説明

染毛剤組成物

【課題】鮮やかな色調に染毛でき、かつ、色相の変化が小さい染毛剤組成物の提供。
【解決手段】式(1)[R〜Rは−NH、−NHR、−NR、R、Rは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基]のピリミジン誘導体又はその塩、式(2)[Rは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基等、R及びRは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基]のジオキシベンゼン誘導体、及び酸化剤を含む染毛剤組成物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の酸化染料を含有し、毛髪を鮮やかな赤色に染毛でき、色相変化の少ない染毛剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の色を変えておしゃれを楽しむという意識の高まりとともに、染毛性の高い染毛剤が望まれている。汎用的な染毛剤としては、その染毛力や優れた堅牢性、また毛髪を明るくできるという特徴から、酸化染毛剤が広く用いられている。このような優位性は、プレカーサーとカップラーが毛髪内部まで浸透した後、酸化カップリング反応がおこり酸化染料となり、毛髪に新たな色調を付与することができることによる。また、アルカリ性過酸化水素と併用することによりメラニン色素の分解作用、すなわち毛髪の脱色を伴うことができるため、脱色と染毛を同時に行うことが可能となることによる。
【0003】
しかし、このような酸化染毛剤は、カップリング反応で得られる酸化染料がいずれも比較的幅広い吸収スペクトルを有する染料であるため、毛髪に与えられる色調が「鮮やかさ」に欠けるといった欠点がある。ここで「鮮やかさ」とは、L***表色系における原点からの距離C*であり、変化量はΔC*で表される。
【0004】
【数1】

【0005】
このような「鮮やかさ」の欠如を補い、酸化染料単独では実現し難い色調を得るために、酸化染料に加え、酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料などの直接染料を併用して鮮やかで新たな色調を得る方法が知られている(たとえば、特許文献1〜2参照)。
【0006】
しかしながら、酸化染料と直接染料とを併用することで染色直後には鮮やかな色調が実現できても、日常生活における洗髪等による避けられない褪色で、髪色の色調が変化し、その結果染毛直後の髪色の印象が変化してしまう傾向がある。これは、直接染料である酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料の褪色性と、酸化染料の褪色性との褪色挙動(褪色の仕方)が異なることから、染毛直後の「色相」が、褪色の進行により、別の色相に変化してしまうためである。ここで、色相(H*)とはa**平面の色相環の外周であり、変化量(色相変化)はΔH*で表される。
【0007】
【数2】

【0008】
そこで、色相変化の少ない染毛剤として、特定のプレカーサーとカップラーを組み合わせることが行われている(特許文献3参照)が、さらに鮮やかな色調を付与するため直接染料を併用した場合には、やはり酸化染料と直接染料の褪色性の違いに由来する色相変化が生じてしまい、依然として染色性能全般としては十分満足しうるものとはいえない。
【0009】
【特許文献1】特開平11−302138号公報
【特許文献2】国際公開第97/20545号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/120446号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、鮮やかな色調に染毛でき、かつ、色相の変化が小さい染毛剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、特定のプレカーサーとカップラーを組合せ、更に酸化剤を使用することで鮮やかな赤色を付与でき、かつ色相変化を抑制できることを見出した。
【0012】
すなわち本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C)を含有する染毛剤組成物を提供するものである。
(A) 次の一般式(1)で表されるピリミジン誘導体又はその塩、
【0013】
【化1】

【0014】
〔式中、R1〜R4は同一又は異なってもよい−NH2、−NHR5又は−NR56を示し、R5、R6は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示す。〕
【0015】
(B) 次の一般式(2)で表されるジオキシベンゼン誘導体、
【0016】
【化2】

【0017】
〔式中、R7は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又は炭素数2〜5のアルコキシアルキル基を示し、R8及びR9は同一又は異なってもよい水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示す。〕
【0018】
(C) 酸化剤
【0019】
更に本発明は、上記染毛剤組成物を毛髪に適用することを特徴とする染毛方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の毛髪化粧料は、毛髪に鮮やかな赤色を付与でき、かつ色相変化のきわめて少ないもの、特に染毛後の光、洗浄、汗、摩擦、熱による褪色やシャンプーによる褪色にも色相変化が少なく、染毛の効果を長く持続できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の成分(A)ピリミジン誘導体は、前記一般式(1)で表される。R1〜R4としては、具体的には、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ヒドロキシエチルアミノ基、N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ基等を挙げることができ、なかでもアミノ基が好ましい。成分(A)としては、R1〜R4が同一のものが好ましく、R1〜R4がそれぞれアミノ基であるもの、すなわち、2,4,5,6−テトラアミノピリミジンがより好ましい。
【0022】
成分(A)の塩としては、生理的に許容されるものであればよく、例えば塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、メタンスルホン酸、メチル硫酸、過塩素酸等の無機酸又は有機酸との塩が好ましい。
【0023】
本発明の成分(B)ジオキシベンゼン誘導体は、前記一般式(2)で表される。R7としては、具体的にはメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基等を挙げることができ、なかでもメチル基が好ましい。また、R8及びR9は、例えば水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基等を挙げることができる。R8及びR9は、同一であることが好ましく、なかでもいずれも水素原子であるものが好ましい。成分(B)としては、R7がメチル基で、R8及びR9がいずれも水素原子であるもの、すなわち、2−メチルレゾルシノールが好ましい。
【0024】
成分(A)及び(B)の総質量は、全組成中に好ましくは0.5〜10質量%であるが、鮮やかな色調と褪色抑制の点から、特に1〜7質量%、更に1〜5質量%であることが好ましい。ここで、「全組成中」とは、二剤型などの多剤型の染毛剤組成物の場合、第1剤と第2剤等を混合した使用直前の染毛剤組成物中を意味する。
【0025】
本発明の(C)酸化剤は、例えば、過酸化水素;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過ホウ酸ナトリウム等の過ホウ酸塩;過炭酸ナトリウム等の過炭酸塩;臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム等の臭素酸塩などが挙げられる。なかでも、毛髪に対する脱色性の点から過酸化水素が好ましい。また、過酸化水素と共に、酸化助剤として他の酸化剤を組み合わせて用いることもできる。特に、過酸化水素と過硫酸塩とを組み合わせて用いるのが好ましい。
【0026】
成分(C)の含有量は、全組成中の0.5〜30質量%が好ましく、更には1〜20質量%が好ましい。過酸化水素と過硫酸塩とを組み合わせて用いる場合は、過酸化水素の含有量は、全組成中の0.5〜10質量%;過硫酸塩の含有量は、全組成中の0.5〜25質量%;両者の合計の含有量が1〜30質量%であるのが好ましい。
【0027】
本発明においては、更に赤色の直接染料、具体的には赤色106号(アシッドレッド52)を加えることにより、色調と色相をより安定にすることができる。赤色106号の含有量は、組成物中に5%質量以下が好ましく、特に0.01〜5質量%、さらには0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0028】
本発明の染毛剤組成物には、上記赤色106号以外の直接染料や酸化染料を配合して色調を変化させることもできる。
【0029】
他の直接染料としては、酸性染料、塩基性染料、カチオン染料、ニトロ染料、分散染料等の公知の直接染料も加えることができる。より具体的には、例えば青色1号、紫色401号、黒色401号、だいだい色205号、赤色227号、黄色203号、塩基性青7、塩基性青26、塩基性青99、塩基性紫10、塩基性紫14、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性赤2、塩基性赤12、塩基性赤22、塩基性赤46、塩基性赤76、塩基性赤118、塩基性黄28、塩基性黄57;特開昭58-2204号公報、特開平9-118832号公報、特表平8-501322号公報及び特表平8-507545号公報に記載されているカチオン染料;下記式(3)又は式(4)で表されるシアニン構造を有するメチン型カチオン染料などが挙げられる。
【0030】
【化3】

【0031】
また、例えば、特開2002-275040号公報、特開2003-107222号公報、特開2003-107223号公報、特開2003-113055号公報、特開2004-107343号公報、特開2003-342139号公報、特開2004-155746号公報に記載されている直接染料も加えることができる。
【0032】
本発明の染毛剤組成物中に配合できる直接染料の総質量は、赤色106号を加える場合には、赤色106号と合計したときの全直接染料含有量として、組成物中に0.01〜20質量%が好ましく、特に0.05〜10質量%、更に0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0033】
本発明の染毛剤組成物においては、成分(A)及び(B)以外の酸化染料を併用することもできる。このような併用により、成分(A)及び(B)の組合せのみでは得られない、極めて鮮明で強い赤系染色が可能となる。酸化染料としては、酸化型染毛剤に通常用いられる公知のプレカーサー及びカップラーが用いられる。
【0034】
プレカーサーとしては、例えば、パラフェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、2−クロロパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、オルトアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、N−フェニルパラフェニレンジアミンとこれらの塩等が挙げられる。
【0035】
また、カップラーとしては、例えばメタフェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、メタアミノフェノール、2−メチル−5−アミノフェノール、2−メチル−5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、レゾルシン、1−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ヒロドキノンとこれらの塩等が挙げられる。
【0036】
これらのプレカーサー及びカップラーは、それぞれ2種以上を併用することもでき、またそれらの含有量は、成分(A)及び成分(B)との合計で全組成中に0.5〜20質量%が好ましく、更には0.5〜15質量%、更には0.5〜10質量%が好ましい。
【0037】
本発明の染毛剤組成物には、更にインドール類、インドリン類等に代表される自動酸化型染料を加えることもできる。
【0038】
本発明の染毛剤組成物中の成分(A)、成分(B)、赤色106号、及び他の直接染料や酸化染料、自動酸化型染料等の染料の全含有量としては、全組成中に0.5〜20質量%、更には0.5〜15質量%、更には0.5〜10質量%が好ましい。
【0039】
本発明の染毛剤組成物には、アルカリ剤を含有するのが好ましい。アルカリ剤としては、アンモニア;モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、2−アミノブタノール等のアルカノールアミン類;1,3−プロパンジアミン等のアルカンジアミン類;炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩等が挙げられる。このうち、アンモニア、アルカノールアミン類が好ましく、特にモノエタノールアミンが好ましい。
アルカリ剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量は、十分な脱色・染毛効果の観点、及び毛髪損傷や頭皮刺激の低減の観点から、第1剤と第2剤から成る全組成中に0.05〜10質量%、特に0.1〜5質量%、更には0.2〜3質量%が好ましい。
【0040】
本発明の染毛剤組成物は、更にコンディショニング成分を含むことができる。コンディショニング成分としては、化粧料用として使用可能なものであればよく、組成物中に溶解又は分散可能なポリマー又はオイル類が含まれる。これらコンディショニング成分は、リンス時又は水やシャンプーで希釈された時に毛髪へ付着することで、染毛後の毛髪ダメージを抑制できる。具体的には、シリコーン類、有機コンディショニングオイル類(例えば、炭化水素オイル、ポリオレフィン、脂肪族エステル類、脂肪族アミド類)、及びコンディショニングポリマー等が含まれる。
【0041】
シリコーン類としては、例えば以下に示すものが挙げられる。
(シリコーン類-1) ジメチコン、ジメチコノール、シクロメチコン
各種のジメチコン、ジメチコノール、シクロメチコンが使用できるが、以下の一般式(5)で表されるものが好ましい。
【0042】
【化4】

【0043】
(式中、R10はメチル基又はヒドロキシ基を示し、二つのR10が一緒になって酸素原子となり、環状となっても良く、aは1〜20000の数を示す。)
具体的には、東レ・ダウコーニング(株)のBY11-026、BY22-19、FZ-3125等が挙げられる。高重合ジメチルポリシロキサンは、液状シリコーン油(例えば、(i)低重合ジメチルポリシロキサン、(ii)シクロメチコン等の液状シリコーン油)のほか、イソパラフィン等の液状炭化水素油に溶解又は分散したものも使用することができる。
【0044】
(シリコーン類-2) アミノ変性シリコーン
各種のアミノ変性シリコーンが使用できるが、一般式(6)のものが好ましい。
【0045】
【化5】

【0046】
〔式中、R11はメチル基又はヒドロキシ基を示し、Xは炭素数2〜6の2価炭化水素基を示し、b及びcは1〜20000の数を示す。〕
【0047】
このうち、特に平均分子量が約3000〜100000の、アモジメチコンのINCI名で知られているものが好ましい。
このアミノ変性シリコーンは水性乳濁液として用いるのが好ましい。市販品としては、SM8704C〔東レ・ダウコーニング(株)〕、DC 929〔ダウ・コーニング社〕等が挙げられる。
【0048】
その他のアミノ変性シリコーンとしては、例えば次の式(7)で表されるようなビス(C13−15アルコキシ)PGアモジメチコンが挙げられ、市販品としては、8500 Conditioning Agent〔ダウ・コーニング社〕が挙げられる。
【0049】
【化6】

【0050】
(式中、R12は、炭素数13〜15の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、Yのうち75%は基−CH2CH(OH)CH2OHを、25%は水素原子を示す)
【0051】
更に、主鎖にポリオキシアルキレンを含む共重合体となったものも使用可能であり、下記一般式(8)で表されるビスイソブチルPEG-15/アモジメチコンが挙げられる。
【0052】
【化7】

【0053】
(式中、R13はイソブチレン基を示し、dは2以上、好ましくは2〜1000の数;eは1以上、好ましくは1〜50の数;fは2以上、好ましくは2〜100の数をそれぞれ示す。)
市販品としては、東レ・ダウコーニング (株)のFZ-3789、シリコーンSS-3588を挙げることができる。
【0054】
(シリコーン類-3) ポリエーテル変性シリコーン
各種のポリエーテル変性シリコーンが使用できるが、ジメチコンのメチル基の一部をポリエチレングリコールで置換した、平均分子量が約3000〜100000の、PEG-nジメチコン(ここで、nは整数を示し、例えば、PEG-3ジメチコン、PEG-7ジメチコン、PEG-8ジメチコン、PEG-9ジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG-14ジメチコン等)のINCI名で知られている一般式(9)のものやポリシリコーン-13のINCI名で知られている一般式(10)のものが好ましい。
【0055】
【化8】

【0056】
(式中、g及びhは10〜2000の数を示し、iは1〜100の数を示す)
【0057】
【化9】

【0058】
(式中、j、k及びlは1〜1000の数を示し、mは1〜2000の数を示す)
【0059】
(シリコーン類-4) その他のシリコーン類
上記以外に、メチルフェニルポリシロキサン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。
【0060】
また、このようなシリコーン類は、揮発性シリコーン、不揮発性シリコーン等により希釈や分散されたもの、また水性界面活性剤中に分散液体粒子を形成しているものも使用できる。
【0061】
また、有機コンディショニングオイル類としては、好ましくは低粘度、水不溶性の液体であって、炭化水素オイル、ポリオレフィン、脂肪族エステル類、脂肪族アミド類及びこれらの混合物が含まれる。有機コンディショニングオイル類の粘度は、40℃における測定において、好ましくは1〜200mPa・s、より好ましくは1〜100mPa・s、更に好ましくは2〜50mPa・sである。
【0062】
脂肪族エステル類としては、例えば、脂肪酸とアルコールから誘導される炭化水素鎖を有するエステル(例えば、モノエステル、多価アルコールエステル、ジ−及びトリカルボン酸エステル)が挙げられる。これら脂肪族エステル類の炭化水素基は、更にアミドやアルコキシ基(例えばエトキシ又は他の結合等)等の他の相溶性官能部を有していてもよく、またそれらに共有結合していてもよい。具体例としては、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルデシル等が挙げられる。
【0063】
脂肪族アミド類としては、例えば、脂肪酸とアルキルアミンあるいはアルカノールアミンから誘導される炭化水素鎖を有するアミドが含まれる。これら脂肪族アミドの炭化水素基は、さらにアミドやアルコキシ基(例えばエトキシ又は他の結合等)等の他の相溶性官能部を有していてもよく、またそれらに共有結合していてもよい。具体例としては、オレイン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられる。
【0064】
コンディショニングポリマーとしては、カチオン性ポリマーが好ましいが、更に、アニオン性、ノニオン性及び/又は両性ポリマーを含むこともできる。カチオン性ポリマーのアニオン性対イオンは、カチオン性ポリマーが組成物中で溶解状態にあり且つ該対イオンが染毛剤組成物の必須成分と物理的にも化学的にも相溶であるか、若しくは製品の性能、安定性又は美観を著しく損ねない限り、どのような対イオンを用いてもよい。このような対イオンの例としては、ハロゲン化物イオン(例えば、塩化物イオン、フッ化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、硫酸イオン、メチル硫酸イオン及びこれらの混合物が挙げられる。カチオン性ポリマーとしては、例えばカチオン性多糖類(例えば、カチオン性セルロース誘導体、カチオン性グアー等)、プロトン化アミン置換基又は四級アンモニウム置換基を有するビニルモノマーの水溶性モノマーとのコポリマー、ビニルピロリドンコポリマー、カチオン性タンパク質等が挙げられる。
【0065】
コンディショニング成分を含有する場合、その含有量は、全組成中の0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。コンディショニング成分は、通常、染毛剤組成物に溶解又は分散可能なポリマー又はオイル類であり、リンス時又は水やシャンプーで希釈された時に毛髪へ付着する。
【0066】
本発明の染毛剤組成物は、ポリアルキレングリコールを更に含むことができ、その場合、その含有量は、該組成物中0.005〜1.5質量%、好ましくは0.025〜1.2質量%、より好ましくは0.05〜1質量%、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。このようなポリアルキレングリコールは、本発明の成分(A)〜(C)に対し相溶であり、かつ製品の安定性、美観又は性能を著しく損ねないことが必要である。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールを挙げることができ、両者の混合物であっても、酸化エチレンと酸化プロピレンとの共重合体であってもよい。
【0067】
本発明の組成物には、上記成分のほかに、通常化粧品原料として用いられる他の成分を加えることができる。このような任意成分としては、炭化水素類、動植物油脂、高級脂肪酸類、浸透促進剤、カチオン界面活性剤、天然又は合成の高分子、高級アルコール類、エーテル類、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、蛋白誘導体、アミノ酸類、防腐剤、キレート剤、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、色素、香料、紫外線吸収剤が挙げられる。
【0068】
本発明の染毛剤組成物は、一剤型、二剤型、三剤型などとして提供されるが、現在広く利用されている酸化型染毛剤と同様に、アルカリ剤を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤よりなる二剤型として提供されるのが好ましい。これらの第1剤及び第2剤の剤形は、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、ムース状等とすることができ、エアゾール形態とすることもできる。
【0069】
また、本発明の染毛剤組成物には、カラーブースターを含めても良い。カラーブースター、すなわち直接染料のアルカリ性溶液を添加することで、成分(A)及び成分(B)により得られる鮮やかな赤色から、褐色、赤茶、茶、紫、橙等さまざまな色に染毛することができる。
【0070】
二剤式の場合、第1剤と第2剤の混合割合は、容積比で2:1〜1:3の範囲とするのが好ましい。カラーブースターを用いる場合、第1剤とカラーブースターの混合割合は、例えば、100:1〜10:1とすることができる。
【0071】
本発明の染毛剤組成物は、第1剤と第2剤を混合して、毛髪に塗布する際に液だれしにくいような粘度とすることが好ましい。具体的には、25℃でB型回転粘度計を用いて測定した粘度(使用ローターNo.3、12rpm、1分間回転後の値)が、2,000〜100,000mPa・sのものが好ましい。
【0072】
本発明の染毛剤組成物のpH(25℃)は、使用時(混合時)にpH8〜12が好ましく、特に鮮やかな赤色を付与でき、また色相変化が少ない点からpH9〜11が好ましい。また、混合前の第1剤のpHはpH8〜12が好ましく、混合前の第2剤のpHは2〜5が好ましい。pH調整剤としては、前記に示すアルカリ剤のほか、塩酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸等の有機酸、塩酸モノエタノールアミン等の塩酸塩、リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二ナトリウム等のリン酸塩等が挙げられる。
【0073】
本発明の染毛剤組成物を用いて毛髪を染色処理するには、例えば、本発明の染毛剤組成物の第1剤と第2剤を混合した後、15〜45℃の温度で毛髪に適用し、1〜60分間、好ましくは3〜45分間の作用時間をおいて毛髪を洗浄した後、乾燥すればよい。
【実施例】
【0074】
実施例1〜5及び比較例1〜6
常法に従い、表1に示す液状二剤式染毛剤第1剤を調製し、1質量部に対し表2に示す共通第2剤Aを1質量部混合した。この混合物1gの染毛剤組成物をそれぞれ40℃でブリーチ処理ライトブロンド毛1gに適用し、30分間の作用時間を置いて毛髪を通常シャンプーで洗浄し、乾燥した。それぞれの染毛毛束の色調を色差計(コニカミノルタセンシング社製色彩色差計CR−400)を用いてCIE表色系(L*,a*,b*)で計測した。
その結果、本発明の染毛剤を用いた場合には、きわめて鮮やかな赤色を付与することができた。
なお、ブリーチ処理ライトブロンド毛は市販の三剤式ブリーチ剤(イナズマブリーチ、花王(株))で50℃30分間処理したものである。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
シャンプー堅牢性試験
得られた染色毛束を、30℃の3.5%ラウリル硫酸ナトリウム200mLに浸漬し、10分間或いは30分間振とう処理した。流水で洗浄後、乾燥し、それぞれの色調を色差計(コニカミノルタセンシング社製色彩色差計CR−400)を用いて再度計測した。下記の式により色相変化ΔH*を算出した。染色直後の色調を表3に、堅牢性試験結果を表4及び図1にまとめて示す。
【0078】
【数3】

【0079】
ここで、(a1*,b1*)、(a2*,b2*)はそれぞれシャンプー前後の毛束の測色値である。
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
これらに示されるとおり、本発明の染毛剤を用いた場合には、シャンプーによる堅牢性が良好で、色相変化がきわめて少なかった。
【0083】
実施例6〜9
常法に従い、表5に示すクリーム状二剤式染毛剤第1剤及び表6に示す共通第2剤Bを調製した。第1剤1質量部に対し第2剤Bを2質量部混合した後、30℃で山羊毛に適用し30分間の作用時間を置いて毛髪を通常シャンプーで洗浄し、乾燥した。得られた染色毛の色調を観察した結果、いずれも鮮やかな赤色が付与され、シャンプー堅牢性は良好で、色相の変化はきわめて少なかった。
【0084】
【表5】

【0085】
【表6】

【0086】
実施例10〜16
常法に従い、表7に示すクリーム状二剤式染毛剤第1剤及び表8に示す共通第2剤C及び共通第2剤Dを調製した。
【0087】
第1剤1質量部に対し共通第2剤C又は共通第2剤Dを1質量部混合した後、30℃で山羊毛に適用し30分間の作用時間を置いて毛髪を通常シャンプーで洗浄し、乾燥した。得られた染色毛の色調を観察した結果、いずれも鮮やかな赤色が付与され、シャンプー堅牢性は良好で、色相の変化はきわめて少なかった。
【0088】
【表7】

【0089】
【表8】

【0090】
実施例17〜21
常法に従い、表9に示すクリーム状二剤式染毛剤第1剤を調製した。
第1剤1質量部に対し共通第2剤C又は共通第2剤Dを1質量部混合した後、30℃で山羊毛に適用し30分間の作用時間を置いて毛髪を通常シャンプーで洗浄し、乾燥した。得られた染色毛の色調を観察した結果、いずれも鮮やかな赤色が付与され、シャンプー堅牢性は良好で、色相の変化はきわめて少なかった。
【0091】
【表9】

【0092】
実施例22〜28
常法に従い、表10に示す液状二剤式染毛剤第1剤を調製した。
第1剤1質量部に対し共通第2剤C又は共通第2剤Dを1質量部混合した後、30℃で山羊毛に適用し30分間の作用時間を置いて毛髪を通常シャンプーで洗浄し、乾燥した。得られた染色毛の色調を観察した結果、いずれも鮮やかな赤色が付与され、シャンプー堅牢性は良好で、色相の変化はきわめて少なかった。
【0093】
【表10】

【0094】
実施例29〜33
常法に従い、表11に示すクリーム状二剤式染毛剤第1剤及び表12に示すカラーブースターを調製した。
第1剤1質量部に対し共通第2剤C又は共通第2剤Dを1質量部混合した後、30℃で山羊毛に適用し30分間の作用時間を置いて毛髪を通常シャンプーで洗浄し、乾燥した。得られた染色毛の色調を観察した結果、いずれも鮮やかな赤色が付与され、シャンプー堅牢性は良好で、色相の変化はきわめて少なかった。
また、第1剤1質量部に対し共通第2剤C又は共通第2剤Dを1質量部、第1剤それぞれに対応するカラーブースター各0.1質量部を混合した後、30℃で山羊毛に適用し30分間の作用時間を置いて毛髪を通常シャンプーで洗浄し、乾燥した。得られた染色毛の色調を観察した結果、いずれも鮮やかな赤色が付与され、シャンプー堅牢性は良好で、色相の変化はきわめて少なかった。
【0095】
【表11】

【0096】
【表12】

【0097】
実施例34〜36
常法に従い、表13に示すクリーム状三剤式染毛剤第1剤及び第3剤を調製した。
第1剤1質量部に対し共通第2剤C又は共通第2剤Dを1質量部、第3剤を0.3〜1質量部混合した後、30℃で山羊毛に適用し、30分間の作用時間を置いて毛髪を通常シャンプーで洗浄し乾燥した。得られた染色毛の色調を観察した結果、いずれも鮮やかな赤色が付与され、シャンプー堅牢性は良好で、色相の変化はきわめて少なかった。
【0098】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】シャンプー前後の毛束の色相変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C)を含有する染毛剤組成物。
(A) 次の一般式(1)で表されるピリミジン誘導体又はその塩、
【化1】

〔式中、R1〜R4は同一又は異なってもよい−NH2、−NHR5又は−NR56を示し、R5及びR6は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示す。〕
(B) 次の一般式(2)で表されるジオキシベンゼン誘導体、
【化2】

〔式中、R7は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又は炭素数2〜5のアルコキシアルキル基を示し、R8及びR9は同一又は異なってもよい水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示す。〕
(C) 酸化剤
【請求項2】
一般式(1)のR1〜R4がいずれもアミノ基であって、一般式(2)のR7がメチル基、R8及びR9がいずれも水素原子であり、かつ成分(A)と成分(B)の総質量が全組成物中に0.5〜10質量%である請求項1記載の染毛剤組成物。
【請求項3】
更に、赤色106号を5質量%以下含有する請求項1又は2記載の染毛剤組成物。
【請求項4】
更に、アルカリ剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の染毛剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の染毛剤組成物を毛髪に適用する染毛方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−290967(P2007−290967A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117051(P2006−117051)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】