説明

板状部材用カッター

【課題】切断する板状部材を折り込まなく、機械の能力範囲であれば切断してしまい、連続運転を可能とする。
【解決手段】固定刃物24と、往復移動可能に固定刃物24に対応して設けられた移動刃物23と、移動刃物23を往復駆動する刃物駆動手段とを備えた板状部材用カッターである。移動刃物23は、ヒンジ部21で揺動可能に設けられると共に、刃先が固定刃物24に圧接するようにスプリング27で付勢され、移動刃物23が固定刃物24に対して切断される板状部材Wの厚さ以上のクリアランスとならないように移動刃物23の動きを規制するストッパー40を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復移動刃物で板状部材を切断する板状部材用カッターに関する。
【背景技術】
【0002】
紙、電子情報記録媒体、刷版等で、かつ厚さがあまり厚くない平面的な板状部材を切断してスクラップにするカッターは、一般的に回転刃物で切断を行っている。回転刃物で切断する場合には、板状部材の厚さ及び重量があまり大きくない場合には、回転刃物の回転力によって板状部材を送ることができ、板状部材の送り装置を設けなくて良い場合がある。しかしながら、回転刃物を用いたカッターは刃物の形状が複雑で加工製作の点から高価になる。また切断する板状部材が刷版の場合には、次のような問題がある。刷版は輪転ドラムに取り付けるために端部が折り曲げられている。このように端部が折り曲げられていると、回転刃物が刷版に喰い付かなく、刷版を切断できない。
【0003】
これに対して固定刃物と往復移動する移動刃物で板状部材を切断するカッターは、刃物の形状が単純で安価な装置が得られる。固定刃物と移動刃物を有するカッターとしては、例えば特許文献1及び2が挙げられる。特許文献1は、切断する板状部材を横方向に送る板状部材横送りタイプである。特許文献2は、切断する板状部材を上方より下方に送る板状部材縦送りタイプである。
【特許文献1】特開2002−301620号公報
【特許文献2】特開2001−87934号公報
【0004】
特許文献1は、上下動する上刃物と、この上刃物に対応して下方に固定された下刃物とを有し、横方向に設けられた板状部材を送り装置で送って上刃物の上下往復動で板状部材を切断している。特許文献2は、横方向に往復移動する移動刃物と、この移動刃物に対応して横方向に固定された固定刃物とを有し、上方より下方に送られてくる板状部材を移動刃物の往復移動で切断している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固定刃物と移動刃物を有するカッターにおいて、一方の刃物を他方の刃物にスプリング等の弾性部材で押し付け、両方の刃物のクリアランスを零にすることにより、良く切断できる材料が多い。しかし、この場合、何らかの原因でクリアランスが大きくなると、切断できずに折り込んだりする場合が多い。一度折り込むと、その後の部分は切断されないため、連続切断作業等ではエラーになり機械をストップさせてしまう。原因としては、材料が重なった場合や異物混入等により力が瞬間的に余分に掛かり、結果として刃物を押し付けているスプリングの力を上回り、刃物が逃げてクリアランスが広がることが多い。
【0006】
本発明の課題は、切断する板状部材を折り込まなく、機械の能力範囲であれば切断してしまい、連続運転が可能な板状部材用カッターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の請求項1は、固定刃物と、往復移動可能に前記固定刃物に対応して設けられた移動刃物と、この移動刃物を往復駆動する刃物駆動手段とを備えた板状部材用カッターにおいて、前記移動刃物又は固定刃物の一方の刃物は、ヒンジ部で揺動可能に設けられると共に、刃先が他方の刃物に圧接するように弾性部材で付勢され、前記一方の刃物が他方の刃物に対して切断される板状部材の厚さ以上のクリアランスとならないように前記一方の刃物の動きを規制するストッパーを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
移動刃物が移動して板状部材を切断する時、移動刃物に余分な負荷が加わっても、移動刃物はストッパーによって板状部材の厚さ以上は固定刃物より離れないので、板状部材を折り込まなく、機械の能力範囲内であれば板状部材を切断することができ、連続運転ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の板状部材用カッターの一実施の形態を示す。図2乃至図4は図1の構造を設けた具体的な一実施の形態を示す。
【0010】
図1に示すように、矢印D及びE方向に往復駆動される移動ベース20上には、ヒンジ部21を介して移動刃物ホルダー22が揺動可能に取付けられており、移動刃物ホルダー22には、移動刃物23が固定されている。移動刃物23と協同して板状部材Wを切断する固定刃物24は、固定刃物ホルダー1(なお、図2乃至図4ではベース板1が固定刃物ホルダー1に相当する)に固定されている。
【0011】
移動刃物23の刃先と固定刃物24の刃先にクリアランスが生じないように、移動刃物23の一方端側の固定刃物ホルダー1には、移動刃物23をガイドする移動刃物ガイド体26が固定されている。そして、移動刃物23の一方端側の刃先が移動刃物ガイド体26及び固定刃物24に圧接するように、移動ベース20と移動刃物ホルダー22間にはスプリング27が配設されている。また移動刃物23の刃先がスプリング27の付勢力に抗して固定刃物24の刃先より必要以上に離間するのを防止するために、移動ベース20には移動刃物23の揺動を規制するストッパー40が設けられている。ここで、ストッパー40は、固定刃物24に対して移動刃物23が板状部材Wの厚さより小さいクリアランスtになるように調整されている。
【0012】
次に作用について説明する。移動ベース20が矢印D方向に移動すると、移動刃物23は移動刃物ガイド体26に沿って移動し、固定刃物24と協同して板状部材Wを切断する。移動ベース20が矢印E方向に移動すると、移動刃物23は固定刃物24より離れ、切断される板状部材Wが所定長さ送られる。
【0013】
前記したように、移動刃物23が矢印D方向に移動する時、移動刃物23に余分な負荷が加わっても、移動刃物23はストッパー40によってクリアランスt、即ち板状部材Wの厚さより小さい寸法以上は固定刃物24より離れないので、板状部材Wを折り込まなく、機械の能力範囲内であれば板状部材Wを切断することができ、連続運転ができる。
【0014】
上記実施の形態は、移動刃物23が揺動可能に設けられたものに適用した場合を示す。しかし、本実施の形態は、固定刃物24を揺動可能に構成した場合にも適用できる。即ち、固定刃物24をヒンジ部21を介して固定刃物ホルダー1に揺動可能に取付け、固定刃物24の刃先が移動刃物23に圧接するように、固定刃物ホルダー1と固定刃物24間にはスプリング27を配設する。また固定刃物22の刃先がスプリング27の付勢力に抗して移動刃物23の刃先より必要以上に離間するのを防止するために、固定刃物ホルダー1には固定刃物24の揺動を規制するストッパー40を設ける。
【0015】
図1の構造を設けた具体的な一実施の形態を図2乃至図4により説明する。図2に示すように、約30度傾斜して配設されたベース板1の両側には、図3及び図4に示すように下方に伸びた側板2、2が固定されており、側板2、2の内側にはガイド溝を有するガイド板3、3が約30度傾斜して固定されている。ガイド板3、3のガイド溝には、スライド板4、4が摺動自在に嵌挿されており、スライド板4、4には支持板5、5が固定されている。
【0016】
支持板5、5の下方部には、ガイド板3、3のガイド溝と直角に長穴5a、5aが形成されており、長穴5a、5aにはローラ軸10、10に回転自在に支承されたローラ11、11が摺動自在に嵌挿されている。ローラ軸10、10はクランクレバー12、12に固定されており、クランクレバー12、12は回転軸13の両端部に固定されている。回転軸13の両端部側は、軸受14、14を介して支持板15、15に回転自在に支承されており、支持板15、15は取付けブロック16、16を介して側板2、2に固定されている。回転軸13には、ギャードモータ17の減速ギャー部18のギャーが固定されている。
【0017】
スライド板4、4の上方部の上面には移動ベース20が固定されており、移動ベース20上には複数個のヒンジ部21、21・・・を介して移動刃物ホルダー22が揺動可能に取付けられている。移動刃物ホルダー22の下方側の上面には、移動刃物23が固定されている。移動刃物23の上方には、該移動刃物23と協同して板状部材Wを切断する固定刃物24が配設されている。固定刃物24は、前記ベース板1に固定されている。
【0018】
移動刃物23の刃先は、図4に示すように、一方端23a側が他方端23b側より固定刃物24側になるように傾斜して形成されている。これにより板状部材Wを一方端23aから他方端23bに向かって順次切断することができ、切断が容易に行える。また移動刃物23の刃先と固定刃物24の刃先との隙間が生じないように、移動刃物23の一方端23a側のベース板1には、移動刃物23をガイドする移動刃物ガイド体26が固定されている。そして、移動刃物23の一方端23a側の刃先が移動刃物ガイド体26に圧接するように、移動ベース20と移動刃物ホルダー22間にはスプリング27が配設されている。
【0019】
ベース板1の上方には、板状部材Wを載置する板状部材載置板30が配設されている。板状部材載置板30は、スライド板4、4の移動方向(ガイド板3、3のガイド溝)と直角でかつ板状部材Wを載置する載置面が固定刃物24の前方に位置するように配設されている。図2において、ガイド板3、3のガイド溝は約30度傾斜して形成されているので、板状部材載置板30の板状部材Wの載置面は、約120度傾斜している。板状部材載置板30の板状部材Wの載置面は、縦方向に複数個の溝30aが形成されている。この溝30aの溝幅については後記する。移動刃物23の刃先の下方には、板状部材載置板30の載置面に載置された板状部材Wを受けるストッパー31が配設されており、ストッパー31は移動ベース20に固定されている。板状部材載置板30の溝30aの溝幅は、移動刃物23の刃先からストッパー31までのストッパー面までの長さより若干広く形成されている。
【0020】
ストッパー31の下方には、切断された板状部材Wを排出するためのシュート35が設けられている。また移動刃物23の刃先がスプリング27の付勢力に抗して固定刃物24の刃先より必要以上に離間するのを防止するために、移動ベース20には移動刃物23の揺動を規制するストッパー40が設けられている。ここで、ストッパー40は、固定刃物24に対して移動刃物23が板状部材Wの厚さより小さいクリアランスt(図1参照)になるように調整されている。
【0021】
次に作用について説明する。板状部材載置板30の載置面に板状部材Wを載置すると、板状部材Wの下端はストッパー31のストッパー面で受けられる。ギャードモータ17を駆動させると、回転軸13及びクランクレバー12、12が回転する。前記したように、クランクレバー12、12の先端部にはローラ軸10、10が固定されており、ローラ軸10、10にはローラ11、11が回転自在に設けられ、ローラ11、11は支持板5、5の長穴5a、5aに嵌挿されている。また支持板5、5はスライド板4、4に固定され、スライド板4、4はガイド板3、3に摺動自在に嵌挿されている。このため、クランクレバー12、12が回転すると、ローラ11、11によって支持板5、5及びスライド板4、4はガイド板3、3のガイド溝に沿って図1の状態より往復移動、即ち矢印D方向に下動した後に矢印E方向に上動する。
【0022】
前記したように、スライド板4、4には移動ベース20が固定され、移動ベース20にはヒンジ部21、21・・・を介して移動刃物ホルダー22が取付けられ、移動刃物ホルダー22には移動刃物23が固定されているので、スライド板4、4が矢印D方向に下動すると、移動刃物23は移動刃物ガイド体26に沿って下動し、固定刃物24と協同して板状部材Wを帯状に切断する。なお、移動ベース20にはストッパー31が固定されているのでストッパー31も移動刃物23と共に下動する。スライド板4、4が矢印E方向に上動すると、移動刃物23及びストッパー31も上動し、移動刃物23は固定刃物24より離れ、ストッパー31上が開放する。そこで、板状部材Wが自重により自由落下して板状部材Wの下端がストッパー31に当接する。即ち、回転軸13が1回転して移動刃物23が1往復移動する毎に板状部材Wは順次帯状に切断され、板状部材Wは切断される毎にストッパー31に当接するまで自由落下する。
【0023】
前記したように板状部材Wを帯状に切断するのみでよい場合もある。しかし、単に帯状に切断したのみでは、板状部材Wに記載又は記憶された情報が読み取れて不十分な場合がある。板状部材載置板30の溝30aの溝幅は、移動刃物23の刃先からストッパー31のストッパー面までの長さより若干広く形成されている。そこで、前記したように帯状に切断された板状部材Wを板状部材載置板30の溝30a内に載置する。そして、本装置を作動させると、前記した作用によって帯状の板状部材Wは移動刃物23によって更に細かく裁断される。即ち、情報を読み取れないように裁断することができる。
【0024】
このように、傾斜して配設された板状部材載置板30と、この板状部材載置板30の下端部に配設された固定刃物24と、往復移動可能に固定刃物24に対応して設けられた移動刃物23と、この移動刃物23を往復駆動する刃物駆動手段と、移動刃物23の刃先の下方に配設され、板状部材載置板30に載置された板状部材Wを受けるストッパー31とからなるので、移動刃物23と固定刃物24とによって板状部材Wの下端部が一定長さ切断される毎に板状部材Wは自由落下してストッパー31に当接する。即ち、板状部材Wは自由落下で送られ、板状部材Wの送り装置を必要としないので、安価な装置が得られる。
【0025】
また前記板状部材載置板30の載置面には、縦方向に複数個の溝30aが形成され、この溝30aの溝幅は移動刃物23の刃先からストッパー31までの長さより若干広く形成されているので、前記のようにして切断された帯状の板状部材Wを板状部材載置板30の溝30aに載置することにより、帯状の板状部材Wを更に細かく裁断することができる。
【0026】
特に本実施の形態においては、移動刃物23が矢印D方向に移動する時、移動刃物23に余分な負荷が加わっても、移動刃物23はストッパー40によってクリアランスt、即ち板状部材Wの厚さ以上は固定刃物24より離れないので、板状部材Wを折り込まなく、機械の能力範囲内であれば板状部材Wを切断することができ、連続運転ができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の板状部材用カッターの一実施の形態の要部を示す正面図である。
【図2】図1の板状部材用カッターを設けた具体的な一実施の形態を示す側面断面図で、図4のA−A線断面図である。
【図3】図2のB−B線矢視図である。
【図4】図2のC−C線矢視図である。
【符号の説明】
【0028】
W 板状部材
1 固定刃物ホルダー(ベース板)
20 移動ベース
21 ヒンジ部
22 移動刃物ホルダー
23 移動刃物
24 固定刃物
26 移動刃物ガイド体
27 スプリング
40 ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定刃物と、往復移動可能に前記固定刃物に対応して設けられた移動刃物と、この移動刃物を往復駆動する刃物駆動手段とを備えた板状部材用カッターにおいて、前記移動刃物又は固定刃物の一方の刃物は、ヒンジ部で揺動可能に設けられると共に、刃先が他方の刃物に圧接するように弾性部材で付勢され、前記一方の刃物が他方の刃物に対して切断される板状部材の厚さ以上のクリアランスとならないように前記一方の刃物の動きを規制するストッパーを設けたことを特徴とする板状部材用カッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−105808(P2007−105808A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296437(P2005−296437)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(593163461)株式会社トライヤーン (6)
【Fターム(参考)】