説明

染毛剤用乳化組成物

【課題】アセチルシステインに起因する原料臭が抑制され、染毛性に優れた染毛剤用乳化組成物および前記染毛剤用乳化組成物を含有する乳化染毛剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)アセチルシステイン、(B)リン酸ジアルキル、(C)ウリカーゼおよび(D)高級アルコールを含有することを特徴とする染毛剤用乳化組成物、ならびに前記染毛剤用乳化組成物および酸化染料を含有してなる乳化染毛剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛剤用乳化組成物に関する。さらに詳しくは、例えば、ヒトの毛髪の白髪染めなどに好適に使用しうる乳化染毛剤組成物および該乳化染毛剤組成物に好適に使用しうる染毛剤用乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、酸化染料には、その保存時に酸化染料が酸化することによって重合することを防止するために、亜硫酸、アスコルビン酸、それらの塩などの還元剤が含有されている。しかし、酵素を含有する酵素染毛剤に、これらの還元剤を含有する酸化染料を配合したとき、酵素染毛剤の酵素活性が失活するため、染毛性が低下するようになる。
【0003】
そこで、従来、酵素染毛剤における還元剤として、酵素を失活させずに染料の酸化を防止するシステインが用いられている。しかし、システインは、優れた酸化防止性を有する反面、原料臭が強いため、酵素染毛剤を使用する者に不快感を与えるおそれがある。
【0004】
システインに代わる還元剤として、システインをアセチル化させたアセチルシステインが提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。しかし、アセチルシステインは、システインと比較して原料臭が低減されているが、同時にその還元性も低下している。そこで、酸化染料の酸化が防止される程度の量でアセチルシステインを使用することが考えられるが、このような量でアセチルシステインを使用した場合には、アセチルシステインに起因する原料臭が強くなるという欠点がある。
【0005】
【特許文献1】特開2001−137322号公報
【特許文献2】特開2006−16333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、アセチルシステインに起因する原料臭が抑制され、染毛性に優れた染毛剤用乳化組成物および前記染毛剤用乳化組成物を含有する乳化染毛剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)(A)アセチルシステイン、(B)リン酸ジアルキル、(C)ウリカーゼおよび(D)高級アルコールを含有することを特徴とする染毛剤用乳化組成物、ならびに
(2)前記染毛剤用乳化組成物および酸化染料を含有してなる乳化染毛剤組成物
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の染毛剤用乳化組成物および乳化染毛剤組成物は、アセチルシステインに起因する原料臭が抑制され、優れた染毛性を発現するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
酸化染毛剤は、一般に、その2剤に含まれている過酸化水素により、酸化染料が毛髪内で酸化重合することによって発色する。これに対して、酵素が用いられた染毛剤組成物は、通常、1剤だけで構成され、尿酸と空気中の酸素と水分とにより、過酸化水素が発生し、この発生した過酸化水素によって酸化染料が重合することによって発色する。このことから、酸化染毛剤と酵素が用いられた染毛剤組成物とでは、その発色の機構が異なる。
【0010】
前記酵素が用いられた染毛剤組成物では、染色性を高めるために染毛剤を毛髪に塗布した後、ある程度の時間その状態を保持する必要があることから、染毛剤組成物からの水分の蒸散を抑制することが染毛性を高めるうえで重要である。
【0011】
酵素が用いられた染毛剤組成物の剤型は、毛髪への塗布が容易であることから、水を基剤とするジェル状であることが好ましい。しかしながら、毛髪剤組成物をジェル状にした場合には、アセチルシステインに起因する原料臭を低減させることが困難である。
【0012】
そこで、本発明者らは、ジェル状の毛髪剤組成物に鑑みて鋭意研究を重ねたところ、アセチルシステインに起因する原料臭を低減することができ、しかも毛髪に塗布した染毛剤から水分が蒸散することが抑制されることから、ジェル状の毛髪剤組成物よりも、より長い時間染毛剤を毛髪に塗布した状態を保持することができるので、染毛性をより一層高めることができる毛髪剤組成物が見出された。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0013】
本発明の染毛剤用乳化組成物は、前記したように、(A)アセチルシステイン、(B)リン酸ジアルキル、(C)ウリカーゼおよび(D)高級アルコールを含有することを特徴とする。
【0014】
アセチルシステインは、システインをアセチル化させたものであり、ウリカーゼを失活させずに酸化染料の酸化を防止する性質を有する。アセチルシステインの代表例としては、N−アセチル−L−システインなどが挙げられる。
【0015】
本発明の染毛剤用乳化組成物におけるアセチルシステインの含有量は、酸化染料の酸化を防止する観点から、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、原料臭を抑制する観点から、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
【0016】
本発明の染毛剤用乳化組成物は、リン酸ジアルキルを含有している。本発明の染毛剤用乳化組成物は、このようにリン酸ジアルキルを含有しているので、アセチルシステインの原料臭が抑制される。
【0017】
リン酸ジアルキルのなかでは、アセチルシステインの原料臭を抑制する観点から、アルキル基の炭素数が12〜24であるリン酸ジエステルが好ましく、アルキル基の炭素数が12〜20であるリン酸ジエステルがより好ましく、リン酸ジセチルがさらに好ましい。
【0018】
本発明の染毛剤用乳化組成物におけるリン酸ジアルキルの含有量は、乳化安定性を高める観点およびアセチルシステインの原料臭を抑制する観点から、好ましくは0.03重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、毛髪へのなじみやすさおよび延展性を向上させる観点から、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。
【0019】
ウリカーゼは、酸化染料の中間体を重合させて発色させる性質を有する。ウリカーゼとしては、例えば、雄ブタの肝臓から抽出されたウリカーゼ、アルスロバクター・グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)由来のウリカーゼ、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)由来のウリカーゼなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ウリカーゼは、そのままの状態で用いてもよく、あらかじめウリカーゼに対して不活性な溶媒、例えば、グリセリンなどで希釈させた後に用いてもよい。
【0020】
本発明の染毛剤用乳化組成物100gあたりのウリカーゼの含有量(力価)は、酸化染料の発色性を高める観点から、好ましくは10キロユニット以上、より好ましくは15キロユニット以上であり、乳化安定性を高める観点から、好ましくは30キロユニット以下、より好ましくは25キロユニット以下である。
【0021】
高級アルコールは、本発明の染毛剤用乳化組成物毛髪に塗布したときに水分が蒸散するのを抑制するとともに、毛髪上での延展性を向上させ、染毛後の毛髪に良好な感触を与える性質を有する。
【0022】
高級アルコールとしては、延展性を向上させる観点および染毛後の毛髪に良好な感触を付与する観点から、炭素数12〜22の脂肪族1価アルコールが好ましい。高級アルコールの具体例としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコールなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらのなかでは、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコールおよびオレイルアルコールは、染毛後の毛髪の感触を良好にする観点から、好ましい。
【0023】
本発明の染毛剤用乳化組成物における高級アルコールの含有量は、本発明の染毛剤用乳化組成物毛髪に塗布したときに水分が蒸散するのを抑制する観点から、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、良好な感触を毛髪に付与する観点から、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。
【0024】
本発明の染毛剤用乳化組成物には、毛髪に塗布したときの延展性を向上させる観点から、さらに、(a)(メタ)アクリル酸〔以下、(a)成分ともいう〕、(b)(メタ)アクリル酸アルキル〔以下、(b)成分ともいう〕、ならびに(c)(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル、イタコン酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびネオデカン酸ビニルからなる群より選ばれた少なくとも1種のカルボン酸モノマー〔以下、(c)成分ともいう〕からなる群より選ばれ、(a)成分〜(c)成分のうちの少なくとも2成分からなる共重合体が含まれていることが好ましい。
【0025】
前記共重合体の具体例としては、(a)成分と(b)成分との共重合体、(a)成分と(c)成分との共重合体、(b)成分と(c)成分との共重合体、および(a)成分と(b)成分と(c)成分との共重合体が挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上混合して用いることができる。これらのなかでは、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体および(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種は、延展性を向上させる観点から、好ましい。
【0026】
(a)成分の(メタ)アクリル酸は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0027】
(b)成分の(メタ)アクリル酸アルキルは、アクリル酸アルキルおよび/またはメタクリル酸アルキルを意味する。(メタ)アクリル酸アルキルのエステル部分のアルキル基の炭素数は、延展性を向上させる観点および乳化安定性を高める観点から、好ましくは8〜36、より好ましくは10〜30である。
【0028】
(c)成分は、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル、イタコン酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびネオデカン酸ビニルからなる群より選ばれた少なくとも1種のカルボン酸モノマーである。
【0029】
(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよび/またはメタクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルを意味する。(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおいて、オキシエチレンの付加モル数は、乳化安定性を高める観点から、好ましくは2〜40、より好ましくは10〜30である。また、そのアルキル基の炭素数は、延展性を向上させる観点から、好ましくは8〜36、より好ましくは10〜30である。
【0030】
イタコン酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおいて、オキシエチレンの付加モル数は、乳化安定性を高める観点から、好ましくは2〜40、より好ましくは10〜30である。また、そのアルキル基の炭素数は、延展性を向上させる観点から、好ましくは8〜36、より好ましくは10〜30である。
【0031】
本発明の染毛剤用乳化組成物における前記共重合体の含有量は、延展性を向上させる観点から、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上であり、毛髪への塗布を容易にする観点から、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下である。
【0032】
本発明の染毛剤用乳化組成物には、乳化させるために、油性成分を含有する。油性成分としては、一般に化粧料に配合されているものであればよい。
【0033】
油性成分としては、例えば、シリコーン油、エステル類、高級脂肪酸、炭化水素類、ロウ類、油脂などが挙げられる。
【0034】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
エステル類としては、例えば、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸2−オクチルドデシル、トリイソステアリン酸グリセロール、トリ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセロール、オレイン酸2−オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸グリセロール、2−エチルヘキサン酸ジグリセリドなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸などが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
ロウ類としては、例えば、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリンなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
油脂としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アボカド油、コメヌカなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
本発明の染毛剤用乳化組成物における油性成分の含有量は、任意であり、特に限定されないが、通常、本発明の染毛剤用乳化組成物毛髪に塗布したときに水分が蒸散するのを抑制する観点から、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上であり、染毛後の毛髪の風合いを良好にする観点から、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0041】
本発明の染毛剤用乳化組成物は、(A)アセチルシステイン、(B)リン酸ジアルキル、(C)ウリカーゼ、(D)高級アルコール、必要により(E)共重合体および油性成分を混合することにより、容易に調製することができる。
【0042】
本発明の染毛剤用乳化組成物は、アセチルシステインに起因する原料臭が抑制され、優れた染毛性を発現するので、乳化染毛剤組成物に好適に使用することができる。
【0043】
本発明の乳化染毛剤組成物は、前記染毛剤用乳化組成物および酸化染料を含有するものである。
【0044】
酸化染料は、毛髪を染毛するための成分である。酸化染料としては、通常、染毛剤に使用されている酸化染料前駆体およびカップラーを用いることができる。
【0045】
酸化染料前駆体としては、例えば、フェニレンジアミン類、アミノフェノール類、ジアミノピリジン類およびそれらの塩酸塩、硫酸塩などの塩類などが挙げられる。
【0046】
酸化染料前駆体の具体例としては、p−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、トルエン−3,4−ジアミン、2,5−ジアミノアニソール、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−メチル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、6−メトキシ−3−メチル−p−フェニレンジアミン、N,N−ジエチル−2−メチル−p−フェニレンジアミン、N−エチル−N−(ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、2−クロロ−6−メチル−p−フェニレンジアミン、2−クロロ−p−フェニレンジアミン、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2,6−ジクロロ−p−フェニレンジアミン、2−クロロ−6−ブロモ−p−フェニレンジアミンなどのフェニレンジアミン;o−アミノフェノール、p−アミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、5−アミノサリチル酸、2−メチル−4−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2,6−ジメチル−4−アミノフェノール、3,5−ジメチル−4−アミノフェノール、2,3−ジメチル−4−アミノフェノール、2,5−ジメチル−4−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェノール、3−クロロ−4−アミノフェノールなどのアミノフェノール類;2,5−ジアミノピリジンなどのジアミノピリジン類およびそれらの塩などが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
カップラーとしては、例えば、レゾルシン、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、5−アミノ−o−クレゾール、2−メチル−5−ヒドロキシエチルアミノフェノール、硫酸p−メチルアミノフェノール、2,6−ジアミノピリジン、カテコール、ピロガロール、没食子酸、タンニン酸およびそれらの塩などが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
酸化染料前駆体およびカップラーは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0049】
酸化染料前駆体およびカップラーとしては、前記したもの以外にも、例えば、「医薬部外品原料規格2006」〔(株)薬事日報社、2006年6月〕に収載されているものを用いることもできる。
【0050】
本発明の乳化染毛剤組成物における酸化染料の含有量は、染色性を高める観点から、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、アレルギーなどを抑制し、皮膚染まりを防止する観点から、好ましくは5重量%以下、より好ましくは4重量%以下である。
【0051】
なお、本発明においては、酸化染料は、直接染料と併用することができる。直接染料としては、染毛剤に使用可能な酸性染料、塩基性染料、分散染料、反応性染料などが挙げられる。
【0052】
直接染料の具体例としては、p−ニトロオルトフェニレンジアミン、ニトロp−フェニレンジアミン、硫酸p−ニトロメタフェニレンジアミン、2−アミノ−5−ニトロフェノール、ピクラミン酸などをはじめ、医薬品、医薬部外品又は化粧品の着色に使用することが許されている「医薬品などに使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年告示、厚生省)に記載されている酸性染料、例えば、黄色403号(1)などのニトロ系色素、だいだい色205号、黄色4号、黒色401号などのアゾ染料、緑色401号などのニトロソ染料、青色205号などのトリフェニルメタン染料、赤色106号、黄色202号の(1)などのキサンテン染料、黄色203号などのキノリン染料、紫色401号、緑色201号などのアントラキノン染料、青色2号などのインジゴ染料、緑色204号などのピレン系タール染料などが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0053】
本発明の乳化染毛剤組成物における直接染料の含有量は、任意であり、特に限定されないが、通常、好ましくは0.05〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0054】
本発明の染毛剤組成物には、空気中の酸素の存在下、ウリカーゼとともに酸化染料の中間体を重合させて発色させるために、さらに尿酸成分を含有させることが好ましい。
【0055】
尿酸成分としては、尿酸、尿酸塩および尿酸誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種が用いられる。これらのなかでは、尿酸が好ましい。
【0056】
尿酸塩としては、例えば、尿酸ナトリウム、尿酸水素ナトリウム、尿酸カリウム、尿酸水素カリウム、尿酸カルシウム、尿酸水素カルシウム、尿酸アンモニウム、尿酸水素アンモニウムなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0057】
尿酸誘導体としては、例えば、3−N−メチル尿酸、3−N−ラウリル尿酸、7−N−ブチル尿酸、1−N−エチル尿酸、9−N−ラウリル尿酸、3,7−N−ジメチル尿酸などが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0058】
本発明の染毛剤組成物における尿酸成分の含有量は、酸化染料の中間体を十分に重合させて発色させる観点から、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、尿酸成分を安定して可溶化させる観点から、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2.5重量%以下である。
【0059】
また、尿酸成分を安定して可溶化させる観点から、本発明の染毛剤組成物に有機アルカリを含有させることが好ましい。
【0060】
有機アルカリとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モノイソプロパノールアミン、テトラキス(2−ヒドロキシイソプロピル)エチレンジアミンなどのアミン系有機アルカリなどが挙げられ、これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。有機アルカリのなかでは、尿酸成分を安定して可溶化させる観点から、好ましくは炭素数2〜8、より好ましくは炭素数2〜6のアルカノールアミンが望ましく、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンおよび2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールからなる群より選ばれた少なくとも1種のアルカノールアミンがより望ましい。
【0061】
本発明の染毛剤用乳化組成物における有機アルカリの含有量は、尿酸成分を安定して可溶化させる観点から、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上であり、染毛後の毛髪の風合いを良好にする観点から、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0062】
なお、本発明においては、必要により、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸グアニンなどの炭酸塩を、本発明の目的を阻害しない範囲内で、有機アルカリと併用することができる。
【0063】
本発明の染毛剤用乳化組成物および乳化染毛剤組成物において、前記成分の残部は、溶媒である。溶媒としては、水および有機溶媒が挙げられ、これらは、それぞれ単独で使用してもよく、あるいは併用してもよい。
【0064】
有機溶媒としては、例えば、エタノール、2−プロパノールなどの低級アルコール、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノールなどの芳香族アルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン、1,2−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオールなどのポリオール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみによって限定されるものではない。
【0065】
本発明の染毛剤用乳化組成物および乳化染毛剤組成物には、前記成分のほかに、本発明の目的が阻害されない範囲内で、通常、化粧品原料として用いられている他の成分を含有させることができる。
【0066】
本発明の乳化染毛剤組成物のpHは、染毛性の向上および皮膚に対する刺激性の低減の観点から、好ましくは7.5〜10、より好ましくは8〜9.5である。pHは、pH調整剤を用いて調整することができる。pH調整剤としては、例えば、リン酸などの無機酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸などの有機酸、塩化アンモニウム、リン酸一水素二カリウム、リン酸二水素一カリウムなどの無機塩が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0067】
本発明の乳化染毛剤組成物は、一般に使用されている染毛剤組成物と同様にして使用することができる。本発明の乳化染毛剤組成物を用いて毛髪を染毛する場合、例えば、本発明の乳化染毛剤組成物を常温で毛髪に塗布し、1〜60分間程度放置した後、毛髪を洗浄し、乾燥させればよい。
【実施例】
【0068】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0069】
実施例1〜4および比較例1〜3
表1に記載した組成となるように、23℃、相対湿度60%の恒温恒湿室内で、(A)成分〜(E)成分を混合することにより、染毛剤用乳化組成物または染毛剤用ジェル状組成物を調製した。
【0070】
次に、得られた染毛剤用乳化組成物または染毛剤用ジェル状組成物と、表1に示す他の成分とを混合することにより、染毛剤組成物を調製した。得られた染毛剤組成物の物性として、組成物の性状、アセチルシステインの原料臭および染毛性を以下の評価方法に基づいて調べた。その結果を表1に併記する。
【0071】
なお、表1中の各成分の量の単位は「重量%」である。ウリカーゼの量は、100gあたりの力価〔単位:キロユニット(kU)〕である。「C10−30」は、アルキル基の炭素数が10〜30であることを示す。
【0072】
(1)性状
目視にて、染毛剤用組成物の外観を観察した。
【0073】
(2)アセチルシステインの原料臭
染毛剤組成物2gをガラスシャーレにとり、直接、原料臭を嗅覚により確認し、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
◎ :原料臭を感じない。
○ :僅かな原料臭が感じられるが、不快感でない。
△ :原料臭が感じられる、不快でない。
× :明らかに原料臭が感じられ、不快である。
【0074】
(3)染毛性
試験毛束〔(株)ビューラックス製、品番BM−W、白髪100%〕を0.5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液中に50℃、1時間漬置き洗いしたものを用いた。
【0075】
試験毛束に対し、質量で2倍量の染毛剤用組成物を秤量し、この染毛剤用組成物を試験毛束全体にハケを用いて約1分間かけて充分になじませた。
【0076】
(密閉下染毛方法)
前記で得られた試験毛束を30℃、相対湿度70%の恒温恒湿槽(縦15cm、横15cm、高さ3cm)中で15分間放置した後、この試験毛束に再度コーミングを施し、さらに30℃、相対湿度70%の恒温恒湿槽中で15分間放置した。
【0077】
(乾燥下染色方法)
前記で得られた試験毛束を23℃の室内で上から30分間吊るした。
【0078】
次に、密閉下染毛方法で調製した毛束および乾燥下染色方法で調製した毛束を、35℃程度の水道水で約30秒間洗浄した。
【0079】
これらの試験毛束にシャンプー〔(株)ピアセラボ、商品名:アリスティアST CS〕を適量で30秒間程度馴染ませた後、水道水で洗い流し、さらにこの試験毛髪にコンディショナー〔(株)ピアセラボ、商品名:アリスティアST TS〕を適量で用いて10秒間程度馴染ませた後、再度、水道水で洗い流し、1日間かけて風乾した。
【0080】
染毛性の評価は、染毛された試験毛束(3本)を、色差計〔コニカミノルタセンシング(株)製、品番:CM−3610d〕を用いて、染毛前後のL値を測定した。
【0081】
なお、染毛性の差は、密閉下染色方法で染色した毛束のL値から、乾燥下染色方法で染色した毛束のL値を減じることによって求められた値である。L値が低いほど染毛性が強いことから、染毛性の差が小さいほど、乾燥に強い処方であるといえる。
【0082】
【表1】

【0083】
表1に示された結果から、染毛剤組成物をジェル状で調製した場合には(比較例3)、アセチルシステインの原料臭を抑制することができず、染毛時の乾燥性に劣るのみならず、染毛性にも劣ることがわかる。また、実施例1と比較例1との対比および実施例3と比較例2との対比から、染毛剤組成物にリン酸ジセチルを用いた場合には(実施例1および3)、原料臭が抑制され、しかも染毛性が向上することがわかる。
【0084】
以上の結果から、本発明の染毛剤用乳化組成物が用いられた乳化染毛剤組成物は、アセチルシステインに起因する原料臭が抑制され、優れた染毛性を発現するものであることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アセチルシステイン、(B)リン酸ジアルキル、(C)ウリカーゼおよび(D)高級アルコールを含有することを特徴とする染毛剤用乳化組成物。
【請求項2】
(B)リン酸ジアルキルのアルキル基の炭素数が12〜24である請求項1に記載の染毛剤用乳化組成物。
【請求項3】
(B)リン酸ジアルキルがリン酸ジセチルである請求項1または2に記載の染毛剤用乳化組成物。
【請求項4】
さらに、(a)(メタ)アクリル酸、
(b)(メタ)アクリル酸アルキル、ならびに
(c)(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル、イタコン酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびネオデカン酸ビニルからなる群より選ばれた少なくとも1種のカルボン酸モノマー
からなる群より選ばれ、(a)成分〜(c)成分のうちの少なくとも2成分からなる(E)共重合体を含有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の染毛剤用乳化組成物。
【請求項5】
(E)共重合体が、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体
および(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項4記載の染毛剤用乳化組成物。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の染毛剤用乳化組成物および酸化染料を含有してなる乳化染毛剤組成物。
【請求項7】
さらに、尿酸成分を含有してなる請求項6に記載の乳化染毛剤組成物。

【公開番号】特開2009−235014(P2009−235014A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85139(P2008−85139)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】