説明

柱状構造物並びにその構築方法、コンクリートパネル

【課題】大型の主塔を構築する際に、特に運搬性、耐震性、耐風性を向上させるとともに、製造コストを低減させ、作業効率の向上を図る。
【解決手段】周方向より鉛直方向が長く構成されているコンクリートパネル2を、周方向並びに鉛直方向に組み合わせて周壁を構成することにより柱状構造物1を構築する際に、コンクリートパネル1は、周方向及び/又は鉛直方向に向けて互いに間隙を空けて配置し、その間隙を空けて配置した周方向端部及び/又は鉛直方向端部から突出されている鉄筋間を機械式継手35により接続し、さらに間隙に充填材36を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電用タワーやケーソン等に代表される鉄筋コンクリート製の柱状構造物並びにその構築方法、コンクリートパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保全に関する取り組みが地球的規模で行われるようになり、それに伴って自然エネルギーを利用したクリーンな発電システムが注目されている。特に風力発電システムは、自然エネルギーを利用した発電システムの中でも商業的規模での実用化がすすんでいる発電システムであり、特に欧米等においては風力発電システムが大規模に実用化されている。
【0003】
このような現在実用化されている風力発電システムは、増速機を介して発電機が接続された回転軸の端部にプロペラを設け、風をプロペラで受けることにより、当該回転軸を回転させ、発電機にて発電させるプロペラ型のものが知られている。
【0004】
プロペラを支持するためのプロペラ支持部は、主塔基礎上に立設したタワー状構造物で構成され、かかるタワー状構造物の上端部でプロペラを支持している。このようなプロペラ支持部によれば、風力による転倒モーメント及び水平推力に耐えて、風車全体を安定に支持することが可能となる。
【0005】
ところで、このような風力発電用のプロペラを支持するためのタワー状構造物を現場で構築する場合には、かかる現場において大掛かりな施工設備を建設しなければならず、環境破壊も問題となっていた。また建設工事の工期の延長や工事コストが上昇してしまう点も問題となっていた。
【0006】
このため、従来において、運搬、施工できる最大長の範囲で周方向、或いは鉛直方向に分割してパーツを搬送し、現場で組み立て可能な風力発電施設用主塔が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1の開示技術では、例えば、図5に示すように、周方向に分割されたコンクリート要素110aと、鉛直方向に分割されたコンクリート要素110bをそれぞれ組み合わせて構成されており、基礎113の上に立設されることにより、風力発電施設用主塔110を構築する。そして、この風力発電施設用主塔110の頂部には、発電機を内蔵したプロペラ112を搭載する。図6は、この風力発電施設用主塔110の断面形状の一例を示している。分割されたコンクリート要素190の肉厚内には、シース191が円弧状に内蔵されている。また、シース191は、コンクリート要素190の内壁に開口した分岐管191aを有している。分岐管191aは、切断面192を跨ぐように配設されている。このため、シース191に挿通したPCケーブルをこの分岐管191aから引き出すことによって、各コンクリート要素を接続することが可能となる。
【0007】
また、パーツを組み合わせることにより構成する他の風力発電用のタワー状構造物としては、例えば特許文献2に示すように、コンクリート製筒型セグメントにプレストレスを導入する構成も提案されている。特に、この特許文献2の開示技術では、かかるコンクリート製筒型セグメントの接合面にキー部及びキー溝部を設けることによって、水平荷重に対する抵抗力を増加させるとともに、施工性そのものを向上させることが可能となる。
【0008】
更に他のタワー状構造物としては、複数の鋼管部を上下方向に同心的に接合する構成も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。鋼管部の外面をプレキャストコンクリートで被覆し、ハイブリッド構造をなす中空の構造物を構築するものである。そして、鋼管部とプレキャストコンクリートからなる筒体ユニットを上下方向に複数個、同心的に積層、連結させる。これにより、使用する鉄筋量、コンクリート量を削減することができ、構造物全体の軽量化を図ることが可能となる。
【0009】
なお、従来においては、このようなタワー状構造物を、複数のブロックを組み合わせることにより、構築する技術も提案されている。
【0010】
例えば、特許文献4においては、上下のプレキャストコンクリートブロックを互いに組み合わせる際に、せん断キーを嵌め合わせる箇所の周方向の位置が多少ずれても組立てを支障なく行う技術が開示されている。
【0011】
また、ウエル躯体の全長を複数分割した各分割ウエルブロックを型枠内にコンクリートを打設してそれぞれ別体として製造し、設置場所にて各分割ウエルブロックを積み上げて全体にプレストレスを導入する技術も提案されている(例えば、特許文献5、6参照。)。
【特許文献1】特開2004−11210号公報
【特許文献2】特開2000−283019号公報
【特許文献3】特開2004−19306号公報
【特許文献4】特開平6−65907号公報
【特許文献5】特開平3−147932号公報
【特許文献6】特開平3−219915号公報
【特許文献7】特願2006−155299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、特に近年においてプロペラの大型化に伴って主塔も大型化し、特に100m程度の高さに至る主塔も構築されつつある。かかる大型の主塔においては、その耐地震構造、耐風力構造をより強力にする必要があるところ、各パーツを鋼製とすることにより、高い主塔を比較的容易に構築することができる。
【0013】
しかしながら、鋼製の主塔は、腐食により劣化が早いという問題があり、更にその剛性による共振等が問題となる。かかる腐食等の問題点を解消するために各パーツをプレキャストコンクリートで構成した場合には、その接合部たる横目地部、打継ぎ部が破壊の起点ともなる。また、耐風力構造をより向上させるべくプレキャストコンクリートの部材厚を大きくすると、その運搬性が低下してしまうという問題点が生じる。
【0014】
このため、従来においては、このようなタワー状構造物を、複数のブロックを組み合わせることにより、構築する技術も提案されている。
【0015】
例えば、特許文献4においては、上下のプレキャストコンクリートブロックを互いに組み合わせる際に、せん断キーを嵌め合わせる箇所の周方向の位置が多少ずれても組立てを支障なく行う技術が開示されている。
【0016】
また、ウエル躯体の全長を複数分割した各分割ウエルブロックを型枠内にコンクリートを打設してそれぞれ別体として製造し、設置場所にて各分割ウエルブロックを積み上げて全体にプレストレスを導入する技術も提案されている(例えば、特許文献5、6参照。)。
【0017】
さらに特許文献7においては、柱状構造物を形成するパネルの形状を縦長にし、鉛直方向はPC鋼材で接合し、周方向は鋼製部材で接続する柱状構造物の構築方法が提案されている。この特許文献7記載の開示技術では、縦長のパネルを使用することにより、鉛直方向の構造的弱点を減少させることを目的としている。しかし、この施工方法では、周方向の接合は鋼製部材で行われており、しかもクレーンでこの鋼製部材を引き上げて架設しなければならず、高所での作業量が多くなり、作業効率全体が悪化してしまうという問題点があった。またこの特許文献7記載の開示技術では、周方向に隣接するパネル間が不連続で構成されていることから、鋼製部材の配設量が増加し、コストが増加してしまうという問題点もあった。
【0018】
このため、周方向の接合を鋼製部材を使用することなく実行することにより製造コストを低減する必要があり、また作業効率の向上を図る必要性もあった。
【0019】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、大型の主塔を構築する際に、特に運搬性、耐震性、耐風性を向上させるとともに、製造コストを低減させ、作業効率の向上を図ることが可能な柱状構造物並びにその構築方法、コンクリートパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明を適用した柱状構造物は、上述した課題を解決するために、周方向より鉛直方向が長く構成されているコンクリートパネルを、周方向並びに鉛直方向に組み合わせて周壁を構成した柱状構造物において、上記コンクリートパネルは、周方向及び/又は鉛直方向に向けて互いに間隙を空けて配置されてなるとともに、その間隙を空けて配置される周方向端部及び/又は鉛直方向端部には鉄筋が突出され、互いに隣接するコンクリートパネルから突出された鉄筋間は、機械式継手により接続されてなるとともに、上記間隙には充填材が充填されてなることを特徴とする。
【0021】
本発明を適用した柱状構造物の構築方法は、上述した課題を解決するために、周方向より鉛直方向が長く構成されているコンクリートパネルを、周方向並びに鉛直方向に組み合わせて周壁を構成することにより柱状構造物を構築する柱状構造物の構築方法において、上記コンクリートパネルは、周方向及び/又は鉛直方向に向けて互いに間隙を空けて配置し、その間隙を空けて配置した周方向端部及び/又は鉛直方向端部から突出されている鉄筋間を機械式継手により接続し、さらに上記間隙に充填材を充填することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上述した構成からなる本発明では、周方向に隣接するコンクリートパネルについて互いに離間させて非接触の状態で配置する。このため、コンクリートパネルの周方向端部につき高い精度で製作する必要性はなくなる。また、上述した構成からなる本発明では、互いに周方向に突出された鉄筋の両端の間を機械式継手により接続する。このため、多角柱の角部において分割することになれば機械式継手を使用することができなくなるため、あくまでコンクリートパネルの周方向端部を角部からずらした位置において形成させている。その結果、機械式継手をコンクリートパネルの直線状に形成された周壁において配設することが可能となる。
【0023】
さらに、上述した構成からなる本発明では、鉄筋の両端の間を機械式継手により接続し、さらに切欠並びに周方向端部間において形成された間隙に充填材を充填するのみで施工を行うことができる。このため、従来の如くクレーンを使用して、鋼製部材を引き上げて架設する必要がなくなり、高所における作業量を減少させることができ、作業効率全体を向上させることが可能となる。また、周方向に隣接するコンクリートパネル間が不連続で構成されていても、構成部材を配設することなく、あくまで鉄筋の両端を機械式継手により接続すれば足りることから、施工コストを減少させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、例えば風力発電用タワーやケーソン等に代表される鉄筋コンクリート製の柱状構造物について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明を適用した柱状構造物1の全体構造を示している。柱状構造物1は、主塔基礎11と、この主塔基礎11上に構築されるコンクリートパネル2により構成される。この柱状構造物1は、図2(a)に示すように筒状からなり、また断面多角形状からなる。
【0026】
この柱状構造物1を構成する周壁5を周方向に向けて所定の角度間隔で分割するとともに、鉛直方向へ向けて所定の間隔で分割することにより、ユニットとしてのタワー構築用ブロック2が構成されることになる。この周方向に隣接するコンクリートパネル2間は、密着された状態で固定される場合に限定されるものではなく、互いに隙間を空けた状態で固定配置されていてもよい。以下の例においては、互いに僅かな間隙を空けた状態で固定配置される場合を例にとり説明をする。
【0027】
図2(b)は、このコンクリートパネル2の拡大図を示している。コンクリートパネル2は、多角柱の角部2aを除く周面を分割した形状で構成されている。即ち、コンクリートパネル2の周方向端部2bは、あくまでこの角部2aからずらした位置において形成されている。この周方向端部2bは、角部2a間における周面のいかなる位置に形成されていてもよい。その結果、一のコンクリートパネル2は、一の角部2aを含む断面く字状の構成からなる。ちなみに、このコンクリートパネル2の端部には切欠33が表側並びに裏側にそれぞれ形成されている。また、このコンクリートパネル2の内部には、鉄筋32が周方向に向けて周設されている。この鉄筋32は、表側と裏側に2段階で設けられている。この鉄筋32の両端は、それぞれ切欠33において突出されてなる。
【0028】
このような構成からなるコンクリートパネル2を周方向に向けて連結する場合には、例えば図3に示すように、コンクリートパネル2を周方向に間隔を空けて配置する。次に、隣接するコンクリートパネル2における切欠33において突出された鉄筋32の両端の間を機械式継手35により接続する。そして、この切欠33並びに周方向端部2b間において形成された間隙に充填材36を充填する。ちなみにこの充填材36は、例えば、コンクリート、モルタル、繊維混入コンクリート、繊維混入モルタル等を使用するようにしてもよい。また、周方向に隣接するコンクリートパネル2の周方向端部2b間の距離は、この充填材36を充填することができる程度の間隔で調整されていることが望ましい。さらに、この周方向にリング状に組み合わせたコンクリートパネル2の上方へ向けて、鉛直方向に隣接する他のコンクリートパネル2を順次連結していくことにより、上方へと積み上げていく。例えば、この柱状構造物1を風力発電用タワーとしてとして適用する場合には、最上部においてプロペラ等を装着することになる。
【0029】
機械式継手35は、ねじ式鉄筋継手、端部ねじ継手、充填式継手、併用式継手、圧着式継手等である。
【0030】
機械式継手35をネジ式鉄筋継手とする場合には、鉄筋32の節を予めねじ状に形成しておく。このねじ状に形成した鉄筋32の節をカプラーで装着することになる。カプラーの挿入長さを確認するだけで応力伝達性能を確認することができるという利点がある。端部ねじ継手は、鉄筋32の端部をねじ状に機械加工するか、又は鉄筋端部に別のねじを取り付けて接合する工法である。端部をねじ加工する場合は、焼入れ等の特殊加工を施すことにより、ねじ部の強度が母材強度よりも小さくならないようにすることが望ましい。ちなみに、端部に別のねじを取り付ける方法としては、摩擦圧接工法が望ましい。充填式継手は、鋼管と異形鉄筋との間に無収縮モルタルを充填し、異形鉄筋の節からモルタル、鋼管を介して応力を伝達する工法である。この工法を適用する場合には、鉄筋32に鋼管をかぶせ、その間隙に無収縮モルタルを充填していく形となる。併用式継手は、上記継手の併用型である。
【0031】
このように、本発明では、周方向に隣接するコンクリートパネル2について互いに離間させて非接触の状態で配置する。このため、コンクリートパネル2の周方向端部につき高い精度で製作する必要性はなくなる。
【0032】
また、本発明では、互いに周方向に突出された鉄筋32の両端の間を機械式継手35により接続する。このため、多角柱の角部2aにおいて分割することになれば機械式継手35を使用することができなくなるため、あくまでコンクリートパネル2の周方向端部2bを角部2aからずらした位置において形成させている。その結果、機械式継手35をコンクリートパネル2の直線状に形成された周壁において配設することが可能となる。
【0033】
また、本発明では、鉄筋32の両端の間を機械式継手35により接続し、さらに切欠33並びに周方向端部2b間において形成された間隙に充填材36を充填するのみで施工を行うことができる。このため、従来の如くクレーンを使用して、鋼製部材を引き上げて架設する必要がなくなり、高所における作業量を減少させることができ、作業効率全体を向上させることが可能となる。また、周方向に隣接するコンクリートパネル2間が不連続で構成されていても、構成部材を配設することなく、あくまで鉄筋32の両端を機械式継手35により接続すれば足りることから、施工コストを減少させることが可能となる。
【0034】
また、本発明を適用した柱状構造物1は、鉛直方向に隣接するコンクリートパネル2間を、更なる他の鉄筋又はPC鋼材で接続するようにしてもよい。これにより、鉛直方向に負荷される圧縮力には、コンクリートが抵抗し、引張力に対しては、他の鉄筋又はPC鋼材により抵抗させることが可能となる。ちなみに、この鉄筋又はPC鋼材は、周方向に向けて配設するようにしてもよい。
【0035】
また、このコンクリートパネル2は、パネル(プレキャスト)構造とすることにより、省力化及び工期の短縮を図ることが可能となる。
【0036】
また、このコンクリートパネル2を建設現場で製作することもでき、かかる場合には大規模な搬入路の設備が不要となり、工期をより短縮させることも可能となる。また、このコンクリートパネル2は、トラック等の運搬車に載せることができることから、予め工場等で大量に製作し、これを建設現場に運搬することも可能となる。
【0037】
さらに、この柱状構造物1は、必要に応じて、鉛直方向にPC鋼材を配設してプレストレスを導入することにより、その耐震性、耐風性をより強固にすることも可能となる。ちなみに、このPC鋼材を介したプレストレスの導入は、周方向に向けて施してもよいし、鉛直方向、周方向の両方に対して施すようにしてもよい。
【0038】
さらに、コンクリートパネル2は、円周方向より鉛直方向を長く構成することにより、横目地を少なくすることが可能となる。このとき、円周方向は、運搬可能な長さとするために、2m程度で構成してもよく、また、鉛直方向は、吊上げクレーンの能力により可能な長さ(10〜20m程度)で構成してもよい。これにより、100m程度の大型の主塔を構築する場合に、コンクリートパネル2の円周方向の長さを10m程度で構成してある場合には、コンクリートパネル2を10段積み上げることで完成させることができ、横目地を少なくさせつつ、工期を短縮でき、労力やコストを低減させることも可能となる。
【0039】
特に、本発明を適用した柱状構造物1は、風力発電用のタワーとして適用する場合において、コンクリートパネル2を、円周方向に複数個に分割した形状で構成することができる。これにより、コンクリートパネル2の製作を工場のみならず建上げ現地において実行することができ、風力発電用のタワーを構築するためのコストを大幅に低減させることが可能となる。また、この柱状構造物1を構成するコンクリートパネル2につき、鋼管を埋め込む、いわゆるハイブリッドタイプで構成することができるため、容易に組立てが可能となり、ひいては柱状構造物1そのものを容易に建上げることが可能となる。
【0040】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば図4に示すように、コンクリートパネル2の鉛直方向端部2cにおいて切欠39を設けるとともに、コンクリートパネル2の内部には、鉄筋40が鉛直方向に向けて埋め込まれている。この鉄筋40は、表側と裏側に2段階で設けられている。そして、この鉄筋40の端部は、それぞれ切欠39において突出されてなる。
【0041】
このような構成からなるコンクリートパネル2を鉛直方向に向けて連結する場合には、コンクリートパネル2を鉛直方向に間隔を空けて配置する。この間隔を空けて配置する際には、クレーンを使用するようにしてもよい。次に、鉛直方向に隣接するコンクリートパネル2における切欠39において突出された鉄筋40の両端の間を機械式継手35により接続する。そして、この切欠39並びに鉛直方向端部2c間において形成された間隙に充填材36を充填する。
【0042】
この図4に示す構成において、周方向に加え、鉛直方向に隣接するコンクリートパネル2について互いに離間させて非接触の状態で配置する。このため、コンクリートパネル2の周方向端部に加え、鉛直方向端部についても、高い精度で製作する必要性はなくなる。
【0043】
また、この図4に示す構成においては、鉄筋40の両端の間を機械式継手35により接続し、さらに切欠39並びに鉛直方向端部2c間において形成された間隙に充填材36を充填するのみで施工を行うことができる。このため、作業効率全体を向上させることが可能となり、また施工コストを減少させることが可能となる。
【0044】
なお、本発明では、周方向に向けて配設した鉄筋32並びに切欠33の構成を省略し、あくまで、コンクリートパネル2の鉛直方向端部2cのみにおいて切欠39を設けるとともに、鉄筋40のみを鉛直方向に向けて埋め込むようにしてもよい。
【0045】
また、上述した例では、あくまで断面多角形状からなる柱状構造物1として適用される場合を例にとり説明をしたが、これに限定されるものではない。例えば、柱状構造物1を断面円形状に構成するようにしてもよい。
【0046】
また本発明は、ケーソンに適用されるものであってもよい。かかる場合には、地上において、上述した工程に基づき、ケーソンとして使用する柱状構造物1を製作する。そして、この柱状構造物1の内側を掘削し、柱状構造物1を地中に押し下げていく。次に、一定深さまで押し下げられた柱状構造物1の上部において、さらにコンクリートパネル2を組み合わせて鋳造構造物1を略鉛直方向に構築し、これを地中へ向けて押し下げていく。
【0047】
この工程を繰り返し実行していくことにより、支持層地盤に到着した後に埋め戻し、一定深さまで埋め戻したらフーチングを構築し、地上部分を構築していくことになる。
【0048】
即ち、本発明をケーソンに適用する際においても、上述と同様の効果を得ることができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明を適用した柱状構造物の全体構造を示す図である。
【図2】柱状構造物の断面形状を示す図である。
【図3】周方向に隣接するコンクリートパネルの連結方法について説明するための図である。
【図4】コンクリートパネルの斜視図である。
【図5】従来例につき説明するための図である。
【図6】他の従来例につき説明するための図である。
【符号の説明】
【0050】
1 柱状構造物
2 コンクリートパネル
5 周壁
32、40 鉄筋
33、39 切欠
35 機械式継手
36 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向より鉛直方向が長く構成されているコンクリートパネルを、周方向並びに鉛直方向に組み合わせて周壁を構成した柱状構造物において、
上記コンクリートパネルは、周方向及び/又は鉛直方向に向けて互いに間隙を空けて配置されてなるとともに、その間隙を空けて配置される周方向端部及び/又は鉛直方向端部には鉄筋が突出され、
互いに隣接するコンクリートパネルから突出された鉄筋間は、機械式継手により接続されてなるとともに、上記間隙には充填材が充填されてなること
を特徴とする柱状構造物。
【請求項2】
多角柱状からなるとともに、
上記コンクリートパネルは、多角柱の角を除く周面を分割した形状で構成されていること
を特徴とする請求項1記載の柱状構造物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の柱状構造物に適用されることを特徴とするコンクリートパネル。
【請求項4】
周方向より鉛直方向が長く構成されているコンクリートパネルを、周方向並びに鉛直方向に組み合わせて周壁を構成することにより柱状構造物を構築する柱状構造物の構築方法において、
上記コンクリートパネルは、周方向及び/又は鉛直方向に向けて互いに間隙を空けて配置し、
その間隙を空けて配置した周方向端部及び/又は鉛直方向端部から突出されている鉄筋間を機械式継手により接続し、さらに上記間隙に充填材を充填すること
を特徴とする柱状構造物の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−101363(P2008−101363A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283251(P2006−283251)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)
【Fターム(参考)】