説明

板材加工機

【課題】 加工の効率低下をできるだけ抑えながら、板材送り時における板材浮き沈みを防止し、浮き沈みによる板材の変形や加工停止を防止することができる板材加工機を提供する。
【解決手段】 この板材加工機の加工機本体20は、パンチ加工またはレーザ加工等により板材に孔を明ける加工部9と、板材Wをテーブル13上で加工部9に対して送る板材送り装置12を備える。加工機制御装置21は、板材送り装置12による板材Wの送り速度を制御する板材送り制御手段26を備える。この板材送り制御装置26は、板材Wの重量が軽くなるに従って板材送り速度が遅くなるように制御する重量対応速度制御部27を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パンチプレスやレーザ加工機等の板材に孔明け加工を行う板材加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パンチプレスやレーザ加工機等の板材加工機において、板材裏面を傷つけないように、板材の送りをブラシテーブル上で送るようにしたものがある。
また、パンチプレス等の等の板材加工機において、板材の送り速度は、停止時の位置決め等を考慮し、可能なだけ早い速度で行うように設定することが一般的である。板材送り速度の設定は、通常は加工プログラム中で行われ、最大速度に設定される。板材送り速度を最大速度よりも低くする場合は、加工プログラム中のMコード等でフィードレートを設定する。この他に、操作盤等の操作ボタンにより、作業者の手操作により、フィードレートを変更する場合もある。
【0003】
例えば、板材の板厚が薄い場合や、板材に明けられる孔の形態によっては、板材送り速度が早い場合に、板材の加工精度が低下することがある。このような場合に、作業者の経験により、その板材製品の加工については、板材送り速度を前記操作ボタンで低下させる場合もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パンチプレス等による板材の孔明け加工では、加工の進行に伴い、板材各部の孔が増えたり、孔が大きくなって、板材が軽くなって来る。また、図9に示すように、板材Wに加工された孔明き部分H間や板材縁部との間に、細い桟状の板材部分Waが生じることがある。
このような板材の加工に進行により、板材送り時に、板材の浮き沈みが生じることがある。この浮き沈みは、例えば、ブラシテーブル仕様のパンチプレスでは、図10に示すように、各ブラシ18の先端により構成される支持面の平坦度が摩耗等によって低下しているような場合、パンチ加工された孔の縁部がブラシ18の先に当たること等によって生じる。このような板材Wの浮き沈みによって、板材Wが板材加工機の加工部等に干渉し、板材Wに変形が生じたり、加工が停止したりすることがある。
板材送りに障害が生じたことを、板材送り装置の負荷検出手段等で検出し、停止制御する安全機能を備えた板材加工機では、上記の加工停止が度々に生じることがある。
【0005】
このような板材送り時の浮き沈みによる変形や加工停止は、板材Wの送り速度を低下させることによって防止できる場合が多い。しかし、板材送り速度を低下させると、加工の効率が低下する。
従来、作業者が経験的に行っているように、板材Wの板厚や、加工される形状等に応じて板材送り速度のフィードレートを変更するようにすれば、ある程度は加工効率の低下が回避できる。
しかし、従来は、1枚の板材を加工する間、常に板材送り速度を低下せているため、加工がある程度進むまでは、板材送りに支障が生じることがないのに無駄に送り速度を低下させることになって、加工効率の低下回避が十分ではない。また、このような加工効率の低下を回避するために、送り速度の低下の割合を低くするのでは、加工が進行したときに板材の浮き沈みが生じ、板材の変形や加工停止を十分に回避できない場合がある。
【0006】
この発明の目的は、加工の効率低下をできるだけ抑えながら、板材送り時の板材浮き沈みを防止し、浮き沈みによる板材の変形や加工停止を防止することができる板材加工機を提供することである。
この発明の他の目的は、真の板材重量に基づき、最適に板材送り速度の制御を可能とすることである。
この発明のさらに他の目的は、板材の適切な送り速度を演算で求めることができて、特別なセンサ類を設けることなく、適切な送り速度に制御可能とすることである。
この発明のさらに他の目的は、加工の効率低下をできるだけ抑えながら、板材送り時の板材浮き沈みを防止し、浮き沈みによる板材の変形や加工停止を防止することができる加工プログラムが作成可能な板材加工プログラミング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の板材加工機は、パンチ加工またはレーザ加工等により板材に孔を明ける加工部(9)と、板材(W)を下面から分散した支持点で支える板材支持台(13)と、この板材支持台(13)上で板材(W)を前記加工部(9)に対して送る板材送り装置(12)と、この板材送り装置(12)による板材(W)の送りを制御する板材送り制御手段(26)とを備え、前記板材送り制御手段(26)は、板材(W)の重量が軽くなるに従って板材送り速度が遅くなるように制御する重量対応速度制御部(27)を有するものである。
【0008】
この構成によると、重量対応速度制御部(27)により、板材(W)の重量が軽くなるに従って板材送り速度が遅くなるように制御する。そのため、板材(W)の加工初期は板材送りが速く行われ、孔明け加工の進行により、孔が増えて板材送り時の浮き沈みが生じ易くなるに従い、送り速度が低下することになる。したがって、板材(W)の送り速度の低下による加工効率の低下をできるだけ抑えながら、板材送り時の浮き沈みを防止し、浮き沈みによる板材(W)の変形や加工停止を防止することができる。
【0009】
この発明において、板材(W)の重量を認識する重量認識手段(29)を設け、前記重量対応速度制御部(27)は、重量認識手段(29)で認識された重量に基づいて設定基準(28)に従い板材送り速度を決定するものとしても良い。
このように重量認識手段(27)を設けることにより、重量に基づいた板材送り速度の制御を適切に行うことができる。
【0010】
上記重量認識手段(29)は、板材(W)の重量を測定する板材重量測定手段(29A)であっても良い。板材重量測定手段(29A)である場合、測定のためのセンサ類が必要であるが、真の板材重量に基づき、最適に板材送り速度の制御を行うことができる。
【0011】
また、上記重量認識手段(29)は、板材重量演算手段であっても良い。板材重量演算手段は、例えば、板厚、材質、金型の大きさなどの材料・加工手段情報(F1)と、加工数等の加工進行情報(F2)とに基づき板材(W)の重量を演算するものとする。
板材重量演算手段とした場合、板材(W)の適切な送り速度を演算で求めることができて、特別なセンサ類を設けることなく、適切な送り速度に制御することができる。
【0012】
この発明の板材加工プログラミング装置(32)は、この発明の請求項1に記載の板材加工機を制御するための加工プログラム(22)を生成するプログラミング装置であって、板厚、材質、金型の大きさなどの材料・加工手段情報(F1B)と、加工数等の加工進行情報(F2B)とに基づき前記板材(W)を送る板材送り速度を決定する速度決定手段(39)と、決定された板材送り速度をプログラム進行所定箇所に設定して加工プログラム(22)を生成するプログラム生成手段(35)とを備える。
この構成の板材加工プログラミング装置によると、材料・加工手段情報(F1B)と加工進行情報(F2B)とに基づいて板材送り速度を決定する速度決定手段(39)を設けたため、加工の効率低下をできるだけ抑えながら、板材送り時の板材浮き沈みを防止し、浮き沈みによる板材(W)の変形や加工停止を防止することができる加工プログラム(22)を生成することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の板材加工機は、パンチ加工またはレーザ加工等により板材に孔を明ける加工部と、板材を下面から分散した支持点で支える板材支持台と、この板材支持台上で板材を前記加工部に対して送る板材送り装置と、この板材送り装置による板材の送りを制御する板材送り制御手段とを備え、前記板材送り制御手段は、板材の重量が軽くなるに従って板材送り速度が遅くなるように制御する重量対応速度制御部を有するものとしたため、板材送り時の板材浮き沈みを防止し、浮き沈みによる板材の変形や加工停止を防止することができる。
板材の重量を認識する重量認識手段を設け、前記重量対応速度制御部は、重量認識手段で認識された重量に基づいて設定基準に従い板材送り速度を決定するものとした場合は、重量に基づいた板材送り速度の制御を適切に行うことができる。
前記重量認識手段が、板材の重量を測定する板材重量測定手段である場合は、真の板材重量に基づいた最適な板材送り速度の制御が可能となる。
前記重量認識手段が、板厚、材質、金型の大きさなどの材料・加工手段情報と、加工数等の加工進行情報とに基づき板材の重量を演算する板材重量演算手段である場合は、板材の適切な送り速度を演算で求めることができて、特別なセンサ類を設けることなく、適切な送り速度に制御することができる。
【0014】
この発明の板材加工プログラミング装置は、この発明の板材加工機を制御するための加工プログラムを生成するプログラミング装置であって、板厚、材質、金型の大きさなどの材料・加工手段情報と、加工数等の加工進行情報とに基づき前記板材を送る板材送り速度を決定する速度決定手段と、決定された板材送り速度をプログラム進行所定箇所に設定して加工プログラムを生成するプログラム生成手段とを備えるため、加工の効率低下をできるだけ抑えながら、板材送り時の板材浮き沈みを防止し、浮き沈みによる板材の変形や加工停止を防止できる加工プログラムを作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図5と共に説明する。この板材加工機は、加工機本体20と、この加工機本体20を制御する加工機制御装置21とで構成される。
加工機本体20はパンチプレスであり、板材Wに孔を明ける加工部9と、板材Wを支持する板材支持台であるテーブル13と、このテーブル13上で板材Wを加工部9に送る板材送り装置12とを備える。加工部9は、フレーム1の上下のフレーム部1a,1b(図2)に旋回割出自在に設置された上下のタレット2,3と、これらタレット2,3に円周方向に並べて設置された複数のパンチ金型4およびダイ金型5と、所定のパンチ位置Pに割り出されたパンチ金型4を昇降させるパンチ駆動機構11とを有する。上下のタレット2,3は、サーボモータ等を有する割出機構(図示せず)により旋回割出される。パンチ駆動機構11は、モータ等の駆動源11aによりクランク機構10を介してラム8を昇降させ、ラム8によりパンチ金型4を昇降させるものである。
【0016】
図1に示すように、板材送り装置12は、フレーム1にキャリッジ14を前後(Y方向)に進退自在に設置し、キャリッジ14に左右(X方向)に移動自在に設置されたクロススライド15に、板材Wの縁部を把持する複数のワークホルダ16を搭載したものである。キャリッジ14およびクロススライド15は、サーボモータ14a,15aによりボールねじ機構を介して進退駆動される。
テーブル13は、板材Wを下面から分散した支持点で支えるものであり、具体的には、上面の全体に分散させて図3のように複数のブラシ18を設けたものとされている。
【0017】
図1において、加工機制御装置21は、コンピュータ式の数値制御装置およびプログラマブルコントローラ等からなり、加工プログラム22を演算制御部23で実行することにより、加工機本体20を制御する。
演算制御部23は、加工プログラム22を解読して実行する実行制御手段24と、パンチ制御手段25と、板材送り制御手段26とを備えるものである。パンチ制御手段25は加工プログラム22の実行制御手段24による解読結果により、パンチ駆動機構11およよびタレット2,3の旋回割出機構(図示せず)を制御する手段である。パンチ制御手段25は、加工プログラム22のパンチ命令R1における金型命令の部分に従い、タレット2,3の旋回割出によって命令内容のパンチ金型4,ダイ金型5を、パンチ位置Pに割り出す。この割出の後、パンチ駆動機構11を動作させてパンチ加工を行わせる。
【0018】
板材送り制御手段25は、加工プログラム22における板材送り命令R2に従い、板材送り装置12を制御して板材WをX,Y各軸方向に移動させることで、板材Wの加工する部位をパンチ位置Pに位置させる手段である。
【0019】
この加工機制御装置21は、上記構成において、板材Wの重量が軽くなるに従って板材送り装置12による板材送り速度が遅くなるように制御する重量対応速度制御部27を、板材送り制御手段26に設けたものである。また、板材Wの重量を認識する重量認識手段29を設け、前記重量対応速度制御部27は、原則として、重量認識手段29で認識された重量に基づいて設定基準28により板材送り速度を決定するものとされている。
【0020】
この実施形態における重量認識手段29は、板厚、材質、金型の大きさなどの材料・加工手段情報F1と、加工数等の加工進行情報F2とに基づき板材Wの重量を演算する手段である。
材料・加工手段情報F1は、板材情報F1aおよび金型情報F1bからなる。
板材情報F1は、加工プログラム22に記述された材料情報(例えばMAT命令)R0における板材Wの縦横の寸法、板厚、および材質の情報であり、実行制御手段24で加工プログラム22により読み出されて重量認識手段29に入力される。
金型情報F1bは、パンチ金型4,ダイ金型5による加工孔の形状,寸法の情報であり、金型マスタファイル30に、金型番号毎に登録されている。金型情報F1bは、パンチ制御手段25で加工プログラム22のパンチ命令R1における金型命令が実行されるときに、その命令に含まれる金型番号を金型マスタファイル30と照合することで、重量認識手段29に取得される。
【0021】
重量認識手段29は、上記材料・加工手段情報F1と加工進行情報F2とにより、次のようにパンチ数から板材重量を演算する。すなわち、板材Wの加工前の重量である素材板材重量W0と、現在まで打ち抜かれた重量である打抜重量W1とを求め、現在板材重量W2を求める。
素材板材重量(W0)=X方向長さ×Y方向長さ×板厚×(材料の比重/1000)
打抜重量(W1)=打ち抜き面積×板厚×(材料の比重/1000)
現在板材重量(W2)=素材板材重量(W0)−(打抜重量×パンチ数)
なお、上記各式において、長さ,板厚の単位はcm、面積の単位はcm2 、重量の単位はkgである。また、比重についてのデータは、重量認識手段29において、材質毎の比重の照合テーブル(図示せず)を有していて、加工プログラム22から得られる材質の情報を上記テーブルと照合することが得るようにしても良く、また加工プログラム22の板材情報R0に比重の情報を記述しておいて、その情報を用いるようにしても良い。重量認識手段29による板材重量の演算は、1パンチ毎に行う。上式の「打ち抜き面積」は、1回のパンチで孔を明ける面積であり、パンチ金型4の寸法・形状により定まる。
【0022】
上式の「打ち抜き面積」につき、ニブリング加工時は、図6に示すように定める。すなわち、ニブリング加工では、前回のパンチ時のパンチ金型の範囲E1と、今回のパンチ時のパンチ金型の範囲E2とに重なり部分E3が生じ、実際に増える打ち抜き範囲Eは、同図の斜面を付して示す範囲である。このため、ニブリング加工時は、
(打ち抜き面積)=(1回のパンチ面積)−(今回パンチ時と前回のパンチ時の重なり部分E3の面積)
とする。1回のパンチ面積は、範囲E2(=E1)の面積である。重量認識手段29において、ニブリング加工であることは、加工プログラム22の命令から判断する。
【0023】
重量対応速度制御部27の設定基準28は、重量制御区分が定められていて、区分毎にフィードレート、つまり最大速度に対する減速割合により、板材送り速度を決定する。また、この設定基準28は、板材Wが所定値以下の薄板(例えば1t以下で4×8などの板材)の場合に、重量対応速度制御を行い、所定値を超える厚い板材Wの場合は、重量対応速度制御を行わないものとされている。
【0024】
上記重量制御区分は、例えば図4に示すように、素材板材重量の0.25倍以下の区分Q4、0.25倍を超え0.50以下の区分Q3、0.50倍を超え、0.75以下の区分Q2,0.75倍以上の区分Q1の4つの区分Q1〜Q4とされている。これらの区分Q1〜Q4に対して、フィードレートは、区分Q1では100%、区分Q2では75%、区分Q3では50%、区分Q4では25%としている。
【0025】
重量対応速度制御部27は、上記のように、原則として重量認識手段29で認識された重量に基づいて板材送り速度を決定するが、前記設定基準28として、板材Wの現在形状に応じて板材送り速度を決定する基準を有している。例えば、図9のような細い桟状の板材部分Waが生じたら、その時点で上記区分Q4となる25%の速度とする。重量対応速度制御部27において、上記の桟状の板材部分Waが生じたことは、例えば、加工プログラム22において、桟状の板材部分Waが生じる箇所に所定の命令を加えておき、この所定の命令が実行制御手段24で読みだされることで判断するものとされる。この他に、テーブル13上の板材Wの形状を撮像するモニタカメラ(図示せず)を設け、このモニタカメラの撮像した画像を解析して桟状の板材部分Waが生じたことを判断するものとしても良い。
【0026】
上記構成の動作を説明する。図5(A)に示すように、板材Wが未加工の場合は、重量対応速度制御部27は、100%の送り速度で板材送り装置12による送りを行わせる。重量認識手段29は、パンチ制御手段25の状況を監視して、1パンチ毎に現在板材重量(W2)を上記の数式のように計算する。
重量対応速度制御部27は、重量認識手段29で計算された重量を監視し、設定基準28に従い、板材送り制御手段26による板材送り装置12の速度制御を行う。この速度制御は、現在板材重量(W2)が異なる区分になると、その区分に対応するフィードレートになるように、送り速度を低下させる。
【0027】
このようにして、板材Wが例えば図5(B)に板材Wの孔明き部分Hを示すように、加工の進行により孔明き部分Hが大きく形成されて、桟状の細い板材部分Waが生じたような場合であっても、板材送り時にテーブル13のブラシ18(図3)と衝突して板材Wが変形したり、衝突時の安全機能が作動して加工が停止したりすることが防止される。
また、板材Wの重量を計算して板材送り速度を自動的に制御し、重たいときは早い速度で、軽くなって来たら遅い速度にして板材Wの浮き沈みを防止するため、無駄に送り速度を低下させることがなく、加工効率を維持しながら、板材Wの送り時の浮き沈みの防止が行われる。
【0028】
現在板材重量(W2)と板材送り時の浮き沈みとは、加工孔の形状や偏り等のため、比例関係とはならないが、高い相関関係がある。このため、上記のように現在板材重量(W2)を監視して速度制御を行うことで、加工効率を維持しながら、板材送り時の浮き沈みを防止する効果が、有効に得られる。また、速度の低下を上記のように重量制御区分毎に行うようにすると、簡易に効果的な速度制御が行える。
【0029】
なお、上記実施形態では、現在板材重量(W2)を計算により求めるようにしたが、例えば、図7に示すように、板材重量認識手段として、テーブル13上の板材Wの重量を測定する板材重量測定手段29Aを設けても良い。
同図の実施形態では、重量対応速度制御部27は、板材重量測定手段29Aで実測された現在板材重量に基づき、上記実施形態と同様に、板材送り速度を制御する。この実施形態におけるその他の構成,効果は、図1〜図5に示す第1の実施形態と同様であり、対応部分に同一番号を付して重複する説明を省略する。
【0030】
図8は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態は、加工機制御装置21の板材送り制御手段26における重量対応速度制御部27Bを、加工プログラム22に記述される速度変更命令R3としたものである。この速度変更命令R3は、例えば最大速度に対する割合、つまりフィードレートを変更する命令であり、NCコードではMコード等で記述される。この速度変更命令R3は、加工の進行により現在板材重量が素材重量に対する所定割合以下となるパンチ命令R1の後などに記述される。板材送り制御手段26は、速度変更命令R3がなければ最大速度とし、あればそれ以降はその速度変更命令R3で指定された速度とする。
【0031】
上記速度変更命令R3は、加工プログラム22を生成する自動プログラミング装置32によって、自動的に挿入される。
この自動プログラミング装置32は、板厚、材質、金型の大きさなどの材料・加工手段情報F1Bと、加工数等の加工進行情報F2Bとに基づき、板材Wを送る板材送り速度を決定する速度決定手段39と、決定された板材送り速度をプログラム進行所定箇所に設定して加工プログラム22を生成するプログラム生成手段35とを備える。
【0032】
プログラム作成手段35は、具体的には、ネスティング手段36、金型配置手段37、加工順決定手段38、速度決定手段39、および実行NCデータ化手段40を備える。ネスティング手段36は、素材となる板材Wの寸法、板厚、材質等の情報である材料情報33と、孔明けによって部品を切り取る図形等の加工図形の情報である図形情報34とから、素材板材Wに対するネスティング(板取りとも呼ばれる)を所定の規則に従って行う手段である。金型配置手段37は、ネスティング結果に対してパンチ金型4の配置を所定の規則に従って行う手段である。なお、金型配置手段37は、ネスティング前の図形情報に対して金型を配置するものとし、ネスティング手段36は、その金型が配置された状態の図形につき、ネスティングを行うものとしても良い。
【0033】
加工順決定手段38は、ネスティングおよび金型配置が完了したデータにつき、どの金型の加工をするかの順序を設定規則に従って行う手段である。
速度設定手段39は、この加工順の決定されたデータにつき、板材送りの速度を決定する手段である。
実行NCデータ化手段40は、加工順決定データに対し、所定の命令等を加えて実行可能な形式のNCデータからなる加工プログラム22とする手段である。
【0034】
速度決定手段39において、材料・加工手段情報F1Bにおける材料の情報(板材寸法、板厚、材質の情報)は、プログラム作成手段35に入力される材料情報33より得る。材料・加工手段情報F1Bにおける加工手段の情報である金型の形状・寸法の情報は、金型配置手段37で配置されたパンチ金型4の金型番号の情報を、金型番号毎に金型の寸法形状が登録された工具マスタファイル41と照合して得る。
速度決定手段39において、加工進行情報F2Bは、加工順決定手段38の出力するデータから得る。
【0035】
速度決定手段39は、このようにして加工進行情報F2Bから得られる各回のパンチ毎に、それまでの加工を行ったと仮定した場合の現在板材重量を、材料・加工手段情報F1Bと加工進行情報F2Bとから計算し、現在板材重量に応じた送り速度となるように、加工プログラム22の速度変更命令R3を挿入する。
現在板材重量の計算は、第1の実施形態における板材重量演算手段からなる重量認識手段29と同様に行う。また、速度決定手段39による速度変更命令R3を挿入は、第1の実施形態における重量対応制御部27につき説明したと同様に、重量制御区分毎に挿入するようにしても良い。
【0036】
このように、自動プログラミング装置32によって加工プログラム22に速度変更命令R3を挿入することで、板材Wの重量が軽くなるに従って板材送り速度が遅くなるように制御した場合も、上記各実施形態と同様に、無駄に送り速度を低下させることなく、加工効率を維持しながら、板材Wの送り時の浮き沈みを防止することができる。また、加工プログラム22に予め速度変更命令R3を設けることにより、加工制御装置21の構成の複雑化が回避され、特別な送り速度制御機能を持たない加工機制御装置であっても、その加工プログラム22を実行することで、上記の送り速度制御が行える。
【0037】
なお、上記各実施形態はいずれもパンチプレスにつき説明したが、この発明は、レーザ加工機や、放電加工機など、板材に孔を明ける板材加工機一般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の一実施形態にかかる板材加工機の加工機本体の平面図とその加工機制御装置の概念構成を示すブロック図とを組み合わせた説明図である。
【図2】同加工機本体の正面図である。
【図3】同加工機本体におけるテーブルのブラシの拡大図である。
【図4】同板材加工機の加工機制御装置における重量対応制御部の設定基準の説明図である。
【図5】同板材加工機の加工例の進行説明図である。
【図6】ニブリング加工の打ち抜き面積の説明図である。
【図7】この発明の他の実施形態にかかる板材加工機の加工機本体の平面図とその加工機制御装置の概念構成を示すブロック図とを組み合わせた説明図である。
【図8】この発明のさらに他の実施形態にかかる板材加工機の加工機本体の平面図、並びにその加工機制御装置の概念構成、および自動プログラミング装置の概念構成をそれぞれ示すブロック図とを組み合わせた説明図である。
【図9】従来の板材加工機による加工の説明図である。
【図10】同板材加工機のブラシテーブルの板材送り上の支障を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
9…加工部
11…パンチ駆動機構
12…板材送り装置
13…テーブル(板材支持台)
16…ワークホルダ
18…ブラシ
20…加工機本体
21…加工機制御装置
22…加工プログラム
25…パンチ制御手段
26…板材送り制御手段
27…重量対応速度制御部
27B…重量対応速度制御部
28…設定基準
29…重量認識手段
29A…板材重量測定手段(重量認識手段)
30…金型マスタファイル
32…自動プログラミング装置
33…材料情報
34…図形情報
35…プログラム生成手段
38…加工順決定手段
39…速度決定手段
41…工具マスタファイル
F1…材料・加工手段情報
F2…加工進行情報
F1a…板材情報
F1b…金型情報
F1B…材料・加工手段情報
F2B…加工進行情報
H…孔明き部分
R0…材料情報
R2…板材送り命令
R1…パンチ命令
R3…速度変更命令
W…板材
P…パンチ位置
Q1〜Q4…区分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチ加工またはレーザ加工等により板材に孔を明ける加工部と、板材を下面から分散した支持点で支える板材支持台と、この板材支持台上で板材を前記加工部に対して送る板材送り装置と、この板材送り装置による板材の送りを制御する板材送り制御手段とを備え、前記板材送り制御手段は、板材の重量が軽くなるに従って板材送り速度が遅くなるように制御する重量対応速度制御部を有するものとした板材加工機。
【請求項2】
板材の重量を認識する重量認識手段を設け、前記重量対応速度制御部は、重量認識手段で認識された重量に基づいて設定基準により板材送り速度を決定するものとした請求項1記載の板材加工機。
【請求項3】
前記重量認識手段は、板材の重量を測定する板材重量測定手段である請求項2記載の板材加工機。
【請求項4】
前記重量認識手段は、板厚、材質、金型の大きさなどの材料・加工手段情報と、加工数等の加工進行情報とに基づき板材の重量を演算する板材重量演算手段である請求項2記載の板材加工機。
【請求項5】
請求項1に記載の板材加工機を制御するための加工プログラムを生成するプログラミング装置であって、板厚、材質、金型の大きさなどの材料・加工手段情報と、加工数等の加工進行情報とに基づき前記板材を送る板材送り速度を決定する速度決定手段と、決定された板材送り速度をプログラム進行所定箇所に設定して加工プログラムを生成するプログラム生成手段とを備える板材加工プログラミング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−196235(P2007−196235A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14535(P2006−14535)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】