説明

板材の貼合方法

【課題】貼り合わせ後、加熱時に膨張した空間内のガスが、封止層としての接着剤の一部から抜けるようにして、両板材の貼り合わせ部分が剥がれたり、破裂する等の事態を防ぐ。
【解決手段】シリコン板1に対してガラス板3を、これらの間に、これらを貼り合わせる接着剤4を封止層として部品2を収容する空間Sを形成するようにして貼り合わせる。前記接着剤4を、液体も気体も通さない接着剤4Aと、液体を通さず気体のみを通す接着剤4Bとからなり、これら接着剤4A、4Bを、貼り合わせるシリコン板1とガラス板3の貼合面に対して直交するよう積層してなる接着剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は板材の貼合方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MEMS、C−MOSセンサ、CCDカメラ等の分野において、シリコン板に対してガラス板又はシリコン板を、貼り合わせる両者の間に、これらを貼り合わせる接着剤を封止層として部品を収容する空間を形成するようにして貼り合わせることを要求される場合がある。
【0003】
例えば、図8に示すMEMSの場合、シリコン板100に対してガラス板101を、これらの間に、これらを貼り合わせる接着剤102を封止層として部品103を収容する空間Sを形成するようにして貼り合わせることが行われる。尚、前記部品103は、シリコン板100に搭載された、バイメタルスプリング等の加熱により作動する電子部品である。
【0004】
しかし、前記封止層としての接着剤102が、エポキシ樹脂ペースト等からなる液体も気体も通さない接着剤であることから、その後のリフロー等のような高熱処理を行うと、部品を収容する空間S内に充満したガスが膨張して、気圧が高まり両板材100、101の貼り合わせた部分の一部が剥がれたり、破裂することがある。また、真空又は低気圧中で両板材100、101を貼り合わせた場合にあっては、これを大気中に出したときに、気圧の差が大きいことから、外圧によって内側へ押し潰されることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、加熱時に封止層としての接着剤の一部から、部品を収容する空間内のガスが抜けるようにして或いはまた外気が流入するようにして、上記の如き問題点を悉く解消することができるようになした板材の貼合方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
而して、本発明の要旨とするところは、シリコン板その他の板材に対してガラス板又はシリコン板等の板材を、貼り合わせる両者の間に、これらを貼り合わせる接着剤を封止層として部品を収容する空間を形成するようにして貼り合わせる板材の貼合方法において、前記接着剤を、液体も気体も通さない接着剤と、液体を通さず気体のみを通す接着剤とからなり、これら接着剤を、貼り合わせる両板材の貼合面に対して直交するように積層してなる接着剤となしたことを特徴とする板材の貼合方法にある。
【0007】
また、上記構成において、液体も気体も通さない接着剤をエポキシ樹脂ペーストとし、液体を通さず気体のみを通す接着剤をガス流動性シリコンペーストとすることが好ましい。
【0008】
また、上記構成において、シリコン板とこれに貼り合わせるガラス板とが半導体ウエハである場合、接着剤を該半導体ウエハにおけるダイシングライン上又はこれの内側に塗布するようにしてもよい。
【0009】
また、上記構成において、接着剤はスクリーン印刷又はディスペンサー等により塗布するようにしてもい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記の如き構成であり、加熱時に封止層としての接着剤の一部から、部品を収容する空間内のガスが抜けるようにして或いはまた外気が流入するようになしたから、従来方法における高熱処理時において、また真空又は低気圧中で貼り合わせたものを大気中に出すときにおいて、貼り合わせた両板材の貼り合わせ部分の一部が剥がれたり、破裂する等の問題点或いは内側へ押し潰される等の問題点を悉く解消することができるものである。
【0011】
また、シリコン板とこれに貼り合わせるガラス板とが半導体ウエハである場合において、接着剤を該半導体ウエハにおけるダイシングライン上に塗布するようになした場合には、ダイシングラインにおいて切断すると、一加工でもって隣接する半導体チップの夫々に接着剤による封止層を形成することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る板材の貼合方法の説明図である。
【図2】シリコン板とこれに貼り合わせるガラス板とが半導体ウエハである場合の分解斜視図である。
【図3】シリコン板とこれに貼り合わせるガラス板とが半導体ウエハである場合においてダイシングライン上に接着剤を塗布してダイシングラインで切断した状態の部分拡大断面図である。
【図4】シリコン板とこれに貼り合わせるガラス板とが半導体ウエハである場合においてダイシングラインの内側に接着剤を塗布した状態の部分拡大平面図である。
【図5】シリコン板とこれに貼り合わせるガラス板とが半導体ウエハである場合においてダイシングラインの内側に接着剤を塗布してダイシングラインで切断した状態の部分拡大断面図である。
【図6】シリコン板とこれに貼り合わせるガラス板とが半導体ウエハである場合においてダイシングラインの内側に接着剤を塗布し、ガラス板を接着剤の外側面に沿って切断した後シリコン板上に端子とボンディングワイヤを配し、その後ダイシングラインで切断した状態の部分拡大断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る板材の貼合方法の説明図である。
【図8】従来の板材の貼合方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図中、1はシリコン板であり、その上面には、バイメタルスプリング等の加熱により作動する電子部品2が搭載されている。3は前記シリコン板1の上面に貼り合わせるガラス板である。尚、該ガラス板3に代えて図示しないシリコン板とする場合もある。
【0014】
上記シリコン板1とガラス板3は、これらを貼り合わせる接着剤4を封止層として前記電子部品3を収容する空間Sを形成するように貼り合わせるものである。
【0015】
また、前記接着剤4は、液体も気体も通さない接着剤4Aと、液体を通さず気体のみを通す接着剤4Bとからなり、これら両接着剤4A、4Bを、貼り合わせるシリコン板1とガラス板3の貼合面に対して直交するよう積層してなる接着剤である。尚、本実施形態では、前記液体も気体も通さない接着剤4Aがエポキシ樹脂ペーストであり、また液体を通さず気体のみを通す接着剤4Bがガス流動性シリコンペーストである。また、前記接着剤の塗布は、スクリーン印刷又はディスペンサー等公知の適宜の手段で行う。
【0016】
本実施形態によれば、封止層としての接着剤4が、液体も気体も通さない接着剤4Aと、液体を通さず気体のみを通す接着剤4Bとからなり、且つこれらはシリコン板1とガラス板3の貼合面に対して直交するよう積層してなるものであるから、高熱処理時において電子部品2を収容する空間S内のガスが液体を通さず気体のみを通す接着剤4Bを経て外部に放出されるものである。したがって、従来方法における如く、高熱処理時において貼り合わせたシリコン板1とガラス板3の貼り合わせ部分の一部が剥がれたり、破裂する等の事態は起こらないものである。また、真空又は低気圧中で貼り合わせたものを大気圧中に出すときにあっては、液体を通さず気体のみを通す接着剤4Bを経て外気が流入するから、気圧の差を少なくして板材が内側に押し潰される事態を回避することができるものである。
【0017】
図2はシリコン板1とこれの上面に貼り合わせるガラス板3とが半導体ウエハWである場合を示している。そして図2では接着剤4をダイシングライン5上に塗布し、該ダイシングライン5で切断するようにしている。
【0018】
斯かる場合には、図3に示す如く、一加工でもって隣接する半導体チップW1、W1の夫々に接着剤4による封止層を形成することができるものである。
【0019】
また、接着剤4の外側にワイヤボンディングのための端子6を設ける必要がある場合の例を図4乃至図6に示している。図4はシリコン板1とこれの上面に貼り合わせるガラス板3とが半導体ウエハWである場合において、ダイシングライン5の内側に接着剤4を塗布した状態の平面図であり、図5は該図4に示す状態の半導体ウエハWをそのダイシングライン5で切断した状態の断面を示すものである。尚、7はボンディングワイヤを示す。
【0020】
また、斯かる場合において、図6に示す如く、切断を2段階に分けて行い、先ず、ガラス板3を接着剤4の外側面に沿って切断した後シリコン板1上に端子6とボンディングワイヤ7を配し、その後ダイシングライン5で切断するようにしてもよい。或いはまた、先ずダイシングライン5で切断した後ガラス板3を接着剤4の外側面に沿って切断し、その後シリコン板1上に端子6とボンディングワイヤ7を配するようにしてもよい。
【0021】
次に、図7に示した本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態と、前記第1実施形態とは、それらにおける接着剤1において相違するものである。即ち、本実施形態における接着剤4′は、液体も気体も通さない接着剤4A、4Aと、該液体も気体も通さない接着剤4A、4Aの間に介在させた、液体を通さず気体のみを通す接着剤4Bとからなり、これら接着剤4A、4B、4Aを、貼り合わせるシリコン板1とガラス板3の貼合面に対して直交するよう積層してなる接着剤である。尚、その他の点は前記第1実施形態と同様であるから、詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0022】
1 シリコン板
2 電子部品
3 ガラス板
4 接着剤(封止層)
4′ 接着剤(封止層)
4A 液体も気体も通さない接着剤
4B 液体を通さず気体のみを通す接着剤
5 ダイシングライン
S 部品を収容する空間
W 半導体ウエハ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン板その他の板材に対してガラス板又はシリコン板等の板材を、貼り合わせる両者の間に、これらを貼り合わせる接着剤を封止層として部品を収容する空間を形成するようにして貼り合わせる板材の貼合方法において、前記接着剤を、液体も気体も通さない接着剤と、液体を通さず気体のみを通す接着剤とからなり、これら接着剤を、貼り合わせる両板材の貼合面に対して直交するように積層してなる接着剤となしたことを特徴とする板材の貼合方法。
【請求項2】
液体も気体も通さない接着剤がエポキシ樹脂のペーストであり、液体を通さず気体のみを通す接着剤がガス流動性シリコンペーストである請求項1記載の板材の貼合方法。
【請求項3】
シリコン板とこれに貼り合わせるガラス板とが半導体ウエハを構成し、接着剤を該半導体ウエハにおけるダイシングライン上又はこれの内側に塗布するようになした請求項1又は2記載の板材の貼合方法。
【請求項4】
接着剤を、液体も気体も通さない接着剤と、該液体も気体も通さない接着剤の間に介在させた、液体を通さず気体のみを通す接着剤とからなり、これら接着剤を、貼り合わせる両板材の貼合面に対して直交するよう積層してなる接着剤となした請求項1、2又は3記載の板材の貼合方法。
【請求項5】
接着剤を、スクリーン印刷又はディスペンサー等により塗布するようになした請求項1、2、3又は4記載の板材の貼合方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−180265(P2010−180265A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22364(P2009−22364)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(396026248)ミナミ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】