説明

架橋(メタ)アクリル系重合体粒子、その製造方法及び光拡散性樹脂組成物

【課題】高温及び/又は長い滞留時間の条件下で成形しても分解生成物の発生を十分抑制できる架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】(メタ)アクリル系モノマーと多官能性モノマーとを含むモノマー混合物を、特定種かつ特定量のリン酸エステル塩と特定種かつ特定量の多価メルカプタン化合物との存在下で乳化重合させることで架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得ることにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子、その製造方法及び光拡散性樹脂組成物に関する。本発明により得られる架橋(メタ)アクリル系重合体粒子は、例えば照明カバー用の光拡散剤、液晶表示装置の光拡散板のような光学用フィルムを構成する光拡散剤として好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
従来、照明カバー、液晶表示装置の光拡散板において、照明の光源、液晶パネルのバックライトから発せられる光を均一に拡散させることが望まれている。光を拡散させる方法としては、仕上げ加工の際に加熱・加圧によって表面に凹凸をつける、いわゆるエンボス加工を施した光拡散シートを用いる方法や、酸化チタン、ガラスビーズ、シリカ等の無機粉体を含有した光拡散層を表面に備えた光拡散板を用いる方法や、(メタ)アクリル系重合体粒子を含む光拡散層を表面に備えた光拡散板を用いる方法等がある。この中でも重合体粒子を用いた光拡散板は、透明性と光拡散性が両立しており、優れた光拡散板であることが知られている。
【0003】
重合体粒子を含む光拡散層としては、ポリカーボネート、ポリスチレン等の透明基材樹脂に、(メタ)アクリル系重合体粒子を光拡散剤として含有させて得られる。(メタ)アクリル系重合体粒子は、一般に乳化重合法により形成される。
ところが、乳化重合法により形成された(メタ)アクリル系重合体粒子は、照明カバーや光拡散板への成形加工温度が高いほど、透明基材樹脂の溶融成形時に分解し、生じた分解生成物が透明基材樹脂を黄色に着色させるという問題があった。
【0004】
着色の問題を解決するために、乳化剤としてのリン酸塩の存在下で乳化重合させる方法(特開昭63−227606号公報:特許文献1、特許第3103736号公報:特許文献2、特開2003−40915号公報:特許文献3)や、酸化防止剤としてのメルカプタン化合物の存在下で乳化重合させる方法(特開平6−73106号公報:特許文献4、特開昭48−942号公報:特許文献5)、が報告されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−227606号公報
【特許文献2】特許第3103736号公報
【特許文献3】特開2003−40915号公報
【特許文献4】特開平6−73106号公報
【特許文献5】特開昭48−942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公報の方法であっても、高温(例えば、280℃以上)で(メタ)アクリル系重合体粒子を含有する樹脂組成物を成形する場合、滞留時間が長い条件下(例えば、20分間以上)で樹脂組成物を成形する場合、分解生成物の発生を十分抑制できていなかった。また、特許文献1〜3では重合体粒子のスラリーから重合体粒子を回収するために酢酸カルシウムなどの無機塩を添加し、その後、凝析した重合体粒子を水洗する必要があった。水洗を行わない場合には、重合体粒子から無機塩や乳化剤を除去できず、重合体粒子が着色したり、重合体粒子を含む樹脂組成物の諸特性が低下するという問題があった。そのため、水洗を行なわずに分解生成物の発生を抑制できる(メタ)アクリル系重合体粒子の製造方法の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、鋭意検討の結果、特定の種類及び特定の量のリン酸エステル塩と多価メルカプタン化合物の存在下で乳化重合させることにより、得られた架橋(メタ)アクリル系重合体粒子は、水洗により乳化剤を除去する必要がなく、高温及び/又は長い滞留時間の条件下で成形しても分解生成物の発生を十分抑制できていることを意外にも見出し本発明に至った。
【0008】
かくして本発明によれば、(メタ)アクリル系モノマー100重量部に対し多官能性モノマー1〜100重量部の割合で含むモノマー混合物を、リン酸エステル塩と多価メルカプタン化合物の存在下で乳化重合させることで架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得る方法であって、
前記リン酸エステル塩が、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸及び不飽和ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸のアルカリ金属塩から選択され、前記(メタ)アクリル系モノマーと多官能性モノマーとの合計100重量部に対して、0.5〜10重量部使用され、
前記メルカプタン化合物が、一般式R−(SH)x及びR−(A−SH)x(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を示し、Aは2価の有機残基を示し、xは2〜4の整数を示す)で示される化合物から選択され、前記(メタ)アクリル系モノマーと多官能性モノマーとの合計100重量部に対して、0.1〜10重量部使用されることを特徴とする架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造方法が提供される。
【0009】
更に、本発明によれば、上記方法により得られる架橋(メタ)アクリル系重合体粒子が提供される。
また、本発明によれば、透明基材樹脂100重量部に対し上記架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を0.01〜30重量部の割合で含む光拡散性樹脂組成物が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定の種類及び特定の量のリン酸エステル塩と多価メルカプタン化合物の存在下で乳化重合させることにより、水洗により乳化剤を除去する必要がなく、高温及び/又は長い滞留時間の条件下で成形しても分解生成物の発生を十分抑制できる架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明では、(メタ)アクリル系モノマーと多官能性モノマーとを含むモノマー混合物を、リン酸エステル塩と多価メルカプタン化合物の存在下で乳化重合させることで架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得る。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。これら単量体は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0012】
多官能性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。多官能性モノマーの使用量は、(メタ)アクリル系モノマー100重量部に対して、1〜100重量部の範囲である。使用量が1重量部未満の場合、粒子の凝集及び融着が起こるので好ましくない。また、100重量部を超える場合、やはり粒子が凝集するので好ましくない。また、より粒子の凝集及び融着を抑制する観点から、5〜100重量部の範囲であることがより好ましく、10〜80重量部の範囲であることが特に好ましい。
【0013】
(メタ)アクリル系モノマー及び多官能性モノマー以外に他のモノマーを使用してもよい。他のモノマーとしては、エチレングリコールモノ(メタ)クリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のグリコールエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体が挙げられる。これら他の単量体は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0014】
リン酸エステル塩は、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸及び不飽和ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸のアルカリ金属塩から選択される。
本発明における不飽和ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸のアルカリ金属塩は、次式で表される。
【0015】
【化1】

【0016】
ポリオキシエチレン及びポリオキシアルキレンは、オキシエチレン及びオキシアルキレン単位が、1〜60の範囲で繰り返されているものを使用できる。この範囲であれば、成形時に透明基材樹脂の分解による着色をより抑制できる。より好ましい範囲は、4〜20である。ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩及び不飽和ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩において、アルキルとしては、炭素数6〜20のアルキルが好適に使用できる。特に好ましい炭素数の範囲は、8〜18である。ポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸エステル塩において、アルキレンとしては、炭素数2〜5のアルキレンが好適に使用できる。特に好ましい炭素数の範囲は、2〜3である。また、アリール基としては、具体的には、フェニル基、ジスチレン化フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。更に、リン酸エステル塩は、モノエステル体、ジエステル体、トリエステル体のいずれでもよく、これらの混合物であってもよい。リン酸エステル塩は、ナトリウム、カルシウム等のアルカリ金属塩を通常使用できる。
【0017】
リン酸エステル塩の使用量は、(メタ)アクリル系モノマーと多官能性モノマーとの合計100重量部に対して、0.5〜10重量部の範囲であることが好ましい。使用量が0.5重量部未満の場合、透明基材樹脂に対する着色抑制効果が小さいので好ましくない。また、10重量部を超える場合、成形した樹脂組成物が着色するので好ましくない。また、より分解生成物の発生を抑制する観点から、1〜8重量部の範囲であることがより好ましく、2〜5重量部の範囲であることが特に好ましい。
【0018】
多価メルカプタン化合物は、一般式R−(SH)x及びR−(A−SH)x(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を示し、Aは2価の有機残基を示し、xは2〜4の整数を示す)で示される化合物から選択される。アリール基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。2価の有機残基としては、−(CH2OOCCH2)−、−(CH2OOCCH2CH2)−が挙げられる。具体的な多価メルカプタン化合物としては、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオグリコレート等のチオグリコレート系化合物、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート等のプロピオネート系化合物等が挙げられる。
【0019】
メルカプタン化合物の使用量は、(メタ)アクリル系モノマーと多官能性モノマーとの合計100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。使用量が0.1重量部未満の場合、透明基材樹脂に対する着色抑制効果が小さいので好ましくない。また、10重量部を超える場合、成形した樹脂組成物が着色するので好ましくない。また、より分解生成物の発生を抑制する観点から、0.2〜8重量部の範囲であることがより好ましく、0.5〜5重量部の範囲であることが特に好ましい。
【0020】
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造方法は、(メタ)アクリル系モノマーと多官能性モノマーとを含むモノマー混合物を、リン酸エステル塩と多価メルカプタン化合物の存在下で乳化重合できさえすれば特に限定されない。例えば、
・モノマー混合物、リン酸エステル塩及び多価メルカプタン化合物を同時に水性媒体に分散させた後、乳化重合させる方法、モノマー混合物及び多価メルカプタン化合物と、リン酸エステル塩及び水性媒体とを、それぞれ予め接触させ、次いで両者を混合させた後、乳化重合させる方法等の1段重合法、
・モノマーを水性媒体中で乳化重合させることで種粒子を得、次いでリン酸エステル塩を含む水性媒体中で、多価メルカプタン化合物を含むモノマー混合物を種粒子に吸収させた後、乳化重合させる2段重合法、
・2段重合法の種粒子を製造する工程を繰り返す多段重合法
等が挙げられる。これら重合法は、粒子の所望する平均粒子径に応じて適宜選択できる。なお、2段重合法及び多段重合法で作製された架橋(メタ)アクリル粒子は種粒子とモノマー混合物との相溶性が良いために単層構造を有している。
【0021】
また、重合体スラリーから架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を回収する方法としては、特に限定されないが、噴霧乾燥、凍結乾燥あるいは真空乾燥などの方法が挙げられる。
種粒子製造用のモノマーとしては、特に限定されず、上記(メタ)アクリル系モノマー、多官能性モノマー及び他のモノマーをいずれも使用できる。
水性媒体としては、特に限定されず、例えば、水、水と水溶性有機媒体(メタノール、エタノール等の低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。種粒子を製造する工程では、水性媒体は、種粒子製造用モノマー100重量部に対して、通常、100〜1000重量部使用される。
【0022】
また、種粒子の製造で使用される重合開始剤としては、特に限定されず、公知の重合開始剤をいずれも使用できる。例えば、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の過酸化物類、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、2,2−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)等のアゾ類が挙げられる。重合開始剤は、通常、種粒子製造用モノマー100重量部に対して、0.1〜5重量部使用される。また、種粒子を製造する際の重合は、50〜80℃で、2〜20時間加熱することにより実施できる。
【0023】
モノマー混合物の重合は、通常、40〜80℃で、1〜10時間加熱することにより実施でき、重合開始剤としては油溶性重合開始剤が好ましい。水溶性重合開始剤を使用した場合、重合安定性の低下が起こるため好ましくない。本発明における油溶性重合開始剤とは水への溶解性が1.0wt%以下、より好ましくは0.5wt%以下のものを指す。水への溶解性が1.0wt%以下の重合開始剤としては例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の過酸化物類、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、2,2−アゾビス−(2−メチルプロピオネート)等のアゾ類が挙げられる。重合開始剤は、通常、モノマー混合物100重量部に対して、0.01〜10重量部使用される。なお、モノマー混合物の重合に使用する水性媒体としては、特に限定されず、例えば、水、水と水溶性有機媒体(メタノール、エタノール等の低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。種粒子を製造する工程では、水性媒体は、種粒子製造用モノマー100重量部に対して、通常、100〜1000重量部使用される。
【0024】
更に、必要に応じて、水性媒体中に、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤を加えてもよい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0025】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドや、リン酸エステル系又は亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
上記界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。界面活性剤は、特に限定されないが、通常、水性媒体100重量部に対して0.1〜0.8重量部使用される。
【0026】
また、水性媒体中に、ポリビニルアルコールのような分散安定剤を加えてもよい。更に、モノマー混合物に分子量調整剤として1−オクタンチオール、1−ドデカンチオール等を加えてもよい。
本発明の方法によれば、高温及び/又は長い滞留時間の条件下で成形しても分解生成物による着色の発生を十分抑制できる架橋(メタ)アクリル系重合体粒子が提供できる。この理由を発明者は、次のように推測している。まず、リン酸エステル塩は、主に粒子の表面に位置し、上記成形条件下において、粒子を混合する透明基材樹脂が分解生成物により着色することを主として防止していると推測している。一方、メルカプタン化合物は、主に粒子の内部に位置し、粒子自体が分解することを主として防止していると推測している。このように、本発明では、分解生成物の発生の防止と、発生した分解生成物による透明基材樹脂の着色の防止とを同時に達成できるという効果を奏する。
本発明の架橋(メタ)アクリル系重合体粒子は、用途に応じて種々の平均粒径を有していてもよい。
【0027】
次に、本発明によれば、光拡散性樹脂組成物が提供される。光拡散性樹脂組成物は、透明基材樹脂と、上記架橋(メタ)アクリル系重合体粒子とを含んでいる。なお、本明細書において、透明には、半透明も含まれる。また、透明とは、所望する波長の光に対して透明であることを意味し、必ずしも全波長の光に対して透明であることを要さない。
【0028】
透明基材樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂が使用され、熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。
これらの中でも、優れた透明性が求められる場合には、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アクリル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレンが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
透明基材樹脂への上記架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の添加割合は、透明基材樹脂100重量部に対して、0.01〜30重量部であることが好ましい。0.01重量部未満の場合、光拡散性を与えにくくなることがある。30重量部より多い場合、光拡散性は得られるが光透過性が低くなることがある。より好ましい添加割合は、0.1〜10重量部である。
【0030】
上記光拡散性樹脂組成物は、透明基材樹脂と上記架橋(メタ)アクリル系重合体粒子とを一軸や二軸の押出機等で溶融混練し、次いで成形することで成形体とできる。例えば、溶融した光拡散性樹脂組成物を、Tダイ、ロールユニットを介して板状に成形してもよい。また、一軸、二軸の押出し機等で溶融した光拡散性樹脂組成物をペレット化し、射出成形やプレス成形等により板状に成形してもよい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、平均粒径、耐熱温度、色相及び全光線透過率の測定法を下記する。
(平均粒径の測定方法)
種粒子、架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の平均粒径は、ベックマンコールター社製のLS230型で測定する。具体的には、粒子0.1gと0.1%ノニオン性界面活性剤溶液10mlを投入し、ヤマト科学社製タッチミキサーTOUCHMIXER MT−31で2秒間混合する。この後、試験管を市販の超音波洗浄器であるヴェルボクリーア社製ULTRASONIC CLEANER VS−150を用いて10分間分散させる。分散させたものをベックマンコールター社製のLS230型にて超音波を照射しながら測定する。そのときの光学モデルは作製した粒子の屈折率にあわせた。
【0032】
(耐熱温度)
耐熱温度は、JIS K7120に準拠して測定される。具体的には、TGA装置(セイコーインスツルメント社製TG/DTA6200)を用いて、窒素ガス雰囲気中、40〜500℃の温度範囲と10℃/分の昇温速度とからなる条件下で、重量減少挙動を測定する。かかる重量減少挙動において、3%の重量減少が認められる温度を耐熱温度と称する。本明細書では、耐熱温度が340℃以上である場合、成形時に分解生成物の発生が抑制され、着色防止性に優れていると判断する。
【0033】
(色相)
色相は、JIS Z8701に準拠して測定し、色相は透過光の色座標で示す。具体的には、40mm間隔に設置された4mmの冷陰極管上に得られた成形体を設置する。成形体から30cm離れた位置に固定したSPECTRORADIOMETER分光放射輝度計(コニカミノルタセンシング社製CS−1000A)にて輝度及び色相x、yを測定する。この色相x、yは数値が高くなると(xy座標で右上になるほど)黄色味を帯び、数値が小さくなると(xy座標で左下になるほど)青色味を帯びていくこと表している。色相は、x値が0.0.294以下及びy値が0.281以下が好ましい。
【0034】
(全光線透過率及びヘイズ)
全光線透過率は、JISK7361によって、また、ヘイズはJISK7136によって測定される。具体的には、日本電色工業社製NHD−2000を使用して測定する。全光線透過率は、60%以上、ヘイズは99%以上である場合、液晶バックライトユニットに組み込んだときの光透過性と光拡散性のバランスが取れるため、好ましい。
【0035】
実施例1
[種粒子の製造]
攪拌機、温度計を備えた重合器にノイゲンEA−157(ミセル形成臨界濃度(C.M.C.)=0.0014wt%、第一工業製薬社製)を0.99g溶解した脱イオン水640gを入れ、そこへ予め調製しておいたメタクリル酸メチル160g、およびn−オクチルメルカプタン3gを仕込み、攪拌下に窒素置換しながら60℃まで加温した。内温を60℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加した後、12時間重合させた。得られたエマルジョンは、平均粒径は0.45μmであった。平均粒径はベックマンコールター社製のLS230型で測定した。
【0036】
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
攪拌機、温度計を備えた重合器にリン酸塩としてポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム(東邦化学社製フォスファノールLO−529)1.6gを溶解した脱イオン水560gを入れた。そこへ予め調製しておいたアクリル酸ブチル96g、エチレングリコールジメタクリレート64g、多価メルカプタン化合物として4官能のペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(淀化学社製)0.16g及び重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.8gの混合液を入れた。次いで、分散液を、T.Kホモミキサー(特殊機化工業社製)にて攪拌することにより、混合液の液滴径を5μm程度に調製した。液滴径の確認は、ベックマンコールター社製のLS230型により行った。
【0037】
更に、分散液に種粒子を含むエマルジョン40gを一括投入により加え、30℃で1時間攪拌して、種粒子に混合液を吸収させた。次いで、得られた混合物を窒素気流下で50℃、5時間加温することで重合させた後、室温(約25℃)まで冷却した。冷却後、得られたスラリーをスプレードライヤーにより噴霧乾燥させることで、平均粒径1.2μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
【0038】
[成形体の製造]
透明基材樹脂として、ポリスチレン(トーヨースチロールGP G2000C、東洋スチレン社製)100重量部と、上記架橋(メタ)アクリル系重合体粒子1重量部とを、押出器中、230℃で溶解及び混練した後、ペレット化した。得られたペレットを射出成形機(シリンダー温度230℃、滞留時間10分)で成形することにより、2mm厚、50mm×100mmの成形体を得た。
得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
実施例2
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
リン酸塩としてのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウムの添加量を4.8g、多価メルカプタン化合物としてのペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートの添加量を0.8gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径1.2μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0040】
実施例3
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
種粒子を含むエマルジョンの使用量を53gに変更し、リン酸塩をポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸ナトリウム(第一工業製薬社製プライサーフAL(中和型))に変更し、その添加量を8.0g、多価メルカプタン化合物を3官能のトリメチロールプロパントリスチオグリコレート(淀化学社製)に変更し、その添加量を1.6gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径1.1μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
実施例4
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
種粒子を含むエマルジョンの使用量を100gに変更し、リン酸塩としてのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウムの添加量を3.2g、多価メルカプタン化合物としてのペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートの添加量を12.8g、アクリル酸ブチルの添加量を144g、エチレングリコールジメタクリレートの添加量を16gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径0.9μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0042】
実施例5
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
種粒子を含むエマルジョンの使用量を53gに変更し、リン酸塩をポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸ナトリウム(第一工業製薬社製プライサーフAL(中和型))に変更し、その添加量を4.8g、多価メルカプタン化合物としてのペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートの添加量を3.2gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径1.1μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0043】
実施例6
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
種粒子を含むエマルジョンの使用量を53gに変更し、リン酸塩をポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸ナトリウム(第一工業製薬社製プライサーフAL(中和型))に変更し、その添加量を4.8g、多価メルカプタン化合物としてのペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートの添加量を8.0g、アクリル酸ブチルの添加量を80g、エチレングリコールジメタクリレートの添加量を80gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径1.1μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
実施例7
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
リン酸塩をポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸ナトリウム(第一工業製薬社製プライサーフAL(中和型))に変更し、その添加量を4.8g、多価メルカプタン化合物としてのペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートの添加量を0.8gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径1.2μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
実施例8
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
種粒子を含むエマルジョンの使用量を20gに変更し、リン酸塩としてのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウムの添加量を4.8g、多価メルカプタン化合物をトリメチロールプロパントリスチオグリコレート(淀化学社製)に変更し、その添加量を0.8gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径1.5μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
実施例9
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
リン酸塩をポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸ナトリウム(第一工業製薬社製プライサーフAL(中和型))に変更し、その添加量を3.2g、多価メルカプタン化合物を2官能のブタンジオールチオグリコレート(淀化学社製)に変更し、その添加量を0.8gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径1.2μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
実施例10
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
リン酸塩を不飽和ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム(第一工業製薬社製ニューフロンティアS−501(中和型))に変更し、その添加量を3.2g、多価メルカプタン化合物を2官能のブタンジオールビスチオグリコレート(淀化学社製)に変更し、その添加量を0.8gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径1.2μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
比較例1
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
リン酸塩としてのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウムの添加量を17.6gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径1.2μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
比較例2
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
リン酸塩をポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸ナトリウム(第一工業製薬社製プライサーフAL(中和型))に変更し、その添加量を3.2g、多価メルカプタン化合物としてのペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートの添加量を0.08gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径1.2μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0050】
比較例3
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
種粒子を含むエマルジョンの使用量を53gに変更し、リン酸塩をポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸ナトリウム(第一工業製薬社製プライサーフAL(中和型))に変更し、その添加量を0.08g、多価メルカプタン化合物としてのペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートの添加量を0.8g、アクリル酸ブチルの添加量を80g、エチレングリコールジメタクリレートの添加量を80gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径1.1μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
比較例4
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
種粒子を含むエマルジョンの使用量を53gに変更し、リン酸塩としてのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウムの添加量を6.4g、多価メルカプタン化合物としてのペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートの添加量を20.8g、アクリル酸ブチルの添加量を128g、エチレングリコールジメタクリレートの添加量を32gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径1.1μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
比較例5
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
リン酸塩をスルホン酸塩であるジ2−エチルヘキシルアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王社製ラピゾールA−80)に変更し、その添加量を4.8g、多価メルカプタン化合物としてのペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートの添加量を0.8g、アクリル酸ブチルの添加量を104g、エチレングリコールジメタクリレートの添加量を56gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径1.2μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
比較例6
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
種粒子を含むエマルジョンの使用量を100gに変更し、リン酸塩をスルホン酸塩であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王社製ネオペレックスG−15)に変更し、その添加量を4.8g、多価メルカプタン化合物としてのペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレートの添加量を0.8g、アクリル酸ブチルの添加量を112g、エチレングリコールジメタクリレートの添加量を48gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径0.9μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
比較例7
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
種粒子を含むエマルジョンの使用量を100gに変更し、リン酸塩としてのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウムの添加量を4.8g、多価メルカプタン化合物を単価メルカプタンであるチオグリコール酸オクチル(淀化学社製)に変更し、その添加量を0.8gとすること以外は、実施例1と同様にして、平均粒径0.9μmの架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得た。
[成形体の製造]
架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を使用すること以外は、実施例1と同様の条件で成形体を得た。得られた成形体の耐熱温度、色相及び全光線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
比較例8
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
アクリル酸ブチルの添加量を159g、エチレングリコールジメタクリレートの添加量を1gとすること以外は、実施例1と同様にして架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造を試みたが、粒子が凝集してしまった。
【0056】
比較例9
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
アクリル酸ブチルの添加量を72g、エチレングリコールジメタクリレートの添加量を88gとすること以外は、実施例1と同様にして架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造を試みたが、粒子が凝集してしまった。
【0057】
比較例10
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
リン酸塩をポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム(日光ケミカルズ社製NIKKOL DOP−8NV)に変更し、アクリル酸ブチルの添加量を104g、エチレングリコールジメタクリレートの添加量を56gとすること以外は、実施例1と同様にして架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造を試みたが、粒子が凝集してしまった。
【0058】
比較例11
[種粒子の製造]
実施例1と同様の条件で種粒子を得た。
[架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造]
リン酸塩をポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(日光ケミカルズ社製NIKKOL TLP−4)に変更し、アクリル酸ブチルの添加量を104g、エチレングリコールジメタクリレートの添加量を56gとすること以外は、実施例1と同様にして架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造を試みたが、粒子が凝集してしまった。
【0059】
【表1】

【0060】
色相xをx軸、色相yをy軸として、表1の値をプロットしたグラフを図1に示す。図1中、◆は実施例の色相を、▲は比較例の色相を意味する。
表1及び図1から以下のことが分かる。
実施例と比較例8及び9とから、(メタ)アクリル系モノマー100重量部に対する多官能性モノマーの使用量が、10〜100重量部の範囲であれば、粒子の凝集を十分抑制でき、光拡散性の良好な架橋(メタ)アクリル系重合体粒子が得られる。
【0061】
実施例と比較例5、6、10及び11とから、特定のリン酸エステル塩を使用することで、粒子の凝集及び分解生成物の発生を十分抑制でき、光拡散性の良好な架橋(メタ)アクリル系重合体粒子が得られる。
実施例と比較例7とから、多価メルカプタン化合物を使用することで、分解生成物の発生を十分抑制でき、光拡散性の良好な架橋(メタ)アクリル系重合体粒子が得られる。
【0062】
実施例と比較例1及び3とから、モノマー混合物100重量部に対するリン酸エステル塩の使用量が、0.5〜10重量部の範囲であれば、分解生成物の発生を十分抑制でき、光拡散性の良好な架橋(メタ)アクリル系重合体粒子が得られる。
実施例と比較例2及び4とから、モノマー混合物100重量部に対する多価メルカプタン化合物の使用量が、0.1〜10重量部の範囲であれば、分解生成物の発生を十分抑制でき、光拡散性の良好な架橋(メタ)アクリル系重合体粒子が得られる。
【0063】
更に、図1中、比較例の架橋(メタ)アクリル系重合体粒子は右上に位置し、実施例の架橋(メタ)アクリル系重合体粒子は左下に位置していることが示されている。図1において、右上は粒子が黄色味を帯びていること、左下は粒子が青色味を帯びていること表している。図1から明らかなように、実施例の粒子はいずれも黄色味を帯びておらず、着色の原因となる分解生成物の発生が十分抑制されていることが分かる。
なお、実施例及び比較例の原料の使用量を表2にまとめて示す。
【0064】
【表2】

【0065】
表2中、(メタ)アクリル系モノマーと多官能性モノマーの重量部は、両モノマーの合計を100重量部とした場合の値である。また、リン酸エステル塩及び多価メルカプタン化合物の重量部は、両モノマーの合計100重量部に対する値である。
【0066】
更に、リン酸エステル塩の種類において、
Aはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム
(東邦化学社製フォスファノールLO−529)
Bはポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸ナトリウム
(アルキレンは炭素数2、アリール基はジスチレン化フェニル基)
(第一工業製薬社製プライサーフAL(中和型))
Cは不飽和ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム
(第一工業製薬社製ニューフロンティアS−501(中和型))
(アルキルは炭素数9)
Dはジ2−エチルヘキシルアルキルスルホコハク酸ナトリウム
(日本油脂社製ラピゾールA−80)
Eはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
(花王社製ネオペレックスG−15)
Fはポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム
(日光ケミカルズ社製NIKKOL DOP−8NV)
Gはポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム
(日光ケミカルズ社製NIKKOL TLP−4)
をそれぞれ意味する。
【0067】
また更に、多価メルカプタン化合物において、
Aはペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(淀化学社製)
Bはトリメチロールプロパントリスチオグリコレート(淀化学社製)
Cはブタンジオールビスチオグリコレート(淀化学社製)
Dはチオグリコール酸オクチル(淀化学社製)
をそれぞれ意味する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例及び比較例の架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の色相を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系モノマー100重量部に対し多官能性モノマー1〜100重量部の割合で含むモノマー混合物を、リン酸エステル塩と多価メルカプタン化合物の存在下で乳化重合させることで架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を得る方法であって、
前記リン酸エステル塩が、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸及び不飽和ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸のアルカリ金属塩から選択され、前記(メタ)アクリル系モノマーと多官能性モノマーとの合計100重量部に対して、0.5〜10重量部使用され、
前記メルカプタン化合物が、一般式R−(SH)x及びR−(A−SH)x(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を示し、Aは2価の有機残基を示し、xは2〜4の整数を示す)で示される化合物から選択され、前記(メタ)アクリル系モノマーと多官能性モノマーとの合計100重量部に対して、0.1〜10重量部使用されることを特徴とする架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造方法。
【請求項2】
前記メルカプタン化合物が、チオグリコール系化合物である請求項1に記載の架橋(メタ)アクリル系重合体粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法により得られる架橋(メタ)アクリル系重合体粒子。
【請求項4】
透明基材樹脂100重量部に対し請求項3に記載の架橋(メタ)アクリル系重合体粒子を0.01〜30重量部の割合で含む光拡散性樹脂組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−161600(P2009−161600A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339916(P2007−339916)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】