説明

染色された生物試料用の発光ダイオードを具える照射源

顕微鏡照射システム(10)は、少なくとも4つのLED光源(16R、16B、16G、16Y)を有する光源(16)を具え、各LED光源は、可視スペクトルの異なる部分内の光を放出する。少なくとも4つのLED光源の各々は独立して制御可能にしても良い。少なくとも4つのLED光源から放出される結果として生じる光は、白熱光源からのものとほぼ似ている。一実施例において、システムは、少なくとも1の赤色LED(16R)と、少なくとも1の緑色LED(16G)と、少なくとも1の青色LED(16B)と、少なくとも1の黄色LED(16Y)とを具える。他の色の組合せも可能である。照射源は、光源の光路内にスライド(14)などの試料ホルダを配置するように配置しても良い。システムは、さらに、生物試料の画像を拡大するための光学拡大システム(22)を具えても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、一般的に細胞学及び組織学分野に関するものである。より詳細には、本発明の分野は、1又はそれ以上の発光ダイオード(LED)を使用して、染色された生物試料を照射する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどの顕微鏡は、従来からの白熱灯を使用して染色された生物試料を照射する。白熱灯は、可視スペクトル(約400nm乃至約700nm)の全ての色を組み合わせた白色光を放出する。しかし、残念なことに、白熱灯は大量の熱を放出し、エネルギー効率が低く、しばしば、頻繁に交換することを必要とする。
【0003】
発光ダイオード(LED)は一般的に既知の光源であり、可視スペクトルの狭い帯域のみをカバーする単色を発生させる。たとえば、450nm、525nm、及び625nmに集中している狭い帯域の光を作り出すLEDは、人間の目には、青、緑、及び赤としてそれぞれ見えうる。色というものは、目に特別な細胞を有している人間によって視覚化されるものである。具体的には、人間の目は3種類の色受容細胞を有している。これらは、いわゆる、S−cone、M−cone、L−coneを含んでおり、これらは、それぞれ短波長、中波長、長波長の可視光を検出する。3種類全ての錐体細胞は、広い帯域の波長に敏感であるが、ピーク感度は異なっている。例えば、S−coneは420nm(青)周辺で最も敏感となり、M−coneは534nm(緑)周辺、L−coneは564nm(赤)周辺で敏感となる。
【0004】
目は、基本的にスペクトル特性を統合して3つの信号を生成する。信号の一つは光度である。もう1つは、青色光と黄色との差別化である。最後の3つ目は、黄色を赤又は緑の光に分ける。スペクトルをこのように統合することによって、色を相互に平均化する。黄色のLED(590nm)からの光は、緑及び赤色LEDを組み合わせた光(530nm及び650nm)と同じように目に見える。赤と緑が釣り合って、両方とも青に勝るからである。
【0005】
様々な強さの赤、緑、青の光を結合することによって、ほとんど、どんな色の態様も作ることができる。たとえば、別々に色が付いた赤、緑、及び青色LEDを用いた顕微鏡照射システムは、オペレータの選択に従い、どんな色の照射にも調節することができる。
【0006】
一般的な顕微鏡画像アプリケーションでは、生物試料を照射するために従来の白熱電球から放出する光である白色光を必要とする。疾病状態のための生物試料の観察を学んでいる病理学者及び他の人は、広帯域の、白熱光源で照射される試料を分析することに精通している。従来の白熱光源から放出される白色光を模倣するために、LEDを用いる試みがなされてきた。たとえば、単一LEDを作り、白色光に近くするために色のついた光を混合する。たとえば、前記設計において、青色光は窒化ガリウムダイオード半導体(460nm周辺)から放出される。約550nm乃至約650nmの範囲の第2の光は、高分子ジャケットの内側に位置する蛍光体コーティングによって放出される。この波長を組合せることによって、比較的高温の「白色」光が生成される。上記に述べたタイプのLEDは、これらが比較的長い波長(例えば赤色光)の光を生成するのに適していないという問題を有している。
【0007】
さらに別の構成において、赤、緑、及び青色LEDからの光を白色に見える照射を生成するように結合するが、十分な可視スペクトルを含んでいない。特に、黄色の帯域(約565nm乃至約590nm周辺)の照射の強さが非常に低い。黄色部分のスペクトルのこの隙間は、染色された細胞試料が白熱灯で照射される場合と比較して、これらのいくらかが異なる色に見えてしまう原因となる。これは、病理学者や他の訓練された人によって、染色された生物試料が、従来の白熱の白色光と比較してLED式の白色光の下で異なって見えてしまうので問題となる。しかしながら、病理学者は、一般的に、広い帯域の白熱光源を用いる顕微鏡で訓練される。異なる視覚的な様相によって、スライドの結果が混乱してしまい、誤解を与えることになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例では、顕微鏡照射システムは、少なくとも4つのLED光源を有する光源を具え、各LED光源は、可視スペクトルの異なる部分内の光を放出する。少なくとも4つのLED光源の各々は、独立して制御可能にしても良い。少なくとも4つのLED光源から放出される結果として生じる光は、白熱光源からのものにほぼ近い。少なくとも4つのLED光源は、結合するときに白熱又は広帯域の光源から放出される光にかなり近い任意の色にしても良い。例えば、少なくとも4つのLEDは、赤色LEDと、青色LEDと、緑色LEDと、黄色LEDとを具えても良い。照射システムは、各色の単一のLEDを具えるか、又は照射システムが各色の複数のLEDを具えるようにしても良い。さらに別の実施例では、照射システムは、単一の赤色LED、緑色LED、及び青色LEDと、複数の黄色LEDとを具えても良い。さらに他の色の組合せが可能である。例えば、4つのLEDの色は、紫色、青緑色、黄緑色、及び橙色を含んでも良い。
【0009】
本発明の一実施例では、照射システムは、4色のLEDに動作可能に接続された1又はそれ以上の駆動回路を具える。例えば、第1の回路は、RGB色を駆動するために使用される一方、第2の回路は、黄色LEDを駆動するために使用されても良い。別の代替物として、各色(赤、緑、青、及び黄)は、別個の回路によって制御されても良い。別の実施例において、個々の色付きLEDの輝度は、独立して制御可能である。4色LEDは、分離しているか、これらは、単一又は複数のモジュールに一体化されていても良い。例えば、RGB LEDは、一のモジュールであるが、黄色LEDは分離したモジュールに配置されても良い。
【0010】
本発明のさらに別の実施例において、顕微鏡照射システムが、少なくとも1の赤色LEDと、少なくとも1の緑色LEDと、少なくとも1の青色LEDと、少なくとも1の黄色LEDとを具える光源を具える。顕微鏡照射システムは、光源の光路内に配置されるホルダを具える。試料ホルダは、光学照射の光路内に生物試料を保持するように構成される。顕微鏡照射システムは、生物試料の拡大画像を取得するための光学システムを具える。例えば、カメラを使用して、生物試料の拡大画像を取得するようにしても良い。代替的に、従来の顕微鏡レンズを使用可能である(例えば、対物レンズや同様のもの)。
【0011】
本発明のさらに別の実施例において、生物試料を照射する方法が、1の赤色LEDと、1の緑色LEDと、1の青色LEDと、別の黄色LEDとを具える少なくとも4つのLEDを具える照射を提供するステップを具える。黄色LEDは、従来のRGB LEDユニットと比較されるときの黄色部分の可視スペクトルの隙間を埋める。次いで、組織部分、細胞、又は複数の細部を含む生物試料が、照射源の光路に提供される。一般的に生物染色で染色された生物試料は、少なくとも4つのLEDで照射される。様々な色のLEDの輝度は、画像の外観を変えるために調節されても良い。例えば、黄色LEDの輝度は、知覚される色相を変えるために調節されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
次に、本発明の実施例が、添付した図面を通じて追加的な特異性及び詳細とともに記述され説明されている。
【図1】図1は、本発明の一実施例に従って、LED式照射システムを概略的に示す。
【図2】図2は、本発明の別の実施例に従って、LED式照射システムを概略的に示す。
【図3】図3は、4つの色付LEDが、分離している駆動回路によってそれぞれ駆動される実施例を示す。
【図4】図4は、複数の黄色LEDに囲まれた、赤色LEDと、緑色LEDと、青色LEDとを具えるLED式光源を示す。
【図5】図5は、赤色LEDと、緑色LEDと、青色LEDとを具える第1モジュールにおける別のLED式光源を示す。第2のモジュールが、少なくとも1の黄色LEDを具えて提供されている。2つのモジュールはビームスプリッタに対して配列されており、黄色の光が赤色、緑色、及び青色の光と結合されて白色光を作り、試料を照射する。
【図6】図6は、4色(赤、緑、青、及び黄)LED式照射システムの波長特性である光度のグラフを示す。
【図7】図7は、4色(赤、緑、青、及び黄)LED式照射システムの波長特性である光度のグラフを示す。また、ステイン・エオシンYの吸収スペクトルも示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、顕微鏡照射システム10を概略的に示す。広い意味において、顕微鏡照射システム10は、少なくとも4つの別々のLEDを具える照射源又は光源12を具える。LEDは、少なくとも1の赤色LEDと、少なくとも1の緑色LEDと、少なくとも1の青色LEDと、少なくとも1の黄色LEDとを具える。上述した色は、それぞれのLEDから放出される光の色に言及している。例えば、赤色LEDは、一般的に、約625nm乃至約660nmの範囲内の光を放出する。例えば、緑色LEDは、一般的に、約480nm乃至約575nmの範囲内の光を放出する。例えば、青色LEDは、一般的に、約450nm乃至約500nmの範囲内の光を放出する。例えば、黄色LEDは、一般的に、約575nm乃至約625nmの範囲内の光を放出する。もちろん、これらの範囲は、それぞれのLEDから送られる光の大部分を含んでいることを意味しており、記載した範囲を越えた放出がいくらか起こることが予期される。
【0014】
以下に更に詳細に説明されるように、赤、緑、及び青色LEDのみを照射源として使う場合、黄色LEDを追加することによって、顕微鏡照射システム10からの発光スペクトルの隙間を埋める。この点に関し、黄色LEDの追加をすることによって、LED式顕微鏡照射システムで観察される生物試料の外観を、従来の白熱システムで観察される同じ試料とより似るようにすることができる。この点に関し、病理学者及び他の訓練された専門家は、生物試料の特定の構造及び態様の視覚化をより良くすることができる。たとえば、エオシンYとオレンジG染色など特定の染色剤が用いられるとき、ユーザにとって、LEDからのRGB(赤、青、緑)の照射源のみで照射される細胞及び細胞構造は、従来の広い帯域の(白熱光源)で照射される同じ対象と比較すると視覚的に異なるように見えてしまう。黄色LEDを追加することによって、この問題を緩和することができる。
【0015】
図1に戻って参照すると、顕微鏡照射システム10の一の目的は、複数の異なる色のLED16を用いて、顕微鏡スライド14上の生物(例えば、細胞学的)標本12を画像化するための「白色」光源を提供することである。照射源は、少なくとも1の赤色LED16Rと、少なくとも1の緑色LED16Gと、少なくとも1の青色LED16Bと、少なくとも1の黄色LED16Yとを具える。各LED16は、明るい白色光が、生物標本12を照射して視覚化することを可能とするように高輝度LEDにしても良い。複数のLEDを、単一の別個のLEDの組合せ又はカスタムマルチ型LED式モジュールで形成しても良い。例えば、個々のLEDは、常時簡単に購入可能な構成部材で組み立てて、照射源サブアセンブリを構成しても良い。代替的に、個々のLEDダイが共通の基板18(図1及び2に示す)に取り付けられたLED式モジュールを使用しても良い。
【0016】
LED16が発熱して、LEDの温度が上昇すると、出力波長がシフトする。発生する熱量は、LEDが駆動される電流及び電流が流れる持続時間に依存する。波長をシフトさせる原因になる十分な熱を発生させることなく、装置からの光出力を増やすために、LED16は、パルス回路20によって駆動されても良く、特定の実施例では、カメラとの統合している間、イメージングシステム10のカメラ22と同期して、短く強いパルス光をカメラ22へ送り出す。本実施例において、カメラ22は、続いて観察および/又は分析するために、生物標本12の画像を拡大し捕捉する。もちろん、たとえば、顕微鏡照射システム10が人間のオペレータによって用いられる場合、LED16はカメラ22と同期する必要はない。本実施例において、カメラ22は、従来の拡大レンズ(例えば対物レンズなど)と置き換えられても良い。この適用例では、LED16は連続的に動かされ、同期する必要がない。
【0017】
図1に戻って参照すると、カメラ22を用いる実施例において、例えば、方形波発生器26を用いて、カメラ/フレームグラッバ24及びLEDパルスドライバ20の両方をトリガとする外部トリガを提供することによって、LEDパルスは、カメラフレーム統合と同期する。カメラ22は、トリガに即時に応答するものではない。この遅延を補償するために、パルス駆動回路20はプログラム可能な遅延を用いて、システムと同期する。もちろん、カメラの種類及び実際の実装に依存する他の同期方法も可能である。
【0018】
照射システム10は、カメラ22によって撮られる画像の取得及び保存を制御するために使用可能なパソコンなどのプロセッサ29を具えても良い。プロセッサ29は、画像シーケンスの様々な機能を調整し、さらに生物標本12のデジタル画像を保持する又は伝送するようにしても良い。
【0019】
LED16は、本来、不均一な出力光を空間的に作り出し、いくつかの光学アプリケーションでは、試料の適切な均一の照射を必要とする。均一性を問題とする状況では、空間的に均一な照射を作り出す2種類のシステムを、LED16、すなわち、ケーラ(Koehler)及びファイバオプティックシステムとともに用いても良い。これらのシステムのどちらにも使用されるLED16は、近接してまとめられた別個のLED16にするか、又はより高密の装置を作るために、複数のLED16ダイを単一の基板18に集積しても良い。
【0020】
ケーラ照明(図1及び2参照)は一般的な技術であり、従来の顕微鏡照射器で用いられる空間的に不均一な白熱灯のフィラメントから顕微鏡スライド14の均一な照射を作る。検査で測定されたように、この技術は、LED16を使用するときに均一性を達成するために等しく効果的である。LED式照射システム10の一実施例において、個々のLED16は、互いに近くでまとめられて、従来のケーラ照明28におけるランプフィラメントの一般的な位置に配置される。
【0021】
図2に見られるように、均一性を達成する別の実施例において、複数のLED16が、レンズ又は他の光学装置とともに、ラージコア(約500乃至約600μm)光ファイバ30に連結されている。本書に全体を説明したものとして参照によって盛り込まれている米国特許第6,665,060号は、LED16と共に使用されうるレンズを開示している。ファイバ30の長さが選択され、LED16の空間的な不均一性が互いに混合されて、ファイバ30からの比較的均一な空間出力が達成される。実際には、ファイバ30の出力は、ほぼ、空間プロフィールにおけるガウス分布である。ファイバ30は、中央の、比較的平らな、出力部分のみを使用するために、顕微鏡スライド14から離れていなければならないかもしれない。個々のLED16の代替として、複数のLEDダイ(図1及び2参照)が単一基板18に配置されても良い。個々のレンズを各ダイ上に配置して、各ダイからの放射が狭い円錐に収集されるようにすることができる。特定の実施例では、ケーラ照明28、30は全く存在しなくても良い。
【0022】
上述したように、図1及び2における黄色LED16Yは、RGB LED16R、16G、16Bを使用して放出された光の発光スペクトルの隙間を埋める。スペクトルの黄色領域(約565nm乃至約590nm)における照射強度は、少なくとも1の黄色LED16Yが存在することによって満たされる。図1及び2が、単一の黄色LED16Yを示している一方、いくつかの実施例において、複数の黄色LED16Yを使用しても良い。例えば、一の構成において、複数の黄色LED16Yは、RGB LED16R、16G、16B又はLEDダイを具える内部を囲む又は包含する(たとえば図4参照)。
【0023】
図3に示すように、本発明の一実施例では、複数のLED16R、16G、16B、及び16Yが、分離している駆動回路によって駆動される。すなわち、少なくとも1の赤色LED16Rは第1の駆動回路40Rによって駆動され、少なくとも1の緑色LED16Gは、第2の、分離している駆動回路40Gによって駆動され、少なくとも1の青色LED16Bは、第3の、分離している駆動回路40Bによって駆動され、少なくとも1の黄色LED16Yは、第4の、分離している駆動回路40Yによって駆動される。図3は、本実施例を示しており、分離している駆動回路40R、40G、40B、40Yは各々、それぞれのLED16R、16G、16B、及び16Yに連結している。
【0024】
駆動回路40R、40G、40B、40Yは、一般的に、LED16R、16G、16B、及び16Yに電流を適用するための電流源を具えている。電流がLEDp−n接合全体でフォワードバイアスされるときに光がダイオードから放出される。駆動回路40R、40G、40B、40Yは、互いに独立したLED16R、16G、16B、及び16Yの輝度を調節することができる。例えば、黄色LED16Yの輝度は、赤、緑、及び青色LED16R、16G、16Bを独立して調節するようにしても良い。輝度のレベルは、パルス幅の変調を利用して調節される。例えば、10%の輝度レベルを達成するために、電流は、10%の時間の「オン(on)」状態と90%の時間の「オフ(off)」状態でパルス化される。パルス幅の変調は、LEDの輝度レベルを制御するための公知の方法である。駆動回路40R、40G、40B、40Yは、1又はそれ以上のマイクロプロセッサを用いて実装されても良い。
【0025】
図4及び5は、照射システム10用LED式光源50のための2つの例示的な構成を示している。図4において、一連の黄色のLED16Yは、赤、緑、青色LED16R、16G、16Bを具えるLEDモジュール42を囲む。黄色LED16Yは、LEDモジュール42周囲に対称的な方法で配列されている。図5は、LED式光源50の別の構成を示しており、赤、緑、及び青色LED16R、16G、16Bを具えるモジュール42は、ビームスプリッタBSに放射を放出する。黄色LED16Yを具える別個のモジュール42は、黄色LED16Yから放出する黄色の光が、ビームスプリッタを介して伝えられる赤、緑、及び青色の光と組み合わされ又は結合されるように、RGBモジュール42の光路にほぼ垂直に配置される。もちろん、図4及び5のLED式光源50は、例示であり、赤、緑、青、黄色LED16R、16G、16B、及び16Yを組み合わせた他の構成が本発明内で考えられる。
【0026】
黄色のLED16Yの存在は、可視スペクトル(約565nm乃至約590nm)のこの領域の隙間を満たす。図6は、赤、緑、青、黄色LED16R、16G、16B、及び16Yを使用する照射システム10のスペクトルを示す。この第4の(すなわち黄)色を追加することによって、試料が、広い帯域の白熱光源で照射される場合、染色された生物試料(例えば、細胞)を知覚される色により近く見えるようにする。例えば、本発明は、エオシンY(C20H6Br4Na2O5;CAS No.17372−87−1)、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)方法におけるミョウバンヘマトキシリンに対する一般的な対比染色剤などの生物染色を使用する染色された生物試料をとくに対象としている。エオシンYは、約525nm周辺に吸収ピークを有する狭い帯域の光を吸収する。この吸収ピークは、緑色LED16Gのピーク放出波長とほとんど正確に対応している。図7は、4色のLED16R、16G、16B、及び16Yの照射スペクトルに重ね合わせたエオシンYの吸収スペクトルを示す(図6)。エオシンYで染色された試料では、緑色の光のほとんどが遮断されるが、青、黄、及び赤色波長が伝えられることに留意する。
【0027】
エオシンYで染色された生物試料が白熱光源で照射される場合、緑の光のほとんどが遮断され、残りのスペクトルが淡いピンク色として人間の目に知覚される。しかしながら、エオシンYで染色された生物試料が、赤、緑、青色LED16R、16G、16Bだけを用いて照射される場合、黄色の波長が存在しないことによって、生物試料の知覚される色からかなりシフトしてしまう。白熱光源と同様に、緑の光のほとんどが遮断され、赤及び青の残りの混合は、マゼンタの高飽和状態の色合いとして人間の目に知覚される。従って、エオシンYで染色された、細胞の厚いクラスタは、かなり暗く飽和して見え、核を特定することが難しい。病理学者または細胞検査技師は、このように、彼または彼女が従来の白熱照射源の下で見えるであろうと予期するものとかなり異なる画像を見ることになる。
【0028】
同様の色の知覚が、オレンジG染色(1−フェニルアゾ−2−ナフトール−6,8−ジスルホン酸ジナトリウム塩;C16H10N2Na2O7S2、CAS No.1936−15−8)で染色された生物標本に起こるようにしても良い。赤、青、緑色LEDのみを具えるLED式照射システムを用いて、生物試料を照射し観察する場合、オレンジG染色とエオシンYを区別することは難しい。しかしながら、オレンジG染色はガンを角質化する指標であるため、これは問題である。したがって、RGBカラーのみに依存する照射システムでは、誤診の可能性がある。
【0029】
細胞染色が診断情報を提供するので、LED照射された生物構造(例えば、細胞及び細胞小器官)が、顕微鏡に一般的に用いられる白熱光源によって照射されるものと同じように見えることは避けられない。RGB LEDのみが細胞を照射するために用いられる場合、異なる外観を有するため、病理学者または細胞検査技師によって試料が誤診される可能性がありうる。
【0030】
しかしながら、この問題は、黄色のLED16Yを追加し、LED16R、16G、16B、及び16Yの相対的な強さを調節して、光がさらに白色に見えるようにする場合に解決される。結果的に、エオシンYで染色される試料は、暗いマゼンタ色の色彩よりも、むしろ予期されるであろうピンクがかったトーンで知覚される又は視覚化される。白熱光源と同様に、LED16Gからの緑の光のほとんどは遮断され、残りの赤、青、及び黄色の光が混合して、淡いピンクの色として人間の目に知覚される。知覚される色相は、白熱照射の外観に一致するように黄色の光の輝度を変えることによって調節できる。例えば、図3を参照すると、LED駆動回路40Yを用いて、パルス幅変調を調節することによって黄色LED16Yの輝度を変えても良い。
【0031】
改良された白色照射は、1又はそれ以上の従来の赤、緑、及び青色LED16R、16G、16Bに加えて、1又はそれ以上の黄色LED16Yを組み込むLEDモジュール42を構築することによって達成可能である。代替的に、複数のLEDモジュール42を組み合わせて、広帯域の白熱光源を模倣するようにしても良い。本書に記載した本発明は、4色のLED(赤、緑、青、及び黄)を用いて説明されているが、可視スペクトルを十分にカバーする任意のLEDの色を組合せることによって同様の結果を達成できる。たとえば、紫色、青緑色、黄緑色、及び橙色のLEDを組み合わせることによって、赤、緑、青、及び黄色LEDによって作られるのと同じ程に十分なスペクトルを提供するだろう。本書に説明しているタイプの照射システム10のLEDが追加の色を具えることは、白熱放射から放出さられるスペクトルに等しいより完全な、十分なスペクトルを提供することができるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色された生物試料用照射システムにおいて:
少なくとも4つのLED光源を具え、各LED光源は、異なる部分の可視スペクトル内の光を放出し、前記少なくとも4つのLED光源の各々は、独立して制御可能であり、前記少なくとも4つのLED光源から放出された合成光は、白熱光源からのものと実質的に近いことを特徴とする照射システム。
【請求項2】
請求項1に記載の照射システムにおいて、前記照射システムが、単一の赤色LED光源と、単一の緑色LED光源と、単一の青色LED光源と、複数の黄色LED光源とを具えることを特徴とする照射システム。
【請求項3】
請求項2に記載の照射システムにおいて、前記複数の黄色LED光源が、前記赤色LED光源、前記緑色LED光源、及び前記青色LED光源を囲む環状に配列されることを特徴とする照射システム。
【請求項4】
請求項2に記載の照射システムがさらに、輝度を調節すべく前記複数の黄色LED光源の接続される回路を具えることを特徴とする照射システム。
【請求項5】
請求項1に記載の照射システムにおいて、前記少なくとも4つのLED光源が、各色のそれぞれの輝度を調節するために、別個の駆動回路に接続されることを特徴とする照射システム。
【請求項6】
請求項1に記載の照射システムにおいて、前記少なくとも4つのLED光源が、紫色LEDと、青緑色LEDと、黄緑色LEDと、橙色LEDとを具えることを特徴とする照射システム。
【請求項7】
染色された生物試料用照射システムにおいて:
少なくとも1の赤色LED光源と;
少なくとも1の青色LED光源と;
少なくとも1の緑色LED光源と;
少なくとも1の黄色LED光源とを具えることを特徴とする照射システム。
【請求項8】
請求項7に記載の照射システムにおいて、前記照射システムが、単一の赤色LED光源と、単一の緑色LED光源と、単一の青色LED光源と、複数の黄色LED光源とを具えることを特徴とする照射システム。
【請求項9】
請求項8に記載の照射システムにおいて、前記複数の黄色LED光源が、前記赤色LED光源、前記緑色LED光源、及び前記青色LED光源を囲む環状に配列されることを特徴とする照射システム。
【請求項10】
請求項7に記載の照射システムがさらに、輝度を調節すべく、前記少なくとも1の黄色LED光源に接続される回路を具えることを特徴とする照射システム。
【請求項11】
請求項7に記載の照射システムにおいて、前記少なくとも1の赤色LED光源が約625nm乃至約660nmの範囲内の光を放出し、前記少なくとも1の青色LED光源が約450nm乃至約500nmの範囲内の光を放出し、前記少なくとも1の緑色LED光源が約480nm乃至約575nmの範囲内の光を放出し、前記少なくとも1の黄色LED光源が約575nm乃至約625nmの範囲内の光を放出することを特徴とする照射システム。
【請求項12】
請求項7に記載の照射システムにおいて、前記少なくとも1の赤色LED光源、前記少なくとも1の緑色LED光源、前記少なくとも1の青色LED光源、及び前記少なくとも1の黄色LED光源が、各色のそれぞれの輝度を調節するために、別個の駆動回路に接続されることを特徴とする照射システム。
【請求項13】
請求項7に記載の照射システムにおいて、前記少なくとも1の赤色LED光源、前記少なくとも1の緑色LED光源、及び前記少なくとも1の青色LED光源が第1のモジュールに含まれ、前記少なくとも1の黄色LED光源が、第2のモジュールに含まれることを特徴とする照射システム。
【請求項14】
請求項13に記載の照射システムにおいて、前記第1及び第2のモジュールは、ビームスプリッタに対して実質的に垂直に配列され、前記ビームスプリッタが、前記第1のモジュールから放出された光を前記第2のモジュールから放出された光と結合することを特徴とする照射システム。
【請求項15】
顕微鏡照射システムにおいて:
少なくとも1の赤色LEDと、少なくとも1の緑色LEDと、少なくとも1の青色LEDと、少なくとも1の黄色LEDとを具える光源と;
生物試料を保持するように構成され、前記光源の光路内に配置される試料ホルダと;
前記生物試料の画像を拡大するための光学拡大装置とを具えることを特徴とする顕微鏡照射システム。
【請求項16】
請求項15に記載の顕微鏡照射システムにおいて、前記光源が、前記少なくとも1の赤色LEDと、少なくとも1の緑色LEDと、少なくとも1の青色LEDとを囲む、複数の黄色LEDを具えることを特徴とする顕微鏡照射システム。
【請求項17】
請求項15に記載の顕微鏡照射システムにおいて、前記少なくとも1の赤色LED、少なくとも1の緑色LED、少なくとも1の青色LED、及び少なくとも1の黄色LEDが共通の基板に取り付けられることを特徴とする顕微鏡照射システム。
【請求項18】
請求項15に記載の顕微鏡照射システムがさらに、前記少なくとも1の赤色LEDと、前記少なくとも1の緑色LEDと、及び前記少なくとも1の青色LEDとに対して前記少なくとも1の黄色LEDの輝度を変更するための制御回路を具えることを特徴とする顕微鏡照射システム。
【請求項19】
請求項15に記載の顕微鏡照射システムにおいて、前記少なくとも1の赤色LED光源が約625nm乃至約660nmの範囲内の光を放出し、前記少なくとも1の青色LED光源が約450nm乃至約500nmの範囲内の光を放出し、前記少なくとも1の緑色LED光源が約480nm乃至約575nmの範囲内の光を放出し、前記少なくとも1の黄色LED光源が約575nm乃至約625nmの範囲内の光を放出することを特徴とする顕微鏡照射システム。
【請求項20】
生物試料を照射する方法において:
少なくとも1の赤色LEDと、少なくとも1の緑色LEDと、少なくとも1の青色LEDと、少なくとも1の黄色LEDとを含む少なくとも4つのLEDを具える照射源を提供するステップと;
前記照射源の光路に生物試料を提供するステップと;
前記少なくとも4つのLEDで前記生物試料を照射するステップとを具えることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記照射源が、複数の黄色LEDを具えることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項20に記載の方法がさらに、前記少なくとも1の黄色LEDの輝度を残りの3つのLEDに対して調節するステップを具えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−514101(P2010−514101A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541472(P2009−541472)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/086162
【国際公開番号】WO2008/073728
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(507130015)サイテック コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】