説明

板金部材の固定構造

【課題】ビスを使用することなく板金部材をシャーシ等の被取付部材に固定できる板金部材の固定構造を提供する。
【解決手段】板金部材1には、被取付部材2の被取付面21と当接する当接面12aと、それぞれ、被取付部材2の第1及び第2の貫通孔22、23に挿入されて被取付部材2と係合する第1及び第2の係合部121、122と、を有する取付部12が設けられている。第1の係合部121は、鉤形に設けられて第1の貫通孔22に挿入後、所定方向にスライドされることによって、取付部12が被取付面21に対して略直交する方向に外れないように固定し、第2の係合部122は、前記所定方向へのスライドによって被取付面21との接触箇所が無くなると、弾性力により第2の貫通孔23に挿入されて、取付部12が前記所定方向と反対方向にスライドしないように固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AV機器等の電子機器において、例えば電磁波シールド部材やアース部材等として使用される板金部材の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばテレビジョン受像機、光ディスク用のプレーヤやレコーダ、セットトップボックス等のAV機器に代表される電子機器においては、例えば電波対策用や静電気対策用として使用される板金部材がシャーシやカバー等に取り付けられている。ここで、セットトップボックスに電磁波シールド部材として機能する板金部材を取り付ける場合を例として、従来の板金部材の固定構造について説明する。
【0003】
図8は、従来のセットトップボックスの構成を説明するための概略斜視図であり、図8(a)は従来のセットトップボックスの外観構成を示す概略斜視図、図8(b)は図8(a)に示す構成のうちフロントカバーを除いて示した分解斜視図である。図8に示すように、従来のセットトップボックス100は、金属製のシャーシ101と、樹脂製のフロントカバー102と、金属製のトップカバー103と、を備えている。
【0004】
シャーシ101の前側に形成される前壁101aには、例えばスイッチ類や液晶パネル等の部品(図示せず)が搭載されるフロント基板111がビス留め等によって取り付けられている。そして、この前壁101aには、この前壁101aより後ろ側でシャーシ101に固定配置されるメイン基板112と、フロント基板111と、を電気的に接続する配線を通すための平面視略矩形状の貫通孔101bが形成されている。
【0005】
フロントカバー102は、その前面側に複数のボタン102aや液晶パネル用の窓部102bが形成され、シャーシ101の前壁101aを覆うように被せられる。トップカバー103は、前面側の側壁が抜け落ちた箱形形状をしており、シャーシ101を覆うように上側から被せられる。
【0006】
ところで、上述のようにシャーシ101の前壁101aには貫通孔101bが形成されているが、この貫通孔101bから電磁波が漏れるのを防止するために、従来、図9に示すように、略箱形の板金部材104が貫通孔101bを覆うように配置される。なお、図9は、従来のセットトップボックスにおける板金部材の固定構造を説明するための概略平面図である。図9には、板金部材104と貫通孔101bとの関係をわかりやすくするために、シャーシ101の前壁101aについても併せて示している。
【0007】
この電磁波シールド部材として機能する板金部材104には、一対の対向する2つの側壁のそれぞれから外側に突出する突出部104a、104bが形成されている。この突出部104a、104bのそれぞれにはビス穴104cが形成されており、このビス穴104cとシャーシ101の前壁101aに形成される図示しないビス穴とを用いて、板金部材104はシャーシ101に固定される。
【0008】
このように従来においては、電磁波シールド部材やアース部材として機能する板金部材をシャーシ等に固定する構造として、ビスを用いた固定構造が一般的である。しかし、ビスを複数用いる板金部材の固定構造では、固定作業に手間が掛かると共に、複数のビスを使用するためにコストが高くなるという問題がある。このために、特許文献1において、ビスの使用数を削減してシールド部材(板金部材)を被取付部材(液晶モジュールの背後に配設される取付板金)に確実に固定するシールド部材の固定構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−235648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示される板金部材の固定構造においては、ビス留め部分が残っており、ビス留めをすることなく、板金部材を被取付部材に確実に固定することが望まれた。
【0011】
そこで、本発明の目的は、ビスを使用することなく板金部材をシャーシ等の被取付部材に固定できる板金部材の固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の板金部材の固定構造は、板金部材が取り付けられる被取付部材に前記板金部材を固定する固定構造であって、
前記被取付部材の前記板金部材が取り付けられる被取付面には、第1の貫通孔及び第2の貫通孔が設けられ、
前記板金部材には、前記被取付部材に固定された状態で前記被取付面と当接する当接面と、前記第1の貫通孔に挿入されて前記被取付部材と係合する第1の係合部と、前記第2の貫通孔に挿入されて前記被取付部材と係合する第2の係合部と、を有する取付部が設けられ、
前記第1の係合部は、鉤形に設けられて前記第1の貫通孔に挿入後、所定方向にスライドされることによって、前記取付部が前記被取付面に対して略直交する方向に外れないように固定し、
前記第2の係合部は、前記第1の係合部が前記第1の貫通孔に挿入されて前記所定方向へとスライドされる初期段階においては、前記被取付面に接触して変形された状態となり、前記所定方向へのスライドを更に進めることによって前記被取付面との接触箇所が無くなると、弾性力により前記第2の貫通孔に挿入されて、前記取付部が前記所定方向と反対方向にスライドしないように固定することを特徴としている。
【0013】
本構成によれば、板金部材の鉤形の係合部を被取付部材の貫通孔に挿入して、所定方向に所定量スライドすることによって、板金部材を被取付部材に対して動かないように固定することが可能である。このため、本構成によれば、ビスなしで板金部材を被取付部材に固定することができ、板金部材を被取付部材に固定する作業の作業効率を高めることができる。
【0014】
上記構成の板金部材の固定構造において、前記第2の係合部の先端の一部には、前記第2の係合部が前記第2の貫通孔に挿入される向きとは反対向きに折り返された折返し片が形成されているのが好ましい。
【0015】
本構成によれば、折返し片を引っ張ることによって第2の係合部を変形させ、第2の係合部と被取付部材との係合を解除して、板金部材を被取付部材から外すことが可能となる。電子機器の組立て時において、被取付部材に取り付けた板金部材を一旦取り外して、付け直すという作業(リワーク)を行う場合があるが、本構成によれば、このようなリワークの際の作業手間が軽減される。
【0016】
上記構成の板金部材の固定構造において、前記板金部材は、電磁波を遮蔽する電磁波シールド部材であってもよい。その場合の具体的な構成として、前記板金部材は、前記被取付部材における電磁波漏れが生じる漏れ孔を覆うように配置される箱形部を有し、前記取付部は、前記箱形部の側面から突出するように設けられていることとしてもよい。
【0017】
また、上記構成の板金部材の固定構造において、前記板金部材は、アースを取るために使用されるアース部材であってもよい。その場合の具体的な構成として、前記板金部材は、前記被取付部材に被せられるカバー部材を付勢する弾性部を有することとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の板金部材の固定構造によれば、ビスを使用することなく板金部材をシャーシ等の被取付部材に固定できる。このために、板金部材の固定作業における作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の板金部材の固定構造が適用される板金部材の構成を示す概略平面図で、上から見た場合の図
【図2】本発明の板金部材の固定構造が適用される板金部材の構成を示す概略平面図で、側面から見た場合の図
【図3】本発明の板金部材の固定構造が適用される被取付部材の構成を示す概略平面図
【図4】本実施形態の板金部材の固定構造を説明するための概略平面図
【図5】図4のB−B位置における概略断面図
【図6】本実施形態の板金部材の固定構造の変形例を示す概略平面図
【図7】本発明の板金部材の固定構造が適用される別の実施形態を説明するための概略平面図
【図8】従来のセットトップボックスの構成を説明するための概略斜視図
【図9】従来のセットトップボックスにおける板金部材の固定構造を説明するための概略平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の板金部材の固定構造の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、ここでは、板金部材がセットトップボックスに電磁波シールド部材として取り付けられる場合を例に説明する。セットトップボックスの概略構成は、図8で示した従来の構成と同様であるために、重複する部分の説明は省略する。
【0021】
図1は、本発明の板金部材の固定構造が適用される板金部材の構成を示す概略平面図で、上から見た場合の図である。図2は、本発明の板金部材の固定構造が適用される板金部材の構成を示す概略平面図で、側面から見た(図1のA方向に沿って見た)場合の図である。図1及び図2を参照しながら、本発明の板金部材の固定構造が適用される板金部材の実施形態の構成について説明する。
【0022】
板金部材1は、例えば厚み0.3mm程度の薄板板金をプレス加工によって一体的に形成してなる。図1及び図2に示すように、板金部材1は、平面視略直方体形状の箱形部11と、箱形部11の対向する2つの側面11a、11bから突出する(突出方向は側面11a、11bに対してほぼ90°となる方向)ように設けられる平板状の第1の取付部12及び第2の取付部13と、を備えている。箱形部11は、シャーシに形成される配線用の貫通孔(図8の符号101bで表せる貫通孔と同様のもので、本発明の漏れ孔に該当する)を覆うように配置され、これにより、電磁波の漏れを抑制する。
【0023】
第1の取付部12及び第2の取付部13は、上述の漏れ孔に箱形部11を被せた状態で、板金部材1をセットトップボックスのシャーシ(図8の符号101で表せるシャーシと同様のもの)に固定した状態で取り付けられるように設けられたものである。
【0024】
第1の取付部12には、第1の取付部12の一部を折り曲げ形成してなる、第1の係合部121と第2の係合部122とが設けられる。第1の係合部121と第2の係合部122とは、所定の間隔をあけて隣接配置され、第1の係合部121の方が外部側に設けられている。
【0025】
第1の係合部121は、第1の取付部12の下面12aから突出するように折り曲げられ、鉤形状(フック形状)となっている。また、第2の係合部122も第1の取付部12の下面12aから突出するように折り曲げられてなる。なお、第2の係合部122には、その先端の一部(図1において右端側)が上部側に折り返されてなる折返し片1221が設けられている。この折返し片1221の先端1221aは第1の取付部12の上面12bより突出した状態となっている。この折返し片1221は、シャーシに取り付けた板金部材1の取り外しを容易とするもので、例えばリワークの際の作業手間を軽減可能とするものである。
【0026】
第2の取付部13には、第2の取付部13の一部を折り曲げ形成してなる第3の係合部131が設けられる。第3の係合部131は、第2の取付部13の下面13aから突出するように折り曲げられ、鉤形状(フック形状)となっている。なお、第1の取付部12の下面12aと第2の取付部13の下面13aとは面一となっている。また、第1の係合部121と第3の係合部131とは同一形状、同一サイズとなっている。
【0027】
図3は、本発明の板金部材の固定構造が適用される被取付部材の構成を示す概略平面図である。本実施形態では、板金部材1が取り付けられる被取付部材は、セットトップボックスを構成するシャーシ2である。シャーシ2の基本的な構成は、図8に示すシャーシ101と同様であり、上述したように同一の構成については説明を省略し、従来と異なる構成に限定して説明する。
【0028】
図3に示すように、被取付部材であるシャーシ2は、本実施形態の板金部材1が取り付けられる被取付面21aと、被取付面21aに開口を有する第1の貫通孔22、第2の貫通孔23、第3の貫通孔24及び第4の貫通孔25と、を有する。第4の貫通孔25は、配線を通せるように設けられた貫通孔であり、図8における符号101bで表される配線用の貫通孔(上述のように、電磁波漏れが生じる漏れ孔でもある)と同様のものである。
【0029】
第1の貫通孔22は、その開口が略矩形状に形成され、第1の係合部121が挿入される。第2の貫通孔23は、その開口が略L字状に形成され、第2の係合部122が挿入される。第3の貫通孔24は、その開口が略矩形状に形成され、第3の係合部131が挿入される。第2の貫通孔23が略L字状に形成されるのは、第2の係合部122の先端に折返し片1221が形成されるのを考慮するものであり、板金部材1がシャーシ2に固定された状態で折返し片1221とシャーシ2とが接触しないようにするものである。
【0030】
なお、これらの貫通孔22〜25が形成される部分は平板であり、その厚みは板金部材1の厚みより厚く、一例としてほぼ0.8mmとなっている。また、貫通孔22〜24の孔の大きさは、それぞれが係合する係合部121、122、131に対応して決められる。本実施形態では、上述のように第1の係合部121と第3の係合部131とは同一形状、同一サイズであり、第1の貫通孔22と第3の貫通孔24とは同一形状、同一サイズとされている。
【0031】
次に、以上のように形成されるシャーシ(被取付部材)2に板金部材1を固定する固定構造の詳細を、図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、本実施形態の板金部材の固定構造を説明するための概略平面図で、図4(a)は固定前の状態、図4(b)は固定状態を示している。図5は、図4のB−B位置における概略断面図で、図5(a)は固定前の状態、図5(b)は固定状態を示している。
【0032】
なお、図4(a)においては、説明の便宜上、シャーシ2に設けられる貫通孔22〜25を破線で示している。また、図5において、折返し片1221は本来見ないものであるが、説明の便宜上、破線で示している。
【0033】
板金部材1をシャーシ2に固定するにあたって、まず、図4(a)に示すように、第1の係合部121が第1の貫通孔22の真上に来るように、且つ、第3の係合部131が第3の貫通孔24の真上に来るように板金部材1を配置する。そして、板金部材1を下方に下げて、第1の係合部121を第1の貫通孔22に、第3の係合部131を第3の貫通孔24に挿入する。
【0034】
この時点では、第2の係合部122の下にある第2の貫通孔23は、平面視、第2の係合部122を取り囲むような状態にない。このため、第2の係合部122は、板金部材1を下方に下げることにより、その先端の一部(折返し片1221が形成されていない部分)がシャーシ2の被取付面21に接触して、上方に押し上げられるように変形する(図5(a)の楕円状の破線で囲んだ部分参照)。
【0035】
板金部材1を固定する場合、この状態から、板金部材1が図4及び図5における左方向(矢印C方向)にスライドされる。板金部材1が左方向にスライドされると、鉤形に形成される第1の係合部121及び第3の係合部131とは、シャーシ2と係合する。このため、板金部材1の第1の取付部12及び第2の取付部13が被取付面21に対して略直交する方向(図4では紙面手前方向、図5では上方向)に外れないように固定される。
【0036】
より詳細には、第1の取付部12及び第2の取付部13の係合部121、122、131が設けられていない部分の下面12a、13aは、シャーシ2の被取付面21と当接する当接面となっている。このため、第1の取付部12及び第2の取付部13は、第1及び第3の係合部121、131と、取付部12、13の下面12a、13aとで、シャーシ2を挟むような状態となってシャーシ2に固定される。
【0037】
第2の係合部122は、板金部材1の左方向へのスライドの初期段階では、依然としてシャーシ2の被取付面21と接触して変形されたままである。しかし、左方向へのスライドを更に進めると、第2の貫通孔23の存在により、第2の係合部122は被取付面21との接触箇所がなくなる。そして、この接触箇所がなくなった状態になると、弾性力によって第2の係合部122は第2の貫通孔23に挿入される。
【0038】
第2の係合部122が第2の貫通孔23に挿入されると、第1の取付部12は、第2の係合部122が第2の貫通孔23の壁面(シャーシ2)に引っ掛かるために、右方向(矢印C方向と反対方向)へスライドできなくなる。すなわち、第2の係合部122によって、板金部材1はシャーシ2に対して右方向にスライドしないように固定される。
【0039】
なお、この時点で、第1及び第3の係合部121、131は第1及び第3の貫通孔22、24の壁面(シャーシ2)に引っ掛かって、板金部材1は左方向にもスライドしないようになる(図4(b)、図5(b)参照)。
【0040】
したがって、板金部材1は、左右及び上下の移動を規制された固定状態となるのである。すなわち、本実施形態の板金部材の固定構造は、ビス留めすることなく板金部材1を固定できるのである。
【0041】
ところで、本実施形態においては、第2の係合部122の先端の一部を、第2の係合部122が第2の貫通孔23に挿入される向きとは反対向きに折り返してなる折返し片1221が設けられた構成となっている。板金部材1を図4(b)や図5(b)に示すように固定状態とした後に、作業の都合等によって板金部材1を取り外したい場合がある。このような場合に、図5(b)に破線矢印で示すD方向に折返し片1221を引き上げると、第2の係合部122とシャーシ2との係合が解除され、板金部材1を容易に右方向にスライド可能となる。すなわち、本実施形態の構成によれば、折返し片1221の存在により、例えばリワークの際の作業手間が軽減できるのである。
【0042】
以上に示した実施形態は例示であって、本発明が適用される範囲は以上に示した実施形態の構成に限定されないのは言うまでもない。
【0043】
例えば、以上に示した実施形態においては、第1の取付部12には、鉤形の係合部(第1の係合部121)、及び、板金部材1の所定方向へのスライドによって貫通孔(第2の貫通孔23)に挿入されて板金部材1が前記所定方向と反対方向にスライドするのを抑止する係合部(第2の係合部122)を設けることとした。そして、第2の取付部13には、上述の第1の係合部121と同一の働きをする鉤形の係合部(第3の係合部131)のみを設けて、上述の第2の係合部122と同一の働きをする係合部は設けない構成とした。しかし、本発明の範囲はこの構成に限定される趣旨ではなく、第2の取付部13にも、上述の第2の係合部122と同一の働きをする係合部を設ける構成としても構わない。
【0044】
また、以上に示した実施形態においては、板金部材1をシャーシ(被取付部材)2に対して横方向にスライドすることによって、板金部材1をシャーシ2に固定する構成とした。これは、シャーシ2に取り付けられるフロント基板(図8の符号111と同様のもの)を避けつつ、下部側にある漏れ孔25を覆う場合の作業性を考慮するものである。しかし、この構成に限定される趣旨ではなく、例えば図6に示すように、板金部材1をシャーシ2に対して縦方向にスライド(図6では上から下へとスライド)することによって、板金部材1がシャーシ2に固定される構造としても勿論構わない。
【0045】
なお、図6は、本実施形態の板金部材の固定構造の変形例を示す概略平面図である。図6において、以上に示した実施形態(例えば図4参照)における各部と同様の機能を有する部分には同一の符号を付している。図6に示す構成は、上述したスライド方向の違いの他に、第2の取付部13に、第2の係合部122と同様の機能を有する第4の係合部132、及び、第4の係合部132が挿入される第5の貫通孔26(第2の貫通孔23と同様の機能を有する)が設けられている点で、以上に示した実施形態と異なる。
【0046】
また、図6に示す構成では、第2の係合部122(及び第4の係合部132)の先端に折返し片1221が設けられておらず、この点においても以上に示した実施形態と異なる。ただし、上述の折返し片を設けない構成とすると、一度固定した板金部材1をシャーシ2から取り外す際に、例えば精密ドライバ等の工具が必要となり、リワークの際の作業が手間となるといった不便が生じる。このため、上述の折返し片を設けるのが好ましい。
【0047】
また、以上では、本発明の板金部材の固定構造が、電磁波シールド部材として機能する板金部材に適用される場合を例に説明したが、本発明の板金部材の固定構造は、板金部材の用途によって限定されるものではなく、様々の用途に用いられる板金部材を固定する場合に適用できるものである。すなわち、例えば板金部材がアースを取るために使用される場合等にも本発明は適用できるのである。
【0048】
図7は、本発明の板金部材の固定構造が適用される別の実施形態を説明するための概略平面図で、図7(a)は上から見た図、図7(b)は側面から見た図である。別実施形態の板金部材3は、第1の係合部311と第2の係合部312とを有する取付部31と、弾性部32と、を有する。第1の係合部311及び第2の係合部312は、先に説明した第1の係合部121及び第2の係合部122と同一の構成である。第2の係合部312には、先端の一部を折り返して形成される折返し片3121も形成されている。なお、取付部31には、被取付部材の被取付面と当接する当接面も含まれている。
【0049】
板金部材3は、例えば、図8に示すセットトップボックス100の前壁101aの上部を折り返して設けられる平板部102cの領域Eに固定される。この場合、平板部102cには、図3に示したものと同様の第1及び第2の貫通孔22、23を設ける必要がある。そして、板金部材3を平板部102cに固定した状態でトップカバー103を上から被せると、弾性部32は弾性力によってトップカバー103に付勢され、静電気対策としてのシャーシ101とトップカバー103との電気的な接続を確実なものとできる。
【0050】
また、以上においては、板金部材が取り付けられる被取付部材が金属部材である場合を例に、本発明の板金部材の固定構造を説明した。しかし、板金部材が取り付けられる被取付部材は金属部材に限らず、例えばプラスティック等の樹脂部材でも構わない。更に、本発明は、セットトップボックスに限らず、他の電子機器に広く適用できるのは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、電子機器において板金部材を被取付部材に取り付ける場合の固定構造として広く適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1、3 板金部材
2 シャーシ(被取付部材)
11 箱形部
12 第1の取付部
12a 下面(当接面)
21 被取付面
22 第1の貫通孔
23 第2の貫通孔
25 第4の貫通孔(漏れ孔)
31 取付部
32 弾性部
103 トップカバー(カバー部材)
121、311 第1の係合部
122、312 第2の係合部
1221、3121 折返し片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金部材が取り付けられる被取付部材に前記板金部材を固定する固定構造であって、
前記被取付部材の前記板金部材が取り付けられる被取付面には、第1の貫通孔及び第2の貫通孔が設けられ、
前記板金部材には、前記被取付部材に固定された状態で前記被取付面と当接する当接面と、前記第1の貫通孔に挿入されて前記被取付部材と係合する第1の係合部と、前記第2の貫通孔に挿入されて前記被取付部材と係合する第2の係合部と、を有する取付部が設けられ、
前記第1の係合部は、鉤形に設けられて前記第1の貫通孔に挿入後、所定方向にスライドされることによって、前記取付部が前記被取付面に対して略直交する方向に外れないように固定し、
前記第2の係合部は、前記第1の係合部が前記第1の貫通孔に挿入されて前記所定方向へとスライドされる初期段階においては、前記被取付面に接触して変形された状態となり、前記所定方向へのスライドを更に進めることによって前記被取付面との接触箇所が無くなると、弾性力により前記第2の貫通孔に挿入されて、前記取付部が前記所定方向と反対方向にスライドしないように固定することを特徴とする板金部材の固定構造。
【請求項2】
前記第2の係合部の先端の一部には、前記第2の係合部が前記第2の貫通孔に挿入される向きとは反対向きに折り返された折返し片が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の板金部材の固定構造。
【請求項3】
前記板金部材は、電磁波を遮蔽する電磁波シールド部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の板金部材の固定構造。
【請求項4】
前記板金部材は、前記被取付部材における電磁波漏れが生じる漏れ孔を覆うように配置される箱形部を有し、
前記取付部は、前記箱形部の側面から突出するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の板金部材の固定構造。
【請求項5】
前記板金部材は、アースを取るために使用されるアース部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の板金部材の固定構造。
【請求項6】
前記板金部材は、前記被取付部材に被せられるカバー部材を付勢する弾性部を有することを特徴とする請求項5に記載の板金部材の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−3713(P2011−3713A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145401(P2009−145401)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】