説明

杭穴掘削ヘッド

【課題】掘削ヘッドを同一回転方向で異なる2つの径を掘削可能とし、他の回転方向での掘削径と合わせて、1つの掘削ヘッドで異なる3つの杭径で掘削できる。
【解決手段】第二第三ストッパー47、48と、収容凹部36に起伏自在に第一ストッパー片40を設けてヘッド本体1とする。対応した操作凹部31を有し、掘削刃24付きの掘削腕20、20を、ヘッド本体1に揺動自在に取り付けて掘削ヘッド50とする。正回転して、起状態の第一ストッパー片40に操作凹部31を係止して径Dの杭穴65Aを掘削する(a)。逆回転して第一ストッパー片40を伏状態として、第二ストッパー47で径Dの杭穴65Bを掘削する(b)。再び正回転して第三ストッパー48で径Dの杭穴を掘削する(c)。径D<径D<径Dである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種杭穴を掘削する際に使用する杭穴掘削ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
掘削ロッドの先端に取り付けて使用する掘削ヘッドで、ヘッド本体の両側に揺動自在の掘削腕(掘削アーム)を設けて構成した掘削ヘッドでは、揺動角度を変えることで、容易に掘削径を設定することができた(例えば、特許文献1)。
【0003】
この場合、所定の掘削径で掘削をするために、揺動角度Aを固定する為の保持機構を設けていた。例えば、ヘッド本体に出没可能な半球形の固定体を設けて、掘削腕に固定体を収容できる凹入部を形成していた(特許文献1)。
【0004】
また、掘削ロッドの回転方向を代えることにより、掘削腕の揺動方向を変更して、それぞれの揺動方向毎に、最大揺動角度を規制するストッパーを設けて、掘削径を変えることができた。この場合、一側へ揺動する掘削腕の最大揺動角Bを規制するストッパーをヘッド本体に設け、他側へ揺動する掘削腕の最大揺動角Cを規制するストッパーをヘッド本体に設けていた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−356086
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の場合、前者の保持機構では、1つの揺動角度しか決定できず、また、固定体と凹入部の着脱するための、固定体のバネの調節、掘削ロッドの回転制御などに熟練技術を要していた。従って、異なる揺動角度を設定するために、2つの保持機構を設けて、固定体と凹入部とを着脱させることは更に難しかった。
【0007】
また、後者の場合、一側への揺動と、他側への揺動とで、2つの揺動角度を設定できるが、3つの揺動角度を設定することはできなかった。また、前者の保持機構と後者の2つのストッパーを併用した場合でも、揺動方向を切り替えるためには、必ず保持機構の固定体と凹入部との着脱を少なくとも2回繰り返さなければならなかった。
【0008】
また、掘削ロッドにスパイラルを形成して排土する中掘工法では、正回転して掘削しつつ掘削土を地上に揚げていた。従って、掘削腕を一側へ揺動させて1つの揺動角度しか確保できなかったので、中掘工法で拡大掘削するためには、スパイラル上の掘削土を全部地上に揚げた後に、掘削ロッドを逆回転して、大径用の揺動角度に設定して、掘削する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
然るにこの発明は、揺動方向により係脱できる構造でストッパーを構成したので、前記問題点を解決して、掘削径の異なる3つの杭穴径で杭穴を掘削し、また、同じ掘削ヘッドで、3つの異なる径の杭穴を掘削できた。
【0010】
即ちこの発明は、掘削ロッドの先端に取り付けて使用する掘削ヘッドであって、以下のような条件を総てみたすことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
(1)前記掘削ロッドに連結するヘッド本体に水平軸を設け、該水平軸周りに、先端に掘削刃を有する掘削腕を揺動自在に取りつける。
(2)前記掘削腕の揺動に対応して、前記掘削腕の裏面中間部と対向する前記ヘッド本体の外面該当部とする。
(3)前記掘削腕の裏面中間部又は前記ヘッド本体の外面該当部に、第一ストッパー又は第一ストッパー受けを夫々形成する。
(4)前記第一ストッパー及び第一ストッパー受けは、前記掘削ロッドを一側に回転した際に、前記掘削腕のニュートラル位置から一側への揺動時に互いに係止して、前記掘削腕を第一揺動角度に保持するように構成する。
(5)前記第一ストッパー及び第一ストッパー受けは、前記掘削ロッドを他側に回転した際に、係止を解除して、前記掘削腕を第一揺動角度から他側に揺動可能とするように構成する。
【0011】
また、前記において、第一ストッパー及び第一ストッパー受けを以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
(1) 前記第一ストッパーは、収容凹部の一側のピンを中心に回転自在な第一ストッパー片を取り付けて構成する。
(2) 前記第一ストッパー片は、基端部に前記ピンが取り付けられ、伏せ状態で、収容凹部内に収容され、起状態で、先端部が前記収容凹部から上方に突出する構造とする。
(3) 前記第一ストッパー受けは、起状態の前記第一ストッパー片の上端部を収容できる操作凹部から構成する。
(4) 掘削腕の一側への揺動により、前記操作凹部が、起状態の前記第一ストッパー片に係止して前記操作凹部と第一ストッパー片とは相対的に移動を規制され、前記第一ストッパー片は起状態を維持し、かつ前記掘削腕の他側への揺動により、前記操作凹部が起状態の前記第一ストッパー片を倒して伏状態とすることができるように、前記操作凹部、前記収容凹部及び前記第一ストッパー片を構成した。
【0012】
更に、前記において、第一ストッパー及び第一ストッパー受けを以下のように構成したことを特徴とする杭穴掘削ヘッドである。
(1) 第一ストッパー片は、基端部で、ピン取付位置の基端側に、該第一ストッパー片の先端部側の軸からずれた屈曲部を連設して構成する。
(2) 操作凹部は、起状態の前記第一ストッパー片の先端部一側を支持する上支持部と、前記屈曲部の他側を支持する下支持部とを有する。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、第一ストッパー及び第一ストッパー受けを設け、掘削ロッドを一側に回転した際に、掘削腕を第一揺動角度に保持し、更に第一ストッパー及び第一ストッパー受けを、掘削ロッドを他側に回転した際に、係止を解除して、掘削腕を第一揺動角度から他側に揺動可能とするように構成したので、一側への最大揺動を規制する第二ストッパー、他側への最大揺動を規制する第三ストッパーを併用すれば、一つの掘削ロッドで、3つの杭穴径に対応した掘削ができる。従って、掘削ロッドを一側への回転により排土できるようなスパイラルを設けた構造とすれば、一側への回動により、常に排土しながら、軸部及び拡径部の杭穴掘削ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明のストッパーの作動を表す概略した横断面図で、(a)はニュートラル状態、(b)は正回転した第一揺動角度、(c)は逆回転中、(d)は逆回転して第二揺動角度、(e)は再び正回転して第三揺動角度の状態を表す。
【図2】この発明の掘削ヘッドの正面図で、ニュートラル位置を表す。
【図3】この発明の掘削ヘッドの正面図で、(a)は第一揺動角度(第一掘削径)で掘削中、(b)は第二揺動角度(第二掘削径)で掘削中、(c)は第三揺動角度(第三掘削径)で掘削中、を夫々表す。
【図4】この発明の第一ストッパー片の断面図で、(a)は起状態、(b)は起状態から伏状態への途中、(c)は伏状態、を夫々表す。
【図5】(a)〜(c)は、この発明の掘削ロッドで掘削した杭穴で形成した基礎杭の縦断面図である。
【図6】(a)(b)は、この発明の掘削ロッドで掘削した他の杭穴で形成した基礎杭の縦断面図である。
【図7】この発明の他の掘削ヘッドの正面図で、(a)は第一揺動角度(第一掘削径)で掘削中、(b)は第二揺動角度(第二掘削径)で掘削中、(c)は第三揺動角度(第三掘削径)で掘削中、を夫々表す
【符号の説明】
【0015】
1 ヘッド本体
2 ヘッド本体の上端部
3 ヘッド本体の膨出部
4 ヘッド本体の膨出部の表面
6 ヘッド本体の連結部
8 ヘッド本体の固定掘削刃
10 ヘッド本体の揺動軸
12 ヘッド本体の撹拌板
20 掘削腕
20a 掘削腕の一側
20b 掘削腕の他側
24 掘削腕の掘削刃
26 掘削腕の撹拌版
30 操作版
31 操作凹部(第一ストッパー受け)
32 操作凹部の一側壁
33 操作凹部の他側壁
35 ピン
36 収容凹部(第一ストッパー)
37 収容凹部の一側
37a 収容凹部の他側
38 主収容凹部
39 補助収容凹部
40 第一ストッパー片(第一ストッパー)
40a 第一ストッパー片の一側
40b 第一ストッパー片の他側
41 第一ストッパー片の基端部
42 第一ストッパー片の先端部
44a 第一ストッパー片の先端部の軸
44b 第一ストッパー片の屈曲部の軸
47 第二ストッパー
48 第三ストッパー
50 掘削ヘッド
53 掘削ロッド
54 掘削ロッドの軸
56 収容凹部の上支持部(一側)
57 収容凹部の下支持部
64 地上
65、65A、65B、65C 杭穴
66 既製杭
67 基礎杭
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1) この発明の掘削ヘッド50は、掘削ロッド53の下端と連結する連結部6を上端に有するヘッド本体1の両側に、先端に掘削刃24、24を形成した掘削腕20、20を揺動自在に取り付けて構成する(図2)。下記説明において、一側とは掘削ロッド53を正回転した際に掘削腕20が揺動する側(図2で右側)をいい、他側とは掘削ロッド53を逆回転した際に掘削腕20が揺動する側(図2で左側)をいう。
掘削腕20の一側20aに横方向に操作板30を突設する。操作板30の裏面に、ヘッド本体1側に向けて開口した操作凹部(第一ストッパー受け)31を形成してある。掘削腕20の操作凹部31の揺動軌跡上で、ヘッド本体1の表面4に、回動自在に第一ストッパー片(第一ストッパー)40を取り付けた収容凹部(第一ストッパー)36を形成する。
第一ストッパー片40は、収容凹部31の一側32で上下方向(揺動腕20の長さ方向)に設けたピン38に、第一ストッパー片40の基端部41を回転自在に取り付けてある。第一ストッパー片42は、起状態で、収容凹部36の一側壁37に沿って立った状態となり、この状態の第一ストッパー片40の先端部42は、掘削腕20の操作凹部31内に収容されて、この状態で掘削腕20が揺動できるようになっている。
また、伏状態で、第一ストッパー片40は、収容凹部36内に収容され、ヘッド本体1の表面4から突出せず、この範囲で掘削腕20の揺動に支障が無いような形状に構成される。
また、ヘッド本体1に、掘削ロッド53を逆回転した際に、掘削腕20が揺動する側に第二ストッパー47、掘削ロッド53を正回転した際に、掘削腕20が揺動する側に第三ストッパー48を夫々設ける(図2)。
【0017】
(2) 掘削ヘッド50は、掘削ロッド53の下端に取り付けし、掘削ロッド53を回転しない場合にニュートラル状態にある(図1(a)、図2)。
掘削ロッド53を正回転すれば、掘削腕20、20は矢示61方向の振れに、掘削腕20の操作凹部31も矢示61方向に移動する。第一ストッパー片40が収容凹部36の他側壁37に当接するので、揺動腕20は、それ以上の移動を規制される。よって、この位置で、揺動腕20は第一揺動角度で、径Dの杭穴を掘削できる(図1(b)、図3(a))。
続いて、掘削ロッド53を逆回転すれば、掘削腕20、20は矢示62方向に振れ、掘削腕20の操作凹部31も矢示62方向に移動する。ここで、操作凹部31の一側壁32に当たって、第一ストッパー片40は倒され(図1(c)、ストッパー片40は伏せ状態となり収容凹部36内に収容されるので、掘削腕20は矢示62方向に移動して、第二ストッパー47に当接して、第二揺動角度で、径Dの杭穴を掘削できる(図1(d)、図3(b))。
続いて、再び掘削ロッド53を正回転させれば、掘削腕20、20は矢示61方向に振れに、従って、掘削腕20の操作凹部31も矢示61方向に移動し、収容凹部36(第一ストッパー片40)を通過して、掘削腕20が第三ストッパー48に当接して、第三揺動角度で、径Dの杭穴を掘削できる(図1(e)、図3(c))。
前記において
径D<径D<径D
で形成される。
【実施例1】
【0018】
図面に基づきこの発明の実施例を説明する。
【0019】
1.掘削ヘッド50の構成
【0020】
(1) この発明の掘削ヘッド50は、ヘッド本体1の両側に揺動自在に掘削腕20、20を取り付けて構成する(図1)。下記説明において、一側とは掘削ロッドを正回転した際に掘削腕20が揺動する側をいい、他側とは掘削ロッド53を逆回転した際に掘削腕20が揺動する側(図2で左側)をいう。
【0021】
(2) ヘッド本体1は、上端部2は四角柱状で、上端部2に、掘削ロッド53の下端と連結する連結部6を有し、下部に略水平方向への膨出部3を形成し、下端(膨出部3の下端))に、固定掘削刃8、8を有する。膨出部3は、四角柱状の上端部2に比べて厚さを狭めて、扁平に形成される。
ヘッド本体1の上端部2に、略水平方向で、かつ掘削ロッド53の直径方向に、揺動軸10、10を形成する。揺動軸10、10は一体又は分割した構造のいずれでも可能である。下端部に掘削腕20の上端部21を、揺動軸10廻りに回転自在(揺動自在)に取り付ける。
また、ヘッド本体1の上端部2の他の面(揺動軸を設けない面)に、斜めに撹拌板12、12を夫々取り付ける。
【0022】
(3) 掘削腕20は、ヘッド本体1の扁平の膨出部3の表面に沿うように、中間部22に両掘削腕20、20が近づき、下端部23、23で離れるように外側に向けて屈曲した形状となっている。掘削腕20の下端に、下端部23を斜め下方に延長する方向に沿って、掘削刃24、24を取り付けてある。従って、掘削刃24は、刃先24aを下方(掘削腕の軸方向の延長側)に向けて、かつ外方(ロッド軸54に対して放射状)に向けて斜めに形成してある。
また、掘削腕20の一側20aに半円状の撹拌板26を取り付けてある。
また、掘削腕20の他側20b(掘削ロッド53の逆回転方向に揺動する側)の中間部に横方向に操作板30を突設する。操作板30の裏面(ヘッド本体1側の面)は、掘削腕20を揺動した際に、ヘッド本体1の表面4に沿って、移動できるような位置に配置される。また、操作板30には、裏面側から長方形の操作凹部31を形成し、操作板30の表面側に貫通させる。
【0023】
(4) 掘削腕20の操作板30の操作凹部31の揺動軌跡上で、ヘッド本体1の表面4に、収容凹部36を形成し、収容凹部36に回動自在に第一ストッパー片40を取り付ける。第一ストッパー片40は、収容凹部36の一側37で、図2の上下方向(揺動腕20の長さ方向)に設けたピン35に、第一ストッパー片40の基端部41を回転自在に取り付けてある。
第一ストッパー片40は、起状態で、収容凹部36の一側37の壁に沿って立った状態となり、この状態の第一ストッパー片40の先端部42は、掘削腕20の操作凹部31内に収容されて、この状態で掘削腕20が揺動できるように、なっている。
また、伏状態で、第一ストッパー片40は、収容凹部36内に収容され、ヘッド本体1の表面から突出せず(あるいは多少突出することは可能)、この範囲で掘削腕20の揺動に支障が無いような形状に構成される。
【0024】
(5) 第一ストッパー片40は板状で、先端を丸めた断面長方形状の先端部41に連続して、基端部42が形成され、基端部42に先端部41の軸44aに対して、他側に軸をずらした軸44bを有する屈曲部43を形成する(図4(a))。収容凹部31には、起状態及び伏状態の第一ストッパー片40の先端部41に対応した主収容凹部38と、起状態及び伏状態の屈曲部43に対応した補助収容凹部39とを形成してある。主収容凹部38と補助収容凹部39で収容凹部36を構成し、主収容凹部38は、操作凹部36全体の上・他側(図4(a)で上・右側)に位置し、主収容凹部38に連続して、下・一側(図4(a)で下・左側)に補助収容凹部39が形成された構成である(図4(a))。
また、収容凹部36は、一側37の開口付近に、起状態の第一ストッパー片40の先端部41の一側40aに当接する上支持部56を有する。上支持部56は、他側37aに向けて横方向に突出した構造で、ピン38の位置より上方に位置する。
また、収容凹部36は、他側37aの下側(補助収容凹部39の他側)に、起状態の第一ストッパー片の屈曲部43の他側40bに当接する下支持部57を有する。下支持部57は、補助収容凹部の他側37の側壁を構成する。
第一ストッパー片40は、起状態で、先端部41の一側40aが、収容凹部36の他側37の上支持部56に当接し、かつ屈曲部43の他側40bが、収容凹部36の下支持部57に当接して、図4中右回りの回転が強固に規制され、掘削腕20の第一揺動角度(第一掘削径D)を規制できる(図2(b)、図4(a))。
【0025】
(6) また、ヘッド本体1に、掘削ロッド53を逆回転した際に、掘削腕20が揺動した場合に、掘削腕20に当接して第二揺動角度(第二掘削径D)を規制する第二ストッパー45を設ける。また、ヘッド本体1に、掘削ロッド53を正回転した際に、掘削腕20が揺動した場合に、掘削腕20に当接して第三掘削角度(第三掘削径D)を規制する第三ストッパー47を設ける。
前記において
径D<径D<径D
とする。
【0026】
2.掘削ヘッド50の作動
【0027】
(1) 掘削ヘッド50は、掘削ロッド53の下端に取り付けして、従来の掘削ヘッドと同様に使用する。この状態で、掘削ロッド53は回転せず、掘削ヘッド50はニュートラル状態にある(図2、図1(a)参照)。この状態で、掘削腕20は自重で垂れた状態にあり、第一ストッパー片40を起状態とさせ、第一ストッパー片40の先端部42は操作凹部31内に位置する。
【0028】
(2) 掘削ロッド53を正回転すると、掘削ヘッド50も正回転して、土圧により掘削腕20、20は図4、図1の矢示61方向に振れ、従って、掘削腕20の操作凹部31も矢示61方向に移動する。第一ストッパー片40は先端部42の一側40aが収容凹部36の上支持部56(他側壁37)に当接し、さらに屈曲部43の他側40bが下支持部57に当接するので、それ以上のピン35の右周りの回転が規制されている。
従って、操作凹部31の他側壁37aが第一ストッパー片40の他側40bに当接係止すると、揺動腕20は、それ以上の移動を規制される。よって、この位置で、揺動腕20は、掘削刃24、24、固定掘削刃8、8により、第一揺動角度で、径Dの杭穴65Aを掘削できる(図4(a)、図3(a)、図1(b)参照)。
また、この状態で、第一ストッパー片40の先端部42が上支持部56に当接し、屈曲部43が下支持部57に当接するので、収容凹部36の補助収容凹部39は密封され、泥土が入るおそれがなく、その後の第一ストッパー片の回動が支障なく行われる。
【0029】
(3) 所定の深さまで径Dの杭穴を掘削が完了したならば、掘削ロッド53を逆回転すると、土圧により掘削腕20、20は矢示62方向に振れに、従って、掘削腕20の操作凹部31も図4、図1の矢示62方向に移動する。ここで、操作凹部31の一側壁32の開口縁が第一ストッパー片40の他側40bに当接して、第一ストッパー片40をピン35廻りに左回転させ、第一ストッパー片40を倒す(図3(b)、図1(c)参照)。
更に、掘削腕20は矢示62方向に移動して、収容凹部36を通過する(図4(c))。そして、掘削腕20は第二ストッパー47に当接して、それ以上の移動が規制され、掘削刃24、24、固定掘削刃8、8により、第二揺動角度で、径Dの杭穴65Bを掘削できる(図3(b)、図1(d)参照)。この状態で、第一ストッパー片40は収容凹部36内に収容され(概ね、先端部42は主収容凹部38に、屈曲部43は補助収容凹部39内に位置する)、この状態を維持する。この際、第一ストッパー片40の一側40aは、ヘッド本体1の表面より突出しない。
また、この状態で、第一ストッパー片40は先端部42の他側40bが主収容凹部38の底部分(下支持部57の上面)に当接し、屈曲部43の一側40aが補助収容部39の天井(上支持部56の下面)に当接するので、この状態でも補助収容部への泥土の侵入を防止できる。
【0030】
(4) 所定の深さまで径Dの杭穴を掘削が完了したならば、再び掘削ロッド53を正回転させれば、土圧により、掘削腕20、20は矢示61方向に振れに、従って、掘削腕20の操作凹部31も矢示61方向に移動し、収容凹部36(第一ストッパー片40)を通過して、更に移動し、掘削腕20が第三ストッパー48に当接して、それ以上の移動が規制される。よって、掘削腕20の掘削刃24、24、固定掘削刃8、8により、第三揺動角度で、径Dの杭穴65Cを掘削できる(図3(c)、図1(e)参照)。
【0031】
(5) 所定の深さまで、径Dの掘削が終了したならば、従来と同様に、掘削ロッド53の回転を停止して、掘削ロッド53を掘削ヘッド50ともに地上64に引き上げる。この際、従来と同様に、セメントミルクなどを杭穴65内に充填し、また必要ならば、掘削ロッド53(掘削ヘッド50)を回動して、杭穴充填物を撹拌して、既製杭66を杭穴65内(杭穴65A、65B、65C)に沈設して、基礎杭67を構成する(図5(b))。
【0032】
(6) また、杭穴は、上記例に限らず、第一ストッパー片40、第二ストッパー47、第三ストッパー48を適宜組み合わせて、任意の杭穴を掘削できる。
例えば、図5(c)のように、以下の掘削をすることもできる。
・正回転:杭穴A(径D。第一ストッパー片40)
・一旦逆回転:第一ストッパー片40を伏状態とする。
【0033】
・直ぐに正回転:杭穴C(径D。第三ストッパー片48)
・逆回転:杭穴B(径D。第二ストッパー47)
・正回転:杭穴C(径D。第三ストッパー48)
また、中掘工法で、排土用のスパイラルを形成した掘削ロッド53を使用して、
・正回転:杭穴A(径D。第一ストッパー片40)
・一旦逆回転:第一ストッパー片40を伏状態とする。
・直ぐに正回転:杭穴C(径D。第三ストッパー片48)
のように、掘削すれば、常に排土をしながら、拡大根固め部を有する杭穴を掘削できる(図5(a))。
【0034】
(7) また、他の杭穴の掘削例として、地面64に近い側から杭底に向けて、
・杭穴65B(径D。第二ストッパー47)
・杭穴65A(径D。第一ストッパー片40)
・杭穴65C(径D。第三ストッパー48)
という構成の杭穴65を掘削することもできる(図6(a))。この場合には、一旦、地面64から正回転して全深さまで径Dで掘削して(第一ストッパー片40は起状態)、次ぎに逆回転して第一ストッパー片40を伏せ状態として、直ぐに正回転して、底部をDから拡大して径Dで掘削し杭穴65Cとし、回転を停止して、掘削ヘッド50を引き上げながら地上64付近で、再び逆回転して、径Dから拡大して径Dで掘削して杭穴65Bとする。そして、前記実施例と同様に、掘削ヘッド50を地上に引き上げ、杭穴65内に既製杭66を沈設して、基礎杭67を構築する(図6(a))。
また、この場合、他の掘削方法とすることもできる。先ず、ニュートラル状態で、第一ストッパー片40を伏せ状態として、逆回転して先ず地面64付近を径Dで掘削して杭穴65Bを形成し、一旦掘削ヘッド50を地上に引き上げる。次ぎに、引き上げた掘削ヘッド50で、第一ストッパー片40を起せ状態として、前記実施例と同様に、杭穴65Bの下方を径Dの杭穴65A、底付近を杭穴65Cの掘削をする。
【0035】
(8) また、他の杭穴の掘削例として、地面64に近い側から杭底に向けて、
・杭穴65A(径D。第一ストッパー片40)
・杭穴65B(径D。第二ストッパー47)
・杭穴65A(径D。第一ストッパー片40)
・杭穴65C(径D。第三ストッパー48)
という構成の杭穴65を掘削することもできる(図6(b))。この場合には、一旦、地面64から正回転して全深さまで径Dで掘削して(第一ストッパー片40は起状態)、次ぎに逆回転して第一ストッパー片40を伏せ状態として、直ぐに正回転して、底部をDから拡大して径Dで掘削し杭穴65Cとし、回転を停止して、掘削ヘッド50を引き上げながら、中間地点やや上方でで、再び正回転して、径Dから拡大して径Dで掘削して杭穴65Bとする。そして、前記実施例と同様に、掘削ヘッド50を地上に引き上げ、杭穴65内に既製杭66を沈設して、基礎杭67を構築する(図6(b))。
【0036】
(9) また、この掘削ヘッド50は、既製杭66を使用しないいわゆる現場造成杭の杭穴の掘削にも適用できる(図示していない)。
【0037】
3.他の実施例
【0038】
(1) 前記実施例において、操作凹部31は、操作板30の裏面から表面に貫通させて形成したが、貫通させないこともできる(図1参照)。この場合には、操作板30の表面から掘削土が入るおそれがないので、より好ましい。
また、前記実施例において、操作凹部31は、掘削腕20に突設した操作板30に形成したが、掘削腕20の裏面(ヘッド本体1の表面4に面する側)に設けることもできる(図示していない)。
【0039】
(2) また、前記実施例において、第一ストッパー片40は起伏して、起状態で、正回転で操作凹部31の移動を規制でき、逆回転で、第一ストッパー片40を伏せ状態とすることができれば、第一ストッパー片40、収容凹部36の構造は任意である(図示していない)。
【0040】
(3) また、前記実施例において、第二ストッパー47を使って径Dで掘削している際に、操作板30の裏面で、伏せ状態の第一ストッパー片40、収容凹部36を塞ぐように、収容凹部36、操作板30、第二ストッパー47等の構造を変更することもできる(図7(a)(b))。この場合には、径Dで掘削する際に、収容凹部36及び第一ストッパー片40に掘削土中の礫などが当たるおそれを防ぎ、不慮に第一ストッパー片40が起状態となることを確実に防止できる。
また、同様に径Dで掘削している際に、掘削腕20の裏面で、伏せ状態の第一ストッパー片40、収容凹部36を塞ぐように、掘削腕20、収容凹部36、操作板30、第二ストッパー47等の構造を変更することもできる(図示していない)。
【0041】
(4) また、前記実施例において、第二ストッパー47を、第三ストッパー48よりも外側に配置して、
径D<径D<径D
とすることもできる(図示していない)。
【0042】
(5) また、前記実施例において、一側を掘削ロッドの正回転側、他側を掘削ロッド53の逆回転側としたが、一側を逆回転側、他側を正回転側とすることもできる(図示していない)。要は、一側、他側で回転方向が変わっていれば良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削ロッドの先端に取り付けて使用する掘削ヘッドであって、以下のような条件を総てみたすことを特徴とする杭穴掘削ヘッド。
(1) 前記掘削ロッドに連結するヘッド本体に水平軸を設け、該水平軸周りに、先端に掘削刃を有する掘削腕を揺動自在に取りつける。
(2) 前記掘削腕の揺動に対応して、前記掘削腕の裏面中間部と対向する前記ヘッド本体の外面該当部とする。
(3) 前記掘削腕の裏面中間部又は前記ヘッド本体の外面該当部に、第一ストッパー又は第一ストッパー受けを夫々形成する。
(4) 前記第一ストッパー及び第一ストッパー受けは、前記掘削ロッドを一側に回転した際に、前記掘削腕のニュートラル位置から一側への揺動時に互いに係止して、前記掘削腕を第一揺動角度に保持するように構成する。
(5) 前記第一ストッパー及び第一ストッパー受けは、前記掘削ロッドを他側に回転した際に、係止を解除して、前記掘削腕を第一揺動角度から他側に揺動可能とするように構成する。
【請求項2】
第一ストッパー及び第一ストッパー受けを以下のように構成したことを特徴とする請求項1記載の杭穴掘削ヘッド。
(1) 前記第一ストッパーは、収容凹部の一側のピンを中心に回転自在な第一ストッパー片を取り付けて構成する。
(2) 前記第一ストッパー片は、基端部に前記ピンが取り付けられ、伏せ状態で、収容凹部内に収容され、起状態で、先端部が前記収容凹部から上方に突出する構造とする。
(3) 前記第一ストッパー受けは、起状態の前記第一ストッパー片の上端部を収容できる操作凹部から構成する。
(4) 掘削腕の一側への揺動により、前記操作凹部が、起状態の前記第一ストッパー片に係止して前記操作凹部と第一ストッパー片とは相対的に移動を規制され、前記第一ストッパー片は起状態を維持し、
かつ前記掘削腕の他側への揺動により、前記操作凹部が起状態の前記第一ストッパー片を倒して伏状態とすることができるように、前記操作凹部、前記収容凹部及び前記第一ストッパー片を構成した。
【請求項3】
第一ストッパー及び第一ストッパー受けを以下のように構成したことを特徴とする請求項2記載の杭穴掘削ヘッド。
(1) 第一ストッパー片は、基端部で、ピン取付位置の基端側に、該第一ストッパー片の先端部側の軸からずれた屈曲部を連設して構成する。
(2) 操作凹部は、起状態の前記第一ストッパー片の先端部一側を支持する上支持部と、前記屈曲部の他側を支持する下支持部とを有する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−159569(P2010−159569A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1978(P2009−1978)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】