説明

架橋剤併用型自己粘着性フィルム

【課題】再剥離性自己粘着性フィルムにおいて、透明性、粘着剤層と基材フィルム層との密着性、被着体への貼付時の界面からのエアー抜け性および被着体に対する粘着力の経時安定性が優れ、再剥離が軽快な自己粘着性フィルムを提供する。
【手段】基材フィルム表面に、カルボン酸未変性熱可塑性エラストマー、カルボン酸変性熱可塑性エラストマー、可塑剤、及び架橋剤を含有する粘着剤層が積層されて成る自己粘着性フィルムにおいて、架橋剤として高温反応性架橋剤と低温反応性架橋剤とを併用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ、パソコン、携帯電話などのディスプレイ画面、窓ガラスなどのガラス面の他、プラスチック、金属、繊維など種々の材料から構成された平面、曲面、凹凸面など種々の形状の被着面の、衝撃や擦り傷からの保護または遮光のため、あるいはPOP広告やバーコードラベルとして、表面に貼り付け及び剥離を繰り返し行う場合にも有用な自己粘着性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、保護または遮光が必要とされる面を効率的に被覆するのに好適に使用することができるフィルムが求められている。例えば、貼付時の圧着力依存性が低く、低い圧力で圧着した場合でも金属板を始めとする各種材料(被保護体)表面に容易に貼付(仮着)することが出来ると共に、使用後の再剥離性にも優れた表面保護フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、低湿度でも帯電防止性能が低下せず、かつ内容物を視認できる程度の透明性を有する透明電導性ヒートシール材およびこれを用いたキャリアテープ蓋体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、貼り合わせ時に良好な粘着性を有しつつ、貼り合わせ後の粘着力の経時変化が非常に小さく、かつ実用的な耐候性を有する、基材上に感圧粘着剤層を有する表面保護材が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
また、エポキシ化ジエン系ブロック共重合体と水添ジエン系ブロック共重合体を配合した重合体組成物からなる自己粘着性エラストマーシートが提案されているが、貼り付けする際のエアー残留問題が依然として残っている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
さらに、近年における液晶テレビ、プラズマディスプレイパネル(PDP)テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯電話及び電子手帳等の普及に伴い、それらの被保護面(ディスプレイ画面)を効率的に保護するのに使用することができる表面保護フィルムの開発が求められてきている。
【0007】
このような表面保護フィルムにおいては、例えば、それらの被保護面の図柄を視認できる程度の透明性が求められる場合が多いほか、被保護面への粘着性(粘着力や貼り合せの容易さ)、外的負荷(例えば、引掻きや剥離)に対する抵抗性などが重要視される。
【0008】
また、一般的に、広告文字及び/又は図柄が描画された基材フィルムに粘着剤層を積層した粘着フィルムを、各種店頭のガラス等の被着面に貼り付ける使用態様なども提案されているが、この場合、貼り付けのレイアウトを変更するため剥離しようとすると、剥離の際に粘着層が被着面に残存して、その拭き取り・清浄が必要となり、手間がかかるばかりでなく、再貼り付けするための粘着性が低下し、繰り返して被着面へ貼付することが困難であった。
【0009】
更に、被着面は、一般的には平面である場合が多いが、曲面形状を有する場合には特に、フィルムを貼り付ける際に被着面との間にエアーが入り込んだ状態で抜けなくなり、貼り付け面に凹凸が生じてしまうために、外観・耐久性などの点で問題となる場合が多い。また、作業性の改良のため、エアー抜け性(貼付する時に貼付面(以下被着面という)との間に気泡が巻き込まれない性質)の良いフィルムが望まれている。
【特許文献1】特開2001−139898号公報
【特許文献2】特開2001−348561号公報
【特許文献3】特開平8−245938号公報
【特許文献4】特開平8−81616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のような背景に基づき、本発明者らは、カルボン酸未変性熱可塑性エラストマー、カルボン酸変性熱可塑性エラストマー、可塑剤及び架橋剤を含有する粘着剤層を基材フィルム表面に積層した自己粘着性フィルムを種々検討してきた。自己粘着性フィルムとしては、被着体との界面に気泡を巻き込まない性質すなわちエアー抜け性が求められているが、これをより改良するために、カルボン酸未変性熱可塑性エラストマー及びカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを合わせた樹脂成分に添加する可塑剤の量を検討する中で、可塑剤の添加量を増加するとエアー抜け性は改善されるが、一方、基材フィルムと粘着剤層との間の密着性が低下し、それを改良しようとして架橋剤を増量すると、粘着剤層の粘着力の経時的に上昇するという欠点があることがわかった。
【0011】
すなわち、本発明は、被着面が、種々の材料、例えば、プラスチック、金属、繊維、ガラスなどから構成され、種々の形状、例えば平面、曲面、凹凸面などの形状を有する場合であっても、透明性が優れ、貼り付けの際のエアー抜け性が極めて優れ、かつ、貼付後の粘着安定性が優れ、剥離が容易に出来る自己粘着性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、カルボン酸未変性熱可塑性エラストマー、カルボン酸変性熱可塑性エラストマー、可塑剤、及び架橋剤を含有する粘着剤層が基材フィルム表面に積層されて成る自己粘着性フィルムにおいて、架橋剤として高温反応性架橋剤と低温反応性架橋剤とを併用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自己粘着性フィルムは、基本的には、自己粘着性があって、プラスチック、金属、繊維、ガラスなど種々の材料から構成された平面、曲面、凹凸面などの種々の形状の被着面に対して、貼り付けの際のエアー抜け性や透明性が優れ、自己粘着性フィルムを構成する基材フィルムと粘着剤層との密着性が高いためカッターナイフなどにより切り裂く際にも基材との樹脂の剥がれが少なく、しかも経時後の粘着力が安定していて被着面からの剥離も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における“自己粘着性”とは、被着面への貼り付けの際、外から圧力を掛けなくても、粘着できる性質を意味する。
【0015】
本発明の自己粘着性フィルムは、基材フィルム表面に粘着剤層を積層して成る。
【0016】
上記の基材フィルムを構成する材料としては特に限定されるものではなく、従来自己粘着性フィルム又は表面保護フィルムとして使用されている基材を使用することができ、例えば、プラスチックフィルムが好適に例示される。かかる基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのフィルムと、その他紙類などを用いることができる。なお、上記の基材フィルムには、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、他の添加剤、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、電磁波防止剤、およびこれらを組み合わせて含ませることができる。
【0017】
上記の基材フィルムの厚さは、製品である自己粘着性フィルムに求められる耐久性・柔軟性などを考慮して適宜決定し得るが、例えば、10〜350μmであり、好ましくは25〜200μmである。なお、上記の基材フィルムは、通常無色透明であるが、製品である自己粘着性フィルムの用途に応じて有色透明または不透明であってもよい。
【0018】
本発明の自己粘着性フィルムに使用する粘着剤は、自己粘着性という好ましい特性を付与するのに適しているが、この自己粘着性を生かすため、基材フィルムとしてこれに粘着剤層を積層したとき、例えば、被着面上にその粘着性フィルムの一端を貼り付け、他端を摘んでいた指先を離したとき、順にその他端へと向かって貼り付けを進めて貼り付けを完了させることが可能になるような、柔軟性、可撓性がある基材フィルムを選択するのが特に好ましい。かかる観点から、例えば、PETフィルムが好適に使用できる。そして、かかるPETフィルムの市販品としては、例えば、東レ株式会社製のルミラー75T60やユニチカ製のエンブレット38SC等が挙げられる。
【0019】
上記の基材フィルムは、必要に応じて、その片面又は両面に、易接着処理、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理など、中でも実用的にはコロナ処理を施したものを好適に用いることができる。
【0020】
前記の粘着剤層を構成する粘着剤は、カルボン酸未変性熱可塑性エラストマー、カルボン酸変性熱可塑性エラストマー、可塑剤、及び架橋剤を溶剤に溶解して構成される。
【0021】
上記のカルボン酸未変性熱可塑性エラストマーとしては、種々のものを用いることができるが、スチレンモノマーユニットとゴムモノマーユニットからなるブロックセグメントで構成されているポリマーであるのが好ましい。かかるポリマーとしては、例えば、SIS、SBS、SEBS、SEPS、SI、SB、SEPなどが挙げられ、中でもSEBS、SEPSが好ましい。上記のSEBSを用いる場合、その質量平均分子量は、例えば、20,000〜500,000であるのが好ましく、より好ましくは50,000〜350,000である。上記のカルボン酸未変性熱可塑性エラストマーは、粘着剤層の質量をベースとして、通常5〜50質量%、好ましくは15〜30質量%である。
【0022】
また、上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーとしては、カルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーなど、種々のものを用いることができ、例えば、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸などの脂肪族飽和ジカルボン酸、アクリル酸、プロピロル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びオレイン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、並びに、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及びメサコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸で変性されたものを挙げることができる。中でも、脂肪族不飽和ジカルボン酸変性で変性したものが好ましく、最も好ましくは、マレイン酸変性したものである。
【0023】
上記のカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーは、例えば、水素添加されたカルボン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーであってもよく、例えば、水素添加されたカルボン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーであってもよい。この例としては、例えば、水素添加されたマレイン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマー(マレイン酸変性SEBSエラストマー)が挙げられる。そして、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーとして、水素添加されたマレイン酸変性スチレン−ブタジエンエラストマーを用いる場合、そのメルトインデックスが、例えば、200℃、5kgの条件下で、2.5〜25g/10分であるものが好ましく、より好ましくは3〜7g/10分のものである。
【0024】
また、上記の水素添加されたカルボン酸変性熱可塑性エラストマーを用いる場合、水素添加率が実質的に100%であるのが好ましいが、本発明の効果が得られる限りにおいてそれ未満であってもよい。また、カルボン酸変性SEBSを用いる場合、そのスチレン:エチレン+ブチレンの質量比は、例えば、10:90〜40:60であるのが好ましく、より好ましくは、20:80〜30:70である。更に、本発明においては、カルボン酸変性熱可塑性エラストマーの酸価が、好ましくは2〜10である。酸価が3未満であると無色透明なフィルムとすることができ、一方、酸価が3〜10であると黄色がかったものとすることができる。
【0025】
上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーとして市場で入手できるものとして、例えば、旭化成工業株式会社製のタフテックM1911、M1913、M1943、及びクレイトンポリマー製のクレイトンFG−1901Xなどが挙げられる。
【0026】
上記のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーの添加量は、粘着剤層の全質量中に、通常5〜65質量%、実用的には10〜40質量%とされる。
【0027】
また、前記の架橋剤としては、本発明においては低温反応性架橋剤と高温反応性架橋剤とを併用することを特徴とする。かかる低温反応性架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤などを挙げることができ、また、高温反応性架橋剤としては、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系などを挙げることが出来る。上記の高温反応性架橋剤とは、比較的低温、例えば60℃未満では架橋反応が殆ど進まない架橋剤を指し、また、上記の低温反応架橋剤とは、比較的低温、例えば60℃未満でも実用性ある程度に架橋反応が進行する架橋剤を指す。
【0028】
上記のイソシアネート系架橋剤の市販品としては例えば、日本ポリウレタン工業株式会社製のコロネートHL(ヘキサメチレンジイソシアネート HDI−TMPアダクト)が好適に使用できる。
【0029】
上記の多官能アジリジン系架橋剤としての市販品としては例えば、BXX5134(アジリジン系硬化剤、東洋インキ製造株式会社製)を好適に使用できる。
【0030】
また、上記の架橋剤の添加量は、架橋剤の種類により変化するが、粘着剤層中のカルボン酸変性熱可塑性エラストマーの100質量部に対して、低温反応性架橋剤の場合は、通常0.8〜6質量部、好ましくは0.9〜5質量部であり、また、高温反応性架橋剤の場合は、通常、0.8〜4質量部であり、好ましくは0.9〜3.5質量部である。
【0031】
低温反応性架橋剤の添加量が0.8質量部未満では、粘着剤層の基材フィルムとの密着性が不十分となり易い。6.0質量部を超えると対PETフィルム熱処理後剥離性が低下し易い。また高温反応性架橋剤の添加量が0.8質量部未満では、粘着剤層の対基材フィルム密着性が不十分となり易く、4.0質量部を超えると、粘着力の経時上昇が大きくなり、使用後の剥離が重くなり易い。
【0032】
また、前記の可塑剤は、その種類として特に制限されないが、カルボン酸未変性熱可塑性エラストマーがポリスチレン相とゴム相を有する場合に、ゴム相に対する親和性が高く、ポリスチレン相に対する親和性が低い高分子量の化合物が適している。このような可塑剤としては、例えば、ナフテンオイル及びパラフィンオイルを挙げることができる。
【0033】
上記のナフテンオイルは、例えば、その引火点が、例えば、100〜300℃であるのが好ましく、より好ましくは150〜280℃である。また、その流動点が、例えば、−30〜−5℃であるのが好ましく、より好ましくは−25〜−10℃である。また、その比重が、例えば、0.83〜0.87であるのが好ましく、より好ましくは0.837〜0.868である。また、その質量平均分子量が100〜1000であるのが好ましく、より好ましくは150〜450である。
【0034】
一方、上記のパラフィンオイルは、例えば、その引火点が、例えば、100〜300℃であるのが好ましく、より好ましくは150〜280℃である。また、その流動点が、例えば、−30〜−5℃であるのが好ましく、より好ましくは−25〜−10℃である。また、その比重が、例えば、0.89〜0.91であるのが好ましく、より好ましくは0.8917〜0.9065である。また、その質量平均分子量が100〜1000であるのが好ましく、より好ましくは150〜450である。本発明においては、前記ナフテンオイル、パラフィンオイルのいずれかを単独で用いることができるが、これらを組み合せて用いることもできる。
【0035】
上記の可塑剤の添加量は、粘着剤層中に通常30〜80質量%であり、貼付時のエアー抜け性の観点から、好ましくは、40〜70質量%とされる。
【0036】
上記のカルボン酸未変性熱可塑性エラストマー、カルボン酸変性熱可塑性エラストマー、可塑剤、架橋剤は、通常、トルエン等の溶剤に溶解して粘着剤溶液とされる。かかる粘着剤溶液の固形分濃度は、通常20〜40質量%とされる。
【0037】
また、上記の粘着剤溶液には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、他の添加剤、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、電磁波防止剤、および、これらを組み合わせて含んでいてもよい。
【0038】
上記の帯電防止剤としては、例えば、日本油脂製のエレガン264waxなどを用いることができ、その含量は、粘着剤層の質量をベースとして、通常0.1〜3.6質量%であり、好ましくは0.6〜1.8質量%である。このような割合で帯電防止剤を用いることにより、いわゆる「ゆずはだ」を良好に防止することができる。
【0039】
上記の紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0040】
上記のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0041】
また、上記のベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0042】
前記の粘着剤への上記の紫外線吸収剤の添加量は、特に制限されるものではないが、通常、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。
【0043】
本発明の自己粘着性フィルムは、前記の基材フィルムの表面に上記の粘着剤溶液を塗布し、乾燥して製造される。上記の基材フィルムが易接着処理したものの場合は、通常、当該易接着処理した面に塗布する。上記の塗布方法としては、液状のものが塗布できるものであれば特に制限はないが、例えば、ローラー塗装法、刷毛塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法の他、ダイコーター、バーコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、コンマコーターを用いる方法が挙げられる。上記の塗布量は、特に制限されないが、通常、乾燥後の厚さとして、1〜100μmであり、好ましくは5〜75μmであり、実用的には15〜50μmである。これにより、例えば、コスト面及び加工適性面において所望の結果が得られる。
【0044】
上記の乾燥条件は、膜厚や選択した溶剤の種類などにより変動し得るが、例えば、80〜150℃で20〜180秒間とすることができ、好ましくは100〜130℃で30〜150秒間とする。これにより、1〜100μmの厚さを有する粘着剤層を基材フィルム上に設けることができる。次いで、必要により、この粘着剤層材料上に、後述の剥離層を設ける。その後、これを40〜80℃で2〜6日間エージングさせることにより、本発明の自己粘着性フィルムを得ることができる。
【0045】
なお、本発明においては、得られた自己粘着性フィルムの保存時および搬送時の便宜のため、必要に応じて、粘着剤層の上に、剥離層を被覆することができる。その場合、その離型層は自己粘着性フィルムの使用時は剥離され、粘着剤層面が露出されて使用される。かかる剥離層を構成する材料としては、例えば、シリコーン処理PETフィルム、シリコーン処理紙などを用いることができ、中でもシリコーン処理PETフィルムが実用的である。その際、シリコーン処理面が、粘着剤層に接触するようにする。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において、得られた自己粘着性フィルムの特性の評価は、以下の方法によった。
【0047】
(エアー抜け速さ):次に示すループ式エアー抜け測定により評価した。
90mm×40mmの大きさの自己粘着性フィルムをその粘着剤層が外側となるようにして、その長辺の向きにループを形成するように丸めて両末端面が互いに隣接するようにつまみ、長辺の中央部(片側4.5cm)の粘着剤面をソーダガラス面に接触させた後、つまみ部を放してループを解放し、自己粘着性フィルムの粘着剤面とガラス面との界面のエアーを追い出しつつ自己粘着性フィルムの全ての粘着剤面(片側4.5cm)がソーダガラス面に接するまでの時間t(秒)を測定し、4.5/tにより算出した1秒間に貼付けが進行する距離をエアー抜け速さとし、3cm/秒以上を良好とした。
【0048】
(対基材密着性:カッター切り裂き試験)
A4版大の自己粘着性フィルムから剥離層を剥がし、縦長方向に持ち、その幅方向の両端から引っ張って緊張させた状態において、その中央部の背面(粘着剤層が無い面側)からカッターナイフで切り込みを入れる。その際、切り込み部断面における基材フィルム表面から粘着剤層が刃先に押されて剥離したフィルム面部分の幅方向の切り込み部からの最大剥離部分の長さを0.5mm単位で測定し、3試験片の測定値の平均値を対基材密着性とし、その長さが2.0mm以下を良好とした。
【0049】
(PETフィルムに貼り付け熱処理後の剥離性:以下、対PETフィルム熱処理後剥離性と略称する。)
A4版大の自己粘着性フィルムを幅25mm、長さ200mmに裁断して試験片とし、その剥離層を剥がし、これを厚さ25μmのルミラー25T60(ポリエステルフィルム、東レ株式会社製)の表面に貼り付けた後、これを温度80℃の恒温槽中にて30分間熱処理し、その後室温まで冷却する。この試験片をAUTOGRAPH
AGS−50D(株式会社島津製作所製)を用いて、剥離角度180°剥離速度300mm/minの条件でルミラー25T60を剥離し、粘着層とPETフィルム面の層間の粘着力を測定した。各3試験片の測定値をN/cmに換算し、その平均値を対PETフィルム熱処理後剥離性とし、0.50N/cm以下を良好とした。
【0050】
(窓ガラスに貼り付け経時後の剥離性:以下、対窓ガラス経時後剥離性と略称する。)
A4版大の自己粘着性フィルムから剥離層を剥がし、露出した粘着剤層を、屋外に面する窓ガラスの室内側面(平面)上に貼付け、100時間放置後、手動で剥離したときの剥離のし易さを、以下の基準で評価した。
◎:自己粘着フィルムの背面(基材フィルム面)に粘着テープ:日東31B(日東電工株式会社製)を貼り付け、当該粘着テープの貼り付けていない部分を引っ張ると、当該粘着テープと共に自己粘着フィルムが剥離されるもの。
○:上記の粘着テープの貼り付けていない部分を引っ張ることによっては剥離できないが、直接自己粘着フィルムの端を指先で摘んで引っ張ると、歪みを生じることなく剥離できるもの。
△:上記のように直接指先で摘んで引っ張ると、剥離はできるが手応えが重く、フィルム面に歪みが生じ、剥離後も歪みが僅かに残るもの。
×:上記のように直接指先で摘んで引っ張ると、剥離はできるが手応えが非常に重く、フィルム面に歪みが生じ、剥離後も歪みが顕著に残るもの。
【0051】
(PCディスプレイ面貼り付け経時後の剥離性:以下、対PCディスプレイ面経時後剥離性と略称する。)
パソコン用ディスプレイの液晶表示面(シャープ株式会社製、LLT153A型使用)に、幅25mm、長さ200mmの自己粘着性フィルムを貼付けた状態で、室温状態で100時間放置した後、貼り付けたままの状態でAUTOGRAPH
AGS−50D(島津製作所製)を用いて、剥離角度180°剥離速度300mm/minの条件で剥離し、粘着力と表示面の層間の粘着力を測定した。各3試験片の測定値をN/cmに換算し、その平均値をPCディスプレイ面経時後剥離性とし、0.05N/cm以下を良好とした。
【0052】
実施例1
SEBS熱可塑性エラストマー(質量平均分子量200,000)25.3質量部とパラフィンオイル可塑剤(質量平均分子量330)59質量部とを予めよく混練した後、トルエン100質量部に溶解した。この溶液に、タフテックM1911[旭化成工業株式会社製、マレイン酸変性SEBS、メルトインデックス(200℃、5kg)3.5g/10分、スチレン:エチレン+ブチレン質量比30:70、酸価2]を予めトルエンに溶解して16質量%に調製した溶液79質量部、コロネートHL液[日本ポリウレタン工業製 ヘキサメチレンジイソシアネート-HDI-TMPアダクト、75質量%溶液]0.28質量部、BXX5134液[東洋インキ製造株式会社製、アジリジン系硬化剤、5質量%溶液]4.2質量部、チヌビン384−2(チバガイギー社製、紫外線吸収剤、95質量%溶液)2.66質量部、及び、エレガン264wax[日本油脂製、カチオン性帯電防止剤、固形分100%]0.21質量部を添加して混合し、粘着剤塗布溶液とした。
この塗布溶液を、基材フィルムであるA4版大の厚さ75μmのルミラー75T60[東レ株式会社製未処理PETフィルム]にブレードを用いて乾燥後の厚さが35μmとなるように塗布して粘着剤層を形成し、100℃で2分間乾燥し、次いで、その形成された粘着剤層表面に、剥離層としてシリコーン処理PETフィルムを貼り合わせた。これを45℃にて4日間エージングさせて、離型層を被覆した自己粘着性フィルムを得た。
得られた自己粘着性フィルムについて、エアー抜け速さ、対基材密着性、対PETフィルム熱処理後剥離性、対窓ガラス経時後剥離性、対PCディスプレイ面経時後剥離性の各特性を測定し、粘着剤層の主な組成(純分ベース)と共に表1に記載した。
【0053】
実施例2
実施例1において、コロネートHL液を0.4質量部、BXX5134液を2.4質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして離型層を被覆した自己粘着性フィルムを得た。得られた自己粘着性フィルムについて、実施例1の場合と同様にして各特性を測定し、粘着剤層の主な組成(純分ベース)と共に表1に記載した。
【0054】
実施例3
実施例1において、コロネートHL液を0.8質量部、BXX5134液を4.8質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして離型層を被覆した自己粘着性フィルムを得た。得られた自己粘着性フィルムについて、実施例1の場合と同様にして各特性を測定し、粘着剤層の主な組成(純分ベース)と共に表1に記載した。
【0055】
実施例4
実施例1において、コロネートHL液を0.16質量部、BXX5134液を6.0質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして離型層を被覆した自己粘着性フィルムを得た。得られた自己粘着性フィルムについて、実施例1の場合と同様にして各特性を測定し、粘着剤層の主な組成(純分ベース)と共に表1に記載した。
【0056】
実施例5
実施例1において、コロネートHL液を0.56質量部、BXX5134液を8.4質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして離型層を被覆した自己粘着性フィルムを得た。得られた自己粘着性フィルムについて、実施例1の場合と同様にして各特性を測定し、粘着剤層の主な組成(純分ベース)と共に表1に記載した。
【0057】
比較例1
実施例1において、コロネートHL液を0.2質量部、BXX5134液を1.2質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして離型層を被覆した自己粘着性フィルムを得た。得られた自己粘着性フィルムについて、実施例1の場合と同様にして各特性を測定し、粘着剤層の主な組成(純分ベース)と共に表1に記載した。
【0058】
比較例2
実施例1において、コロネートHL液を0.56質量部に変更し、BXX5134液を全く使用しないこと以外は、実施例1と同様にして離型層を被覆した自己粘着性フィルムを得た。得られた自己粘着性フィルムについて、実施例1の場合と同様にして各特性を測定し、粘着剤層の主な組成と共に表1に記載した。
【0059】
比較例3
実施例1において、コロネートHL液を0.32質量部、BXX5134液を12質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして離型層を被覆した自己粘着性フィルムを得た。得られた自己粘着性フィルムについて、実施例1の場合と同様にして各特性を測定し、粘着剤層の主な組成(純分ベース)と共に表1に記載した。
【0060】
比較例4
実施例1において、コロネートHL液を全く使用せず、BXX5134液を8.4質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして離型層を被覆した自己粘着性フィルムを得た。得られた自己粘着性フィルムについて、実施例1の場合と同様にして各特性を測定し、粘着剤層の主な組成(純分ベース)と共に表1に記載した。
【0061】
比較例5
実施例1において、コロネートHL液を1.12質量部、BXX5134液を4.8質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして離型層を被覆した自己粘着性フィルムを得た。得られた自己粘着性フィルムについて、実施例1の場合と同様にして各特性を測定し、粘着剤層の主な組成と共に表1に記載した。
【0062】
【表1】

【0063】
(考察)
上記の表1に記載された結果からも明らかなように、本発明の特徴である粘着剤層に添加する架橋剤(硬化剤)として低温反応性架橋剤と高温反応性架橋剤とを各々所定の範囲で併用することにより、エアー抜け速さを維持したまま、対基材密着性、対PETフィルム熱処理後剥離性、対窓ガラス経時後剥離性、PCディスプレイ面経時後剥離性の全ての特性について優れた性能を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の自己粘着性フィルムは、その粘着剤層を構成する粘着剤がカルボン酸未変性熱可塑性エラストマー、カルボン酸変性熱可塑性エラストマー、可塑剤、及び架橋剤を含有し、その架橋剤として高温反応性架橋剤と低温反応性架橋剤とを併用することにより、透明性、粘着剤層と基材フィルム層との密着性、被着体への貼付時の界面からのエアー抜け性が共に優れており、且つ種々の被着体に貼り付け後の粘着力が安定し、貼り直しや貼り付けて経時後の被着体からの剥離性が軽快で、被着体を損なうことがないため安心して使用でき、その産業上の効果は大である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム表面にカルボン酸未変性熱可塑性エラストマー、カルボン酸変性熱可塑性エラストマー、可塑剤、及び架橋剤を含有する粘着剤層が積層されて成る自己粘着性フィルムにおいて、架橋剤として高温反応性架橋剤と低温反応性架橋剤とを併用することを特徴とする自己粘着性フィルム。
【請求項2】
低温反応性架橋剤がイソシアネート系架橋剤であることを特徴とする請求項1に記載の自己粘着性フィルム。
【請求項3】
高温反応性架橋剤がアジリジン系架橋剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自己粘着性フィルム。
【請求項4】
カルボン酸未変性熱可塑性エラストマーがスチレンモノマーユニットとゴムモノマーユニットとからなるブロックセグメントで構成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の自己粘着性フィルム。
【請求項5】
可塑剤の質量平均分子量が100〜1000であるナフテンオイル及び/又はパラフィンオイルから成ることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の自己粘着性フィルム。
【請求項6】
全粘着剤層中の可塑剤の添加量が30〜80質量%であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の自己粘着性フィルム。
【請求項7】
低温反応性架橋剤がカルボン酸変性熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.8〜6.0質量部添加されていることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の自己粘着性フィルム。
【請求項8】
高温反応性架橋剤がカルボン酸変性熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.8〜4.0質量部添加されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の自己粘着性フィルム。
【請求項9】
基材フィルムが、プラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一つに記載の自己粘着性フィルム。
【請求項10】
粘着剤層上に剥離層が設けられていることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一つに記載の自己粘着性フィルム。

【公開番号】特開2007−23057(P2007−23057A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202416(P2005−202416)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(591145335)パナック株式会社 (29)
【Fターム(参考)】