説明

柱状体の接続工法と柱状体セットとキー部材

【課題】分割キー部材のいずれかが引っ掛かって挿入できなくなったときに、その引っ掛かりを解消し易くする。
【解決手段】外嵌部材2と内嵌部材3とを互いに嵌合させた後、分割キー部材15の複数個を、開口部16を通して内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入することにより、外嵌部材と内嵌部材とを柱状体長手方向に互いに係合させる柱状体の接続工法であって、分割キー部材の複数個を、各分割キー部材が内向き周溝と外向き周溝との間に挿入可能な姿勢に姿勢変更自在に予め互いに連係しておいて、内向き周溝と外向き周溝とに亘って順に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外嵌部材と内嵌部材とを両端部に振り分けて夫々備えている一対の柱状体どうしを、一方の柱状体の前記外嵌部材と他方の柱状体の前記内嵌部材とを互いに嵌合させた後、柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、前記外嵌部材の内周側に内向き周溝を形成しておくと共に、前記内嵌部材の外周側に外向き周溝を形成しておき、更に、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着するキー部材を、柱状体周方向で複数個の分割キー部材で構成すると共に、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記外向き周溝の一部を外方に臨ませるための開口部を、前記外嵌部材に形成しておき、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた後、前記分割キー部材の夫々を、前記開口部を通して前記内向き周溝と前記外向き周溝との間に挿入することにより、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着して、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを柱状体長手方向に互いに係合させる柱状体の接続工法、及び、
外嵌部材と内嵌部材とを両端部に振り分けて設けてあり、前記外嵌部材の内周側には内向き周溝を形成してあると共に、前記内嵌部材の外周側には外向き周溝を形成してある柱状体と、一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、一方の柱状体の前記外嵌部材と他方の柱状体の前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着するキー部材とを備え、前記キー部材は、柱状体周方向で複数個の分割キー部材で構成してあり、前記外嵌部材には、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記外向き周溝の溝長手方向における一部を外方に臨ませるための開口部を形成してあり、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた後、前記分割キー部材の夫々を、前記開口部を通して前記内向き周溝と前記外向き周溝との間に挿入することにより、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着して、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを柱状体長手方向に互いに係合可能に構成してある柱状体セット、及び、
その柱状体セットに備えたキー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
上記柱状体の接続工法、及び、上記柱状体セットでは、従来、一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、一方の柱状体の外嵌部材と他方の柱状体の内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、分割キー部材の一つずつを、開口部を通して内向き周溝と外向き周溝との間に挿入することにより、後続して装着する後続分割キー部材で先行して装着してある先行分割キー部材を挿入する状態で、内向き周溝と外向き周溝とに亘って装着できるようにしてある。
また、後続分割キー部材で先行分割キー部材を挿入するにあたって、後続分割キー部材を装着してから先行分割キー部材にボルト連結して挿入することも行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3228691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外嵌部材と内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、分割キー部材の一つずつを、後続分割キー部材で先行分割キー部材を挿入する状態で、内向き周溝と外向き周溝とに亘って装着できるようにしてあるので、先行分割キー部材のいずれかが内向き周溝や外向き周溝の溝周面などに引っ掛かって挿入できなくなると、その先行分割キー部材を開口部側に引き戻すことも、それ以外の先行分割キー部材や後続分割キー部材を所定位置に装着することもできなくなるおそれがある。
この点、後続分割キー部材を先行分割キー部材にボルト連結してから挿入するようにしてある場合は、先行分割キー部材が引っ掛かって挿入できなくなったときは、その引っ掛かりを解消するべく、後続分割キー部材を使って先行分割キー部材を動かすことができるが、分割キー部材の一つずつを、外方に臨ませた外向き周溝部分に装着してから先行分割キー部材にボルト連結する必要があり、分割キー部材の装着作業が煩雑化する欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、分割キー部材の装着作業を煩雑化することなく、分割キー部材のいずれかが内向き周溝と外向き周溝との間で引っ掛かって挿入できなくなったときに、その引っ掛かりを解消し易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、外嵌部材と内嵌部材とを両端部に振り分けて夫々備えている一対の柱状体どうしを、一方の柱状体の前記外嵌部材と他方の柱状体の前記内嵌部材とを互いに嵌合させた後、柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、前記外嵌部材の内周側に内向き周溝を形成しておくと共に、前記内嵌部材の外周側に外向き周溝を形成しておき、更に、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着するキー部材を、柱状体周方向で複数個の分割キー部材で構成すると共に、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記外向き周溝の一部を外方に臨ませるための開口部を、前記外嵌部材に形成しておき、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた後、前記分割キー部材の夫々を、前記開口部を通して前記内向き周溝と前記外向き周溝との間に挿入することにより、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着して、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを柱状体長手方向に互いに係合させる柱状体の接続工法であって、
前記分割キー部材の複数個を、各分割キー部材が前記内向き周溝と前記外向き周溝との間に挿入可能な姿勢に姿勢変更自在に予め互いに連係しておいて、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って順に装着する点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
分割キー部材の複数個を、各分割キー部材が内向き周溝と外向き周溝との間に挿入可能な姿勢に姿勢変更自在に予め互いに連係しておいて、それらの分割キー部材を、内向き周溝と外向き周溝との間に挿入することにより、内向き周溝と外向き周溝とに亘って順に装着する。
従って、分割キー部材の一つずつを、外方に臨んでいる外向き周溝部分に装着してから先行分割キー部材にボルト連結するような煩雑な作業を要することなく、つまり、分割キー部材の装着作業を煩雑化することなく、分割キー部材のいずれかが引っ掛かって挿入できなくなったときは、その引っ掛かりを解消するべく、内向き周溝と外向き周溝との間に挿入する前の分割キー部材を使って、先行分割キー部材を動かして、引っ掛かりを解消し易い。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、外嵌部材と内嵌部材とを両端部に振り分けて設けてあり、前記外嵌部材の内周側には内向き周溝を形成してあると共に、前記内嵌部材の外周側には外向き周溝を形成してある柱状体と、一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、一方の柱状体の前記外嵌部材と他方の柱状体の前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着するキー部材とを備え、前記キー部材は、柱状体周方向で複数個の分割キー部材で構成してあり、前記外嵌部材には、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記外向き周溝の溝長手方向における一部を外方に臨ませるための開口部を形成してあり、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた後、前記分割キー部材の夫々を、前記開口部を通して前記内向き周溝と前記外向き周溝との間に挿入することにより、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着して、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを柱状体長手方向に互いに係合可能に構成してある柱状体セットであって、
前記複数個の分割キー部材どうしは、前記内向き周溝と前記外向き周溝との間に挿入可能に、連係機構を介して予め互いに連係させてある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
複数個の分割キー部材どうしは、内向き周溝と外向き周溝との間に挿入可能に、連係機構を介して予め互いに連係させてあるので、分割キー部材の一つずつを、開口部を通して外方に臨んでいる外向き周溝部分に装着してから先行分割キー部材にボルト連結するような、従来行っていた煩雑な作業を要することなく、つまり、分割キー部材の装着作業を煩雑化することなく、分割キー部材のいずれかが内向き周溝と外向き周溝との間で引っ掛かって挿入できなくなったときは、連係機構を介して予め互いに連係させてある複数個の分割キー部材を動かして姿勢を変化させることにより、その引っ掛かりを解消し易い。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、請求項2記載の柱状体セットに備えたキー部材である点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
互いに連係した分割キー部材どうしは、前記内向き周溝と前記外向き周溝との間における姿勢を、少なくとも上下に動かすことにより、分割キー部材のいずれかが内向き周溝と外向き周溝との間で引っ掛かって挿入できなくなったときも、その状態を解消できる。
【0011】
尚、本発明において使用している「分割キー部材の複数個を、各分割キー部材が内向き周溝と外向き周溝との間に挿入可能な姿勢に姿勢変更自在に予め互いに連係しておく」という文言、及び、「複数個の分割キー部材どうしは、内向き周溝と外向き周溝との間に挿入可能に、連係機構を介して予め互いに連係させてある」との文言は、少なくとも以下のa〜dに記載の形態を含むこと意味している。
【0012】
a.複数個の分割キー部材どうしを連結具などの連結部材で単に連結しておく形態、或いは、連結してある形態。
b.複数個の分割キー部材どうしを連結部材で連結し、更に、連結部材で連結してある分割キー部材のうちの、分割キー部材列の一端に位置する分割キー部材又は両端に位置する分割キー部材に索条体を繋いでおく形態、或いは、繋いである形態。
c.複数個の分割キー部材の夫々に貫通孔を形成し、索条体をそれらの貫通孔に亘って挿通して、その索条体の両端部分を分割キー部材列の両端に位置する分割キー部材から引き出しておく形態、或いは、引き出してある形態。
d.複数個の分割キー部材の夫々に貫通孔を形成し、索条体をそれらの貫通孔に亘って挿通するとともに、その索条体の両端部分を分割キー部材列の両端の分割キー部材から引き出して、その分割キー部材から引き出してある索条体の両端部分の一方又は双方に、その索条体の分割キー部材からの抜け出しを阻止する規制部材、又は、索条体の分割キー部材からの抜け出しに抵抗を与える規制部材を設けておく形態、或いは、設けてある形態。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の柱状体の接続工法に使用する本発明による柱状体セットを示し、柱状体の一例としての外周面形状が円筒状の鋼管杭Aと、一対の鋼管杭Aを杭長手方向に互いに係合させて接続するために装着するキー部材15とを備えている。
【0014】
前記鋼管杭A(A1,A2)は、鋼管1の両端部に鋳鋼製の外嵌部材2と内嵌部材3とを振り分けて同芯状に溶接してあり、内嵌部材3を上側に位置させて地中に埋設できるように構成してある。
【0015】
前記内嵌部材3は、図2にも示すように、鋼管1の外径と略同じ外径の基部4に、その基部4よりも外径が小径の内嵌部5を延設してある略円筒状に形成してあり、基部4の内嵌部5側に臨む端面6を、外嵌部材2の先端部分を接当させる内嵌側接当面に形成して、その内嵌側接当面6に内嵌側係合凹部7を環状に形成してあり、内嵌部5の外周側には、二条の外向き周溝8を円環状に形成してあり、内嵌部5の先端部分には内嵌側係合凸部9を環状に形成してある。
【0016】
前記外嵌部材2は、図2にも示すように、鋼管1の外径と略同じ外径の略円筒状に形成してあり、その内周側に内嵌部5を嵌合させる外嵌部10を形成して、外向き周溝8と略同じ深さの二条の内向き周溝11を形成し、内嵌側接当面6に接当させる先端部分に、内嵌側係合凹部7に係合する外嵌側係合凸部12を環状に形成し、内嵌部5の先端部分を接当させる外嵌側接当面13に、内嵌側係合凸部9を係合させる外嵌側係合凹部14を形成してある。
【0017】
前記内向き周溝11は、内嵌部5を外嵌部10に嵌合させた状態で、外向き周溝8に対向するように円環状に形成してあり、一対の鋼管杭Aを接続するために、一方の鋼管杭Aの外嵌部材2と他方の鋼管杭Aの内嵌部材3とを互いに嵌合させた状態で、内向き周溝11と外向き周溝8とに亘ってキー部材15を装着することにより、外嵌部材2と内嵌部材3とを鋼管杭長手方向に互いに係合できるようにしてある。
【0018】
前記キー部材15は、図4に示すように、杭周方向で複数個の略直方体形状の分割キー部材で構成してあり、外嵌部材2と内嵌部材3とを互いに嵌合させた状態で、これらの分割キー部材15を内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入するために、図1,図5に示すように、各外向き周溝8の溝長手方向における一部を外向き周溝9の全幅に亘って外方に臨ませるための開口部16を、各内向き周溝11の形成箇所に沿って、内向き周溝11の全幅に亘って切り取った形状で、外嵌部材2の周方向で複数箇所(本実施形態では4箇所)に予め形成してある。
【0019】
そして、図3(イ)に示すように、一方の鋼管杭A1の外嵌部材2に他方の鋼管杭A2の内嵌部材3を内嵌して互いに嵌合させた後、図3(ロ)に示すように、隣り合う開口部16間における内向き周溝11と外向き周溝8との間毎に、複数個の分割キー部材15の夫々を、開口部16を通して外方に臨ませた外向き周溝部分8aに装着して、その外向き周溝部分8aに沿って内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入することにより、内向き周溝11と外向き周溝8とに亘って跨るように装着して、外嵌部材2と内嵌部材3とを杭長手方向に互いに係合させる接続工法で、一対の鋼管杭A(A1,A2)どうしを接続できるように構成してある。
【0020】
尚、図1中の符号17は、互いに接続した鋼管杭A(A1,A2)どうしの相対回転を抑止するために、外嵌部材2と内嵌部材3とに亘って係合するようにビス止めしてある回転抑止キーである。
【0021】
前記杭周方向で隣り合う開口部16の間毎に装着する複数個の分割キー部材15は、図4に示すように、各分割キー部材15にワイヤー挿通用貫通孔32を形成して、それらの分割キー部材15に亘って、一連の索条体としてのワイヤー18を予め挿通してある。
【0022】
前記ワイヤー18には、そのワイヤー18を挿通してある分割キー部材15のうちの、挿入方向前端側の分割キー部材15aとの接当でその分割キー部材15aとの相対移動を規制する規制部19としての第1規制部材19aと、挿入方向後端側の分割キー部材15bとの接当でその分割キー部材15bとの相対移動を規制する規制部19としての第2規制部材19bとを設けてあり、第1規制部材19aと第2規制部材19bとの間隔を、各分割キー部材15の合計長さ以上の長さ、例えば二倍以上の長さに設定して、各分割キー部材15が内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入可能な姿勢に姿勢変更自在に挿通してある。
【0023】
従って、複数の分割キー部材15どうしは、連係機構Bとしてのワイヤー18と規制部19とを介して、内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入可能、かつ、内向き周溝11と外向き周溝8との間から引き戻し可能に予め互いに連係させてあり、また、内向き周溝11と外向き周溝8との間における、挿入方向への相対移動と、引き戻し方向への相対移動とを規制可能に予め互いに連係させてある。
【0024】
前記分割キー部材15の夫々を内向き周溝11と外向き周溝8とに亘って装着する方法を説明する。
図5(イ)に示すように、隣り合う開口部16の間毎に、ワイヤー18の端部を、一方の開口部16から内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿通して他方の開口部16から引き出した後、図5(ロ)に示すように、そのワイヤー18を挿通してある各分割キー部材15を、内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入して、内向き周溝11と外向き周溝8とに亘って順に装着し、その後、図5(ハ)に示すように、ワイヤー18を切断して各分割キー部材15から抜き取る。
【0025】
次に、図6に示すように、各分割キー部材15の周溝内での移動を阻止するためのL字状のスライドキー部材20を開口部16から内向き周溝11と外向き周溝8との間に装着するとともに、隣り合うスライドキー部材20の間に押えキー部材21を装着して、スライドキー部材20どうしを連結固定する連結板22を各スライドキー部材20にビス止めする。
【0026】
本実施形態の柱状体セットによれば、索条体としてのワイヤー18を、開口部16から内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿通しても、そのワイヤー18が分割キー部材15の装着の邪魔にならないように、分割キー部材15の複数個に亘って、それらの分割キー部材15が内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入可能な姿勢に姿勢変更自在に、ワイヤー18を挿通しておき、ワイヤー18の端部を、開口部16から内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿通して開口部16から引き出した後、そのワイヤー18を挿通してある分割キー部材15の複数個を、外方に臨ませた外向き周溝部分8aに装着して、その外向き周溝部分8aに沿って内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入することにより、内向き周溝11と外向き周溝8とに亘って順に装着できる。
【0027】
従って、分割キー部材15の一つずつを、外方に臨んでいる外向き周溝部分8aに装着してから先行分割キー部材にボルト連結するような、従来行っていた煩雑な作業を要することなく、つまり、分割キー部材15の装着作業を煩雑化することなく、分割キー部材15のいずれかが内向き周溝11と外向き周溝8との間で引っ掛かって挿入できなくなったときは、その引っ掛かりを解消するべく、開口部16から引き出してあるワイヤー18を上下左右に動かすことで、分割キー部材15と内向き周溝11又は外向き周溝8との間のあそび(隙間)部分での分割キー部材15の引っ掛かりを解消し易い。
【0028】
また、ワイヤー18として、そのワイヤー18を挿通してある分割キー部材15との接当で、その分割キー部材15との相対移動を規制する規制部19を設けてあるワイヤー18を使用するので、ワイヤー18を少なくとも前後方向のいずれか一方に動かすことで、そのワイヤー18を挿通してある分割キー部材15の全部又は一部を積極的に動かすことができ、分割キー部材15の引っ掛かりを一層解消し易い。
【0029】
〔第2実施形態〕
図7は、本発明による柱状体セットを使用して鋼管杭Aどうしを接続するにあたって、各分割キー部材15を内向き周溝11と外向き周溝8とに亘って装着する方法の別実施形態を示し、各分割キー部材15を、内向き周溝11と外向き周溝8とに亘って順に装着して、ワイヤー18を各分割キー部材15から抜き取った後、分割キー部材15よりも長尺のスライドキー部材20を開口部16から内向き周溝11と外向き周溝8との間に装着するとともに、スライドキー部材20どうしを連結固定する連結板22を各スライドキー部材20にビス止めする。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0030】
〔第3実施形態〕
図8は、本発明による柱状体セットのうちの、隣り合う開口部16の間毎に装着する複数個の分割キー部材15の別実施形態を示し、各分割キー部材15の形状を、挿入方向前方側ほど幅狭で、かつ、前方側の前面23aと後方側の後面23bとの夫々が挿入方向前方側に凸曲する円弧状に形成して、円環状に形成してある内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入し易くしてある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0031】
〔第4実施形態〕
図9は、本発明による柱状体セットのうちの、隣り合う開口部16の間毎に装着する複数個の分割キー部材15の別実施形態を示し、各分割キー部材15を球状に形成すると共に、分割キー部材15どうしを、各分割キー部材15が内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入可能な姿勢に姿勢変更自在にリングやチェーンなどの連結部材24で予め互いに連結して、内向き周溝11と外向き周溝8との間における、挿入方向への相対移動と、引き戻し方向への相対移動とを規制可能に予め互いに連結してある。
【0032】
そして、これらの分割キー部材15のうちの、内向き周溝11と外向き周溝8とに亘って最先に装着する分割キー部材15a、つまり、挿入方向前端側の分割キー部材15aに牽引用索条体としてのワイヤー25を連結して、複数個の分割キー部材15どうしを、内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入可能、かつ、内向き周溝11と外向き周溝8との間から引き戻し可能に、連係機構Bとしての連結部材24とワイヤー25とを介して予め互いに連係させてある。
【0033】
そして、ワイヤー25を、一方の開口部16から内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿通して他方の開口部16から引き出した後、引っ張りながら、互いに連結してある複数個の分割キー部材15を内向き周溝11と外向き周溝8とに亘って順に装着できるように構成してある。
この場合は、開口部16を加工し易い円形に形成できる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0034】
本実施形態の柱状体セットによれば、分割キー部材15の複数個を、各分割キー部材15が内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入可能な姿勢に姿勢変更自在に予め互いに連結しておいて、それらの分割キー部材15を、外方に臨ませた外向き周溝部分8aに装着して、その外向き周溝部分8aに沿って内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入することにより、内向き周溝11と外向き周溝8とに亘って順に装着できる。
【0035】
従って、分割キー部材15の一つずつを、外方に臨んでいる外向き周溝部分8aに装着してから先行分割キー部材にボルト連結するような、従来行っていた煩雑な作業を要することなく、つまり、分割キー部材15の装着作業を煩雑化することなく、分割キー部材15のいずれかが内向き周溝11と外向き周溝8との間で引っ掛かって挿入できなくなったときは、その引っ掛かりを解消するべく、内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入前の分割キー部材15やワイヤー25を上下左右に動かすことで、分割キー部材15と内向き周溝11又は外向き周溝8との間のあそび(隙間)部分での分割キー部材15の引っ掛かりを解消し易い。
【0036】
また、互いに連結してある複数個の分割キー部材15のうちの、内向き周溝11と外向き周溝8とに亘って最先に装着する分割キー部材15に牽引用ワイヤー25を連結しておき、牽引用ワイヤー25を、開口部16から内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿通して開口部16から引き出した後、互いに連結してある複数個の分割キー部材15を内向き周溝11と外向き周溝8とに亘って順に装着できるので、複数個の分割キー部材15を牽引用ワイヤー25で挿入方向に牽引することにより、その挿入方向がずれないように内向き周溝11と外向き周溝8との間に沿って案内しながら順に装着できる。
【0037】
〔第5実施形態〕
図10は、本発明による柱状体セットのうちの、隣り合う開口部16の間毎に装着する複数個の分割キー部材15の別実施形態を示し、各分割キー部材15を球状に形成して、それらの分割キー部材15に、円錐台形状の凹部26と、その凹部26の底部に開口する貫通孔27とを同芯状に形成してあるとともに、各分割キー部材15の貫通孔27に亘ってワイヤー28を挿通しながら、そのワイヤー28を固く結んで形成した結び目29を凹部26に入り込ませて分割キー部材15に係合させることにより、分割キー部材15どうしを連結して、内向き周溝11と外向き周溝8との間における、挿入方向への相対移動と、引き戻し方向への相対移動とを規制可能に予め互いに連結してある。
【0038】
そして、挿入方向前端側のワイヤー部分28aを分割キー部材15aから延出させて、複数個の分割キー部材15どうしを、内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入可能、かつ、内向き周溝11と外向き周溝8との間から引き戻し可能に、連係機構Bとしてのワイヤー28と結び目29とを介して予め互いに連係させてある。
この場合は、開口部16を加工し易い円形に形成できる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0039】
〔第6実施形態〕
図11は、本発明による柱状体セットのうちの、隣り合う開口部16の間毎に装着する複数個の分割キー部材15の別実施形態を示し、各分割キー部材15に係合用凹部30と係合用凸部31とを形成して、各分割キー部材15どうしを、係合用凹部30に係合用凸部31を係合させて、各分割キー部材15が内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入可能な姿勢に姿勢変更自在に予め互いに連結して、内向き周溝11と外向き周溝8との間における、挿入方向への相対移動と、引き戻し方向への相対移動とを規制可能に予め互いに連結してある。
【0040】
そして、複数個の分割キー部材15どうしを、内向き周溝11と外向き周溝8との間に挿入可能、かつ、内向き周溝11と外向き周溝8との間から引き戻し可能に、連係機構Bとしての、係合用凹部30とその係合用凹部30に係合する係合用凸部31とワイヤー25とを介して予め互いに連係させてある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0041】
〔第7実施形態〕
図12は、本発明による柱状体セットのうちの、互いに接続した鋼管杭A(A1,A2)どうしの相対回転を抑止するために装着する回転抑止キー17の別実施形態を示し、内嵌部材3における内嵌側接当面6と、その内嵌側接当面6に接当させる外嵌部材2における先端面33との夫々に、内嵌部材3と外嵌部材2とを嵌合した状態で互いに同芯状に対向させる複数のピン穴34a,34bを形成してあると共に、そのピン穴34a,34bの夫々に回転抑止キーとしての回転抑止ピン17を装着して、互いに接続した鋼管杭A(A1,A2)どうしの相対回転を阻止してある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0042】
〔第8実施形態〕
図13は、本発明による柱状体セットのうちの、互いに接続した鋼管杭A(A1,A2)どうしの相対回転を抑止するために装着する回転抑止キー17の別実施形態を示し、内嵌部材3における内嵌側接当面6と、外嵌部材2における先端面33とが接当するように、内嵌部材3と外嵌部材2とを嵌合させてあるとともに、内嵌部材3の基部4と外嵌部材2とに亘って略矩形の回転抑止キー17をビス止めしてある。
【0043】
前記回転抑止キー17には、内嵌部材3の基部4にビス止めする内嵌部材側ビス35aを挿通するための二つの内嵌部材側挿通孔35bと、外嵌部材2にビス止めする外嵌部材側ビス36aを挿通するための二つの外嵌部材側挿通孔36bとを形成してあり、図13(ロ)に示すように、内嵌部材側挿通孔35bは杭周方向に沿って長い長孔に形成してあり、外嵌部材側挿通孔36bは、外嵌部材側ビス36aの外周側との間に隙間が形成される比較的大きな内径で形成してある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0044】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による柱状体の接続工法又は柱状体セットは、分割キー部材としてのリンクプレートの複数を連係機構としてのピンで連結してあるピン連結チェーンで、連係機構を介して予め互いに連係してある複数個の分割キー部材を構成してあっても良い。
2.本発明による柱状体の接続工法又は柱状体セットは、外向き周溝の溝長手方向における一部を外方に臨ませるための開口部を、一つの内向き周溝毎に、外嵌部材の周方向一箇所に設けてあっても良い。
3.本発明による柱状体の接続工法又は柱状体セットは、柱状体を地中に建て込むために使用する建て込み治具を、その柱状体に着脱自在に接続するために使用するものであっても良い。
つまり、外嵌部材と同様の内向き周溝を形成してある接続部を備えた建て込み治具を柱状体の内嵌部材に接続するために使用しても良い。
この場合は、各分割キー部材を内向き周溝と外向き周溝の間から取り出して、建て込み治具を柱状体から容易に外せるように、各分割キー部材を内向き周溝と外向き周溝とに亘って装着した後のワイヤーを切断せずに残しておくのが望ましい。
4.本発明による柱状体の接続工法又は柱状体セットは、複数個の分割キー部材どうしを連係する連係機構としての索条体を、金属製の鎖や針金、繊維材からなる紐やロープなどで構成してあっても良い。
5.本発明による柱状体の接続工法又は柱状体セットは、横断面形状が矩形の柱状体を備えていても良い。
6.本発明による柱状体の接続工法又は柱状体セットは、構造物設置用の基礎杭の他、土留め用鋼管矢板,地滑り抑止杭,橋脚用柱などの柱状体を備えていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】柱状体セットの斜視図
【図2】要部の断面図
【図3】柱状体セットの要部縦断面図
【図4】要部の斜視図
【図5】柱状体セットの要部横断面図
【図6】要部の横断面図
【図7】第2実施形態を示す要部横断面図
【図8】第3実施形態を示す要部横断面図
【図9】第4実施形態を示す要部側面図
【図10】第5実施形態を示す要部横断面図
【図11】第6実施形態を示す要部平面図
【図12】(イ)第7実施形態を示す要部縦断面図 (ロ)第7実施形態を示す要部横面図
【図13】(イ)第8実施形態を示す要部縦断面図 (ロ)第8実施形態を示す要部平面図
【符号の説明】
【0046】
2 外嵌部材
3 内嵌部材
8 外向き周溝
8a 外向き周溝部分
11 内向き周溝
15 分割キー部材
16 開口部
A 柱状体
B 連係機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外嵌部材と内嵌部材とを両端部に振り分けて夫々備えている一対の柱状体どうしを、一方の柱状体の前記外嵌部材と他方の柱状体の前記内嵌部材とを互いに嵌合させた後、柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、
前記外嵌部材の内周側に内向き周溝を形成しておくと共に、前記内嵌部材の外周側に外向き周溝を形成しておき、更に、
前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着するキー部材を、柱状体周方向で複数個の分割キー部材で構成すると共に、
前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記外向き周溝の一部を外方に臨ませるための開口部を、前記外嵌部材に形成しておき、
前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた後、前記分割キー部材の夫々を、前記開口部を通して前記内向き周溝と前記外向き周溝との間に挿入することにより、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着して、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを柱状体長手方向に互いに係合させる柱状体の接続工法であって、
前記分割キー部材の複数個を、各分割キー部材が前記内向き周溝と前記外向き周溝との間に挿入可能な姿勢に姿勢変更自在に予め互いに連係しておいて、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って順に装着する柱状体の接続工法。
【請求項2】
外嵌部材と内嵌部材とを両端部に振り分けて設けてあり、前記外嵌部材の内周側には内向き周溝を形成してあると共に、前記内嵌部材の外周側には外向き周溝を形成してある柱状体と、
一対の柱状体を柱状体長手方向に互いに係合させて接続するために、一方の柱状体の前記外嵌部材と他方の柱状体の前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着するキー部材とを備え、
前記キー部材は、柱状体周方向で複数個の分割キー部材で構成してあり、
前記外嵌部材には、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた状態で、前記外向き周溝の溝長手方向における一部を外方に臨ませるための開口部を形成してあり、
前記外嵌部材と前記内嵌部材とを互いに嵌合させた後、前記分割キー部材の夫々を、前記開口部を通して前記内向き周溝と前記外向き周溝との間に挿入することにより、前記内向き周溝と前記外向き周溝とに亘って装着して、前記外嵌部材と前記内嵌部材とを柱状体長手方向に互いに係合可能に構成してある柱状体セットであって、
前記複数個の分割キー部材どうしは、前記内向き周溝と前記外向き周溝との間に挿入可能に、連係機構を介して予め互いに連係させてある柱状体セット。
【請求項3】
請求項2記載の柱状体セットに備えたキー部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−35931(P2009−35931A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200902(P2007−200902)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】