説明

栄養性の改良されたイヌリン製品

【課題】ヒト、哺乳動物その他の脊椎動物に対し、既知イヌリン製品と比較して腸に副作用を与えず、改良された栄養性を供する新規イヌリン製品およびその組成物を供すること。
【解決手段】易発酵性イヌリン(EFI)成分と難発酵性イヌリン(HFI)成分の混合物から成るイヌリン製品であって、EFI/HFI重量比は10/90〜70/30の範囲であり、EFI成分はリュウゼツランイヌリンを含まずかつ重合度(DP)<10を有する短鎖イヌリンから成り、HFI成分は数平均重合度


を有する長鎖イヌリンから成り、かつ(DP)=9および(DP)=10を有するイヌリンの合計含量が最高5%(%は全イヌリンに対する重量%、気液クロマトグラフィ(GLC)により測定)であることを特徴とする、上記イヌリン製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規イヌリン製品およびその組成物、ヒト、哺乳動物および他の脊椎動物の大腸における細菌フローラ組成およびイヌリンの発酵パターンを修正し、調整するためのその使用、改良されたイヌリン関連の栄養効果/利益を供するためのその使用およびヒト、哺乳動物および他の脊椎動物にその効果/利益を供する組成物、消費者製品、医薬品または薬剤を製造するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イヌリンは主としてフラクトース単位から成るフラクタン型炭水化物で、貯蔵炭水化物として多数の植物に存在する。イヌリンは或る細菌により生産でき、また酵素により蔗糖から試験管内で製造することもできる。イヌリンは炭水化物分子の多分散混合物として天然に存在し、フラクトシル単位が主としてまたは独占的にβ(2,1)結合により相互に結合するフラクトシル単位形成鎖から本質的に成る。主として直鎖は本質的にフラクトシル単位から成る1つ以上の側鎖を多分有するから、フラクトシル−フラクトシルβ(2,6)結合により通常形成される分岐点でフラクトシル−フラクトシル結合を有する分枝イヌリン分子を形成する。植物起源のイヌリン分子は大部分が1つの末端グルコシル単位を含有する。従って、イヌリン分子は式GFnまたはFmで表わすことができ、式中Gは末端グルコシル単位を表わし、Fはフラクトシル単位を表わし、nおよびmはβ(2,1)および/またはβ(2,6)結合により相互に結合するフラクトシル数を表わす。数n+1、各mはイヌリン分子の重合度(DP)を示す。イヌリンはさらに
【数1】


により表わされるその(数)平均重合度により特徴化される。これは供試試料のイヌリン分子の総数で割った供試イヌリン試料の糖類単位(GおよびFユニット)の総数に相当する値であり、多分試料に存在するであろう単糖類グルコース(G)およびフラクトース(F)および二糖類蔗糖(GF)は考慮していない。平均重合度
【数2】


は通常デ・リーンヒール等(Starch/Starke,46(5),193−196,1994)、およびエイチ・ファン・ベッカム等らの有機原料としての炭水化物、第III巻、67−74,1996、オランダ)の記載した方法により測定する。
【0003】
植物起源の天然イヌリン(すなわち、植物に存在するイヌリン)は2〜約100の範囲の(DP)を有する主として多糖類直鎖の多分散混合物として存在するが、一方細菌由来のイヌリン分子は通常分枝鎖であり、通例(DP)値は高く、約115,000までのDPを有する。植物イヌリンの
【数3】


は植物起源、収穫、貯蔵および加工条件に依る。天然(または標準級)イヌリンは本明細書では植物起源から抽出し、精製および単離したイヌリンを言い、その
【数4】


を増減する処理を適用せずに、相当する天然イヌリンの
【数5】


より約1単位低い
【数6】


を通常有する。
【0004】
通例(DP)<10として記載される低重合度を有するイヌリン分子はイヌロ−オリゴ糖、フラクト−オリゴ糖またはオリゴフラクトースと称される。(DP)<10の直鎖および分枝鎖イヌリンを含むこれらの用語は通常、またはここでは、交互に使用される。オリゴフラクトースはここでは短鎖イヌリンとも呼ばれる。
【0005】
イヌリンは通常植物起源、主としてチコリ(チコリウムインチバス)の根から得られるが、キクイモ(ヘリアンサスチューバローサス)の塊茎から、および青色リュウゼツランのピナ(頂部)からも得ることができる。これらにはイヌリンは新鮮植物材料に対し約20重量%(以下wt%は重量%を意味する)までの濃度で存在する。イヌリンはこれらの植物部分から常法技術により容易に抽出し、精製できる。
【0006】
それぞれチコリ、キクイモ由来の天然イヌリンはそれぞれ2〜約70、2〜約40の(DP)を有する、わずかに分枝した鎖(一般的にはそれぞれ2%未満、1%未満の鎖)の多分散混合物として見られる。天然(標準級)チコリイヌリンは約10の
【数7】


を有し、キクイモの天然(標準級)イヌリンは約6の
【数8】


を有する。
リュウゼツランの天然イヌリンは通常約14〜約17の
【数9】


を有する高分枝鎖の多分散混合物として存在する。
【0007】
工業的規模で、チコリイヌリンはチコリ根細片を熱水抽出して粗イヌリン溶液を得、次に浄化(石灰処理、次いで炭酸化および濾過)および精製(イオン交換処理、活性炭処理および濾過)することにより通常得られる。場合により、単糖類および二糖類は精製溶液から除去して(例えば、EP0670850号明細書に記載のようにカラムクロマトグラフィにより分離)約10の標準
【数10】


を有し、単糖類および二糖類をほとんど含まないイヌリンを噴霧乾燥により得る。場合により、精製溶液は分画して単糖類および二糖類およびオリゴフラクトースを除去し(例えば、EP0769026号明細書に記載のように方向性結晶化により)、次いで分画イヌリンは噴霧乾燥により粒子形で単離される。製造方法により、約10(標準級)へ約30、それ以上の範囲の
【数11】


を有するチコリイヌリンを得ることができる。
【0008】
同様に、リュウゼツランイヌリンは青色リュウゼツランからの頂部またパルプ細片を圧搾または水抽出し、次いで通例的に精製し、イヌリンを単離、例えば噴霧乾燥して工業規模で得ることができる。
【数12】


を有する直鎖および分枝イヌリンを含むイヌリンはここでは長鎖イヌリンと称するが、10〜<20の
【数13】


を有する直鎖および分枝イヌリンはここでは中鎖イヌリンと称する。
【0009】
チコリ由来のイヌリンは例えば、ORAFTI社(ティーネン、ベルギー)からRAFTILINE(登録商標)として、各種等級で市販されている。一般的等級はRAFTILINE(登録商標)ST(約10の
【数14】


を有し、合計で約8重量%のグルコース、フラクトースおよびシュクロースを含有)およびRAFTILINE(登録商標)HP(少なくとも20、通常約23〜約25の
【数15】


を有し、実質的にグルコース、フラクトースおよびシュクロースを含まない)である。
【0010】
リュウゼツランイヌリンは例えば、メキシコのインダスリアス・コリブリ・アズル社からGAVEDIET(登録商標)(14〜16の
【数16】


を有し、合計で約5重量%のグルコース、フラクトースおよびシュクロースを含有)として工業用リュウゼツランイヌリンが市販されている。
【0011】
オリゴフラクトースは、例えば米国特許第5,314,810号明細書に記載の蔗糖からインビトロで酵素的合成および例えばEP0917588号明細書に記載のイヌリンの部分加水分解を含む当業者に公知の技術により得ることができる。
【0012】
チコリイヌリンの酵素的加水分解により製造したオリゴフラクトースは各種等級で、例えばORAFTI(ティーネン、ベルギー)からRAFTILOSE(登録商標)として、例えばRAFTILOSE(登録商標)L95(液体形)またはRAFTILOSE(登録商標)P95(粉末形)、[双方とも約95%のオリゴフラクトース含量(総炭水化物に対する重量%)を有し、2〜9の(DP)、一般に主として2〜7の(DP)を有し、約4.5の
【数17】


を有し、および合計で約5%(総炭水化物に対する重量%)のグルコース、フラクトースおよびシュクロースを含有する]、およびRAFTILOSE(登録商標)L85、[液体形で、約85%のオリゴフラクトース含量(総炭水化物に対する重量%)を有し、2〜9、一般には主として2〜7の(DP)、約3.5の
【数18】


を有し、合計で約15%、最高で20%(総炭水化物に対する重量%)のグルコース、フラクトースおよびシュクロースを含有する]が市販されている。
【0013】
別に特定しない限り、ここで使用するイヌリンとは直鎖および分枝イヌリンを意味し、(DP)<20を有するイヌリン分子および(DP)≧20を有するイヌリン分子を含む。
【0014】
食品および飼料工業では、オリゴフラクトースは、甘味、ボディおよび食感を供する糖の低カロリー部分または完全な代替物として広く使用されるが、少なくとも約10、好ましくは少なくとも20の
【数19】


を有するイヌリンは(i)ボディおよび食感を供する1つ以上の強力甘味料と組合せ、または組合せずに糖の部分または完全な低カロリー代替物として、(ii)テクスチャー改良剤として、および(iii)脂肪の低カロリー代替物として使用される。脂肪代替物としてイヌリンを使用すると、イヌリンは水により安定で均質の、クリーム状構造を有し、すぐれた官能性を有する粒状ゲルを形成する。
【0015】
(DP)≧10を有するイヌリン分子および(DP)<10を有するオリゴフラクトース分子はヒトの消化酵素により加水分解されない。従って、これらの分子は消化管の上部および小腸を未変化で通り(エルガード等のEur.J.Clin.Nutr.,51,1−5,1997)ほとんど定量的に大腸に到達し、そこで特定腸内細菌により発酵される(エム・ローバフロイド等、J.Nutr.,128(1),11−19,1998)。その結果、イヌリンおよびオリゴフラクトースは非常に興味のある栄養性を示す。
【0016】
先ず第一に、イヌリンおよびオリゴフラクトースは食物繊維と考えられる。これらは未変化で大腸に到達するから、大腸のミクロフローラに炭素エネルギーを供する。このように、イヌリンおよびオリゴフラクトースは大腸の腸細菌の生育を刺激し、これは嵩ばり効果(すなわち、細菌バイオマスの増加)を含む腸機能に有利な効果を有し、これは順次大便重量の増加、便通回数の増加および便秘の軽減に帰着する(エム・ローバフロイド、「健康および病気での食物繊維において」プレナム社、ニューヨーク、211−219,1998)。
【0017】
さらに、イヌリンおよびオリゴフラクトースはビフィズス菌およびラクトバチルス菌の生育および代謝活性を選択的に刺激するので、イヌリンおよびオリゴフラクトースは強力なビフィドジェニック効果を有することが分かった。その上、腸内ビフィズス菌数がイヌリンまたはオリゴフラクトースの経口摂取により有意に増加する一方で、例えば大腸におけるクロストリジウム菌属や大腸菌属のような望ましくない、または病原性細菌数の有意な減少が付随することが認められた(ジー・アール・ギブスン等J.Appl.Bacteriology,77,412−420,1994)およびエックス・ワン、Thesis、ケンブリッジ大、英国)。したがって、イヌリンおよびオリゴフラクトースの摂取は有利な細菌種、一般にはビフィズス菌により大腸のコロニー形成を選択的に増加し、一方望ましくない細菌種の生育を抑制することにより腸フローラを大きく修正および調整し、これにより順次宿主の腸疾病に対し有利な予防および治療効果を生ずる。
【0018】
健康なボランティアによるインビボ内試験では、イヌリン(RAFTILINE(登録商標)ST)およびオリゴフラクトース(RAFTILOSE(登録商標)P95)は同程度にビフィドジェニックであり(ジー・アール・ギブスン等、Gastroenterology,108,975−982,1995)、一方インビトロ試験ではイヌリン((DP)≧10)はオリゴフラクトース((DP)<10)の約2倍ゆっくり大腸内で発酵することを示した(エム・ローバフロイド等、J.Nutr.,128(1),11−19,1998)。
【0019】
これらの観察からオリゴフラクトースは大腸の基部、すなわち上昇部分でほとんど完全に発酵されるが、イヌリンは大腸の一層末梢部分、すなわち横行部と上行部に幾分到達するらしく、そこで発酵する。
【0020】
インビトロ試験はリュウゼツランイヌリンがオリゴフラクトースとほとんど同じ位容易に発酵することを示した。従って、リュウゼツランイヌリンもヒトや哺乳動物の大腸の基部でほとんど完全に発酵すると思われる。
【0021】
さらに、オリゴフラクトースおよびイヌリンは結腸癌(WO98/52578号)および乳癌(EP0692252号)のような或る種の癌の発生および生長に対し予防および治療効果を有することが開示されている。
【0022】
乳癌に対する効果はオリゴフラクトース、イヌリンおよび/またはその発酵産物、主として短鎖脂肪酸(SCFA)(エス・ナミオカ等、Bifidobacteria microflora,10,1−9,1991)の免疫調整効果、特に免疫系に対する刺激効果に関連すると思われる。
【0023】
結腸癌に関し(通例、結腸末端部分の前癌状態の病変形成に起因する)、長鎖イヌリン、すなわち
【数20】


を有するイヌリンはオリゴフラクトース((DP)<10を有する)および標準級チコリイヌリン(約10の
【数21】


を有する)より結腸癌発生の予防および成長の抑制に一層有効であることが報告されている(WO98/52578号)。
【0024】
さらに、僅かに高脂血症である健康なヒトボランティアによる研究で、オリゴフラクトースまたはイヌリンの消費は、対照のプラセボ処理と比較して血清トリグリセリドおよびコレステロール(主としてLDLコレステロール)量を低減するので、脂質代謝に対し有利な効果を有することが分かった(エフ・ブリゲンティ等、Eur.J.Clin.Nutr.,53(9),726−733,1999およびケイ・ジー・ジャクスン等、Brit.J.Nutr.,82(1),23−30,1999)。さらに、脂肪の多い食物にオリゴフラクトースまたはイヌリンを添加すると、対照群と比較して50%以上血清コレステロールおよび血清トリグリセリドを低減することがラットの試験で実証された(エヌ・コック等、J.Nutr.,128(7),1099−1103,1997)。
【0025】
さらに、ミネラル、特にカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)および鉄(Fe)の腸吸収、および骨ミネラル密度に対するオリゴフラクトースおよびイヌリン消費のポジティブな効果は各種研究で分かった。エス・シムラ等(J.Nutr.Food Sci.,44(4),287−291,1991)、エム・エイ・レブラット等(J.Nutr.,121,1730−1737,1990)、シー・レメジー等(Am.J.Physiology,264(5),G855−G862,1993)、エイ・タグチ等(明治製菓研究年報、33,37−43,1995およびケイ・ショルツーアーレンス等、Symosium Deutsohe Gesellschaft fur Ernabrugsforschung,19−20,1998年3月、ドイツ、キール)は、カルシウムおよびある場合にはマグネシウムを含む他のミネラルの吸収増加がイヌリンまたはオリゴフラクトースの経口消費の結果実証されたことをラットによる研究で報告した。エイ・オオタ等(J.Nutr.,125(9),2417−2424,1995およびエス・ババ等(Nutr.Res.,16(4),657−666,1996)は、CaおよびMgに対する非消化性炭水化物のポジティブな効果は大腸レベルで起きるとする仮説を打ち立てた。これまで、ミネラルの吸収は主として小腸により行なわれることが一般に受け入れられていた。エヌ・デルゼン等(Life Sci.,57(17),1579−1587,1995)はイヌリン(RAFTILINE(登録商標)ST)またはオリゴフラクトース(RAFTILOSE(登録商標)P95)のいずれか10%を補充した食物は健康なラットにMgおよびCaの強い吸収増加および鉄の適度の吸収増加を生じ、オリゴフラクトース(RAFTILOSE(登録商標)P95)と比較してイヌリン(RAFTILINE(登録商標)ST)に対してもほとんど同じ効果を示したことを報告した。アール・ブロメージ等(J.Nutr.,123(12),2186−2194,1993)は5重量%のオリゴフラクトース(RAFTILOSE(登録商標)P95)を補充した食物を給飼した健康ラットのCa吸収が同様に増加することを開示した。エイ・タグチ等(明治製菓研究年報、33,37−43,1995)は卵巣切除ラットでは、オリゴフラクトース(飼料に2.5重量%および5重量%)はミネラル、特にCaおよびMg吸収を増加させ、骨密度を増加するのでエストロゲン不足による骨損失を抑制することを報告した。同じモデルを使用して、ケイ・ショルツーアーレンス等(同上のシンポジウム)はCaの吸収および骨のミネラル強化に対しオリゴフラクトース(RAFTILOSE(登録商標)P95)(食物中2.5%、5%および10重量%)の用量依存効果を観察した。この研究で、オリゴフラクトースも卵巣切除により生ずる骨柱構造の骨粗しょう症ロスを有意に低減した。さらに、それぞれ5重量%、10重量%のイヌリン(RAFTILINE(登録商標)HP)を含有する食物を給飼したラットのCa吸収増加と同時にBMDの増加をシー・レモルト等(Thesis,Univ.Cathol.Louvain,1998)は報告した。
【0026】
イヌリンおよびオリゴフラクトースは明らかに食物からのミネラルの吸収に影響し、かつ骨組織のミネラルの吸収に影響し、その結果BMDが増加するとの知見はヒトの健康に非常に重要である。実際に、身体のカルシウム吸収力、骨ミネラル密度の増加および骨密度の減少を防止し、遅らせ、または抑制する可能性は一般的な西洋型ライフスタイルおよび食物パターンを有する住民では非常に重要である。これらの住民には加令により、特に閉経後の婦人にミネラル吸収およびミネラル再吸収および排泄間に不均衡(dysbalance)が生ずるからである。この不均衡はBMDの減少および骨脆弱化を生じ、これははっきりした段階で骨粗しょう症として知られる。進行段階で、骨粗しょう症は順次高頻度で骨折を起こす。従って、子供および青年の成長段階中に高いBMDを有する骨格要素を築き上げることが非常に重要である。このような骨格要素は何らかの因子により生ずるミネラル減少に実際に一層永く耐え、こうしてこれは進行した骨粗しょう症による骨折を遅らせ、または回避することさえできる。上記を考慮すると、望ましくない骨粗しょう症関連状態を防止し、または最高に遅らせ、特に骨粗しょう症および最後に骨折につながる閉経後のミネラル損失を遅らせるために、成人の骨ミネラル含量の起こりうる損失を減少させうることももっとも重要である。さらに、骨粗しょう症の状態、特に骨粗しょう症関連骨折が発生する場合に治療できることは非常に重要である。最後に、必要の場合、例えば、子供、成人および老人の偶然の骨折の場合、ミネラルの吸収および骨構造の形成を刺激し、増加しうることは非常に望ましい。
【0027】
これらを考慮して、ラットのミネラル吸収の増加に関する開示は医学分野から多大の注目を受け、いくつかの研究は食物からのCa吸収を試験し、骨組織のCa吸収を増加するために、ヒトのBMDおよび骨構造を増加し、または改良するために、行なわれた。エル・エルガード等(既出)はイヌリン(RAFTILINE(登録商標)ST)またはオリゴフラクトース(RAFTILOSE(登録商標)P95)のいずれかを15g/日投与した回腸を切開したボランティアのミネラルバランスを測定した。イヌリンもオリゴフラクトースのいずれをも摂取しない場合、小腸からのミネラルの排出を変えることが分かったので、ミネラル吸収に及ぼすイヌリンおよびオリゴフラクトースの効果は小腸で行なわれるのではなく、本質的に大腸(また結腸と称する)で行なわれることが確認された。健康な成人男性(代謝バランス方法)によるシー・コードレイ等(Eur.J.Clin.Nutr.,51(6),375−380,1997)による研究では、1日当りイヌリン40gの食物摂取によりCa吸収が有意に増加することを示した。健康な青年男性による研究では(2重安定アイソトープ方法)、イー・ファンデンホイベル等(Am.J.Clin.Nutr.,69,544−548,1999)はオリゴフラクトース(RAFTILOSE(登録商標)P95)を15g/日摂取によりCa吸収が有意に増加することを見出した。
【0028】
オリゴフラクトースおよびイヌリンの摂取に起因する有利な栄養効果は明らかに大腸におけるこれらの発酵の結果である。しかし、エム・ローバフロイド(既出)が報告するように、イヌリンの発酵速度はオリゴフラクトースのものよりはるかに遅い。
【0029】
さらに、ヒトふん便スラリーによるインビトロの実験では(未発表結果)、長鎖イヌリン(すなわち、
【数22】


を有するイヌリン)は本質的にオリゴフラクトース(すなわち、(DP)<10のイヌリン)を含まない場合、その発酵は殆んど開始しないことが発明者により示された。
【0030】
一方ではイヌリン、特に長鎖イヌリンの栄養改良効果、および他方ではイヌリン、特に長鎖イヌリンの大腸における困難かつ遅い発酵の開始およびその結果として生ずる低発酵速度、の上記観察は明らかにヒトおよび哺乳動物の最大限に栄養利益を得るために長鎖イヌリンの使用を限定し、および抑止さえする技術的問題に到達する。
【0031】
さらに、これまで開示された多くの栄養研究では、比較的多量のオリゴフラクトースまたはイヌリンの1日消費量、すなわち、ヒトの研究では15g〜40g/日およびラットの研究では飼料の2.5%〜10重量%および20重量%もが使用された。ヒトに外挿すると、2.5〜10重量%のオリゴフラクトースまたはイヌリンを含有するラット飼料は約15g〜60g/日のオリゴフラクトースまたはイヌリン量に相当する。このような比較的高い1日量も栄養目的、特にヒトに有利に改良された栄養効果を生むために、イヌリンの使用は更に技術的問題を構成する。何故なら、既知のように、このような比較的高用量は非常に高度の皷腸、非常に高度の腸内圧、腸けいれんおよび下痢のような腸に副作用を起こしうるからである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0032】

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
ヒト、哺乳動物その他の脊椎動物に対し、既知イヌリン製品と比較して腸に副作用を与えず、改良された栄養性を供する新規イヌリン製品およびその組成物を供することが本発明の目的である。
【0034】
ヒト、哺乳動物その他の脊椎動物の大腸における細菌フローラを調整し、かつその生物におけるイヌリンの発酵パターンを調整する新規イヌリン製品およびその組成物を供することが本発明の別の目的である。
【0035】
ヒト、哺乳動物その他の脊椎動物に改良された栄養効果、特にミネラル吸収の増加を生ずる製品および組成物の製造にこの新規イヌリン製品および組成物の使用を供することが本発明のそれ以上の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0036】
改良イヌリン製品の探求において、発明者はこのようなイヌリンの使用に対する上記の反対の指摘にも拘らず、1つ以上の上記その他の問題解決を供する長鎖イヌリンのような、難発酵性イヌリンを含む新規イヌリン製品を見出した。
【0037】
本発明の1態様によれば、本発明のイヌリン製品は易発酵性イヌリン成分(以下EFI)および難発酵性イヌリン成分(以下HFI)を10/90〜70/30(EFI/HFI)の特定重量比で含む混合物から成る。
【0038】
易発酵性イヌリン(EFI)とは、本発明ではヒトおよび哺乳動物の大腸の基部(上昇部分)で完全に、またはほとんど完全に発酵される直鎖および分枝イヌリン型製品を意味する。一般的なEFIは短鎖イヌリン(すなわち、(DP)<10を有するイヌリン)およびリュウゼツランイヌリン(すなわち、分枝イヌリン、一般に14〜16の
【数23】


を有する)である。
【0039】
短鎖イヌリンは全体で5%未満が好ましく、一層好ましくは3%未満、(DP)=8および(DP)=9(全体のイヌリンの重量%基準)のイヌリンを少量含む主として2〜7の範囲の(DP)を有することが好ましい。好ましい短鎖イヌリンはチコリイヌリンを酵素加水分解して得たオリゴフラクトースである。
【0040】
難発酵性イヌリン(HFI)とは、ここでは大腸の基部で発酵が殆んど開始せず、かつ遅い速度であるがヒトおよび哺乳動物の大腸の末端部分(横断部分および/または上昇部分)で主として発酵される直鎖および分枝イヌリン型製品を意味する。一般的なHFIは長鎖イヌリン(すなわち、
【数24】


を有する直鎖および分枝イヌリン)および、ヒトおよび哺乳動物の大腸の基部で容易に、かつ有意に発酵できない特別の結晶形または特別の物理的外観形のイヌリンである。
【0041】
長鎖イヌリンは好ましくは少なくとも23、一層好ましくは少なくとも25、尚一層好ましくは少なくとも約30の
【数25】


を有し、全体で好ましくは5%未満、一層好ましくは3%未満の(DP)=9および(DP)=10のイヌリン(%は全イヌリンに対する重量%である)を含有する。
【0042】
好ましいHFIは
【数26】


、好ましくは
【数27】


、一層好ましくは
【数28】


を有するチコリ(ここでは長鎖チコリイヌリンと称する)由来の長鎖イヌリンであり、別の好ましいHFIは細菌起源のイヌリンである。
【0043】
好ましい態様では、本発明イヌリン製品はリュウゼツランイヌリンを含まず、短鎖イヌリンから成るEFI成分および長鎖イヌリンであるHFI成分の混合物から成り、このEFI/HFI重量比は10/90〜70/30の範囲であり、この製品では(DP)=9および(DP)=10を有するイヌリン全含量は最高で5%、好ましくは最高3%、一層好ましくは最高2%、もっとも好ましくは最高1%(%は全イヌリンに対する重量%であり、エル・デリンヒーア等(既出)によるガス液体クロマトグラフィ(GLC)分析により測定)である。
【0044】
他の好ましい態様では、本発明のイヌリン製品はリュウゼツランイヌリン、好ましくは約14〜約17の範囲の
【数29】


を有する天然リュウゼツランイヌリン、またはリュウゼツランイヌリンと短鎖イヌリンの任意の混合物から成るEFI成分および長鎖イヌリンであるHFI成分の混合物から成り、EFI/HFI重量比は10/90〜70/30の範囲にあり、この製品では(DP)=9および(DP)=10を有するイヌリンの全量は最高で5%、好ましくは最高で3%、一層好ましくは最高で2%、もっとも好ましくは最高で1%(%は全イヌリンに対する重量%であり、エル・デリンヒーア等(既出)によるGLCにより測定した)である。
【0045】
本発明による好ましいイヌリン製品では、EFI/HFIのこの重量比は好ましくは20/80〜65/35、一層好ましくは35/65〜65〜35、尚一層好ましくは40/60〜45/55、一般には約50/50の範囲である。
【0046】
一層好ましい態様では、本発明イヌリン製品はEFI成分としてオリゴフラクトースおよびHFI成分として長鎖チコリイヌリンを10/90〜70/30の範囲のEFI/HFI重量比の混合物から成り、製品では(DP)=9および(DP)=10を有するイヌリン全含量は最高で5%、好ましくは最高3%、一層好ましくは最高2%、もっとも好ましくは最高1%(%は全イヌリンに対する重量%であり、GLCにより測定)である。非常に好ましい態様では、イヌリン製品のEFI/HFI重量比は35/65〜65/35、もっとも好ましくは40/60〜45/55の範囲である。
【0047】
本発明のそれ以上の非常に好ましい態様によれば、本発明のイヌリン製品は工業用イヌリン製品であり、これはEFI成分として工業用短鎖イヌリンまたはリュウゼツランイヌリンまたはその任意の混合物およびHFI成分として工業用長鎖イヌリンの混合物から成り、EFI/HFIの重量比は10/90〜70/30、好ましくは35/65〜65/35、もっとも好ましくは40/60〜45/55で、製品中(DP)=9および(DP)=10を有するイヌリン全含量は最高で5%、好ましくは最高3%、一層好ましくは最高2%およびもっとも好ましくは最高1%(%はGLCにより測定した全イヌリンに対する重量%である)である。
【0048】
本発明の工業用イヌリン製品では、EFI(短鎖イヌリン)成分/HFI(長鎖イヌリン)成分の重量比は各成分に含まれる短鎖イヌリンの実際の量および長鎖イヌリンの実際の量の基準で規定され、恐らく存在するであろうグルコース、フラクトースおよびシュクロース量は考慮しない。工業用イヌリン製品の本発明イヌリン製品の実際の量は従ってEFIおよびHFI成分に含まれる短鎖イヌリンの実際の量および長鎖イヌリンの実際の量の合計量に相当する。
【0049】
従って、工業用オリゴフラクトースは本発明の工業用イヌリン成分にEFI成分として使用でき、全体で最高20%、好ましくは最高15%、一層好ましくは最高10%、尚一層好ましくは最高8%、もっとも好ましくは最高5%、のグルコース、フラクトースおよびシュクロース(%=オリゴフラクトース製品の全炭水化物に対する重量%)を含有することもできる。
【0050】
本発明による尚一層好ましい工業用イヌリン製品では、オリゴフラクトース成分は43重量%以上の式Fm(式中、Fはフラクトシルユニットを示し、mは2〜9、好ましくは主として2〜7の範囲の重合度である)を有するイヌリン−型分子から成る。
【0051】
本発明による工業用イヌリン製品のEFI成分として適当な一般的工業用オリゴフラクトースはRAFTILOSE(登録商標)L85、RAFTILOSE(登録商標)L95およびRAFTILOSE(登録商標)P95であり、これらはすべてチコリイヌリンの酵素加水分解により得られるオリゴフラクトース等級である。適当な工業用オリゴフラクトースも既知方法、例えば米国特許5,314,810号明細書記載の方法により蔗糖から酵素による試験管内合成により得ることもできる。適当な工業用リュウゼツランイヌリンはGAVEDIET(登録商標)PRである。
【0052】
本発明の工業用イヌリン製品のHFI成分として適する
【数30】


を有する工業用長鎖イヌリンは10〜20の(DP)を有するイヌリン分子を約45%(%は全炭化化物に対する重量%である)まで含有できる。恐らくは存在する(DP)<10を有するイヌリン分子はEFI成分の部分として計算される。この工業用長鎖イヌリンでは、グルコース、フラクトースおよびシュクロースの含量は通例非常に少なく、一般には約2%未満である(%は全炭水化物に対する重量%である)。
HFI成分として適する一般的工業用イヌリンは
【数31】


、好ましくは
【数32】


を有するRAFTILINE(登録商標)HPのような長鎖チコリイヌリンである。
【0053】
本発明のイヌリン製品は意外なことに有意に改良された栄養性を供し、その経口または経腸摂取量はオリゴフラクトース、中鎖イヌリンおよび長鎖イヌリンのような既知イヌリン製品と比較して、ヒト、哺乳動物その他の脊椎動物に1つ以上の有意に改良された栄養効果/利益を供する。さらに、本発明のイヌリン製品の経口または経腸摂取量は、少しでも可能な場合このような栄養効果を生むために既知イヌリン製品が必要とする1日用量より通常より低い1日用量で、ヒト、哺乳動物その他の脊椎動物に該改良された栄養効果/利益を供する。
哺乳動物は特に犬、猫、馬、ウサギ、豚、子豚および子牛である。
【0054】
本発明のイヌリン製品はヒト、哺乳動物その他の脊椎動物(健康、機能不全または疾病であってよい)の大腸、大腸の基部および末端部分の細菌フローラの組成を急速かつ有意に修正および調整する可能性を有する。
【0055】
機能不全のヒト、哺乳動物その他の脊椎動物とは、身体機能が最適に機能せず、恐らく疾病発現のリスクが高く、または後になって病気を発現する病気ではない動物を意味する。
【0056】
次の仮説にしばられるものではないが、本発明者らは本発明のイヌリン製品の改良された栄養利益は特定重量比のEFI成分とHFI成分の存在に起因すること、この特定重量比は該イヌリン製品中の特定量の易発酵性イヌリンがヒト、哺乳動物その他の脊椎動物の大腸基部のビフィズス菌その他の有用細菌の生育および代謝活性を選択的に刺激するようなものであり、したがって現在の細菌フローラを有利な細菌から成る一層多くの菌フローラ組成に、および望ましくない細菌を現在の菌フローラ組成より一層少ない菌フローラに修正および調整し、およびこれらの活性化細菌は本発明イヌリン製品の特定量の未変化難発酵性イヌリンを大腸の基部から末端部に引き寄せることを仮定する。末端部分に到達すると、EFI欠乏の圧力下で(大腸の基部で細菌により消費される)、活性化細菌はHFIの発酵を開始し、従って大腸の末端部(横および上昇部分)で急速かつ完全に発酵される。こうして本発明イヌリン製品は一方ではその発酵がもっとも有利な大腸の末端部分にほとんど未変化で到達するHFI成分を供するが、他方ではそのEFI成分により、本発明イヌリン製品は大腸の末端部分におけるHFIの発酵が活性化細菌により容易に出発し、完全発酵まで十分に続行されることを確保し、順次1つ以上の改良されたイヌリン関連栄養効果/利益を供する結果になる。即ち、本発明イヌリン製品はヒト、哺乳動物その他の脊椎動物の大腸、特に大腸の末端部におけるイヌリンの発酵パターンを修正および/または調整する可能性を有する。
【0057】
それ以上の態様では、本発明はEFI成分およびHFI成分を上記の特定重量比で混合することにある、本発明によるイヌリン製品の製造方法に関する。混合は例えば、成分の乾燥混合または成分の湿式混合によるような常法技術により行なうことができ、任意には常法技術、例えば噴霧乾燥により乾燥形の生成イヌリン製品を単離できる。湿式混合技術は(a)液体に溶解、分散または懸濁した成分の混合、場合により次に例えば噴霧乾燥のような既知技術により単離する、(b)乾燥形(好ましくは粉末形)、ニート形または溶液、分散液または懸濁液の成分の1つをニート形、溶液、分散液または懸濁液の他の成分中に混合、任意には次に生成イヌリン製品を既知技術、一般には噴霧乾燥により単離する、(c)各成分の溶液、分散液または懸濁液を別々に製造し、次にこれらを乾燥し、本発明の生成イヌリン製品を共乾燥技術、特に共噴霧乾燥により単離し、および(d)粉末形の該成分の乾燥混合物は液体または蒸気相の水で加湿することにより凝集させ、次いで加湿混合物を熱風の存在で、一般には顆粒化室で乾燥し、次に生成粒子を冷却および単離することを含む。次に粒子は所望粒度を有する本発明イヌリン製品を篩別して単離することができ、その間目的サイズ以外の粒子は再循環することができる。
【0058】
本発明のイヌリン製品は特定重量比の両成分を共乾燥、好ましくは共噴霧乾燥することにより、または噴霧乾燥工程中1成分の粉末ジェットを第2の粒状形成分と所望特定重量比で、乾燥室で熱風の存在で噴霧乾燥することにより製造することが好ましく、こうして共乾燥粒子または顆粒を形成する。形成粒子または顆粒の単離は通例的に行なうことができる。
【0059】
場合により、混合方法、一般には噴霧乾燥工程を含む混合方法は許容しうる微生物学的品質を有するイヌリン製品を製造するために通例のUHT(超高温)処理を含むことができる。
【0060】
本発明のイヌリン製品の製造に使用する液体はかなりの程度に成分の加水分解を誘発しないのが望ましい。そうでなければ成分の所要特定重量比はもはや満たすことができないからである。もっとも適当な液体は水であり、これは短鎖イヌリンおよびリュウゼツランイヌリン、および長鎖イヌリンに対し良い溶媒である(少なくとも約80℃以上の温度で)。
【0061】
湿式混合方法のプロセス条件は適切でなくてはいけない。このことは液体の種類、溶液、分散液または懸濁液のpH、温度および保持時間(すなわち、成分および/または形成イヌリン製品がこの条件で保留される時間)を含むプロセスパラメータの組合せを選択し、成分または生成イヌリン製品の加水分解または分解が全く起きないか、又は有意に起きないような方法で選択される。
【0062】
他の態様では、本発明は有効量の本発明のイヌリン製品、および1つ以上の食用としてまたは医薬用として許容しうる成分を含有する組成物に関する。代表的組成物は食品、飼料、飲料、機能性食品、機能性飼料、薬剤および医薬品(予防組成物および治療組成物を含む)およびその中間物を含む。
【0063】
機能性食品または飼料とは、含有する伝統的栄養素以上の健康利益を供しうる食品または飼料成分を含有する食品または飼料を意味する(Institute of Medicine of the National Academy of Sciences(米国、1994)による定義)。
【0064】
食用としてまたは医薬品として許容しうる成分は糖(例えば、グルコース、フラクトース、シュクロース、ラクトース、ガラクトース、マルトース、イソマルチュロース)、ポリオール(例えば、ソルビトール、ラクチトール、マルチトール、イソマルト、マンニトール、キシリトール)、マルトデキストリン、甘味料、水素添加グルコースシラップ、食品または飼料添加物、食品または飼料成分、食品または飼料中間物、食品または飼料製品、液体、飲料、ミネラル源、特にカルシウム、マグネシウムおよび鉄源、医薬的に許容しうる補形薬、治療活性物質、薬剤および1つ以上の活性成分を含有する医薬組成物から成る群から選択することが好ましい。
【0065】
有効量とは、組成物を経口または経腸的に、好ましくは規則正しく1日用量で摂取する場合、ヒト、哺乳動物その他の脊椎動物に改良された栄養効果/利益を供する本発明イヌリン製品量を意味する。
【0066】
本発明による特に有利で、好ましい組成物は、例えば乳製品および塩およびカルシウム、マグネシウムおよび鉄の複合体のような、1つ以上のミネラル源、特にカルシウムおよび/またはマグネシウムおよび/または鉄源の食用または医薬的に許容しうる生物利用性源が存在する本発明イヌリン製品を含む。
【0067】
一般に本発明組成物の1日用量に含まれる該ミネラル源の生物利用性ミネラル量は、該ミネラルの推奨1日用量(RDI値)に相当する量に等しい。しかし、該組成物は推奨1日用量より少なく、または多く該生物利用性ミネラルを含有することもできる。
【0068】
本発明による組成物は常法技術、例えば本発明イヌリン製品と少なくとも1つの食用または医薬的に許容しうる成分とを混合し、または別法では本発明による特定重量比のEFI成分およびHFI成分と1つ以上の該食用または医薬的に許容しうる成分とを混合することにより製造でき、場合により次に得た組成物を通例技術により所望形にする。本発明組成物は固体、クリームまたはペーストのような半固体、ゲル、液体、分散液、懸濁液または乳濁液として任意の望む形状を採ることができる。
【0069】
組成物は例えば、すべての種類の食品、飼料、飲料、機能性食品および機能性飼料の形で、例えばパン、クッキーおよびビスケット、チーズおよび他の乳製品、チョコレート、ジャム、プリンおよび他の乳製品デザート、スプレッド製品、冷凍デザートおよびアイスクリームとして、医薬用組成物および薬剤の形で、例えば粉末、集合体、顆粒、錠剤、被覆錠剤、ロゼンジ、カプセル、飲料、シラップ、管給与用、経腸摂取用、経口投与用および経腸投与用組成物として供すことができる。
【0070】
さらに、本発明のイヌリン製品およびその組成物は消費者が直接使用できる形および/または包装で、例えば錠剤、顆粒または粉末形で、または単位用量の包装形で供される製品または組成物である消費者製品形であることができる。
【0071】
それ以上の特徴では、本発明は本発明によるイヌリン製品または組成物の、食品、飼料、飲料、消費者用製品、機能性食品、機能性飼料、医薬品、薬剤、またはその中間物としての使用に関する。
【0072】
それ以上の特徴では、本発明は好ましくは1日用量の経口および/または経腸摂取または投与により、大腸、特に大腸の末端部分の細菌フローラ組成を修正および調整し、および/または健康の、機能不全または疾病のヒト、哺乳動物その他の脊椎動物の発酵パターンを修正および調整し、およびヒト、哺乳動物その他の脊椎動物に(生物は健康、機能不全また疾病でありうる)1つ以上の改良されたイヌリン連合栄養効果/利益を供する本発明によるイヌリン製品または組成物の使用に関する。
【0073】
それ以上の態様では、本発明は食品、飼料、飲料、消費者製品、組成物、機能性食品、機能性飼料、医薬品、薬剤またはその中間物としての使用に対し、特に大腸、特に大腸の末端部分の細菌相組成を修正しおよび調整することに対し、およびヒト、哺乳動物その他の脊椎動物(生物は健康、機能不全または疾病でありうる)に1つ以上の改良されたイヌリン連合栄養効果/利益を供することに対する本発明によるイヌリン製品および組成物に関する。
【0074】
尚それ以上の態様では、本発明は組成物、食品、飼料、飲料、消費者製品、機能性食品、機能性飼料、医薬品、薬剤、またはその中間物の製造に対し、特に大腸、特に大腸の末端部分の細菌フローラを修正し、調整することに対し、イヌリンの発酵パターンを修正し、調整することに対し、および健康、機能不全または疾病のヒト、哺乳動物その他の脊椎動物に1つ以上の改良されたイヌリン連合栄養効果/利益を供することに対し、本発明によるイヌリン製品および組成物の使用に関する。
【0075】
該改良されたイヌリン関連栄養効果/利益は、特に結腸、尚特に結腸の末端部分で、短鎖脂肪酸(SCAの)のような有利な代謝産物の産生および細菌バイオマスの産生、結腸pHの低減、ビフィズス菌数の増加と同時に起こる望ましくない、および/または病原菌数の同時減少を含む、特に大腸の末端部分におけるプレバイオチック作用および/またはビフィズス菌産生効果を含み、これは順次腸機能不全、障害および疾病の予防および治療を有利にする、食物繊維効果を含む。
【0076】
さらに、該改良栄養効果/利益は脂質代謝の調整、免疫系の刺激、癌のリスク低減、および癌、特に乳癌および結腸癌に対する予防および治療効果も含む。
【0077】
それ以上の効果/利益は健康機能不全または病気のヒト、哺乳動物その他の脊椎動物で、身体のミネラル、特にカルシウムおよびマグネシウムの吸収改良、骨ミネラル密度および骨構造の改良、およびヒト、特に閉経後の婦人、胃を切除したヒト、老人、病人、特に骨粗しょう症患者の骨ミネラル損失の進行および骨しょう症を防止し、遅らせ、抑制し、または有意に低減することを含む。
【0078】
さらに、該効果/利益は成長する子供、成長する青年、生長する哺乳動物その他の脊椎動物に強い骨格を構築し、ヒトの最大骨量を増加することもでき、これは順次骨のミネラル損失および骨しょう症を、特に閉経後の婦人では生涯で遅くなるように防止し、または延期することができる。
【0079】
さらに、発明者らは意外なことに、本発明のイヌリン製品に存在するEFI量は、該製品に存在するHFI量が大腸の末梢部分で容易かつ完全に発酵するという、大腸菌フローラに対し明らかな活性化効果を示すことを見出した。本発明のイヌリン製品のこの性質は、改良された栄養効果/利益が、少しでもできる場合、同様の効果を得るのに必要な既知イヌリン製品の1日用量と比較して該イヌリン製品の1日用量が更に低くても得ることができる事実に帰着する。ヒトにおけるこの改良された栄養効果/利点、例えばミネラル吸収の改良は、イヌリン製品自体として(工業用イヌリン製品も含む)または組成物で(gは本発明によるイヌリン製品の実際のgである)、成人に本発明イヌリン製品を約4gという少ない1日用量で実際に既に得られる。
【0080】
成人にこの改良された栄養効果/利益を生むに適する本発明のイヌリン製品の実際量の1日用量は好ましくは約50mg〜約150mg/日/kg体重に相当する約4g〜約12g、一層好ましくは約6g〜約10gの範囲で、乳児および子供では1日用量は好ましくは約40mg〜約400mg/日/kg体重の範囲である。本発明のイヌリン製品の該1日小用量は、少しでもありうる場合、同様の効果/利点を生ずるのに必要な既知イヌリン製品のむしろ相当する大量(約15g〜約40g/日の範囲)と比較してイヌリン摂取の安心感を増すので、ヒトの場合かなりの付加的利益となる。さらに、イヌリンの該1日小摂取量の結果、ヒトは皷腸、腸圧、浮腫、腸けいれんおよび/または下痢のようなむしろ大量のイヌリン摂取としばしば関連する腸の副作用に遭遇しないであろう。
【0081】
本発明のイヌリン製品の特定の改良された栄養効果/利益はヒトおよび哺乳動物に対し本明細書に明白に開示されているが、本発明のイヌリン製品の経口および/または経腸摂取も、他の脊椎動物で、ヒトおよび哺乳動物の消化系と比較して恐らく異る消化系であるに拘らず、1つ以上の該改良された栄養効果/利点を生むことは注目しなければならない。脊椎動物は魚類、例えば鮭およびヒラメ、水陸両生動物、爬虫類および鳥類、例えばダチョウおよび家禽、特に鶏および七面鳥を含む。
【0082】
本発明は下記例によりさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】EFI(主として2〜7の(DP)を有するオリゴフラクトース)とHFI(約25
【数33】


を有するチコリイヌリン)の45/55重量比の混合物から成る本発明によるイヌリン製品のジオネックス形クロマトグラムを示す。
【実施例】
【0084】
(実施例1) カルシウムの吸収に及ぼすオリゴフラクトースおよび長鎖イヌリンと比較した本発明によるイヌリン製品の摂取効果を評価するラットの研究
カルシウムの吸収は4群のウイスター雄ラットで測定した(6週令、体重160〜180gの9または10匹の群)。
・群1:対照群、米国栄養研究所(AIN)1976によるミネラル含量を有するAIN推奨量に相当する標準半合成飼料を給与する、
・群2:主として2〜7の(DP)を有する工業用オリゴフラクトースを含有する該標準半合成飼料を給与する群、
・群3:約25の
【数34】


を有する工業用長鎖チコリイヌリンを含有する該標準半合成飼料を給与する群、
・群4:主として2〜7の(DP)を有する工業用オリゴフラクトースと約25の
【数35】


を有する工業用長鎖チコリイヌリンのEFIの実際の量/HFIの実際の量の重量比45/55から成る本発明によるイヌリン製品を含有する該標準半合成飼料を給与する群(EFI/HFI混合物は共噴霧乾燥により製造し、図1の製品に相当する)。
3週間、本飼料に対しラットを徐々に順化させた後、ラットは代謝ケージで4週間飼育し、10重量%の試験オリゴフラクトースまたはイヌリン製品を含有する各飼料を与えた(100g飼料+100g水/日)。飼料摂取量は監視され、第4週の最後の4日、ふんおよび尿を集めて、カルシウムの消化吸収を測定した。尿試料中のカルシウムは原子吸光度計で測定した。飼料の試料および凍結乾燥および粉砕したふんの試料は500℃で焼成し、灰は硝酸/過酸化水素に採取し、ミリ−Q−ウオータで稀釈後、カルシウムは原子吸光分光分析法により測定した。
消化吸収量は次式により計算した。
・1日消化吸収量=経口摂取量−ふんによる排泄量、
・消化吸収率%=100×{(経口摂取量−ふんによる排泄量)/経口摂取量}。
結果は表1に示す。表1のデータは対照群と比較して、かつカルシウムの尿排泄量が4群すべてで相違しなかったことを考慮して、カルシウム吸収量はすべての試験群で増加したが、群4のカルシウム吸収量の増加(約20%だけ)のみが対照群に対し統計的に有意であることが分かったことを示す。
【0085】
【表1】

【0086】
(実施例2) 若い女子のカルシウム吸収に及ぼすオリゴフラクトースと比較した本発明イヌリン製品の摂取効果を評価するヒトの研究
カルシウム吸収は若い健康な女子(11〜14才、平均体重44kg)で測定した。倫理的承認とインフォームドコンセントはすべての場合に得た。500mg〜1400mg/日を習慣的にカルシウム摂取する被検者のみを研究のために選んだ。慣性胃腸病、腎不全症、またはカルシウムホメオスタシス障害を有する場合、処方薬剤を服用し、喫煙する場合、避妊用ピルを服用している場合、又は年令に対し90%数以上の体重を有する場合、研究から除外した。被験者はランダム化、二重盲検、交差計画を使用して研究した。被験者は2つの別の群にランダム化し、3週間毎日オリゴフラクトースまたは本発明イヌリン製品の4g供試品の2つの小袋および3週間毎日4gプラセボ供試品の2つの小袋を受取った。研究は2週の洗浄期間により分離した。被験者はオリゴフラクトースまたは本発明イヌリン製品およびプラセボをランダム順序で供し、研究者には処理の割当ては隠した。
2つの同一プロトコルを同時に行なった。プロトコルI(n=30)では、試験製品は主として2〜7の(DP)を有する工業用オリゴフラクトースであった。プロトコルII(n=29)では、試験製品は本発明によるイヌリン製品であり、これは主として2〜7の(DP)を有する工業用オリゴフラクトースと約25の
【数36】


を有する工業用長鎖チコリイヌリンの45/55重量比(短鎖イヌリンの実際の量と長鎖イヌリンの実際の量の合計含量の重量比)の混合物から成る本発明によるイヌリン製品であり、共噴霧乾燥により製造し、図1の製品に相当する。双方のプロトコルでは、プラセボはオリゴフラクトース/イヌリンと同じ方法で包装し、提供した。各3週の順化期間が終りに(8g/日に)、カルシウム吸収は予め確認された二重トレーサー安定アイソトープ技術を使用して測定した。さらに、基準線尿試料は被験者から収集した。被験者は低カルシウムの朝食およびオリゴフラクトース、イヌリン製品またはプラセボの4gの1つの小袋および10mcgの46カルシウムを添加した一杯のカルシウム強化オレンジジュースを消費した。朝食直後に、1.5mgの42カルシウムを2〜3分で静脈内に注入した。昼食は約400mgカルシウムをカルシウム強化オレンジジュース、乳またはヨーグルトのいずれかとして含んだ。夕食はカルシウム強化オレンジジュース、10mcgの46カルシウムおよび別のオリゴフラクトース、イヌリン製品またはプラセボの4g小袋の別の供試品を含んだ。被験者は8週の研究期間中毎日約1300mgのカルシウムを消費した。48時間の尿収集はアイソトープ投与直後に開始した。カルシウム吸収は48時間の収集尿の経口および静脈アイソトープの累加分別排泄物の比により測定された。試料は蓚酸塩沈澱方法を使用して精製し、アイソトープ比は熱イオン化磁気セクター質量分光分析法により測定した。
コンプライアンスは開封および未開封小袋数により評価し、説明されない任意の小袋は未開封と仮定した。オリゴフラクトースおよび本発明イヌリン製品に対するコンプライアンスは表2に示すデータに示すように非常に良好であった。
【0087】
【表2】


カルシウム測定値の結果は表3に示す。
【0088】
【表3】


表3の結果はプロトコルIとプロトコルII間でシュクロース(プラセボ)によるカルシウム吸収に有意な差(P=0.89)はなかったが、オリゴフラクトースはカルシウムを有意に変えなかったことも示す。しかし、本発明イヌリン製品ではカルシウム吸収の有意な増加がプラセボに対し、およびオリゴフラクトースに対しても得られ、この増加はすなわち31.8〜38.2%で、カルシウム吸収の20%の相対的増加に相当する。
さらに、尿のカルシウム排泄の研究は表4に示すデータから分かるように、任意の研究群間の尿カルシウム排泄に有意の差はなかったことが示された。
上記試験から、現在のカルシウムの1日推奨摂取量で(約1300mg/日、青年女子に対し)、本発明イヌリン製品の8g/日の摂取量により尿カルシウム排泄を代償的に増加せずにカルシウム吸収を有意に増加するが、同じ試験条件下で同じ住民によるオリゴフラクトース8g/日の摂取ではカルシウム吸収を有意に増加しなかった。
【0089】
【表4】

【0090】
(実施例3) マグネシウムの吸収に及ぼすオリゴフラクトースと比較して本発明イヌリン製品の摂取効果を評価するラットの試験
マグネシウム吸収はウイスター雄ラットで測定した(9または10ラット群、6週令、160〜180g体重):
・群1:対照群、AIN1976によるミネラル含量を有するアメリカ栄養研究所の推奨量に相当する半合成飼料を給与、
・群2:主として2〜7の(DP)を有する工業用オリゴフラクトースを含有する半合成飼料を給与、
・群3:工業用オリゴフラクトース(主として2〜7の(DP)を有する)および工業用長鎖チコリイヌリン(約25の
【数37】


を有する)を短鎖イヌリンの実際の量/長鎖イヌリンの実際の量の重量比45/55で含有する標準半合成飼料を給与、これは共噴霧乾燥により製造し、図1の製品に相当する。
3週間、この飼料に除々に順化させた後、ラットは代謝ケージで4週間飼育し、10重量%の試験オリゴフラクトースまたはイヌリン製品を含有するそれぞれの飼料を給与した(100g飼料+100g水/日)。飼料摂取を監視し、第4週の最後の4日のふんおよび尿を集め、マグネシウムの消化吸収を測定した。マグネシウムは尿、ふんおよび飼料試料で原子吸光分光分析法により測定し、消化マグネシウム吸収は実施例1に示すように計算した。
結果は表5に示す。
【0091】
【表5】


表5のデータは、対照群と比較して群2および群3でマグネシウム吸収は統計的に有意に増加し、特に群3では約57%の相対的マグネシウム吸収増加であること、およびマグネシウムの吸収増加はオリゴフラクトースより本発明イヌリン製品は一層著明であることを示す。
【0092】
(実施例4) ラットの脂質代謝に及ぼすオリゴフラクトースおよび長鎖イヌリンと比較して本発明イヌリン製品の摂取効果の評価
脂質代謝に及ぼすオリゴフラクトースとイヌリン製品の効果をズッカー雄ラットで測定した。ズッカーラットはレプチン受容体の突然変異を有し、これらのラットは急速に無脂肪肉組織の代りに脂肪組織を発達させ、さらに特徴的高トリグセリド血症、インシュリン耐性および脂肪肝として存在する。
次のラットの群(7匹ラットの群、5週令)を試験に含めた。
・群1:対照群、標準飼料を給与、
・群2:主として2〜7の(DP)を有するオリゴフラクトースを含有する標準飼料を給与、
・群3:
【数38】


約25の長鎖チコリイヌリンを含有する標準飼料を給与、
・群4:主として2〜7の(DP)を有するオリゴフラクトースおよび
【数39】


約25を有する長鎖チコリイヌリンから成り、短鎖イヌリンの実際の量/長鎖イヌリンの実際の量の重量比45/55を有する本発明イヌリン製品を含有する標準飼料を給与。
約1週間この飼料(対照試料またはそれぞれ5重量%のオリゴフラクトース、長鎖イヌリンまたは本発明イヌリン製品を含有する飼料)に順化させた後、ラットは10重量%の各試験製品を含有する試験飼料を6週間給与し、次に犠牲にした。次に標準技術により、パラメータの脂肪組織重量、肝重量、肝のトリグリセリド濃度および肝の脂肪酸合成酵素活性を測定した。
結果は表6に示す。
【0093】
【表6】


表6のデータから、本発明イヌリン製品はオリゴフラクトースおよび直鎖イヌリンと比較して脂質代謝に対しもっとも明白な効果を有することが明らかになる。
【0094】
(実施例5) ラット結腸のアゾキシメタン(AOM)誘発発癌に及ぼす本発明イヌリン製品の効果の評価
発癌は複合多工程プロセスであることが知られ、開始(イニシエーション)、促進(プロモーション)、進行(プログレッション)と称される通常3段階で起こる。開始は或る種の化学物質のような発癌剤に正常な細胞が暴露されると、細胞の選択的成長を促進するゲノムレベルの変化を来たすと定義される。促進は開始を受けた細胞のクローン発現を含み、即ち、形態的および/または表現型変化と一般に関連する。進行は悪性度および転移と関連する遺伝子型および表現型変化を含む。
異常陰窩病巣(ACF)は推定上の前駆病変であり、そこから腺腫および癌が結腸に発現する。ACF形成の抑制剤は実験室動物の結腸腫瘍の頻度を低減することが示された(エム・ワーゴビッチ等、Cancer Epidemiol.,Biomarkers,Prev.5(5),355−360,1996)。これらの知見に基づいて、動物モデルにACFの誘導は結腸癌に対しその潜在的予防用および治療用の化合物を評価するために使用できる。
例5はラット結腸にAOM誘導ACF形成に及ぼす本発明イヌリン製品の効果を公知イヌリン製品と比較して評価した試験を記載する。試験は次のように行なった。
含まれる動物は雄のフィッシャー344の乳離れしたラットで、1週間対照試料に順化後、所望数の群に分割し、AIN93G飼料をベースとする対照飼料、または対照飼料であるが、コーン澱粉をぎせいにして評価製品(10重量%)を含有する試験飼料を割当てた。飼料および水は自由に供給した。1週間毎の体重および1日の飼料摂取量を記録した。割当飼料に対し2週後、すべての動物に7〜8週令で16mg/kg体重の割合で塩水中のAOM(シグマ社、米国セントルイス)を皮下注射した。最後のAOM注射後8週の給飼期間の終りに、動物はCO2安楽死により殺した。結腸を取り出し、リン酸カリウム緩衝液でフラッシュし、次に一夜10%緩衝化ホルマリンで固定した。結腸は等しい長さの基部および末端部に切断し、これは順次2cm長さの切片に切断した。0.5%メチレンブルーで染色後、切片は光学顕微鏡下でACFまたは腫瘍を試験し、ACFの総数および病巣当りの潜在数を記録した。
データはSAS統計プログラムを使用して解析し、平均値はターキーズ・スチューデンタイズド・レンジ・テストを使用して分離した。
飼料の組成(g/kg)は表7に示す。
【0095】
【表7】


結果:
対照飼料と試験飼料を供与したラット間に体重の増加および1日の平均飼料摂取量に統計的有意差は認められなかった。AOMを含まず、食塩のみ、および対照飼料を給与した小群のラット(ブランコ対照群)は結腸にACF形成の証拠を示さなかった。ACFのAOMによる誘発に関する結果は表8に示す。
【0096】
【表8】


表8から、ラット結腸の基部および末端部でAOM処理によりACFが誘発されたが、末端部で顕著であることが分かる。
表8から、さらにラット結腸の基部および末端部でAOMによるACF誘発はRAFTILINE(登録商標)HP,RAFTILINE(登録商標)ST,RAFTILOSE(登録商標)P95を含む各種イヌリン製品により低減するが、本発明イヌリン製品が特にすぐれることが分かる。またこの低減は対照群と比較した%で供される表9においても示される。
【0097】
【表9】


これらの結果から、本発明イヌリン製品は短鎖イヌリン、標準級チコリイヌリンおよび長鎖チコリイヌリンよりラット結腸のAOM誘発のACF誘導を一層強力に抑制することが明らかに示される。
従って、本発明イヌリン製品は癌発達のリスクの予防および低減に、および癌特に結腸癌の治療に、ヒト、哺乳動物および他の脊椎動物で、短鎖イヌリン、標準級イヌリンおよび長鎖イヌリンよりはるかに有効であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
易発酵性イヌリン(EFI)成分と難発酵性イヌリン(HFI)成分の混合物から成るイヌリン製品であって、EFI/HFI重量比は10/90〜70/30の範囲であり、EFI成分はリュウゼツランイヌリンを含まずかつ重合度(DP)<10を有する短鎖イヌリンから成り、HFI成分は数平均重合度
【数1】


を有する長鎖イヌリンから成り、かつ(DP)=9および(DP)=10を有するイヌリンの合計含量が最高5%(%は全イヌリンに対する重量%、気液クロマトグラフィ(GLC)により測定)であることを特徴とする、上記イヌリン製品。
【請求項2】
易発酵性イヌリン(EFI)成分と難発酵性イヌリン(HFI)成分の混合物から成るイヌリン製品であって、EFI/HFI重量比は10/90〜70/30の範囲であり、EFI成分はリュウゼツランイヌリンまたはリュウゼツランイヌリンと(DP)<10を有する短鎖イヌリンとの任意の混合物から成り、HFI成分は
【数2】


を有する長鎖イヌリンであり、かつ(DP)=9および(DP)=10を有するイヌリンの合計量が最高5%(%は全イヌリンに対する重量%、GLCにより測定)であることを特徴とする、上記イヌリン製品。
【請求項3】
(DP)=9および(DP)=10を有するイヌリンの合計含量は最高2%である、請求項1または2に記載のイヌリン製品。
【請求項4】
(DP)=9および(DP)=10を有するイヌリンの合計含量は最高1%である、請求項1または2に記載のイヌリン製品。
【請求項5】
EFI/HFI成分の重量比は35/65〜65/35の範囲である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のイヌリン製品。
【請求項6】
HFI成分は長鎖チコリイヌリンから成る、請求項1〜5のいずれか1項に記載のイヌリン製品。
【請求項7】
工業用イヌリン製品は、EFI成分としてグルコース、フラクトースおよびシュクロースの合計で最高20%(%は全炭水化物に対する重量%である)を含有する工業用オリゴフラクトース、または工業用リュウゼツランイヌリンの混合物、または該オリゴフラクトースと該リュウゼツランイヌリンの任意の混合物、およびHFI成分として工業用長鎖イヌリンの混合物から成り、該工業用成分に含まれる短鎖イヌリンの実際の量/長鎖イヌリンの実際の量の重量比は請求項1、2及び5のいずれか1項で定義されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のイヌリン製品。
【請求項8】
HFI成分は工業用長鎖チコリイヌリンである、請求項7に記載のイヌリン製品。
【請求項9】
短鎖イヌリンはグルコース、フラクトースおよびシュクロースを合計で最高8%(%は全炭水化物に対する重量%である)含有する工業用オリゴフラクトースである、請求項7または8に記載のイヌリン製品。
【請求項10】
EFI成分とHFI成分を特定重量比で乾燥混合し、またはEFI成分とHFI成分を特定重量比で湿式混合し、次いで場合により得たイヌリン製品を乾燥形で単離し、単離工程は場合により噴霧乾燥工程を含むことからなる請求項1〜9のいずれか1項で定義されるイヌリン製品の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項で定義されるイヌリン製品、および1つ以上の食用または医薬品として許容しうる成分を含有する組成物。
【請求項12】
1つ以上の食用または医薬品として許容しうる成分は糖、ポリオール、水素添加グルコースシラップ、マルトデキストリン、甘味料、食品成分、飼料成分、食品添加物、飼料添加物、食品中間物、飼料中間物、食品、飼料、液体食品、飲料、ミネラルの生物利用源、医薬的に許容しうる賦形剤、医薬活性物質、治療活性物質、医薬組成物および薬剤から成る群から選択する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ミネラルの生物利用源はカルシウム源および/またはマグネシウム源および/または鉄源を含有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
食品、飼料、飲料、消費者製品、機能性食品、機能性飼料、医薬組成物又は薬剤である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項で定義されるイヌリン製品を混合し、または請求項1〜9のいずれか1項で定義されるEFI成分とHFI成分を請求項1、2及び5のいずれか1項で定義される重量比で請求項11〜13のいずれか1項で定義される少なくとも1つの他の成分と混合し、場合により次に組成物を所望形にすることから成る、請求項11〜14のいずれか1項で定義される組成物の製造方法。
【請求項16】
食品、飼料、飲料、消費者製品、機能性食品、機能性飼料、医薬品または薬剤として使用するための、請求項1〜9のいずれか1項で定義されるイヌリン製品または請求項11〜13のいずれか1項で定義される組成物。
【請求項17】
組成物、食品、飼料、飲料、消費者製品、機能性食品、機能性飼料、医薬品、薬剤またはその中間物の製造のための、請求項1〜9のいずれか1項で定義されるイヌリン製品または請求項11〜13のいずれか1項で定義される組成物の使用。
【請求項18】
ヒト、哺乳動物または他の脊椎動物の大腸または大腸末端部分の細菌フローラ組成を修正または調整するための、組成物、食品、飼料、飲料、消費者製品、機能性食品、機能性飼料、医薬品または薬剤の製造のための、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
ヒト、哺乳動物または他の脊椎動物の大腸または大腸末端部分におけるイヌリンの発酵パターンを修正または調整するための、組成物、食品、飼料、飲料、消費者製品、機能性食品、機能性飼料、医薬品または薬剤の製造のための請求項17に記載の使用。
【請求項20】
既知イヌリン製品またはその組成物により供される効果と比較して、ヒト、哺乳動物または他の脊椎動物に1つ以上の改良されたイヌリン関連栄養効果/利益を供するための、組成物、食品、飼料、飲料、消費者製品、機能性食品、機能性飼料、医薬品または薬剤の製造のための、請求項17に記載の使用。
【請求項21】
改良されたイヌリン関連栄養効果/利益は食物繊維効果、腸機能の調整、プレバイオチック作用および/またはビフィドジェニシティ、ミネラルの吸収増加、カルシウムおよび/またはマグネシウムおよび/または鉄の吸収増加、骨ミネラル密度の増加、骨ミネラル含量の増加、最大骨量の増加、骨構造の改良、骨ミネラル密度損失の減少、骨構造損失の減少、脂質代謝の調整、免疫系の刺激、癌リスクの予防または低減、結腸癌リスクの予防または低減および乳癌リスクの予防または低減から成る群から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
健康なヒトのカルシウムおよび/またはマグネシウムの吸収を改良するための、組成物、食品、飼料、飲料、消費者製品、機能性食品、機能性飼料、医薬品または薬剤の製造のための、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
骨ミネラルの損失または骨粗しょう症のリスクを予防または低減するために、またはヒトの骨粗しょう症を治療するための医薬品または薬剤の製造のための、請求項17に記載の使用。
【請求項24】
ヒトは閉経後の女性または老人である、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
癌を予防し、癌のリスクを低減し、または癌治療用の医薬品または薬剤の製造のための、請求項17に記載の使用。
【請求項26】
ヒト、哺乳動物または他の脊椎動物の大腸または大腸の末端部分の細菌相組成を修正しまたは調整するための、請求項1〜9のいずれか1項で定義されるイヌリン製品または請求項11〜14のいずれか1項で定義される組成物の使用。
【請求項27】
ヒト、哺乳動物または他の脊椎動物の大腸または大腸末端部分のイヌリンの発酵パターンを修正または調整するための、請求項1〜9のいずれか1項で定義されるイヌリン製品または請求項11〜14のいずれか1項で定義される組成物の使用。
【請求項28】
既知イヌリン製品により供される効果と比較して、ヒト、哺乳動物または他の脊椎動物に1つ以上の改良されたイヌリン関連栄養効果/利益を供するための、請求項1〜9のいずれか1項で定義されるイヌリン製品または請求項11〜14のいずれか1項で定義される組成物の使用。
【請求項29】
改良された栄養効果/利益は請求項21で定義されるものである、請求項28に記載の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2010−120945(P2010−120945A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289616(P2009−289616)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【分割の表示】特願2001−559280(P2001−559280)の分割
【原出願日】平成13年2月14日(2001.2.14)
【出願人】(500562363)テイエンセ スイケラフイナデリユ ナムローゼ フェンノートシャップ (4)
【Fターム(参考)】