説明

染毛用組成物

【課題】ミソハキ科の植物であるヘナの葉の粉末を使用して髪を黒褐色に染めることができる安全性の高い染毛用組成物の提供。
【解決手段】最初に第1剤で処理し、次に第2剤で処理することにより使用する染毛用組成物であって、乾燥したヘナの葉粉末を含む第1剤と、生理学的に許容される水溶性鉄(II)キレート化合物または鉄キレート化合物とエクリクタ・アルバ水抽出エキスを含む第2剤とからなる、染毛用組成物。キレート化合物は、クエン酸鉄(II)またはグルコン酸鉄(II)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥したヘナ葉粉末を染毛成分として含む染毛用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
今日でも合成染料を使った染毛剤がなお主流であるが、毛髪へのダメージが少なく、アレルギー反応等の副作用の懸念のない、合成染料出現前の時代から使用されている天然色素およびそれを含む植物組織を成分とする染毛剤が再び注目されている。ヘナ(Lawsonia inermis L)は、北アフリカ、インド等に自生するミソハギ科の植物であり、その葉はこれらの地方では昔から染毛に使用されていた。今日では乾燥した葉の粉末およびその抽出エキスが染毛用に提供されている。その使用方法は、粉末またはエキスを水に溶かして髪と接触させ、しばらく放置した後洗髪し、乾燥するのが普通である。これによりヘナの有効成分(ローソンすなわち2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン)が毛髪に浸透し、ケラチンとの相互作用により固定化されるといわれている。
【0003】
この場合ヘナ葉乾燥粉末またはそのエキス単独では、髪は赤味を帯びた茶褐色以上の濃色には染色されない。ところが髪全体または一部を黒色に近い褐色に染色を望む場合は、パラフェニレンジアミン等の合成染毛剤か、または他の天然植物色素と併用することを要する。合成染毛剤との併用は、天然物であるヘナの長所が減殺されるばかりでなく、併用する合成染毛剤の発色メカニズムと両立しないため別々に使用する必要があるなどの不便さがある。天然色素との併用でも入手が困難であったり、望みの色彩に仕上げるのが困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開2003−48818号公報
【特許文献2】特開2004−131440号公報
【0005】
ヘナ葉の乾燥粉末と、金属塩と、水と場合により酸を含んでいる液状染毛剤が知られている。この染毛剤は、ヘナの染色有効成分が毛髪内部において金属と錯体を形成し、金属塩を含まない場合はオレンジ色であるが毛髪を褐色に染色すると説明されている。
【0006】
【特許文献3】特開2003−26552号公報
【0007】
そのため、色素成分としてヘナ粉末のみを使用してこれまで可能であったよりも黒色に近い暗褐色に染毛することができる衛生上安全な染毛用組成物の提供が望まれる。先行技術によってはこのような染毛組成物は提供できなかった。
【発明の開示】
【0008】
一面において、本発明は乾燥したヘナの葉粉末(以下「ヘナ粉末」という。)を含む第1剤と、生理学的に許容される水溶性鉄(II)キレート化合物を含む第2剤とからなる染毛剤組成物が提供される。
他の面において、本発明はヘナ粉末を含む第1剤と、生理学的に許容される水溶性鉄(II)キレート化合物およびエクリクタ・アルバ水抽出エキスを含む第2剤とからなる染毛組成物が提供される。
第2剤が水溶性鉄(II)キレート化合物に加え、エクリクタ・アルバ水抽出エキスを含むことによって、無添加のものに比べて一段と黒く染めることができる。
【0009】
好ましくは、水溶性鉄(II)キレート化合物は、ヒドロキシカルボン酸の鉄(II)塩であり、特に鉄欠乏による貧血症の治療用医薬品として承認されているクエン酸鉄(II)またはグルコン酸鉄(II)が最も好ましい。
【0010】
使用法は、洗髪し、タオルなどで余分な水分を拭取った髪に、第1剤のヘナ粉末へ水を加えて得たペーストを塗布し、そのままかまたは40℃前後に加温して10〜60分放置する。その後付着したヘナ粉末を洗い落し、タオルなどで余分の水分を拭取り、第2剤を塗布し、そのまままたは40℃付近に加温して10〜60分放置する。最後は水でよく洗い流し、乾燥して終了する。第1剤を塗布し、洗い流した段階では髪は赤橙色であるが、第2剤での処理により髪は黒褐色に染まる。
【0011】
本発明では、後から使用される第2剤中にシャンプー成分や慣用の毛髪化粧料添加剤を含めることができる。好ましい実施態様においては、第2剤は塗布を容易にするためクリームの形を取ることができ、このクリームが鉄(II)キレート化合物、およびエクリクタ・アルバ水抽出エキスや、シャンプー成分および慣用の毛髪化粧料添加剤を含むことができる。
【0012】
ヘナ粉末と併用して髪を暗赤色に染める効果があるカシア・アウリクラタの葉または樹皮の粉末を第1剤または第2剤の一方または両方、好ましくは第2剤へ含めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の染毛用組成物は、第1剤として乾燥したヘナ葉粉末と、第2剤として溶液またはクリーム中の水溶性鉄(II)キレート化合物か、または水溶性鉄(II)キレート化合物とエクリクタ・アルバ水抽出エキスとよりなる。
【0014】
エクリクタ・アルバ(Eclicta alba)は和名をタカサブロウといい、熱帯、亜熱帯に広く分布する1年生のキク科植物である。花期に地上部を採集し、陰干しした乾燥物の水抽出エキスは東南アジアやインドにおいて頭髪のケアに使用されている。
第2剤に関し、衛生上または生理学的に無害な水溶性鉄(II)キレートを生成する酸は、ヒドロキシカルボン酸である。中でもグルコン酸やクエン酸は哺乳類の糖代謝経路に関与する物質であり、またそれらの鉄(II)塩は鉄欠乏症による貧血の治療剤である。従ってこれらの安全性に懸念のないヒドロキシカルボン酸鉄(II)キレート化合物が最も好ましい。
【0015】
第2剤は、種々の毛髪化粧料に使用される慣用の添加剤や、シャンプー成分を含むことができ、そしてクリームまたは溶液の形を取ることができる。クリームはセタノールを主剤とし、非イオン界面活性剤を含むことができる。他の慣用の添加剤としては、ジプロピレングリコールのような保湿剤、増粘剤などを含むことができる。この溶液へ併用して暗赤色へ染めるのに効果があるカシア・アウリクラタ(Cassia auriculata)粉末を加えてペーストとして用いてもよい。
【0016】
シャンプーとして第2剤を用いる場合には、慣用のシャンプー成分へ鉄キレート化合物、または鉄キレート化合物とエクリクタ・アルバ水抽出エキスを加えるだけでよい。
【0017】
本発明では、鉄キレート化合物が後から適用される第2剤の中に含まれるので、それぞれのヘナ粉末の使用量に応じて第2剤の使用量を調節することによって仕上り後の髪の黒褐色の程度を調節することができる。しかしながらヘナ粉末に対する鉄キレート化合物の比を一定以上に大きくしても、黒褐色の度合を一定以上に強めることはできない。しかしながら標準的処方においては、ヘナ粉末:鉄キレート化合物の重量比は1:0.1〜1:1.5の範囲内であろう。黒褐色の度合を強くするにはエクリクタ・アルバ抽出エキスを併用すればよい。
【実施例】
【0018】
すべての実施例において第1剤は乾燥したヘナ葉粉末であるから、第2剤の処方のみを示す。
【0019】
実施例1
第2剤:
セタノール 8(g)
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 3
ポリオキシエチレンセチルエーテル 5.2
ジプロピレングリコール 7
グルコン酸鉄(II) 5
精製水 適量
計 100g
【0020】
エキリクタ・アルバ水抽出エキス3gを加える場合は、精製水をその分減量する。
【0021】
使用例:
(a)ヘナ粉末3gに精製水10mlを少量ずつ加えてよく攪拌し、ペーストとする。洗髪し、タオルで水分を拭取った長さ1cm、重さ1gのヤクの毛束に均一にペーストを塗布し、そのままか、または40℃前後に加温して10−60分放置する。その後付着したヘナ粉末を水で洗い流し、タオルで水分を拭取ると、毛束は赤橙色に染色される。
(b)次に、第2剤のクリーム3.5gに精製水7mlを加え、より振り混ぜて均一な希釈クリームとし、この希釈クリーム7gを上の赤橙色に染色されたヤク毛束に均一に塗布し、(a)工程と同じ条件で放置した後よく水洗し、乾燥する。毛束は黒褐色になる。
【0022】
実施例2
第2剤としてエクリクタ・アルバの水抽出エキス1gと、グルコン酸鉄(II)0.3gと、カシア・アウリクラタ(Cassia auriculata)の微粉末3gに精製水10mlを少量ずつ加えペーストに調製する。このペーストを実施例1の工程(a)で得た赤橙色のヤク毛束に均一に塗布し、実施例1の(b)工程と同じ条件で放置した後よく水洗し、乾燥する。毛束は黒褐色になる。
【0023】
実施例3
実施例1の(a)工程で得た赤橙色のヤク毛束を、下記処方のシャンプーで数分間シャンプーし、よく水洗し、乾燥した。毛束は黒褐色になる。
【0024】
シャンプーの処方
ポリオキシエチレン(3モル)ラウリル酸ナトリウム 7g
ラウリル硫酸トリエタノールアミン 5
ラウリルアミドプロピルベタイン 5
グルコン酸鉄(II) 5
エクリクタ・アルバ水抽出エキス 3
精製水 適量
計 100g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最初に第1剤で処理し、次に第2剤で処理することにより使用する染毛用組成物であって、
乾燥したヘナの葉粉末を含む第1剤と、
生理学的に許容される水溶性鉄(II)キレート化合物または水溶性鉄(II)化合物とエクリクタ・アルバ水抽出エキスを含む第2剤とからなる、染毛用組成物。
【請求項2】
前記水溶性鉄(II)キレート化合物は、クエン酸鉄(II)またはグルコン酸鉄(II)である請求項1の染毛用組成物。
【請求項3】
第2剤はクリームの形である請求項1または2の染毛用組成物。
【請求項4】
第2剤は溶液の形である請求項1または2の染毛用組成物。
【請求項5】
第2剤はシャンプーの形である請求項1または2の染毛用組成物。
【請求項6】
第2剤は、カシア、アウリクラタの微粉末を加えたペーストの形である請求項1または2の染毛用組成物。

【公開番号】特開2010−70524(P2010−70524A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242173(P2008−242173)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(508284883)株式会社ミューズ (1)
【出願人】(508285868)ホウケミカル株式会社 (1)
【Fターム(参考)】