説明

柱梁接合部の構造

【課題】 柱梁接合部の囲み板工法を対象に、囲み板を構造材として利用し、かつ、柱主筋の付着性能を確保し、施工コストを削減しつつ強固な柱梁接合部を得ること。
【解決手段】 柱梁接合部10において2つのS造梁12はRC造柱14を貫通している。RC造柱14は断面が矩形で、2つのS造梁12はRC造柱14の断面の中央で直交しており、2つのS造梁12はRC造柱14の4つの側面の中央を貫通している。柱梁接合部10においてS造梁12に溶着されてRC造柱22の4つの側面を構成する鋼製の囲み板22が設けられている。囲み板22の4つの角部22Aとそれら各角部22Aの内側に臨む2つのS造梁12とで区画されるRC造柱22の箇所に上下に延在する複数の柱主筋30が挿通されている。柱主筋30が囲み板22の内側に位置する部分は、スパイラル筋30Aとして形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱を鉄筋コンクリート(RC)造、梁を鉄骨(S)造としたハイブリット構造の柱梁接合部の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4に示すように、RC造柱52とS造梁54で構成されたハイブリット構造の柱梁接合部50は、S造梁54がRC造柱52を貫通し、柱梁接合部50を構成するRC造柱52の周囲を囲み板56により取り囲んだものがある。
そして、強固な柱梁接合部50を得るために、図5に示すように、囲み板56の内面にコッター筋58を溶接したもの(特許文献1)、あるいは、縞付き鋼板を囲み板56に使用したものがある。
【特許文献1】特許第2979041号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、囲み板56の内面にコッター筋58を溶接する従来の技術では、溶接作業に手間取り、コストダウンを図れない不具合があった。
また、囲み板56として縞付き鋼板を使用する従来技術では、縞付き鋼板を構造材として利用する場合にはJIS規格品が現状では生産されていないこと、JIS規格相当品は生産されているものの一般には流通しておらず入手が困難であること、また、JIS規格相当品は高価でありコストダウンを図れない不具合があった。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、柱梁接合部の囲み板工法を対象に、囲み板を構造材として利用し、かつ、柱主筋の付着性能を確保し、施工コストを削減しつつ強固な柱梁接合部を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するため本発明は、2つのS造梁が交差する箇所にRC造柱が通る柱梁接合部の構造であって、前記柱梁接合部において2つのS造梁は前記RC造柱を貫通しており、前記RC造柱は断面が矩形で前記2つのS造梁は前記RC造柱の断面の中央で直交し前記2つのS造梁は前記RC造柱の4つの側面の中央を貫通しており、前記柱梁接合部において前記S造梁に溶着されて前記RC造柱の4つの側面を構成する鋼製の囲み板が設けられ、前記囲み板の4つの角部とそれら各角部に臨む2つのS造梁とで区画される前記RC造柱の箇所に上下に延在する複数の柱主筋が挿通されており、前記柱主筋が前記囲み板の内側に位置する部分はスパイラル筋として形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明では、柱梁接合部において、フープ筋などを省略して囲み板をせん断補強材として利用し、かつ、柱主筋が囲み板の内側に位置する部分をスパイラル筋とすることで柱主筋の付着性能を確保するようにした。
したがって、従来のようなコッター筋の溶接作業を省き、縞付き鋼板を使用する必要もなく、強固な柱梁接合部を簡単に安価に得る上で有利となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
図1は本実施の形態の柱梁接合部の斜視図、図2は本実施の形態の柱梁接合部の断面平面図、図3は本実施の形態の柱梁接合部の断面正面図を示す。
本発明は、2つのS造梁12が直交する箇所にRC造柱14が通る柱梁接合部10の構造である。
柱梁接合部10において2つのS造梁12はRC造柱14を貫通している。
RC造柱14は断面が矩形で、2つのS造梁12はRC造柱14の断面の中央で直交しており、2つのS造梁12はRC造柱14の4つの側面の中央を貫通している。
S造梁12は本実施の形態ではI型鋼からなり、S造梁12はウェブ12Aとフランジ12Bを有している。
【0007】
柱梁接合部10においてS造梁12に溶着されてRC造柱22の4つの側面を構成する鋼製の囲み板22が設けられている。
前記囲み板22は、均一の厚さの平坦な平板を用いて形成され、RC造柱22の断面形状に対応して矩形枠状を呈し、囲み板22の4つの側面は、RC造柱22の表面と同一面上を延在している。
囲み板22は、より詳細には、平坦な平板がL字状に直角に折り曲げられた部材2202が4つ用いられて構成されている。
【0008】
囲み板22の4つの角部22Aとそれら各角部22Aの内側に臨む2つのS造梁12とで区画されるRC造柱22の箇所に上下に延在する複数の柱主筋30が挿通されている。
そして、柱主筋30が囲み板22の内側に位置する部分は、スパイラル筋30Aとして形成されている。
【0009】
本実施の形態によれば、柱梁接合部10において、フープ筋などを省略して囲み板22をせん断補強材として利用し、かつ、柱主筋30が囲み板22の内側に位置する部分をスパイラル筋30Aとすることで柱主筋30の付着性能を確保するようにした。
したがって、従来のようなコッター筋の溶接作業を省略でき、また、縞付き鋼板を使用する必要もなく、強固な柱梁接合部10を簡単に安価に得る上で有利となる。
【0010】
また、本実施の形態では、囲み板22を、均一の厚さの平坦な平板を用いて形成したので、囲み板を構造材として利用する際のJIS規格品を使用できる。
したがって、囲み板22を構成する平板を安価に簡単に入手でき、JIS規格に基づいた強固な柱梁接合部10を得る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態の柱梁接合部の斜視図である。
【図2】本実施の形態の柱梁接合部の断面平面図である。
【図3】本実施の形態の柱梁接合部の断面正面図である。
【図4】従来の柱梁接合部の斜視図である。
【図5】従来の柱梁接合部の断面正面図である。
【符号の説明】
【0012】
10……柱梁接合部、12……S造梁、14……RC造柱、22……囲み板、30……柱主筋、30A……スパイラル筋。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのS造梁が交差する箇所にRC造柱が通る柱梁接合部の構造であって、
前記柱梁接合部において2つのS造梁は前記RC造柱を貫通しており、
前記RC造柱は断面が矩形で前記2つのS造梁は前記RC造柱の断面の中央で直交し前記2つのS造梁は前記RC造柱の4つの側面の中央を貫通しており、
前記柱梁接合部において前記S造梁に溶着されて前記RC造柱の4つの側面を構成する鋼製の囲み板が設けられ、
前記囲み板の4つの角部とそれら各角部に臨む2つのS造梁とで区画される前記RC造柱の箇所に上下に延在する複数の柱主筋が挿通されており、
前記柱主筋が前記囲み板の内側に位置する部分はスパイラル筋として形成されている、
ことを特徴とする柱梁接合部の構造。
【請求項2】
前記囲み板は、均一の厚さの平坦な平板により形成されていることを特徴とする請求項1記載の柱梁接合部の構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−247173(P2007−247173A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68958(P2006−68958)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】