説明

果実破砕機

【課題】特に小規模の生産者にとって扱いやすいように小型軽量化された果実破砕機を提供する。
【解決手段】果実破砕機10は、上部が開口された容器12と、容器12を封鎖する蓋14と、蓋14の表裏に貫通するシャフト18と、蓋14の内側でシャフト18の一端に連結されたモータ20と、蓋14の外側でシャフト18の他端に連結された破砕刃22を備える。シャフト18は軸周りに回転可能であるとともに軸方向に移動可能であり、破砕刃22は、自重とモータ20の重量によって容器12内を下降しながら果実を破砕していく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実の果肉部分を破砕する果実破砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
果実を液状やペースト状に加工する場合、最初に果実から種子を除去し、次に果肉を破砕して果汁や果肉ペーストを得るのが一般的である。大量の果実から種子を除去する作業は重労働であることから、従来、果実から種子を除去する作業を自動化した装置が知られている(特許文献1参照)。この従来装置は、細長い棒状体を果実に突き通して種子を抜き取るものであり、種子と果肉を完全に分離させることを目的としている。しかし、果実を保管する場と種子の抜き取りを行う場が離れているため、その間の果実の移動にコンベア等の動力機構が必要である。また、種子を抜き取りやすくするために種子が縦向きになるように果実を整列させる必要があり、この作業は人手に任されている。このように従来装置は、多数の作業者や広い敷地面積を有し、一度に大量の果実を加工する大規模な生産者にはとってはスケールメリットを活かすことができるものであるが、これらに乏しい小規模の生産者にとっては扱いにくいものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−278538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特に小規模の生産者にとって扱いやすいように小型軽量化された果実破砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上部が開口された容器と、前記容器を封鎖する蓋と、前記蓋の表裏に貫通するシャフトと、前記蓋の内側で前記シャフトの一端に連結されたモータと、前記蓋の外側で前記シャフトの他端に連結された破砕刃を備え、前記シャフトは、軸周りに回転可能であるとともに軸方向に移動可能であることを特徴とする果実破砕機を提供する。
【0006】
本発明によれば、モータの重量と自重によって下降する破砕刃が、容器内の果実の果肉部分を上層から下層に向けて順に破砕し、果実を果肉と種子に分離していく。種子を抜き取る必要はないので果実の向きを整える作業は不要である。1つの容器を、加工前の果実を保管し、破砕加工を施し、加工後の果肉と種子を保管するという複数の異なる用途に用いるので、広い敷地面積や果実を複数の場に移動させるための動力機構などは不要である。
【0007】
手動でモータを上下に動かすことで簡単に破砕刃の高さを変えることができるので、特定の高さにある果実を集中的に破砕することも可能である。果実破砕機の動力機構は破砕刃を回転させるためのモータのみであるので、初期投資や維持管理に要する費用を大幅に抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、多数の作業者や広い敷地面積を有さない比較的小規模の生産者であっても果実の破砕加工を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】果実破砕機の分解図
【図2】果実破砕機の使用時の状態を示す斜視図
【図3】破砕刃を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1、図2に果実破砕機の構造を示す。図1は果実破砕機を分解した状態を示し、図2は実際の使用時の状態を示している。果実破砕機10は、上部が開口された容器12と、容器12の開口を封鎖する蓋14と、容器12に蓋14を固定する締結帯16と、蓋14の表裏に貫通するシャフト18と、蓋14の表側でシャフト18の一端に連結されたモータ20と、蓋14の裏側でシャフト18の他端に連結された破砕刃22と、シャフト18の周囲に等分配置され、シャフト18と同じく蓋14の表裏に貫通する3本のガイド棒24と、蓋14の表側でガイド棒24の一端に連結されたモータ支持板26で構成されている。
【0011】
蓋14は、容器12の上部開口の周縁部と係合し、容器12を密閉する。破砕した果肉が溢れ出たりしないように、容器12の周縁部と接する部分にゴムなどの水密性の高い部材を装着しておいてもよい。
【0012】
締結帯16は、蓋14の外周を取り囲むことができる程度の長さを有する円環形状の帯状部材であり、蓋14の外周を締め付けることにより容器12に蓋14を固定するものである。蓋14に取り付けられているモータ20は蓋14に比べてはるかに重いので、バランスを崩して蓋14が外れたりしないように締結帯16によって蓋14を容器12に固定しておく必要がある。締結帯16は通常は緩めた状態にしてあり、この状態では蓋14の開け閉めが可能である。果実破砕機10を使用するときには締結帯16を締結し、蓋14を容器12に固定する。
【0013】
蓋14の中央にはベアリング28が装着されている。ベアリング28にはシャフト18が挿嵌されており、シャフト18は蓋14の表裏に貫通した状態になっている。ベアリング18に挿嵌されたシャフト18は、軸周りに回転可能であるとともに軸方向に移動可能である。
【0014】
シャフト18の一端にはモータ20の回転軸29が連結されている。モータ20の駆動力はシャフト18を介してシャフト18の他端に取り付けられた破砕刃22に伝わり、破砕刃22を回転させる。破砕刃22はモータ20の重量と自重によって容器12内を下降しながら果実を破砕していく。シャフト18は破砕刃22が容器12の底に接触しないような長さに調整されている。
【0015】
ガイド棒24は、シャフト18と同じように蓋14の表裏側に貫通し、一端がモータ支持板26に連結されている。他端側は蓋14の裏側で図示しない板などに連結されている。モータ20はモータ支持板26に装着されている。ガイド棒24は蓋14に対するシャフト18の軸角度を直角に保ち、シャフト18の回転および移動を円滑にするガイドの役割を果たすものであり、少なくとも3本がシャフト18の周囲に等分配置されていることが望ましいが、その数や配置はこれに限定されない。
【0016】
図3に破砕刃の構造を示す。破砕刃22は、正12角形の中板30の外周の12辺にそれぞれ外刃32を有し、さらに外刃32の内側に内刃34を有する構造となっている。平板30には表裏に貫通する孔36が設けられている。中央の孔38にはシャフト18の他端が連結される。
【0017】
中板30と外刃32は1枚の正12角形の平板で構成されている。正12角形の平板の12の角に同じ長さの切り込みを入れることで得られた12の同形の小片部分が外刃32となり、その中央部分が中板30になる。この小片部分を中板30の表側と裏側に交互に折り曲げることで、表側に6つ、裏側に6つの外刃32が形成されている。外刃32には平面視して直線状のものとL字型状のものがあり、L字型状の外刃32は、破砕刃22の回転方向に対して外刃32の先端部分40が外側に向けて略直角に折り曲げられている。L字型状の外刃32には、直線状の外刃32と同じく果肉を破砕する作用のほかに、先端部分40で果肉を攪拌する作用がある。
【0018】
内刃34は、矩形状の小片を中板30の表側と裏側に2つずつ溶接することで形成されている。内刃34には破砕された果肉を攪拌する作用がある。
【0019】
中板30に形成された4つの孔36は、破砕された果肉や種子を通過させるためのものである。破砕された果肉や種子が容器12の下の方に溜まると破砕刃22が下降できなくなるので、破砕刃22の下にある果肉や種子を破砕刃22の上に逃がすようにしている。
【0020】
内刃34および孔36は、その作用が発揮される限りにおいて数や大きさは限定されないが、破砕刃22の重心がシャフト18の軸心と一致するようにする必要がある。破砕刃22の製作後にバランステストで重心がずれていることが分かった場合には、孔36の大きさを変えることで重心の位置を容易に調整することができる。
【0021】
中板30の形状は正12角形には限定されず、他の多角形や円形であってもよい。例えば、容器12の内径に応じて中板30の径を小さくしたいときには正6角形や正8角形とし、径を大きくしたいときには正20角形とするなど適宜選択することができる。外刃32は中板30と連続した平板で構成されるものには限らず、中板30に溶接したものであってもよい。
【0022】
果実破砕機10の使用方法は次のとおりである。容器12には破砕しようとする果実(例えば青梅や李などの比較的小粒な果実)を入れる。果実の向きを揃える必要はないので、収穫籠などから容器12に直接落とし入れてよい。果実の量は、蓋14を閉めたときに果実の上に破砕刃22を載せるスペースが確保できる程度にする。蓋14は締結帯16によって容器12に固定する。
【0023】
その後はモータ20に通電し、破砕刃22を回転させるだけでよい。破砕刃22は果実の破砕と攪拌を行いながら、モータ20の重量と自重によって徐々に下降し、容器12内の果実を果肉と種子に分離する。
【0024】
容器12の容量が20Lであり、定格100V/700Wのモータ20を使用した果実破砕機10であれば、容器一杯にした梅を15〜20分で果肉と種子に分離し、さらに果肉を液状化した状態にまで破砕することができる。この果実破砕機10は、外寸が横幅、奥行きとも約31cm、高さが約70cm、総重量が9kgと女性でも容易に取り扱うことができる程度に小型軽量化されている。
【符号の説明】
【0025】
10 果実破砕機
12 容器
14 蓋
16 締結帯
18 シャフト
20 モータ
22 破砕刃
30 中板
32 外刃
34 内刃
36 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口された容器と、前記容器を封鎖する蓋と、前記蓋の表裏に貫通するシャフトと、前記蓋の内側で前記シャフトの一端に連結されたモータと、前記蓋の外側で前記シャフトの他端に連結された破砕刃を備え、前記シャフトは、軸周りに回転可能であるとともに軸方向に移動可能であることを特徴とする果実破砕機。
【請求項2】
前記破砕刃が、前記シャフトの他端にその中心が連結された中板と、前記中板の外周に配された外刃と、前記外刃より内側に配された内刃で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の果実破砕機。
【請求項3】
前記中板に表裏に貫通する複数の孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の果実破砕機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−19403(P2011−19403A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164614(P2009−164614)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(509197003)
【Fターム(参考)】