説明

枚葉紙の搬送装置

【課題】枚葉紙の束を搬送するロボットハンドの改良を図る。
【解決手段】枚葉紙の束320を把持して搬送するロボットハンドは板状の固定爪47と、ロータリーアクチュエータ軸410にとりつけられたアーム42を有し、アーム42の先端に可動爪部材430が装備される。可動爪部材430は、アーム側シャフト部431に対して回動自在に支持される可動爪本体435と、固定側にとりつけられたバネ押え板450を有し、可動爪本体435とバネ押え板450の間に1対のコイルバネ460が設けられる。枚葉紙の束320の厚さ寸法が変化しても可動爪は均一な押圧力で確実な把持を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枚葉紙の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙葉類、プラスチックフィルムなどの枚葉品を区分・搬送工程においては、回転ローラを堆積物品の側端部に直接当接させて区分を行い、ロボットハンド等により搬送する方法がある。例えば、特許文献1または特許文献2には、区分ローラと被区分物品を搬送するロボットハンドを有し、セパレータを被搬送物品に挿入する区分・搬送装置が記載されている。
【0003】
具体的には、特許文献1には、多数重積されている枚葉紙のうちの上から適数枚の枚葉紙とその下の枚葉紙との間に紙受けローラを挿入してその適数枚の枚葉紙の端縁をチャックにより掴む搬送枚葉紙取上げ工程と、その取上げた枚葉紙を紙受けローラとチャックとの移動により紙積みされる所定位置に移動させその枚葉紙の端縁を略合致させて置く移動工程と、その置かれた状態でローラを抜取るローラ抜取り工程と、ローラ抜取りが完了したらチャックによる掴み状態を解除する掴み解除工程とからなることを特徴とする枚葉紙の紙積み方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、多数積重ねられているシート材同士の間に挿入するセパレータ本体と、このセパレータ本体の挿入側端縁に沿って回転自在に軸支して配した細径分離ローラと、この細径分離ローラを必要に応じて所望の回転方向と回転速度にて回転させる駆動装置とから構成したことを特徴とする積重ねられたシート材のセパレータが記載されている。
また、特許文献3は、本出願人の提案に関するもので、間紙が挟まれて積層された枚葉紙の束を回転ローラを移動させて湾曲させ、その後にローラを回転させて枚葉紙を1枚毎に戻しつつ光学センサで間紙を検知し、区分する装置及び方法が開示されている。
【特許文献1】特開平7−196182号公報
【特許文献2】特開平8−67364号公報
【特許文献3】特開2008−44706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の枚葉紙の搬送装置にあっては、厚さ寸法が異なる束を確実に把持することが難かしいという問題点があった。
【0006】
本発明は、一定枚数ごとに間紙の入った枚葉紙を自動的に一定枚数に区分けし、ハンドにより把持して次工程へ迅速かつ確実に移載することのできる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の枚葉紙の搬送装置は、ロボット本体により操作されるロボットアームと、ロボットアームの先端に装備されるロボットハンドを備え、ロボットハンドは、枚葉紙の束の下面を支持する固定爪と、枚葉紙の束の上面を押える可動爪部材と、可動爪部材を旋回動させるアームを駆動するロータリーアクチュエータを備える。そして、可動爪部材は、アームに固着されるアーム側シャフト部とアーム側シャフト部に回転自在に支持される可動爪本体と、枚葉紙の上面に当接する可動爪本体の押圧力を均一化する押圧手段を備えるものである。
また、可動爪本体の押圧力を均一化する押圧手段は、アーム側シャフト部に設けられるバネ押え板と、アーム側シャフト部を挟んで可動爪本体とバネ押え板との間に装備される1対のコイルバネを備えるものである。
さらに、可動爪本体は、枚葉紙に接する面に平坦な弾性体を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以上のように、積層された枚葉紙を確実に搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の枚葉紙の区分搬送装置の主要な構成を示す正面図、図2は平面図である。
【0010】
全体を符号1で示す枚葉紙の区分搬送装置は、床面に配置される基板10と、基板10上に立設される第1のフレーム20を備える。第1のフレーム20の上部にはロボット取付用ベース22が設けられ、ロボット取付用ベース22上に搬送装置のロボット30が装備される。
【0011】
搬送装置のロボット30は、固定されるロボット本体32と、旋回動するロボットアーム34を有し、ロボットアーム34の先端側にとりつけられるロボットヘッド36を備える。
ロボットヘッド36は垂直方向であるZ軸方向に昇降する昇降軸38を有し、昇降軸38の下部には後述する枚葉紙搬送用ハンド40が装備される。
【0012】
基板10上の第1のフレーム20に対向する位置には第2のフレーム50が立設される。第2のフレーム50にはロボット取付用ベース52が取りつけられ、ロボット取付用ベース52に区分装置のロボット60が装備される。
区分装置のロボット60はロボット本体62と、ロボット本体62に対して旋回動するロボットアーム64と、ロボットアーム64に対して関節65を有して連結されるロボットヘッド66を有する。
ロボットヘッド66には、後述するさばきローラ70が回転自在に装備される。
【0013】
次に、区分すべき積層された枚葉紙の供給機構を説明する。
基板10上には、例えば第1のフレーム20に支持される状態でカセット取付用ベース100が設けられる。そして、このカセット取付用ベース100上に区分すべき多数の枚葉紙300が所定枚数毎に間紙310を挟んだ状態で積層されたカセット120がカセット取付用ネジ110と固定用金具112により着脱自在にとりつけられる。
【0014】
図3は、カセット120の詳細を示す。カセット120は区分すべき枚葉紙300の平面形状に対応する矩形のガイド板122で構成され、底部に敷き板124を有する。
カセット120の前面には前面開口部126が設けられ、側部には、昇降テーブルのアームが通過する隙間128が形成される。
ガイド板122の上部には切欠部130が設けられ、さばきローラ70が最上部の枚葉紙300に当接するように構成されている。
【0015】
第1のフレーム20にはステッピングモータ150がとりつけられていて、ステッピングモータ150のタイミングプーリ152は図示しないタイミングベルトを介してタイミングプーリ160を駆動する。
タイミングプーリ160はボールネジ170を回転駆動し、ボールネジ170に螺合するボールナット180がテーブル200を昇降動させる。ガイド210はボールナット180を上下方向に摺動自在に案内する。
【0016】
カセット120の上部には、ブラケット240を介してアクチュエータ250がとりつけられ、アクチュエータ250のアーム260は押え板270を昇降させる。
押え板270はテーブル200で上方へ供給される枚葉紙300の最上部を押えて、後述する枚葉紙300の区分け作業を支援する。
【0017】
カセット120内に積層される枚葉紙300は一定枚数毎(例えば100枚毎)に、間紙310が挟まれている。
間紙310は、枚葉紙300に対して異なる色彩を有するものとして、光学的に間紙310を検知できるようにしてある。
【0018】
なお、図1において説明の都合上、搬送装置のロボット30の枚葉紙搬送用ハンド40が枚葉紙300の手前側にあるように図示されているが、図2に示すように、実際には枚葉紙搬送用ハンド40は枚葉紙300の後側に位置して枚葉紙300の区分搬送を行うものである。
【0019】
次に、図4、図5に基いて本発明の装置の要部を説明する。
図4は、搬送装置のロボット30に装備される枚葉紙搬送用ハンド40と、区分装置のロボット60に装備されるさばきローラ70が共同して枚葉紙300を一定の枚数に区分して枚葉紙の束320として搬送する構成を示す正面図、図5は平面図である。
【0020】
積層されてテーブル200によりZ軸方向である上方へ送られる枚葉紙300の最上面は押え板270により押えられる。
押え板270の上下位置は図示しない適宜のセンサ等により検知される。
この状態では、搬送装置のロボット30により操作されるロボットヘッド36は矢印D方向(Y軸)に移動・退避しており枚葉紙300とは干渉しない。
【0021】
次に、区分装置のロボット60に支持されたさばきローラ70は、図4の仮想線で示す位置から実線で示す位置まで矢印A方向に移動する。この移動の途中でさばきローラ70は枚葉紙300の一方の短辺側に衝き当り、枚葉紙300を適当な束として一方へ押し上げる。枚葉紙300の他方の短辺側は押え板270で押さえられた状態で保つ。
【0022】
この押し上げの際には、さばきローラ70は一方の回転方向R側に回転して、枚葉紙300の束の押し上げを確実に行う。
さばきローラ70による押し上げが完了したことを図示しない位置センサで確認すると、さばきローラ70は回転方向Rの回転を停止し、Rとは逆方向の回転方向R側に回転する。このさばきローラ70のR方向への回転により、押し上げられた枚葉紙300の束320の最下部の紙が一枚毎に下方へ払い戻される。
【0023】
この紙の面は、光学センサ500で監視される。
光学センサ500が一定枚数毎に挟み込まれている間紙310を検知すると、さばきローラ70の回転を瞬時に停止させる。
その後に、さばきローラ70を矢印R方向に所定の回転量だけ回転させる。
この操作は巻戻しと称されるものであって、払い戻し操作中に発生した間紙310のたるみを取り除いて間紙310を区分された枚葉紙320の束と一体になるように整列させる操作のことを示す。
光学センサ500は巻戻された間紙310を再度確認し、さばきローラ70の回転を停止する。
この状態で図5に示すように、搬送装置のロボット30のロボットヘッド36は枚葉紙搬送用ハンド40を矢印C方向に移動させる。
【0024】
枚葉紙搬送用ハンド40は、ロータリーアクチュエータ41とロータリーアクチュエータ41により旋回駆動されるアーム42と、アーム42の先端にとりつけられる可動爪43を有する。可動爪43の枚葉紙300に当接する側の面には弾性体44がとりつけられる。弾性体44は例えばウレタンゴムで構成される。
枚葉紙搬送用ハンド40には可動爪43に対向してベース46が設けられ、固定爪47がとりつけられる。
【0025】
上述した構成を有する枚葉紙搬送用ハンド40が押し上げられた枚葉紙300の枚葉紙の束320の間に差し込まれたことをセンサ等で確認すると、図4において区分装置のロボット60はさばきローラ70を矢印B方向に退避させる。
この作動により、間紙310を最下面とする枚葉紙の束320は固定爪47の上に戻される。
【0026】
その後にロータリーアクチュエータ41を作動させてアーム42を旋回動させて可動爪43を実線位置から仮想線位置に回動させる。この作用によって枚葉紙の束320は可動爪43と固定爪47の間に挟まれる。センサS、Sは可動爪43の開閉を検知する。可動爪43の弾性体44はこの枚葉紙の束320の把持を確実にする。
【0027】
その後に押え板270を上昇させて枚葉紙300の上面を解放し、搬送装置のロボット30を作動して枚葉紙搬送用ハンド40で把持された枚葉紙の束320を次工程へ搬送する。
この作業をカセット120内の枚葉紙300が無くなるまでくり返す。
なお、図4の正面図にあっては、ロータリーアクチュエータ41は、ハンド40の裏面にあるので、破線で示されるべきところ、説明の都合上実線で示されている。
【0028】
本発明は、上述した枚葉紙の区分搬送装置1に適用される搬送装置のロボット30の枚葉紙搬送用ハンド40の改良に関する。
図6〜図10を用いて本発明の装置を説明する。
本発明の枚葉紙搬送用ハンド40も先に説明したものと共通した部材を備えるので、同様の部材には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0029】
本発明の枚葉紙搬送用ハンド40は、全体を符号430で示す可動爪部材を備える。可動爪部材430は、ロータリーアクチュエータ41のロータリーアクチュエータ軸410に取付けられたアーム42の先端に装備される。
【0030】
図9は可動爪部材430の詳細な構造を示す。
可動爪部材430はアーム42に取付けられるアーム側シャフト部431と、アーム側シャフト部431と一体のフランジ部432と、フランジ部432から先方に突出する可動爪本体支持シャフト部433を備える。
可動爪本体支持シャフト部433は、ベアリング434を介して可動爪本体435を回動自在に支持する。可動爪本体435の弾性体440を取りつける面の反対側の面は平坦面436に形成される。
【0031】
可動爪本体435の平坦面436に対向する側にバネ押え板450が設けられる。
バネ押え板450は、フランジ部432の平坦に形成された上面に対してボルト451により固定される。
【0032】
可動爪本体435には、中心から等距離の位置に1対のバネ受け穴437が設けられ、それぞれのバネ受け穴437にコイルバネ460が装備される。
可動爪本体435の平坦面436とバネ押え板450の下面との間には間隙が設けてあり、コイルバネ460の上面にはバネ押え板450の下面を押圧する。
【0033】
図10は本発明の可動爪部材430の作用を示す図であって、図の(a)、(b)、(c)はそれぞれ高さ寸法が異なる枚葉紙の束320を把持する状態を示す。
図10の(a)は可動爪部材430と固定爪47の間で最小限の厚さ寸法Tを有する枚葉紙の束320を把持する状態を示す。
この状態にあっては、アーム42のロータリーアクチュエータ軸410に対するアーム側シャフト部431の固定爪47の面からの立上り角度αは小さい。そこで、1対のコイルバネ460のうちで、ロータリーアクチュエータ軸410に近い側のコイルバネ460が伸長して可動爪本体435を回動させ、弾性体440の枚葉紙の束320への押圧力を均一化する。この状態では、可動爪本体435の平坦面436の端部はバネ押え板450の下面に接触し、それ以上の回動は制止される。
【0034】
図10の(b)は、中間の厚さ寸法Tを有する枚葉紙の束320を把持する状態を示す。
この状態ではアーム42の立上り角度αとなり、1対のコイルバネ460は均一なバネ力で可動爪本体435を押圧する。この状態では可動爪本体435の平坦面436とバネ押え板450の間の間隙は均一となる。
【0035】
図10の(c)は最大の厚さ寸法Tの枚葉紙の束320を把持する状態を示す。
この状態ではアーム42の角度αは大きくなる、1対のコイルバネ460のうち、ロータリーアクチュエータ軸410から遠い方のコイルバネ460が伸長して可動爪本体435を回動させる。可動爪本体435の平坦面436のロータリーアクチュエータ軸410に近側の端部はバネ押え板450に接触してそれ以上の回動は制止される。
この作用によって弾性体440の押圧力は均一化される。
本発明によれば、厚さ寸法が異なる枚葉紙を確実に把持・搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の枚葉紙の区分搬送装置の主要な構成を示す正面図
【図2】本発明の枚葉紙の区分搬送装置の主要な構成を示す平面図
【図3】カセットの説明図
【図4】要部の正面図
【図5】要部の平面図
【図6】枚葉紙搬送用ハンドの正面図
【図7】枚葉紙搬送用ハンドの平面図
【図8】枚葉紙搬送用ハンドの右側面図
【図9】可動爪部材の詳細図
【図10】枚葉紙搬送用ハンドの作用を示す説明図
【符号の説明】
【0037】
1 枚葉紙の区分搬送装置
10 基板
20 第1のフレーム
22 ロボット取付用ベース
30 搬送装置のロボット
32 ロボット本体
34 ロボットアーム
36 ロボットヘッド
38 昇降軸
40 枚葉紙搬送用ハンド
41 ロータリーアクチュエータ
42 アーム
43 可動爪
44 弾性体
46 ベース
47 固定爪
50 第2のフレーム
52 ロボット取付用ベース
60 区分装置のロボット
62 ロボット本体
64 ロボットアーム
65 関節
66 ロボットヘッド
70 さばきローラ
100 カセット取付用ベース
110 カセット取付用ネジ
112 固定用金具
120 カセット
122 ガイド板
124 敷き板
126 前面開口部
128 隙間
130 切欠部
150 ステッピングモータ
152 タイミングプーリ
160 タイミングプーリ
170 ボールネジ
180 ボールナット
200 テーブル
210 ガイド
240 ブラケット
250 アクチュエータ
260 アーム
270 押え板
300 枚葉紙
310 間紙
320 枚葉紙の束
410 ロータリーアクチュエータ軸
430 可動爪部材
431 アーム側シャフト部
432 フランジ部
433 可動爪本体支持シャフト部
434 ベアリング
435 可動爪本体
436 平坦面
437 バネ受け穴
440 弾性体
450 バネ押え板
451 ボルト
460 コイルバネ
500 光学センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された枚葉紙を搬送する装置であって、
搬送装置は、ロボット本体により操作されるロボットアームと、ロボットアームの先端に装備されるロボットハンドを備え、
ロボットハンドは、枚葉紙の束の下面を支持する固定爪と、枚葉紙の束の上面を押える可動爪部材と、可動爪部材を旋回動させるアームを駆動するロータリーアクチュエータを備え、
可動爪部材は、アームに固着されるアーム側シャフト部とアーム側シャフト部に回転自在に支持される可動爪本体と、枚葉紙の上面に当接する可動爪本体の押圧力を均一化する押圧手段を備える枚葉紙の搬送装置。
【請求項2】
可動爪本体の押圧力を均一化する押圧手段は、アーム側シャフト部に設けられるバネ押え板と、アーム側シャフト部を挟んで可動爪本体とバネ押え板との間に装備される1対のコイルバネを備える請求項1記載の枚葉紙の搬送装置。
【請求項3】
可動爪本体は、枚葉紙に接する面に平坦な弾性体を備える請求項1又は2記載の枚葉紙の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−234775(P2009−234775A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86312(P2008−86312)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】