説明

架橋性ニトリルゴム組成物及びゴム架橋物

【課題】 耐オゾン性に優れ、ガソリン透過性が小さく、かつガソリン沈殿が少ないゴム架橋物を与える架橋性ニトリルゴム組成物及びその架橋物を提供すること。
【解決手段】 α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有するニトリル基含有共重合ゴム(A)40〜90重量%及びカルボキシル基含有アクリルゴム(B)60〜10重量%からなるゴム混合物100重量部に対して、平均粒径20μm以下のケイ酸マグネシウム(C)5〜200重量部を含有し、前記ゴム混合物が有するカルボキシル基1モルに対して0.05〜3モルのポリアミン系架橋剤(D)を含有してなる架橋性ニトリルゴム組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は架橋性ニトリルゴム組成物及びゴム架橋物に関し、詳しくは、耐オゾン性に優れ、ガソリン透過性が小さく、かつガソリン沈殿が少ないゴム架橋物を与える架橋性ニトリルゴム組成物及びその架橋物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、及び、共役ジエン単量体単位又はオレフィン単量体単位、を含有するゴム(以下、「ニトリルゴム」と記すことがある。)は優れた耐油性を有するため、種々の機械用の、特に自動車用の燃料油ホース、潤滑油ホース、パッキン、ケーブルジャケット等に多く使用されている。しかし、ニトリルゴムは、主鎖中に炭素−炭素二重結合を有しているため、空気中に微量含まれるオゾンによって劣化を受けやすく、耐オゾン性に劣るという欠点がある。この問題に対して、ニトリルゴムに塩化ビニル樹脂(特許文献1)や、アクリルゴム(特許文献2)をブレンドすることにより、これらの欠点を改善する試みがなされてきた。
また、世界的な環境保護活動の高まりにより、ガソリンなどの燃料の大気中への蒸散量を削減する取り組みが進んでおり、燃料ホース、シール、パッキンなどの用途においてガソリン透過性が一層低いことが求められている。例えば、米国では、カルフォルニア州で2004年から排ガス中の燃料ガス濃度の規制が段階的に強化されている(LEVII)。
さらに、燃料系の部品に使われるゴム材料においては、ガソリン中の固形分が沈殿し(ガソリン沈殿)、それがシステム内に蓄積し配管のつまりを生じるというトラブルが報告されている。このため、ガソリン沈殿を生じにくいゴム材料求められてる。
上述したように、耐オゾン性に優れ、ガソリン透過性が小さく、かつガソリン沈殿の少ないゴム材料が求められているが、ニトリルゴムに塩化ビニル樹脂や、アクリルゴムをブレンドした従来のポリマーでは、これらの要求を満足させることはできていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−172433号公報
【特許文献2】特開2003−26861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、耐オゾン性に優れ、ガソリン透過性が小さく、かつガソリン沈殿が少ないゴム架橋物を与える架橋性ニトリルゴム組成物及びその架橋物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のニトリル基含有共重合ゴム、特定のアクリルゴム、及び、特定のケイ酸マグネシウムを特定割合で配合し、特定の架橋剤で架橋することにより上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに到った。
かくして本発明によれば、
(1)α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有するニトリル基含有共重合ゴム(A)40〜90重量%及びカルボキシル基含有アクリルゴム(B)60〜10重量%からなるゴム混合物100重量部に対して、平均粒径20μm以下のケイ酸マグネシウム(C)5〜200重量部を含有し、前記ゴム混合物が有するカルボキシル基1モルに対して0.05〜3モルのポリアミン系架橋剤(D)を含有してなる架橋性ニトリルゴム組成物、
(2)前記ニトリル基含有共重合ゴム(A)が、100g当たりカルボキシル基を2×10−3〜1×10−1モル含有するものである上記に記載の架橋性ニトリルゴム組成物、
(3)前記アクリルゴム(B)が、100g当たりカルボキシル基を4×10−4〜1×10−1モル含有するものである上記に記載の架橋性ニトリルゴム組成物、
(4)前記アクリルゴム(B)が、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有するものである上記に記載の架橋性ニトリルゴム組成物、
(5)上記に記載の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物、及び
(6)燃料ホースである上記に記載のゴム架橋物、が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、耐オゾン性に優れ、ガソリン透過性が小さく、かつガソリン沈殿が少ないゴム架橋物を与える架橋性ニトリルゴム組成物及びその架橋物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有するニトリル基含有共重合ゴム(A)40〜90重量%及びカルボキシル基含有アクリルゴム(B)60〜10重量%からなるゴム混合物100重量部に対して、平均粒径20μm以下のケイ酸マグネシウム(C)5〜200重量部を含有し、前記ゴム混合物が有するカルボキシル基1モルに対して0.05〜3モルのポリアミン系架橋剤(D)を含有してなるものである。
【0008】
本発明に用いるニトリル基含有共重合ゴム(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体及び、これと共重合可能な単量体を必要に応じて共重合してなるゴムである。
ニトリル基含有共重合ゴム(A)のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは12〜55重量%、特に好ましくは15〜50重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が上記の範囲であると、ニトリル基含有共重合ゴム(A)は耐油性及び耐寒性をバランスよく備えることができる。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリルなどが挙げられ、アクリロニトリルが好ましい。
【0009】
ニトリル基含有共重合ゴム(A)のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量は、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは2〜10重量%である。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量が上記の範囲を外れると、ガソリン沈殿が少ないゴム架橋物が得られないおそれがある。
【0010】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体のエステル部の、酸素原子を介してカルボニル基と結合する有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基およびアルキルシクロアルキル基が好ましく、アルキルが特に好ましい。アルキル基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは2〜6であり、シクロアルキル基の炭素数は好ましくは5〜12、より好ましくは6〜10であり、アルキルシクロアルキル基の炭素数は好ましくは6〜12、より好ましくは7〜10である。該有機基の炭素数が小さすぎると架橋性ニトリルゴム組成物の加工安定性が低下するおそれがあり、逆に大きすぎると架橋速度が遅くなったり、ゴム架橋物の機械的特性が低下したりする可能性がある。
【0011】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体の例としては、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステルなどが挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果がより一層顕著に現れる点で、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステルが好ましく、イタコン酸モノn−ブチルが特に好ましい。
【0012】
ニトリル基含有共重合ゴム(A)は、上記のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位及びα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の他に、本発明の架橋物がゴム弾性を保有するために、通常、ジエン単量体単位をも有する。
【0013】
ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの炭素数が4以上の共役ジエン;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどの好ましくは炭素数が5〜12の非共役ジエンが挙げられる。これらの中では共役ジエンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
【0014】
ニトリル基含有共重合ゴム(A)におけるジエン単量体単位の含有量は、好ましくは20〜89重量%、より好ましくは30〜87重量%、特に好ましくは40〜83重量%である。ニトリル基含有共重合ゴム(A)のジエン単量体単位の含有量が少なすぎるとニトリル基含有共重合ゴム(A)の架橋物の弾性が低下するおそれがあり、多すぎると耐熱老化性や耐化学的安定性が損なわれる可能性がある。
【0015】
ニトリル基含有共重合ゴム(A)は、また、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体並びにα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体およびジエン単量体と、共重合可能なその他の単量体の単位を含有することができる。
その他の単量体としては、α−オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体(α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体は除く)、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
【0016】
α−オレフィン単量体としては、炭素数が2〜12のものが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0017】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0018】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(「メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル」の略記。以下同様。);アクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチルなどの炭素数2〜12のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸α−シアノエチル、メタクリル酸α−シアノエチル、メタクリル酸シアノブチルなどの炭素数2〜12のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基を有する(メタ) アクリル酸エステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなどの炭素数1〜12のフルオロアルキル基を有する(メタ) アクリル酸エステル;マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチルなどのα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル;ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレートなどのアミノ基含有α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル;などが挙げられる。
【0019】
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体としては、カルボキシル基を2つ以上有する炭素数が4〜12のα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸が好ましく、フマル酸、マレイン酸などのブテンジオン酸;イタコン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などが例示される。
【0020】
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物単量体としては、無水マレイン酸などの炭素数が4〜12のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物が例示される。
【0021】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の炭素数が3〜12のα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸が例示される。
【0022】
共重合性老化防止剤としては、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
【0023】
これらの共重合可能なその他の単量体は、複数種類を併用してもよい。ニトリル基含有共重合ゴム(A)が有するその他の単量体単位の含有量は、好ましくは60重量%以下、より好ましくは30重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
【0024】
ニトリル基含有共重合ゴム(A)は、好ましくは100g当たりカルボキシル基を2×10−3〜1×10−1モル、より好ましくは3×10−3〜5×10−2モル、特に好ましくは4×10−3〜3×10−2モル含有する。ニトリル基含有共重合ゴム(A)の100g当たりのカルボキシル基の数が上記範囲にあると、機械的強度及び伸びが向上する。
【0025】
ニトリル基含有共重合ゴム(A)のムーニー粘度ML1+4(100℃)は、好ましくは10〜150、より好ましくは20〜120、特に好ましくは30〜100である。ムーニー粘度が上記の範囲にあると、ニトリル基含有共重合ゴム(A)は成形加工性が良く、また、得られるゴム架橋物は十分な機械的強度を有するものとなる。
【0026】
ニトリル基含有共重合ゴム(A)の製造方法は、特に限定されない。一般的にはα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体及びジエン単量体、並びに、必要に応じて加えられるこれらと共重合可能なその他の単量体を共重合する方法が便利で好ましい。重合法としては、公知の乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法および溶液重合法のいずれをも用いることができるが、重合反応の制御が容易であることから乳化重合法が好ましい。
【0027】
本発明に用いるカルボキシル基含有アクリルゴム(B)は、そのガラス転移点が好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、さらに好ましくは0℃以下である。ガラス転移温度が高すぎると、ゴム架橋物の耐寒性が悪化したり、硬度が高くなり配合の自由度が少なくなったりするおそれがある。
【0028】
カルボキシル基含有アクリルゴム(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、カルボキシル基含有単量体及び必要に応じて加えられる共重合可能なその他の単量体を共重合することにより得られる。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが特に好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの、炭素数1〜8の(シクロ)アルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸n−ブチルが特に好ましい。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル及び(メタ)アクリル酸4−メトキシブチルなどの、炭素数2〜8のアルコキシアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル及び(メタ)アクリル酸2−メトキシエチルがより好ましく、アクリル酸2−エトキシエチル及びアクリル酸2−メトキシエチルが特に好ましい。
【0030】
カルボキシル基含有アクリルゴム(B)中の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位の含有量は、好ましくは50〜99.5重量%、より好ましくは60〜96.5重量%、特に好ましくは70〜91重量%である。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体単位の含有量が上記の範囲にあると、ゴム架橋物は耐燃料油性に優れる。
なお、カルボキシル基含有アクリルゴム(B)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位の含有量は、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは5〜15重量%である。
【0031】
カルボキシル基含有アクリルゴム(B)は、カルボキシル基含有単量体単位を好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%含有する。カルボキシル基含有単量体単位の含有量が上記範囲にある場合、本発明の効果がより一層顕著なものとなる。
【0032】
カルボキシル基含有単量体としては、上述したものと同様のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物単量体及びα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体が好適に用いられるが、本発明の効果がより一層顕著になることから、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体がより好ましく、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステルが好ましく、フマル酸モノn−ブチルが特に好ましい。
なお、上述したカルボキシル基含有単量体はカルボン酸塩を形成していても良く、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0033】
カルボキシル基含有アクリルゴム(B)を形成する、必要に応じて加えられる共重合可能なその他の単量体としては、上述したものと同様の、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、ジエン単量体、α−オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、共重合性老化防止剤等が挙げられるが、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体が好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。
カルボキシル基含有アクリルゴム(B)中のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位含有量は、好ましくは0〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%である。カルボキシル基含有アクリルゴム(B)が、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を含有することで、本発明の効果がより一層顕著なものとなる。
【0034】
カルボキシル基含有アクリルゴム(B)のムーニー粘度ML1+4(100℃)は、好ましくは10〜150、より好ましくは20〜80、特に好ましくは30〜70である。ムーニー粘度が上記範囲にあると、架橋性ゴム組成物の成形加工性が良好で十分な機械的強度を有するゴム架橋物が得られる。
【0035】
カルボキシル基含有アクリルゴム(B)の製造方法は特に限定されないが、上述したニトリル基含有共重合ゴム(A)の場合と同様であり、例えば従来公知の乳化重合法によって製造することができる。
【0036】
カルボキシル基含有アクリルゴム(B)は、好ましくは100g当たりカルボキシル基を4×10−4〜1×10−1モル、より好ましくは1×10−3〜5×10−2モル、特に好ましくは4×10−3〜3×10−2モル含有する。カルボキシル基含有アクリルゴム(B)のカルボキシル基含有量が上記範囲にあると、機械的強度及び伸びが向上する。
【0037】
本発明で用いるゴム混合物は、ニトリル基含有共重合ゴム(A)40〜90重量%及びカルボキシル基含有アクリルゴム(B)60〜10重量%からなる。
ニトリル基含有共重合ゴム(A)とカルボキシル基含有アクリルゴム(B)の混合割合[ゴム(A)/ゴム(B)]は、重量比で、好ましくは45/55〜80/20、特に好ましくは50/50〜70/30である。ニトリル基含有共重合ゴム(A)の混合割合が多すぎると架橋物は耐候性に劣る恐れがあり、逆に少なすぎると引張り強度が低くなる可能性がある。
なお、上記ゴム混合物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他のゴム又は樹脂を含有していても良い。その他のゴム又は樹脂としては、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。上記ゴム混合物中のその他のゴムの含有量は、好ましくは30重量%以下、より好ましくは15重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
【0038】
本発明のゴム組成物は、上記ゴム混合物100重量部に対して、平均粒径20μm以下のケイ酸マグネシウム(C)を5〜200重量部含有する。
ケイ酸マグネシウム(C)の平均粒径は、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。ケイ酸マグネシウム(C)の平均粒径を上記範囲にすることで、耐オゾン性に優れ、ガソリン透過性が小さく、かつガソリン沈殿が少ないゴム架橋物が得られ易くなる。なお、上記平均粒径は、X線透過式粒度分布測定装置によって測定して求めた値である。
【0039】
ケイ酸マグネシウム(C)は、通常、二酸化ケイ素と酸化マグネシウムとが主成分であり、pH8〜10、比重2.5〜3.0のものが好適に用いられる。
粒子構造は扁平のものが好ましく、比表面積は15〜30mm/gのものが好ましい。
また、上記ケイ酸マグネシウム(C)は、アスペクト比が、好ましくは2〜100、より好ましくは3〜60、特に好ましくは4〜40のものである。アスペクト比が小さすぎると得られるゴム架橋物の耐油性が低下するおそれがあり、逆に、大きすぎると架橋性ニトリルゴム組成物の加工性が損なわれる可能性がある。
なお、ケイ酸マグネシウム(C)は、含水ケイ酸マグネシウムを粉砕、分級したうえ焼成したものが好適に用いられる。
【0040】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物におけるケイ酸マグネシウム(C)の含有量は、上記ゴム混合物100重量部に対して、好ましくは10〜150重量部、より好ましくは20〜120重量部である。ケイ酸マグネシウムの含有量が少なすぎると得られるゴム架橋物はガソリン透過性が大きくなったり、耐サワーガソリン性が不十分になったりするおそれがあり、逆に、含有量が多すぎるとゴム中への分散が不均一になる可能性がある。
【0041】
上記ケイ酸マグネシウムとしては、製品名「ミストロンベーパー」(ミストロン社製)、製品名「ミストロンCB」(ミストロン社製)、製品名「ハイトロン」竹原化学工業社製、製品名「シムゴン」(日本タルク社製)などが挙げられる。
【0042】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、上記ゴム混合物が有するカルボキシル基1モルに対して0.05〜3モルのポリアミン系架橋剤(D)を含有してなる。
ポリアミン系架橋剤(D)の使用量は、上記ゴム混合物が有するカルボキシル基1モルに対して、好ましくは0.07〜2モル、特に好ましくは0.1〜2モルである。ポリアミン系架橋剤(D)の使用量が上記範囲にある場合に、耐オゾン性に優れ、ガソリン透過性が小さく、かつガソリン沈殿が少ないゴム架橋物が得られ易くなる。
【0043】
ポリアミン系架橋剤(D)としては、(1)2つ以上のアミノ基を有する化合物、または(2)架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるもの、であれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(−CONHNHで表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物が好ましい。その具体例として、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物などの脂肪族多価アミン類;4,4−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、4,4−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4−ジアミノベンズアニリド、4,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミンなどの芳香族多価アミン類;イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、ナフタレン酸ジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタミン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ブラッシル酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、アセトンジカルボン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ジヒドラジド、アコニット酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジドなどの多価ヒドラジド類;が挙げられるが、これらの中でもヘキサメチレンジアミンカーバメート、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン及びアジピン酸ジヒドラジドが好ましく、アジピン酸ジヒドラジドが特に好ましい。なお、上記ポリアミン系架橋剤(D)は、1種単独で用いても、2種以上を併用して用いても良い。
【0044】
本発明の架橋性ゴム組成物には、その他必要に応じて架橋促進剤、老化防止剤、架橋助剤、スコーチ防止剤、充填剤、補強剤、可塑剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤などの添加剤を含有してもよい。
【0045】
架橋促進剤に限定はないが、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩などが好ましい。
グアニジン化合物としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−o−トリルグアニジンなどが挙げられる。イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。第四級オニウム塩としては、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトル−n−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。第三級ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。
弱酸のアルカリ金属塩としては、リン酸、炭酸などの無機弱酸のナトリウムもしくはカリウム塩やステアリン酸、ラウリン酸などの有機弱酸のナトリウムもしくはカリウム塩が挙げられる。
【0046】
老化防止剤としては、フェノール系、アミン系、リン酸系などの老化防止剤を使用することができる。フェノール系の代表例としては、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)などがあり、アミン系の代表例としては、4,4−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなどが挙げられる。
【0047】
充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレーなどが使用することができる。これらにはシラン系カップリング剤などを配合することができる。
【0048】
架橋性ニトリルゴム組成物の調製方法は特に限定されず、一般的なゴム組成物の調製方法で調製すればよく、通常、架橋剤及び熱に不安定な架橋促進剤などを除いた成分をバンバリーミキサ、インターミキサ、ニーダなどの混合機で一次混練し、次いでオープンロールなどに移して架橋剤等を加えて二次混練する。
【0049】
架橋性ニトリルゴム組成物のムーニー粘度ML1+4(100℃)(コンパウンドムーニー)は、好ましくは10〜150、より好ましくは20〜120、特に好ましくは30〜100である。ムーニー粘度がこの範囲にあると成形加工性に優れる。
【0050】
調製された架橋性ニトリルゴム組成物を架橋して本発明のゴム架橋物を得るには、所望の成形品形状に対応した成形機、例えば押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、架橋反応によりゴム架橋物としての形状を固定化する。予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、好ましくは10〜200℃、より好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、好ましくは100〜200℃、より好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、好ましくは1分〜24時間、より好ましくは2分〜1時間である。
【0051】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0052】
本発明のゴム架橋物は、耐オゾン性に優れ、ガソリン透過性が小さく、かつガソリン沈殿が少ない。従って、本発明のゴム架橋物は、単一層のホースのほか、二層以上の積層体からなるホースなどとしても好適に利用され、フューエルホース、フィラーホース、ベントホース及びブリーザーホース等の燃料系ホースとして特に有用である。
【実施例】
【0053】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記述において「部」は、特に断わりのない限り重量基準である。
試験、評価は下記によった。
(1)カルボキシル基含有量
ゴムのカルボキシル基含有量は、ゴムを溶解した含水テトラヒドロフラン溶液を、水酸化カリウムの0.02Nエタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬として中和滴定し、ゴム100gに対するカルボキシル基の数(モル数)を求めた。
(2)ムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕
ニトリルゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー)及び架橋性ニトリルゴム組成物のムーニー粘度(コンパウンドムーニー)をJIS K6300に従って測定した。
(3)常態物性(引張強さ、伸び)
架橋性ニトリルゴム組成物を縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、150℃で20分間、プレス圧10MPaで架橋して試験片を作製し、JIS K6251に従い、ゴム架橋物の引張強さおよび伸びを測定した。
(4)常態物性(硬さ)
上記(3)と同様にして得たシート状ゴム架橋物を用いて、JIS K6253に従い、デュロメータ硬さ試験機タイプAを用いて架橋物の硬さを測定した。
(5)耐オゾン性試験
上記(3)と同様にして得たシート状ゴム架橋物を用いて、JIS K6259に準じて、40℃、オゾン濃度50pphm、40%伸長で、72時間置いた後の表面状態を評価した。なお、評価は、NC(クラックの発生が認められない)、C(クラックが認められる)で表記した。
(6)ガソリン透過試験
試験用燃料油CE−20(容積比:イソオクタン/トルエン/エタノール=40/40/20)を用いてアルミカップ法により、ガソリン透過量を測定した。すなわち、100ml容量のアルミニウム製のカップに50mlの試験用燃料油CE−20を入れ、これに直径61mmの円板状に切り取った厚さ2mmの上記(3)と同様にして得たシート状ゴム架橋物で蓋をし、締め具で該試験片によりアルミカップ内外を隔てる面積が25.50cmになるように調整し、該アルミカップを23℃の恒温槽内にて放置し、24時間毎に重量測定することにより、24時間毎の試験用燃料油の透過量を測定し、その最大値をガソリン透過量P(単位:g・mm/m・day)とした。ガソリン透過量が少ない程、耐ガソリン透過性に優れる。
(7)ガソリン沈殿試験
上記(3)と同様にして得たシート状ゴム架橋物を10mm角に細かく切断したゴム片18gを、亜鉛板と銅板と共に、75mlの試験用燃料油(容積比:イソオクタン/トルエン=40/60)に、40℃の条件下で70時間浸漬した。浸漬後、メッシュ網を用いて、ゴム片だけを取り除き、残った試験油を室温になるまで放置した後、1000rpmで30分間遠心分離を行い、沈殿を確認した。なお、評価は、目視による沈殿の有無で表記した。
【0054】
(製造例1)ニトリル基含有共重合ゴム(A)(重合体a)の製造例
温度計、攪拌装置を備えた重合反応器に、イオン交換水200部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部、アクリロニトリル56部、イタコン酸モノ−n−ブチル3部及び分子量調整剤のt−ドデシルメルカプタン0.7 部をこの順に仕込み、減圧による脱気及び窒素置換を3 回繰り返して酸素を十分に除去した後、ブタジエン41部を仕込んだ。反応器を5℃に保ち、重合触媒のクメンハイドロパーオキサキド0.1 部及び硫酸第一鉄0.01部を仕込み、攪拌しながら16時間乳化重合を行った。
重合転化率80%の時点で重合停止剤のハイドロキノン0.1部を添加して重合反応を停止した後、ロータリーエバポレータを用いて水温60℃にて残留単量体を除去し、アクリロニトリル−ブタジエン−イタコン酸モノn−ブチル共重合体ゴムラテックス(固形分濃度30%)を得た。得られたニトリル基含有共重合ゴムラテックスを塩化カルシウム水溶液に注いで重合体クラムの水分散液とし、この水分散液を脱液した後、金網でろ過して、次いで水と混合し、さらにろ過して回収する洗浄操作を計2回行ってから乾燥し、ニトリル基含有共重合ゴム(A)(重合体a)を得た。重合体aの組成はアクリロニトリル単位45%、ブタジエン単位52.4%及びイタコン酸モノn−ブチル単位2.6%であり、該ゴム100g当たりのカルボキシル基含有量は0.015モル、ムーニー粘度ML1+4(100℃)は60、Tgは−20℃であった。
【0055】
(製造例2)カルボキシル基含有アクリルゴム(B)(重合体b)の製造例
反応容器に、イオン交換水150部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0 部、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.3部、アクリル酸2−メトキシエチル78部、アクリロニトリル10部、アクリル酸エチル10部、フマル酸モノn−ブチル2部及びt−ドデシルメルカプタン0.01部を仕込み、攪拌しながら、温度80℃ で12時間反応させて重合を停止した。得られた共重合体ラテックスの固形分濃度は39%であり、重合転化率は98%であった。
このラテックスを製造例1と同様にして洗浄、乾燥してカルボキシル基含有アクリルゴム(B)(重合体b)を得た。
重合体bの組成は、アクリル酸2−メトキシエチル単位79.7%、アクリロニトリル単位8.5%、アクリル酸エチル単位10%及びフマル酸モノn−ブチル単位1.8%であり、該ゴム100g当たりのカルボキシル基含有量は0.01モル、ムーニー粘度ML1+4(100℃)は40、Tgは0℃であった。
【0056】
実施例1
重合体aを50部、重合体bを50部、HAFカーボンブラック(シースト3、東海カーボン社製)75部、ケイ酸マグネシウム(ミストロンベーパー、日本ミストロン社製、平均粒径2μm、アスペクト比12)30部、アジピン酸ジブチルジグリコール(アデカサイザーRS107、ADEKA社製)30部及びステアリン酸1部をバンバリーミキサーを用いて混練し、続いてこの混合物をオープンロールに移して、アジピン酸ジヒドラジド(ADH、日本ヒドラジン工業社製、ポリアミン系架橋剤)0.7部及びジ−o−トリルグアニジン(ノクセラーDT、大内新興社製)4部を50℃で混練して架橋性ニトリルゴム組成物を調整した。この架橋性ニトリルゴム組成物のコンパウンドムーニー粘度を測定し、また該架橋性ニトリルゴム組成物を架橋して得たゴム架橋物を用いて、常態物性(引張強さ、伸び、硬さ)、耐オゾン性試験、ガソリン透過試験、ガソリン沈殿試験を実施した。その結果を表1に記す。
【0057】
実施例2
実施例1において、ケイ酸マグネシウムの量を30部から50部に変えた他は実施例1と同様に行って架橋性ニトリルゴム組成物を調製し、実施例1と同様の項目について試験を実施した。その評価した結果を表1に記す。
【0058】
比較例1
実施例1において、ケイ酸マグネシウムを配合しなかった他は実施例1と同様に行って架橋性ニトリルゴム組成物を調製し、実施例1と同様の項目について試験を実施した。その評価した結果を表1に記す。
【0059】
比較例2
極高ニトリルゴム{ゴム中のアクリロニトリル単位含有量46重量%、ムーニー粘度〔ML1+4(100℃)95〕70部、塩化ビニル樹脂(平均重合度800)30部、FEFカーボンブラック(旭#60、旭カーボン社製)45部、アジピン酸ジブチルジグリコール(アデカサイザーRS107、ADEKA社製)30部、酸化亜鉛(亜鉛華1号、正同化学社製)5部及びステアリン酸1部ををバンバリーミキサーを用いて混練し、続いてこの混合物をオープンロールに移して、硫黄(325メッシュ通過品)0.3部、テトラメチルチウラムジスルフィド(ノクセラーTT、大内新興社製)1.5部及びN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーCZ、大内新興社製)1.5部を50℃で混練して架橋性ニトリルゴム組成物を調整し、実施例1と同様の項目について試験を実施した。その評価した結果を表1に記す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1が示すように、特定のケイ酸マグネシウムを含有しない点で、本発明の要件を欠く比較例1においては、ガソリン透過性が悪化した。
また、ニトリルゴム/ポリ塩化ビニル樹脂のポリマー混合物を硫黄で架橋して得たゴム架橋物は、ガソリン沈殿が見られた(比較例2)
これに対し、本発明の要件を満たす架橋性ゴム組成物の場合(実施例1及び2)は、耐オゾン性に優れ、ガソリン透過性が小さく、かつガソリン沈殿が少ないゴム架橋物が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有するニトリル基含有共重合ゴム(A)40〜90重量%及びカルボキシル基含有アクリルゴム(B)60〜10重量%からなるゴム混合物100重量部に対して、平均粒径20μm以下のケイ酸マグネシウム(C)5〜200重量部を含有し、前記ゴム混合物が有するカルボキシル基1モルに対して0.05〜3モルのポリアミン系架橋剤(D)を含有してなる架橋性ニトリルゴム組成物。
【請求項2】
前記ニトリル基含有共重合ゴム(A)が、100g当たりカルボキシル基を2×10−3〜1×10−1モル含有するものである請求項1に記載の架橋性ニトリルゴム組成物。
【請求項3】
前記アクリルゴム(B)が、100g当たりカルボキシル基を4×10−4〜1×10−1モル含有するものである請求項1又は2に記載の架橋性ニトリルゴム組成物。
【請求項4】
前記アクリルゴム(B)が、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の架橋性ニトリルゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項6】
燃料ホースである請求項5記載のゴム架橋物。

【公開番号】特開2008−222891(P2008−222891A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64408(P2007−64408)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】