0074】
また、杭体18の打設中に、船体11,11間の隙間に次に打設する杭体18を引き込み、待機させておくことができるので、連続して効率よく杭体18を打設することができる。
【0075】
そして、前記杭打ちリーダ15は伸縮自在に形成されているため、時間帯によって高度制限を受ける場所で杭打ちを行なう場合であっても、制限時間内は杭打ちリーダ15を縮めた状態で船体11,11の位置決めや、杭体18の引き込み作業などを進めることができる。
【0076】
さらに、制限が解除された後には、杭打ちリーダ15を伸長して、杭打ち作業に即座に取り掛かることができる。
【0077】
また、杭打ちリーダ15に回動張出部15b及び上段張出部15cを設けて、それぞれに油圧ハンマ16A又はバイブロハンマ16Bを配備し、油圧ハンマ16Aを使用する際には、回動張出部15bを回動させることで、即座に杭打ち機を切り替えることができる。
【0078】
そして、船首連結部12は開閉自在に形成されているため、船体11,11間に運び込まれた杭体18を起立させる際に開放することによって、杭体18を迅速に建て起こすことができる。
【0079】
さらに、船体11,11間の水面7には、杭体18を浮かべて次の杭体18の打設作業まで待機させておくことができるので、待ち時間が発生することなく、一連の作業として効率的に杭打ち作業をおこなうことができ、工期の短縮化を図ることができる。
【実施例1】
【0080】
以下、前記した実施の形態の実施例1について説明する。ここで、図5及び図6は、実施例1の杭打ち船30の構成を示した図である。
【0081】
まず、構成から説明すると、このような本実施の形態の杭打ち船30は、間隔を置いて並列させた船体31,31と、その船体31,31間を連結させる船首連結部32及び船尾連結部33と、その連結部32,33間に立設された杭打ちリーダ35,35と、前記船体31,31間であって前記船体31の長手方向の略中央に杭打ち動作線を設定できるように前記杭打ちリーダ35,35に取り付けられた杭打ち機としての油圧ハンマ36A又はバイブロハンマ36Bと、を有する。
【0082】
この実施例1では、杭打ちリーダ35,35は、2体の船体31,31上にそれぞれ立設される。また、この杭打ちリーダ35,35を支える櫓部37,37は、回転移動架台34を介して船体31,31上に配置される。
【0083】
この回転移動架台34は、船首・船尾方向及び船体側面方向にスライド移動可能な平面視正方形のスライド台34bと、その上に回転自在に取り付けられた平面視円形の回転台34aとによって構成される。
【0084】
そして、その上に設置される櫓部37の杭打ちリーダ35の反対側の脚部には、伸縮自在な油圧シリンダ37a,37aが配備され、その油圧シリンダ37a,37aを伸縮させることによって、櫓部37の傾きが調整される。
【0085】
さらに、杭打ちリーダ35は、伸縮自在に形成され、その上端には、杭打ちリーダ35の軸直交方向の両側に張り出された張出部としての回動張出部35bが取り付けられる。
【0086】
この回動張出部35bは、杭打ちリーダ35の軸を中心に回動自在に取り付けられ、一方の張り出しには油圧ハンマ36Aが吊り下げられ、他方の張り出しにはバイブロハンマ36Bが吊り下げられる。
【0087】
また、回転移動架台34と船尾連結部33の間には、図5に示すように、船首・船尾方向にレール38b,38bに沿って移動する架台38aが、船体31,31間を跨いで設けられる。
【0088】
この架台38aには、杭体18の吊り上げに使用される移動吊具38が吊り下げられる。この移動吊具38は、架台38aに沿って各船体31,31方向に移動させることができる。
【0089】
次に、実施例1の杭打ち船30を使用した杭の打設方法について説明すると共に、その作用について説明する。
【0090】
まず、船体31,31間に引き込んだ杭体18を、船尾側に移動させた架台38aの移動吊具38に玉掛ける。そして、移動吊具38を巻き上げて杭体18を建て起こし、架台38aを杭打ちリーダ35方向に移動させる。
【0091】
次に、回転移動架台34を船尾側に移動させると共に、回動張出部35bを回転させ、バイブロハンマ36Bを移動吊具38で吊った杭体18の頭部に装着する。
【0092】
そして、パイルキーパ35a,35aで杭体18を把持できる位置まで回動張出部35bを回転させて杭体18を移動させる。さらに、回転移動架台34又はパイルキーパ35a,35aの調整によって、杭体18の打設位置に合わせる。
【0093】
さらに、バイブロハンマ36Bによる打設を所定の位置まで行なった後に、バイブロハンマ36Bを杭頭から外して巻き上げ、回動張出部35bを回転させることによって油圧ハンマ36Aを杭頭にセットする。
【0094】
この油圧ハンマ36Aによる打設が終了した杭体18の頭部に、別の杭体18を継ぎ足して打設を続ける際には、杭打ちリーダ35を伸長して杭体18を所定の高さまで持ち上げた後に、杭体18,18間の接合をおこなって杭体18の打設を続ける(図6左側参照)。
【0095】
実施例1では、それぞれの船体31,31に、杭打ちリーダ35,35及び杭打ち機(油圧ハンマ36A,バイブロハンマ36B)がそれぞれ配置されているので、杭体18,18の打設も並行又は連続して行なうことができる。
【0096】
すなわち、移動吊具38で吊り上げた杭体18をバイブロハンマ36Bに装着した後は、次の杭体18を吊り上げてもう一方のバイブロハンマ36Bに装着する作業に取り掛かることができるので、図6に示すように、2本の杭体18,18の打設作業を並行しておこなうことができる。このため、杭打ち作業全体の工期を大幅に短縮することができる。
【0097】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0098】
以下、前記した実施の形態の実施例2について説明する。ここで、図7及び図8は、実施例2の杭打ち船40の構成を示した図である。
【0099】
まず、構成から説明すると、このような本実施の形態の杭打ち船40は、間隔を置いて並列させた船体41,41と、その船体41,41間を連結させる船首連結部42及び船尾連結部43と、その連結部42,43間に立設された杭打ちリーダ45と、前記船体41,41間であって前記船体41の長手方向の略中央に杭打ち動作線を設定できるように前記杭打ちリーダ45に取り付けられた、杭打ち機としての油圧ハンマ46A又はバイブロハンマ46Bと、を有する。
【0100】
この実施例2では、櫓部47は、船体41,41間に架け渡されて構築される。このため、櫓部47は、杭打ちリーダ45を支持する機能と、船体41,41間を連結する機能を有する。この櫓部47は、長尺状の鋼材等を高く組み上げて構築される。
【0101】
また、櫓部47の船首側には、取付部47a,47aを介して杭打ちリーダ45が取り付けられる。この杭打ちリーダ45の上端には、平面視U字型のU字型張出部45aが船首方向に張り出されるように設けられる。
【0102】
このU字型張出部45aには、船首・船尾方向に移動する移動架台45b,45c,45dが取り付けられ、それぞれに油圧ハンマ46A、バイブロハンマ46B及び吊具48が吊り下げられる(図8参照)。
【0103】
また、建て起こした杭体18を把持させるための移動パイルキーパ44が、杭打ちリーダ45よりも船首側に設けられる。この移動パイルキーパ44には、船首・船尾方向への移動が可能な移動体に杭体18を把持させる把持部44aが取り付けられている。
【0104】
次に、実施例2の杭打ち船40を使用した杭の打設方法について説明すると共に、その作用について説明する。
【0105】
まず、船体41,41に配備したスパット41a,・・・を伸長させることによって、杭打ち船40を所定の位置に定着させる。また、杭打ちリーダ45を所定の高さまで伸長させる。
【0106】
そして、船体41,41間に引き込んだ杭体18を、移動架台45dに吊り下げた吊具48に玉掛ける。さらに、吊具48を巻き上げて杭体18を建て起こし、杭体18を打設する位置まで移動架台45dを移動させる。
【0107】
次に、所定の位置まで移動させた杭体18の下部に、移動パイルキーパ44を移動させ、把持部44aによって杭体18を把持させる。
【0108】
そして、杭体18の直上まで移動架台45cに吊り下げたバイブロハンマ46Bを移動させ、杭頭にバイブロハンマ46Bを装着する。
【0109】
このバイブロハンマ46Bによる打設を所定の位置まで行なった後に、バイブロハンマ46Bを杭頭から外して巻き上げ、移動架台45bを移動させることによって油圧ハンマ46Aを杭頭にセットし、油圧ハンマ46Aによる打設をおこなう。
【0110】
実施例2では、櫓部47が船体41,41間に架け渡されているため、船体41,41間が強固に連結され、一体化される。また、櫓部47は水面近くに配設される部材が少ないため、杭体18の建て起こし、及び杭打ち作業の支障になることはない。
【0111】
また、移動架台45b,45c,45dを、船首・船尾方向に水平移動させるだけで、吊具48、油圧ハンマ46A、バイブロハンマ46Bを次々と切り替えることができるので、切り替え作業を短時間でおこなうことができる。
【0112】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【0113】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0114】
例えば、前記実施の形態、実施例1及び実施例2で設定した船首方向、船尾方向は、反対であってもよい。
【0115】
また、杭打ちリーダ15,35,45の伸縮機構は、前記した機構に限定されるものではなく、多段階に配設された油圧ジャッキで押し上げるような機構や、滑車とウインチを組み合わせて引き上げるような機構などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の最良の実施の形態の杭打ち船を説明する斜視図である。
【図2】本発明の最良の実施の形態の杭打ち船を説明する側面図である。
【図3】本発明の最良の実施の形態の杭の打設方法の作業工程を示した説明図である。
【図4】本発明の最良の実施の形態の杭の打設方法の作業工程を示した説明図である。
【図5】実施例1の杭打ち船を説明する平面図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】実施例2の杭打ち船を説明する平面図である。
【図8】図7のB−B線側面図である。
【図9】従来例の杭打ち船による杭の打設方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0117】
10,30,40 杭打ち船
11,31,41 船体
12,32,42 船首連結部(連結部)
13,33,43 船尾連結部(連結部)
14 支持台
15,35,45 杭打ちリーダ
15b,35b 回動張出部(張出部)
15c 上段張出部(張出部)
45a U字型張出部(張出部)
16A,36A,46A 油圧ハンマ(杭打ち機)
16B,36B,46B バイブロハンマ(杭打ち機)
17,37,47 櫓部
18 杭体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を置いて並列させた船体と、その船体間を船首及び船尾付近で連結させる連結部と、該連結部間に立設されて前記船体に取り付けられた杭打ちリーダと、前記船体間であって前記船体の長手方向の略中央に杭打ち動作線を設定できるように前記杭打ちリーダに取り付けられた杭打ち機と、を有することを特徴とした杭打ち船。
【請求項2】
前記杭打ちリーダは、前記船体間に架け渡された支持台の上に設置された櫓部を介して前記船体に取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載の杭打ち船。
【請求項3】
前記杭打ちリーダ及びそれに取り付けられた前記杭打ち機は、前記それぞれの船体上にそれぞれ設置されたことを特徴とする請求項1に記載の杭打ち船。
【請求項4】
前記杭打ちリーダは、前記船体間に架け渡された櫓部を介して前記船体に取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載の杭打ち船。
【請求項5】
前記杭打ちリーダは、軸方向に沿って伸縮自在に形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の杭打ち船。
【請求項6】
前記杭打ち機は、複数配備され、面内移動させることによっていずれか一台の杭打ち機が杭打ち動作線上に配置されるように、前記杭打ちリーダに設けた張出部に取り付けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の杭打ち船。
【請求項7】
前記連結部の少なくとも一方は、開閉自在に形成されたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の杭打ち船。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の杭打ち船を使用した杭の打設方法であって、
前記船体間の水面に杭体を浮かべ、該杭体を前記船体間で建て起こして前記船体の長手方向の略中央に配設し、該杭体の頭部に前記杭打ち機を装着して杭体を打設することを特徴とする杭の打設方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−63684(P2006−63684A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248727(P2004−248727)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000146869)株式会社森長組 (4)
【出願人】(599027312)株式会社 吉田組 (5)
【出願人】(591043477)寄神建設株式会社 (17)
【Fターム(参考)】