柱梁接合ブラケット
【課題】部品点数が少なく、且つ、作業性に優れる柱梁接合ブラケットを提供する。
【解決手段】柱梁接合ブラケットは、一端側が上ダイヤフラム71に接合し、他端側がH鋼梁の上フランジ61と上面を面一に突き合わせる上水平プレート11と、一端側が下ダイヤフラム72に接合し、他端側にH鋼梁の下フランジ62を載置固定する下水平プレート12と、上水平プレート11と下水平プレート12を接続し、H鋼梁のウェブ65を固定する垂直プレート16と、上水平プレート11と上フランジ61とを連結固定する水平固定板40とを備え、垂直プレート16の下部には、下フランジ62を遊挿するための切欠き部が形成され、垂直プレート16とウェブ65との当接部は、非当接部との間に段差を有することにより、非当接部表面とウェブ65表面とが面一に形成され、垂直プレート16とウェブ65とを連結固定する垂直固定板50を更に備える。
【解決手段】柱梁接合ブラケットは、一端側が上ダイヤフラム71に接合し、他端側がH鋼梁の上フランジ61と上面を面一に突き合わせる上水平プレート11と、一端側が下ダイヤフラム72に接合し、他端側にH鋼梁の下フランジ62を載置固定する下水平プレート12と、上水平プレート11と下水平プレート12を接続し、H鋼梁のウェブ65を固定する垂直プレート16と、上水平プレート11と上フランジ61とを連結固定する水平固定板40とを備え、垂直プレート16の下部には、下フランジ62を遊挿するための切欠き部が形成され、垂直プレート16とウェブ65との当接部は、非当接部との間に段差を有することにより、非当接部表面とウェブ65表面とが面一に形成され、垂直プレート16とウェブ65とを連結固定する垂直固定板50を更に備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管柱とH鋼梁との接合に用いる柱梁接合ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管柱にH鋼梁を接合するには、まず、鋼管柱の外側面にH鋼梁と同一断面形状で短尺のブラケットを溶接しておく。次いで、このブラケットとH鋼梁の端面同士を付きあわせ、ブラケットの水平プレートとH鋼梁のフランジ間、及びブラケットの垂直プレートと梁のウェブ間に、それぞれ渡した固定板で両者をボルトにより連結する。
【0003】
しかし、この方法では、クレーンなどで吊り込んだH鋼梁をブラケットと同一の高さに保持して端面同士を突き合わせる必要があり、不安定な状態で作業を行う必要がある。更に、ブラケットとH鋼梁の上下のフランジを固定するための固定板2枚と、ブラケットと梁のウェブを固定するための1枚の合計3枚の固定板が必要であることに加え、それに伴い固定するためのボルトが多数必要となる。
【0004】
前記の問題を解決するために、H鋼梁の上下のフランジをスリット状に形成された水平プレート間に挿入して固定するブラケットが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
このブラケットは、1対の2枚の水平プレートを同方向に一体に突出させ、H鋼梁の上下のフランジ端部を、それぞれ各ダイヤフラムの水平プレートとフランジを貫通して差し込んだボルトで固定するものである。
このブラケットによれば、H鋼梁のフランジをブラケットの水平プレート間に挿入して、ボルトで直接連結するので、特別の固定板が不要であり、且つ、ボルトの本数も少なくてすむ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−343936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のブラケットは、水平プレート2枚でスリットを形成する必要があり一対で4枚のプレートを必要とする。更に、上下の狭い間隔のスリットそれぞれに、H鋼梁の上下のフランジを挿入する作業が必要となる。
【0007】
本発明は、前記従来の問題を解決するものであり、部品点数が少なく、且つ、作業性に優れる柱梁接合ブラケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の通りである。
1.鋼管柱の水平方向に突出形成された、上ダイヤフラムと下ダイヤフラムとからなる一対のダイヤフラムに、H鋼梁を固定する柱梁接合ブラケットであって、
一端側が前記上ダイヤフラムに接合し、他端側が前記H鋼梁の上フランジと上面を面一に突き合わせる上水平プレートと、
前記上水平プレートに対向し、一端側が前記下ダイヤフラムに接合し、他端側に前記H鋼梁の下フランジを載置固定する下水平プレートと、
前記上水平プレートと前記下水平プレートを接続し、前記H鋼梁のウェブを当接固定する垂直プレートと、
前記上水平プレートと前記上フランジとを連結固定する水平固定板と、を備え、
前記垂直プレートの下部には、前記下フランジを遊挿するための切欠き部が形成されていることを特徴とする柱梁接合ブラケット。
2.前記上水平プレートの上面、前記下水平プレートの前記H鋼梁との当接面、前記垂直プレートの該H鋼梁との当接面、前記水平固定板の下面のうちの少なくとも一面には、滑り止め加工が施されている1.に記載の柱梁接合ブラケット。
3.前記垂直プレートの前記ウェブとの当接部は、非当接部との間に段差を有することにより、該非当接部の表面と該ウェブの表面とが面一に形成され、前記垂直プレートと前記ウェブとを連結固定する垂直固定板を更に備えた1.又は2.に記載の柱梁接合ブラケット。
4.前記垂直固定板の前記H鋼梁との当接面には、滑り止め加工が施されている3.に記載の柱梁接合ブラケット。
5.前記滑り止め加工が施された面は、多数の凹凸状のヤスリ目に形成されている2.又は4.に記載の柱梁接合ブラケット。
6.前記上フランジ及び前記上水平プレートの側端面同士及び、前記下フランジ及び前記下水平プレートの側端面同士は、いずれも面一となるように垂直プレートの位置決めをした1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載の柱梁接合ブラケット。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係る柱梁接合ブラケット(以下、単に「ブラケット」ともいう。)によれば、ブラケットの上水平プレートと上フランジとを連結する水平固定板は1枚のみであるため、部品点数を少なくすることができる。
また、一端側が前記上ダイヤフラムに接合し、他端側が前記H鋼梁の上フランジと上面を面一に突き合わせる上水平プレートと、上水平プレートに対向し、一端側がダイヤフラムに接合し、他端側にH鋼梁の下フランジを載置固定する下水平プレートとを備えるため、H鋼梁の上フランジの端面を上水平プレートに突き合わせ、下フランジを下水平プレートに載置するという簡易な操作で固定できるため作業性に優れている。
更に、施工前に予めブラケット本体を作製しておくことができるため、施工現場での作業効率を一層高めることができる。
【0010】
請求項2の発明に係る柱梁接合ブラケットによれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、上水平プレートの上面、下水平プレートのH鋼梁との当接面、垂直プレートのH鋼梁との当接面、水平固定板の下面のうちの少なくとも一面に、滑り止め加工が施されている場合には、施工に際して上記の当接面における部材同士が滑るのを効果的に防ぐことができるため、更に安全確実に、H鋼梁を固定することができる。
【0011】
請求項3の発明に係る柱梁接合ブラケットによれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、垂直プレートのウェブとの当接部は、非当接部との間に段差を有することにより、非当接部の表面とウェブの表面とが面一に形成され、垂直プレートとウェブとを連結固定する垂直固定板を更に備えているため、更に確実にH鋼梁を固定することができる。
【0012】
請求項4の発明に係る柱梁接合ブラケットによれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、垂直固定板のH鋼梁との当接面に滑り止め加工が施されているため、垂直固定板を備える場合においても、当接面における部材同士が滑るのを効果的に防ぐことができるため、更に安全確実に、H鋼梁を固定することができる。
請求項5の発明に係る柱梁接合ブラケットによれば、請求項2又は4に記載の発明の効果に加え、滑り止め加工が施された面は、多数の凹凸状のヤスリ目に形成されているため、施工に際して滑り止め効果が高く、特に安全確実に、H鋼梁を固定することができる。
【0013】
請求項6の発明に係る柱梁接合ブラケットによれば、請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の発明の効果に加え、上フランジ及び上水平プレートの側端面同士及び、下フランジ及び下水平プレートの側端面同士は、いずれも面一となるように垂直プレートの位置決めをされているため、ブラケットの水平プレートとH鋼梁のフランジがズレることなく重ね合わせることができ、更に確実にH鋼梁を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係り、鋼管柱に接合した柱梁接合ブラケットに、H鋼梁を固定した状態を示す斜視図である。
【図2】図1の状態から、H鋼梁を取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】図1において、水平プレートの長手方向手前のボルト4本を含む縦断面図である。
【図4】図1において、水平プレートの他端側のボルト2本を含む縦断面図である。
【図5】本発明の実施例2に係り、鋼管柱に接合した柱梁接合ブラケットに、H鋼梁を固定した状態を示す斜視図である。
【図6】図5の状態から、H鋼梁を取り外した状態を示す斜視図である。
【図7】図5において、水平プレートの長手方向手前のボルト4本を含む縦断面図である。
【図8】図5において、水平プレートの他端側のボルト2本を含む縦断面図である。
【図9】実施例2に係る柱梁接合ブラケットに、H鋼梁の施工方法を説明する斜視図である。
【図10】図9の対向する側から見た斜視図である。
【図11】図10において、ヤスリ目の滑り止め加工を施した箇所を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施例3に係り、スカラップを有する柱梁接合ブラケットにH鋼梁を固定した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図1〜12を参照しながら本発明を詳しく説明する。尚、本発明は、かかる図に記載された具体例に示すものに限られず、発明の技術的範囲内において、目的、用途に応じて種々変更したものとすることができる。
【0016】
本発明の柱梁接合ブラケットは、鋼管柱の水平方向に突出形成された、上ダイヤフラムと下ダイヤフラムとからなる一対のダイヤフラムに、H鋼梁を固定する柱梁接合ブラケットであって、一端側が前記上ダイヤフラムに接合し、他端側が前記H鋼梁の上フランジと上面を面一に突き合わせる上水平プレートと、前記上水平プレートに対向し、一端側が前記下ダイヤフラムに接合し、他端側に前記H鋼梁の下フランジを載置固定する下水平プレートと、前記上水平プレートと前記下水平プレートを接続し、前記H鋼梁のウェブを固定する垂直プレートと、前記上水平プレートと前記上フランジとを連結固定する水平固定板と、を備え、前記垂直プレートの下部には、前記下フランジを遊挿するための切欠き部が形成されている。
【0017】
前記「ダイヤフラム」は、鋼管柱の水平方向に突出形成された部材であり、本発明では、図1に示すように、ダイヤフラム70は、一対の上ダイヤフラム71と下ダイヤフラム72とからなる。
前記「H鋼梁」は断面がH型の鋼からなる長尺状の梁であり、本発明では、図1に示すように、H鋼梁60は、上フランジ61と、下フランジ62と、両者を接続するウェブ65とからなる。
【実施例1】
【0018】
実施例1に係る柱梁接合ブラケット10は、本発明の柱梁接合ブラケットを具体化している(図1〜図4参照。)。
柱梁接合ブラケット10は、上ダイヤフラム71と下ダイヤフラム72とからなる一対のダイヤフラム70に、H鋼梁60を固定する柱梁接合ブラケットであって、一端側が前記上ダイヤフラム71に接合し、他端側が前記H鋼梁の上フランジ61と上面を面一に突き合わせる上水平プレート11と、前記上水平プレート11に対向し、一端側が前記下ダイヤフラム72に接合し、他端側に前記H鋼梁60の下フランジ62を載置固定する下水平プレート12と、前記上水平プレート11と前記下水平プレート12を接続し、前記H鋼梁60のウェブ65を当接固定する垂直プレート15と、前記上水平プレート11と前記上フランジ61とを連結固定する水平固定板40と、を備え、前記垂直プレート15の下部には、前記下フランジを遊挿するための切欠き部が形成されている。
【0019】
柱梁接合ブラケット10は、図2に示すように、上水平プレート11と、この上水平プレート11に対向する下水平プレート12と、上水平プレート11と下水平プレート12を接続する垂直プレート15とからなる。柱梁接合ブラケット10は、これら3つのプレート同士をそれぞれ別個に作製して溶接により接合して形成してもよいが、鋳物などにより一体に形成されていることが好ましい。
【0020】
上水平プレート11は、図2に示すように、一端側が、上ダイヤフラム71に溶接部95により接合されている。この一端側の先端部は、図3に示すように下方に傾斜することにより溶接部95を確保して形成されている。そして、施工に際しては、他端側が、H鋼梁の上フランジ61と上面が面一となるように、突き合わされる。
上水平プレート11には、図2に示すように、後述の水平固定板40をボルト固定するための貫通孔11hが形成されている。貫通孔11hの数は特に限定されず2〜6個とすることができるが、通常4個である。
【0021】
下水平プレート12は、上水平プレート11に対向し、一端側が前記下ダイヤフラム72に接合されている。この一端側の先端部も、図3に示すように上水平プレート11と同様に、傾斜して溶接部95を確保している。下水平プレート12の他端側にH鋼梁60の下フランジ62を載置固定する。
下水平プレート12には、図2に示すように、下フランジ62を固定するための貫通孔12hが形成されている。貫通孔12hの数は特に限定されず2〜6個とすることができるが、通常4個である。
なお、上水平プレート11及び下水平プレート12をそれぞれ、上ダイヤフラム71と下ダイヤフラム72に接合するに際しては、座当て金80を予め接合する。
【0022】
垂直プレート15は、図2に示すように、上水平プレート11と下水平プレート12を接続すると共に、H鋼梁のウェブ65を当接固定する部材である。垂直プレート15には、H鋼梁の下フランジを遊挿するための切欠き部15cが形成されている。
垂直プレート15は、図1に示すように、H鋼梁のウェブ65と当接する当接部15Bと非当接部15Aとからなる。当接部15Bには、図2に示すように、H鋼梁のウェブ65をボルト固定するための貫通孔15hが形成されている。貫通孔15hの数は特に限定されず2〜6個とすることができるが、通常4個である。
【0023】
垂直プレート15の上水平プレート11及び下水平プレート12に対する幅方向の位置は、図4に示すように、上フランジ61の側端面61s及び上水平プレート11の側端面11s同士、並びに、下フランジ62の側端面62s及び下水平プレート12の側端面12s同士は、いずれも面一となるように垂直プレート15の位置決めをすることができる。こうすることで、H鋼梁のウェブを対称とした水平プレートの左右の幅が同一の長さAとなる。すなわち、ブラケットの水平プレートとH鋼梁のフランジがズレることなく重ね合わせることができ、更に確実にH鋼梁を固定することができる。
【0024】
水平固定板40は、図1に示すように、上水平プレート11と上フランジ61とを連結固定する部材である。水平固定板40には、図10に示すように、上水平プレート11をボルト固定するための貫通孔40hと、上フランジ61をボルト固定するための貫通孔である貫通孔40nが形成されている。貫通孔40h、40nの数は特に限定されず、それぞれ2〜6個とすることができるが、通常4個ずつである。
【実施例2】
【0025】
実施例2に係る柱梁接合ブラケット20も、本発明の柱梁接合ブラケットを具体化している(図5〜図8参照。)。
柱梁接合ブラケット20は、実施例1に係る柱梁接合ブラケット10と同様、上ダイヤフラム71と下ダイヤフラム72とからなる一対のダイヤフラム70に、H鋼梁60を固定する柱梁接合ブラケットであって、一端側が前記上ダイヤフラム71に接合し、他端側が前記H鋼梁の上フランジ61と上面を面一に突き合わせる上水平プレート11と、前記上水平プレート11に対向し、一端側が前記下ダイヤフラム72に接合し、他端側に前記H鋼梁60の下フランジ62を載置固定する下水平プレート12と、前記上水平プレート11と前記下水平プレート12を接続し、前記H鋼梁のウェブ65を当接固定する垂直プレート16と、前記上水平プレート11と前記上フランジ61とを連結固定する水平固定板40と、を備え、前記垂直プレート16の下部には、前記下フランジを遊挿するための切欠き部16cが形成されている。
【0026】
柱梁接合ブラケット20は、図6に示すように、実施例1に係る柱梁接合ブラケット10と異なり、垂直プレートとH鋼梁のウェブとの当接部16Bは、非当接部16Aとの間に段差18を有することにより、H鋼梁を柱梁接合ブラケット20にボルト固定した状態において、非当接部16Aとウェブ表面とが面一に形成される。
そして、図5に示すように、垂直プレート16とウェブ65とを連結固定する垂直固定板50を更に備えることができる。こうすることで、より確実にH鋼梁60を柱梁接合ブラケット20に固定することができる。
【0027】
柱梁接合ブラケット20を構成する上水平プレート11、下水平プレート12、切欠き部16cの作用効果については、実施例1の柱梁接合ブラケット10の上水平プレート11、下水平プレート12、切欠き部15cと同様であるため、その説明を省略する。
また、垂直プレート16の上水平プレート11及び下水平プレート12に対する幅方向の位置が、H鋼梁のウェブを対称とした水平プレートの左右の幅が同一の長さAとなる点についても、柱梁接合ブラケット10と同様である(図8参照。)。
【実施例3】
【0028】
柱梁接合ブラケット30も、本発明の柱梁接合ブラケットを具体化している(図11参照。)。
柱梁接合ブラケット30は、実施例2に係る柱梁接合ブラケット20において、垂直プレート16に代えて垂直プレート17としている。垂直プレート17は、鋼管柱75への接合部の上下に切欠き部分であるスカラップ17scを設けて、裏当て金80の取付けを容易化している例である。スカラップ17scを設けたことで、裏当て金80は、上ダイヤフラム71と下ダイヤフラム72それぞれ1個ずつの取り付けとすることができる。
その他の構成については、実施例2に係る柱梁接合ブラケット20と同様であるため、その説明を省略する。
【0029】
[滑り止め加工]
例えば図11に示すように、上水平プレートの上面11a、下水平プレート12のH鋼梁60(下フランジ底面62a)との当接面12a、垂直プレート16のH鋼梁60(ウェブ表面65a)との当接面16a、水平固定板40の下面40a、垂直固定板50のH鋼梁60(ウェブ表面65b)との当接面50aのうちの少なくとも一面には、滑り止め加工が施されていることが好ましい。これらのうちの一面のみ、いくつかの面に滑り止め加工が施されていることができるが、すべての面に滑り止め加工が施されていることが特に好ましい。
【0030】
滑り止め加工は滑り止め効果を有すれば特に限定はなく、滑り止め加工が施された面が、ヤスリ目状、梨地状などの他、平行な複数の溝、螺旋状の複数の溝などが挙げられる。また、合成樹脂材の塗布を行ってもよい。
これらのうちで、滑り止め加工が施された面が、多数の凹凸状のヤスリ目状に形成されていることが好ましい。更に、ヤスリ目の溝の向きがそれぞれの板面上において、端面に対して斜め45度に傾斜していることが好ましい。こうであれば、より滑り止め効果を高めることができる。
【0031】
[施工方法]
実施例2に係る柱梁接合ブラケット20を例として、施工方法について、以下説明する。
(1)柱梁接合ブラケットの鋼管柱への接合
図9に示すように、まず、鋼管柱75に、垂直プレート16の非当接部16Aの先端面の上下部分をスポット的に溶接により仮付けする。
次いで、鋼管柱75の水平方向に突出形成された、上ダイヤフラム71の側面と上水平プレート11の下部に当接するように、裏当て金80を溶接により接合する。同様に下ダイヤフラム72側面と下水平プレート12の上部にも当接するように裏当て金80を溶接により接合する。
その後、図7に示すように、溶接部95、96を形成するように溶接して、上ダイヤフラム71の側面と上水平プレート11、下ダイヤフラム72の側面と下水平プレート12を確実に接合する。更に、鋼管柱75に垂直プレート16の非当接部16Aの先端面を溶接により本付けをして、柱梁接合ブラケット20の鋼管柱75への接合を完了する。
【0032】
(2)柱梁接合ブラケットへのH鋼梁の載置
柱梁接合ブラケット20へH鋼梁60を取り付けるには、図10に示すように、H鋼梁60の上フランジの先端面61eを、柱梁接合ブラケット20の上水平プレートの先端面11eと突合せると共に、H鋼梁60の下フランジの一端側を垂直プレート16の切欠き部16cに遊挿し、下水平プレート12上に載置する。その際、図9に示すように、垂直プレート16の当接部16B、及び垂直プレート16の段差部の端面に、ウェブ65の側面及び先端面をそれぞれ当接させる。
次いで、図10に示すように、下水平プレート12の貫通孔12hと下フランジの貫通孔62hとをボルト及びナット91で挿通固定する(図5参照。)。
【0033】
(3)水平固定板の取付け
図9及び図10に示すように、柱梁接合ブラケット20の上水平プレート11とH鋼梁60の上フランジ61の上面に渡る水平固定板40を当接させる。
そして、上水平プレートの貫通孔11hと、水平固定板40の貫通孔40hを、ボルト及びナット91で挿通固定する(図5参照。)。
同様に、H鋼梁60の上フランジ61の貫通孔61hと、水平固定板40の貫通孔40nを、ボルト及びナット91で挿通固定する(図5参照。)。
【0034】
(4)垂直固定板の取付け
図9及び図10に示すように、垂直固定板50を、垂直プレート16の非当接部と、H鋼梁60のウェブ65に対して当接させる。
そして、垂直固定板50の貫通孔50hと、H鋼梁のウェブ65の貫通孔65hと、垂直プレート16の貫通孔16hとを、ボルト及びナット91で挿通固定する(図5参照。)。
更に、垂直プレート16の貫通孔16nと垂直固定板50の貫通孔50nとを、ボルト及びナット91で挿通固定する(図5参照。)。
以上の施工方法により、図5に示すように、本発明の柱梁接合ブラケットを用いた鋼管柱へのH鋼梁の取付けが完成する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の柱梁接合ブラケットは、鋼管柱に梁を接合固定する技術の分野において好適に利用される。
【符号の説明】
【0036】
10、20、30・・・柱梁接合ブラケット
11・・・・上水平プレート
11a・・・上水平プレートの上面
11s、12s、61s、62s・・・側端面
12・・・下水平プレート
12a・・下水平プレートのH鋼梁との当接面
15、16、17・・・垂直プレート
15A、16A・・・非接合部
15B、16B・・・当接部
15c、16c・・・切欠き部
16a・・垂直プレートのH鋼梁との当接面
18・・・段差
40・・・水平固定板
40a・・水平固定板の下面
50・・・垂直固定板
50a・・垂直固定板のH鋼梁との当接面
60・・・H鋼梁
61・・・上フランジ
62・・・下フランジ
65・・・ウェブ
70・・・ダイヤフラム
71・・・上ダイヤフラム
72・・・下ダイヤフラム
75・・・鋼管柱
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管柱とH鋼梁との接合に用いる柱梁接合ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼管柱にH鋼梁を接合するには、まず、鋼管柱の外側面にH鋼梁と同一断面形状で短尺のブラケットを溶接しておく。次いで、このブラケットとH鋼梁の端面同士を付きあわせ、ブラケットの水平プレートとH鋼梁のフランジ間、及びブラケットの垂直プレートと梁のウェブ間に、それぞれ渡した固定板で両者をボルトにより連結する。
【0003】
しかし、この方法では、クレーンなどで吊り込んだH鋼梁をブラケットと同一の高さに保持して端面同士を突き合わせる必要があり、不安定な状態で作業を行う必要がある。更に、ブラケットとH鋼梁の上下のフランジを固定するための固定板2枚と、ブラケットと梁のウェブを固定するための1枚の合計3枚の固定板が必要であることに加え、それに伴い固定するためのボルトが多数必要となる。
【0004】
前記の問題を解決するために、H鋼梁の上下のフランジをスリット状に形成された水平プレート間に挿入して固定するブラケットが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
このブラケットは、1対の2枚の水平プレートを同方向に一体に突出させ、H鋼梁の上下のフランジ端部を、それぞれ各ダイヤフラムの水平プレートとフランジを貫通して差し込んだボルトで固定するものである。
このブラケットによれば、H鋼梁のフランジをブラケットの水平プレート間に挿入して、ボルトで直接連結するので、特別の固定板が不要であり、且つ、ボルトの本数も少なくてすむ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−343936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のブラケットは、水平プレート2枚でスリットを形成する必要があり一対で4枚のプレートを必要とする。更に、上下の狭い間隔のスリットそれぞれに、H鋼梁の上下のフランジを挿入する作業が必要となる。
【0007】
本発明は、前記従来の問題を解決するものであり、部品点数が少なく、且つ、作業性に優れる柱梁接合ブラケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の通りである。
1.鋼管柱の水平方向に突出形成された、上ダイヤフラムと下ダイヤフラムとからなる一対のダイヤフラムに、H鋼梁を固定する柱梁接合ブラケットであって、
一端側が前記上ダイヤフラムに接合し、他端側が前記H鋼梁の上フランジと上面を面一に突き合わせる上水平プレートと、
前記上水平プレートに対向し、一端側が前記下ダイヤフラムに接合し、他端側に前記H鋼梁の下フランジを載置固定する下水平プレートと、
前記上水平プレートと前記下水平プレートを接続し、前記H鋼梁のウェブを当接固定する垂直プレートと、
前記上水平プレートと前記上フランジとを連結固定する水平固定板と、を備え、
前記垂直プレートの下部には、前記下フランジを遊挿するための切欠き部が形成されていることを特徴とする柱梁接合ブラケット。
2.前記上水平プレートの上面、前記下水平プレートの前記H鋼梁との当接面、前記垂直プレートの該H鋼梁との当接面、前記水平固定板の下面のうちの少なくとも一面には、滑り止め加工が施されている1.に記載の柱梁接合ブラケット。
3.前記垂直プレートの前記ウェブとの当接部は、非当接部との間に段差を有することにより、該非当接部の表面と該ウェブの表面とが面一に形成され、前記垂直プレートと前記ウェブとを連結固定する垂直固定板を更に備えた1.又は2.に記載の柱梁接合ブラケット。
4.前記垂直固定板の前記H鋼梁との当接面には、滑り止め加工が施されている3.に記載の柱梁接合ブラケット。
5.前記滑り止め加工が施された面は、多数の凹凸状のヤスリ目に形成されている2.又は4.に記載の柱梁接合ブラケット。
6.前記上フランジ及び前記上水平プレートの側端面同士及び、前記下フランジ及び前記下水平プレートの側端面同士は、いずれも面一となるように垂直プレートの位置決めをした1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載の柱梁接合ブラケット。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係る柱梁接合ブラケット(以下、単に「ブラケット」ともいう。)によれば、ブラケットの上水平プレートと上フランジとを連結する水平固定板は1枚のみであるため、部品点数を少なくすることができる。
また、一端側が前記上ダイヤフラムに接合し、他端側が前記H鋼梁の上フランジと上面を面一に突き合わせる上水平プレートと、上水平プレートに対向し、一端側がダイヤフラムに接合し、他端側にH鋼梁の下フランジを載置固定する下水平プレートとを備えるため、H鋼梁の上フランジの端面を上水平プレートに突き合わせ、下フランジを下水平プレートに載置するという簡易な操作で固定できるため作業性に優れている。
更に、施工前に予めブラケット本体を作製しておくことができるため、施工現場での作業効率を一層高めることができる。
【0010】
請求項2の発明に係る柱梁接合ブラケットによれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、上水平プレートの上面、下水平プレートのH鋼梁との当接面、垂直プレートのH鋼梁との当接面、水平固定板の下面のうちの少なくとも一面に、滑り止め加工が施されている場合には、施工に際して上記の当接面における部材同士が滑るのを効果的に防ぐことができるため、更に安全確実に、H鋼梁を固定することができる。
【0011】
請求項3の発明に係る柱梁接合ブラケットによれば、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、垂直プレートのウェブとの当接部は、非当接部との間に段差を有することにより、非当接部の表面とウェブの表面とが面一に形成され、垂直プレートとウェブとを連結固定する垂直固定板を更に備えているため、更に確実にH鋼梁を固定することができる。
【0012】
請求項4の発明に係る柱梁接合ブラケットによれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、垂直固定板のH鋼梁との当接面に滑り止め加工が施されているため、垂直固定板を備える場合においても、当接面における部材同士が滑るのを効果的に防ぐことができるため、更に安全確実に、H鋼梁を固定することができる。
請求項5の発明に係る柱梁接合ブラケットによれば、請求項2又は4に記載の発明の効果に加え、滑り止め加工が施された面は、多数の凹凸状のヤスリ目に形成されているため、施工に際して滑り止め効果が高く、特に安全確実に、H鋼梁を固定することができる。
【0013】
請求項6の発明に係る柱梁接合ブラケットによれば、請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の発明の効果に加え、上フランジ及び上水平プレートの側端面同士及び、下フランジ及び下水平プレートの側端面同士は、いずれも面一となるように垂直プレートの位置決めをされているため、ブラケットの水平プレートとH鋼梁のフランジがズレることなく重ね合わせることができ、更に確実にH鋼梁を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係り、鋼管柱に接合した柱梁接合ブラケットに、H鋼梁を固定した状態を示す斜視図である。
【図2】図1の状態から、H鋼梁を取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】図1において、水平プレートの長手方向手前のボルト4本を含む縦断面図である。
【図4】図1において、水平プレートの他端側のボルト2本を含む縦断面図である。
【図5】本発明の実施例2に係り、鋼管柱に接合した柱梁接合ブラケットに、H鋼梁を固定した状態を示す斜視図である。
【図6】図5の状態から、H鋼梁を取り外した状態を示す斜視図である。
【図7】図5において、水平プレートの長手方向手前のボルト4本を含む縦断面図である。
【図8】図5において、水平プレートの他端側のボルト2本を含む縦断面図である。
【図9】実施例2に係る柱梁接合ブラケットに、H鋼梁の施工方法を説明する斜視図である。
【図10】図9の対向する側から見た斜視図である。
【図11】図10において、ヤスリ目の滑り止め加工を施した箇所を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施例3に係り、スカラップを有する柱梁接合ブラケットにH鋼梁を固定した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図1〜12を参照しながら本発明を詳しく説明する。尚、本発明は、かかる図に記載された具体例に示すものに限られず、発明の技術的範囲内において、目的、用途に応じて種々変更したものとすることができる。
【0016】
本発明の柱梁接合ブラケットは、鋼管柱の水平方向に突出形成された、上ダイヤフラムと下ダイヤフラムとからなる一対のダイヤフラムに、H鋼梁を固定する柱梁接合ブラケットであって、一端側が前記上ダイヤフラムに接合し、他端側が前記H鋼梁の上フランジと上面を面一に突き合わせる上水平プレートと、前記上水平プレートに対向し、一端側が前記下ダイヤフラムに接合し、他端側に前記H鋼梁の下フランジを載置固定する下水平プレートと、前記上水平プレートと前記下水平プレートを接続し、前記H鋼梁のウェブを固定する垂直プレートと、前記上水平プレートと前記上フランジとを連結固定する水平固定板と、を備え、前記垂直プレートの下部には、前記下フランジを遊挿するための切欠き部が形成されている。
【0017】
前記「ダイヤフラム」は、鋼管柱の水平方向に突出形成された部材であり、本発明では、図1に示すように、ダイヤフラム70は、一対の上ダイヤフラム71と下ダイヤフラム72とからなる。
前記「H鋼梁」は断面がH型の鋼からなる長尺状の梁であり、本発明では、図1に示すように、H鋼梁60は、上フランジ61と、下フランジ62と、両者を接続するウェブ65とからなる。
【実施例1】
【0018】
実施例1に係る柱梁接合ブラケット10は、本発明の柱梁接合ブラケットを具体化している(図1〜図4参照。)。
柱梁接合ブラケット10は、上ダイヤフラム71と下ダイヤフラム72とからなる一対のダイヤフラム70に、H鋼梁60を固定する柱梁接合ブラケットであって、一端側が前記上ダイヤフラム71に接合し、他端側が前記H鋼梁の上フランジ61と上面を面一に突き合わせる上水平プレート11と、前記上水平プレート11に対向し、一端側が前記下ダイヤフラム72に接合し、他端側に前記H鋼梁60の下フランジ62を載置固定する下水平プレート12と、前記上水平プレート11と前記下水平プレート12を接続し、前記H鋼梁60のウェブ65を当接固定する垂直プレート15と、前記上水平プレート11と前記上フランジ61とを連結固定する水平固定板40と、を備え、前記垂直プレート15の下部には、前記下フランジを遊挿するための切欠き部が形成されている。
【0019】
柱梁接合ブラケット10は、図2に示すように、上水平プレート11と、この上水平プレート11に対向する下水平プレート12と、上水平プレート11と下水平プレート12を接続する垂直プレート15とからなる。柱梁接合ブラケット10は、これら3つのプレート同士をそれぞれ別個に作製して溶接により接合して形成してもよいが、鋳物などにより一体に形成されていることが好ましい。
【0020】
上水平プレート11は、図2に示すように、一端側が、上ダイヤフラム71に溶接部95により接合されている。この一端側の先端部は、図3に示すように下方に傾斜することにより溶接部95を確保して形成されている。そして、施工に際しては、他端側が、H鋼梁の上フランジ61と上面が面一となるように、突き合わされる。
上水平プレート11には、図2に示すように、後述の水平固定板40をボルト固定するための貫通孔11hが形成されている。貫通孔11hの数は特に限定されず2〜6個とすることができるが、通常4個である。
【0021】
下水平プレート12は、上水平プレート11に対向し、一端側が前記下ダイヤフラム72に接合されている。この一端側の先端部も、図3に示すように上水平プレート11と同様に、傾斜して溶接部95を確保している。下水平プレート12の他端側にH鋼梁60の下フランジ62を載置固定する。
下水平プレート12には、図2に示すように、下フランジ62を固定するための貫通孔12hが形成されている。貫通孔12hの数は特に限定されず2〜6個とすることができるが、通常4個である。
なお、上水平プレート11及び下水平プレート12をそれぞれ、上ダイヤフラム71と下ダイヤフラム72に接合するに際しては、座当て金80を予め接合する。
【0022】
垂直プレート15は、図2に示すように、上水平プレート11と下水平プレート12を接続すると共に、H鋼梁のウェブ65を当接固定する部材である。垂直プレート15には、H鋼梁の下フランジを遊挿するための切欠き部15cが形成されている。
垂直プレート15は、図1に示すように、H鋼梁のウェブ65と当接する当接部15Bと非当接部15Aとからなる。当接部15Bには、図2に示すように、H鋼梁のウェブ65をボルト固定するための貫通孔15hが形成されている。貫通孔15hの数は特に限定されず2〜6個とすることができるが、通常4個である。
【0023】
垂直プレート15の上水平プレート11及び下水平プレート12に対する幅方向の位置は、図4に示すように、上フランジ61の側端面61s及び上水平プレート11の側端面11s同士、並びに、下フランジ62の側端面62s及び下水平プレート12の側端面12s同士は、いずれも面一となるように垂直プレート15の位置決めをすることができる。こうすることで、H鋼梁のウェブを対称とした水平プレートの左右の幅が同一の長さAとなる。すなわち、ブラケットの水平プレートとH鋼梁のフランジがズレることなく重ね合わせることができ、更に確実にH鋼梁を固定することができる。
【0024】
水平固定板40は、図1に示すように、上水平プレート11と上フランジ61とを連結固定する部材である。水平固定板40には、図10に示すように、上水平プレート11をボルト固定するための貫通孔40hと、上フランジ61をボルト固定するための貫通孔である貫通孔40nが形成されている。貫通孔40h、40nの数は特に限定されず、それぞれ2〜6個とすることができるが、通常4個ずつである。
【実施例2】
【0025】
実施例2に係る柱梁接合ブラケット20も、本発明の柱梁接合ブラケットを具体化している(図5〜図8参照。)。
柱梁接合ブラケット20は、実施例1に係る柱梁接合ブラケット10と同様、上ダイヤフラム71と下ダイヤフラム72とからなる一対のダイヤフラム70に、H鋼梁60を固定する柱梁接合ブラケットであって、一端側が前記上ダイヤフラム71に接合し、他端側が前記H鋼梁の上フランジ61と上面を面一に突き合わせる上水平プレート11と、前記上水平プレート11に対向し、一端側が前記下ダイヤフラム72に接合し、他端側に前記H鋼梁60の下フランジ62を載置固定する下水平プレート12と、前記上水平プレート11と前記下水平プレート12を接続し、前記H鋼梁のウェブ65を当接固定する垂直プレート16と、前記上水平プレート11と前記上フランジ61とを連結固定する水平固定板40と、を備え、前記垂直プレート16の下部には、前記下フランジを遊挿するための切欠き部16cが形成されている。
【0026】
柱梁接合ブラケット20は、図6に示すように、実施例1に係る柱梁接合ブラケット10と異なり、垂直プレートとH鋼梁のウェブとの当接部16Bは、非当接部16Aとの間に段差18を有することにより、H鋼梁を柱梁接合ブラケット20にボルト固定した状態において、非当接部16Aとウェブ表面とが面一に形成される。
そして、図5に示すように、垂直プレート16とウェブ65とを連結固定する垂直固定板50を更に備えることができる。こうすることで、より確実にH鋼梁60を柱梁接合ブラケット20に固定することができる。
【0027】
柱梁接合ブラケット20を構成する上水平プレート11、下水平プレート12、切欠き部16cの作用効果については、実施例1の柱梁接合ブラケット10の上水平プレート11、下水平プレート12、切欠き部15cと同様であるため、その説明を省略する。
また、垂直プレート16の上水平プレート11及び下水平プレート12に対する幅方向の位置が、H鋼梁のウェブを対称とした水平プレートの左右の幅が同一の長さAとなる点についても、柱梁接合ブラケット10と同様である(図8参照。)。
【実施例3】
【0028】
柱梁接合ブラケット30も、本発明の柱梁接合ブラケットを具体化している(図11参照。)。
柱梁接合ブラケット30は、実施例2に係る柱梁接合ブラケット20において、垂直プレート16に代えて垂直プレート17としている。垂直プレート17は、鋼管柱75への接合部の上下に切欠き部分であるスカラップ17scを設けて、裏当て金80の取付けを容易化している例である。スカラップ17scを設けたことで、裏当て金80は、上ダイヤフラム71と下ダイヤフラム72それぞれ1個ずつの取り付けとすることができる。
その他の構成については、実施例2に係る柱梁接合ブラケット20と同様であるため、その説明を省略する。
【0029】
[滑り止め加工]
例えば図11に示すように、上水平プレートの上面11a、下水平プレート12のH鋼梁60(下フランジ底面62a)との当接面12a、垂直プレート16のH鋼梁60(ウェブ表面65a)との当接面16a、水平固定板40の下面40a、垂直固定板50のH鋼梁60(ウェブ表面65b)との当接面50aのうちの少なくとも一面には、滑り止め加工が施されていることが好ましい。これらのうちの一面のみ、いくつかの面に滑り止め加工が施されていることができるが、すべての面に滑り止め加工が施されていることが特に好ましい。
【0030】
滑り止め加工は滑り止め効果を有すれば特に限定はなく、滑り止め加工が施された面が、ヤスリ目状、梨地状などの他、平行な複数の溝、螺旋状の複数の溝などが挙げられる。また、合成樹脂材の塗布を行ってもよい。
これらのうちで、滑り止め加工が施された面が、多数の凹凸状のヤスリ目状に形成されていることが好ましい。更に、ヤスリ目の溝の向きがそれぞれの板面上において、端面に対して斜め45度に傾斜していることが好ましい。こうであれば、より滑り止め効果を高めることができる。
【0031】
[施工方法]
実施例2に係る柱梁接合ブラケット20を例として、施工方法について、以下説明する。
(1)柱梁接合ブラケットの鋼管柱への接合
図9に示すように、まず、鋼管柱75に、垂直プレート16の非当接部16Aの先端面の上下部分をスポット的に溶接により仮付けする。
次いで、鋼管柱75の水平方向に突出形成された、上ダイヤフラム71の側面と上水平プレート11の下部に当接するように、裏当て金80を溶接により接合する。同様に下ダイヤフラム72側面と下水平プレート12の上部にも当接するように裏当て金80を溶接により接合する。
その後、図7に示すように、溶接部95、96を形成するように溶接して、上ダイヤフラム71の側面と上水平プレート11、下ダイヤフラム72の側面と下水平プレート12を確実に接合する。更に、鋼管柱75に垂直プレート16の非当接部16Aの先端面を溶接により本付けをして、柱梁接合ブラケット20の鋼管柱75への接合を完了する。
【0032】
(2)柱梁接合ブラケットへのH鋼梁の載置
柱梁接合ブラケット20へH鋼梁60を取り付けるには、図10に示すように、H鋼梁60の上フランジの先端面61eを、柱梁接合ブラケット20の上水平プレートの先端面11eと突合せると共に、H鋼梁60の下フランジの一端側を垂直プレート16の切欠き部16cに遊挿し、下水平プレート12上に載置する。その際、図9に示すように、垂直プレート16の当接部16B、及び垂直プレート16の段差部の端面に、ウェブ65の側面及び先端面をそれぞれ当接させる。
次いで、図10に示すように、下水平プレート12の貫通孔12hと下フランジの貫通孔62hとをボルト及びナット91で挿通固定する(図5参照。)。
【0033】
(3)水平固定板の取付け
図9及び図10に示すように、柱梁接合ブラケット20の上水平プレート11とH鋼梁60の上フランジ61の上面に渡る水平固定板40を当接させる。
そして、上水平プレートの貫通孔11hと、水平固定板40の貫通孔40hを、ボルト及びナット91で挿通固定する(図5参照。)。
同様に、H鋼梁60の上フランジ61の貫通孔61hと、水平固定板40の貫通孔40nを、ボルト及びナット91で挿通固定する(図5参照。)。
【0034】
(4)垂直固定板の取付け
図9及び図10に示すように、垂直固定板50を、垂直プレート16の非当接部と、H鋼梁60のウェブ65に対して当接させる。
そして、垂直固定板50の貫通孔50hと、H鋼梁のウェブ65の貫通孔65hと、垂直プレート16の貫通孔16hとを、ボルト及びナット91で挿通固定する(図5参照。)。
更に、垂直プレート16の貫通孔16nと垂直固定板50の貫通孔50nとを、ボルト及びナット91で挿通固定する(図5参照。)。
以上の施工方法により、図5に示すように、本発明の柱梁接合ブラケットを用いた鋼管柱へのH鋼梁の取付けが完成する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の柱梁接合ブラケットは、鋼管柱に梁を接合固定する技術の分野において好適に利用される。
【符号の説明】
【0036】
10、20、30・・・柱梁接合ブラケット
11・・・・上水平プレート
11a・・・上水平プレートの上面
11s、12s、61s、62s・・・側端面
12・・・下水平プレート
12a・・下水平プレートのH鋼梁との当接面
15、16、17・・・垂直プレート
15A、16A・・・非接合部
15B、16B・・・当接部
15c、16c・・・切欠き部
16a・・垂直プレートのH鋼梁との当接面
18・・・段差
40・・・水平固定板
40a・・水平固定板の下面
50・・・垂直固定板
50a・・垂直固定板のH鋼梁との当接面
60・・・H鋼梁
61・・・上フランジ
62・・・下フランジ
65・・・ウェブ
70・・・ダイヤフラム
71・・・上ダイヤフラム
72・・・下ダイヤフラム
75・・・鋼管柱
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管柱の水平方向に突出形成された、上ダイヤフラムと下ダイヤフラムとからなる一対のダイヤフラムに、H鋼梁を固定する柱梁接合ブラケットであって、
一端側が前記上ダイヤフラムに接合し、他端側が前記H鋼梁の上フランジと上面を面一に突き合わせる上水平プレートと、
前記上水平プレートに対向し、一端側が前記下ダイヤフラムに接合し、他端側に前記H鋼梁の下フランジを載置固定する下水平プレートと、
前記上水平プレートと前記下水平プレートを接続し、前記H鋼梁のウェブを当接固定する垂直プレートと、
前記上水平プレートと前記上フランジとを連結固定する水平固定板と、を備え、
前記垂直プレートの下部には、前記下フランジを遊挿するための切欠き部が形成されていることを特徴とする柱梁接合ブラケット。
【請求項2】
前記上水平プレートの上面、前記下水平プレートの前記H鋼梁との当接面、前記垂直プレートの該H鋼梁との当接面、前記水平固定板の下面のうちの少なくとも一面には、滑り止め加工が施されている請求項1に記載の柱梁接合ブラケット。
【請求項3】
前記垂直プレートの前記ウェブとの当接部は、非当接部との間に段差を有することにより、該非当接部の表面と該ウェブの表面とが面一に形成され、前記垂直プレートと前記ウェブとを連結固定する垂直固定板を更に備えた請求項1又は2に記載の柱梁接合ブラケット。
【請求項4】
前記垂直固定板の前記H鋼梁との当接面には、滑り止め加工が施されている請求項3に記載の柱梁接合ブラケット。
【請求項5】
前記滑り止め加工が施された面は、多数の凹凸状のヤスリ目に形成されている請求項2又は4に記載の柱梁接合ブラケット。
【請求項6】
前記上フランジ及び前記上水平プレートの側端面同士及び、前記下フランジ及び前記下水平プレートの側端面同士は、いずれも面一となるように垂直プレートの位置決めをした請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の柱梁接合ブラケット。
【請求項1】
鋼管柱の水平方向に突出形成された、上ダイヤフラムと下ダイヤフラムとからなる一対のダイヤフラムに、H鋼梁を固定する柱梁接合ブラケットであって、
一端側が前記上ダイヤフラムに接合し、他端側が前記H鋼梁の上フランジと上面を面一に突き合わせる上水平プレートと、
前記上水平プレートに対向し、一端側が前記下ダイヤフラムに接合し、他端側に前記H鋼梁の下フランジを載置固定する下水平プレートと、
前記上水平プレートと前記下水平プレートを接続し、前記H鋼梁のウェブを当接固定する垂直プレートと、
前記上水平プレートと前記上フランジとを連結固定する水平固定板と、を備え、
前記垂直プレートの下部には、前記下フランジを遊挿するための切欠き部が形成されていることを特徴とする柱梁接合ブラケット。
【請求項2】
前記上水平プレートの上面、前記下水平プレートの前記H鋼梁との当接面、前記垂直プレートの該H鋼梁との当接面、前記水平固定板の下面のうちの少なくとも一面には、滑り止め加工が施されている請求項1に記載の柱梁接合ブラケット。
【請求項3】
前記垂直プレートの前記ウェブとの当接部は、非当接部との間に段差を有することにより、該非当接部の表面と該ウェブの表面とが面一に形成され、前記垂直プレートと前記ウェブとを連結固定する垂直固定板を更に備えた請求項1又は2に記載の柱梁接合ブラケット。
【請求項4】
前記垂直固定板の前記H鋼梁との当接面には、滑り止め加工が施されている請求項3に記載の柱梁接合ブラケット。
【請求項5】
前記滑り止め加工が施された面は、多数の凹凸状のヤスリ目に形成されている請求項2又は4に記載の柱梁接合ブラケット。
【請求項6】
前記上フランジ及び前記上水平プレートの側端面同士及び、前記下フランジ及び前記下水平プレートの側端面同士は、いずれも面一となるように垂直プレートの位置決めをした請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の柱梁接合ブラケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−57233(P2013−57233A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176089(P2012−176089)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(502167865)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【出願人】(502167865)
【Fターム(参考)】
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