説明

架橋カルベンリガンドを有する遷移金属錯体およびOLEDにおけるその使用

架橋シクロメタル化カルベン錯体、架橋シクロメタル化カルベン錯体の製造法、架橋シクロメタル化カルベン錯体の有機発光ダイオードにおける使用、少なくとも1つの前記架橋シクロメタル化カルベン錯体を含む有機発光ダイオード、少なくとも1つの架橋シクロメタル化カルベン錯体を含む発光層、少なくとも1つの前記発光層を含む有機発光ダイオード、および少なくとも1つの前記有機発光ダイオードを有する装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋シクロメタル化カルベン錯体、架橋シクロメタル化カルベン錯体を製造する方法、架橋シクロメタル化カルベン錯体の有機発光ダイオードにおける使用、少なくとも1つの本発明の架橋シクロメタル化カルベン錯体を含む有機発光ダイオード、少なくとも1つの本発明の架橋シクロメタル化カルベン錯体を含む発光層、少なくとも1つの本発明の発光層を含む有機発光ダイオードおよび少なくとも1つの本発明の有機発光ダイオードを含む装置に関する。
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)は、電流によって励起された場合に発光する物質の特性を利用する。OLEDは、特に、平面視覚的ディスプレイユニットを製造するための陰極線管および液晶ディスプレイの代替物として特に興味深い。非常にコンパクトなデザインで、本質的に消費電力が低いために、OLEDを含む装置は、モバイルアプリケーション、例えば、携帯電話、ラップトップ型コンピュータにおける使用に特に適している。
【0003】
OLEDが機能する基本原理、OLEDの好適なアセンブリ(層)は、例えば、WO2005/113704およびこの特許に引用されている文献において明記されている。
【0004】
従来技術は、電流による励起に際して発光する多くの物質をすでに提示している。
【0005】
WO2005/019373は、OLED中に少なくとも1つのカルベンリガンドを含む非荷電の遷移金属錯体の使用を初めて開示している。WO2005/019373によると、これらの遷移金属錯体をOLEDの任意の層において使用することができ、リガンド構造または中心金属は、遷移金属錯体を所望の特性に調節するために変化し得る。例えば、電子のブロッキング層、励起子のブロッキング層、正孔のブロッキング層またはOLEDの発光層において遷移金属錯体を使用することが可能であり、遷移金属錯体をOLEDにおける発光分子として使用するのが好ましい。
【0006】
WO2006/056418は、非荷電遷移金属−カルベン錯体の使用を記載し、ここで、使用されるカルベンリガンドは、架橋カルベンリガンドであり得る。好適な架橋カルベンリガンドは、次の一般式:
【化1】

[式中、星印は、N結合ビニル炭素原子に対してα位のブリッジAの炭素原子または好適なヘテロ原子を表し、Bは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはヘテロアリール基(Y1)および化学的単結合、C(Y42、C(O)、O、S、S(O)、SO2またはNY5から構成されるブリッジを表す]を有する。
【0007】
WO2005/113704は、OLEDにおいて用いられるカルベン−金属錯体に関する。記載されている多くの好適なカルベンリガンドのうち、2つの架橋リガンド:
【化2】

について言及する。
【0008】
本発明よりも優先日が早いが、本出願の優先日ではまだ公開されていなかった出願WO2007/115981は、カルベンリガンドと複素環式非カルベンリガンドとの両方を含むヘテロレプティックなカルベン錯体を開示している。カルベンリガンドは、架橋カルベンリガンドであってよく、言及される架橋カルベンリガンドには、次式:
【化3】

を有するものが含まれる。
【0009】
WO2007/095118は、シクロメタル化イミダゾ[1,2−f]フェナントリジンおよびジイミダゾ[1,2−a:1’,2’−c]キナゾリンリガンドの金属錯体、ならびにその等電子およびベンゾ縮合類似体に関する。WO2007/095118によると、寿命が延びた青色蛍光OLEDも提供される。
【0010】
特に、発光物質としてのOLEDにおける使用に適した架橋カルベン錯体は、既知であるが、さらに安定および/またはさらに有効な、工業的に使用可能な化合物を提供することが望ましい。
【0011】
本出願に関連して、エレクトロルミネッセンスは、電子蛍光および電子リン光の両方を意味すると理解される。
【0012】
したがって、本出願の目的は、OLEDにおける使用に適した架橋カルベン錯体を提供することである。特に、既知の遷移金属錯体よりも改善された特性スペクトル、例えば、改善された有効性および/または改善された寿命/安定性を示す遷移金属錯体を提供することが望ましい。
【0013】
この目的は、一般式(I):
【化4】

[式中、記号はそれぞれ次の様に定義される:
Mは、適切な金属原子について可能な任意の酸化状態の、元素の周期律表(CASバージョン)のIB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIIIB、ランタニドおよびIIIA族の金属からなる群から選択される金属原子であり、好ましくは、Fe、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Ru、PdおよびPt、Cu、Au、Ce、Tb、Eu、さらに好ましくはOs、Ru、Rh、IrおよびPt、最も好ましくはIr、OsおよびPtからなる群から選択される金属原子であり;
Kは、非荷電一配位座数または二配位座数リガンドであり;
Lは、一配位座数または二配位座数であり、好ましくは一配位座数または二配位座数であり得るモノアニオン性リガンドであり;
Xは、CR1またはN、好ましくはNであり;
Yは、NR2またはCR22であり;
A、D、G、E、A’、D’、G’またはE’は、それぞれ独立して、CH、CR3またはNであり;
1は、F、CN、C1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、置換もしくは非置換C6〜C30−アリールまたは5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールであり;
2、R3は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルキル、置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルケニル、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロシクロアルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルキニル、置換もしくは非置換C6〜C30−アリール、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリール、または:C1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、SiR456、ハロゲン基、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基、カルボニル(−CO(R4))、カルボニルチオ(−C=O(SR4))、カルボニルオキシ(−C=O(OR4))、オキシカルボニル(−OC=O(R4))、チオカルボニル(−SC=O(R4))、アミノ(−NR45)、OH、擬ハロゲン基、アミド(−C=O(NR45))、−NR4C=O(R5)、ホスホネート(−P(O)(OR42)、ホスフェート(−OP(O)(OR42)、ホスフィン(−PR45)、ホスフィンオキシド(−P(O)R42)、スルフェート(−OS(O)2OR4)、スルホキシド(−S(O)R4)、スルホネート(−S(O)2OR4)、スルホニル(−S(O)24)、スルホンアミド(−S(O)2NR45)、NO2、ボロン酸エステル(−B(OR42)、イミノ(−C=NR45))、ボラン基、スズ酸塩基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ビニル基、スルホキシミン、アラン、ゲルマン、ボロキシンおよびボラジンからなる群から選択されるドナーもしくはアクセプター作用を有する置換基であるか;あるいは
2つの隣接するR3基は、一緒になって、3〜6個の原子から構成される、飽和もしくは不飽和、置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがって、R3基は、要素A=D、D−E、A’=D’、D’−E’、E’=G’の1つと一緒になって、5〜8員環を形成するか;
または
G’およびA位のR3基は、一緒になって、1〜4個の原子から構成される飽和もしくは不飽和、置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがって、R3基は、要素−G’−C−C−A−と一緒になって、5〜8員環を形成し;
4、R5、R6は、それぞれ独立して、H、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキルまたは置換もしくは非置換C6〜C30−アルキルまたは5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールであり;
nはカルベンリガンドの数であり、この場合、nは少なくとも1であり、式Iの錯体中のカルベンリガンドは、n>1の場合、同一であっても、異なっていてもよく;
mはリガンドKの数であり、この場合、mは0または≧1であり得、リガンドKは、m>1の場合、同一であっても、異なっていてもよく;
oはリガンドLの数であり、oは0または≧1であり得、リガンドLは、o>1の場合、同一であっても、異なっていてもよく;
n+m+oの合計は、用いられる金属原子の酸化状態および配位数ならびにリガンドLおよびKの配位座数に依存し、またリガンドLの電荷にも依存する。ただし、nは少なくとも1であるとする]の架橋シクロメタル化カルベン錯体を提供することによって達成される。
【0014】
本発明の式Iの架橋シクロメタル化カルベン錯体は、カルベンリガンドのブリッジを有し、特にX位で、窒素原子または−C−F、−C−CN、−C−C1〜C20−アルコキシ、−C−C6〜C30−アリールオキシ、−C−C1〜C20−アルキルチオ、−C−C6〜C30−アリールチオ、置換もしくは非置換−C−C6〜C30−アリールまたは5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換−C−ヘテロアリール基を有する点が注目に値する。本発明のカルベン錯体は、良好な安定性が注目に値し、本発明の式Iのカルベン錯体を用いて、改善された特性スペクトル、例えば改善された効率および/または改善された寿命を有するOLEDを得ることができる。
【0015】
置換もしくは非置換C1〜C20−アルキルとは、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を意味すると理解される。C1〜C10−アルキル基が好適であり、C1〜C6−アルキル基が特に好適である。アルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれかであり得る。加えて、アルキル基は、C1〜C20−アルキル、C1〜C20−アルコキシ、ハロゲン、好ましくはF、C1〜C20−ハロアルキル、例えばCF3、およびC6〜C30−アリールからなる群から選択される1つ以上の置換基によって置換されていてもよく、これらは同様に置換または非置換であり得る。好適なアリール置換基および好適なアルコキシおよびハロゲン置換基を以下に記載する。好適なアルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチル、ならびにC1〜C20−アルキル、C1〜C20−ハロアルキル、C6〜C30−アリール−、C1〜C20−アルコキシ−および/またはハロゲン、特にFによって置換された前記アルキル基の誘導体、例えばCF3である。これはまた、前記基のn異性体と分岐鎖異性体の両方を含み、例えばイソプロピル、イソブチル、イソペンチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチル、3,3−ジメチルブチル、3−エチルヘキシルを含む。好適なアルキル基は、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチルおよびCF3である。
【0016】
置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルキルは、5〜20個、好ましくは5〜10個、さらに好ましくは5〜8個の炭素原子を基本骨格(環)中に有するシクロアルキル基を意味すると理解される。好適な置換基は、アルキル基に関して記載した置換基である。好適なシクロアルキル基(非置換であるか、またはアルキル基について前述した基によって置換されていてもよい)の例は、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルおよびシクロデシルである。適切ならば、これらは、多環系、例えば、デカリニル、ノルボルニル、ボルナニルまたはアダマンチルであってもよい。
【0017】
置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルケニルは、5〜20個、好ましくは5〜10個、さらに好ましくは5〜8個の炭素原子を基本骨格(環)中に含むシクロアルケニル基を意味すると理解される。好適な置換基は、アルキル基について記載した置換基である。シクロアルケニル基は、1つの二重結合、または(置換基の環サイズに応じて)2つ以上の多い二重結合をシクロアルケニル環内に有し得る。二重結合は、共役であるか、または非共役であり得る。シクロアルケニル基は、好ましくは1つの二重結合をシクロアルケニル環内に有する。好適なシクロアルケニル基(非置換であるか、またはアルキル基について前述した基によって置換されていてもよい)の例は、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロノネニルおよびシクロデセニルである。適切な場合、これらも多環系であってよく、この場合、少なくとも1つの環は、シクロアルケニル環である。
【0018】
5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキルは、5〜30個、好ましくは5〜10個、さらに好ましくは5〜8個の環原子を有し、ヘテロシクロアルキル基本骨格中の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子によって置換されているヘテロシクロアルキル基を意味すると理解される。好適なヘテロ原子は、N、OおよびSである。好適な置換基は、アルキル基について記載した置換基である。好適なヘテロシクロアルキル基(非置換であるか、またはアルキル基について前述した基によって置換されていてもよい)の例は、以下のヘテロ環由来の基である:ピロリジン、チオラン、テトラヒドロフラン、1,2−オキサチオラン、オキサゾリジン、ピペリジン、チアン、オキサン、ジオキサン、1,3−ジチアン、モルホリン、ピペラジン。適切な場合、これらも多環系であり得る。
【0019】
5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロシクロアルケニルは、5〜30個、好ましくは5〜10個、さらに好ましくは5〜8個の環原子を有し、ヘテロシクロアルケニル基本骨格中の少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子によって置換され、少なくとも1つの二重結合がヘテロシクロアルケニル基本骨格中に存在する、ヘテロシクロアルケニル基を意味すると理解される。ヘテロシクロアルケニル基は、1つの二重結合を有するか、または環のサイズに応じて、2つ以上の二重結合をヘテロシクロアルケニル環内に有し得る。二重結合は、共役または非共役であり得る。ヘテロシクロアルケニル基は、好ましくはヘテロシクロアルケニル環内に1つの二重結合を有する。好適なヘテロ原子は、N、OおよびSである。好適な置換基は、アルキル基について記載した置換基である。
【0020】
置換もしくは非置換C2〜C20−アルケニルは、2〜20個の炭素原子を有するアルケニル基を意味すると理解される。C2〜C10−アルケニル基が好ましく、C2〜C6−アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は直鎖または分岐鎖のいずれかであり得る。加えて、アルケニル基は、アルキル基について記載した1つ以上の置換基で置換され得る。アルケニル基は、鎖長に応じて、1つ以上の二重結合を有し得、この場合、二重結合は互いに共役していてもよいし、あるいは互いに分離されていてもよい。好適なアルケニル基の例は、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニルおよびオクテニル(この場合、二重結合は前記基中の任意の位置で存在し得る)、およびC1〜C20−アルキル、C1〜C20−ハロアルキル、C6〜C30−アリール−、C1〜C20−アルコキシ−および/またはハロゲン、特に、Fによって置換された、前記アルケニル基の誘導体である。
【0021】
置換もしくは非置換C2〜C20−アルキニルは、2〜20個の炭素原子を有するアルキニル基を意味すると理解される。C2〜C10−アルキニル基が好ましく、C2〜C6−アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、直鎖または分岐鎖のいずれかであってよい。加えて、アルキニル基は、アルキル基について記載した1つ以上の置換基で置換され得る。アルキニル基は、鎖長に応じて、1つ以上の三重結合を有し得、この場合、三重結合は、互いに共役していてもよいし、あるいは互いに分離されていてもよい。好適なアルキニル基の例は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、へプチニルおよびオクチニル(この場合、三重結合は、前記基の任意の位置で存在し得る)、ならびにC1〜C20−アルキル、C1〜C20−ハロアルキル、C6〜C30−アリール−、C1〜C20−アルコキシ−および/またはハロゲン、特に、Fによって置換された、前記アルキニル基の誘導体である。
【0022】
好適なC1〜C20−アルコキシ−およびC1〜C20−アルキルチオ基は、対応して前記C1〜C20−アルキル基に由来する。ここでの例としては、OCH3、OC25、OC37、OC49およびOC817、ならびにSCH3、SC25、SC37、SC49およびSC817が挙げられる。C37、C49およびC817は、n−異性体および分岐鎖異性体の両方、例えばイソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルおよび2−エチルヘキシルを含む。特に好適なアルコキシ基またはアルキルチオ基は、メトキシ、エトキシ、n−オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシおよびSCH3である。
【0023】
本出願に関連して好適なハロゲン基またはハロゲン置換基は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素および臭素であり、さらに好ましくはフッ素および塩素であり、最も好ましくはフッ素である。
【0024】
本出願に関連して好適な擬ハロゲン基は、CN、SCN、OCN、N3およびSeCNであり、CNおよびSCNが好ましい。CNが非常に好ましい。
【0025】
6〜C30−アリールは、本発明においては、単環式、二環式または三環式芳香族化合物に由来し、環ヘテロ原子を含まない基を意味する。系が単環系でない場合、特定の形態が既知であり、安定である飽和形(パーヒドロ形)または部分不飽和形(例えば、ジヒドロ形またはテトラヒドロ形)も、「アリール」という用語における第2の環として可能である。このことは、本発明における「アリール」という用語が、例えば両基または3つの基すべてのいずれかが芳香族である二環式または三環式基、ならびに1つの環のみが芳香族である二環式または三環式基、および2つの環が芳香族である三環式基も含むことを意味する。アリールの例は:フェニル、ナフチル、インダニル、1,2−ジヒドロナフテニル、1,4−ジヒドロナフテニル、インデニル、アントラセニル、フェナントラセニルまたは1,2,3,4−テトラヒドロナフチルである。C6〜C10−アリール基、例えば、フェニルまたはナフチルが特に好ましく、C6−アリール基、例えば、フェニルが特に好ましい。
【0026】
6〜C30−アリール基は、非置換でもよく、あるいは1つ以上のさらなる基で置換されていてもよい。好適なさらなる基は、C1〜C20−アルキル、C6〜C30−アリールまたはドナーもしくはアクセプター作用を有する置換基からなる群から選択され、ドナーまたはアクセプター作用を有する好適な置換基を以下に記載する。C6〜C30−アリール基は、好ましくは非置換であるか、あるいは1つ以上のC1〜C20−アルキル基、C1〜C20−アルコキシ基、CN、CF3、Fまたはアミノ基(NR45、ここで、好適なR4およびR5基は前述されている)で置換されている。C6〜C30−アリール基のさらなる好適な置換は、一般式(I)の化合物の最終用途に依存し、以下に記載する。
【0027】
好適なC6〜C30−アリールオキシ、C6〜C30−アリールチオ基は、前記C6〜C30−アリール基から対応して由来する。フェノキシおよびフェニルチオが特に好ましい。
【0028】
5〜30個の環原子を有する非置換または置換ヘテロアリールは、前記アリールから部分的に誘導でき、アリール基本骨格中の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子によって置換されている、単環式、二環式または三環式ヘテロ芳香族化合物を意味すると理解される。好適なヘテロ原子は、N、OおよびSである。さらに好ましくは、ヘテロアリール基は、5〜13個の環原子を有する。特に好ましくは、ヘテロアリール基の基本骨格は、例えば、ピリジンおよび5員ヘテロ芳香族化合物、例えばチオフェン、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾールまたはフランなどの系から選択される。これらの基本骨格は、場合によって、1または2つの6員芳香族基と縮合し得る。好適な縮合ヘテロ芳香族化合物は、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンズチアゾール、ベンズオキサゾール、ジベンゾフリルまたはジベンゾチオフェニルである。基本骨格は、1つ、2つ以上、または全ての置換可能な位置で置換されていてもよく、好適な置換基は、C6〜C30−アリールの定義ですでに記載したものと同じである。しかし、ヘテロアリール基は、好ましくは非置換である。好適なヘテロアリール基は、例えば、ピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イル、ピロール−2−イル、ピロール−3−イル、フラン−2−イル、フラン−3−イル、チアゾール−2−イル、オキサゾール−2−イルおよびイミダゾール−2−イル、ならびに対応するベンゾ縮合基、特に、カルバゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ジベンゾフリルまたはジベンゾチオフェニルである。
【0029】
本出願に関連して、ドナーまたはアクセプター作用を有する基は、次の基:
1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、SiR456、ハロゲン基、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基、カルボニル(−CO(R4))、カルボニルチオ(−C=O(SR4))、カルボニルオキシ(−C=O(OR4))、オキシカルボニル(−OC=O(R4))、チオカルボニル(−SC=O(R4))、アミノ(−NR45)、OH,擬ハロゲン基、アミド(−C=O(NR45))、−NR4C=O(R5)、ホスホネート(−P(O)(OR42)、ホスフェート(−OP(O)(OR42)、ホスフィン(−PR45)、ホスフィンオキシド(−P(O)R42)、スルフェート(−OS(O)2OR4)、スルホキシド(−S(O)R4)、スルホネート(−S(O)2OR4)、スルホニル(−S(O)24)、スルホンアミド(−S(O)2NR45)、NO2、ボロン酸エステル(−OB(OR42)、イミノ(−C=NR45))、ボラン基、スズ酸塩基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ビニル基、スルホキシミン、アラン、ゲルマン、ボロキシンおよびボラジンを意味すると理解される。
【0030】
ドナーまたはアクセプター作用を有する好適な置換基は:
1〜C20−アルコキシ、好ましくはC1〜C6−アルコキシ、さらに好ましくはエトキシまたはメトキシ;C6〜C30−アリールオキシ、好ましくはC6〜C10−アリールオキシ、さらに好ましくはフェニルオキシ;SiR456(ここで、R4、R5およびR6は、好ましくはそれぞれ独立して、置換もしくは非置換アルキルまたは置換もしくは非置換フェニルであり、好適な置換基は、前述されている);ハロゲン基、好ましくはF、Cl、Br、さらに好ましくはFまたはCl、最も好ましくはF、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基、好ましくはハロゲン化C1〜C6−アルキル基、最も好ましくはフッ素化C1〜C6−アルキル基、例えば、CF3、CH2F、CHF2またはC25;アミノ、好ましくはジメチルアミノ、ジエチルアミノまたはジフェニルアミノ;OH、擬ハロゲン基、好ましくはCN、SCNまたはOCN、さらに好ましくはCN、−C(O)OC1〜C4−アルキル、好ましくは−C(O)OMe、P(O)R2、好ましくはP(O)Ph2およびSO22、好ましくはSO2Phからなる群から選択される。
【0031】
ドナーまたはアクセプター作用を有する非常に好適な置換基は、メトキシ、フェニルオキシ、ハロゲン化C1〜C4−アルキル、好ましくはCF3、CH2F、CHF2、C25、ハロゲン、好ましくはF、CN、SiR456(ここで、好適な基R4、R5およびR6基はすでに記載されている)、ジフェニルアミノ、−C(O)OC1〜C4−アルキル、好ましくは−C(O)OMe、P(O)Ph2およびSO2Phからなる群から選択される。
【0032】
ドナーまたはアクセプター作用を有する前記基は、前記の特定されたもののうち、さらなる基および基がドナーまたはアクセプター作用を有し得る可能性を除外することを意図しない。例えば、前記ヘテロアリール基は、ドナーまたはアクセプター作用を有する同様の基であり、C1〜C20−アルキル基は、ドナー作用を有する基である。
【0033】
ドナーまたはアクセプター作用を有する前記基中の前記R4、R5およびR6基は、それぞれすでに定義されている。すなわち、R4、R5、R6はそれぞれ独立して:
水素、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキルまたは置換もしくは非置換C6〜C30−アリールまたは5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールであり、適切かつ好ましいアルキルおよびアリール基はすでに記載されている。さらに好ましくは、R4、R5およびR6基は、それぞれ、C1〜C6−アルキル、例えば、メチル、エチル、i−プロピル、tert−ブチル,またはフェニルまたはピリジルである。
【0034】
一般式Iの本発明の架橋シクロメタル化カルベン錯体中の金属原子Mは、適切な金属原子について可能な任意の酸化状態の、元素の周期律表(CASバージョン)のIB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIIIB、ランタニドおよびINA族の金属からなる群から選択され;好ましくは、適切な金属原子について可能な任意の酸化状態の、Fe、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Ru、PdおよびPt、Cu、Au、Ce、Tb、Euであり、さらに好ましくはOs、Ru、Rh、IrおよびPtであり、最も好ましくはIr、OsおよびPtである。
【0035】
さらに好ましくは、金属Mは、Ir、OsおよびPtからなる群から選択され、Os(II)、Ir(III)およびPt(II)が好ましい。Ir(III)が特に好ましい。
【0036】
カルベンリガンドの数nならびに存在する任意のリガンドKおよびLの数mおよびoは、金属Mの酸化状態および配位数に依存し、リガンドLの配位座数および電荷に依存し、この場合、少なくとも1つのカルベンリガンドが式Iの本発明のカルベン錯体中に存在する。すなわち、nは少なくとも1である。
【0037】
使用した金属Mの電荷および配位数に応じた式Iの本発明のカルベン錯体の好適な実施形態を以下に記載する:
Mが配位数4の金属(例えば、Pt(II)またはPd(II)、Ir(I)、Rh(I))である場合、本発明の式Iのカルベン錯体は、1または2つのカルベンリガンドを有する。すなわち、nは1または2であり、nが1であり、Mが配位数4の金属である場合、1つのモノアニオン性二配位座数リガンドLならびにカルベンリガンドが本発明のカルベン錯体中に存在する。すなわち、oは1である。Mが配位数6の金属(例えば、Ir(III)、Co(II)、Co(III)、Rh(III)、Os(II)、Pt(IV))である場合、本発明の式Iのカルベン錯体は、その電荷に応じて、好ましくは1、2または3、好ましくは2または3の一般式Iのカルベンリガンドを有し、これらは同一または異なっていてもよい。すなわち、nは、1、2または3、好ましくは2または3である。例えば、Ir(III)、Co(III)またはRh(III)の場合のnは、一般的に1、2または3であり、n=1の場合、2つの追加のモノアニオン性二配位座数リガンドLが存在する。すなわち、oは2である。n=2の場合、前記カルベン錯体は1つの追加のモノアニオン性二配位座数リガンドLを有する。すなわち、oは1である。特に好適なn=3の場合、前記カルベン錯体はさらなるリガンドKおよびLを有さない。すなわち、mおよびoはそれぞれ0である。Os(II)の場合、nは、一般的に1または2であり、n=1の場合、1つの追加のモノアニオン性二配位座数リガンドLおよび1つの追加の非荷電二配位座数リガンドKが存在する。すなわち、oは1であり、mは1である。特に好適なn=2の場合、前記カルベン錯体は1つの追加の非荷電二配位座数リガンドKを有する。すなわち、mは1である。金属原子Mが8以上の配位数を有する場合、本発明の一般式Iのカルベン錯体、ならびに1、2または3個のカルベンリガンドは、1つ以上のさらなるカルベンリガンドおよび/または1つ以上の追加のリガンドKおよび/またはLのいずれかを有し得る。好適な実施形態において、本発明は、配位数6の金属M、好ましくはIr(III)を有する一般式Iの架橋シクロメタル化カルベン錯体(式中、n=3、mおよびoはそれぞれ0である)に関する。
【0038】
使用する金属Mの配位数および使用するカルベンリガンドの数nおよび使用し得る追加のリガンドKおよびLの数mおよびoに応じて、使用されるカルベンリガンドおよび追加のカルベンリガンドの同じ金属Mおよび同じ性質を有する対応する金属錯体の異なる異性体が存在し得る。例えば、配位数6の金属Mとの錯体(すなわち、八面体錯体)、例えばIr(III)錯体の場合、錯体が一般組成M(AB)3(式中、ABは二配位座数リガンドである)の錯体であるならば、「fac−mer異性体」(フェイシャル/メリディオナル異性体)が可能である。本出願に関連して、「fac−mer異性体」は、以下に示す異性体:
【化5】

であると理解される。
【0039】
配位数4の金属Mを有する平面正方形錯体、例えば、Pt(ll)錯体の場合、錯体が一般組成M(AB)2(式中、ABは二配位座数リガンドである)を有する錯体であるならば、「シス/トランス異性体」が可能である。本出願に関連して、「異性体」は以下に示す異性体を意味すると理解される:
【化6】

【0040】
記号AおよびBはそれぞれリガンドの1つの結合部位であり、二配位座数リガンドのみが存在する。前記の一般的組成物によると、二配位座数リガンドは2つのA基および2つのB基を有する。
【0041】
原則として、シス/トランスおよびfac−mer異性体の意味するところは、当業者には既知である。組成MA33の錯体において、同じ種類の3個の基は、八面体の一面の角(フェイシャル異性体)または経線のいずれかにある。すなわち、3個のリガンド結合部位のうちの2個は互いにトランスである(メリディオナル異性体)。八面体金属錯体におけるシス/トランス異性体およびfac−mer異性体の定義に関しては、例えば、J. Huheey, E. Keiter, R. Keiter, Anorganische Chemie:Prinzipien von Structur und Reaktivitaet[Inorganic Chemistry: Principles of Structure and Reactivity], 2nd, newly revised edition, translated into German and expanded by Ralf Steudel, Berlin; New York:de Gruyter, 1995, pages 575 to 576参照。
【0042】
平面正方形錯体の場合、シス異性とは、組成MA22の錯体において、2個のA基および2個のB基はどちらも正方形の隣接する角にあることを意味し、トランス異性の場合の2個のA基および2個のB基はどちらも、それぞれ正方形の2個の互いに対角線上に相対する角にある。平面正方形金属錯体におけるシス/トランス−異性体の定義に関しては、例えば、J. Huheey, E. Keiter, R, Keiter, Anorganische Chemie:Prinzipien von Struktur und Reaktivitaet, 2nd, newly revised edition, translated into German and expanded by Ralf Steudel, Berlin; New York:de Gruyter, 1995, pages 557 to 559参照。
【0043】
一般的に、本発明の式Iのカルベン錯体の様々な異性体を、当業者に既知の方法によって、例えば、クロマトグラフィー、昇華または結晶化によって分離することができる。
【0044】
本発明は、したがって、各場合における式Iのカルベン錯体の個々の異性体および任意の混合比の様々な異性体の混合物の両方に関する。
【0045】
遷移金属原子Mが配位数6および酸化状態IIIである、本発明の式Iの架橋シクロメタル化カルベン錯体(Ir(III)が特に好ましい)のカルベンリガンドの数nは、好ましくは3であり、これらの錯体中の追加のリガンドKおよびLの数mおよびoは、好ましくはそれぞれ0である。
【0046】
遷移金属原子Mが配位数6および酸化状態IIである、本発明の式Iの架橋シクロメタル化カルベン錯体(Os(II)が特に好ましい)のカルベンリガンドの数nは、好ましくは2であり、この場合、1つの追加の非荷電二配位座数リガンドKが存在する。すなわち、mは好ましくは1であり、これらの錯体におけるoは、好ましくは0である。
【0047】
遷移金属原子Mが配位数4を有する、本発明の式Iの架橋シクロメタル化カルベン錯体(Pt(II)が特に好ましい)におけるカルベンリガンドの数nは、好ましくは1または2であり、n=1の場合、好ましくは1個の追加のモノアニオン性二配位座数リガンドLが存在する。すなわち、oは同様に、好ましくは1であり、mは好ましくは0である。n=2の場合、mおよびoは、好ましくはそれぞれ0である。
【0048】
非常に好適な一実施形態において、式Iのカルベン錯体中のMはIr(III)であり、nは3であり、mおよびoはそれぞれ0である。
【0049】
カルベン錯体中のn個のカルベンリガンドは、n>1の場合、同一であっても、あるいは異なっていてもよい。これらは好ましくは同一である。すなわち、M=Ir(III)であり、n=3である場合、3個のカルベンリガンドは好ましくは同一である。
【0050】
好適なモノまたはジアニオン性リガンドL、好ましくはモノアニオン性リガンドL(一配位座数であっても、または二配位座数であってもよい)は、モノまたは二配位座数、モノまたはジアニオン性リガンドとして典型的に使用されるリガンドである。
【0051】
好適なモノアニオン性一配位座数リガンドは、例えば、ハロゲン化物、特に、Cl-およびBr-、擬ハロゲン化物、特に、CN-、シクロペンタジエニル(Cp-)、水素化物、アルコキシ、アリールオキシ、シグマ結合を介して遷移金属Mと結合するアルキル基、例えばCH3、シグマ結合を介して遷移金属M1と結合するアルキルアリール基、例えば、ベンジルである。
【0052】
好適なモノアニオン性二配位座数リガンドは、例えば、アセチルアセトネートおよびその誘導体、ピコリネート、シッフ塩基、アミノ酸、アリールアゾ−ル、例えばフェニルピリジン、およびWO02/15645に明記されているさらなる二配位座数モノアニオン性リガンドであり、アセチルアセトネートおよびピコリネートが好ましい。
【0053】
好適なジアニオン性二配位座数リガンドは、例えば、ジアルコキシド、ジカーボネート、ジカルボキシレート、ジアミド、ジイミド、ジチオレート、ビスシクロペンタジエニル、ビスホスホネート、ビススルホネートおよび3−フェニルピラゾールである。
【0054】
好適な非荷電モノまたは二配位座数リガンドKは、好ましくは、ホスフィン、モノおよびビスホスフィンの両方;ホスホネート、モノおよびビスホスホネートの両方、ならびにこれらの誘導体、ヒ酸塩、モノおよびビスヒ酸塩の両方、ならびにこれらの誘導体;ホスファイト、モノおよびビスホスファイトの両方;CO;ピリジン、モノおよびビスピリジンの両方;ニトリル、ジニトリル、アリル、ジイミン、M1とπ−錯体を形成する非共役ジエンおよび共役ジエンからなる群から選択される。特に好適な非荷電モノまたは二配位座数リガンドKは、ホスフィン、モノおよびビスホスフィンの両方、好ましくはトリアルキル、トリアリールまたはアルキルアリールホスフィン、さらに好ましくはPAr3(式中、Arは、置換または非置換アリール基であり、PAr3中の3個のアリール基は、同一であっても、または異なっていてもよい)、さらに好ましくはPPh3、PEt3、PnBu3、PEt2Ph、PMe2Ph、PnBu2Ph;ホスホネートおよびその誘導体、ヒ酸塩およびその誘導体、ホスファイト、CO;ピリジン、モノおよびビスピリジンの両方(ここで、ピリジンは、アルキルまたはアリール基によって置換されていてもよい);M1とπ−錯体を形成するニトリルおよびジエン、好ましくはη4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、η4−1,3−ペンタジエン、η4−1−フェニル−1,3−ペンタジエン、η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、η4−2,4−ヘキサジエン、η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエンおよびη2−またはη4−シクロオクタジエン(それぞれの場合1,3およびそれぞれの場合1,5)、さらに好ましくは1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、ブタジエン、η2−シクロオクテン、η4−1,3−シクロオクタジエンおよびη4−1,5−シクロオクタジエンからなる群から選択される。特に好適な非荷電一配位座数リガンドは、PPh3、P(OPh)3、AsPh3、CO、ピリジン、ニトリルおよびその誘導体からなる群から選択される。好適な非荷電モノまたは二配位座数リガンドは、好ましくは1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、η4−シクロオクタジエンおよびη2−シクロオクタジエン(それぞれの場合1,3およびそれぞれの場合1,5)である。
【0055】
式Iのシクロメタル化カルベン錯体におけるX基のR1基は、F、CN、C1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、置換もしくは非置換C6〜C30−アリールまたは5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールである。X基のR1基は、好ましくは、F、CN、C1〜C4−アルコキシ、さらに好ましくはメトキシ、C6〜C10−アリールオキシ、さらに好ましくはフェノキシ、C1〜C4−アルキルチオ、さらに好ましくはSCH3、C6〜C10−アリールチオ、置換もしくは非置換フェニル、さらに好ましくは非置換フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、F置換フェニル、CN置換フェニル、メトキシ置換フェニルおよび/またはCF3置換フェニル、あるいは5〜13個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリール、さらに好ましくはピリジル、チエニル、ピロリル、フリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリルまたはイミダゾリルである。最も好ましくは、R1基は、F、CNまたはメトキシ、フェニル、ピリジルである。
【0056】
式Iのシクロメタル化カルベン錯体中のX基は、好ましくはNである。すなわち、R1基は存在しない。
【0057】
式Iの架橋シクロメタル化カルベン錯体中のR2およびR3基は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルキル、置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルケニル、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロシクロアルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルキニル、置換もしくは非置換C6〜C30−アリール、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリール、あるいは:C1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、SiR456、ハロゲン基、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基、カルボニル(−CO(R4))、カルボニルチオ(−C=O(SR4))、カルボニルオキシ(−C=O(OR4))、オキシカルボニル(−OC=O(R4))、チオカルボニル(−SC=O(R4))、アミノ(−NR45)、OH、擬ハロゲン基、アミド(−C=O(NR45))、−NR4C=O(R5)、ホスホネート(−P(O)(OR42)、ホスフェート(−OP(O)(OR42)、ホスフィン(−PR45)、ホスフィンオキシド(−P(O)R42)、スルフェート(−OS(O)2OR4)、スルホキシド(−S(O)R4)、スルホネート(−S(O)2OR4)、スルホニル(−S(O)24)、スルホンアミド(−S(O)2NR45)、NO2、ボロン酸エステル(−B(OR42)、イミノ(−C=NR45))、ボラン基、スズ酸塩基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ビニル基、スルホキシミン、アラン、ゲルマン、ボロキシンおよびボラジンからなる群から選択されるドナーもしくはアクセプター作用を有する置換基であるか;
あるいは
2つの隣接するR3基は、一緒になって、3〜6個の原子から構成される飽和もしくは不飽和、置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがって、R3基は、要素A=D、D−E、A’=D’、D’−E’、E’=G’のうちの1つと一緒になって、5〜8員環を形成するか;
あるいは
G’およびA位のR3基は、一緒になって、1〜4個の原子から構成される飽和もしくは不飽和、置換もしくは非置換ブリッジを形成するので、R3基は、要素−G’−C−C−A−と一緒になって5〜8員環を形成し;
このブリッジは、好ましくは非置換(すなわち、全ての置換可能な位置は、水素によって置換されている)またはC1〜C4−アルキル、さらに好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、置換もしくは非置換フェニル、好ましくは非置換フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、F置換フェニル、CN置換フェニル、メトキシ置換フェニルおよび/またはCF3置換フェニル、5〜13個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリール、好ましくはピリジル、チエニル、ピロリル、フリルまたはイミダゾリル、C1〜C4−アルコキシ、さらに好ましくはメトキシ、C6〜C10−アリールオキシ、特にフェノキシ、C1〜C4−アルキルチオ、好ましくはSCH3、C6〜C10−アリールチオ、好ましくはSPh、SiR456、好ましくはSiMe3またはSiPh3、F、Cl、Br、好ましくはF、ハロゲン化C1〜C10−アルキル基、好ましくはCF3、および擬ハロゲン基、好ましくはCNからなる群から選択される1つ以上の基で置換され;ブリッジは、好ましくは炭素原子から形成され、場合によって、1または2個のヘテロ原子、好ましくは1または2個の窒素原子を有する。
【0058】
好適な実施形態において、R2およびR3は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルキニル、置換もしくは非置換C6〜C30−アリール、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリール、C1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、SiR456、ハロゲン基、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基および擬ハロゲン基からなる群から選択される。さらに好ましくは、R2およびR3は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、好ましくはC1〜C4−アルキル、さらに好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、置換もしくは非置換C6〜C30−アリール、好ましくは置換もしくは非置換フェニル、さらに好ましくは非置換フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、F置換フェニル、CN置換フェニル、メトキシ置換フェニルおよび/またはCF3置換フェニル、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリール、好ましくは5〜13個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリール、さらに好ましくはピリジル、チエニル、ピロリル、フリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリルまたはイミダゾリル、C1〜C20−アルコキシ、好ましくはC1〜C4−アルコキシ、さらに好ましくはメトキシ、C6〜C30−アリールオキシ、好ましくはC6〜C10−アリールオキシ、さらに好ましくはフェノキシ、C1〜C20−アルキルチオ、好ましくはC1〜C4−アルキルチオ、さらに好ましくはSCH3、C6〜C30−アリールチオ、好ましくはC6〜C10−アリールチオ、さらに好ましくはSPh、SiR456、好ましくはSiMe3またはSiPh3、ハロゲン基、好ましくはF、Cl、Br、さらに好ましくはF、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基、好ましくはハロゲン化C1〜C10−アルキル基、さらに好ましくはCF3、および擬ハロゲン基、好ましくはCNからなる群から選択されるか;
あるいは
2つの隣接するR3基は、一緒になって、3または4個の炭素原子から構成される飽和もしくは不飽和メチル、フェニル、メトキシ、SiMe3、SiPh3、F、CF3またはCN置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがって、R3基は、要素A=D、D−E、A’=D’、D’−E’、E’=Gのうちの1つと一緒になって、5または6員環を形成するか;
あるいは
G’およびA位のR3基は、一緒になって、1または2個の炭素原子から構成される飽和もしくは不飽和メチル、フェニル、メトキシ、SiMe3、SiPh3、F、CF3またはCN置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがって、R3基は、要素−G’−C−C−A−と一緒になって、5または6員環を形成する。
【0059】
特に好適な実施形態において、R1(R1基が存在する場合)およびR3は、それぞれR1およびR3について前記定義のとおりであり、R2は、1位で分岐している置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、好ましくはイソプロピル、イソブチル、イソペンチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル;置換もしくは非置換C6−アリール、好ましくは非置換フェニルまたは2位および/または6位で、好ましくはメチル、メトキシ、CF3、CNおよび/またはFで置換されているフェニル;さらに好ましくは2−トリル、2−メトキシフェニル、2−シアノフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル、2,6−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−もしくは2,6−ジメチルフェニルまたは2,4,6−、2,3,4−もしくは2,3,5−トリメチルフェニル;5〜13個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリール、好ましくはピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イル、ピロール−2−イル、ピロール−3−イル、フラン−2−イル、フラン−3−イル、チアゾール−2−イル、オキサゾール−2−イル、ピラゾール−3−イルまたはイミダゾール−2−イル、ならびに対応するベンゾ縮合基からなる群から選択される。
【0060】
前記の特に好適なR2基を有する式Iのカルベン錯体は、特に良好な安定性を有することが判明している。
【0061】
好適な実施形態において、本発明は、XがNである式Iの架橋シクロメタル化カルベン錯体に関する。Yは、好ましくはNR2であり、ここで、好適なR2基は前記定義のとおりである。したがって、式中:
XはNであり、
YはNR2であり、
2は前記定義のとおりである、式Iのカルベン錯体が特に好ましい。
【0062】
式Iのカルベン錯体中のA、D、G、E、A’、D’、G’およびE’基は、それぞれ独立して、CH、CR3またはNである。A、D、GおよびEから選択されるか、またはA’、D’、G’およびE’基から選択される好ましくは、0、1または2、さらに好ましくは0または1個の基は、Nである。特に好適な実施形態において、A、D、G、E、A’、D’、G’およびE’基は、それぞれCHまたはCR3であり、最も好ましくはCHである。好適なR3基は、上述されている。
【0063】
特に好適な式Iのカルベン錯体は、式IaおよびIb:
【化7】

[式中:
A、D、G、E、A’、D’、G’およびE’は、それぞれ独立して、CH、CR3またはN、好ましくはCHまたはCR3、さらに好ましくはCHであり;
2、R3は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルキル、置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルケニル、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロシクロアルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルキニル、置換もしくは非置換C6〜C30−アリール、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールまたは:C1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、SiR456、ハロゲン基、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基、カルボニル(−CO(R4))、カルボニルチオ(−C=O(SR4))、カルボニルオキシ(−C=O(OR4))、オキシカルボニル(−OC=O(R4))、チオカルボニル(−SC=O(R4))、アミノ(−NR45)、OH、擬ハロゲン基、アミド(−C=O(NR45))、−NR4C=O(R5)、ホスホネート(−P(O)(OR4))2、ホスフェート(−OP(O)(OR42)、ホスフィン(−PR45)、ホスフィンオキシド(−P(O)R42)、スルフェート(−OS(O)2OR4)、スルホキシド(−S(O)R4)、スルホネート(−S(O)2OR4)、スルホニル(−S(O))24)、スルホンアミド(−S(O)2NR45)、NO2、ボロン酸エステル(−B(OR42)、イミノ(−C=NR45)、ボラン基、スズ酸塩基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ビニル基、スルホキシミン、アラン、ゲルマン、ボロキシンおよびボラジンかなる群から選択されるドナーもしくはアクセプター作用を有する置換基であるか;
あるいは
2つの隣接するR3基は、一緒になって、3〜6個の原子から構成される飽和もしくは不飽和、置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがってR3基は、要素A=D、D−E、A’=D’、D’−E’、E’=G’と一緒になって、5〜8員環を形成するか;
あるいは
G’およびA位のR3基は、一緒になって、1〜4個の原子から構成される飽和もしくは不飽和、置換もしくは非置換ブリッジを形成し、従って、R3基は、要素−G’−C−C−A−と一緒にになって5〜8員環を形成し;
2は、好ましくは、1位で分岐している置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、好ましくはイソプロピル、イソブチル、イソペンチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル;置換もしくは非置換C6−アリール、好ましくは非置換フェニルまたは2位および/または6位で、好ましくはメチル、メトキシ、CF3、CNおよび/またはFによって置換されているフェニル;さらに好ましくは2−トリル、2−メトキシフェニル、2−シアノフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル、2,6−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−もしくは2,6−ジメチルフェニルまたは2,4,6−、2,3,4−もしくは2,3,5−トリメチルフェニル;5〜13個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリール、好ましくはピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イル、ピロール−2−イル、ピロール−3−イル、フラン−2−イル、フラン−3−イル、チアゾール−2−イル、オキサゾール−2−イル、ピラゾール−3−イルまたはイミダゾール−2−イル、および対応するベンゾ縮合基からなる群から選択され;
4、R5、R6は、それぞれ独立して、H、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキルまたは置換もしくは非置換C6〜C30−アリールまたは5〜30個の環原子を有する置換または非置換ヘテロアリールであり;
Yは、CR22であり;
Mは、Ir、OsまたはPt;好ましくは、Ir(III)、Os(II)またはPt(II)、さらに好ましくはIr(III)であり;
Kは、非荷電二配位座数リガンドであり;
Lは、モノアニオン性二配位座数リガンドであり;
nは、カルベンリガンドの数であり、Irの場合、3であり、Osの場合、2であり、Ptの場合、1または2であり、式Ia、Ib、Ic、およびIdの錯体中のカルベンリガンドは、同一であっても、異なっていてもよく;
mは、M=IrまたはPtの場合、0であり、Osの場合、1であり;
oは、M=IrまたはOsおよびPtの場合、およびn=2の場合、0であり、Ptの場合、およびn=1の場合、1である]
のカルベン錯体から選択される。
【0064】
特に好適な基、基および指数M、R2、R3、R4、R5、R6、A、D、G、E、A’、D’、G’、E’、Y、M、K、L、n、mおよびoは前記で特定されている。最も好ましくは、式Ia、Ib、IcおよびIdのカルベン錯体中のMはIr(III)であり、nは3であり、mおよびoはそれぞれ0である。
【0065】
以下に記載する式のカルベン錯体
【化8】

【0066】
【化9】

【0067】
【化10】

【0068】
【化11】

【0069】
【化12】

【0070】
【化13】

が特に好ましい。
【0071】
前記化合物は、場合によって、一般式Iの定義に準拠した1つ以上のさらなる置換基で置換されていてもよい。
【0072】
本発明の式Iの架橋シクロメタル化カルベン錯体は、原則として、当業者に既知の方法と同様にして製造することができる。カルベン錯体を製造するための好適な方法は、例えば、総説W. A. Hermann et al., Advances in Organometallic Chemistry, 2001 Vol. 48, 1 to 69, W. A. Hermann et al., Angew. Chem. 1997, 109, 2256 to 2282およびG. Bertrand et al. Chem. Rev. 2000, 100, 39 to 91およびこれらの文献中で引用されている文献、ならびにWO2005/113704、WO2005/019373およびWO2007/088093で詳細に記載されている。
【0073】
一実施形態において、本発明の式Iの架橋シクロメタル化カルベン錯体を、カルベンリガンドに対応するリガンド前駆体および所望の金属を含む好適な金属錯体から製造する。
【0074】
カルベンリガンドの好適なリガンド前駆体は、当業者に既知である。これらは好ましくは、一般式III:
【化14】

[式中
-は、モノアニオン性カウンターイオン、好ましくはハロゲン化物、擬ハロゲン化物、BF4-、BPh4-、PF6-、AsF6-またはSbF6-であり;
他の基、記号および指数は、それぞれ、一般式IIIのリガンド前駆体において前記定義のとおりである]
のカルベンリガンドのカチオン性前駆体である。
【0075】
一般式IIIのリガンド前駆体は、当業者に既知の方法と同様にして製造することができる。好適な方法は、例えば、WO2005/019373および前記特許中に引用の文献、例えば、Organic Letters, 1999, 1, 953−956;Angewandte Chemie, 2000, 112, 1672−1674に明記されている。さらなる好適な方法は、例えばT. Weskamp et al., J. Organometal. Chem. 2000, 600, 12−22;G. Xu et al., Org. Lett. 2005, 7, 4605−4608 ;V. Lavallo et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 5705−5709に明記されている。
【0076】
好適な実施形態において、本発明は、本発明の一般式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体を製造する方法に関し、この製造法は、次のステップを含む:
一般式(III)
【化15】

[式中、
-は、モノアニオン性カウンターイオン、好ましくはハロゲン化物,擬ハロゲン化物、BF4-、BPh4-、PF6-、AsF6-またはSbF6-であり;
一般式IIIのリガンド前駆体中の他の記号は、それぞれ以下に定義するとおりである:
Xは、CR1またはN、好ましくはNであり;
Yは、NR2またはCR22であり;
A、D、G、E、A’、D’、G’またはE’は、それぞれ独立して、CH、CR3またはNであり;
1は、F、CN、C1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、置換もしくは非置換C6〜C30−アリールまたは5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールであり;
2、R3は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルキル、置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルケニル、5〜30個の環原子を有する置換または非置換ヘテロシクロアルキル、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロシクロアルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルキニル、置換もしくは非置換C6〜C30−アリール、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールまたは:C1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、SiR456、ハロゲン基、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基、カルボニル(−CO(R4))、カルボニルチオ(−C=O(SR4))、カルボニルオキシ(−C=O(OR4))、オキシカルボニル(−OC=O(R4))、チオカルボニル(−SC=O(R4))、アミノ(−NR45)、OH、擬ハロゲン基、アミド(−C=O(NR45))、−NR4C=O(R5)、ホスホネート(−P(O)(OR42)、ホスフェート(−OP(O)(OR42)、ホスフィン(−PR45)、ホスフィンオキシド(−P(O)R42)、スルフェート(−OS(O)2OR4)、スルホキシド(−S(O)R4)、スルホネート(−S(O)2OR4)、スルホニル(−S(O)24)、スルホンアミド(−S(O)2NR45)、NO2、ボロン酸エステル(−B(OR42)、イミノ(−C=NR45))、ボラン基、スズ酸塩基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ビニル基、スルホキシミン、アラン、ゲルマン、ボロキシンおよびボラジンからなる群から選択されるドナーもしくはアクセプター作用を有する置換基であるか;
あるいは
2つの隣接するR3基は、一緒になって、3〜6個の原子から構成される飽和もしくは不飽和、置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがってR3基は、要素A=D、D−E、A’=D’、D’−E’、E’=G’の1つと一緒になって、5〜8員環を形成するか;
あるいは
G’およびA位のR3基は、一緒になって、1〜4個の原子から構成される飽和もしくは不飽和、置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがってR3基は、要素−G’−C−C−A−と一緒になって、5〜8員環を形成し;
そして
4、R5、R6は、それぞれ独立して、H、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキルまたは置換もしくは非置換C6〜C30−アリールまたは5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールである]
の少なくとも1つのリガンド前駆体と、少なくとも1つの金属Mを含む金属錯体との反応。ここで、Mは次のように定義される:
Mは、適切な金属原子について可能な酸化状態の、元素の周期律表(CASバージョン)のIB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIIIB、ランタニドおよびIIIA族の金属;好ましくは、Fe、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Ru、PdおよびPt、Cu、Au、Ce、Tb、Eu、さらに好ましくはOs、Ru、Rh、IrおよびPtおよび最も好ましくはIr、OsおよびPtからなる群から選択される金属原子である。
【0077】
特に好適な基、基および指数M、R2、R3、R4、R5、R6、A、D、G、E、A’、D’、G’、E’、Y、M、K、L、n、mおよびoは前記で特定されている。
【0078】
適切な場合、式Iのカルベン錯体において、mおよび/またはoが0でないならば、式IIIのリガンド前駆体の金属錯体との本発明の反応を、リガンドKおよび/またはLの好適なリガンド前駆体の存在下で行う(「ワンポット方法」)。リガンドKおよびLの好適なリガンド前駆体は、当業者に既知である。あるいは、mおよび/またはoが0でないならば、逐次反応を行う。逐次反応は、金属錯体を、少なくとも1つの一般式IIIのカルベンリガンド前駆体と、第1ステップで反応させるか(この場合、シクロメタル化または非シクロメタル化形態の少なくとも1つのカルベンリガンドを有し、少なくとも1つのさらなる二配位座数リガンドKおよび/またはLの少なくとも1つのさらなる配位手段(この場合、このさらなる配位手段は、金属M上のフリーな配位部位または他のリガンドの置換のいずれかによって存在する)を有するカルベン錯体を、まず中間体として製造する);あるいは金属錯体を、リガンドKおよび/またはLの少なくとも1つのリガンド前駆体と第1ステップで反応させるか(この場合、少なくとも1つのリガンドKおよび/またはLを有し、少なくとも1つの二配位座数カルベンリガンドの少なくとも1つのさらなる配位手段(この場合、このさらなる配位手段は、金属M上のフリーな配位部位または他のリガンドの置換のいずれかによって存在する)を有する錯体を、まず中間体として製造する)のいずれかによって行うことができる。第1ステップに続く第2ステップにおいて、第1ステップで得られる特定の錯体を、リガンドKおよび/またはLの少なくとも1つのリガンド前駆体(少なくとも1つのカルベンリガンド前駆体を第1ステップで使用した場合)、または一般式IIIの少なくとも1つのカルベンリガンド前駆体(リガンドKおよび/またはLの少なくとも1つのリガンド前駆体を第1ステップで使用した場合)と反応させる。
【0079】
本発明の式Iのカルベン錯体中の金属Mが、配位数6、n=3、mおよびoが0であるIr(III)である特に好ましい場合、式IIIの1つのカルベンリガンド前駆体または異なるカルベンリガンド前駆体を用いて反応をおこなうことができる。式IIIの異なるカルベンリガンド前駆体を用いる場合、「ワンポット反応」の形態または逐次的に、リガンドKおよびLのカルベンリガンド前駆体およびリガンド前駆体を用いて前記のように、反応をおこなうことができる。式Iのカルベン錯体中のカルベンリガンドは、式IIIのカルベンリガンド前駆体の好適な金属錯体との反応が行われるように、好ましくは同一である。
【0080】
非常に好ましい場合(M=Ir(III)、n=3)、金属:リガンド前駆体化学量論比は、一般的に、1:3〜1:9、好ましくは1:3〜1:6である。
【0081】
カルベンリガンドが本発明の式Iのカルベン錯体中に存在し、金属原子がIr(III)である場合(M=Ir(III)、n=1)、金属:リガンド前駆体化学量論比は、一般的に、1:1〜1:3、好ましくは1:1〜1:2である。
【0082】
少なくとも1つの金属Mを含む金属錯体は、適切な金属原子について可能な酸化状態の、元素の周期律表(CASバージョン)のIB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIIIB、ランタニドおよびIIIIA族の金属;好ましくは、Fe、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Ru、PdおよびPt、Cu、Au、Ce、Tb、Eu、さらに好ましくはOs、Ru、Rh、IrおよびPt、最も好ましくは、Ir、OsおよびPtからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む金属錯体である。本発明の方法において用いられる金属錯体において、Pt(II)、Os(II)、Ir(I)またはIr(III)を使用するのが好ましく、Ir(I)およびIr(III)が特に好ましく、Ir(I)が非常に好ましい。好適な金属錯体は、当業者に既知である。好適な金属錯体の例は、Pt(cod)Cl2、Pt(cod)Me2、Pt(acac)2、Pt(PPh32Cl2、PtCl2、[Rh(cod)Cl]2、Rh(acac)CO(PPh3)、Rh(acac)(CO)2、Rh(cod)2BF4、RhCl(PPh33、RhCl3×nH2O、Rh(acac)3、[Os(CO)322、[Os3(CO)12]、OsH4(PPH33、Cp2Os、Cp2Os、H2OsCl6×6H2O、OsCl3×H2O)、および、[(μ−Cl)Ir(η4−1,5−cod)]2、[(μ−Cl)Ir(η2−coe)22、Ir(acac)3、IrCl3×nH2O,(tht)3IrCl3、Ir(η3−アリル)3、Ir(η3−メタリル)3であり、式中、codは、シクロオクタジエンであり、coeは、シクロオクテンであり、acacは、アセチルアセトネートであり、thtはテトラヒドロチオフェンである。金属錯体は、当業者に既知の方法で製造できるか、市販されている。
【0083】
本出願によれば特に好適である一般式I(式I中のMはIrである)のイリジウム(III)錯体を製造する場合、前記イリジウム(I)または(III)錯体、特に、[(μ−Cl)Ir(η4−1,5−cod)]2、[(μ−Cl)Ir(η2−coe)22、Ir(acac)3、IrCl3×nH2O、(tht)3IrCl3、Ir(η3−アリル)3、Ir(η3−メタリル)3を使用することができ、[(μ−Cl)Ir(η4−1,5−cod)]2を使用するのが特に好ましく、ここで、codはシクロオクタジエンであり、coeはシクロオクテンであり、acacはアセチルアセトネートであり、thtはテトラヒドロチオフェンである。
【0084】
式IIIのカルベンリガンド前駆体を好適な金属錯体と、塩基および補助試薬または塩基性補助試薬の存在下で本発明の反応をさせることが特に好ましく、この場合、塩基性補助試薬または補助試薬は、Ag、Hg、Sb、Mg、BおよびAlからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含み、本発明の反応をAg2Oの存在下で行うことが好ましい。本発明の式Iのカルベン錯体を製造するために対応して用いることができる好適な方法は、例えば、WO2007/088093に開示されている。
【0085】
YがNR2である場合、式IIIの好適なリガンド前駆体は、例えば式IVaのリガンド前駆体から出発してアルキル化によって、例えばMeIもしくはMe3OBF4を用いたメチル化によって、または式IVbのリガンド前駆体から出発して、例えばCH(OEt)3を用いた環化によって製造される。
【0086】
【化16】

[式中、記号はそれぞれ前記定義のとおりである]。
【0087】
YがNR2である式IIIのリガンド前駆体を製造するための他の方法も可能であり、一例として以下に示す。
【0088】
式IVaおよびIVbの化合物は、当業者に既知の方法によって製造することができ、好適な方法は、以下に記載する文献に記載されている。
【0089】
特に好ましい本発明の式Iのカルベン錯体を製造するための製造方法を以下に一例として示し、以下の例は、市販の化合物または当業者に既知の方法によって製造可能な化合物から出発する、式IVaおよびIVbの好適な化合物の製造および式IIIの好適なリガンド前駆体の製造を含む。以下の例で明記される化合物は例示的であり、式Iの化合物の置換パターンにしたがって置換可能および/または式Iの化合物の環系中にヘテロ原子を有し得る。
【0090】
1,2,4−トリアゾロ[4,3−f]−フェナントリジンからのトリアゾロフェナントリジン系の錯体2−アルキルの合成(A.G. Mikhailovskii, V.S. Shklyaev, Chem. Heterocycl. Comp. 1992, 445):
【化17】

【0091】
6−クロロフェナントリジンからのトリアゾロフェナントリジン系の錯体2−アリールの合成
(A.G. Mikhailovskii, V.S. Shklyaev, Chem. Heterocycl. Comp. 1992, 445):
【化18】

【0092】
反応後、本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体を、当業者に既知の方法によって仕上げ処理し、適切ならば精製する。典型的には、仕上げ処理および精製は、当業者に既知の方法による、抽出、カラムクロマトグラフィーおよび/または再結晶によって行われる。
【0093】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体は、リン光発光物質として際だって適している。その理由は、電磁スペクトルの可視領域、好ましくは電磁スペクトルの青色領域における発光(エレクトロルミネッセンス)を有するからである。本発明の式Iのカルベン錯体を発光物質として用いて、良好な効率のエレクトロルミネッセンスを示す化合物を提供することが可能であり、本発明のカルベン錯体は、装置における良好な安定性について注目に値する。同時に、量子収率が高い。
【0094】
加えて、本発明の式Iのカルベン錯体は、一般的に、使用されるリガンドおよび使用される中心金属に応じて、OLEDにおいて、電子ブロッカー、励起子ブロッカーもしくは正孔ブロッカーまたは正孔コンダクター、電子コンダクター、正孔注入層またはマトリックス材料として好適である。
【0095】
したがって、本発明は、本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、好ましくは発光材料、マトリックス材料、電荷ブロッカー材料および/または電荷輸送材料として、さらに好ましくは発光材料として、最も好ましくは青色発光体としての、有機発光ダイオードにおける使用をさらに提供する。
【0096】
有機発光ダイオード(OLED)は、原則として、例えば:
1.アノード(1)
2.正孔輸送層(2)
3.発光層(3)
4.電子輸送層(4)
5.カソード(5)
などの複数の層から形成される。
【0097】
しかし、前記の層の全てを有するわけではないOLEDも可能であり、例えば、層(1)(アノード)、(3)(発光層)および(5)(カソード)を有するOLEDも同様に好適であり、この場合、層(2)(正孔輸送層)および(4)(電子輸送層)の機能は、隣接する層によって推測される。層(1)、(2)、(3)および(5)または層(1)、(3)、(4)および(5)を有するLEDも同様に好適である。
【0098】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体を、OLEDの異なる層において用いることができる。式Iのカルベン錯体は、OLEDの1層において用いることができるが、2つ以上の異なる式Iのカルベン錯体を、OLEDの1つ以上の層で用いることも同様に可能である。例えば、OLEDの発光層中の発光材料およびマトリックス材料はどちらも式Iのカルベン錯体を含み得、この場合、発光材料およびマトリックス材料として使用される式Iのカルベン錯体は、一般的に異なる。発光材料および正孔コンダクター材料が式Iのカルベン錯体を含むことも同様に可能であり、この場合、式Iのカルベン錯体は、一般的に異なる。異なるカルベン錯体のさらなる組み合わせも可能であり、当業者が決定することができる。本発明は、したがって、少なくとも1つの本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体を含むOLEDをさらに提供する。本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体は、好ましくは、発光層において、例えばマトリックス分子または発光分子として、さらに好ましくは発光分子として用いられる。本発明は、したがって、少なくとも1つの本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体を、好ましくは発光分子として含む発光層をさらに提供する。好適な本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体は前記で特定されている。
【0099】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体は、さらなる添加剤を含まないバルクで、OLEDの発光層または他の層中、好ましくは発光層中に存在し得る。しかし、本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体と同様に、さらなる化合物が、少なくとも1つの本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体を含む層中に、好ましくは発光層中に存在することが可能であり、好適である。例えば、発光分子として用いられる本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の発光色を変えるために、蛍光色素が発光層中に存在し得る。加えて、好適な実施形態において、希釈材料を用いることができる。この希釈材料はポリマーで有り得、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)またはポリシランで有り得る。しかし、希釈材料は、同様に小分子であり得、例えば、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CDP=CBP)または芳香族第3アミンであり得る。加えて、発光層中の式Iのカルベン錯体は、マトリックス材料とあわせて使用することができ、好適なマトリックス材料は以下で記載する。本発明の式Iのカルベン錯体のマトリックス材料としての使用(式Iのカルベン錯体の発光材料としての使用(この場合、マトリックス材料として使用されるカルベン錯体と発光材料として使用されるカルベン錯体は、一般的に異なる)とあわせて)はすでに前述されている。
【0100】
前述されたもののうち、OLEDの個々の層は、同様に2つ以上の層から形成することができる。例えば、正孔輸送層を、その中に電極から正孔が注入される層と、正孔を正孔注入層から発光層へと輸送する層とから形成することができる。電子輸送層も同様に、複数の層、例えば、電子が電極から注入される層と、電子注入層から電子を受け取り、発光層へ輸送する層とから構成され得る。当業者は、本発明にしたがって、好ましくは発光物質として使用される本発明の式Iのカルベン錯体に対して最適に調節されるように、OLEDの構造を選択することができる。
【0101】
特に有効なOLEDを得るために、正孔輸送層のHOMO(最高被占分子軌道)はアノードの仕事関数と調整しなければならず、電子輸送層のLUMO(最低非被占分子軌道)はカソードの仕事関数と調整しなければならない。
【0102】
本出願は、少なくとも1つの本発明の発光層を含むOLEDをさらに提供する。OLED中のさらなる層は、かかる層において典型的に使用され、当業者に既知の任意の材料から形成することができる。
【0103】
前記層に好適な材料(アノード、カソード、正孔および電子注入材料、正孔および電子輸送材料および正孔および電子ブロッカー材料、マトリックス材料、蛍光およびリン光発光体)は、当業者に既知であり、例えば、H. Meng, N. Herron, Organic Small Molecule Materials for Organic Light−Emitting Devices in Organic Light−Emitting Materials and Devices, Ed.:Z. Li, H. Meng, Taylor & Francis, 2007, Chapter 3, pp. 295−411に明記されている。
【0104】
アノード(1)は、正電荷キャリアを提供する電極である。例えば、金属、異なる金属の混合物、合金、金属酸化物または異なる金属酸化物の混合物を含む物質から構成され得る。あるいは、アノードは、導電性ポリマーであり得る。好適な金属は、元素の周期律表の11、4、5および6族の金属、ならびに8〜10族の遷移金属を含む。アノードが透明であるべき場合、元素の周期律表の12、13および14族の混合金属酸化物、例えば酸化インジウムスズ(ITO)が一般的に用いられる。アノード(1)が有機材料、例えば、Nature, Vol. 357, pp. 477−479(June 11, 1992)に記載されているように、ポリアニリンなどを含むことも同様に可能である。形成された光を放出できるようにするためには、アノードまたはカソードの少なくともいずれかが少なくとも部分的に透明でなければならない。
【0105】
本発明のOLEDの層(2)に適した正孔輸送材料は、例えば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 4th Edition, Vol. 18, pp. 837−860, 1996に開示されている。正孔輸送分子またはポリマーのいずれかを正孔輸送材料として使用することができる。習慣的に用いられる正孔輸送分子は、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD)、テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA)、α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS)、p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH)、トリフェニルアミン(TPA)、ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP)、1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP)、1,2−トランス−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1‘−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDTA)、4,4’,4’’−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、2,2,7,7−テトラキス(ジフェニルアミノ)−9,9−スピロビフルオレン(Spiro−TAD)、4,4’,4’’−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン(TCTA)およびポルフィリン化合物、ならびにフタロシアニン、例えば銅フタロシアニンからなる群から選択される。習慣的に用いられる正孔輸送ポリマーは、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))、好ましくはPSS(ポリスチレンスルホネート)をドープしたPEDOT、およびポリアニリンからなる群から選択される。正孔輸送分子を、ポリスチレンおよびポリカーボネートなどのポリマー中にドープすることによって、正孔輸送ポリマーを得ることも同様に可能である。好適な正孔輸送分子は、すでに前述された分子である。
【0106】
本発明のOLEDの層(4)に適した電子輸送材料は、例えば、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA=BCP)または4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BPhen)などのフェナントロリンおよび2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−ル(PBD)および3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾ−ル(TAZ)、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾイル)フェニレン(OXD7)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリル)−トリス(1−フェニルベンズイミダゾール)(TPBI)などのアゾ−ル化合物に基づく、トリス(8−ヒドロキシキノラート)アルミニウム(Alq3)またはビス(2−メチル−8−キノラート)−(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(BALq)化合物のオキシノイド化合物とキレート化した金属を含む。層(4)は、電子輸送を容易にするため、かつOLEDの層の界面での励起子の消光を防止するための緩衝層としてまたはバリヤ層としての両方の機能をし得る。層(4)は、好ましくは、電子の移動性を改善し、励起子の消光を減少させる。
【0107】
正孔輸送材料および電子輸送材料として前述した材料のうち、いくつかは複数の機能を満たすことができる。例えば、電子伝導性材料の一部は、低HOMOを有する場合、同時に正孔ブロック材料でもある。
【0108】
電荷輸送層は、使用される材料の輸送特性を改善するために、まず、層厚さをさらに厚くするために(ピンホール/短絡の回避)、そして第二に装置の動作電圧を低くするために、電子的にドープすることもできる。例えば、正孔輸送材料を電子アクセプターでドープすることができる。例えば、フタロシアニンまたはアリールアミン、例えばTPDまたはTDTAにテトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)をドープすることができる。電子輸送材料に、例えば、アルカリ金属をドープすることができ、例えばAlq3にリチウムをドープすることができる。電子ドーピングは、当業者に既知であり、例えば、W. Gao, A. Kahn, J. Appl. Phys., Vol. 94, No. 1 , JuIy 1, 2003(p−doped organic layer);A. G. Werner, F. Li, K. Harada, M. Pfeiffer, T. Fritz, K. Leo, Appl. Phys. Lett, Vol. 82, No. 25, June 23, 2003およびPfeiffer et al., Organic Electronics 2003, 4, 89−103およびK. Walzer, B. Maennig, M. Pfeiffer, K. Leo, Chem. Soc. Rev. 2007, 107, 1233に開示されている。
【0109】
好適なマトリックス材料は、原則として、正孔および電子輸送材料として記載された材料、ならびにカルベン錯体、例えば式Iのカルベン錯体またはWO2005/019373で記載されているカルベン錯体でもある。特に好適なマトリックス材料は、カルバゾール誘導体、例えば4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−2,2’−ジメチル−ビフェニル(CDBP)、4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−ビフェニル(CBP)、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(mCP)、ならびに本出願の優先日にはまだ公開されていなかった、次の参照番号:PCT/EP2007/059648、EP07111824.4を有する出願に記載されているマトリックス材料である。
【0110】
本発明のOLEDの発光層において、少なくとも1つの発光材料を、少なくとも1つのマトリックス材料とあわせて用いる場合、本発明のOLEDの発光層中の少なくとも1つのマトリックス材料の割合は、一般的に、10〜99質量%、好ましくは50〜99質量%、さらに好ましくは70〜97質量%である。発光層中の少なくとも1つの発光材料の割合は、一般的に、1〜90質量%、好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは3〜30質量%であり、ここで、少なくとも1つのマトリックス材料および少なくとも1つの発光材料の割合は合計して100質量%になる。しかし、発光層が、少なくとも1つのマトリックス材料および少なくとも1つの発光材料と同様に、さらなる物質、例えば、すでに記載した希釈材料をさらに含むことも可能であり、さらなる希釈材料は、すでに記載されている。
【0111】
カソード(5)は、電子または負電荷キャリアを導入する働きをする電極である。カソードは、アノードよりも低い仕事関数を有する任意の金属または非金属であり得る。カソードに適した材料は、1族のアルカリ金属、例えば、Li、Cs、2族のアルカリ土類金属、希土類金属ならびにランタニド系およびアクチニド系を含む、元素の周期律表の12族の金属からなる群から選択される。加えて、アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウムおよびマグネシウムなどの金属、ならびにこれらの組み合わせを使用することができる。加えて、動作電圧を下げるために、リチウムを含む有機金属化合物またはLiFを、有機層とカソードとの間に適用することができる。
【0112】
本発明のOLEDは、当業者に既知のさらなる層をさらに含むことができる。例えば、正電荷の輸送を容易にするおよび/または互いの層間のバンドギャップに適合する層を、層(2)と発光層(3)の間に適用することができる。あるいは、このさらなる層は、保護層として機能し得る。同様の方法で、負電荷の輸送を容易にするため、および/または互いの層間のバンドギャップに適合するために、発光層(3)と層(4)の間にさらなる層が存在してもよい。あるいは、この層は、保護層として機能し得る。
【0113】
好適な実施形態において、本発明のOLEDは、層(1)〜(5)に加えて、以下に記載のさらなる層:
アノード(1)と正孔輸送層(2)との間の正孔注入層;
正孔輸送層(2)と発光層(3)との間の電子および/または励起子のブロッキング層;
発光層(3)と電子輸送層(4)との間の正孔および/または励起子のブロッキング層;
電子輸送層(4)とカソード(5)との間の電子注入層のうちの少なくとも1つを含む。
【0114】
しかし、すでに記載したように、OLEDは前記層(1)〜(5)の全てを含むわけではない可能性もあり、例えば、層(1)(アノード)、(3)(発光層)および(5)(カソード)を有するOLEDが同様に好適であり、この場合、層(2)(正孔輸送層)および(4)(電子輸送層)の機能は、隣接する層によって推定される。層(1)、(2)、(3)および(5)または層(1)、(3)、(4)および(5)を有するOLEDも同様に好適である。
【0115】
当業者には、好適な材料をどのようにして選択するか(例えば、電気化学調査に基づく)は既知である。個々の層に適した材料および好適なOLED構造は、当業者に既知であり、例えば、WO2005/113704に開示されている。
【0116】
さらに、本発明のOLEDの特定の層のそれぞれは、2つ以上の層で構成され得る。加えて、電荷キャリア輸送の有効性を増大させるために、層(1)、(2)、(3)、(4)および(5)の一部または全部を表面処理することが可能である。前記層のそれぞれの材料の選択は、好ましくは、高効率を有するOLEDを得ることによって決定される。
【0117】
本発明のOLEDは、当業者に既知の方法によって製造することができる。一般的に、OLEDは、好適な基体上に各層を連続的に蒸着させることによって製造される。好適な基体は、例えば、ガラスまたはポリマーフィルムである。蒸着に関して、一般的な技術、例えば、熱蒸発、化学蒸着などを用いることができる。他の方法において、有機層を、好適な溶媒中溶液または分散液からコーティングすることができ、この場合、当業者に既知のコーティング技術が用いられる。少なくとも1つの本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体に加えて、ポリマー材料をOLEDの層のうちの1つ、好ましくは発光層中に有する組成物は、一般的に、溶液加工方法によって層として適用される。
【0118】
一般的に、異なる層は次の厚さを有する:アノード(2)500〜5000Å、好ましくは1000〜2000Å;正孔輸送層(3)50〜1000Å、好ましくは200〜800Å、発光層(4)10〜1000Å、好ましくは100〜800Å、電子輸送層(5)50〜1000Å、好ましくは200〜800Å、カソード(7)200〜10000Å、好ましくは300〜5000Å。本発明のOLEDにおける正孔および電子の再結合領域の位置、そしてOLEDの発光スペクトルは、各層の相対的厚さにより影響を受け得る。このことは、電子輸送層の厚さを、好ましくは電子/正孔再結合領域が発光層内にあるように選択すべきであることを意味する。OLED中の各層の層厚さの比は、使用する材料に依存する。使用される追加の層厚さは、当業者に既知である。
【0119】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体を、本発明のOLEDの少なくとも1つにおいて、好ましくは本発明のOLEDの発光層中の発光分子として使用することによって、高効率および長寿命のOLEDを得ることが可能になる。本発明のOLEDの効率は、他の層を最適化することによってさらに改善することができる。例えば、高効率カソード、例えばCa、BaまたはLiFを用いることができる。動作電圧の減少または外部量子効率の増加をもたらす成形された基体および新規正孔輸送材料も同様に本発明のOLEDにおいて使用可能である。さらに、異なる層のエネルギーレベルを調節し、エレクトロルミネッセンスを容易にするために、追加の層がOLED中に存在し得る。
【0120】
本発明のOLEDを、エレクトロルミネッセンスが有用であるあらゆる装置において使用することができる。好適な装置は、好ましくは、据置型および移動型画像表示ユニット、ならびに照明手段から選択される。据置型画像表示ユニットは、例えば、コンピュータの画像表示ユニット、テレビ、プリンターの画像表示ユニット、台所用品および広告パネル、照明およびインフォメーションパネルである。移動型画像表示ユニットは、例えば携帯電話、ラップトップ型コンピュータ、デジタルカメラ、車両ならびにバスおよび列車の行き先表示における画像表示ユニット、である。照明手段は、例えば、LCDのバックグラウンド照明、発光表面、例えば発光壁紙である。
【0121】
本発明の式Iのシクロメタル化カルベン錯体、特に、本出願において明記されている本発明の式Iのシクロメタル化カルベン錯体の好適な実施形態および特に好適な実施形態は、好適な実施形態において、本出願の優先日にはまだ公開されていなかった出願PCT/EP2008/058106に記載されるOLEDにおいて使用でき、この場合、本発明の式Iのシクロメタル化カルベン錯体を、好ましくは、PCT/EP2008/058106において明記されている発光層中に存在する一般式Iのカルベン錯体と置き換える。本発明のシクロメタル化カルベン錯体は、PCT/EP2008/058106のOLEDにおいてリン光発光物質として使用できる。しかし、本発明の式Iのシクロメタル化カルベン錯体は、使用する中心金属および使用するリガンドに応じて、そしてOLEDにおいて用いられるさらなる物質に応じて、電子ブロッカー、励起子ブロッカーもしくは正孔ブロッカー、または正孔コンダクター、電子コンダクター、正孔注入層あるいはマトリックス材料(特に、発光層におけるマトリックス材料として)として使用されることがさらに可能である。
【0122】
加えて、本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体を、反対の構造を有するOLEDにおいて使用することができる。本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体は、好ましくは、発光層においてもこれらの反対のOLEDにおいて使用される。反対のOLEDの構造およびこれに通常用いられる材料は、当業者に既知である。
【0123】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体は、OLEDにおける使用に加えて、電磁スペクトルの可視領域においてまたは光の照射(フォトルミネッセンス)によって発光する着色剤として使用することができる。
【0124】
本出願は、したがって、前記の本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体のポリマー材料のバルク着色のための使用をさらに提供する。
【0125】
好適なポリマー材料は、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、メラミン樹脂、シリコーン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリクロロブタジエン、ポリイソプレンおよび前記モノマーのコポリマーである。
【0126】
加えて、前記の本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体は、以下の用途において用いることができる。
【0127】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、例えば天然材料、例えば、紙、木材、わら、皮革、生皮または天然繊維材料、例えば、木綿、羊毛、絹、ジュート、サイザルアサ、ヘンプ、フラックスまたは獣毛(例えば、馬の毛)およびこれらの変換産物、例えば、ビスコース繊維、硝酸処理絹もしくは銅レーヨンを着色するための、建染染料として、または建染染料における使用。
【0128】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、塗料、ワニスおよび他の表面コーティング組成物、例えば、紙用インク、印刷インク、ならびに描画および筆記目的の他のインクおよび着色剤を着色するための着色剤としての使用。
【0129】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、例えば、着色塗料、ワニスおよび他の表面コーティング組成物、紙用インク、印刷インク、描画および筆記目的の他のインクおよび他の着色剤を着色するための顔料色素としての使用。
【0130】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の電子写真術における顔料として、例えば、乾式コピーシステム(ゼロックス方法)およびレーザープリンターのための使用。
【0131】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体のセキュリティーマーキング目的の使用であって、この目的のために、物質の化学的および光化学的安定性が高いことと、適切な場合、ルミネッセンスが重要である。これは、好ましくは、特定の明白なカラーインプレッションが達成されるべきである、小切手、小切手保証カード、紙幣、クーポン券、記録文書、身分証明書等用である。
【0132】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、特定の色調が達成されるべき他の着色剤への添加剤としての使用であり、特に好適には鮮やかな色のための使用。
【0133】
ルミネッセンスを用いて物品を機械認識するためにこれらの物品を標識するため、好ましくは、例えばプラスチックリサイクルなどのための分類用の物品の機械認識のための、本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の使用。
【0134】
機械可読マーキングのための発光色素としての、本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の使用であって、好適には英数字マーキングまたはバーコードのための使用。
【0135】
光の周波数を調節するため、例えば短波長光を長波長の可視光に変換するための、本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の使用。
【0136】
多くの種類の表示、案内および標識目的用の、例えばパッシブ・ディスプレイ・エレメント、案内標識および交通標識、例えば信号機などのディスプレイエレメントにおける、本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の使用。
【0137】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、インクジェットプリンターにおける、好ましくは発光インクとしての均一溶液中の使用。
【0138】
超伝導有機材料の出発物質としての、本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の使用。
【0139】
固体状態の発光標識のための、本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の使用。
【0140】
装飾目的の本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の使用。
【0141】
例えば、生化学、医学、エンジニアリングおよび自然科学におけるトレーサー目的のための本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の使用。この用途において、色素は基体と共有結合させることができるか、または二次的な共有結合、例えば水素結合または疎水性相互作用(吸着)によって結合させることができる。
【0142】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、高感度検出法における発光色素としての使用(C. Aubert, J. Fuenfschilling, I. Zschocke−Graenacher and H. Langhals, Z. Analyt. Chem. 320(1985)361参照)。
【0143】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、シンチレーション装置における発光色素としての使用。
【0144】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、光学的集光装置における色素または発光色素としての使用。
【0145】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、ルミネッセント・ソーラー・コレクターにおける色素または発光色素としての使用(Langhals, Nachr. Chem. Tech. Lab. 28(1980)716参照)。
【0146】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、ルミネッセンス活性化ディスプレイにおける色素または発光色素としての使用(W. Greubel and G. Baur, Elektronik 26(1977)6参照)。
【0147】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、プラスチック製造のための光誘起重合用冷光源における色素または発光色素としての使用。
【0148】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、例えば、半導体回路の製造における物質試験用色素または発光色素としての使用。
【0149】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、集積回路の微細構造を調べるための色素または発光色素としての使用。
【0150】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、光伝導体における色素または発光色素としての使用。
【0151】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、写真処理における色素または発光色素としての使用。
【0152】
電子、イオンまたはUV照射によって励起が起こる、ディスプレイ、照明または画像変換装置、例えば、発光ディスプレイ、ブラウン管または蛍光管における、色素または発光色素としての、本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の使用。
【0153】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、集積半導体回路の一部としての色素または発光色素としての使用であって、この色素は、そのまま、または他の半導体と併せて、例えばエピタキシーの形態で使用される。
【0154】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、化学発光システム、例えば化学発光照明ロッド、発光免疫測定法、または他の発光検出法における、色素または発光色素としての使用。
【0155】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、好ましくは文字および描画または他のグラフィック製品を視覚的に強調するため、特定の視覚的カラーインプレッションが達成されるべき標識および他の物品の区別のための、シグナルカラーとしての色素または発光色素としての使用。
【0156】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、色素レーザーにおける色素または発光色素として、好ましくはレーザー光線を生成させるための発光色素としての使用。
【0157】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、非線形光学用、例えば、レーザー光の周波数倍増および周波数3倍増のための活性物質としての使用。
【0158】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、レオロジー改良剤としての使用。
【0159】
本発明の式Iのシクロメタル化架橋カルベン錯体の、電磁放射線を電気エネルギーに変換するための太陽電池アレイにおける色素としての使用。
【0160】
以下の実施例は、本発明のさらなる説明を提供する。
【0161】
実施例
I)合成法
トリアゾロフェナントリジン−リガンドとの錯体
2−メチルの合成
【化19】

【0162】
1−メチル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−f]フェナントリジニウムテトラフルオロボレート
1,2,4−トリアゾロ[4,3−f]フェナントリジン(A.G. Mikhailovskii, V.S. Shklyaev, Chem. Heterocycl. Comp. 1992, 445)(5.9g、27ミリモル)のジクロロメタン(200mL)およびメタノール(20mL)中溶液をアルゴン下、2℃で、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボレート(4.3g、29ミリモル)と混合し、2℃で1時間、室温で16時間撹拌する。結果として得られる沈殿を濾過し、ジクロロメタン、メタノールおよび石油エーテルで洗浄する。収量:5.9g(69%)。
【0163】

【0164】
1−メチル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−f]フェナントリジニウムヨージド
1−メチル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−f]フェナントリジニウムテトラフルオロボレート(4.7g、5.9ミリモル)のメタノール(80mL)中懸濁液を、アルゴン下、テトラブチルアンモニウムヨージド(6.5g、17.6ミリモル)と混合し、還流下で11時間撹拌する。室温まで冷却した後、沈殿を濾過し、メタノールで洗浄する。収量:4.1gのヨウ化物とテトラフルオロホウ酸塩との混合物(3:1、83%)。
【0165】
元素分析:C1413IN3/C1413BF43(3:1)についての計算値:C 51.44、H 3.46、N 12.00、I 26.36;測定値:C 51.4、H 3.5、N 12.0、I 26.3。
【0166】
mer−トリス−[1−メチル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−f]フェナントリジン−5−イリデン−C5,C6]イリジウム(III)
1−メチル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−f]フェナントリジニウムヨージド(4.0g、11.0ミリモル)および酸化銀(I)(1.3g、5.5ミリモル)のメタノール(200mL)中懸濁液をアルゴン下、室温で16時間撹拌する。混合物をメタノール(70mL)で希釈し、さらに5時間撹拌する。沈殿を濾過し、メタノールおよび石油エーテルで洗浄する。収量:4.9g(94%)。銀カルベン(4.8g、5.1ミリモル)および1,5−シクロオクタジエンイリジウム(I)クロリド二量体(0.7g、1.1ミリモル)のメシチレン(200mL)中混合物を、還流下、アルゴン下で20時間撹拌する。室温まで冷却した後、沈殿を濾過し、トルエンで洗浄する。合わせた濾液を濃縮乾固させ、カラムクロマトグラフィーにより精製する(アルミナ、4:1ジクロロメタン/トルエン)。収量:1.4g(75%)。
【0167】

【0168】
2−o−トリルの合成
【化20】

【0169】
N−フェナントリジン−6−イル−N’−o−トリルヒドラジン塩酸塩
o−トリルヒドラジン塩酸塩(7.6g、47ミリモル)のジクロロメタン(450mL)中溶液を、それぞれ飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(それぞれ90mL)および脱塩水で3回振とうすることによって抽出する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮乾固する。収量:4.9g(86%)。ヒドラジン(4.8g、39ミリモル)をエタノール(100mL)中に溶解させ、アルゴン下、6−クロロフェナントリジン(A.G. Mikhailovskii, V.S. Shklyaev, Chem. Heterocycl. Comp. 1992, 445)(7.0g、33ミリモル)と混合する。混合物を還流下で16時間撹拌する。室温まで冷却した後、結果として得られる沈殿を濾過し、エタノールおよび石油エーテルで洗浄する。収量:9.3g(85%)。
【0170】

【0171】
1−o−トリル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−f]フェナントリジニウムクロリド
N−フェナントリジン−6−イル−N’−o−トリルヒドラジン塩酸塩(9.0g、27ミリモル)のオルトギ酸トリエチル(360mL)中懸濁液を還流下、アルゴン下で17時間撹拌する。室温まで冷却した後、沈殿を濾過し、オルトギ酸トリエチルおよび冷アセトンで洗浄する。収量:8.2g(88%)。
【0172】

【0173】
mer−トリス−[1−o−トリル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−f]フェナントリジン−5−イリデン−C5,C6]イリジウム(III)
1−o−トリル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−f]フェナントリジニウムクロリド(10.0g、28.8ミリモル)および酸化銀(I)(3.3g、14.4ミリモル)のメタノール(1200mL)中懸濁液を、アルゴン下、室温で44時間撹拌する。沈殿を濾過し、メタノールおよび石油エーテルで洗浄する。収量:10.5g(80%)。銀カルベン(10.5g、11.6ミリモル)および1,5−シクロオクタジエンイリジウム(I)クロリド二量体(1.6g、2.3ミリモル)のメシチレン(420mL)中混合物を、還流下、アルゴン下で16時間撹拌する。室温まで冷却した後、沈殿を濾過し、ジクロロメタンで洗浄する。合わせた濾液を濃縮乾固させ、残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製する(アルミナ、1:1ジクロロメタン/シクロヘキサン)。収量:1.6g(25%)fac異性体および1.5g(25%)mer異性体。
【0174】

【0175】
2−フェニルの合成
【化21】

【0176】
N−フェナントリジン−6−イル−N’−フェニルヒドラジン塩酸塩
フェニルヒドラジン(1.3g、12ミリモル)を、エタノール(5OmL)中に溶解させ、アルゴン下、6−クロロフェナントリジン(A.G. Mikhailovskii, V.S. Shklyaev, Chem. Heterocycl. Comp. 1992, 445)(2.1g、10ミリモル)と混合する。混合物を還流下で16時間撹拌する。室温まで冷却した後、混合物を濃縮し、結果として得られる沈殿を濾過し、メチルtert−ブチルエーテルで洗浄する。収量:2.6g(82%)。
【0177】

【0178】
1−フェニル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−f]フェナントリジニウムクロリド
N−フェナントリジン−6−イル−N’−フェニルヒドラジン塩酸塩(2.0g、6.2ミリモル)のオルトギ酸トリエチル(100mL)中懸濁液を、還流下、アルゴン下で17時間撹拌する。室温まで冷却した後、混合物を濃縮し、沈殿を濾過し、石油エーテル、メチルtert−ブチルエーテルおよびアセトンで洗浄する。収量:1.2g(57%)。
【0179】

【0180】
mer−トリス−[1−フェニル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−f]フェナントリジン−5−イリデン−C5,C6]イリジウム(III)
1−フェニル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−f]フェナントリジニウムクロリド(1.18g、3.6ミリモル)および酸化銀(I)(0.42g、1.8ミリモル)のメタノール(200mL)中懸濁液を、アルゴン下、室温で32時間撹拌する。沈殿を濾過し、メタノールで洗浄する。収量:1.24g(78%)。銀カルベン(1.24g、1.4ミリモル)および1,5−シクロオクタジエンイリジウム(I)クロリド二量体(0.19g、0.3ミリモル)のメシチレン(100mL)中混合物を、還流下、アルゴン下で16時間撹拌する。室温まで冷却した後、沈殿を濾過し、酢酸エチルで洗浄する。合わせた濾液を濃縮乾固させ、残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製する(シリカゲル、1:1酢酸エチル/シクロヘキサン)。収量:0.03g(5%)のfac異性体、0.01g(2%)のmer異性体および0.34g(57%)の異性体混合物。
【0181】

【0182】
2−イソプロピルの合成
【化22】

【0183】
錯体2−イソプロピルを、2−メチルの合成と同様にして、1,2,4−トリアゾロ[4,3−f]フェナントリジン(A.G. Mikhailovskii, V. S. Shklyaev, Chem. Heterocycl. Comp. 1992, 445)から出発して製造する。
【0184】
ESI−MS:m/z=973(M+H+についての計算値:973)。
【0185】
2−p−ピリジルの合成
【化23】

【0186】
錯体2−p−ピリジルを、2−フェニルの合成と同様にして、クロロフェナントリジン(A.G. Mikhailovskii, V.S. Shklyaev, Chem. Heterocycl. Comp. 1992, 445)および4−ヒドラジノピリジン(E. M. Isin, M. Jonge, N. Castagnoli, J. Org. Chem. 2001 , 66, 4220)から出発して製造する。
【0187】
2−p−ピリジル:ESI−MS:m/z=1078(M+H+についての計算値:1078)。
【0188】
II)光物理的特性化
発光錯体のフォトルミネッセンスを、薄層PMMA(ポリメチルメタクリレート)中、2%のエミッタードーピングで行った。フィルムは次のようにして製造した:2mg/lの発光体を、10%のPMMAのDCM(Mw120kD)中溶液中に溶解させ、60μmドクターブレードを用いて、顕微鏡のスライドガラスに塗布した。325nm(HeCdレーザー)の波長で、顕微鏡スライドガラスに対して直角に励起を行い、発光を、ダイオードアレイ分光計で、光学繊維を用いて45°の角度で検出した。
【0189】
【表1】

【0190】
III)OLED装置試験
III.1)発光層:式Iの化合物+シリルカルバゾール
アノードとして用いるITO基体を、まず市販のLCD製造用洗剤(Deconex(登録商標)20NSおよび25ORGAN−ACID(登録商標)中和剤)で洗浄し、次いで、超音波洗浄機中、アセトン/イソプロパノール混合物中で洗浄する。可能な有機残留物を除去するために、基体をオゾンオーブン中、連続オゾン流にさらに25分間暴露する。この処理もITOの正孔注入を改善する。
【0191】
その後、以下で記載する有機材料を蒸着によって、清浄化された基体に0.5〜5.0nm/分の速度、約10-8mbarで適用する。正孔コンダクターおよび励起子ブロッカーとして、化合物V1をまず基体に45nmの層厚さで適用する。
【化24】

(化合物V1の製造については、WO2005/019373のIr錯体(7)参照)。
【0192】
続いて、6.5質量%の化合物2−メチル
【化25】

と、93.5質量%の化合物V2
【化26】

との混合物
(化合物V2の製造については、本出願の優先日ではまだ公開されていなかった出願EP07111824.4(標題:"Ogranic light−emitting diodes comprising at least one disilyl compound selected from disilylcarbazoles, disilyldibenzofurans, disilyldibenzothiophenes,disilyldibenzophospholes,disilyldibenzothiophene S−oxides and disilyldibenzothiophene S,S−dioxides")の実施例(4b)参照)を、40nmの厚さで蒸着により適用し、2−メチルは発光体として機能し、V2はマトリックス材料として機能する。その後、V2から構成される励起子ブロッカー層を蒸着により10nmの厚さで蒸着する。
【0193】
その後、BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)から構成される電子コンダクター層を、厚さ45nmで蒸着によって適用し、同様に0.7nm厚さのフッ化リチウム層、最後に100nm厚さのAl電極を蒸着させる。
【0194】
OLEDを特徴づけるために、エレクトロルミネッセンススペクトルを様々な電流および電圧で記録する。加えて、電流−電圧特性を、放出された光出力と組み合わせて測定する。光出力を、光度計を用いた較正によって、測光パラメータに変換することができる。寿命を決定するために、OLEDを一定電流密度で作動させ、光出力の減少を記録する。寿命は、輝度が初期の輝度の半分に減少するまでに経過した時間として定義される。
【0195】
記載したOLEDについて、以下の電気光学的データが得られる:
【表2】

【0196】
III.2)発光層:式Iの化合物+Ir(dpbic)3
アノードとして使用されるITO基体を、まず、市販のLCD製造用洗剤(Deconex(登録商標)20NSおよび25ORGAN−ACID(登録商標)中和剤)で洗浄し、次いで、超音波洗浄機中、アセトン/イソプロパノール混合物中で洗浄する。可能な有機残留物を除去するために、基体をオゾンオーブン中、連続オゾン流にさらに25分間暴露する。この処理によって、ITOの正孔注入特性も改善される。
【0197】
その後、以下に記載する有機物質を蒸着によって、清浄化された基体に約0.5〜5nm/分の速度、約10-8mbarで適用する。基体に適用される正孔コンダクターおよび励起子ブロッカーは、厚さ45nmのIr(dpbic)3である。
【化27】

(製造については、出願WO2005/019373におけるIr錯体(7)参照)。
【0198】
続いて、7質量%の化合物2−R
【化28】

と、93質量%の化合物Ir(dpbic)3との混合物を、蒸着によって厚さ40nmで適用し、この場合、前者は発光体として機能し、後者はマトリックス材料として機能する。
【0199】
続いて、物質9−(4−フェニル)−3,6−ビス(トリフェニルシリル)−9H−カルバゾールを蒸着によって10nmの厚さで、励起子および正孔ブロッカーとして適用する。
【化29】

【0200】
次に、電子輸送体BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)を蒸着により厚さ45nmで適用し、同様に0.75nm厚さのフッ化リチウム層および最後に110nm厚さのAl電極を適用する。
【0201】
OLEDを特性化するために、エレクトロルミネッセンススペクトルを様々な電流および電圧で記録する。加えて、電流−電圧特性を、発光した光出力と組み合わせて測定する。光出力を、光度計を用いた較正によって測光パラメータに変換することができる。
【0202】
記載したOLEDについて、以下の電気光学的データが得られる:
【表3】

【0203】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、記号はそれぞれ次のように定義される:
Mは、適切な金属原子について可能な任意の酸化状態の、元素の周期律表(CASバージョン)のIB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIIIB、ランタニドおよびIIIA族の金属;好ましくは、Fe、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Ru、PdおよびPt、Cu、Au、Ce、Tb、Eu、さらに好ましくはOs、Ru、Rh、IrおよびPt、最も好ましくはIr、OsおよびPtからなる群から選択される金属原子であり;
Kは、非荷電一配位座数リガンドまたは二配位座数リガンドであり;
Lは、モノアニオン性またはジアニオン性リガンド、好ましくはモノアニオン性リガンドであり(一配位座数であっても、または二配位座数であってもよい);
Xは、CRまたはN、好ましくはNであり;
Yは、NR2またはCR22であり;
A、D、G、E、A’、D’、G’またはE’は、それぞれ独立して、CH、CR3またはNであり;
は、F、CN、C1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、置換もしくは非置換C6〜C30−アリールまたは5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールであり;
2、R3は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルキル、置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルケニル、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロシクロアルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルキニル、置換もしくは非置換C6〜C30−アリール、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールまたは:C1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、SiR456、ハロゲン基、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基、カルボニル(−CO(R4))、カルボニルチオ(−C=O(SR4))、カルボニルオキシ(−C=O(OR4))、オキシカルボニル(−OC=O(R4))、チオカルボニル(−SC=O(R4))、アミノ(−NR45)、OH、擬ハロゲン基、アミド(−C=O(NR45))、−NR4C=O(R5)、ホスホネート(−P(O)(OR42)、ホスフェート(−OP(O)(OR42)、ホスフィン(−PR45)、ホスフィンオキシド(−P(O)R42)、スルフェート(−OS(O)2OR4)、スルホキシド(−S(O)R4)、スルホネート(−S(O)2OR4)、スルホニル(−S(O)24)、スルホンアミド(−S(O)2NR45)、NO2、ボロン酸エステル(−B(OR42)、イミノ(−C=NR45))、ボラン基、スズ酸塩基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ビニル基、スルホキシミン、アラン、ゲルマン、ボロキシンおよびボラジンからなる群から選択されるドナーもしくはアクセプター作用を有する置換基であるか;
または
2つの隣接するR3基は、一緒になって、3〜6個の原子から構成される飽和もしくは不飽和、置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがってR3基は、要素A=D、D−E、A’=D’、D’−E’、E’=G’の1つと一緒になって5〜8員環を形成するか;
または
G’およびA位のR3基は、一緒になって、1〜4個の原子から構成される飽和もしくは不飽和、置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがってR3基は、要素−G’−C−C−A−と一緒になって5〜8員環を形成し;
4、R5、R6は、それぞれ独立して、H、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキルまたは置換もしくは非置換C6〜C30−アリールまたは5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールであり;
nはカルベンリガンドの数であり、nが少なくとも1であり、式Iの錯体中のカルベンリガンドは、n>1ならば、同一であっても、異なっていてもよく;
mはリガンドKの数であり、mは0であってよいか、または≧1であってよく、リガンドKは、m>1の場合、同一であっても、異なっていてもよく;
oはリガンドLの数であり、oは0または≧1であってよく、リガンドLは、o>1の場合、同一であっても、異なっていてもよく;
n+m+oの合計は、使用する金属原子の酸化状態および配位数ならびにリガンドLおよびKの配位座数およびリガンドLの電荷に依存し、ただし、nは少なくとも1であるとする]のシクロメタル化カルベン錯体。
【請求項2】
式中、
Mは、Ir(III)であり、
nは3であり、
m、oは、それぞれ0である、請求項1記載のカルベン錯体。
【請求項3】
1、R2、R3は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルキニル、置換または非置換C6〜C30−アリール、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリール、C1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、SiR456、ハロゲン基、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基および擬ハロゲン基からなる群から選択され;さらに好ましくはR2およびR3は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、好ましくはC1〜C4−アルキル、さらに好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、置換もしくは非置換C6〜C30−アリール、好ましくは置換もしくは非置換フェニル、さらに好ましくは非置換フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、F置換フェニル、CN置換フェニル、メトキシ置換フェニルおよび/またはCF3置換フェニル、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリール、好ましくは5〜13個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリール、さらに好ましくはピリジル、チエニル、ピロリル、フリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリルまたはイミダゾリル、C1〜C20−アルコキシ、好ましくはC1〜C4−アルコキシ、さらに好ましくはメトキシ、C6〜C30−アリールオキシ、好ましくはC6〜C10−アリールオキシ、さらに好ましくはフェノキシ、C1〜C20−アルキルチオ、好ましくはC1〜C4−アルキルチオ、さらに好ましくはSCH3、C6〜C30−アリールチオ、好ましくはC6〜C10−アリールチオ、さらに好ましくはSPh、SiR456、好ましくはSiMe3またはSiPh3、ハロゲン基、好ましくはF、Cl、Br、さらに好ましくはF、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基、好ましくはハロゲン化C1〜C10−アルキル基、さらに好ましくはCF3、および擬ハロゲン基、好ましくはCNからなる群から選択されるか;
または
2つの隣接するR3基は、一緒になって、3〜4個の炭素原子から構成される飽和もしくは不飽和、メチル−、メトキシ−、フェニル−、SiMe3−、SiPh3−、F−、CF3−またはCN−置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがって、R3基は、要素A=D、D−E、A’=D’、D’−E’、E’=G’の1つと一緒になって、5または6員環を形成するか;
または
G’およびA位のR3基は、一緒になって、1または2個の炭素原子から構成される、飽和もしくは不飽和メチル−、メトキシ−、フェニル−、SiMe3−、SiPh3−、F−、CF3−またはCN−置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがってR3基は、要素−G’−C−C−A−と一緒になって、5または6員環を形成する、請求項1または2に記載のカルベン錯体。
【請求項4】
2が、1位が分岐した置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、好ましくはイソプロピル、イソブチル、イソペンチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル;置換もしくは非置換C6−アリール、好ましくは非置換フェニルあるいは2位および/または6位で、好ましくはメチル、メトキシ、CF3、CNおよび/またはFによって置換されたフェニル;さらに好ましくは2−トリル、2−メトキシフェニル、2−シアノフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル、2,6−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−もしくは2,6−ジメチルフェニルまたは2,4,6−、2,3,4−もしくは2,3,5−トリメチルフェニル;5〜13個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリール、好ましくはピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イル、ピロール−2−イル、ピロール−3−イル、フラン−2−イル、フラン−3−イル、チアゾール−2−イル、オキサゾール−2−イル、ピラゾール−3−イルまたはイミダゾール−2−イル、および対応するベンゾ縮合基からなる群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載のカルベン錯体。
【請求項5】
XはNであり、
Yは、NR2である、請求項1から4までのいずれか1項に記載のカルベン錯体。
【請求項6】
A、D、G、E、A’、D’、G’およびE’が、それぞれCHまたはCR3、好ましくはCHである、請求項1から5までのいずれか1項記載のカルベン錯体。
【請求項7】
以下の
【化2】

[式中:
A、D、G、E、A’、D’、G’およびE’は、それぞれ独立して、CH、CR3またはN、好ましくはCHまたはCR3、さらに好ましくはCHであり;
2、R3は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルキル、置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルケニル、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロシクロアルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルキニル、置換もしくは非置換C6〜C30−アリール、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールまたは:C1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、SiR456、ハロゲン基、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基、カルボニル(−CO(R4))、カルボニルチオ(−C=O(SR4))、カルボニルオキシ(−C=O(OR4))、オキシカルボニル(−OC=O(R4))、チオカルボニル(−SC=O(R4))、アミノ(−NR45)、OH、擬ハロゲン基、アミド(−C=O(NR45))、−NR4C=O(R5)、ホスホネート(−P(O)(OR42)、ホスフェート(−OP(O)(OR42)、ホスフィン(−PR45)、ホスフィンオキシド(−P(O)R42)、スルフェート(−OS(O)2OR4)、スルホキシド(−S(O)R4)、スルホネート(−S(O)2OR4)、スルホニル(−S(O)24)、スルホンアミド(−S(O)2NR45)、NO2、ボロン酸エステル(−B(OR42)、イミノ(−C=NR45))、ボラン基、スズ酸塩基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ビニル基、スルホキシミン、アラン、ゲルマン、ボロキシンおよびボラジンからなる群から選択されるドナーもしくはアクセプター作用を有する置換基であるか;
または
2つの隣接するR3基は、一緒になって3〜6個の原子から構成される飽和もしくは不飽和、置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがってR3基は、要素A=D、D−E、A’=D’、D’−E’、E’=G’の1つと一緒になって5〜8員環を形成するか;
または
G’およびA位のR3基は、一緒になって、1〜4個の原子から構成される飽和もしくは不飽和、置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがってR3基は、要素−G’−C−C−A−と一緒になって、5〜8員環を形成し;
ここで、R2は、好ましくは、1位で分岐した置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、好ましくはイソプロピル、イソブチル、イソペンチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル;置換もしくは非置換C6−アリール、好ましくは非置換フェニルまたは2位および/または6位で、好ましくはメチル、メトキシ、CF3、CNおよび/またはFで置換されたフェニル;さらに好ましくは2−トリル、2−メトキシフェニル、2−シアノフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル、2,6−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−もしくは2,6−ジメチルフェニルまたは2,4,6−、2,3,4−もしくは2,3,5−トリメチルフェニル;5〜13個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリール、好ましくはピリジン−2−イル、ピリジン−3−イル、ピリジン−4−イル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イル、ピロール−2−イル、ピロール−3−イル、フラン−2−イル、フラン−3−イル、チアゾール−2−イル、オキサゾール−2−イル、ピラゾール−3−イルまたはイミダゾール−2−イル、および対応するベンゾ縮合基からなる群から選択され;
4、R5、R6は、それぞれ独立して、H、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキルまたは置換もしくは非置換C6〜C30−アリール、または5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールであり;
YはCR22であり;
Mは、Ir、OsまたはPt;好ましくは、Ir(III)、Os(II)またはPt(II)、さらに好ましくはIr(III)であり;
Kは、非荷電二配位座数リガンドであり;
Lは、モノアニオン性二配位座数リガンドであり;
nはカルベンリガンドの数であり、Irの場合、nは3であり、Osの場合、2であり、Ptの場合、1または2であり、式Ia、Ib、Ic、およびIdの錯体中のカルベンリガンドは、同一であっても、異なっていてもよく;
mは、M=IrまたはPtの場合0であり、Osの場合、1であり;
oは、M=IrまたはOsおよびPtの場合およびn=2の場合0であり、Ptの場合およびn=1の場合1である]からなる群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載のカルベン錯体。
【請求項8】
式(III)
【化3】

[式中:
-は、モノアニオン性カウンターイオン、好ましくはハロゲン化物,擬ハロゲン化物、BF4-、BPh4-、PF6-、AsF6-またはSbF6-であり;
一般式IIIのリガンド前駆体中のさらなる記号は、それぞれ次のように定義される:
Xは、CR1またはN、好ましくはNであり;
Yは、NR2またはCR22であり;
A、D、G、E、A’、D’、G’またはE’は、それぞれ独立して、CH、CR3またはNであり;
1は、F、CN、C1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、置換もしくは非置換C6〜C30−アリールまたは5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールであり;
2、R3は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキル、置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルキル、置換もしくは非置換C5〜C20−シクロアルケニル、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロシクロアルキル、5〜30個の環原子を有する置換または非置換ヘテロシクロアルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルケニル、置換もしくは非置換C2〜C20−アルキニル、置換もしくは非置換C6〜C30−アリール、5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールまたは:C1〜C20−アルコキシ、C6〜C30−アリールオキシ、C1〜C20−アルキルチオ、C6〜C30−アリールチオ、SiR456、ハロゲン基、ハロゲン化C1〜C20−アルキル基、カルボニル(−CO(R4))、カルボニルチオ(−C=O(SR4))、カルボニルオキシ(−C=O(OR4))、オキシカルボニル(−OC=O(R4))、チオカルボニル(−SC=O(R4))、アミノ(−NR45)、OH、擬ハロゲン基、アミド(−C=O(NR45))、−NR4C=O(R5)、ホスホネート(−P(O)(OR42)、ホスフェート(−OP(O)(OR42)、ホスフィン(−PR45)、ホスフィンオキシド(−P(O)R42)、スルフェート(−OS(O)2OR4)、スルホキシド(−S(O)R4)、スルホネート(−S(O)2OR4)、スルホニル(−S(O)24)、スルホンアミド(−S(O)2NR45)、NO2、ボロン酸エステル(−B(OR42)、イミノ(−C=NR45))、ボラン基、スズ酸塩基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、オキシム基、ニトロソ基、ジアゾ基、ビニル基、スルホキシミン、アラン、ゲルマン、ボロキシンおよびボラジンからなる群から選択されるドナーもしくはアクセプター作用を有する置換基であるか;
または
2つの隣接するR3基は、一緒になって、3〜6個の原子から構成される飽和もしくは不飽和、置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがってR3基は、要素A=D、D−E、A’=D’、D’−E’、E’=G’の1つと一緒になって5〜8員環を形成するか;
または
G’およびA位のR3基は、一緒になって、1〜4個の原子から構成される飽和もしくは不飽和置換もしくは非置換ブリッジを形成し、したがってR3基は、要素−G’−C−C−A−と一緒になって、5〜8員環を形成し;
4、R5、R6は、それぞれ独立して、H、置換もしくは非置換C1〜C20−アルキルまたは置換もしくは非置換C6〜C30−アリールまたは5〜30個の環原子を有する置換もしくは非置換ヘテロアリールである]の少なくとも1つのリガンド前駆体を、少なくとも1つの金属Mを含む金属錯体[ここで、Mは次のように定義される:
Mは、適切な金属原子について可能な任意の酸化状態の、元素の周期律表(CASバージョン)のIB、IIB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIIIB、ランタニドおよびIIIA族の金属;好ましくは、Fe、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Ru、PdおよびPt、Cu、Au、Ce、Tb、Eu、さらに好ましくはOs、Ru、Rh、IrおよびPt、最も好ましくはIr、OsおよびPtからなる群から選択される金属である]と反応させることを含む、請求項1から7までのいずれか1項記載のカルベン錯体を製造するための方法。
【請求項9】
用いられる金属Mが、Ir、OsまたはPtである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか1項に記載されているか、または請求項8もしくは9に記載の方法にしたがって製造されるカルベン錯体の、有機発光ダイオードにおける、好ましくは発光材料、マトリックス材料、電荷ブロッカー材料および/または電荷輸送材料として、さらに好ましくは発光材料、最も好ましくは青色発光体としての使用。
【請求項11】
請求項1から7までのいずれか1項に記載されるか、または請求項8もしくは9に記載の方法にしたがって製造される少なくとも1つのカルベン錯体を含む有機発光ダイオード。
【請求項12】
請求項1から7までのいずれか1項に記載されるか、または請求項8もしくは9に記載の方法にしたがって製造される少なくとも1つのカルベン錯体を含む発光層。
【請求項13】
請求項12に記載の少なくとも1つの発光層を含む有機発光ダイオード。
【請求項14】
据置型画像表示ユニット、例えばコンピュータの画像表示ユニット、テレビ、プリンターの画像表示ユニット、台所用品および広告パネル、照明、インフォメーションパネルならびに移動型画像表示ユニット、例えば、携帯電話、ラップトップ型コンピュータ、デジタルカメラ、車両ならびにバスおよび列車の行き先表示における画像表示ユニット、ならびに照明手段からなる群から選択される装置であって、請求項11または13に記載の少なくとも1つの有機発光ダイオードを含む装置。

【公表番号】特表2011−500644(P2011−500644A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529402(P2010−529402)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064064
【国際公開番号】WO2009/050281
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】