柔軟性グラファイト複合材料
柔軟グラファイトシートであって、その表面からシート中に延びるセラミック繊維が埋め込まれてシートの樹脂浸透性を増加し、機械的変形によって溝をつくって燃料電池におけるフローフィールド板として有効な形になっている柔軟グラファイトシート。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野 本発明は、ガスケットの製造および燃料電池に使用するフローフィールド板の製造に使用できる柔軟性グラファイトおよび針状セラミック粒子の複合材料に関するものである。
【0002】
発明の背景 本明細書で使用される「柔軟性グラファイト」という用語は、グラファイトの結晶構造に層間挿入(intercalate)し、その層間挿入された粒子を結晶構造の炭素層に垂直な方向に少なくとも80倍またはそれ以上膨張させる薬剤で処理された、急速に加熱された天然グラファイト粒子の剥皮した反応生成物を表す。柔軟性グラファイトおよびその製造は、Shane他の米国特許第3,404,061号明細書に記載されている。膨張した、即ち剥皮したグラファイトを、圧縮して理論密度に近い密度を有する薄いシート(以下柔軟性グラファイト「箔」と称する)にすることもできるが、約10〜85lbs/ft3(0.16〜1.36g/cm3)の密度が、エンジン排気管および他の用途でのシールリングとして適した形状への圧縮を含め、ほとんどの用途に適している。
【0003】
膨張可能なグラファイト粒子の通常の製造方法は、Shane他の米国特許第3,404,061号明細書に記載されており、その開示を参照により本明細書に組み込む。この方法の典型的な実施において、天然グラファイトフレークは、酸化剤、例えば硝酸および硫酸の混合物、を含む溶液にフレークを分散されることにより層間挿入される。層間挿入溶液(intercalation solution)は、当業界に公知の酸化剤および他の層間挿入剤を含む。例としては、硝酸、塩素酸カリウム、クロム酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム、二クロム酸カリウム、過塩素酸などの溶液または濃硝酸と塩素酸塩、クロム酸とリン酸、硫酸と硝酸などの混合物などの酸化剤および酸化剤の混合物または強い有機酸、例えばトリフルオロ酢酸および有機酸に可溶な強い酸化剤がある。好ましい層間挿入剤は、硫酸、または硫酸およびリン酸と酸化剤、即ち硝酸、過塩素酸、クロム酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素、ヨウ素酸または過ヨウ素酸との混合物の溶液である。好ましさは劣るものの、前記層間挿入溶液は、塩化第二鉄および硫酸と塩化第二鉄の混合物などの金属ハロゲン化物または臭素と硫酸の溶液としての臭素または有機溶媒中の臭素などのハロゲン化物を含んでもよい。フレークが層間挿入されたあと、フレークから余分な溶液を流し去り、水で洗浄した後、層間挿入されたグラファイトフレークを乾燥すると、数秒炎に暴露するだけで膨張可能となる。このように処理されたグラファイト粒子を、以下「層間挿入されたグラファイト粒子」と呼ぶ。高温に暴露されると、層間挿入されたグラファイト粒子は、アコーディオンのようにc方向、即ちグラファイトの構成粒子の結晶面に垂直な方向に、元の体積の80から1000倍またはそれ以上に膨張する。剥皮したグラファイト粒子は外見が蠕虫のようなので、普通ウォームと呼ばれている。ウォームは、互いに圧縮して柔軟性シートにすることができるが、これは元のグラファイトフレークとは異なり、さまざまな形状に形成したり、切断したりすることができる。
【0004】
柔軟性グラファイト箔は取扱い強度が良好で密着性があり、柔軟性グラファイト箔は巻いてロールにしたり、マンドレルなどの金属治具の周りに巻き付けたりでき、望ましい伝熱特性を有し、したがってエンジン排気管シールリング用途などの高温用途に特に有用である。柔軟性グラファイトシートまたは箔に樹脂を含浸されることによりその密封性を高めることが提案されてきた。しかし、柔軟性グラファイトシートまたは箔の表面層は、剥皮したグラファイト粒子の配列および柔軟性シートまたは箔の表面に平行な原子の構成層により、前記シートまたは箔が液体樹脂中に浸漬されるとき樹脂の含浸を受け付けない。しかし、柔軟性グラファイトシートへの浸透が最初に達成できれば、よく知られている柔軟性グラファイトの異方性により、シートまたは箔の対向する平行で平坦な表面およびシートの構成グラファイト粒子の面に平行な方向、即ちグラファイト粒子の「c軸」方向に直角に樹脂は柔軟性グラファイトシート内を容易に流れる。
【0005】
発明の要約 本発明は、対向する平行で平坦な外表面を有する柔軟性グラファイト、および前記柔軟性シートに埋封され柔軟性シートの内部から柔軟性グラファイトシートの平坦な外表面の少なくとも1つに延びている針状セラミックファイバー粒子の樹脂含有シートの複合材料に関するものである。本発明の柔軟性グラファイトシートは、電気化学的燃料電池用のフローフィールド板に成形できる。
【0006】
詳細な説明 本発明のある実施様態の実施において、層間挿入された天然グラファイトフレークは、0.15〜1.5ミリメーターの長さを有する針状セラミックファイバー粒子約1.5〜30重量%と混合配合される。前記粒子の幅は、0.04〜0.004mmでなくてはならない。前記セラミックファイバー粒子は、グラファイトに対し非反応性かつ非密着性であり、2000°F(1093.3℃)、好ましくは2500°F(1371.1℃)までの温度で安定である。好ましいセラミックファイバー粒子は、細断された石英ガラスファイバー、カーボンおよびグラファイトファイバー、ジルコニア、窒化ホウ素、炭化ケイ素およびマグネシアファイバーであり、また、メタケイ酸カルシウムファイバー、ケイ酸カルシウムアルミニウムファイバー、酸化アルミニウムファイバーなどの天然に産出する鉱物のファイバーでできている。
【0007】
グラファイトフレークおよびセラミックファイバー粒子が一般的な配列をしている、層間挿入された天然グラファイトフレークおよび針状セラミックファイバーの混合物は、2500°F(1371.1℃)までの温度の炎に暴露されて剥皮し、即ち層間挿入されたグラファイトフレークが膨張し、針状セラミックファイバー粒子を取り囲み捕捉している未膨張の層間挿入された天然グラファイトフレークの体積の80〜1000倍に膨張したグラファイト粒子になる。膨張により、前記セラミックファイバー粒子は、もはや前記グラファイトと実質的に配列せず、剥皮したグラファイトとセラミックファイバーとの混合物中に不規則に位置している。剥皮したグラファイト粒子と不規則な方向に向いている針状セラミックファイバー粒子の混合物は、典型的には0.1〜3.5mmの厚さのシートまたは箔にロールプレスされる。生じたシートまたは箔は、柔軟性グラファイトシートの内部から柔軟性グラファイトシートの対向する平坦な表面の少なくとも1つまで延びているかそこを貫通している針状粒子を有することにより特徴づけられる。前記針状セラミックファイバー粒子は、柔軟性シート内のグラファイトに対し非反応性かつ非密着性であるので、それぞれの針状粒子を取り巻く複数の環状の流路が、シートの対向する表面からシートの本体に伸びて、柔軟性グラファイトシートに設けられる。これらの流路は、柔軟性グラファイトシートが液体樹脂に浸漬されている状態で樹脂を受け取り、次いで前記樹脂は、柔軟性グラファイトシートの平坦で平行な表面の間に埋め込まれているがそれらを貫通していない針状セラミックファイバー粒子により形成された流路に助けられ、柔軟性グラファイトシートおよびシートを形成する圧縮され剥皮したグラファイト粒子の平坦な表面に平行なより浸透性のある方向に前記の柔軟性グラファイトシートの中を浸透する。前記セラミックファイバー粒子は、加工処理の全工程の間安定であるので、前記の流路は溶けたファイバーまたはファイバーの分解生成物により閉塞することはない。グラファイトシート内での樹脂の硬化後、前記シートからつくられたガスケットに関し前記柔軟性グラファイトシートの密封性は向上する。好ましい実施様態において、前記樹脂含有シートはプレッシャーロールの間でロールプレスすることにより圧延される。
【0008】
図1は、柔軟性グラファイトの厚さ0.01インチのシートの顕微鏡観察に基づいた略図で、平行で相対する平面状表面22、24を有する柔軟性グラファイトシート10を断面で示す。埋め込まれたセラミック繊維粒子は30で示される。セラミック繊維30のシート10への侵入は40で表される。
【0009】
例I 80重量%が50メッシュのサイズである天然グラファイトフレークを、90重量%の硫酸と10重量%の硝酸との混合物中で処理した。このようにして処理して挿入されたグラファイトフレークを水で洗浄し、水分が約1重量%になるまで乾燥した。この挿入されたフレーク1ポンドを、そのほとんどがアスペクト比15〜1のサイズである市販のメタケイ酸カルシウムの針状セラミック繊維0.15ポンドと混合する。挿入されたグラファイトとメタケイ酸カルシウム繊維の混合物を2500°F(1371.1℃)の炉に導入して挿入されたグラファイトフレークを急速膨張させ、膨張されていないが挿入されたフレークの体積の約325倍の体積を有するウォーム形粒子を得た。膨張されたウォーム形粒子が混合されたメタケイ酸カルシウム繊維を囲み、混合物をロール圧縮して0.01インチの厚さ、24インチの幅であり混合されたメタケイ酸カルシウム繊維がシートの表面からシート本体の中に延び、約12重量%のメタケイ酸カルシウム繊維を含む柔軟グラファイトシートにした。
【0010】
図2の電子顕微鏡写真(100倍、100μスケールを参照)は、柔軟グラファイトシートの平面状表面22へ侵入しているセラミック繊維100の上部を示す。図3〜6は電圧を上げながら柔軟グラファイトシートの「より深い」ところを観察し、セラミック繊維100の柔軟グラファイトシートへの侵入を示す。柔軟グラファイトシートに埋め込まれて表面72より下にあるセラミック繊維は140、160に示される。
【0011】
例II 例Iのシートのサンプルで8インチ幅のものを、アセトンで希釈したフェノール樹脂の10%溶液に浸漬して毎分10ft.の速度で通過させた。浸漬して乾燥した後、サンプルは18.7%の重量増加を示した。
【0012】
サンプルを更に235℃に加熱処理して樹脂を硬化して安定化させ、シートを圧力ロール間でカレンダーがけして密度を1.5g/ccにした。カレンダーがけされたシートを油と水に浸漬しても何の影響も受けない、即ち不浸透性であった。セラミック繊維や樹脂添加物を加えていないコントロールのシートを同様の試験条件に暴露すると、重量が約35%、厚さが8%増加した。
添加剤としてメタケイ酸カルシウム繊維をそれぞれ5重量%、15重量%、25重量%加えたサンプルシートを樹脂溶液に毎分10ft.の速度で通過させ、約17〜19重量%の樹脂で飽和させた。セラミック繊維を加えていないコントロールのサンプルは、同様の毎分10ft.の通過速度で5重量%の樹脂しか保持しなかった。
【0013】
例III 5重量%のメタケイ酸カルシウム繊維を含有する例Iに記載された種類のカレンダーがけされた柔軟グラファイトシート材料(100mm×100mm)を図7、7Aの平面および側面図に示されるように、燃料電池の流体フロー板として有効な形を打ち込むことによって機械的に変形させた。板100は壁120によって分離された多数の溝を有する。溝110の典型的な深さは1.5mm、幅は1〜1.5mmで、延びて燃料電池の電極を覆う。壁120の典型的な厚さは1〜1.5mm インチである。機械的変形前の密度は約0.1〜0.3g/ccで、形打ちの後は一般に1.1g/ccを超える。
【0014】
図7、7Aの板100を例IIの樹脂を用いて約15psiの圧力下に含浸させ、235℃に加熱することによって硬化させた後に板の中に樹脂が約20重量%あるようにした。樹脂が含浸した板は、ミルで溝を形成した従来のグラファイト板と比較して、大きい曲げ強さ、改良された熱分散性を有し、そして燃料電池における流体フローフィールド板として用いた場合にその厚さ方向の電圧降下がより低い。
【0015】
例IV 例Iに記載された種類の5重量%の繊維を含有するシートの1平方フィートのサンプルを、そのシートが15重量%の樹脂を均一な分布で含有するように例Iの希釈した樹脂溶液に15秒間浸漬した。粘着性がなくなる条件(100℃)でシートを乾燥し、図7、7Aの平面および側面図に示されるように、燃料電池の流体フロー板として有効な形を打ち込むことによって機械的に変形させた。板100は壁120によって分離された多数の溝を有する。溝110の典型的な深さは1.5mm、幅は1〜1.5mmで、延びて燃料電池の電極を覆う。壁120の典型的な厚さは1〜1.5mm インチである。機械的変形前の密度は約0.1〜0.3g/ccで、形打ちの後は一般に1.1g/ccを超える。その後、図7、7Aの板100を徐々に235℃まで加熱して例IIIの特性改良を達成した。
【0016】
図9は、燃料電池の基本的な要素を概略的に示したもので、より具体的にはこれは米国特許第4,988,583号、米国特許第5,300,370号、国際特許出願公開公報第WO95/16287号(1995年6月15日)に開示されている。
【0017】
図9を参照して、一般に500で示される燃料電池はプラスチック形状の電解質、即ち、固体高分子膜電解質550からなる。炭素繊維電極600は電極/膜界面601、603において触媒600、即ち、白金で被覆されている。フロー流体板1000、1100は触媒層600と燃料、即ち、水素ガスと接触し、酸化剤フローフィールド板1100の溝1400を通って循環する。作動中、燃料フローフィールド板1000はアノードとなり、酸化剤フローフィールド板1100は電位差、即ち、燃料フローフィールド板1000と酸化剤フローフィールド板1100の間に電圧が発生する結果としてカソードとなる。上述した電気化学的燃料電池を他と組合せて燃料電池積層体にし、前記米国特許第5,300,370号に記載されるような所望のレベルの電力を得る。
【0018】
Watkinsによる米国特許第4,988,583号に記載された種類である、連続した反応物フローチャネルを有する流体フローフィールド板1000'を図8と図8Aに示す。板は、例IIIに記載された種類の12重量%のメタケイ酸カルシウム繊維を含む柔軟グラファイトシートを含んだ樹脂である。板1000'の表面には、流体入口1600と流体出口1800を有する単一の連続流体フローチャネル1200’が打ち込みまたは成形によって形成されている。流体入口1600は、アノードフローフィールド板の場合には燃料源(図示せず)に、またはカソードフローフィールド板の場合には酸化剤源(図示せず)に接続される。チャネル1200'は板1000'の主要な中央の領域を複数の経路で横断し、この領域は図8Aに示されるように組立てた場合にそれと隣接するアノードまたはカソードの電気触媒的活性領域に対応する。燃料電池積層体に組立てた場合、各フローフィールド板は集電体としても機能する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトのシート(元の厚さ0.01インチ)の拡大した断面スケッチである。
【図2】
電子線強度電圧を増加させたときの(2.5KVから40KV)本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトシートの平坦な表面の一部の電子顕微鏡写真(元の倍率100倍)。
【図3】
電子線強度電圧を増加させたときの(2.5KVから40KV)本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトシートの平坦な表面の一部の電子顕微鏡写真(元の倍率100倍)。
【図4】
電子線強度電圧を増加させたときの(2.5KVから40KV)本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトシートの平坦な表面の一部の電子顕微鏡写真(元の倍率100倍)。
【図5】
電子線強度電圧を増加させたときの(2.5KVから40KV)本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトシートの平坦な表面の一部の電子顕微鏡写真(元の倍率100倍)。
【図6】
電子線強度電圧を増加させたときの(2.5KVから40KV)本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトシートの平坦な表面の一部の電子顕微鏡写真(元の倍率100倍)。
【図7】
燃料電池のフローフィールド板として使用するため溝つき板に機械的に変形された、本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトのシートの一部を示す図。
【図7A】
燃料電池のフローフィールド板として使用するため溝つき板に機械的に変形された、本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトのシートの一部を示す図。
【図8】
燃料電池の構成部分としての本発明のフローフィールド板の上面図および部分的な側面図(断面)を示す図。
【図8A】
燃料電池の構成部分としての本発明のフローフィールド板の上面図および部分的な側面図(断面)を示す図。
【図9】
従来技術の電気化学的燃料電池を概略的に示す図。
【0001】
発明の分野 本発明は、ガスケットの製造および燃料電池に使用するフローフィールド板の製造に使用できる柔軟性グラファイトおよび針状セラミック粒子の複合材料に関するものである。
【0002】
発明の背景 本明細書で使用される「柔軟性グラファイト」という用語は、グラファイトの結晶構造に層間挿入(intercalate)し、その層間挿入された粒子を結晶構造の炭素層に垂直な方向に少なくとも80倍またはそれ以上膨張させる薬剤で処理された、急速に加熱された天然グラファイト粒子の剥皮した反応生成物を表す。柔軟性グラファイトおよびその製造は、Shane他の米国特許第3,404,061号明細書に記載されている。膨張した、即ち剥皮したグラファイトを、圧縮して理論密度に近い密度を有する薄いシート(以下柔軟性グラファイト「箔」と称する)にすることもできるが、約10〜85lbs/ft3(0.16〜1.36g/cm3)の密度が、エンジン排気管および他の用途でのシールリングとして適した形状への圧縮を含め、ほとんどの用途に適している。
【0003】
膨張可能なグラファイト粒子の通常の製造方法は、Shane他の米国特許第3,404,061号明細書に記載されており、その開示を参照により本明細書に組み込む。この方法の典型的な実施において、天然グラファイトフレークは、酸化剤、例えば硝酸および硫酸の混合物、を含む溶液にフレークを分散されることにより層間挿入される。層間挿入溶液(intercalation solution)は、当業界に公知の酸化剤および他の層間挿入剤を含む。例としては、硝酸、塩素酸カリウム、クロム酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム、二クロム酸カリウム、過塩素酸などの溶液または濃硝酸と塩素酸塩、クロム酸とリン酸、硫酸と硝酸などの混合物などの酸化剤および酸化剤の混合物または強い有機酸、例えばトリフルオロ酢酸および有機酸に可溶な強い酸化剤がある。好ましい層間挿入剤は、硫酸、または硫酸およびリン酸と酸化剤、即ち硝酸、過塩素酸、クロム酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素、ヨウ素酸または過ヨウ素酸との混合物の溶液である。好ましさは劣るものの、前記層間挿入溶液は、塩化第二鉄および硫酸と塩化第二鉄の混合物などの金属ハロゲン化物または臭素と硫酸の溶液としての臭素または有機溶媒中の臭素などのハロゲン化物を含んでもよい。フレークが層間挿入されたあと、フレークから余分な溶液を流し去り、水で洗浄した後、層間挿入されたグラファイトフレークを乾燥すると、数秒炎に暴露するだけで膨張可能となる。このように処理されたグラファイト粒子を、以下「層間挿入されたグラファイト粒子」と呼ぶ。高温に暴露されると、層間挿入されたグラファイト粒子は、アコーディオンのようにc方向、即ちグラファイトの構成粒子の結晶面に垂直な方向に、元の体積の80から1000倍またはそれ以上に膨張する。剥皮したグラファイト粒子は外見が蠕虫のようなので、普通ウォームと呼ばれている。ウォームは、互いに圧縮して柔軟性シートにすることができるが、これは元のグラファイトフレークとは異なり、さまざまな形状に形成したり、切断したりすることができる。
【0004】
柔軟性グラファイト箔は取扱い強度が良好で密着性があり、柔軟性グラファイト箔は巻いてロールにしたり、マンドレルなどの金属治具の周りに巻き付けたりでき、望ましい伝熱特性を有し、したがってエンジン排気管シールリング用途などの高温用途に特に有用である。柔軟性グラファイトシートまたは箔に樹脂を含浸されることによりその密封性を高めることが提案されてきた。しかし、柔軟性グラファイトシートまたは箔の表面層は、剥皮したグラファイト粒子の配列および柔軟性シートまたは箔の表面に平行な原子の構成層により、前記シートまたは箔が液体樹脂中に浸漬されるとき樹脂の含浸を受け付けない。しかし、柔軟性グラファイトシートへの浸透が最初に達成できれば、よく知られている柔軟性グラファイトの異方性により、シートまたは箔の対向する平行で平坦な表面およびシートの構成グラファイト粒子の面に平行な方向、即ちグラファイト粒子の「c軸」方向に直角に樹脂は柔軟性グラファイトシート内を容易に流れる。
【0005】
発明の要約 本発明は、対向する平行で平坦な外表面を有する柔軟性グラファイト、および前記柔軟性シートに埋封され柔軟性シートの内部から柔軟性グラファイトシートの平坦な外表面の少なくとも1つに延びている針状セラミックファイバー粒子の樹脂含有シートの複合材料に関するものである。本発明の柔軟性グラファイトシートは、電気化学的燃料電池用のフローフィールド板に成形できる。
【0006】
詳細な説明 本発明のある実施様態の実施において、層間挿入された天然グラファイトフレークは、0.15〜1.5ミリメーターの長さを有する針状セラミックファイバー粒子約1.5〜30重量%と混合配合される。前記粒子の幅は、0.04〜0.004mmでなくてはならない。前記セラミックファイバー粒子は、グラファイトに対し非反応性かつ非密着性であり、2000°F(1093.3℃)、好ましくは2500°F(1371.1℃)までの温度で安定である。好ましいセラミックファイバー粒子は、細断された石英ガラスファイバー、カーボンおよびグラファイトファイバー、ジルコニア、窒化ホウ素、炭化ケイ素およびマグネシアファイバーであり、また、メタケイ酸カルシウムファイバー、ケイ酸カルシウムアルミニウムファイバー、酸化アルミニウムファイバーなどの天然に産出する鉱物のファイバーでできている。
【0007】
グラファイトフレークおよびセラミックファイバー粒子が一般的な配列をしている、層間挿入された天然グラファイトフレークおよび針状セラミックファイバーの混合物は、2500°F(1371.1℃)までの温度の炎に暴露されて剥皮し、即ち層間挿入されたグラファイトフレークが膨張し、針状セラミックファイバー粒子を取り囲み捕捉している未膨張の層間挿入された天然グラファイトフレークの体積の80〜1000倍に膨張したグラファイト粒子になる。膨張により、前記セラミックファイバー粒子は、もはや前記グラファイトと実質的に配列せず、剥皮したグラファイトとセラミックファイバーとの混合物中に不規則に位置している。剥皮したグラファイト粒子と不規則な方向に向いている針状セラミックファイバー粒子の混合物は、典型的には0.1〜3.5mmの厚さのシートまたは箔にロールプレスされる。生じたシートまたは箔は、柔軟性グラファイトシートの内部から柔軟性グラファイトシートの対向する平坦な表面の少なくとも1つまで延びているかそこを貫通している針状粒子を有することにより特徴づけられる。前記針状セラミックファイバー粒子は、柔軟性シート内のグラファイトに対し非反応性かつ非密着性であるので、それぞれの針状粒子を取り巻く複数の環状の流路が、シートの対向する表面からシートの本体に伸びて、柔軟性グラファイトシートに設けられる。これらの流路は、柔軟性グラファイトシートが液体樹脂に浸漬されている状態で樹脂を受け取り、次いで前記樹脂は、柔軟性グラファイトシートの平坦で平行な表面の間に埋め込まれているがそれらを貫通していない針状セラミックファイバー粒子により形成された流路に助けられ、柔軟性グラファイトシートおよびシートを形成する圧縮され剥皮したグラファイト粒子の平坦な表面に平行なより浸透性のある方向に前記の柔軟性グラファイトシートの中を浸透する。前記セラミックファイバー粒子は、加工処理の全工程の間安定であるので、前記の流路は溶けたファイバーまたはファイバーの分解生成物により閉塞することはない。グラファイトシート内での樹脂の硬化後、前記シートからつくられたガスケットに関し前記柔軟性グラファイトシートの密封性は向上する。好ましい実施様態において、前記樹脂含有シートはプレッシャーロールの間でロールプレスすることにより圧延される。
【0008】
図1は、柔軟性グラファイトの厚さ0.01インチのシートの顕微鏡観察に基づいた略図で、平行で相対する平面状表面22、24を有する柔軟性グラファイトシート10を断面で示す。埋め込まれたセラミック繊維粒子は30で示される。セラミック繊維30のシート10への侵入は40で表される。
【0009】
例I 80重量%が50メッシュのサイズである天然グラファイトフレークを、90重量%の硫酸と10重量%の硝酸との混合物中で処理した。このようにして処理して挿入されたグラファイトフレークを水で洗浄し、水分が約1重量%になるまで乾燥した。この挿入されたフレーク1ポンドを、そのほとんどがアスペクト比15〜1のサイズである市販のメタケイ酸カルシウムの針状セラミック繊維0.15ポンドと混合する。挿入されたグラファイトとメタケイ酸カルシウム繊維の混合物を2500°F(1371.1℃)の炉に導入して挿入されたグラファイトフレークを急速膨張させ、膨張されていないが挿入されたフレークの体積の約325倍の体積を有するウォーム形粒子を得た。膨張されたウォーム形粒子が混合されたメタケイ酸カルシウム繊維を囲み、混合物をロール圧縮して0.01インチの厚さ、24インチの幅であり混合されたメタケイ酸カルシウム繊維がシートの表面からシート本体の中に延び、約12重量%のメタケイ酸カルシウム繊維を含む柔軟グラファイトシートにした。
【0010】
図2の電子顕微鏡写真(100倍、100μスケールを参照)は、柔軟グラファイトシートの平面状表面22へ侵入しているセラミック繊維100の上部を示す。図3〜6は電圧を上げながら柔軟グラファイトシートの「より深い」ところを観察し、セラミック繊維100の柔軟グラファイトシートへの侵入を示す。柔軟グラファイトシートに埋め込まれて表面72より下にあるセラミック繊維は140、160に示される。
【0011】
例II 例Iのシートのサンプルで8インチ幅のものを、アセトンで希釈したフェノール樹脂の10%溶液に浸漬して毎分10ft.の速度で通過させた。浸漬して乾燥した後、サンプルは18.7%の重量増加を示した。
【0012】
サンプルを更に235℃に加熱処理して樹脂を硬化して安定化させ、シートを圧力ロール間でカレンダーがけして密度を1.5g/ccにした。カレンダーがけされたシートを油と水に浸漬しても何の影響も受けない、即ち不浸透性であった。セラミック繊維や樹脂添加物を加えていないコントロールのシートを同様の試験条件に暴露すると、重量が約35%、厚さが8%増加した。
添加剤としてメタケイ酸カルシウム繊維をそれぞれ5重量%、15重量%、25重量%加えたサンプルシートを樹脂溶液に毎分10ft.の速度で通過させ、約17〜19重量%の樹脂で飽和させた。セラミック繊維を加えていないコントロールのサンプルは、同様の毎分10ft.の通過速度で5重量%の樹脂しか保持しなかった。
【0013】
例III 5重量%のメタケイ酸カルシウム繊維を含有する例Iに記載された種類のカレンダーがけされた柔軟グラファイトシート材料(100mm×100mm)を図7、7Aの平面および側面図に示されるように、燃料電池の流体フロー板として有効な形を打ち込むことによって機械的に変形させた。板100は壁120によって分離された多数の溝を有する。溝110の典型的な深さは1.5mm、幅は1〜1.5mmで、延びて燃料電池の電極を覆う。壁120の典型的な厚さは1〜1.5mm インチである。機械的変形前の密度は約0.1〜0.3g/ccで、形打ちの後は一般に1.1g/ccを超える。
【0014】
図7、7Aの板100を例IIの樹脂を用いて約15psiの圧力下に含浸させ、235℃に加熱することによって硬化させた後に板の中に樹脂が約20重量%あるようにした。樹脂が含浸した板は、ミルで溝を形成した従来のグラファイト板と比較して、大きい曲げ強さ、改良された熱分散性を有し、そして燃料電池における流体フローフィールド板として用いた場合にその厚さ方向の電圧降下がより低い。
【0015】
例IV 例Iに記載された種類の5重量%の繊維を含有するシートの1平方フィートのサンプルを、そのシートが15重量%の樹脂を均一な分布で含有するように例Iの希釈した樹脂溶液に15秒間浸漬した。粘着性がなくなる条件(100℃)でシートを乾燥し、図7、7Aの平面および側面図に示されるように、燃料電池の流体フロー板として有効な形を打ち込むことによって機械的に変形させた。板100は壁120によって分離された多数の溝を有する。溝110の典型的な深さは1.5mm、幅は1〜1.5mmで、延びて燃料電池の電極を覆う。壁120の典型的な厚さは1〜1.5mm インチである。機械的変形前の密度は約0.1〜0.3g/ccで、形打ちの後は一般に1.1g/ccを超える。その後、図7、7Aの板100を徐々に235℃まで加熱して例IIIの特性改良を達成した。
【0016】
図9は、燃料電池の基本的な要素を概略的に示したもので、より具体的にはこれは米国特許第4,988,583号、米国特許第5,300,370号、国際特許出願公開公報第WO95/16287号(1995年6月15日)に開示されている。
【0017】
図9を参照して、一般に500で示される燃料電池はプラスチック形状の電解質、即ち、固体高分子膜電解質550からなる。炭素繊維電極600は電極/膜界面601、603において触媒600、即ち、白金で被覆されている。フロー流体板1000、1100は触媒層600と燃料、即ち、水素ガスと接触し、酸化剤フローフィールド板1100の溝1400を通って循環する。作動中、燃料フローフィールド板1000はアノードとなり、酸化剤フローフィールド板1100は電位差、即ち、燃料フローフィールド板1000と酸化剤フローフィールド板1100の間に電圧が発生する結果としてカソードとなる。上述した電気化学的燃料電池を他と組合せて燃料電池積層体にし、前記米国特許第5,300,370号に記載されるような所望のレベルの電力を得る。
【0018】
Watkinsによる米国特許第4,988,583号に記載された種類である、連続した反応物フローチャネルを有する流体フローフィールド板1000'を図8と図8Aに示す。板は、例IIIに記載された種類の12重量%のメタケイ酸カルシウム繊維を含む柔軟グラファイトシートを含んだ樹脂である。板1000'の表面には、流体入口1600と流体出口1800を有する単一の連続流体フローチャネル1200’が打ち込みまたは成形によって形成されている。流体入口1600は、アノードフローフィールド板の場合には燃料源(図示せず)に、またはカソードフローフィールド板の場合には酸化剤源(図示せず)に接続される。チャネル1200'は板1000'の主要な中央の領域を複数の経路で横断し、この領域は図8Aに示されるように組立てた場合にそれと隣接するアノードまたはカソードの電気触媒的活性領域に対応する。燃料電池積層体に組立てた場合、各フローフィールド板は集電体としても機能する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトのシート(元の厚さ0.01インチ)の拡大した断面スケッチである。
【図2】
電子線強度電圧を増加させたときの(2.5KVから40KV)本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトシートの平坦な表面の一部の電子顕微鏡写真(元の倍率100倍)。
【図3】
電子線強度電圧を増加させたときの(2.5KVから40KV)本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトシートの平坦な表面の一部の電子顕微鏡写真(元の倍率100倍)。
【図4】
電子線強度電圧を増加させたときの(2.5KVから40KV)本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトシートの平坦な表面の一部の電子顕微鏡写真(元の倍率100倍)。
【図5】
電子線強度電圧を増加させたときの(2.5KVから40KV)本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトシートの平坦な表面の一部の電子顕微鏡写真(元の倍率100倍)。
【図6】
電子線強度電圧を増加させたときの(2.5KVから40KV)本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトシートの平坦な表面の一部の電子顕微鏡写真(元の倍率100倍)。
【図7】
燃料電池のフローフィールド板として使用するため溝つき板に機械的に変形された、本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトのシートの一部を示す図。
【図7A】
燃料電池のフローフィールド板として使用するため溝つき板に機械的に変形された、本発明によるセラミックファイバーを含む柔軟性グラファイトのシートの一部を示す図。
【図8】
燃料電池の構成部分としての本発明のフローフィールド板の上面図および部分的な側面図(断面)を示す図。
【図8A】
燃料電池の構成部分としての本発明のフローフィールド板の上面図および部分的な側面図(断面)を示す図。
【図9】
従来技術の電気化学的燃料電池を概略的に示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対する平面状外側表面を有する単一単位樹脂含浸柔軟グラファイトシートの形状である燃料電池用流体フローフィールド板であって、前記柔軟グラファイトシートには、柔軟性グラファイトに対して非反応性であり、2000°F(1093.3℃)までの温度で安定である複数の針状セラミック繊維粒子の分散体が埋め込まれており、前記針状粒子は前記平面状外側表面の少なくとも一方から前記グラファイトシート中に延びて前記樹脂を含有するチャネルを形成し、且つ前記平面状外側表面の一方には、流体燃料または酸化剤を受け入れて消耗するための連続流体フローチャネルが形成されていることを特徴とする流体フローフィールド板。
【請求項1】
相対する平面状外側表面を有する単一単位樹脂含浸柔軟グラファイトシートの形状である燃料電池用流体フローフィールド板であって、前記柔軟グラファイトシートには、柔軟性グラファイトに対して非反応性であり、2000°F(1093.3℃)までの温度で安定である複数の針状セラミック繊維粒子の分散体が埋め込まれており、前記針状粒子は前記平面状外側表面の少なくとも一方から前記グラファイトシート中に延びて前記樹脂を含有するチャネルを形成し、且つ前記平面状外側表面の一方には、流体燃料または酸化剤を受け入れて消耗するための連続流体フローチャネルが形成されていることを特徴とする流体フローフィールド板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図8】
【図8A】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図8】
【図8A】
【図9】
【公表番号】特表2001−511589(P2001−511589A)
【公表日】平成13年8月14日(2001.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−504619(P2000−504619)
【出願日】平成10年7月22日(1998.7.22)
【国際出願番号】PCT/US98/14804
【国際公開番号】WO99/05738
【国際公開日】平成11年2月4日(1999.2.4)
【出願人】
【氏名又は名称】ユーカー、カーボン、テクノロジー、コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】UCAR CARBON TECHNOLOGY CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成13年8月14日(2001.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成10年7月22日(1998.7.22)
【国際出願番号】PCT/US98/14804
【国際公開番号】WO99/05738
【国際公開日】平成11年2月4日(1999.2.4)
【出願人】
【氏名又は名称】ユーカー、カーボン、テクノロジー、コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】UCAR CARBON TECHNOLOGY CORPORATION
【Fターム(参考)】
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