柱脚用ベースプレート
【課題】ベースプレート本体部の板厚を大きくすることなく曲げ剛性を高め、鉄骨柱のサイズ拡大にも対応可能な露出型の鉄骨柱脚用のベースプレートを提供する。
【解決手段】鉄骨柱4の下端部に対してベースプレート本体部2が上面側で固着され、その柱外側部2bに設けた複数のボルト挿通孔に、基礎コンクリート5から突出するアンカーボルト6を挿通し、上方からのナット7の締付けにより該鉄骨柱4を基礎コンクリート5に固定する平板状のベースプレート1であって、ベースプレート本体部2の下面側に、鉄骨柱4の固着部が投影する仮想輪郭線に沿って互いに間隔を空けながらその仮想輪郭線を跨ぐように複数の板状部3を立設することにより、アンカーボルト6が配置されるベースプレート本体部2の柱外側部2bを効果的に補強する。
【解決手段】鉄骨柱4の下端部に対してベースプレート本体部2が上面側で固着され、その柱外側部2bに設けた複数のボルト挿通孔に、基礎コンクリート5から突出するアンカーボルト6を挿通し、上方からのナット7の締付けにより該鉄骨柱4を基礎コンクリート5に固定する平板状のベースプレート1であって、ベースプレート本体部2の下面側に、鉄骨柱4の固着部が投影する仮想輪郭線に沿って互いに間隔を空けながらその仮想輪郭線を跨ぐように複数の板状部3を立設することにより、アンカーボルト6が配置されるベースプレート本体部2の柱外側部2bを効果的に補強する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、充填鋼管コンクリート造などの露出型柱脚構造において、それら鉄骨柱を基礎コンクリートに対して固定するための中間材として、鉄骨柱の下端部に固着される柱脚用ベースプレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
柱脚は、柱材の下端部に作用する軸力、せん断力、曲げモーメントを基礎コンクリートに伝達する重要な役割を担っている。露出型鉄骨柱脚において、圧縮軸力は鉄骨柱からベースプレートを介して基礎コンクリートへと応力伝達され、引張軸力は鉄骨柱からベースプレートを介してアンカーボルト、そして基礎コンクリートへと応力伝達される。曲げモーメントは、鉄骨柱からベースプレートを介して、一方では圧縮力を基礎コンクリートに伝達し、他方では引張力をアンカーボルトから基礎コンクリートへと応力伝達する。また、せん断力の伝達は、一般的に次の3タイプに区分される。
【0003】
まず、ベースプレート下面と基礎コンクリート表面との間の摩擦で伝達する方式がある。この場合、せん断耐力は柱軸力に依存するが、アンカーボルトの引張耐力は減少しないという特徴がある。次に、アンカーボルト径とほぼ同径の穴を有する座金をベースプレート上面に溶接接合し、ベースプレートからアンカーボルトに伝達する方式である。この方式では、せん断力は柱軸力に依存しないが、アンカーボルトの引張耐力が減少する。さらに、ベースプレート下面にシアキーを溶接し、鉄骨柱からベースプレート(シアキー)を介して基礎コンクリートに伝達する方式がある。この場合には、せん断力は柱軸力に依存せず、アンカーボルトの引張耐力も減少しないという特徴がある。このように、ベースプレートは鉄骨柱から作用する各種の力を基礎コンクリートに伝達するための重要な部材となっている。
【0004】
ところで、比較的小さい柱寸法の鉄骨柱には、規格品の圧延鋼板を適宜大きさの矩形板状に切断し、その周辺部分に所要数のボルト挿通孔を設けたベースプレートが、製造の簡便さなどの理由から鋳鋼製のものを凌駕している。これに対して、鉄骨柱の柱寸法が大きくなるに伴ってアンカーボルトも太径化するので、大きなサイズの鉄骨柱に適用するベースプレートには、高い曲げ剛性や耐力が要求される。圧延鋼板からなるベースプレートでは、柱寸法の拡大に対して板厚の増加で対応することになるが、板厚が100mmを超えるようなベースプレート用の圧延鋼板は、現時点で建築基準法における基準強度の設定がなく、構造用材料として使用できない。このため、生産性を犠牲にしても鋳鋼製のもので対応せざるを得ないのが実情である。なお、極厚の圧延鋼板が仮に使用可能であったとしても、これを実際に使用する場合には、いくつかの問題が懸念される。その一つには、適用する鉄骨柱の板厚とベースプレートの板厚との差が広がり過ぎるという点である。この点は、溶接性に影響を及ぼし、両者の間の接合強度に重大な問題を生じさせる可能性がある。斯かる事情から、ベースプレートの板厚を増加することなく、柱寸法の大サイズ化に対応する方法が検討されてきた。具体的には、本体部となる矩形状鋼板の上面側に複数のリブを配置したベースプレート(特許文献1)、2枚の鋼板間に複数のリブを配置した二段状のベースプレート(特許文献2)、鋼板の下面に溶接ビード等の数ミリ程度の凸条を一体に設けたベースプレート(特許文献3)などがこれまでに提案され、いずれもベースプレートの本体部にリブ状の補剛手段を付加したものである。
【特許文献1】実公昭61−33761号公報(第2図参照)
【特許文献2】特開平11−159007号公報(図6参照)
【特許文献3】特許第3391438号公報(図1参照)
【0005】
特許文献1に記載のベースプレートでは、ベースプレート本体部のボルト挿通孔から突出するアンカーボルトの上端部に螺合したナットが、ベースプレート本体部の上面に一体的に立設された複数のリブにより両側から囲まれる構成であるので、隣り合うリブ間には、ナットを緊締する際にスパナの回転動作を妨げない操作スペースが必要となる。ところが、アンカーボルトの本数が多くなる大きいサイズのベースプレートのように、各辺部の中間部分にも複数本のアンカーボルトが配置されるような場合には、それら辺部でのリブ間の間隔を十分に確保することが難しくなる。そこで、個々のリブの厚さを薄くするか、あるいはベースプレートの全幅を単純に拡大することも考えられるが、いずれもベースプレートの曲げ剛性の低下につながることから、上面にリブを配置する補剛方法は、ベースプレートのサイズ拡大を図る上で得策とは言い難いものである。
【0006】
一方、特許文献2に記載のベースプレートでは、上面側にリブが存在しないことから、前者のベースプレートの問題点であった締付け工具の操作スペースを考慮する必要がなくなり、さらにその箱型形状により、リブのみで補剛する場合に比べて大きな曲げ剛性や耐力が得られる利点がある。この場合には、溶接作業によって各部材を一体化するため、上下2枚の鋼板間の間隔と、それらの間に配置する複数のリブの互いの間隔が、生産性の面で重要な要件になってくる。生産性を優先し、リブ間の間隔を大きく確保した場合には、前者と同様に曲げに対する補剛効果が小さくなるので、上段に位置する鋼板の厚さを大きくする必要が生じ、結局、大きいサイズのベースプレートにはあまり適さない構造である。さらに、前者のベースプレートに比べて溶接量が増大し、しかも狭い空間での溶接作業となるため、作業性の悪さなどの問題もあった。
【0007】
次に、特許文献3に記載のベースプレートでは、下面に複数の凸条を設けることにより、剛性向上を企図しているが、ベースプレート本体部の板厚と凸条の高さとの比率、あるいはベースプレート本体部の板厚とアンカーボルトの外径との比率(図1参照)からしても、その効果は明らかに副次的なものである。すなわち、凸条の本来の目的は、地震などで大きな横向きの力(せん断力)が柱脚部に作用したときに、ベースプレートとモルタル充填層との間で相対的なずれが生じないようにするためのものである。この場合の凸条は、あくまでもベースプレート下面とモルタル層との摩擦係数を増加させることが主目的であるから、その配置形態として放射状などのモルタル充填層に圧縮力が負荷されるようなパターンが優先的に選択されている。この従来技術では、ベースプレートの曲げ剛性向上という観点からの配置形態、凸条の形状については特に考慮されていない。したがって、このような凸条をそのまま大きいサイズのベースプレートに適用できるか否かについては検討の余地が多分にあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らはこれら従来技術の問題点に鑑み、ベースプレート本体部に付加する補剛手段について鋭意検討を重ねた結果、本発明に想到したのである。すなわち本発明では、補剛部材の効果的な配置形態を見出し、これによりベースプレート本体部の板厚を大きくすることなく曲げ剛性を高め、アンカーボルト外径の増大、鉄骨柱のサイズ拡大にも対応可能となった柱脚用ベースプレートの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明では、鉄骨柱の下端部に対してベースプレート本体部が上面側で固着され、その周辺部分に設けた複数のボルト挿通孔に、基礎コンクリート表面から突出する複数本のアンカーボルトを挿通し、上方からのナットの締付けにより該鉄骨柱を基礎コンクリートに固定する柱脚用ベースプレートにおいて、前記ベースプレート本体部が、前記アンカーボルトの外径より小さい板厚の平板状に形成され、その下面側に前記鉄骨柱の固着部が投影する仮想輪郭線に沿って互いに間隔を空けながらその線上を跨いだ状態で立設される複数の板状部を備えるという技術手段を採用した。これにより、ベースプレート本体部を効果的に補剛することができる。
【0010】
さらに、上記構成における板状部については、その高さをベースプレート本体部の板厚より大きくすると好都合であり(請求項2)、またベースプレート本体部と一体に鋳造することができる(請求項3)。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、以上のような構成を採用したことにより、次の効果が得られる。
(1)アンカーボルトからの応力は、ベースプレート本体部の柱外側部(周辺部)、さらにはその下面に立設された複数の板状部を介してベースプレート本体部の上記仮想輪郭線を越えた柱内側部に伝達されるが、この領域は上面側において鉄骨柱で拘束されることにより曲げ変形抵抗が大きい。このため、仮想輪郭線よりも内側の柱内側部でその一端側が安定的に支持された前記板状部は、そのリブ効果により他端側のベースプレート本体部の柱外側部を補強し、変形を有効に阻止することができる。このような板状部(補剛部)の存在により、ベースプレート本体部の全体としての曲げ剛性が向上し、ベースプレート本体部の板厚を薄くすることが可能になり、経済的な柱脚構造を実現できる。
(2)ベースプレート本体部の下面側に複数の板状部を互いに間隔を空けて位置させたので、ナットの締付け操作を何ら考慮することなく、板状部をアンカーボルトの近くに設けることが可能になり、その補強効果を最大限に活用したベースプレートが得られる。
(3)板状部の高さをベースプレート本体部の板厚に比べて十分に大きくすれば、その補強効果は一段と高まり、ベースプレート本体部の板厚をより薄くすることができ、ベースプレート本体部の板厚よりも大きい外径のアンカーボルトを使用する場合にも好都合である。
(4)板状部をベースプレート本体部と一体に鋳造すれば、溶接によるものに比べて生産性が向上し、さらにベースプレート本体部及び板状部の形状選択の自由度が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る柱脚用ベースプレートは、曲げ剛性や耐力を向上させるために従来から検討されているリブ等の板状の補剛手段について、効果的な形状、配置形態を見出した点に技術的な特徴がある。これにより、ベースプレート本体部の板厚よりも大きな外径のアンカーボルトの使用が可能になり、ベースプレート本体部の板厚を抑えながら大きな柱寸法の鉄骨柱、あるいは太い外径のアンカーボルトへの適用が可能になった。対象となる鉄骨柱は角形鋼管に限らず、円形鋼管、H形鋼でもよく、いずれの場合においてもベースプレート本体部の全体形状としては、平面視で略矩形状が好ましい。ベースプレート本体部の素材は圧延鋼板に限らず、鋳鋼を用いてもよい。この場合には、板状部をベースプレート本体部と一体に鋳造することが可能である。一方、圧延鋼板をベースプレート本体部に適用した場合には、板状部も適宜サイズの鋼板を組み合わせて溶接によりベースプレート本体部と一体化すればよく、その成形方法、手順等は特に限定されない。鉄骨柱の仮想輪郭線に対する板状部の交差状態は、必ずしもすべてのものが直角に交差しなくともよく、設置場所によっては斜めに跨ぐようにしてもよい。本発明では上記板状部の存在により、大きな柱寸法の鉄骨柱の柱脚で使用される太いアンカーボルトの外径よりも、ベースプレート本体部の板厚を小さく抑えることが可能である。また、板状部の高さを適切に確保すれば、ベースプレート本体部の板厚がそれほど大きくないものを使用することもできる。なお、アンカーボルトが挿通されるボルト挿通孔の位置については、少なくともベースプレート本体部の四隅部にあればよい。例えば、各隅部のみにそれぞれ複数個を設けたもの、さらにそれら隅部間の辺部にも設けたもの、あるいは四辺に沿ってそれぞれ単独で均等配置したものなど、その本数等に応じて種々の配列状態に適用可能であり、本発明の技術思想内でのさまざまな変更実施はもちろん可能である。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1ないし図4は、本発明に係る柱脚用ベースプレートの第1実施例を示し、図1および図2はそれぞれ底面図と側面図である。図示のベースプレート1は、角型鋼管からなる鉄骨柱を対象とするもので、圧延鋼板からなる正方形状のベースプレート本体部2と、その下面に対して放射状の配置形態で立設された複数の板状部3からなる。各板状部3は、ベースプレート本体部2の板厚よりも薄い圧延鋼板の小片からなり、短辺の長さが同じで長辺の長さが配置場所により異なる長方形状の2個所の角部が斜断され、斜断されていないほうの長辺部分でベースプレート本体部2に溶接されている。したがって、各板状部3の高さは同じである。
【0014】
ベースプレート本体部2には、四隅部にそれぞれ2個のボルト挿通孔2aが、ベースプレート本体部2の角部に引いた45度の接線と平行となるように各隅部に2個ずつ配置され、さらに各辺の中間部分にも2個ずつ配置され、合わせて16個のボルト挿通孔2aが設けられている。そして、これらのボルト挿通孔2aの個々の間に、それぞれの板状部3は、上面側に固着される鉄骨柱4が投影する仮想輪郭線4aを跨いだ状態でベースプレート本体部2の中心に向けて放射状に1個ずつ配置されている。なお、各板状部3は必ずしも長辺方向の中央で仮想輪郭線4aと交差させる必要はなく、むしろベースプレート本体部2の周辺側に寄せたほうが、補剛効果の点から好適である。なお、実施例ではベースプレート本体部2の各辺の中央に配置された板状部3の長辺部分の長さが最も長いが、配置場所に関係なくすべて同じ長さとすることも可能である。
【0015】
図3および図4は、それぞれ本発明に係る柱脚用ベースプレート1の組立手順を示した説明図と、鉄骨柱に固着した状態の底面側の斜視図である。図3に示すように、ベースプレート本体部2の上面に設定される鉄骨柱4の溶接位置4bを下面側に投影した仮想輪郭線4aに対して、各板状部3が跨るように各ボルト挿通孔2a間に配置して溶接する。次いで、溶接位置4bに鉄骨柱4の端面を当接した状態で溶接する。なお、組立手順については、特に限定されない。
【0016】
図5は、本発明に係る柱脚用ベースプレート1を用いた柱脚構造において、曲げモーメントが負荷されたときの耐荷メカニズムの説明図である。なお、施工方法については、基礎コンクリート5の表面部にベースプレート1を収容可能な箱形状の凹部を予め形成する。この凹部内には、ベースプレート本体部2の板厚よりも大きい外径で、下端部に定着板(図示せず)が装着されたアンカーボルト6の上端部が所定長さだけ突出している。そして、鉄骨柱4の下端に固着されたベースプレート1のボルト挿通孔2aに各アンカーボルト6の上端部を挿入し、基礎コンクリート5の凹部底面に対して、適宜のスペーサー等を介して板状部3の下方に隙間を空けた状態で載置した後、アンカーボルト6に螺合したナット7で締め付け、ベースプレート本体部2の下面の空間内に無収縮グラウトモルタルを適宜手段で注入する。無収縮グラウトモルタルは、各板状部3の間に隙間無く充填される。これにより、鉄骨柱4はベースプレート1を介して基礎コンクリート5に対して固定される。なお、基礎コンクリート5の表面部に凹部を設けずにそのまま鉄骨柱4等を載置し、ベースプレート1の側面全周を適宜の型枠で囲み、この状態で無収縮グラウトモルタルを充填するようにしてもよい。
【0017】
次に、耐荷のメカニズムについて説明する。図5(a)に示したように、曲げモーメントMに基づく鉄骨柱4からの引張応力は、ベースプレート1を介してアンカーボルト6に伝達する。そして、図5(b)に示したように、ベースプレート本体部2において、鉄骨柱4の側面よりも外側、すなわち仮想輪郭線4aの外側に位置する柱外側部2bは、アンカーボルト6によって曲げ変形しようとする応力を受ける。その応力は、ベースプレート本体部2の下面に配置された板状部3により、ベースプレート本体部2の柱内側部2cに伝達される。この柱内側部2cは、ベースプレート本体部2の上面側に溶接された鉄骨柱4で拘束されているため、曲げ変形に対する抵抗力が大きいことから、柱外側部2bを効果的に支持(補剛)し、曲げ変形することがない。
【0018】
図6は、板状部3が鉄骨柱4の仮想輪郭線4aを跨がない柱脚用ベースプレートの比較例である。この場合には、前記実施例のように柱内側部2cに応力が十分に伝達されないため、柱外側部2bと柱内側部2cとの境界付近で曲げ変形が生じる。
【0019】
図7ないし図9は、それぞれ本発明の第2実施例に係る柱脚用ベースプレートの底面図と、図7におけるA−A線断面図とB−B線断面図である。なお、前記実施例と重複する部分については、その説明を省略する。図示の柱脚用ベースプレート8は、第1実施例と同様にベースプレート本体部9が正方形状の圧延鋼板からなり、角型鋼管等の閉鎖断面が矩形状の鉄骨柱11を対象とし、16本のアンカーボルトに対応するものである。この場合の板状部10は、第1実施例と同様な圧延鋼板の小片からなる複数の板状部10aと、平面視十字状でベースプレート本体部9の中心に設置される1個の板状部10bとで構成されている。これらの板状部10は、ベースプレート本体部9の上面側に固着される鉄骨柱11が投影する仮想輪郭線11aを跨ぐように設置され、その高さはベースプレート本体部9よりも十分に大きいものである。板状部10bは、ベースプレート本体部9の一辺の長さに近く、その側壁には無収縮グラウトモルタルの流通を円滑にするための貫通孔10cが設けられている。これに対して、複数の板状部10aは、十字で区切られた区域に3個ずつが、ベースプレート本体部9の中心に向けて各ボルト挿通孔9aの間に設置される。
【0020】
図10ないし図12は、それぞれ本発明の第3実施例に係る柱脚用ベースプレートの底面図と、鉄骨柱を固着した状態の正面図、及び図10におけるA−A線断面図である。図示の柱脚用ベースプレート12は、圧延鋼板からなる正方形状のベースプレート本体部13と、16個の板状部14で構成される。四隅部に位置する各ボルト挿通孔13aの両側に配置される2個の板状部14aは、互いに平行な状態でベースプレート本体部13の中心に向けて立設されている。そして、各辺部の中央に位置するボルト挿通孔13aに対しては、四隅部よりもやや長い板状部14bが互いに平行な状態でベースプレート本体部13の辺に対して直角となるような向きで立設されている。これらの板状部14は、いずれもベースプレート本体部13の上面側に固着される鉄骨柱15が投影する仮想輪郭線15aを跨ぐように設置され、すべてのボルト挿通孔13aの両側に配置されることになる。なお、その高さは前記各実施例と同様にベースプレート本体部13よりも十分に大きいものである。
【0021】
図13および図14は、それぞれ本発明の第4実施例に係る柱脚用ベースプレートの底面図と、鉄骨柱を固着した状態の正面図である。図示の柱脚用ベースプレート16は、圧延鋼板からなる正方形状のベースプレート本体部17の四隅部に、それぞれ2個のボルト挿通孔17a,17aが、ベースプレート本体部17の角部に引いた45度の接線と平行となるように各隅部に2個ずつ配置されたものである。それら四隅部に位置するボルト挿通孔17a,17a間には、1個の板状部18aがベースプレート本体部17の中心に向けた状態で接合されている。そして、各辺の中間に位置するボルト挿通孔17aの間には、四隅部よりもやや短い板状部18bが互いに平行な状態でベースプレート本体部17の辺に対して直角となるような向きで立設されている。これらの板状部18は、いずれもベースプレート本体部17の上面側に固着される鉄骨柱19が投影する仮想輪郭線19aを跨ぐように設置され、すべてのボルト挿通孔13aの両側に配置されることになる。
【0022】
図15は、本発明の第5実施例に係る柱脚用ベースプレートの下面側から見た斜視図である。図示の柱脚用ベースプレート20は、ベースプレート本体部21の四隅にボルト挿通孔21aが形成されたアンカーボルト4本タイプのものである。板状部22は、第3実施例と同様に配置され、いずれもベースプレート本体部21の上面側に固着される鉄骨柱23が投影する仮想輪郭線23aを跨ぐように、2個が1組となって設置されている。
【0023】
図16は、本発明の第6実施例に係る柱脚用ベースプレートの下面側から見た斜視図である。図示の柱脚用ベースプレート24は、H形鋼からなる鉄骨柱用であって、アンカーボルトが4本のタイプを対象としたものである。ベースプレート本体部25は、長方形状の圧延鋼板からなる。その下面には、ベースプレート本体部25の上面側に固着される鉄骨柱27が投影する一対のフランジ部の仮想輪郭線27aを直交状態で跨ぐようにそれぞれ3個の板状部26aが互いに間隔を空けて設けられ、さらにウェブ部の仮想輪郭線27bに1個の板状部26bが設けられている。4個のボルト挿通孔25aは、それぞれ2個ずつが両方のフランジ部の仮想輪郭線27aよりも外側の位置において、板状部26a間に開設されている。
【0024】
なお、以上の各実施例では、ベースプレート本体部として圧延鋼板を使用し、これに小片の鋼板からなる板状部を接合一体化した例について説明したが、両者を鋳造により一体成形してもよく、またいずれか一方を鋳鋼製、他方を鋼板製として両者を接合一体化することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施例に係る柱脚用ベースプレートの底面図である。
【図2】図1に示した柱脚用ベースプレートの正面図である。
【図3】図1に示した柱脚用ベースプレートと鉄骨柱との組立手順を示した説明図である。
【図4】図3の組立後の状態を示した斜視図である。
【図5】本発明に係る柱脚用ベースプレートを用いた柱脚構造に曲げモーメントが負荷されたときの耐荷メカニズムを示した説明図である。
【図6】比較例の柱脚用ベースプレートを用いた柱脚構造に曲げモーメントが負荷されたときの耐荷メカニズムを示した説明図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る柱脚用ベースプレートの底面図である。
【図8】図7におけるA−A線断面である。
【図9】図7におけるB−B線断面である。
【図10】本発明の第3実施例に係る柱脚用ベースプレートの底面図である。
【図11】図10に示した柱脚用ベースプレートに鉄骨柱を固着した正面図である。
【図12】図10におけるA−A線断面である。
【図13】本発明の第4実施例に係る柱脚用ベースプレートの底面図である。
【図14】図13に示した柱脚用ベースプレートに鉄骨柱を固着した正面図である。
【図15】本発明の第5実施例に係る柱脚用ベースプレートの下面側から見た斜視図である。
【図16】本発明の第6実施例に係る柱脚用ベースプレートの下面側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1,8,12,16,20,24…柱脚用ベースプレート
2,9,13,17,21,25…ベースプレート本体部
2a,9a,13a,17a,21a,25a…ボルト挿通孔
3,10a,10b,14a,14b,18a,18b,22,26a,26b29…板状部
4,11,15,19,23,27…鉄骨柱
5…基礎コンクリート
6…アンカーボルト
7…ナット
10c…貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、充填鋼管コンクリート造などの露出型柱脚構造において、それら鉄骨柱を基礎コンクリートに対して固定するための中間材として、鉄骨柱の下端部に固着される柱脚用ベースプレートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
柱脚は、柱材の下端部に作用する軸力、せん断力、曲げモーメントを基礎コンクリートに伝達する重要な役割を担っている。露出型鉄骨柱脚において、圧縮軸力は鉄骨柱からベースプレートを介して基礎コンクリートへと応力伝達され、引張軸力は鉄骨柱からベースプレートを介してアンカーボルト、そして基礎コンクリートへと応力伝達される。曲げモーメントは、鉄骨柱からベースプレートを介して、一方では圧縮力を基礎コンクリートに伝達し、他方では引張力をアンカーボルトから基礎コンクリートへと応力伝達する。また、せん断力の伝達は、一般的に次の3タイプに区分される。
【0003】
まず、ベースプレート下面と基礎コンクリート表面との間の摩擦で伝達する方式がある。この場合、せん断耐力は柱軸力に依存するが、アンカーボルトの引張耐力は減少しないという特徴がある。次に、アンカーボルト径とほぼ同径の穴を有する座金をベースプレート上面に溶接接合し、ベースプレートからアンカーボルトに伝達する方式である。この方式では、せん断力は柱軸力に依存しないが、アンカーボルトの引張耐力が減少する。さらに、ベースプレート下面にシアキーを溶接し、鉄骨柱からベースプレート(シアキー)を介して基礎コンクリートに伝達する方式がある。この場合には、せん断力は柱軸力に依存せず、アンカーボルトの引張耐力も減少しないという特徴がある。このように、ベースプレートは鉄骨柱から作用する各種の力を基礎コンクリートに伝達するための重要な部材となっている。
【0004】
ところで、比較的小さい柱寸法の鉄骨柱には、規格品の圧延鋼板を適宜大きさの矩形板状に切断し、その周辺部分に所要数のボルト挿通孔を設けたベースプレートが、製造の簡便さなどの理由から鋳鋼製のものを凌駕している。これに対して、鉄骨柱の柱寸法が大きくなるに伴ってアンカーボルトも太径化するので、大きなサイズの鉄骨柱に適用するベースプレートには、高い曲げ剛性や耐力が要求される。圧延鋼板からなるベースプレートでは、柱寸法の拡大に対して板厚の増加で対応することになるが、板厚が100mmを超えるようなベースプレート用の圧延鋼板は、現時点で建築基準法における基準強度の設定がなく、構造用材料として使用できない。このため、生産性を犠牲にしても鋳鋼製のもので対応せざるを得ないのが実情である。なお、極厚の圧延鋼板が仮に使用可能であったとしても、これを実際に使用する場合には、いくつかの問題が懸念される。その一つには、適用する鉄骨柱の板厚とベースプレートの板厚との差が広がり過ぎるという点である。この点は、溶接性に影響を及ぼし、両者の間の接合強度に重大な問題を生じさせる可能性がある。斯かる事情から、ベースプレートの板厚を増加することなく、柱寸法の大サイズ化に対応する方法が検討されてきた。具体的には、本体部となる矩形状鋼板の上面側に複数のリブを配置したベースプレート(特許文献1)、2枚の鋼板間に複数のリブを配置した二段状のベースプレート(特許文献2)、鋼板の下面に溶接ビード等の数ミリ程度の凸条を一体に設けたベースプレート(特許文献3)などがこれまでに提案され、いずれもベースプレートの本体部にリブ状の補剛手段を付加したものである。
【特許文献1】実公昭61−33761号公報(第2図参照)
【特許文献2】特開平11−159007号公報(図6参照)
【特許文献3】特許第3391438号公報(図1参照)
【0005】
特許文献1に記載のベースプレートでは、ベースプレート本体部のボルト挿通孔から突出するアンカーボルトの上端部に螺合したナットが、ベースプレート本体部の上面に一体的に立設された複数のリブにより両側から囲まれる構成であるので、隣り合うリブ間には、ナットを緊締する際にスパナの回転動作を妨げない操作スペースが必要となる。ところが、アンカーボルトの本数が多くなる大きいサイズのベースプレートのように、各辺部の中間部分にも複数本のアンカーボルトが配置されるような場合には、それら辺部でのリブ間の間隔を十分に確保することが難しくなる。そこで、個々のリブの厚さを薄くするか、あるいはベースプレートの全幅を単純に拡大することも考えられるが、いずれもベースプレートの曲げ剛性の低下につながることから、上面にリブを配置する補剛方法は、ベースプレートのサイズ拡大を図る上で得策とは言い難いものである。
【0006】
一方、特許文献2に記載のベースプレートでは、上面側にリブが存在しないことから、前者のベースプレートの問題点であった締付け工具の操作スペースを考慮する必要がなくなり、さらにその箱型形状により、リブのみで補剛する場合に比べて大きな曲げ剛性や耐力が得られる利点がある。この場合には、溶接作業によって各部材を一体化するため、上下2枚の鋼板間の間隔と、それらの間に配置する複数のリブの互いの間隔が、生産性の面で重要な要件になってくる。生産性を優先し、リブ間の間隔を大きく確保した場合には、前者と同様に曲げに対する補剛効果が小さくなるので、上段に位置する鋼板の厚さを大きくする必要が生じ、結局、大きいサイズのベースプレートにはあまり適さない構造である。さらに、前者のベースプレートに比べて溶接量が増大し、しかも狭い空間での溶接作業となるため、作業性の悪さなどの問題もあった。
【0007】
次に、特許文献3に記載のベースプレートでは、下面に複数の凸条を設けることにより、剛性向上を企図しているが、ベースプレート本体部の板厚と凸条の高さとの比率、あるいはベースプレート本体部の板厚とアンカーボルトの外径との比率(図1参照)からしても、その効果は明らかに副次的なものである。すなわち、凸条の本来の目的は、地震などで大きな横向きの力(せん断力)が柱脚部に作用したときに、ベースプレートとモルタル充填層との間で相対的なずれが生じないようにするためのものである。この場合の凸条は、あくまでもベースプレート下面とモルタル層との摩擦係数を増加させることが主目的であるから、その配置形態として放射状などのモルタル充填層に圧縮力が負荷されるようなパターンが優先的に選択されている。この従来技術では、ベースプレートの曲げ剛性向上という観点からの配置形態、凸条の形状については特に考慮されていない。したがって、このような凸条をそのまま大きいサイズのベースプレートに適用できるか否かについては検討の余地が多分にあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らはこれら従来技術の問題点に鑑み、ベースプレート本体部に付加する補剛手段について鋭意検討を重ねた結果、本発明に想到したのである。すなわち本発明では、補剛部材の効果的な配置形態を見出し、これによりベースプレート本体部の板厚を大きくすることなく曲げ剛性を高め、アンカーボルト外径の増大、鉄骨柱のサイズ拡大にも対応可能となった柱脚用ベースプレートの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明では、鉄骨柱の下端部に対してベースプレート本体部が上面側で固着され、その周辺部分に設けた複数のボルト挿通孔に、基礎コンクリート表面から突出する複数本のアンカーボルトを挿通し、上方からのナットの締付けにより該鉄骨柱を基礎コンクリートに固定する柱脚用ベースプレートにおいて、前記ベースプレート本体部が、前記アンカーボルトの外径より小さい板厚の平板状に形成され、その下面側に前記鉄骨柱の固着部が投影する仮想輪郭線に沿って互いに間隔を空けながらその線上を跨いだ状態で立設される複数の板状部を備えるという技術手段を採用した。これにより、ベースプレート本体部を効果的に補剛することができる。
【0010】
さらに、上記構成における板状部については、その高さをベースプレート本体部の板厚より大きくすると好都合であり(請求項2)、またベースプレート本体部と一体に鋳造することができる(請求項3)。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、以上のような構成を採用したことにより、次の効果が得られる。
(1)アンカーボルトからの応力は、ベースプレート本体部の柱外側部(周辺部)、さらにはその下面に立設された複数の板状部を介してベースプレート本体部の上記仮想輪郭線を越えた柱内側部に伝達されるが、この領域は上面側において鉄骨柱で拘束されることにより曲げ変形抵抗が大きい。このため、仮想輪郭線よりも内側の柱内側部でその一端側が安定的に支持された前記板状部は、そのリブ効果により他端側のベースプレート本体部の柱外側部を補強し、変形を有効に阻止することができる。このような板状部(補剛部)の存在により、ベースプレート本体部の全体としての曲げ剛性が向上し、ベースプレート本体部の板厚を薄くすることが可能になり、経済的な柱脚構造を実現できる。
(2)ベースプレート本体部の下面側に複数の板状部を互いに間隔を空けて位置させたので、ナットの締付け操作を何ら考慮することなく、板状部をアンカーボルトの近くに設けることが可能になり、その補強効果を最大限に活用したベースプレートが得られる。
(3)板状部の高さをベースプレート本体部の板厚に比べて十分に大きくすれば、その補強効果は一段と高まり、ベースプレート本体部の板厚をより薄くすることができ、ベースプレート本体部の板厚よりも大きい外径のアンカーボルトを使用する場合にも好都合である。
(4)板状部をベースプレート本体部と一体に鋳造すれば、溶接によるものに比べて生産性が向上し、さらにベースプレート本体部及び板状部の形状選択の自由度が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る柱脚用ベースプレートは、曲げ剛性や耐力を向上させるために従来から検討されているリブ等の板状の補剛手段について、効果的な形状、配置形態を見出した点に技術的な特徴がある。これにより、ベースプレート本体部の板厚よりも大きな外径のアンカーボルトの使用が可能になり、ベースプレート本体部の板厚を抑えながら大きな柱寸法の鉄骨柱、あるいは太い外径のアンカーボルトへの適用が可能になった。対象となる鉄骨柱は角形鋼管に限らず、円形鋼管、H形鋼でもよく、いずれの場合においてもベースプレート本体部の全体形状としては、平面視で略矩形状が好ましい。ベースプレート本体部の素材は圧延鋼板に限らず、鋳鋼を用いてもよい。この場合には、板状部をベースプレート本体部と一体に鋳造することが可能である。一方、圧延鋼板をベースプレート本体部に適用した場合には、板状部も適宜サイズの鋼板を組み合わせて溶接によりベースプレート本体部と一体化すればよく、その成形方法、手順等は特に限定されない。鉄骨柱の仮想輪郭線に対する板状部の交差状態は、必ずしもすべてのものが直角に交差しなくともよく、設置場所によっては斜めに跨ぐようにしてもよい。本発明では上記板状部の存在により、大きな柱寸法の鉄骨柱の柱脚で使用される太いアンカーボルトの外径よりも、ベースプレート本体部の板厚を小さく抑えることが可能である。また、板状部の高さを適切に確保すれば、ベースプレート本体部の板厚がそれほど大きくないものを使用することもできる。なお、アンカーボルトが挿通されるボルト挿通孔の位置については、少なくともベースプレート本体部の四隅部にあればよい。例えば、各隅部のみにそれぞれ複数個を設けたもの、さらにそれら隅部間の辺部にも設けたもの、あるいは四辺に沿ってそれぞれ単独で均等配置したものなど、その本数等に応じて種々の配列状態に適用可能であり、本発明の技術思想内でのさまざまな変更実施はもちろん可能である。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1ないし図4は、本発明に係る柱脚用ベースプレートの第1実施例を示し、図1および図2はそれぞれ底面図と側面図である。図示のベースプレート1は、角型鋼管からなる鉄骨柱を対象とするもので、圧延鋼板からなる正方形状のベースプレート本体部2と、その下面に対して放射状の配置形態で立設された複数の板状部3からなる。各板状部3は、ベースプレート本体部2の板厚よりも薄い圧延鋼板の小片からなり、短辺の長さが同じで長辺の長さが配置場所により異なる長方形状の2個所の角部が斜断され、斜断されていないほうの長辺部分でベースプレート本体部2に溶接されている。したがって、各板状部3の高さは同じである。
【0014】
ベースプレート本体部2には、四隅部にそれぞれ2個のボルト挿通孔2aが、ベースプレート本体部2の角部に引いた45度の接線と平行となるように各隅部に2個ずつ配置され、さらに各辺の中間部分にも2個ずつ配置され、合わせて16個のボルト挿通孔2aが設けられている。そして、これらのボルト挿通孔2aの個々の間に、それぞれの板状部3は、上面側に固着される鉄骨柱4が投影する仮想輪郭線4aを跨いだ状態でベースプレート本体部2の中心に向けて放射状に1個ずつ配置されている。なお、各板状部3は必ずしも長辺方向の中央で仮想輪郭線4aと交差させる必要はなく、むしろベースプレート本体部2の周辺側に寄せたほうが、補剛効果の点から好適である。なお、実施例ではベースプレート本体部2の各辺の中央に配置された板状部3の長辺部分の長さが最も長いが、配置場所に関係なくすべて同じ長さとすることも可能である。
【0015】
図3および図4は、それぞれ本発明に係る柱脚用ベースプレート1の組立手順を示した説明図と、鉄骨柱に固着した状態の底面側の斜視図である。図3に示すように、ベースプレート本体部2の上面に設定される鉄骨柱4の溶接位置4bを下面側に投影した仮想輪郭線4aに対して、各板状部3が跨るように各ボルト挿通孔2a間に配置して溶接する。次いで、溶接位置4bに鉄骨柱4の端面を当接した状態で溶接する。なお、組立手順については、特に限定されない。
【0016】
図5は、本発明に係る柱脚用ベースプレート1を用いた柱脚構造において、曲げモーメントが負荷されたときの耐荷メカニズムの説明図である。なお、施工方法については、基礎コンクリート5の表面部にベースプレート1を収容可能な箱形状の凹部を予め形成する。この凹部内には、ベースプレート本体部2の板厚よりも大きい外径で、下端部に定着板(図示せず)が装着されたアンカーボルト6の上端部が所定長さだけ突出している。そして、鉄骨柱4の下端に固着されたベースプレート1のボルト挿通孔2aに各アンカーボルト6の上端部を挿入し、基礎コンクリート5の凹部底面に対して、適宜のスペーサー等を介して板状部3の下方に隙間を空けた状態で載置した後、アンカーボルト6に螺合したナット7で締め付け、ベースプレート本体部2の下面の空間内に無収縮グラウトモルタルを適宜手段で注入する。無収縮グラウトモルタルは、各板状部3の間に隙間無く充填される。これにより、鉄骨柱4はベースプレート1を介して基礎コンクリート5に対して固定される。なお、基礎コンクリート5の表面部に凹部を設けずにそのまま鉄骨柱4等を載置し、ベースプレート1の側面全周を適宜の型枠で囲み、この状態で無収縮グラウトモルタルを充填するようにしてもよい。
【0017】
次に、耐荷のメカニズムについて説明する。図5(a)に示したように、曲げモーメントMに基づく鉄骨柱4からの引張応力は、ベースプレート1を介してアンカーボルト6に伝達する。そして、図5(b)に示したように、ベースプレート本体部2において、鉄骨柱4の側面よりも外側、すなわち仮想輪郭線4aの外側に位置する柱外側部2bは、アンカーボルト6によって曲げ変形しようとする応力を受ける。その応力は、ベースプレート本体部2の下面に配置された板状部3により、ベースプレート本体部2の柱内側部2cに伝達される。この柱内側部2cは、ベースプレート本体部2の上面側に溶接された鉄骨柱4で拘束されているため、曲げ変形に対する抵抗力が大きいことから、柱外側部2bを効果的に支持(補剛)し、曲げ変形することがない。
【0018】
図6は、板状部3が鉄骨柱4の仮想輪郭線4aを跨がない柱脚用ベースプレートの比較例である。この場合には、前記実施例のように柱内側部2cに応力が十分に伝達されないため、柱外側部2bと柱内側部2cとの境界付近で曲げ変形が生じる。
【0019】
図7ないし図9は、それぞれ本発明の第2実施例に係る柱脚用ベースプレートの底面図と、図7におけるA−A線断面図とB−B線断面図である。なお、前記実施例と重複する部分については、その説明を省略する。図示の柱脚用ベースプレート8は、第1実施例と同様にベースプレート本体部9が正方形状の圧延鋼板からなり、角型鋼管等の閉鎖断面が矩形状の鉄骨柱11を対象とし、16本のアンカーボルトに対応するものである。この場合の板状部10は、第1実施例と同様な圧延鋼板の小片からなる複数の板状部10aと、平面視十字状でベースプレート本体部9の中心に設置される1個の板状部10bとで構成されている。これらの板状部10は、ベースプレート本体部9の上面側に固着される鉄骨柱11が投影する仮想輪郭線11aを跨ぐように設置され、その高さはベースプレート本体部9よりも十分に大きいものである。板状部10bは、ベースプレート本体部9の一辺の長さに近く、その側壁には無収縮グラウトモルタルの流通を円滑にするための貫通孔10cが設けられている。これに対して、複数の板状部10aは、十字で区切られた区域に3個ずつが、ベースプレート本体部9の中心に向けて各ボルト挿通孔9aの間に設置される。
【0020】
図10ないし図12は、それぞれ本発明の第3実施例に係る柱脚用ベースプレートの底面図と、鉄骨柱を固着した状態の正面図、及び図10におけるA−A線断面図である。図示の柱脚用ベースプレート12は、圧延鋼板からなる正方形状のベースプレート本体部13と、16個の板状部14で構成される。四隅部に位置する各ボルト挿通孔13aの両側に配置される2個の板状部14aは、互いに平行な状態でベースプレート本体部13の中心に向けて立設されている。そして、各辺部の中央に位置するボルト挿通孔13aに対しては、四隅部よりもやや長い板状部14bが互いに平行な状態でベースプレート本体部13の辺に対して直角となるような向きで立設されている。これらの板状部14は、いずれもベースプレート本体部13の上面側に固着される鉄骨柱15が投影する仮想輪郭線15aを跨ぐように設置され、すべてのボルト挿通孔13aの両側に配置されることになる。なお、その高さは前記各実施例と同様にベースプレート本体部13よりも十分に大きいものである。
【0021】
図13および図14は、それぞれ本発明の第4実施例に係る柱脚用ベースプレートの底面図と、鉄骨柱を固着した状態の正面図である。図示の柱脚用ベースプレート16は、圧延鋼板からなる正方形状のベースプレート本体部17の四隅部に、それぞれ2個のボルト挿通孔17a,17aが、ベースプレート本体部17の角部に引いた45度の接線と平行となるように各隅部に2個ずつ配置されたものである。それら四隅部に位置するボルト挿通孔17a,17a間には、1個の板状部18aがベースプレート本体部17の中心に向けた状態で接合されている。そして、各辺の中間に位置するボルト挿通孔17aの間には、四隅部よりもやや短い板状部18bが互いに平行な状態でベースプレート本体部17の辺に対して直角となるような向きで立設されている。これらの板状部18は、いずれもベースプレート本体部17の上面側に固着される鉄骨柱19が投影する仮想輪郭線19aを跨ぐように設置され、すべてのボルト挿通孔13aの両側に配置されることになる。
【0022】
図15は、本発明の第5実施例に係る柱脚用ベースプレートの下面側から見た斜視図である。図示の柱脚用ベースプレート20は、ベースプレート本体部21の四隅にボルト挿通孔21aが形成されたアンカーボルト4本タイプのものである。板状部22は、第3実施例と同様に配置され、いずれもベースプレート本体部21の上面側に固着される鉄骨柱23が投影する仮想輪郭線23aを跨ぐように、2個が1組となって設置されている。
【0023】
図16は、本発明の第6実施例に係る柱脚用ベースプレートの下面側から見た斜視図である。図示の柱脚用ベースプレート24は、H形鋼からなる鉄骨柱用であって、アンカーボルトが4本のタイプを対象としたものである。ベースプレート本体部25は、長方形状の圧延鋼板からなる。その下面には、ベースプレート本体部25の上面側に固着される鉄骨柱27が投影する一対のフランジ部の仮想輪郭線27aを直交状態で跨ぐようにそれぞれ3個の板状部26aが互いに間隔を空けて設けられ、さらにウェブ部の仮想輪郭線27bに1個の板状部26bが設けられている。4個のボルト挿通孔25aは、それぞれ2個ずつが両方のフランジ部の仮想輪郭線27aよりも外側の位置において、板状部26a間に開設されている。
【0024】
なお、以上の各実施例では、ベースプレート本体部として圧延鋼板を使用し、これに小片の鋼板からなる板状部を接合一体化した例について説明したが、両者を鋳造により一体成形してもよく、またいずれか一方を鋳鋼製、他方を鋼板製として両者を接合一体化することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施例に係る柱脚用ベースプレートの底面図である。
【図2】図1に示した柱脚用ベースプレートの正面図である。
【図3】図1に示した柱脚用ベースプレートと鉄骨柱との組立手順を示した説明図である。
【図4】図3の組立後の状態を示した斜視図である。
【図5】本発明に係る柱脚用ベースプレートを用いた柱脚構造に曲げモーメントが負荷されたときの耐荷メカニズムを示した説明図である。
【図6】比較例の柱脚用ベースプレートを用いた柱脚構造に曲げモーメントが負荷されたときの耐荷メカニズムを示した説明図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る柱脚用ベースプレートの底面図である。
【図8】図7におけるA−A線断面である。
【図9】図7におけるB−B線断面である。
【図10】本発明の第3実施例に係る柱脚用ベースプレートの底面図である。
【図11】図10に示した柱脚用ベースプレートに鉄骨柱を固着した正面図である。
【図12】図10におけるA−A線断面である。
【図13】本発明の第4実施例に係る柱脚用ベースプレートの底面図である。
【図14】図13に示した柱脚用ベースプレートに鉄骨柱を固着した正面図である。
【図15】本発明の第5実施例に係る柱脚用ベースプレートの下面側から見た斜視図である。
【図16】本発明の第6実施例に係る柱脚用ベースプレートの下面側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1,8,12,16,20,24…柱脚用ベースプレート
2,9,13,17,21,25…ベースプレート本体部
2a,9a,13a,17a,21a,25a…ボルト挿通孔
3,10a,10b,14a,14b,18a,18b,22,26a,26b29…板状部
4,11,15,19,23,27…鉄骨柱
5…基礎コンクリート
6…アンカーボルト
7…ナット
10c…貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨柱の下端部に対してベースプレート本体部が上面側で固着され、その周辺部分に設けた複数のボルト挿通孔に、基礎コンクリート表面から突出する複数本のアンカーボルトを挿通し、上方からのナットの締付けにより該鉄骨柱を基礎コンクリートに固定する柱脚用ベースプレートにおいて、前記ベースプレート本体部は、前記アンカーボルトの外径より小さい板厚の平板状に形成され、その下面側に前記鉄骨柱の固着部が投影する仮想輪郭線に沿って互いに間隔を空けながらその線上を跨いだ状態で立設される複数の板状部を備えることを特徴とする柱脚用ベースプレート。
【請求項2】
前記板状部が、ベースプレート本体部の板厚より高さが大きいものであることを特徴とする請求項1に記載の柱脚用ベースプレート。
【請求項3】
前記板状部が、ベースプレート本体部と一体に鋳造されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の柱脚用ベースプレート。
【請求項1】
鉄骨柱の下端部に対してベースプレート本体部が上面側で固着され、その周辺部分に設けた複数のボルト挿通孔に、基礎コンクリート表面から突出する複数本のアンカーボルトを挿通し、上方からのナットの締付けにより該鉄骨柱を基礎コンクリートに固定する柱脚用ベースプレートにおいて、前記ベースプレート本体部は、前記アンカーボルトの外径より小さい板厚の平板状に形成され、その下面側に前記鉄骨柱の固着部が投影する仮想輪郭線に沿って互いに間隔を空けながらその線上を跨いだ状態で立設される複数の板状部を備えることを特徴とする柱脚用ベースプレート。
【請求項2】
前記板状部が、ベースプレート本体部の板厚より高さが大きいものであることを特徴とする請求項1に記載の柱脚用ベースプレート。
【請求項3】
前記板状部が、ベースプレート本体部と一体に鋳造されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の柱脚用ベースプレート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−275470(P2009−275470A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130252(P2008−130252)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【出願人】(593029282)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000000446)岡部株式会社 (277)
【出願人】(593029282)
【Fターム(参考)】
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