説明

架橋樹脂接合体の製造方法及び架橋樹脂体用接着剤

【課題】クロロホルムに対する膨潤度が50以下である少なくとも1体の架橋樹脂体から接着強度に優れた架橋樹脂接合体を製造する方法を提供すること。また、クロロホルムに対する膨潤度が50以下である架橋樹脂体を接合するための接着剤を提供すること。
【解決手段】クロロホルムに対する膨潤度が50以下である少なくとも1体の架橋樹脂体を、塩素系炭化水素を含む溶媒に非架橋樹脂を溶解させてなる接着剤で接合することを特徴とする架橋樹脂接合体の製造方法、及び、クロロホルムに対する膨潤度が50以下である少なくとも1体の架橋樹脂体を接合するための架橋樹脂体用接着剤であって、塩素系炭化水素を含む溶媒に非架橋樹脂を溶解させてなる架橋樹脂体用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋樹脂体を接着剤で接合する架橋樹脂接合体の製造方法に関する。また、架橋樹脂体用の接着剤にも関係している。
【背景技術】
【0002】
2体以上の接合体が接合されてなる樹脂接合体や、1体の樹脂体が例えば折り曲げ接合されてなる樹脂接合体は広く知られている。かかる樹脂接合体の製造方法としては、例えば、塩素系炭化水素を含む溶媒で少なくとも1体の樹脂体を接合する所謂溶媒接着法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開昭56−95694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ある架橋樹脂体を前記溶媒接着法により接合した場合、必ずしも充分な接着強度が得られないことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、クロロホルムに対する膨潤度が50以下である少なくとも1体の架橋樹脂体を接合する場合においては、該架橋樹脂体を、塩素系炭化水素を含む溶媒に非架橋樹脂を溶解させてなる接着剤で接合することにより、充分な接着強度を有する架橋樹脂接合体を製造しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、クロロホルムに対する膨潤度が50以下である少なくとも1体の架橋樹脂体を、塩素系炭化水素からなる溶媒に非架橋樹脂を溶解させてなる接着剤で接合することを特徴とする架橋樹脂接合体の製造方法を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、クロロホルムに対する膨潤度が50以下である少なくとも1体の架橋樹脂体を接合するための架橋樹脂体用接着剤であって、塩素系炭化水素を含む溶媒に非架橋樹脂を溶解させてなる架橋樹脂体用接着剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クロロホルムに対する膨潤度が50以下である少なくとも1体の架橋樹脂体から接着強度に優れた架橋樹脂接合体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では、クロロホルムに対する膨潤度が50以下である架橋樹脂体を接合する。ここでいうクロロホルムに対する膨潤度は、以下の手順で求められる。すなわち、まず、架橋樹脂体0.1gを、30mlのクロロホルムに、密閉下、20℃、72時間浸した後、該樹脂体を取り出し、該樹脂体に吸収されたクロロホルムの体積を測定する。次に、前記樹脂体に吸収されたクロロホルムの体積をクロロホルムに浸す前の架橋樹脂体の体積で割ることにより、クロロホルムに対する膨潤度が算出される。本発明における架橋樹脂体の膨潤度は、30以下であるのが好ましく、15以下であるのがより好ましい。該膨潤度が50を越えると、架橋樹脂体の耐熱性や耐薬品性の点で充分でないことがある。一方、架橋樹脂体の膨潤度の下限については、特に制限はないが、通常1以上であり、好ましくは3以上である。
【0010】
本発明では、少なくとも1体の前記架橋樹脂体を特定の接着剤で接合する。例えば、2体以上の架橋樹脂体を特定の接着剤で接合してもよいし、1体の架橋樹脂体を折り曲げる等した後、特定の接着剤で接合してもよい。また、2体以上の架橋樹脂体を使用する場合、これら架橋樹脂体は、クロロホルムに対する膨潤度が50以下であれば、互いに同一組成の架橋樹脂体であってもよく、それぞれ異なる組成の架橋樹脂体であってもよい。該架橋樹脂体としては、架橋構造を有するメタクリル樹脂体、架橋構造を有するポリオレフィン樹脂体、架橋構造を有するポリスチレン樹脂体、架橋構造を有するフェノール架橋体、架橋構造を有するポリエステル樹脂体、架橋構造を有するエポキシ樹脂体等が挙げられ、中でも、架橋構造を有するメタクリル樹脂体が有利に採用される。
【0011】
前記架橋構造を有するメタクリル樹脂体とは、メタクリル酸メチルを主体とする単官能単量体にラジカル重合可能な二重結合を2個以上有する多官能単量体を共重合させることにより得られる橋かけ構造(架橋構造)を有するものである。
【0012】
ここでいうメタクリル酸メチルを主体とする単官能単量体は、メタクリル酸メチルを50重量%以上、好ましくは85重量%以上含むものであり、メタクリル酸メチルのほかに、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単官能単量体を含んでもよい。メタクリル酸メチル以外の単官能単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニルのようなアクリル酸エステル類;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニルのようなメタクリル酸エステル類;メタクリル酸、無水マレイン酸、スチレン、シクロヘキシルマレイミド、アクリロニトリル等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上が含まれていてもよい。
【0013】
ラジカル重合可能な二重結合を分子内に2個以上有する多官能単量体としては、例えば、モノエチレングリコールジアクリレート、モノエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ノナンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、フタル酸ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)エステル、アリルメタクリレート等が挙げられる。中でも、モノエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及びアリルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体が好ましい。
【0014】
架橋構造を有するメタクリル樹脂体としては、メタクリル酸メチルを主体とする単官能単量体99.99〜80重量部とラジカル重合可能な二重結合を分子内に2個以上有する多官能単量体0.01〜20重量部とが重合してなる架橋樹脂体が好ましく、メタクリル酸メチルを主体とする単官能単量体99.99〜90重量部とラジカル重合可能な二重結合を分子内に2個以上有する多官能単量体0.01〜10重量部とが重合してなる架橋樹脂体がより好ましく、メタクリル酸メチルを主体とする単官能単量体99.95〜97重量部とラジカル重合可能な二重結合を分子内に2個以上有する多官能単量体0.05〜3重量部とが重合してなる架橋樹脂体がさらに好ましい。多官能単量体が少なすぎると架橋樹脂体の耐熱性や耐薬品性の点で充分でないことがあり、多官能単量体が多すぎると架橋樹脂接合体の接着強度の点で充分でないことがある。
【0015】
架橋樹脂体として架橋構造を有するメタクリル樹脂体を使用する場合、その製造方法としては、従来公知の方法が採用でき、好ましくは注型重合法(キャスト重合法)が採用される。ここでいう注型重合法としては、メタクリル酸メチルを主体とする単官能単量体またはその部分重合体に、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に2個以上有する多官能単量体を所定量混合して溶解し、重合開始剤、必要に応じてその他添加剤を添加し、混合した後、所望の大きさのセルに注入して重合する方法が挙げられる。セルとしては、2枚のガラス板の周辺をガスケットでシールしてなるガラスセル、またはステンレススチールのごとき金属製の2枚のエンドレスベルトをガスケットでシールしてなる連続スチールセル等を用いることができる。
【0016】
重合開始剤はアゾ化合物、過酸化物等の周知のラジカル重合開始剤、或いはラジカル重合開始剤と促進剤よりなる所謂レドックス系開始剤等を用いることができる。重合反応は、通常、常温から150℃である。また、前記添加剤として、発明の効果を損なわない範囲において、離型剤、光拡散剤、染料、顔料、補強剤、充填剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、フィラー等を加えることも可能である。
【0017】
前記架橋樹脂体の形状には特に制限はないが、板状、棒状の形状が好適に用いられる。該樹脂体の厚さには特に制限はないが、例えば1〜60mmであり、平板形状でも熱成形加工により所望の形状としたものを使用することができる。
【0018】
本発明では、塩素系炭化水素を含む溶媒に非架橋樹脂を溶解させてなる接着剤を使用する。塩素系炭化水素としては、例えば、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素の如き塩素化メタン、クロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタンの如き塩素化エタン等が挙げられ、必要に応じてこれらの2種以上を用いることもできる。中でも、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムが好ましく、また、これらの2種以上の化合物が混合されてなる混合液がより好ましい。
【0019】
塩素系炭化水素を含む溶媒は、前記塩素系炭化水素を主体とした溶媒であるが、接着剤中の非架橋樹脂の溶解性や接着剤の粘度を調整するために、或いは架橋樹脂体の接合部の膨潤度を調整するために、塩素系炭化水素以外の溶媒を含んでもよい。かかる溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等が挙げられ、また、必要に応じてこれらの2種以上を用いてもよい。
【0020】
非架橋樹脂としては、前記溶媒に溶解しうる非架橋樹脂が採用されるが、非架橋のメタクリル樹脂が好ましい。このメタクリル樹脂は、メタクリル酸メチルを主体とする単官能単量体が重合してなる樹脂であることができる。ここでいうメタクリル酸メチルを主体とする単官能単量体は、メタクリル酸メチルを50重量%以上、好ましくは85重量%以上含むものであり、メタクリル酸メチルのほかに、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単官能単量体を含んでもよい。メタクリル酸メチル以外の単官能単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニルのようなアクリル酸エステル類;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニルのようなメタクリル酸エステル類;メタクリル酸、無水マレイン酸、スチレン、シクロヘキシルマレイミド、アクリロニトリル等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上が含まれていてもよい。
【0021】
前記接着剤中の非架橋樹脂の含有量は、接着剤総量に対し、通常0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%である。該含有量が低すぎると架橋樹脂接合体において充分な接着強度が得られず、該含有量が高すぎると高粘度になるため作業性の観点から好ましくない。
【0022】
本発明の接合方法としては、例えば、刷毛、注射器、ディスペンサーなどにより接着剤を架橋樹脂体の接合部に塗布したり、予め架橋樹脂体の接合部同士をある程度接触させておき、次いでその接合部間に接着剤を注入したりする方法が挙げられる。尚、接合部をフライス加工などによって平滑にしたり、サンディングなどによって粗してもよい。
【0023】
架橋樹脂体を接合した後、乾燥して接着剤の溶媒を除去するのが好ましい。尚、より強固な接着強度を発現する目的で接着剤中の塩素系炭化水素を含む溶媒を乾燥させる際に、各架橋樹脂体に荷重をかけながら乾燥させてもよい。
【0024】
また、接合後の架橋樹脂接合体をアニール処理するのが好ましい。アニール処理は、通常、前記架橋樹脂体の荷重たわみ温度(JISK7191−2(A法)に準ずる)から20℃程度差し引いた温度で行われる。また、アニール処理の時間は、通常1〜10時間である。アニール処理に使用する装置は特に限定されないが、例えば、熱風循環型オーブン等の加熱炉が用いられる。なお、このアニール処理は、例えば、加熱炉の温度(周囲温度)を予め所定の温度にしておいて、ここに上記架橋樹脂接合体を導入することにより行ってもよいし、所定の温度未満の加熱炉に上記架橋樹脂接合体を導入し、次いで加熱炉の温度を所定の温度に昇温して行ってもよい。
【0025】
かくして、前記所定の架橋樹脂体から接着強度に優れた架橋樹脂接合体を得ることができる。この架橋樹脂接合体は、例えば、看板や建材等の各種用途に用いることができる。
【0026】
次に、前記架橋樹脂接合体の接合形式について、図1及び図2をもとに説明する。図1は、2体の前記架橋樹脂体(2a、2b)をL字形状で接合した架橋樹脂接合体1を模式的に示す断面図である。該架橋樹脂接合体1は、架橋樹脂体2aと架橋樹脂体2bとの間に設けられた接合部に接着剤3を注入した後、乾燥して得られたものであることができる。
【0027】
図2は、2体の前記架橋樹脂体(2a、2b)を貼り合わせて接合した架橋樹脂接合体1を模式的に示す断面図である。該架橋樹脂接合体1は、架橋樹脂体2aと架橋樹脂体2bとの間にスペーサー(図示せず)等により所定の間隔を保って配置された接合部に、接着剤3を注入した後、乾燥して得られたものであるか、又は、スペーサーを用いずに接合部に接着剤3を注入した後、乾燥して得られたものであることができる。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、得られた架橋樹脂接合体における各測定は、以下のとおり実施した。
【0029】
(1)膨潤度測定法
容器内に、架橋樹脂0.1gとクロロホルム(和光純薬工業株式会社製 1級試薬)30mlを入れた後、密栓し、20℃で72時間放置した。その後、該架橋樹脂を取り出し、重量を測定し、増加した重量に相当するクロロホルムの体積をクロロホルムに浸す前の架橋樹脂の体積で割った値をクロロホルムに対する膨潤度とした。
【0030】
(2)架橋樹脂接合体の製造及び接着強度の測定
(2−1)架橋樹脂接合体の製造〔図3及び図4参照〕
ア:架橋構造を有するメタクリル樹脂体を30mm×60mmにチップソーで切断した。
イ:L字形状で接合する端面(30mm側;図3中の4a)は、フライス盤でその表面を切削した。
ウ:図3で模式的に示すように、架橋構造を有するメタクリル樹脂体2bを下板として配置し、該樹脂体の接合部4bに、接着剤を適量付着させた後、架橋構造を有するメタクリル樹脂体2aを上板として接合し、23℃で2時間保持した。その後、更に、23℃、50%RHで5日間保持し、図4で模式的に示す架橋樹脂接合体1を得た。
【0031】
(2−2)接着強度の測定〔図5参照〕
図5で模式的に示すように、島津製作所製オートグラフ(ストログラフR200、ロードセル98N)を用いて、クロスヘッドスピード200mm/minでL字形状に接合された架橋樹脂接合体1における接着強度を測定した。尚、接着強度(σ)は下式により算出した。
【0032】

【0033】
式中、σは接着強度(kg・cm/cm)、Fは破壊時の荷重(kg)、Lは架橋樹脂接合体1の辺長さ(cm)〔図5に示す。〕、及び、Sは架橋樹脂接合体1の接合部の面積(cm)を示す。
【0034】
実施例1
メタクリル酸メチル99.9重量部、アリルメタクリレート0.1重量部及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.08重量部を混合した。この混合物を2枚のガラス板と軟質ポリ塩化ビニル製ガスケットから構成される空隙の間隔が5mmのセルに流し込み、55℃にて12時間、次いで120℃にて2時間加熱し、重合させ、厚み5mmの架橋構造を有するメタクリル樹脂体を得た。この樹脂体の膨潤度は11であった。
得られたメタクリル樹脂体、並びに、1,2−ジクロロエタン22.5重量部及びジクロロメタン67.5重量からなる溶媒に非架橋のメタクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル 住友化学製スミペックスLG)10.0重量部を溶解させてなる接着剤を使用して、L字形状の架橋樹脂接合体1を製造した。その接着強度を表1に示す。
【0035】
実施例2
実施例1における接着剤にかえ、1,2−ジクロロエタン17.5重量部及びジクロロメタン52.5重量部からなる溶媒に非架橋のメタクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル 住友化学製スミペックスLG)30.0重量部を溶解させてなる接着剤を使用した以外は、実施例1と同様にL字形状の架橋樹脂接合体1を製造した。その接着強度を表1に示す。
【0036】
比較例1
実施例1における接着剤にかえ、ジクロロメタン100重量部からなる溶媒を接着剤として使用した以外は、実施例1と同様にL字形状の架橋樹脂接合体1を製造した。その接着強度を表1に示す。
【0037】
実施例3
メタクリル酸メチル99.8重量部、アリルメタクリレート0.2重量部及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.08重量部を混合した。この混合物を2枚のガラス板と軟質塩化ビニル製ガスケットから構成される空隙の間隔が5mmのセルに流し込み、55℃にて12時間、次いで120℃にて2時間加熱し、重合させ、厚み5mmの架橋構造を有するメタクリル樹脂体を得た。この樹脂体の膨潤度は7であった。
得られたメタクリル樹脂体、並びに、1,2−ジクロロエタン22.5重量部及びジクロロメタン67.5重量部からなる溶媒に非架橋のメタクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル 住友化学製スミペックスLG)10.0重量部を溶解させてなる接着剤を使用して、L字形状の架橋樹脂接合体1を製造した。その接着強度を表1に示す。
【0038】
実施例4
実施例3における接着剤にかえ、1,2−ジクロロエタン17.5重量部及びジクロロメタン52.5重量部からなる溶媒に非架橋のメタクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル 住友化学製スミペックスLG)30.0重量部を溶解させてなる接着剤を使用した以外は、実施例3と同様にL字形状の架橋樹脂接合体1を製造した。その接着強度を表1に示す。
【0039】
比較例2
実施例3における接着剤にかえ、ジクロロメタン100重量部からなる溶媒を接着剤として使用した以外は、実施例3と同様にL字形状の架橋樹脂接合体1を製造した。その接着強度を表1に示す。
【0040】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、2体の架橋樹脂体(2a、2b)をL字形状で接合した架橋樹脂接合体1を模式的に示す断面図である。
【図2】図2は、2体の架橋樹脂体(2a、2b)を貼り合わせて接合した架橋樹脂接合体1を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、架橋樹脂体2bの接合部4bに接着剤3を付着させた後、接合部4bに架橋樹脂体2aを接合する態様を示す模式図である。
【図4】図4は、2体の架橋樹脂体(2a、2b)をL字形状で接合した架橋樹脂接合体1を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、L字形状の架橋樹脂接合体1の接着強度を測定する態様を示す模式図である。
【符号の説明】
【0042】
1 架橋樹脂接合体
2a、2b 架橋樹脂体
3 接着剤
4a、4b 接合部
5 オートグラフ本体
6a〜6c クランプ
7 クランプを固定する固定部
8 架橋樹脂接合体を固定する固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロホルムに対する膨潤度が50以下である少なくとも1体の架橋樹脂体を、塩素系炭化水素を含む溶媒に非架橋樹脂を溶解させてなる接着剤で接合することを特徴とする架橋樹脂接合体の製造方法。
【請求項2】
前記架橋樹脂体が、メタクリル酸メチルを主体とする単官能単量体99.99〜80重量部とラジカル重合可能な二重結合を分子内に2個以上有する多官能単量体0.01〜20重量部とが重合してなる架橋樹脂体である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ラジカル重合可能な二重結合を分子内に2個以上有する多官能単量体が、モノエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及びアリルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
非架橋樹脂が、メタクリル樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
塩素系炭化水素が、ジクロロメタン、ジクロロエタン及びクロロホルムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
塩素系炭化水素が、ジクロロメタン、ジクロロエタン及びクロロホルムからなる群より選ばれる2種以上の化合物が混合されてなる混合液である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
クロロホルムに対する膨潤度が50以下である少なくとも1体の架橋樹脂体を接合するための架橋樹脂体用接着剤であって、塩素系炭化水素を含む溶媒に非架橋樹脂を溶解させてなる架橋樹脂体用接着剤。
【請求項8】
前記架橋樹脂体が、メタクリル酸メチルを主体とする単官能単量体99.99〜80重量部とラジカル重合可能な二重結合を分子内に2個以上有する多官能単量体0.01〜20重量部とが重合してなる架橋樹脂体である請求項7に記載の架橋樹脂体用接着剤。
【請求項9】
ラジカル重合可能な二重結合を分子内に2個以上有する多官能単量体が、モノエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート及びアリルメタクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体である請求項8に記載の架橋樹脂体用接着剤。
【請求項10】
非架橋樹脂が、メタクリル樹脂である請求項7〜9のいずれかに記載の架橋樹脂体用接着剤。
【請求項11】
塩素系炭化水素が、ジクロロメタン、ジクロロエタン及びクロロホルムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項7〜10のいずれかに記載の架橋樹脂体用接着剤。
【請求項12】
塩素系炭化水素が、ジクロロメタン、ジクロロエタン及びクロロホルムからなる群より選ばれる2種以上の化合物が混合されてなる混合液である請求項7〜10のいずれかに記載の架橋樹脂体用接着剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−138338(P2010−138338A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318136(P2008−318136)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】