説明

杭施工装置及び場所打ちコンクリート杭の構築方法

【課題】鉄道に隣接する場所や狭隘な場所であっても、効率的に場所打ちコンクリート杭を構築することが可能な杭施工装置を提供する。
【解決手段】場所打ちコンクリート杭4を構築する際に使用する杭施工装置1であって、その施工箇所40を挟んで一方に配置される掘削装置2と、他方に配置される資機材供給装置3とを備えている。
そして、掘削装置は、車輪211が設けられた掘削側台車部21と、その上に形成される掘削側フレーム部22と、掘削側フレーム部に上下方向にスライド可能に取り付けられるスイベル23と、掘削側揚重部25とを有している。また、資機材供給装置3は、車輪311が設けられた資機材側台車部31と、その上に形成される資機材側フレーム部32と、資機材側揚重部33と、資機材を横移動させる横移動部34とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の脇などの狭隘な場所に場所打ちコンクリート杭を構築する際に使用する杭施工装置、及びそれを使用した場所打ちコンクリート杭の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道の軌道に隣接する場所に杭を施工するに際して、短期間で効率的に杭を打設するために、杭打ち装置を使用することが知られている(特許文献1−3など参照)。
【0003】
すなわち、供用中の鉄道を安全に走行させるために、このような工事は鉄道の営業が終了した夜間、又は鉄道の建築限界を侵さない範囲でおこなわなければならない。このため、機動性及び施工性に優れた杭打ち装置を開発して、効率的に杭の施工をおこなっている。
【特許文献1】特公平8−30337号公報
【特許文献2】実用新案登録第2587546号公報
【特許文献3】特開平7−331655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1−3に開示された杭打ち装置は、H形鋼材を打設するための専用機である。
【0005】
他方、鉄道の軌道や道路などの上方に高架橋を構築する場合は、杭基礎に作用する荷重が大きくなるため、場所打ちコンクリート杭のように支持力の大きな杭を構築しなければならない。
【0006】
そこで、本発明は、鉄道に隣接する場所や狭隘な場所であっても、効率的に場所打ちコンクリート杭を構築することが可能な杭施工装置、及びそれを使用した場所打ちコンクリート杭の構築方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の杭施工装置は、場所打ちコンクリート杭を構築する際に使用する杭施工装置であって、前記場所打ちコンクリート杭の施工箇所を挟んで一方に配置される掘削装置と、他方に配置される資機材供給装置とを備え、前記掘削装置は、前記施工箇所への移動を可能にする移動手段が設けられた掘削側台車部と、前記掘削側台車部上に形成される掘削側フレーム部と、前記掘削側フレーム部に上下方向にスライド可能に取り付けられる掘削機部と、前記掘削側フレーム部又は前記掘削側台車部に取り付けられる掘削側揚重部とを有し、前記資機材供給装置は、前記施工箇所への移動を可能にする移動手段が設けられた資機材側台車部と、前記資機材側台車部上に形成される資機材側フレーム部と、前記資機材側フレーム部又は前記資機材側台車部に取り付けられる資機材側揚重部と、資機材を前記資機材側台車部上で横移動させる横移動部とを有していることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記掘削装置に、前記掘削側台車部の上面高さを調整する高さ調整手段を設けることができる。
【0009】
また、前記掘削側フレーム部と前記掘削側台車部とを別体に形成し、前記掘削側台車部上で前記掘削側フレーム部の平面位置を調整する平面位置調整手段を設けることもできる。さらに、前記平面位置調整手段として前記掘削側台車部の中央を挟んだ両側に水平ジャッキがそれぞれ配置され、それらの水平ジャッキはそれぞれ独立して伸縮量の調整が可能な構成であってもよい。
【0010】
また、前記掘削装置の前記移動手段は軌条を走行させる車輪であって、前記軌条を把持させる把持手段を前記掘削側台車部の下面側に設けた構成とすることもできる。
【0011】
さらに、前記掘削側揚重部及び前記資機材側揚重部として、前記掘削側台車部及び前記資機材側台車部の前記場所打ちコンクリート杭の施工箇所側に、鉄筋籠に係合させる歯車と、それを回転させるモータとを備えた歯車支持部が設けられた構成であってもよい。
【0012】
また、本発明の場所打ちコンクリート杭の構築方法は、上記杭施工装置を使用しておこなう場所打ちコンクリート杭の構築方法であって、前記掘削装置及び前記資機材供給装置を、前記場所打ちコンクリート杭の施工箇所に向けて前記移動手段によって移動させ、前記掘削装置によって掘削をおこなう際には、前記資機材供給装置により掘削に必要な資機材を供給し、前記掘削装置の前記掘削側揚重部と前記資機材供給装置の前記資機材側揚重部とによって共吊りされた鉄筋籠を掘削孔に挿入することを特徴とする。
【0013】
さらに、鉄道に隣接した場所で杭施工装置を使用しておこなう場所打ちコンクリート杭の構築方法であって、前記掘削装置及び前記資機材供給装置が移動する際に前記鉄道の建築限界を侵すことのない位置に軌条を敷設し、前記掘削装置及び前記資機材供給装置を、前記場所打ちコンクリート杭の施工箇所に向けてそれぞれ前記軌条に沿って走行させ、前記施工箇所に到達して掘削を開始する前に、前記把持部で前記軌条を把持させることを特徴とする方法であってもよい。
【0014】
また、杭施工装置を使用しておこなう場所打ちコンクリート杭の構築方法であって、前記掘削装置及び前記資機材供給装置を、前記場所打ちコンクリート杭の施工箇所に向けて前記移動手段によって移動させ、前記掘削装置によって掘削をおこなう際には、前記資機材供給装置により掘削に必要な資機材を供給し、掘削孔が形成された後に、前記掘削装置の前記歯車支持部と前記資機材供給装置の前記歯車支持部とによって鉄筋籠を支持させ、前記モータを回転させることによって前記掘削孔に前記鉄筋籠を送り出すことを特徴とする方法とすることもできる。
【発明の効果】
【0015】
このように構成された本発明の杭施工装置は、場所打ちコンクリート杭を構築するための孔を掘削する掘削装置と、掘削時に使用する機材や鉄筋籠などの資材を供給する資機材供給装置とを備えている。
【0016】
そして、これらの掘削装置及び資機材供給装置には、移動手段が設けられており、必要な機器や資機材を搭載して場所打ちコンクリート杭を構築する施工箇所へ迅速に移動することができる。
【0017】
また、掘削装置は掘削側台車部及び掘削側揚重部を有し、資機材供給装置は資機材側台車部及び資機材側揚重部を有しているので、資機材の搬送、吊り下ろしなどがクレーンを使わなくてもおこなえる。このため、クレーンが使用できないような狭隘な場所や上空に使用制限のある場所であっても、場所打ちコンクリート杭を構築する際に必要な掘削、鉄筋の建て込み、コンクリートの打設を効率的におこなうことができる。
【0018】
また、掘削装置に、掘削側台車部の上面高さを調整する高さ調整手段を設けることで、設置面に傾きがあっても上面を水平にすることができ、常に鉛直方向の正確な杭施工が可能となる。
【0019】
さらに、掘削側フレーム部と掘削側台車部とを別体に形成し、平面位置調整手段によって掘削側フレーム部を移動させることができるので、平面位置の微調整が容易になり、正確な位置に、正確な形状の掘削孔を形成することができる。
【0020】
また、掘削側台車部の中央を挟んだ両側に水平ジャッキを配置し、それらの伸縮量の調整を独立しておこなえるようにすることで、掘削側台車部上で掘削側フレーム部を前後方向、回転方向に移動させることが可能になり、平面内のあらゆる方向の位置合わせができるようになる。
【0021】
さらに、掘削装置の移動手段は軌条を走行させる車輪とし、軌条を把持させる把持手段を前記掘削側台車部の下面側に設けることで、掘削をおこなう際に必要となる反力を容易に確保することができる。
【0022】
また、掘削側台車部及び資機材側台車部に鉄筋籠を支持させる歯車支持部をそれぞれ取り付けることで、掘削孔に挿入する鉄筋籠の支持及び送り出しを安定しておこなうことができる。すなわち、鉄筋籠は、構築する杭に必要な長さになるまで溶接などによって長手方向に順次、接合することで延伸させていくため、杭長が長くなるほど重量が大きくなり、支持及び送り出し作業が困難になる。
【0023】
このため、掘削装置と資機材供給装置とによって両側から鉄筋籠を支持させるとともに、モータの駆動力によって送り出し可能にしておくことで、安定して掘削孔に鉄筋籠を挿入することができる。
【0024】
また、本発明の場所打ちコンクリート杭の構築方法では、掘削装置及び資機材供給装置を移動手段によって施工箇所に向けて移動させ、掘削時には掘削装置に必要な資機材を資機材供給装置から供給し、鉄筋籠は掘削側揚重部と資機材側揚重部とによって共吊りさせて掘削孔に挿入する。
【0025】
このため、場所打ちコンクリート杭を構築する工程において、掘削準備、掘削及び鉄筋籠の挿入を、作業時間の制限を受けることなく迅速におこなうことができる。
【0026】
また、鉄道に隣接した場所に場所打ちコンクリート杭を構築する際に、予め鉄道の建築限界を侵すことのない位置に軌条を敷設する。
【0027】
このため、鉄道の営業時間中に掘削装置及び資機材供給装置を移動させて、場所打ちコンクリート杭の構築作業をおこなっても、鉄道に影響を及ぼすことがなく、安全かつ効率的に工事をおこなうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0029】
本実施の形態の杭施工装置1は、図4に示すように、場所打ちコンクリート杭4の施工箇所40を挟んで一方に配置される掘削装置2と、他方に配置される資機材供給装置3とを備えている。
【0030】
まず、図1の側面図及び図2の平面図を参照しながら、掘削装置2の構成について説明する。
【0031】
この掘削装置2は、施工箇所40への移動を可能にする移動手段としての車輪211が設けられた掘削側台車部21と、掘削側台車部21上に別体として形成される掘削側フレーム部22と、掘削側フレーム部22に上下方向にスライド可能に取り付けられる掘削機部としてのスイベル23と、掘削側フレーム部22から吊り下げられる掘削側揚重部25と、によって主に構成される。
【0032】
この掘削側台車部21は、掘削装置2のベースとなる部分で、枠状又はその上面に鋼板や金網などを貼設した盤状に形成される。また、この掘削側台車部21の下面側には複数の車輪211,・・・が取り付けられている。この車輪211は、軌条11を走行させるための鉄道用のボギー車輪である。なお、この掘削装置2は、駆動力源を備えた自走式であっても、駆動車両に牽引又は押し出されるなどして移動する方式であってもよい。
【0033】
また、掘削側台車部21の両端には、把持部としてのレールクランプ213,・・・が設けられる。このレールクランプ213は、掘削装置2を移動させる際には、軌条11に接触しないように開放させる。また、掘削装置2が所望する位置まで移動した後には、レールクランプ213を閉じて軌条11を把持させる。このようなレールクランプ213,・・・を、掘削側台車部21の四隅に配置することで、作業時の前後方向、左右方向及び上下方向への移動及び浮き上りを防ぐことができる。
【0034】
さらに、掘削側台車部21の下面側には、高さ調整手段としての高さ調整ジャッキ212を設ける。この高さ調整ジャッキ212は、下端が軌条11に押し当てられて上下方向に伸縮する。そして、掘削側台車部21の四隅近傍に配置された高さ調整ジャッキ212,・・・の伸縮量を調整することで、軌条11,11間に高低差があったとしても、掘削側台車部21の上面が水平になるように調整することができる。
【0035】
また、この掘削側台車部21の上に配置される掘削側フレーム部22は、スイベル23及び掘削側揚重部25を取り付け、支持させる枠体である。この掘削側フレーム部22は、掘削側台車部21とは別体に形成され、その上を車輪242,・・・によって移動する。また、この車輪242,・・・が載置される掘削側台車部21上の走行面244,・・・に隣接して、ガイド壁243,・・・がそれぞれ取り付けられる。
【0036】
また、この車輪242,・・・は、掘削側フレーム部22の下枠224に取り付けられ、下枠224上には、基枠225及び支柱223が取り付けられる。
【0037】
一方、掘削側台車部21と掘削側フレーム部22とは、平面位置調整手段としての水平ジャッキ24,24によって連結されている。この水平ジャッキ24,24は、図2に示すように、掘削装置2の中央を挟んで両側にそれぞれ配置されている。
【0038】
この水平ジャッキ24は、後端が掘削側台車部21に固定され、先端が連結材241を介して掘削側フレーム部22に接続されている。この連結材241は、下枠224に架け渡された取付梁241aの下面から垂下された一対の板材2411とピン2412で構成されており、そのピン2412に水平ジャッキ24の先端を連結させる。
【0039】
そして、水平ジャッキ24,24をそれぞれ伸縮させると、双方の伸縮量が等しい場合は、掘削側フレーム部22は掘削側台車部21に平行のまま前後方向に移動することになる。また、図2の平面図に示すように、左右に配置された水平ジャッキ24,24の伸縮量が異なる場合は、掘削側フレーム部22は掘削側台車部21上で傾いて回転移動することになる。
【0040】
また、掘削側フレーム部22は、車輪242,・・・によって掘削側台車部21上を移動することになるが、その車輪242,・・・の移動可能な範囲は、図2に示すようにガイド壁243,・・・によって制限されるので、掘削側フレーム部22が掘削側台車部21上から脱落することはない。
【0041】
さらに、掘削側フレーム部22は、掘削側台車部21上で車輪242,・・・によって横方向に移動できるようになっているが、平面位置調整後は、横方向及び上下方向への移動が制限され、スイベル23及び掘削側揚重部25から掘削側フレーム部22に作用した荷重は、掘削側台車部21に伝達される構成となっている。すなわち、掘削側フレーム部22が掘削側台車部21から分離して転倒することのないようにストッパ(図示省略)が設けられている。
【0042】
また、掘削側フレーム部22の支柱223は、基枠225より上方に突出しており、その上端から掘削側台車部21の前方に向けて前方アーム221が水平に延設される。また、この前方アーム221と正反対の方向に後方アーム222が延設される。
【0043】
また、この前方アーム221の先端から掘削側揚重部25が吊り下げられる。この掘削側揚重部25は、前方アーム221から吊り下げられるブロック251と、そのブロック251に設けられるフック252と、前方アーム221の先端に取り付けられる滑車253と、後方アーム222の後端に取り付けられる滑車254と、基枠225上に設置されるウインチ256と、ブロック251に引っ掛けられて滑車253,254に架け渡されてウインチ256で巻き取られるワイヤーロープ255とから主に構成される。
【0044】
すなわち、このウインチ256からワイヤーロープ255が送り出されるとブロック251が下降し、ウインチ256でワイヤーロープ255を巻き取るとブロック251が上昇するため、フック252に係留された資機材を昇降させることができる。
【0045】
また、掘削側フレーム部22の支柱223には、それに沿って上下方向にスライド可能となるようにスイベル23が取り付けられる。すなわち、この支柱223の前面には、支柱223に沿ってガイドレール233gが上下方向に延設されており、このガイドレール233gにスイベル23の背面側に設けられたスライダ231を係合させることで上下方向にスライドさせる。
【0046】
このスイベル23は、昇降ジャッキ233を作動させると上方又は下方にスライドするように構成されている。この昇降ジャッキ233は、図1に示すように、両ロッド形の複動シリンダ2331と、その両側に配置されるロッド2332,2332とから主に構成される油圧ジャッキである。そして、複動シリンダ2331が掘削側フレーム部22に固定され、複動シリンダ2331を作動させると、両側のロッド2332,2332が上方又は下方に移動する。
【0047】
一方、スライダ231には、上端に上側チェーン233aが連結され、下端に下側チェーン233bが連結されている。この上側チェーン233aは、支柱223の上端付近に取り付けられたスプロケット233dと、昇降ジャッキ233の上側のロッド2332に取り付けられたスプロケット233cとに架け渡されることで蛇行して後方アーム222に端部が連結される。
【0048】
また、下側チェーン233bは、支柱223の下端付近に取り付けられたスプロケット233eと、昇降ジャッキ233の下側のロッド2332に取り付けられたスプロケット233fとに架け渡されることで蛇行して下枠224に端部が連結される。
【0049】
そして、このように構成された昇降ジャッキ233を作動させると、ロッド2332,2332が上昇したときには、スイベル23が下降し、ロッド2332,2332が下降したときにはスイベル23が上昇することになる。
【0050】
また、このスイベル23は、下端23aに接続されるドリルパイプ35を回転させる機能を備えている。また、ドリルパイプ35を通して掘削孔41内の掘削水が上昇し、スイベル23を経由して、その上端23bに接続された排水ホース232によって排出される。
【0051】
次に、図3の斜視図を参照しながら、資機材供給装置3の構成について説明する。
【0052】
この資機材供給装置3は、施工箇所40への移動を可能にする移動手段としての車輪311が設けられた資機材側台車部31と、資機材側台車部31上に形成される資機材側フレーム部32と、資機材側フレーム部32から吊り下げられる資機材側揚重部33と、資機材を資機材側台車部31上で横移動させる横移動部34と、によって主に構成される。
【0053】
この資機材側台車部31は、資機材供給装置3のベースとなる部分で、枠状部材の上面に鋼板や金網などが貼設されて荷台が形成される。また、この資機材側台車部31の下面側には複数の車輪311,・・・が取り付けられている。この車輪311は、軌条11を走行させるための鉄道用のボギー車輪である。なお、この資機材供給装置3も、掘削装置2と同様に、駆動力源を備えた自走式であっても、駆動車両に牽引又は押し出されるなどして移動する方式であってもよい。
【0054】
また、資機材側台車部31の両端には、把持部としてのレールクランプ312,・・・が設けられる。このレールクランプ312は、資機材供給装置3を移動させる際には、軌条11に接触しないように開放させる。また、資機材供給装置3が所望する位置まで移動した後には、レールクランプ312を閉じて軌条11を把持させる。このようなレールクランプ312,・・・を、資機材側台車部31の四隅に配置することで、資機材を吊り上げるなどの作業時に、前後方向、左右方向及び上下方向へ資機材供給装置3が移動したり、浮き上ったりすることを防ぐことができる。
【0055】
また、この資機材側台車部31の上に配置される資機材側フレーム部32は、資機材側揚重部33及び横移動部34を取り付け、支持させる枠体である。この資機材側フレーム部32は、資機材側台車部31に固定されて一体となっている。
【0056】
また、資機材側フレーム部32は、主に資機材側揚重部33の支持体となる前側フレーム321と、主に横移動部34の支持体となる横フレーム323とから構成される。
【0057】
この前側フレーム321は、資機材を揚重するのに必要な高さが確保できる高さに枠状に組み上げられる。また、前側フレーム321の前方には、供給する資機材が通過可能となる大きさの開口が形成されている。
【0058】
さらに、前側フレーム321の頂部には、それより前方に張り出されるアーム322が架け渡される。そして、このアーム322の先端から資機材側揚重部33が吊り下げられる。
【0059】
この資機材側揚重部33は、アーム322の先端から吊り上げられるブロック331と、そのブロック331に設けられるフック332と、アーム322の先端に取り付けられる滑車333と、アーム322の後端に取り付けられる滑車334と、その下方に設置されるウインチ336と、ブロック331に引っ掛けられて滑車333,334に架け渡されてウインチ336で巻き取られるワイヤーロープ335とから主に構成される。
【0060】
すなわち、このウインチ336からワイヤーロープ335が送り出されるとブロック331が下降し、ウインチ336でワイヤーロープ335を巻き取るとブロック331が上昇するため、フック332に係留された資機材を昇降させることができる。
【0061】
また、横フレーム323に支持される横移動部34は、資機材側台車部31上の前後方向(長手方向)にわたって延設される水平レール341と、その水平レール341に沿って移動する水平スライダ342と、その水平スライダ342から吊り下げられる巻上げウインチ343と、巻上げウインチ343と資機材(ドリルパイプ35など)を連結するチェーン344とから主に構成される。
【0062】
この水平スライダ342は、溝が形成された水平レール341を挟持する対となるローラを備えたもので、人力によってスライドさせるものであっても、動力によってスライドさせるものであってもよい。
【0063】
また、横フレーム323は、水平レール341を頂部に架け渡すことが可能な矩形枠材と、その矩形枠材の後方を支持させる柱材とによって形成され、矩形枠材の前方は前側フレーム321に接合されて支持される。
【0064】
次に、本実施の形態の杭施工装置1を使用した場所打ちコンクリート杭4の構築方法について、図4−図8を参照しながら説明する。
【0065】
このような杭施工装置1は、鉄道Rに隣接して両側に構築される場所打ちコンクリート杭4,・・・の施工に使用される。ここで、図5は鉄道Rの両脇に場所打ちコンクリート杭4,・・・を構築する現場の平面図、図6はその横断面図である。
【0066】
このような供用中の鉄道Rに隣接して工事をおこなう場合、図5,6に示すように、鉄道Rの両側に矢板R3、防護柵R1,R2,R4などを設ける。また、この防護柵R1は、図6に示すように、鉄道Rの建築限界R5を侵すことがない位置に設ける。すなわち、この建築限界R5の内側に機材がはみ出なければ、鉄道Rは安全に運行することができる。さらに、場所打ちコンクリート杭4,・・・を構築する場所の外側には、防護柵R2,R4を設ける。
【0067】
そして、この防護柵R1,R2に挟まれた空間に、枕木11a,・・・を並べ、場所打ちコンクリート杭4の施工箇所40の位置に合わせて軌条11,11を平行に敷設する。ここで、この軌条11,11は、掘削装置2及び資機材供給装置3を走行させた際に防護柵R1よりも鉄道R側にはみ出すことがない位置に合わせて敷設する。
【0068】
さらに、施工箇所40には、掘削を開始する前にスタンドパイプ42及びコルゲート管43を建て込んでおく。
【0069】
続いて、図4,5に示すように、施工箇所40を挟んで掘削装置2と資機材供給装置3とを対向させる。この掘削装置2と資機材供給装置3とによって、本実施の形態の杭施工装置1が構成される。
【0070】
また、施工箇所40近傍の所定の位置に掘削装置2及び資機材供給装置3を配置した後に、これらをレールクランプ213,312によってそれぞれ軌条11,11に固定する。なお、掘削装置2は、高さ調整ジャッキ212,・・・によって掘削側台車部21の上面を水平にした後に、レールクランプ213,・・・によって軌条11,11に固定する。
【0071】
さらに、掘削装置2の後方には、電源ユニット台車26、油圧ユニット台車27及びサクションポンプ台車28を配置する。なお、これらの台車26−28も、レールクランプ(図示省略)によって軌条11,11に固定する。
【0072】
また、サクションポンプ台車28には、図4に示すように、掘削装置2から延びる排水ホース232と沈殿水槽(図示省略)に繋がる搬送ホース281とを接続する。
【0073】
さらに、電源ユニット台車26及び油圧ユニット台車27は、掘削装置2及び資機材供給装置3と電線及び油圧ホース(図示省略)によって接続する。すなわち、昇降ジャッキ233、スイベル23、水平ジャッキ24、ウインチ256,336及び巻上げウインチ343などを作動させる電力及び油圧は、電源ユニット台車26及び油圧ユニット台車27から供給される。
【0074】
一方、この掘削装置2による掘削は、リバース工法によっておこなわれる。リバース工法では、スイベル23によってドリルパイプ35を回転させることでその下方に接続されたドリルビット351が回転して地盤が切削される。
【0075】
そこで、まず、ドリルビット351の中心が施工箇所40の中心(スタンドパイプ42及びコルゲート管43の中心)と一致するように、水平ジャッキ24,24をそれぞれ作動させて掘削側フレーム部22を掘削側台車部21上で動かし、スイベル23の平面位置の微調整をおこなう。
【0076】
続いて、調整された正確な位置にあるスイベル23に、下端にドリルビット351が取り付けられたドリルパイプ35を接続する。ここで、資機材供給装置3及びその後方の後続台車36(図5参照)には、多数のドリルパイプ35,・・・が積載されており、これらのドリルパイプ35,・・・を、順次、掘削装置2に供給することになる。
【0077】
すなわち、資機材供給装置3に積載されたドリルパイプ35を、図4に示すように横移動部34によって吊り上げて施工箇所40側に水平レール341(後続台車36では水平レール361、図5参照)に沿って水平移動(横移動)させ、資機材側揚重部33に吊り替えて掘削装置2側に運ぶ。この際、掘削装置2の掘削側揚重部25を使って、さらに吊り替え又は共吊りをおこなってもよい。
【0078】
また、ドリルパイプ35は、図4,6に示すように、掘削孔41の深さによって順次、継ぎ足すことで長さを調整する。例えば、スイベル23に接続されたドリルパイプ35に新たなドリルパイプ35を継ぎ足して更に深部の掘削をおこなう場合は、図4に示すようにスイベル23とドリルパイプ35の上端352とを切り離し、資機材側揚重部33によって吊り下げられた新たなドリルパイプ35の下端を上端352に接続し、スイベル23と新たに継ぎ足されたドリルパイプ35とを接合する。
【0079】
一方、掘削孔41内には、清水又は泥水が充填され、その水圧によって掘削時の孔壁の崩壊を防止している。そして、掘削土砂が混入した孔内水(掘削水)は、ドリルビット351の吸込み口(図示省略)から吸い込まれて、ドリルパイプ35,・・・、スイベル23、排水ホース232、サクションポンプ台車28及び搬送ホース281を通って沈殿水槽(図示省略)に排出される。また、沈殿水槽の上澄みから送水管29によって搬送された水は、吐出口29aから適宜、掘削孔41内に供給される。なお、掘削孔41の上部には、コルゲート管43及びスタンドパイプ42が配置されており、水位を掘削孔41上部まで上昇させて高い水圧を確保することができる。
【0080】
そして、このようにして所定の深度に至るまで掘削をおこない、大部分の掘削土砂を掘削孔41から排出した後に、ドリルパイプ35,・・・及びドリルビット351を掘削孔41から取り出す。
【0081】
この後、この掘削孔41には、鉄筋籠44を挿入してコンクリートを打設することになるが、鉄筋籠44を挿入する方法には複数の方法があり、本実施の形態では、一部で移動式クレーン5を使う方法を説明し、それ以外の方法については実施例で説明する。
【0082】
本実施の形態で説明する方法では、施工箇所40の上空に鉄筋籠44を移動させるために移動式クレーン5を使用する。この移動式クレーン5を使う作業は、鉄道Rの運行が終了した夜間におこなわれる。
【0083】
まず、トラックなどで現場に搬送されてきた鉄筋籠44を、図7に示すように移動式クレーン5によって施工箇所40上空まで移動させる。この移動式クレーン5の規格は、一体の鉄筋籠44を揚重できる程度のものでよい。
【0084】
また、この図7は、掘削孔41の上端に架け渡された仮支持材45で支持された状態の鉄筋籠44に、新たな鉄筋籠44を接合する工程を示している。この新たに供給される鉄筋籠44は、移動式クレーン5によって施工箇所40の上方まで運ばれた後に、既に掘削孔41に挿入されている鉄筋籠44の上端に当接するまで吊り下ろされ、溶接又は継手具によって上下の鉄筋籠44,44同士が接合される。
【0085】
そして、接合後の鉄筋籠44に、図8に示すように、掘削装置2の掘削側揚重部25のフック252と、資機材側揚重部33のフック332とを連結し、移動式クレーン5からの吊り替えをおこなう。
【0086】
このようにして掘削側揚重部25と資機材側揚重部33とに吊り替えられた鉄筋籠44,44から仮支持材45を撤去し、ウインチ256,336を作動させることによって掘削孔41内に鉄筋籠44,44を降下させる。ここで、2台のウインチ256,336を同調させることによって、鉄筋籠44,44を傾けることなく降下させることができる。
【0087】
この鉄筋籠44の継ぎ足し、降下は、掘削孔41の所定の深度に至るまで鉄筋籠44,・・・が挿入されるまでおこなわれる。そして、鉄筋籠44,・・・が挿入された掘削孔41内に沈降した土砂を泥水ポンプなどで取り除き、掘削孔41内に再びドリルパイプ35,・・・を挿入する。このドリルパイプ35,・・・を挿入する際にも、掘削装置2の掘削側揚重部25と、資機材供給装置3の資機材側揚重部33とが利用される。
【0088】
この工程で挿入されるドリルパイプ35,・・・は、コンクリートを打設するトレミー管として使用されるものである。このドリルパイプ35,・・・の上端からコンクリートを投入し、ドリルパイプ35,・・・によって下方に搬送し、掘削孔41の底部から徐々にコンクリートを打ち上げていく。
【0089】
また、ドリルパイプ35及びスタンドパイプ42は、コンクリートの打ち上がり状況に応じて、順次、撤去していく。この撤去の際にも、掘削側揚重部25と資機材側揚重部33が利用でき、それらを使って撤去されたドリルパイプ35及びスタンドパイプ42は資機材供給装置3の資機材側台車部31に積載される。
【0090】
次に、本実施の形態の杭施工装置1、及びそれを使用した場所打ちコンクリート杭4の構築方法の作用について説明する。
【0091】
このように構成された本実施の形態の杭施工装置1は、場所打ちコンクリート杭4を構築するための掘削孔41を掘削する掘削装置2と、掘削時に使用するドリルパイプ35などの機材や鉄筋籠44などの資材を供給する資機材供給装置3とを備えている。
【0092】
そして、これらの掘削装置2及び資機材供給装置3には、車輪211,311が設けられており、場所打ちコンクリート杭4を構築する施工箇所40まで迅速に移動することができる。
【0093】
また、掘削装置2及び資機材供給装置3に、施工に必要な機器や資機材を予め搭載しておくことができるので、施工箇所40に到達して直ぐに施工を開始することができる。
【0094】
また、掘削装置2は掘削側台車部21及び掘削側揚重部25を有し、資機材供給装置3は資機材側台車部31及び資機材側揚重部33を有しているので、資機材の搬送、吊り下ろしなどがクレーンを使わなくてもおこなえる。
【0095】
このため、移動式クレーン5が使用できないような営業時間中の鉄道Rに隣接した場所であっても、場所打ちコンクリート杭4を構築する際に必要な掘削、コンクリートの打設などを効率的におこなうことができる。
【0096】
さらに、掘削装置2に、掘削側台車部21の上面高さを調整する高さ調整ジャッキ212,・・・を設けることで、上面を容易に水平にすることができる。例えば、鉄道Rでは曲線部にカントがあり、軌条11,11を敷設しても外周側と内周側の高さが異なる場合がある。また、軌条11,11の延設方向に上り勾配、下り勾配などの高低差が生じることもある。このように軌条11,11の高さが異なっていると、その上に設置される掘削装置2の掘削側台車部21の上面にも傾きが生じ、そのまま掘削をおこなうと斜めに杭が構築されるおそれがある。
【0097】
そこで、高さ調整ジャッキ212,・・・によって高さを調整して予め掘削側台車部21の上面を水平にしておくことで、その後の掘削機部の位置合わせや姿勢制御を容易におこなうことができる。
【0098】
また、水平ジャッキ24によって掘削側フレーム部22の平面位置を微調整することで、正確な位置にスイベル23を配置することができ、正確な形状の掘削孔41を形成することができる。
【0099】
また、平面位置調整手段を伸縮量の調整が独立しておこなえる2台の水平ジャッキ24,24で構成することで、掘削側台車部21上で掘削側フレーム部22を前後方向、回転方向に移動させることが可能になる。すなわち、掘削側台車部21の中央を挟んで2台の水平ジャッキ24,24を配置し、左右の水平ジャッキ24,24の伸縮量を変えることで、水平ジャッキ24,24に押し出される掘削側フレーム部22を平面内で傾けることができる。このため、前後方向だけでなく横方向の位置調整が可能になり、正確な掘削位置への微調整を容易におこなうことができる。
【0100】
さらに、軌条11を把持させるレールクランプ213を掘削側台車部21の下面側に設けることで、掘削をおこなう際に必要となる反力を容易に確保することができる。すなわち、掘削時にドリルビット351に作用する地盤の反力が、ドリルパイプ35,・・・を介して伝達されスイベル23を押し上げる力となる。そして、この押し上げる力が掘削装置2の重量を上回ると、掘削装置2が浮き上ったり、傾いたりするおそれがある。
【0101】
これに対してレールクランプ213によって軌条11を把持させておくことで、掘削装置2が軌条11に固定され、浮上りや傾きを防止することができる。なお、レールクランプ213の把持力でも反力が足りない場合は、カウンターウエイトを積載したり、掘削装置2と資機材供給装置3とを連結部材(図示省略)により一体化させたりすることによって調整することができる。
【0102】
また、本実施の形態の場所打ちコンクリート杭4の構築方法では、鉄道Rに隣接した場所に場所打ちコンクリート杭4を構築する際に、予め鉄道Rの建築限界R5を侵すことのない位置に軌条11,11を敷設する。
【0103】
このため、鉄道Rの営業時間中に掘削装置2及び資機材供給装置3を移動させて、場所打ちコンクリート杭4の構築作業をおこなっても、鉄道Rに影響を及ぼすことがなく、安全かつ効率的に工事をおこなうことができる。
【0104】
また、軌条11,11を場所打ちコンクリート杭4の施工箇所40に合わせて敷設しておくことで、位置合わせを迅速におこなうことができる。
【0105】
さらに、鉄筋籠44,・・・群を掘削装置2の掘削側揚重部25と資機材供給装置3の資機材側揚重部33とによって共吊りするようにすれば、移動式クレーン5は、一つの鉄筋籠44を吊り上げることが可能な程度の大きさでよく、大型クレーンを使用する場合のように施工時間、施工場所の制限を受けることが少なくなる。
【実施例1】
【0106】
以下、前記した実施の形態の実施例1について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0107】
この実施例1では、鉄筋籠44を資機材供給装置6で運んで、掘削孔41に挿入する場合について、図9を参照しながら説明する。なお、掘削孔41を形成するまでの工程及び掘削装置2は、前記実施の形態と同様のため、説明を省略する。
【0108】
この資機材供給装置6は、図9に示すように、施工箇所40への移動を可能にする移動手段としての車輪611が設けられた資機材側台車部61と、資機材側台車部61上に固定される資機材側フレーム部62と、資機材側フレーム部62から吊り下げられる資機材側揚重部63と、資機材を資機材側台車部61上で横移動させる横移動部64と、によって主に構成される。
【0109】
この資機材側台車部61は、資機材供給装置6のベースとなる部分で、枠状部材の上面に鋼板や金網などを貼設した荷台が形成される。また、この資機材側台車部61の下面側には複数の車輪611,・・・が取り付けられている。この車輪611は、軌条11を走行させるための鉄道用のボギー車輪である。なお、この資機材供給装置6も、前記実施の形態で説明した資機材供給装置3と同様に、駆動力源を備えた自走式であっても、駆動車両に牽引又は押し出されるなどして移動する方式であってもよい。
【0110】
また、資機材側台車部61の両端及び中央には、把持部としてのレールクランプ612,・・・が設けられる。このレールクランプ612は、資機材供給装置6を移動させる際には、軌条11に接触しないように開放させる。また、資機材供給装置6が所望する位置まで移動した後には、レールクランプ612を閉じて軌条11を把持させる。このようなレールクランプ612,・・・を、資機材側台車部61の複数個所に配置することで、ドリルパイプ35だけでなく鉄筋籠44のように重量の大きな資機材を吊り上げる作業をしても、前後方向、左右方向及び上下方向へ資機材供給装置6が移動したり、浮き上ったりすることを防ぐことができる。
【0111】
また、この資機材側台車部61の上に配置される資機材側フレーム部62は、資機材側揚重部63及び横移動部64を取り付け、支持させる枠体である。また、この資機材側フレーム部62は、大型の鉄筋籠44が積載できるように内空の大きな直方体状に枠材によって形成されている。
【0112】
さらに、この資機材側フレーム部62の頂部には、前方に張り出されるアーム621が取り付けられる。そして、このアーム621の先端から資機材側揚重部63が吊り下げられる。
【0113】
この資機材側揚重部63は、アーム621の先端から吊り上げられるブロック631と、そのブロック631に設けられるフック632と、アーム621の先端に取り付けられる滑車633と、アーム621の後端に取り付けられる滑車634と、その後方に設置されるウインチ636と、ブロック631に引っ掛けられて滑車633,634に架け渡されてウインチ636で巻き取られるワイヤーロープ635とから主に構成される。
【0114】
すなわち、このウインチ636からワイヤーロープ635が送り出されるとブロック631が下降し、ウインチ636でワイヤーロープ635を巻き取るとブロック631が上昇するため、フック632に係留された資機材を昇降させることができる。
【0115】
また、横移動部64は、資機材側台車部61上の前後方向(長手方向)に延設される水平レール641と、その水平レール641に沿って移動する水平スライダ642と、その水平スライダ642から吊り下げられる巻上げウインチ643と、巻上げウインチ643と鉄筋籠44などの資機材とを連結する吊りワイヤ644とから主に構成される。
【0116】
この水平スライダ642は、溝が形成された水平レール641を挟持する対となるローラを備えたもので、人力によってスライドさせるものであっても、動力によってスライドさせるものであってもよい。
【0117】
また、この水平レール641は、平面視でアーム621よりも前方に張り出される。その張り出し量は、図9(c)に示すように、鉄筋籠44を立てた際に掘削孔41の真上まで移動可能な長さに形成するのが好ましい。
【0118】
次に、図9(a)−(c)を参照しながら、鉄筋籠44の搬送及び建て込みについて説明する。なお、この資機材供給装置6は、掘削時にはドリルパイプ35の供給に使用される。
【0119】
まず、図9(a)に示すように、鉄筋籠44を横向きにした状態で資機材側台車部61上に積載し、施工箇所40まで資機材供給装置6を移動させる。そして、所定の位置に到着した後にレールクランプ612,・・・によって軌条11を把持させ、吊りワイヤ644の下端を鉄筋籠44の略中央に連結する。なお、図示されていないが、鉄筋籠44の奥行き側も前面側と同様に吊りワイヤ644で連結されている。
【0120】
続いて、水平スライダ642によって鉄筋籠44を横向きのまま前方に移動させ、水平スライダ642が施工箇所40の真上に到達したところで鉄筋籠44の後端を押し下げながら巻上げウインチ643で吊りワイヤ644を徐々に巻き上げる。すると、図9(b)に示すように、鉄筋籠44は徐々に回転して起き上がる。
【0121】
そして、図9(c)に示すように完全に鉄筋籠44が施工箇所40の真上で直立した状態にし、前記実施の形態で説明したように、既に掘削孔41に挿入されている鉄筋籠44の上端に当接するまで巻上げウインチ643を作動させて吊り下げ、両者を溶接や継手具などで接合する。
【0122】
その後、資機材側揚重部63のフック632と掘削側揚重部25のフック252とを鉄筋籠44に連結し、鉄筋籠44,・・・群を支持させる。そして、ウインチ256,636を同調させて作動させることによって、鉄筋籠44,・・・群を掘削孔41内に降下させる。
【0123】
このように構成された実施例1の資機材供給装置6は、掘削時に必要となるドリルパイプ35,・・・だけでなく、鉄筋籠44の供給をおこなうことができる。
【0124】
このため、掘削、鉄筋籠44の建て込み、コンクリートの打設という場所打ちコンクリート杭4の構築に必要なすべての作業を、移動式クレーン5を使用することなくおこなうことができるので、鉄道Rの営業時間中であっても作業をおこなうことができ、早期に場所打ちコンクリート杭4を完成させることができる。さらに、クレーンが使用できない上空に使用制限のある場所や狭隘な場所であっても、鉄筋籠44を容易に建て込むことができる。
【0125】
また、鉄筋籠44は、後続台車(図示省略)によって順次、運搬させることで、杭長が長くなる場合であっても対応することができる。
【0126】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0127】
以下、前記した実施の形態の実施例2について説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0128】
この実施例2では、掘削側揚重部及び資機材側揚重部として歯車支持部7,7が設けられた杭施工装置1Aの構成について、図10を参照しながら説明する。なお、掘削孔41を形成するまでの工程及び掘削装置2Aは、前記実施の形態と同様であり、鉄筋籠44を搬送し、掘削孔41の上方に吊り下げるまでは実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0129】
この実施例2で説明する杭施工装置1Aでは、掘削装置2Aと資機材供給装置6Aの前方に、鉄筋籠44を支持し、掘削孔41に挿入させるための歯車支持部7,7がそれぞれ設けられている。
【0130】
この歯車支持部7は、歯車71と、それを回転させる駆動力源としてのモータ72とから主に構成される。また、この歯車71,71は、掘削側台車部21及び資機材側台車部61の前端面より掘削孔41側にそれぞれ突出している。なお、この歯車支持部7,7は、着脱自在な構成とし、掘削終了後に掘削側台車部21及び資機材側台車部61に取り付けるようにすればよい。
【0131】
一方、鉄筋籠44は、縦方向(上下方向)に向けて配設される主筋44a,・・・と、それに直交して配置される円形の帯筋44b,・・・とから主に構成される。そして、このように構成された鉄筋籠44の帯筋44b,・・・に歯車71を噛ませて鉄筋籠44を支持させることになる。なお、歯車71を噛み合わせる帯筋44bと主筋44aとの連結部は、必要に応じて補強しておく。
【0132】
そして、実施例1で説明した方法によって鉄筋籠44を搬送し、直立させて、図10に示すように掘削孔41内の鉄筋籠44(二点鎖線で図示)の上端に接合する。また、接合によって一体化された鉄筋籠44,44は、掘削装置2の歯車支持部7と資機材供給装置6の歯車支持部7とによって両側から支持させる。
【0133】
さらにこの状態で、掘削装置2側のモータ72を時計回りに、資機材供給装置6A側のモータ72を反時計回りに回転させると、鉄筋籠44,44が下方に向けて送り出されて掘削孔41内に挿入される。ここで、2台のモータ72,72を同調させることによって、鉄筋籠44,44を傾けることなく降下させることができる。
【0134】
このように構成された実施例2の杭施工装置1Aは、掘削側台車部21及び資機材側台車部61に鉄筋籠44を支持させる歯車支持部7,7が取り付けられており、掘削孔41に挿入する鉄筋籠44の支持及び送り出しを安定しておこなうことができる。
【0135】
すなわち、鉄筋籠44は、構築する杭に必要な長さになるまで溶接などによって長手方向に順次、接合していくため、杭長が長くなるほど吊り下げられる鉄筋籠44,・・・の数が増えて重量が大きくなり、支持及び送り出し作業が困難になる。
【0136】
これに対して、掘削装置2の歯車支持部7と資機材供給装置6の歯車支持部7の歯車71,71を帯筋44b,44b間に噛み合わせ、鉄筋籠44を両側から支持させることで、移動式クレーン5や仮支持材45を使用しなくても鉄筋籠44を掘削孔41内に吊り下げられた状態にすることができる。
【0137】
また、モータ72,72の駆動力によって歯車71,71を回転させ、鉄筋籠44を送り出すのであれば、安定した一定の速度で掘削孔41に鉄筋籠44を挿入することができる。
【0138】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【0139】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0140】
例えば、前記実施の形態及び実施例では、移動手段は軌条11を走行する車輪211,311,611として説明したが、これに限定されるものではなく、無軌道走行が可能なタイヤなどが移動手段であってもよい。
【0141】
また、前記実施の形態では平面位置調整手段として2本の水平ジャッキ24,24を配置したが、これに限定されるものではなく、水平ジャッキ24は1本でも3本以上であってもよい。さらに、水平ジャッキ24などの動力を使用せずに、人力によって車輪242を回転させて掘削側フレーム部22の位置を調整してもよい。
【0142】
さらに、前記実施の形態では、鉄道Rに隣接した場所での施工について説明したが、これに限定されるものではなく、道路脇や移動式クレーン5が進入できない狭隘な場所や上空に高さ制限がありクレーンが使用できない場所であっても、本発明の杭施工装置1,1Aを使用することで、場所打ちコンクリート杭4を構築することができる。
【0143】
また、前記実施例2では、鉄筋籠44の帯筋44b,・・・に歯車71を噛み合わせることで鉄筋籠44の支持及び送り出しをおこなったが、これに限定されるものではなく、鉄筋籠44の主筋44a,・・・に歯車71に噛み合わすことのできる突起部などを設けて、主筋44a,・・・を介して歯車支持部7,7によって鉄筋籠44の支持及び送り出しをおこなう構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】本発明の最良の実施の形態の杭施工装置を構成する掘削装置の側面図である。
【図2】掘削装置の平面図である。
【図3】本発明の最良の実施の形態の杭施工装置を構成する資機材供給装置の斜視図である。
【図4】本発明の最良の実施の形態の杭施工装置の構成を説明する側面図である。
【図5】本発明の最良の実施の形態の杭施工装置の構成を説明する平面図である。
【図6】本発明の最良の実施の形態の杭施工装置の構成を説明する横断面図である。
【図7】移動式クレーンを使って鉄筋籠を配置する工程を説明する側面図である。
【図8】鉄筋籠を掘削孔に挿入する工程を説明する側面図である。
【図9】実施例1の資機材供給装置を説明する図であって、(a)は鉄筋籠を搬送する工程の説明図、(b)は鉄筋籠を起立させる途中の状態の説明図、(c)は鉄筋籠を直立させた状態の説明図である。
【図10】実施例2の鉄筋籠を掘削孔に挿入する工程を説明する側面図である。
【符号の説明】
【0145】
1,1A 杭施工装置
11 軌条
2,2A 掘削装置
21 掘削側台車部
211 車輪(移動手段)
212 高さ調整ジャッキ(高さ調整手段)
213 レールクランプ(把持部)
22 掘削側フレーム部
23 スイベル(掘削機部)
24 水平ジャッキ(平面位置調整手段)
25 掘削側揚重部
3 資機材供給装置
31 資機材側台車部
311 車輪(移動手段)
312 レールクランプ(把持部)
32 資機材側フレーム部
33 資機材側揚重部
34 横移動部
35 ドリルパイプ(資機材)
4 場所打ちコンクリート杭
40 施工箇所
41 掘削孔
44 鉄筋籠(資機材)
6,6A 資機材供給装置
61 資機材側台車部
611 車輪(移動手段)
612 レールクランプ(把持部)
62 資機材側フレーム部
63 資機材側揚重部
64 横移動部
7 歯車支持部
71 歯車
72 モータ
R 鉄道
R5 建築限界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
場所打ちコンクリート杭を構築する際に使用する杭施工装置であって、
前記場所打ちコンクリート杭の施工箇所を挟んで一方に配置される掘削装置と、他方に配置される資機材供給装置とを備え、
前記掘削装置は、前記施工箇所への移動を可能にする移動手段が設けられた掘削側台車部と、前記掘削側台車部上に形成される掘削側フレーム部と、前記掘削側フレーム部に上下方向にスライド可能に取り付けられる掘削機部と、前記掘削側フレーム部又は前記掘削側台車部に取り付けられる掘削側揚重部とを有し、
前記資機材供給装置は、前記施工箇所への移動を可能にする移動手段が設けられた資機材側台車部と、前記資機材側台車部上に形成される資機材側フレーム部と、前記資機材側フレーム部又は前記資機材側台車部に取り付けられる資機材側揚重部と、資機材を前記資機材側台車部上で横移動させる横移動部とを有していることを特徴とする杭施工装置。
【請求項2】
前記掘削装置に、前記掘削側台車部の上面高さを調整する高さ調整手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の杭施工装置。
【請求項3】
前記掘削側フレーム部と前記掘削側台車部とを別体に形成し、前記掘削側台車部上で前記掘削側フレーム部の平面位置を調整する平面位置調整手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の杭施工装置。
【請求項4】
前記平面位置調整手段として前記掘削側台車部の中央を挟んだ両側に水平ジャッキがそれぞれ配置され、それらの水平ジャッキはそれぞれ独立して伸縮量の調整が可能なことを特徴とする請求項3に記載の杭施工装置。
【請求項5】
前記掘削装置の前記移動手段は軌条を走行させる車輪であって、前記軌条を把持させる把持手段を前記掘削側台車部の下面側に設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の杭施工装置。
【請求項6】
前記掘削側揚重部及び前記資機材側揚重部として、前記掘削側台車部及び前記資機材側台車部の前記場所打ちコンクリート杭の施工箇所側に、鉄筋籠に係合させる歯車と、それを回転させるモータとを備えた歯車支持部が設けられたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の杭施工装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに一項に記載の杭施工装置を使用しておこなう場所打ちコンクリート杭の構築方法であって、
前記掘削装置及び前記資機材供給装置を、前記場所打ちコンクリート杭の施工箇所に向けて前記移動手段によって移動させ、
前記掘削装置によって掘削をおこなう際には、前記資機材供給装置により掘削に必要な資機材を供給し、
前記掘削装置の前記掘削側揚重部と前記資機材供給装置の前記資機材側揚重部とによって共吊りされた鉄筋籠を掘削孔に挿入することを特徴とする場所打ちコンクリート杭の構築方法。
【請求項8】
鉄道に隣接した場所で請求項5に記載の杭施工装置を使用しておこなう場所打ちコンクリート杭の構築方法であって、
前記掘削装置及び前記資機材供給装置が移動する際に前記鉄道の建築限界を侵すことのない位置に軌条を敷設し、
前記掘削装置及び前記資機材供給装置を、前記場所打ちコンクリート杭の施工箇所に向けてそれぞれ前記軌条に沿って走行させ、
前記施工箇所に到達して掘削を開始する前に、前記把持部で前記軌条を把持させることを特徴とする場所打ちコンクリート杭の構築方法。
【請求項9】
請求項6に記載の杭施工装置を使用しておこなう場所打ちコンクリート杭の構築方法であって、
前記掘削装置及び前記資機材供給装置を、前記場所打ちコンクリート杭の施工箇所に向けて前記移動手段によって移動させ、
前記掘削装置によって掘削をおこなう際には、前記資機材供給装置により掘削に必要な資機材を供給し、
掘削孔が形成された後に、前記掘削装置の前記歯車支持部と前記資機材供給装置の前記歯車支持部とによって鉄筋籠を支持させ、
前記モータを回転させることによって前記掘削孔に前記鉄筋籠を送り出すことを特徴とする場所打ちコンクリート杭の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−53548(P2010−53548A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217594(P2008−217594)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【出願人】(504406634)株式会社 北斗工業 (4)
【Fターム(参考)】