説明

核共鳴蛍光画像化を用いた物質の適応走査

核共鳴蛍光を用いて適応走査することにより試料内の核種を検出するための方法は、前記標的試料を光子源からの光子で照らす段階と、1つのエネルギーチャンネルで信号を検出する段階と、前記検出した信号を用いて走査評価パラメータを決定する段階と、前記走査評価パラメータが検出効率基準を満たすか否かを判断する段階と、前記走査評価パラメータが前記検出効率基準を満たすように、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する段階と、1つのエネルギーチャンネルにおける前記信号を所定の核種検出判定基準と比較して核種検出イベントを識別する段階とを含むことができる。別の実施形態では、1つのエネルギーチャンネルで信号を検出する前記段階は、前記標的試料から散乱する光子を検出する段階を更に含むことができる。別の実施形態では、1つのエネルギーチャンネルで信号を検出する前記段階は、前記標的試料を透過すると共に少なくとも1つの基準散乱体から散乱する光子を検出する段階を更に含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の引用】
【0001】
本出願は、2003年11月24日付けで提出された米国特許仮出願第60/524,551号の優先権を主張し、その米国仮出願は参照して本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
本発明は物質の非侵入性走査(例えば、空港、海港、又は他の輸送ターミナルにおける爆発物、核物質、又は輸出入禁止品の検出)に関し、より詳細には核共鳴蛍光を用いた適応走査を行うための方法及び装置に関する。
【0003】
走査方法に関しては満足することが好ましい多くの要件がある。まず、測定値の信頼性を高くして、脅威又は輸出入禁止品を高い検出確率(DP)又は低い誤肯定確率(FP)で検出できることが望ましい。更に、走査方法は、検出率を高く維持し且つ誤肯定イベントの率を低く維持しつつ、可能な限り動作するのが望ましいことがある。更に、こうした検査は、非侵入性且つ非破壊的とするのが好ましいことがある。検査すべき物品がかなり大きい(例えば、輸送コンテナ)こともあるので、透過性放射線を使用したくなる場合もあるが、放射線で走査した物品が放射性にならないことが好ましい。標的を画像化する機能も有益である。本明細書では、核共鳴蛍光画像化(NRFI)を用いてこれら目的を最適に達成する適応方法を提示する。
発明の概要
【0004】
本明細書では、核共鳴蛍光を用いた適応走査によって標的試料において、対象とする1つ又は複数の核種を検出するための方法及び装置を開示する。更に、本明細書では、輸出入禁止品、爆発物若しくは核物質などの脅威、又は他の物質を検出するために、標的試料を非侵襲的に適応走査するための方法及び装置も開示する。
【0005】
代表的な一実施形態では、標的試料内の核種を検出するための方法は、前記標的試料を光子源からの光子で照らす段階と、少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて信号を検出する段階と、前記少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて前記検出した信号を用いて走査評価パラメータを決定する段階と、前記走査評価パラメータが検出効率基準を満たすか否かを判断する段階と、前記走査評価パラメータが前記検出効率基準を満たすように、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する段階と、少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおける前記信号を所定の核種検出基準と比較して核種検出イベントを識別する段階とを含むことができる。別の代表的な実施形態では、前記検出した信号を用いて前記走査評価パラメータを決定する前記段階は、前記少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおける前記信号へのバックグラウンド寄与を特定する段階を更に含むことができる。更に別の代表的な実施形態では、前記検出した信号を用いて前記走査評価パラメータを決定する前記段階は、前記少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおける信号対雑音比を特定する段階を更に含むことができる。更に別の実施形態では、すくなくとも1つのエネルギーチャンネルにおける信号を検出する前記段階は、前記標的試料の前記少なくとも一部から散乱する光子を前記すくなくとも1つのエネルギーチャンネルおいて検出する段階を更に含むことができる。更に別の実施形態では、少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて信号を検出する前記段階は、前記標的試料を透過すると共に少なくとも1つの基準散乱体から散乱する光子を検出する段階を更に含むことができる。
【0006】
別の代表的な実施形態では、潜在的な脅威を探して標的試料を走査するための方法が、前記標的試料に入射する光子の光子源を提供する段階と、前記標的試料から散乱した光子のエネルギースペクトルを測定する段階と、前記標的試料から散乱した光子の前記エネルギースペクトルを用いて少なくとも1つの走査評価パラメータを計算する段階と、前記標的試料から散乱した光子の前記測定エネルギースペクトルを用いて、脅威が検出されたか否かを特定する段階とを含むことができる。脅威が検出された場合、前記方法は、前記少なくとも1つの走査評価パラメータが検出効率基準を満たすか否かを判断する段階を更に含むことができる。仮に前記走査評価パラメータが前記検出効率基準を満たさない場合は、前記方法は、1つ又は複数のシステムパラメータを調節し、且つ拡散光子の前記エネルギースペクトルを測定する前記段階と、走査評価パラメータを計算する前記段階と、脅威が検出されたか否かを判断する前記段階と、前記走査評価パラメータが前記検出効率基準を満たすか否かを判断する前記段階とを繰り返す段階を更に含むことができる。仮に前記少なくとも1つの走査評価パラメータが前記検出効率基準を満たす場合は、前記方法は、脅威検出肯定イベントを識別する段階を更に含むことができる。
【0007】
更に別の代表的な実施形態では、前記走査評価パラメータが検出効率を含むことができ、又、前記検出効率基準が、最小所望検出確率を上回る前記検出確率を含むことができる。更に別の代表的な実施形態では、前記走査評価パラメータが、誤肯定結果を得る確率を含むことができ、前記検出効率基準が、誤肯定結果を得る最大所望確率を下回る前記誤肯定結果を得る確率を含むことができる。更に別の代表的な実施形態では、前記走査評価パラメータが、検出確率及び誤肯定結果を得る確率を含むことができ、更に、前記検出効率基準が、最小所望検出確率を上回る前記検出確率と、誤肯定結果を得る最大所望確率を下回る前記誤肯定結果を得る確率とを含むことができる。
【0008】
別の代表的な実施形態では、潜在的な脅威を探して標的試料を走査するための方法が、前記標的試料に入射する光子の光子源を提供する段階であって、少なくとも幾らかの光子が前記試料を透過する、提供する段階と、前記試料を透過した前記光子の少なくとも幾らかを少なくとも1つの基準散乱体から散乱させる段階と、前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱した光子のエネルギースペクトルを測定する段階と、前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱した光子の前記エネルギースペクトルを用いて少なくとも1つの走査評価パラメータを計算する段階と、前記基準散乱体から散乱した光子の前記測定エネルギースペクトルを用いて、脅威が検出されたか否かを特定する段階とを含むことができる。脅威が検出された場合、前記方法は、前記少なくとも1つの走査評価パラメータが検出効率基準を満たすか否かを判断する段階を更に含むことができる。仮に前記少なくとも1つの走査評価パラメータが前記検出効率基準を満たさない場合は、前記方法は、1つ又は複数のシステムパラメータを調節し、且つ走査評価パラメータを計算する前記段階と、脅威が検出されたか否かを特定する前記段階と、前記走査評価パラメータが検出効率基準を満たすか否かを判断する前記段階とを繰り返す段階を更に含むことができる。仮に前記少なくとも1つの走査評価パラメータが前記検出効率基準を満たす場合は、前記方法は、脅威検出肯定イベントを識別する段階を更に含むことができる。更に別の代表的な実施形態では、前記走査評価パラメータが検出確率を含むことができ、又、前記検出効率基準が、最小所望検出確率を上回る前記検出確率を含むことができる。更に別の代表的な実施形態では、前記走査評価パラメータが、誤肯定結果を得る確率を含むことができ、前記検出効率基準が、誤肯定結果を得る最大所望確率を下回る前記誤肯定結果を得る確率を含むことができる。更に別の代表的な実施形態では、前記走査評価パラメータが、検出確率及び誤肯定結果を得る確率を含むことができ、更に、前記検出効率基準が、最小所望検出確率を上回る前記検出確率と、誤肯定結果を得る最大所望確率を下回る前記誤肯定結果を得る確率とを含むことができる。
【0009】
別の代表的な実施形態では、標的試料内の潜在的脅威を検出するための方法は、光子源を提供する段階と、前記標的試料を前記光子源からの光子で照光する段階と、少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて前記標的試料の少なくとも一部から散乱する光子の強度を測定するための少なくとも1つの光子検出器を提供する段階と、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれにおいて公称バックグラウンド信号を特定する段階と、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれにおいて信号対雑音比を計算する段階と、1つ又は複数のシステムパラメータを調節して、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて収集するデータの信号対雑音比を向上する段階と、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて検出された光子の前記強度が所定の脅威検出基準を満たす場合は、脅威検出イベントを識別する段階とを含むことができる。別の代表的な実施形態では、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階は、前記標的試料の領域における前記光子の実効ドウェル時間を変更する段階と、フィルタを前記光子源に挿入する段階であって、前記フィルタが、選択したエネルギー又はエネルギー領域を備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、挿入する段階のうち1つ又は複数を更に含むことができる。更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階は、前記光子源が、電子ビームに照らされる制動放射線標的を含む場合は、前記電子ビームエネルギーを変更する段階、前記光子源の強度及び/又はコリメーションを変更する段階、1つ又は複数の光子検出器のコリメーションを変更する段階、フィルタを前記少なくとも1つの光子検出器の少なくとも1つの前に挿入する段階であって、前記フィルタが、選択したエネルギー領域内のエネルギーを備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む段階、前記光子検出器の1つ又は複数が前記標的試料を眺める角度を変更する段階、及び/又は前記標的試料に入射する前記入射ビームの前記スポット領域を変更する段階を含むことができる。
【0010】
別の代表的な実施形態では、標的試料内の潜在的脅威を検出するための方法は、光子源を提供する段階と、前記標的試料を前記光子源からの光子で照光する段階と、少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて前記標的試料の少なくとも一部から散乱する光子の強度を測定するための少なくとも1つの光子検出器を提供する段階と、前記標的試料を透過する光子の強度を、前記光子が前記標的試料を照光する前記標的試料上の位置の関数として測定するための透過検出器を提供する段階と、前記標的試料を透過する光子の強度を、前記光子が前記標的試料を照光する前記標的試料上の位置の関数として用いて、更なる走査を行うために、対象とする少なくとも1つの領域を識別する段階と、前記対象とする少なくとも1つの領域の少なくとも1つから前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれ内に散乱する光子の公称バックグラウンド信号を特定する段階と、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれにおいて信号対雑音比を計算する段階と、1つ又は複数のシステムパラメータを調節して、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて信号対雑音比及び/又は統計精度を向上する段階と、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて検出された光子の前記強度が所定の脅威検出基準を満たす場合は、脅威検出イベントを識別する段階とを含むことができる。別の代表的な実施形態では、前記透過検出器がX線撮像装置を含むことができる。更に別の代表的な実施形態では、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階は、前記標的試料の領域における前記光子の実効ドウェル時間を変更する段階と、フィルタを前記光子源に挿入する段階であって、前記フィルタが、選択したエネルギー又はエネルギー領域を備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、挿入する段階のうち1つ又は複数を更に含むことができる。更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階は、前記光子源が、電子ビームに照らされる制動放射線標的を含む場合は、前記電子ビームエネルギーを変更する段階、前記光子源の強度及び/又はコリメーションを変更する段階、1つ又は複数の光子検出器のコリメーションを変更する段階、フィルタを前記少なくとも1つの光子検出器の少なくとも1つの前に挿入する段階であって、前記フィルタが、選択したエネルギー領域内のエネルギーを備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む段階、前記光子検出器の1つ又は複数が前記標的試料を眺める角度を変更する段階、及び/又は前記標的試料に入射する前記入射ビームの前記スポット領域を変更する段階を含むことができる。
【0011】
別の代表的な実施形態では、標的試料内の潜在的脅威を検出するための方法は、光子の光子源を提供する段階と、前記標的試料を前記光子源からの光子で照光する段階と、対象とする少なくとも1つの核種を含む少なくとも1つの基準散乱体を提供する段階と、前記試料を透過した光子を前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱させる段階と、少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱する光子の強度を測定するための少なくとも1つの光子検出器を提供する段階と、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれにおいて公称バックグラウンド信号を特定する段階と、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれにおいて信号対雑音比を計算する段階と、1つ又は複数のシステムパラメータを調節して、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて信号対雑音比を向上する段階と、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて検出された光子の前記強度が所定の脅威検出基準を満たす場合は、脅威検出イベントを識別する段階とを含むことができる。別の代表的な実施形態では、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階は、前記標的試料の領域における前記光子の実効ドウェル時間を変更する段階と、フィルタを前記光子源に挿入する段階であって、前記フィルタが、選択したエネルギー又はエネルギー領域を備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、挿入する段階のうち1つ又は複数を更に含むことができる。更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階は、前記光子源が、電子ビームに照らされる制動放射線標的を含む場合は、前記電子ビームエネルギーを変更する段階、前記光子源の強度及び/又はコリメーションを変更する段階、1つ又は複数の光子検出器のコリメーションを変更する段階、フィルタを前記少なくとも1つの光子検出器の少なくとも1つの前に挿入する段階であって、前記フィルタが、選択したエネルギー領域内のエネルギーを備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む段階、前記光子検出器の1つ又は複数が前記標的試料を眺める角度を変更する段階、及び/又は前記標的試料に入射する前記入射ビームの前記スポット領域を変更する段階を含むことができる。
【0012】
別の代表的な実施形態では、標的試料内の潜在的脅威を検出するための方法は、光子の光子源を提供する段階と、前記標的試料を前記光子源からの光子で照光する段階と、前記標的試料を透過する光子の強度を、前記光子が前記標的試料を照光する前記標的試料上の位置の関数として測定するための透過検出器を提供する段階と、前記標的試料を透過する光子の強度を、前記光子が前記標的試料を照光する前記標的試料上の位置の関数として用いて、更なる走査を行うために、対象とする少なくとも1つの領域を識別する段階と、対象とする少なくとも1つの核種を含む少なくとも1つの基準散乱体を提供する段階と、前記試料の前記対象とする少なくとも1つの領域を透過した光子を、前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱させる段階と、少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱する光子の強度を測定するための少なくとも1つの光子検出器を提供する段階と、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれにおいて公称バックグラウンド信号を特定する段階と、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれにおいて信号対雑音比を計算する段階と、1つ又は複数のシステムパラメータを調節して、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて信号対雑音比を向上する段階と、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて検出された光子の前記強度が所定の脅威検出基準を満たす場合は、脅威検出イベントを識別する段階とを含むことができる。別の代表的な実施形態では、前記透過検出器がX線撮像装置を含むことができる。更に別の代表的な実施形態では、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階は、前記標的試料の領域における前記光子の実効ドウェル時間を変更する段階と、フィルタを前記光子源に挿入する段階であって、前記フィルタが、選択したエネルギー又はエネルギー領域を備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、挿入する段階のうち1つ又は複数を更に含むことができる。更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階は、前記光子源が、電子ビームに照らされる制動放射線標的を含む場合は、前記電子ビームエネルギーを変更する段階、前記光子源の強度及び/又はコリメーションを変更する段階、1つ又は複数の光子検出器のコリメーションを変更する段階、フィルタを前記少なくとも1つの光子検出器の少なくとも1つの前に挿入する段階であって、前記フィルタが、選択したエネルギー領域内のエネルギーを備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む段階、前記光子検出器の1つ又は複数が前記標的試料を眺める角度を変更する段階、及び/又は前記標的試料に入射する前記入射ビームの前記スポット領域を変更する段階を含むことができる。
【0013】
更に別の実施形態では、標的試料内の潜在的脅威を検出するための方法が、光子の光子源を提供する段階と、前記標的試料を前記光子源からの光子で照光する段階と、対象とする少なくとも1つの核種を含む少なくとも1つの基準散乱体を提供する段階と、前記試料を透過した光子を前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱させる段階と、少なくとも1つの基準光子エネルギーチャンネルにおいて、前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱する光子の強度を、前記光子が前記標的試料を照光する前記標的試料上の位置の関数として測定するための少なくとも1つの基準光子検出器を提供する段階と、前記対象とする少なくとも1つの基準光子それぞれにおいて前記基準光子検出器により測定された光子の前記強度を用いて、更なる走査のための対象とする少なくとも1つの領域を識別する段階と、少なくとも1つの散乱光子エネルギーチャンネルにおいて前記標的内の対象とする領域から散乱する光子の強度を測定するための少なくとも1つの散乱光子検出器を提供する段階と、前記対象とする少なくとも1つの散乱光子エネルギーチャンネルそれぞれにおいて、前記少なくとも1つの散乱光子検出器により測定された光子の公称バックグラウンド信号を特定する段階と、前記対象とする少なくとも1つの散乱光子エネルギーチャンネルそれぞれにおいて信号対雑音比を計算する段階と、1つ又は複数のシステムパラメータを調節して、前記対象とする少なくとも1つの散乱光子エネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて信号対雑音比及び/又は統計精度を向上する段階と、前記対象とする少なくとも1つの散乱光子エネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて検出された光子の前記強度が所定の脅威検出基準を満たす場合は、脅威検出イベントを識別する段階とを含むことができる。別の代表的な実施形態では、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階は、前記標的試料の領域における前記光子の実効ドウェル時間を変更する段階と、フィルタを前記光子源に挿入する段階であって、前記フィルタが、選択したエネルギー又はエネルギー領域を備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、挿入する段階のうち1つ又は複数を更に含むことができる。更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階は、前記光子源が、電子ビームに照らされる制動放射線標的を含む場合は、前記電子ビームエネルギーを変更する段階、前記光子源の強度及び/又はコリメーションを変更する段階、1つ又は複数の光子検出器のコリメーションを変更する段階、フィルタを前記少なくとも1つの光子検出器の少なくとも1つの前に挿入する段階であって、前記フィルタが、選択したエネルギー領域内のエネルギーを備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む段階、前記光子検出器の1つ又は複数が前記標的試料を眺める角度を変更する段階、及び/又は前記標的試料に入射する前記入射ビームの前記スポット領域を変更する段階を含むことができる。
【0014】
別に代表的な実施形態では、潜在的な脅威を探して標的試料を走査するための方法であって、前記標的試料に入射する光子の光子源を提供する段階であって、幾らかの光子を前記試料から散乱させ、幾らかの光子を前記試料内に透過させる、提供する段階と、前記標的試料の少なくとも一部を透過した光子の強度を測定する段階と、前記標的試料の前記少なくとも一部を透過した光子の前記測定強度を用いて、更なる検討のため、対象とする少なくとも1つの領域を識別する段階とを含むことができる。別の実施形態では、前記方法は、前記対象とする少なくとも1つの領域に関して、前記標的試料から散乱した光子のエネルギースペクトルを測定する段階と、前記対象とする領域から散乱する光子の前記エネルギースペクトルを用いて、検出確率及び誤肯定結果を得る確率を計算する段階と、前記対象とする領域から散乱した光子の前記測定エネルギースペクトルを用いて、脅威が検出されたか否かを特定する段階とからなる段階を行うことができる。脅威が検出されなかった場合は、前記方法は、前記検出確率が、所定の所望検出確率を満たし或いは上回ったかを判断する段階を更に含むことができる。前記検出確率が所定の前記所望の検出確率を満たし或いは上回った場合は、前記方法は、前記対象とする領域の走査を終了する段階を更に含むことができる。前記少なくとも1つの走査評価パラメータが前記所定の所望検出確率を満たさない或いは上回った場合は、前記方法は、1つ又は複数のシステムパラメータを調節し、且つ前記標的試料から散乱した光子のエネルギースペクトルを測定する前記段階と、前記対象とする領域から散乱する光子の前記エネルギースペクトルを用いて、検出確率及び誤肯定結果を得る確率を計算する前記段階と、前記対象とする領域から散乱した光子の前記測定エネルギースペクトルを用いて、脅威が検出されたか否かを特定する前記段階とを繰り返す段階を更に含むことができる。脅威が検出された場合は、前記方法は、前記脅威検出が誤肯定結果信号である確率が、誤肯定結果を得る所定の所望確率を上回るか否かを特定する段階を更に含むことができる。前記脅威検出が誤肯定信号である確率が、誤肯定結果を得る所定の所望確率を満たす或いは上回った場合は、前記方法は、1つ又は複数のシステムパラメータを調節し、且つ前記標的試料から散乱した光子のエネルギースペクトルを測定する前記段階と、前記対象とする領域から散乱する光子の前記エネルギースペクトルを用いて、検出確率及び誤肯定結果を得る確率を計算する前記段階と、前記対象とする領域から散乱した光子の前記測定エネルギースペクトルを用いて、脅威が検出されたか否かを特定する前記段階とを繰り返す段階を含むことができる。前記脅威検出が誤肯定結果信号である確率が、誤肯定結果を得る所定の所望確率を満たさない又は上回らない場合は、前記方法は、脅威検出肯定イベントを識別する段階とを含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
全体的な理解を可能とするため、幾つかの例示的な実施形態を次に説明するが、通常の技能を備えた当業者であれば、本明細書に記載された装置及び方法を変更及び修正して、他の適切な応用例となる装置及び方法を提供できることや、それ以外の追加及び修正が、本明細書に記載された装置及び方法の範囲から逸脱することなく可能であることは理解するはずである。
【0016】
特記しない限り、ある実施形態の詳細を変える典型的な特徴の実現としてこれらの例示的な実施形態を理解できるはずである。従って、特記しない限り、実例の特徴、構成要素、モジュール、及び/又は様態を、開示した装置又は方法から逸脱することなく、他の方法で、組み合わせたり、指定したり、交換したり、且つ/或いは再編成したりすることができる。加えて、構成要素の形状及びサイズはまた、代表的で、特記しない限り、開示した装置又は方法に影響を与えることなく変更できる。
【0017】
標的に入射する連続エネルギースペクトルを備えた光子ビームは、標的内で核共鳴すなわち励起状態を引き起こすことができ、続いて標的は蛍光を発する。得られた発光スペクトルは、この標的内に含まれる固有の同位元素に一意に関連付けられている。空間情報を分解する能力を備えた検出器システム又は検出器アレーによってこれらのスペクトルが検出されると、照射された体積内に含まれる同位元素の空間的分布の測定が可能となる。
【0018】
非侵入性走査の用途で共鳴散乱(核共鳴蛍光或いはNRFとも呼ぶ)測定を用いた幾つかの代表的システムが、「制動放射線の共鳴蛍光を用いた爆発物検出」と題した米国特許第5,115,459号及び「制動放射線による共鳴蛍光、共鳴吸収、及び他の電磁処理を用いた爆発物及び他の物質の検出」と題した米国特許第5,420,905号に記載されており、両者の内容は参照して本明細書で援用する。
【特許文献1】米国特許5,115,459号公報
【特許文献2】米国特許5,420,905号公報
【0019】
核共鳴蛍光画像化(NRFI)スキャナ構成の代表的な一実施形態の概略図を図1に示した。
【0020】
このシステムは、一定のエネルギー範囲にわたるエネルギースペクトルを備えた光子を発生する光子源12を含む。適切な光子源には、制動放射線源、放射性源からの原子核崩壊を用いたコンプトン広がり(原語:Compton-broadened)光子源、コヒーレント制動放射線、自由電子レーザ、高エネルギー電子からのレーザ後方散乱、又は当業者に公知の他の光子源が含まれる。
【0021】
図示した実施形態では、光子源12は制動放射線源であり、制動放射線標的16に入射する電子ビーム32を発生する電子源14を含むことができる。この電子ビーム32は、標的16に入射して制動放射線光子ビーム34を発生させる。制動放射線標的16の後方には電子32を止めるビームストッパー(図示しない)を設けてもよい。フィルタ52をビームストッパーの後に設けて、例えば、制動放射線ビーム34から低エネルギー光子を除去させたり、特定のNRF線に対応したエネルギー領域の光子を優先的に吸収させたりもしてもよい。コリメータ18を用いて制動放射線ビーム32をコリメートすることができる。シールド(図示しない)で光子源12を囲んでもよい。適切で代表的な制動放射線の光子源は、米国特許第5,115,459号に記載されている。
【0022】
貨物専用コンテナ、輸送コンテナ、又は他のコンテナ若しくは物体などの走査対象となる標的20は、制動放射線ビーム34の通路に配置すればよい。一実施形態では、この標的は、例えばコンベアベルトなどによりビーム通路を移動させてもよい。別の実施形態では、光子源12を移動したり電子ビーム32を操作したりして、標的20にビーム34を走査してもよい。標的20は標的内容物22を含むことがある。当業者であれば、標的コンテナ20上に光子ビーム34を走査する他の方法が分かるはずである。入射する光子ビーム34は標的の内容物22の原子核を共鳴励起させ、光子48が内容物22及び標的20を透過すると共に、内容物22から散乱する。散乱した光子のエネルギーは、標的内容物22の原子核の量子化エネルギー状態と標的20の原子核の量子化エネルギー状態との間隔を表す。標的内容物22に存在する各同位元素は、光子を一意の組のエネルギーで共鳴散乱する
【0023】
検出装置38及び40は検出器アレー42を含むことができ、所与の1つ又は複数方向に散乱した光子のエネルギーを、捕捉、測定、計数、且つ/又は記録できる。幾つかの適切で代表的な検出装置は米国特許第5,115,459号に記載されている。検出装置38又は40は、低エネルギー光子を吸収するための各検出器の表面を覆うフィルタと、シールド(図示しない)とを更に含むこともできる。コリメーティングアパーチャ18からの散乱は、検出装置38又は40に向かうかなりの量の光子となりうるので、コリメータと検出装置38又は40との間にシャドウシールド(図示しない)を設けてもよい。ビーム34が標的20を通過する際に吸収されないビーム34のエネルギーを吸収するため、ビームダンプ30を設けてもよい。シールド(図示しない)は、標的を出し入れするための適切な手段の設置を可能とする一方で、装置全体を取り囲んでもよい。検出装置38又は40からのデータは、そのデータを分析できるプロセッサ46に送る。プロセッサ46は、パーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、又は他の適切なプロセッサでよい。分析には、対象とする核種の存在度の特定が含まれる。このデータは前処理電子装置44で前処理できる。こうした前処理電子装置には、前置増幅器、フィルタ、タイミング電子装置、又は他の適切な前処理電子装置が含まれる。プロセッサ46を適合してデータを評価させ、標的体積の内容物が1つ又は複数の所定の検出閾値を満足或いは超過するかを判断できる。例えば、プロセッサ46は、照射した各標的体積のデータを「標準」標的体積のプロフィルと比較して、照射した標的体積を「怪しい」と考えるべきかを判断できる。更に、プロセッサ46は、後述するように他の脅威検出ヒューリスティックスでプログラムしてもよい。更に、後に詳述するように、プロセッサ46は、本システムの光子ビーム、走査、検出、及び/又は他の側面の様々なパラメータを制御できる。
【0024】
コンプトン散乱及び他の散乱作用の効果を最小化し、信号対雑音比を最大化するため、検出装置38又は40を、制動放射線ビーム34に関して光子ビームに対して90度を上回る角度で配置できる。
【0025】
ビーム34は標的内容物22を通過する。このビームは、残りのエネルギーの概ね全てを吸収するように設計されたビームダンプ30で吸収できる。例えば、10メガ電子ボルト用の適切なビームダンプは、ボロン又はリチウムを含む含水素物質からなる層、カーボン層、及び鉄層を含むことができ、これらの層は、逆流低エネルギー光子から側面及び検出器を遮蔽する鉛及び/又は鉄のシールドの非常に深い空洞内に形成されている。ボロン又はリチウムを含む含水素物質の層が、このシールドの外部を囲むようにしてもよい。この空洞の深さ、ビームの寸法、検出器の指向性コリメーション、及び検出器の正確な位置は関連したパラメータであって、ビームダンプから検出器に入る逆流光子の数を最小化するために互いに適合させることができる。この目標を満足できるように、付加的なシャドウシールドを設置できる。
【0026】
本発明の技術を用いて様々な画像化を実行できる。光子源12全体、標的20、又は単にアパーチャ18を移動させることにより、手荷物をビームで走査できる。又、磁石で電子ビームを偏向させても、制動放射線ビームの方向を掃引できる。光子ビームの好適な幾何学的形状は、スポット(円錐)及びストライプを含む。当業者であれば、他の好適な走査構成、幾何学的形状、及びパターンが存在することを理解し、利用できる。
【0027】
例えば、小型の円形アパーチャ18を使ってビーム34を概ね1/20ラジアン(約3度)の平均角度までコリメートすれば、このアパーチャから1メートル離れたスポットは直径が約10cmとなり、手荷物の中身又はコンテナ20の内容物22を画像化するには適切な大きさとなる。
【0028】
仮に垂直スリットアパーチャを用いて光子ビーム34をコリメートし、手荷物への入射地点で10cm幅の狭いストライプを発生させると、例えば長さ60cmのスーツケースであれば、それがコンベアベルトに乗って移動する際に数秒間で走査できるはずである。或いは、可調節コリメータによって、或いは光子ビーム34を生成するのに用いる電子ビーム32の磁界偏向によってビーム34を垂直に掃引されるスポットにコリメートしたりできる。仮にコリメーションが垂直ストライプ形状であっても、自然のコリメーションを反映して中心強度は最大のままとなり、電子ビーム32の磁界偏向は画像化に有用となりうる。仮にコリメーションが垂直ストライプ又はその他の配向のストライプであれば、このストライプと検出器42の平行視界との交差は画像化に有用なボクセルを画定する。
【0029】
別の技法では、標的コンテナ20の大きな部分に大型のアパーチャを用いて制動放射線を大量に照射し、又、例えばコリメータを各検出器42の前に配置することで、検出器42を方向特異的となるように適合できる。こうすれば、各検出器が、標的内容物22の小さな特定領域50から特定方向に散乱した光子のみを検出するように設計できる。各特定領域すなわち「ボクセル」50は、光子ビーム34と平行検出器42の見通し線との3次元交差であると考えればよい。こうした検出器のアレーを、標的20全体を所望の解像度で画像化することを目的として設計できる。
【0030】
当業者であれば、標的内容物の空間分解像を得るために適合した検出システムが他にも可能なことが分かるはずである。こうした検出システムは、例えば、2次元又は3次元空間情報を分解できるコード化アパーチャシステムを備えた検出器アレーが含まれる。プロセッサ46のコンピューター断層撮影(CT)で利用する画像化技法を使って、標的20及びその内容物22の2次元又は3次元像を得ることもできる。
【0031】
上述の画像化技法を組み合わせれば本発明の更に別の実施形態となる。例えば、薄いスリットアパーチャを用いて、標的20がコンベアベルト上を移動する際に標的20に薄い垂直帯を照射することもできる。この帯の幅は、画像化の水平解像度を決定する。垂直解像度は、照光部分の垂直高さに沿った間隔で狙いを付けた指向性検出器を使って増大させることも可能である。こうした方法を用いると高解像度の測定値が速く得られる。
【0032】
高速で調整可能な光子ビームのコリメーティングアパーチャ18を用いれば、重要な利点を備えた更なる実施形態となる。例えば、薄いシート状の爆発物を検出するため、且つ/又は標的20の内容物に含まれる様々な元素の存在度の初期推定を行う目的で、まず最初に標的20には制動放射線を大量に照射してもよい。次に、より局在性の爆発物を検出する目的で、コリメーティングアパーチャ18をストップダウンしてスーツケースを画像化できる。一実施形態では、プロセッサ46によるコリメーティングアパーチャ18の大きさ制御は、後述するように、初期の低解像度走査により検出された肯定信号に応答したものでもよい。
【0033】
プロセッサ46は、検出装置38及び/又は40を任意に組み合わせた装置から得られたデータを分析するように適合できる。他の爆発物検出装置と同様に、窒素及び酸素などの元素のプロフィルは、「標準的な」標的体積又はボクセルで現れるものをモデル化したり、経験的に決定したりできる。これらのプロフィルから有意に逸脱する単一の標的体積すなわちボクセル50或いは複数体積すなわちボクセル50の組合せを、「疑わしいもの」として識別してよい。プロセッサ46は、データを記憶済みプロフィルと比較するように適合してもよい。プロフィルが厳密に特定されれば、低い誤警報(「誤肯定」又は「FP」)率を伴った高い確率の爆発物検出(「検出確率」又は「DP」)が実現できる。標的の一領域が爆発物の明示的な元素プロフィルを示す場合、脅威確認がなされたものとしてもよい。
【0034】
上述の検出方法は、標的20及び標的内容物22からの共鳴散乱が検出器40により検出されるものだが、これら方法を用いて標的内容物22の3次元NRF画像化を実行できる。例えば、各検出器40に指向性を与えるように適合すると(例えばコリメーションによって)、各検出器で検出されるNRFスペクトルは、各ボクセル50に含まれる同位元素の測定尺度を提供する。又、ボクセル50では、各検出器40の視野が光子ビーム34と交差している。所望なら、これらスペクトルは標的内容物22の3次元同位体の画像として構築できる。この理由から、上述の検出方法は3次元NRF画像化と呼ぶことができる。
【0035】
NRFスペクトルで識別されるそれぞれの核種の存在度に関する情報を抽出するには、本システムが、先ず各ボクセル50に入射する光子束の近似値を得る必要がある。一実施形態では、これを達成するためには、光子ビーム34の通路に沿った各ボクセル50からの散乱光子スペクトルを観測し、観測したスペクトルを用いて各ボクセル50内のビーム34の平均減衰を計算し、それ以前の各ボクセル内での減衰に基づいて各連続ボクセル50の推定入射束を調節すればよい。従って、代表的な一実施形態では、ビーム34が標的20に最初に当たる第1ボクセル50における入射束が分かる。従って、第1ボクセルから散乱する光子のスペクトルをフィットできる。一実施形態では、このフィットは、例えば、共鳴散乱ピークに加えコンプトン散乱によるバックグラウンド、対生成、検出器における光電気現象、及び非共鳴バックグラウンド寄与などを含む寄与を含んだ完全なモデルとなりうる。第1ボクセルの同位体組成は、第1ボクセルにおける既知の入射束、観測したNRF共鳴の既知の相互作用断面積、既知の検出器効率などの情報を用いてそのフィットの結果から抽出できる。測定したスペクトル及び/又は第1ボクセルの測定した同位体組成から、光子ビーム34が第1ボクセルを通過する際のビーム34の減衰を特定でき、この減衰を用いて第2ボクセルにおける入射束の推定値を計算できる。そして、第2ボクセルにも上記フィッティング処理を行い、第2ボクセルの減衰から、光子ビーム34の通路に沿って標的20を通過する後続のボクセルの入射束を特定してゆくことができる。幾つかの実施形態では、このビームに沿った各ボクセルにおける入射光子束は、光子ビーム34に沿ったそれ以前のボクセルで識別された同位元素の既知の吸収特性及び測定存在度を用いて、エネルギーの関数として測定できる。後述するように、脅威と考えられる特定のボクセルから特定エネルギーチャンネルで散乱する最小数の光子を計算する際に、計算したこれら入射光子束を使用できる。この手順を繰り返し、又、例えば全透過光子束を測定し且つその情報をフィットに組み込むことで、この手順を各ボクセル50からの完全なエネルギースペクトルに束縛できる。
【0036】
代替的な検出方式も図1に示した。この代替的な方式は、標的内容物22の同位体組成の2次元NRF像を提供できる。光子ビーム34が標的20を通過する時、光子は標的内容物22の原子核により共鳴吸収される。吸収された光子のエネルギーは、標的20内の原子核それぞれの量子化エネルギー状態間の間隔に対応する。これらの特定エネルギーに関し、透過したビームから光子が枯渇する。例えば、標的が窒素を含有している場合、窒素内の核エネルギー状態間の間隔に対応したエネルギーの光子が選択的に吸収される。吸収される光子の量は、標的20内の窒素の量に依存する。従って、標的を透過するエネルギーを持つ光子の強度は、標的の核組成に関する情報を保持している。一連の基準共鳴散乱体28を標的20の背後に配置してもよい。各基準散乱体28は、この爆発物検出装置が検出しようとする1つ又は複数の元素から作製すればよい。検出装置42のアレー36を適合して、各基準散乱体28から共鳴散乱した光子48を捕捉、測定、計数、且つ記録できる。例えば、単純な実施形態では、一方を窒素とし他方を酸素とする2つの基準散乱体を設ける。こうした実施形態では、窒素散乱体の原子核から共鳴散乱する光子を検出するように1つの検出装置を適合し、酸素散乱体の原子核から共鳴散乱する光子を検出するように別の検出装置を適合すればよい。別法では、単一の検出装置42を適合して、全ての基準散乱体28の原子核から共鳴散乱した光子を検出できる。
【0037】
この検出方式は次のよう手順で動作する。もしビーム34の通路に標的20が配置されない場合、この光子ビームが第1の基準共鳴散乱体28に直接衝突するはずである。第1基準散乱体に関連付けられた検出装置36は第1基準散乱体に含まれる核種に対応した比較的多い量の光子を検出する。これは、こうした核種に対応するエネルギーにおける吸収が事実上起こっていないからである同様に、もし第1基準散乱体に含まれる核種を少量のみ含む標的20がビームの通路に配置されていれば、第1検出装置における強い信号の減少は比較的少ないはずである。しかし、仮に第1基準散乱体に含まれる核種を比較的多く含む標的20がビームの通路に配置されていれば、その核種に対応したエネルギーの光子の標的20における共鳴吸収により、この信号は相当減少するはずである。
【0038】
従って、標的20及びその内容物22における対象とする核種の存在度は、その核種を含む基準散乱体に関連付けられた検出装置からの信号の減少として検出される。基準散乱体が主として構成される核種に対応しないエネルギーの光子が非共鳴作用によって減衰する程度は比較的少ない。従って、第1基準散乱体の核種を検出するための方法は、それ以降の基準散乱体それぞれにも適用される。この検出方式の利点は、仮に対象となる2つ以上の核種に対応したエネルギーが非常に接近している場合、検出装置38又は40が散乱光子を直接検出するので、これら2つ以上の核種からの寄与を区別するのが困難なことである。しかし、透過した光子及び基準散乱体28を用いると、それぞれの核種に対応したエネルギーが別個に検出されるので、この曖昧さはかなり減少し、間隔が狭い光子エネルギーを解像する検出装置の能力はそれほど重要ではなくなる。2つ以上の核種に対応したエネルギーが干渉しない場合は、単一の基準散乱体をこれら核種の組合せから構成してもよい。
【0039】
この検出方式の更なる利点では、基準標的に含まれる核種に対応した核種の物質の総量が迅速に且つ比較的少数の検出器を用いて測定できる点である。これによって、例えば、標的20を高速第1パス走査により1つ又は複数の対象核種があればそれを検出し、その後より詳細な走査又は画像化手順を実行できる。こうした高速第1パス走査が脅威となる量の対象とする核種を検出しない場合、時間と資源の節約のため、より詳細な走査は省いてもよい。
【0040】
図1に示した実施形態では、本システムには、標的20を透過する光子の強度及び/又はエネルギーを、光子ビームが標的20に当たる横方向位置の関数として測定できる、X線撮像装置のような正透過検出器24を含めることもできる。例えばこうした測定値を用いて、光子ビーム34の軸に沿って投影した、標的20の平均密度の写像を得ることも可能である。こうすることで、標的20の透過濃度を示す非常に正確な像を構築できる。こうした画像は標的内の物質密度が高い部分を識別でき、これは爆発物又は原子数が高い物質の検出に更に役立つはずである。(又、特に低エネルギーでの標的20からの後方散乱を検出することで類似の密度画像化が可能となる。)
【0041】
正透過検出器24又は標的20を透過する光子を基準散乱体28から散乱させる上述の2次元NRF検出方式であれば、光子ビーム34が標的20を通過する際のビーム34の全減衰を推定することもできる。幾つかの実施形態では、光子ビーム34の全減衰を、ビーム34に沿った各ボクセルに入る光子束の上述した測定のチェック(或いは反復補正手段)として使用できる。

対象とする核種の存在を確認するためのNRF使用
【0042】
核共鳴蛍光が標的内に存在する核種を識別したり、対象とする核種を検出したりする有用性を図2に示した。図2には、4.1メガ電子ボルト及び11メガ電子ボルトのエンドポイントエネルギーを備えた電子ビームにより生成された制動放射線ビームから得られた同位元素48Ti及び24Al(4.1メガ電子ボルトスペクトルにのみ存在する)の核共鳴蛍光スペクトルを示した。(これらスペクトルはDegener,
et al, Nuclear Physics A513 (1990) 29-42に記載されており、その内容は引用して本明細書に援用する。)これらスペクトルは、コリメートした高エネルギー解像度ゲルマニウム検出器をビーム方向に対して90度を上回る角度で使用することで測定した。48Ti及び24Alについて測定したNRF状態の狭いピーク(検出器解像度に制限されるが、概ね4keVの幅を備える)が、連続した変動が緩やかな非共鳴バックグラウンドに対して容易に検出される。固定エネルギーの状態を見ると、非共鳴バックグラウンド作用に起因する連続的バックグラウンドは、より高いエンドポイントエネルギーでは明らかに高いことが分かる。
【0043】
又、コンプトン散乱及び対生成などの非共鳴作用からのエネルギースペクトルの特性は、検査対象の体積物の密度及び平均原子番号(Z)に関する情報を直接提供する。これは図3に示されており、ここでは、209Bi標的のNRFスペクトルを同一実験状態の208PbのNRFスペクトルに重ね合わせた。(これらスペクトルは、F.R.
Metzger, Physical Review 187, pg. 1680 (1969)に記載されており、その内容は引用して本明細書に援用する。)209Biスペクトル(実線の曲線)は、2つの強いNRF状態(第3のピークは標的内の汚染物質によるもの)の存在を示す一方、208Pbはこのエネルギー領域にNRF状態を持っていないので、そのスペクトル(破線の曲線)は滑らかな連続的バックグラウンドとなっている。208Pb及び209Bの原子番号はそれぞれ82及び83であり、又、理論的に予測され且つこれら測定でも証明されているとおり、非共鳴バックグラウンド作用は概ね同一である。
【0044】
これらスペクトル及び他の既知のNRF実験で得られた類似したスペクトルは多くのことを明らかにしている。
・ 高エネルギー解像度検出器を使用することにより、非共鳴バックグラウンドの存在下でNRF状態の強度が直接的に抽出でき、従って、NRF状態が励起している各同位元素に関連した、検査中の領域における物質の量も直接的に抽出できる。
・ 非共鳴バックグラウンドは、標的試料の原子番号(Z)、密度、及び量に依存する。これは測定又は修正可能である。
・ NRF状態の背景にある非共鳴バックグラウンドは、制動放射線ビームのエンドポイントエネルギー及び標的物質の原子番号の関数である。
【0045】
本明細書で提案する方法は、比較的高い空間解像度で積分減衰値をサンプリングできるX線撮像装置などの2次元透過検出器24を組み込むこともできる。この補完的検出器は小さな高密度物体の検出を可能とする。これをNRF3次元像及び/又はNRF2次元透過検出器と組み合わせて使用すれば、本適応システムの一部として付加的走査を行うための、或いは別の目的で対象となる領域を動的に識別できる。
【0046】
非共鳴バックグラウンドに対する所与のNRF状態の測定に関する信号対雑音比は、上述の現象により特定できる。NRF状態の性質(対象となる核種それぞれのエネルギー及び角度の関数としての散乱断面積を含む)を走査に先立って知ることができる。標的ボクセル50から散乱し、且つ対象となる特定の核種に関連付けられたNRF状態の1つ又は複数の特徴的エネルギーにおいて特定の散乱角で検出される光子の数は、標的ボクセル50内のその核種の存在度に比例する。所与のNRF状態に対応したエネルギーチャンネルにおけるカウント数の測定値と、そのエネルギーチャンネルにおけるカウントへのバックグラウンド非共鳴作用の寄与の推定(例えば、隣接エネルギー間隔における非共鳴作用による平均バックグラウンド・カウント又は予想バックグラウンドの他の推定)とを用いて、検査中の空間領域における指定同位元素の所与の量に関して検出確率(DP)及び誤肯定結果を得る確率(FP)を適応推定できる。この情報を用いて、検出確率及び誤肯定に関する所望の判定基準を満足するように走査のパラメータを修正できる。幾つかの実施形態では、対象となるエネルギーチャンネルにおけるカウント数の測定を、非共鳴バックグラウンドのこのカウント数への寄与の推定に組み合わせることで、検出確率及び誤肯定の所望判定基準を満足する走査パラメータを適応修正するのに使用できる信号対雑音比の動的評価が可能となる。例えば、検査中の領域が比較的高い非共鳴バックグラウンドを備えている場合は、統計的正確さを高めるには、信号対雑音比は低くなり、制動放射線ビームのドウェル時間を増加させてより多くの光子事象を収集することで補償できるし、或いは後に詳述するように、他のシステムパラメータを調節して信号対雑音比又は統計的正確さを改善してもよい。
【0047】
適応走査の代表的方法に関する次の記載は、信号対雑音比の動的測定を用いて所望の検出効率及び誤肯定基準が満たされているかを判断するものだが、当業者であれば、対象とする1つ又は複数エネルギーチャンネル及び測定した、推定した、或いは近似したバックグラウンドにおけるカウント数の測定(とりわけエネルギーの関数としての)は、検出効率及び誤肯定を特定する際には独立して考慮できる。例えば、対象とするエネルギーチャンネル或いはエネルギー領域において評価可能なバックグラウンドが存在しない場合、そのチャンネル又は領域の全カウントは、そのチャンネル又は領域に対応した同位元素の存在に起因すると考えられ、その同位元素の閾値量が存在するか否かは、信号対雑音比を特定するステップを実行せずに判断してよい。
【0048】
適応走査方法の例
以下に、閾値量の対象核種を識別するために標的を適応走査する方法の代表的な一実施形態を説明する。この実施形態では、閾値量の対象核種を「脅威」と考えることができ、この方法の目的は、貨物専用コンテナ、手荷物、又は他の標的を適応走査して、核物質又は通常爆発物などの脅威の存在を検出することでよい。しかし、本明細書で開示した方法は、標的に非侵入性走査を行ってその標的の同位体組成の特定や、対象とするある核種の閾値量の検出が望ましいような任意の用途に応用できることは、当業者であれば理解するはずである。こうした応用例には、貨物専用コンテナを走査して内容物がその貨物明細書と一致するかを判断したり、サリン、ホスゲン、他の薬剤などの有毒物質の存在の識別や、標的を走査して核物質、一定量の高密度物質(被覆核物質又は他の物質の存在を示す可能性がある)、爆発物、或いは輸出入禁止品を発見したりすることが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
一実施形態では、初期の光子束を標的20内のボクセル50に注入できる。次に、対応する検出器42で検出された光子のスペクトルを分析するが、この分析は、非共鳴バックグラウンドと、存在する任意共鳴ピークからの寄与との原因となる曲線にフィッティングすることで行う。又、プロセッサ46は、対象となる核種におけるエネルギー準位間隔に対応した対象となる1つ又は複数のエネルギーチャンネルにおけるカウント数を収集する。
【0050】
プロセッサ46はこの初期観測を用いて、対象となる各エネルギーチャンネルにおけるバックグラウンドの第1近似計算を行うことができる。一実施形態では、対象とする核種の核共鳴遷移に対応したエネルギーチャンネルで検出される信号へのバックグラウンド(すなわち非共鳴)寄与の第1近似値は、隣接チャンネルで検出されたカウント数を平均して得ることができる(NRF線のエネルギーで発生しない場合は)。こうしたバックグラウンドは、例えば1/E分布、特に対象とするエネルギー領域に局所的にフィットする1/E分布により推定してもよい。推定したバックグラウンドの補正を行ってもよい。例えば、検出器で検出された全ての共鳴光電ピークに関して、その共鳴信号に関連した既知の、非共鳴性の低エネルギー散乱光子が存在するはずである。従って、推定したバックグラウンドの補正には、特定の核種に対応することが分かっている検出済みの共鳴及び非共鳴信号を減算すればよい。光子ビームは観測中のボクセル50に向かう途中で標的内容物22を通過し、内容物22と相互作用するが、バックグラウンド推定には光子ビームのこの過程における減衰を考慮してもよい。一実施形態では、この減衰の測定は、検出器アレー38又は40における直接散乱測定値によって、貨物明細書を参照して標的20の計量から得られた標的20の平均密度推定によって、X線撮像装置24又は基準散乱体28付きの透過検出器36などの装置を用いた透過光子の強度測定によって実行できる。
【0051】
プロセッサ46は、推定バックグラウンドを他のパラメータと共に用いて、対象とする核種それぞれの閾値脅威信号を発生できる。こうした閾値脅威信号は、カウント数又はあるチャンネルにおけるバックグラウンドのカウント数とすることができる。この閾値脅威信号を生成するに当たっては、例えば様々な入射光子束の量における様々な核種に関する閾値信号量を識別するプログラム済みテーブルを参考にしてもよい。(エネルギーの関数としての入射光子束は、上述したように光子ビーム34に沿った各ボクセル50に関して特定できる。)例えば、一実施形態では、プロセッサ46を予想カウント数のテーブル又はその予想カウント数を計算する手段でもって予めプログラムしておくことができる。こうしたテーブル又は手段は、所与の入力光子束及び/又は所与のバックグラウンドに関し、特定量で存在する対象核種を備えた標的の領域におけるエネルギーの関数として検出された予想カウント数をそれぞれ保持或いは計算するものである。例えば、プロセッサ46を、所与の入力光子束及び/又は所与のバックグラウンドに関し、対象とする選択核種の典型的な脅威レベルに対応したカウント数でプログラムしておくことができる。一実施形態では、このカウント数は、標的20内のボクセル50からの1つ又は複数エネルギーチャンネル内に散乱する、検出器アレー38又は40で測定した光子の数(光子ビームが標的を貫通する際の測定又は推定減衰に対する補正を施したもの)でよい。別法として、このカウント数は、標的20を透過する光子であって、1つ又は複数の基準散乱体28から検出器アレーで測定される1つ又は複数のエネルギーチャンネル内に散乱する光子の数としてもよい。
【0052】
プロセッサ46は、バックグラウンドの第1推定に寄与する1つ又は複数の要因に基づいて、対象とする1つ又は複数のエネルギーチャンネルで一定レベルのバックグラウンドを与えると推定される一組の初期公称光子ビームパラメータを設定する。例えば、推定バックグラウンドを考慮すれば、プロセッサ46は、その脅威検出閾値が小さな信号であるエネルギーチャンネルにおける統計的に有意な測定値を与えると予想される初期ドウェル時間を特定できる。
【0053】
次に、プロセッサ46は、その初期ドウェル時間において1つのボクセル50(又は、光子ビーム34の現在位置に沿った一組の複数ボクセル)で測定を実行し、その測定結果に基づいてシステム応答を決定できる。例えば、検出された信号が、対象とする任意エネルギーチャンネルにおける推定予想バックグラウンド信号に対応する脅威検出閾値よりも大きくない場合は、プロセッサ46は次のボクセルに進んでよい。一方、検出された信号が対象とするエネルギーチャンネルにおける脅威検出閾値を上回る場合、プロセッサ46は、そのチャンネルにおける信号対雑音比の動的測定値を計算できる(例えば、検出された信号を予想バックグラウンド信号又は測定バックグラウンド信号と比較することで)。プロセッサ46はこの情報を使って、この信号が次のように統計的に有意な脅威の検出を表すか否かを判断する。
【0054】
一実施形態では、プロセッサ46は、初期脅威検出イベントの有意性評価において、受信者特性(ROC)曲線を参照する。所与の脅威質量体からの信号として検出した2つの異なる平均カウント数(30及び40)における、受信者特性曲線の代表的な組を図4a及び図4bに示し、ここでは、各平均カウント数に関して、信号対雑音比の3つの値(2,1,及び0.5)の曲線を示した。これら代表的な曲線は、統計的考察と各曲線に対応した仮定信号対雑音比とを組み合わせることにより計算した。一般的な場合では、検出確率(DP)に対する誤肯定結果を得る確率(FP)の計算には、系統的誤差及び他の非統計的不確実性を組み込むことも可能である。図4a及び図4bに示した曲線は、公称ビームパラメータに付いての脅威検出に関する検出確率と誤肯定結果確率との関係を表す。これは、検査体積内の所与の最小脅威質量体におけるNRF状態に関して、それぞれ30カウント又は42カウントを与えるものである。それぞれの受信者特性曲線の各点は、所与の閾値に関する検出確率と誤肯定結果確率との関係を表す。よって、これら曲線は、信号対雑音比を一定とすると、仮に検出閾値を引き下げることによって検出確率を増加させれば、それに従って誤肯定の可能性が必然的に上昇することを示す。
【0055】
図4aを参照すると、所与の脅威質量体の公称ビームパラメータが30の信号カウントを与える場合、仮に所望の検出確率(DP)が98%を上回り且つ誤肯定(FP)脅威検出が2%未満であれば、すなわち、最小検出量を上回る量の当該核種がボクセルに含まれる確率が少なくとも98%であり、識別されたボクセルがそれを上回る量を含むと誤って識別する確率が最大でも2%であることを、システムが識別することが所望であれば、信号対雑音比の適応測定が0.5でなく1又は2の場合は、この判定基準は公称ビームパラメータ範囲内で満足する。図4bを参照すれば分かるように、仮に30でなく42のカウントを累積すれば、98%を上回る検出確率と2%以下の誤肯定という判定基準は信号対雑音比0.5で満足可能である。(信号対雑音比0.5の曲線が98%の検出確率と2%の誤肯定確率に交差する点に関連付けられた脅威閾値は、103の全体カウント(信号及びバックグラウンド)の脅威検出閾値に対応する。)従って、信号対雑音比が0.5であることが確認された場合、所望の検出確率(98%未満)及び誤肯定確率(2%以上)を達成するには、走査パラメータを適応調節してそのエネルギーチャンネルにおけるカウント数を30から42まで増加させ、脅威検出閾値を103の全体カウントに設定すればよい。例えば、ドウェル時間を約40%増加させてもよい。或いは、ドウェル時間は増加させずに光子ビーム強度を増加させてもよい。何れの場合も、最小量に関して予想される全体カウントは30から42まで増加する。別法では、検出確率及び誤肯定確率に関する所望基準を達成するには、他のビーム及び/又は検出器パラメータを変更して信号対雑音比又は計数統計を向上させてもよい。本システムは図4a及び図4bのような受信者特性曲線を参照しつつ、信号対雑音比を測定し、且つ所望の検出確率及び誤肯定確率基準が達成されるまで1つ又は複数のビームパラメータを適応調節できる。
【0056】
検出確率及び誤肯定確率は、別々に又は両者を組み合わせて個別の走査の効率又は質を記述する方法を提供する。検出確率DP及び誤肯定FPを得る確率は、それぞれ「走査評価パラメータ」と考えることができる。「検出効率基準」という用語は、ある所望の検出確率値、ある所望の誤肯定値、又は特定の検出確率値と特定の誤肯定確率値と所望の組合せを意味する。後述するように、用途が異なれば、検出確率又は誤肯定確率の異なる値或いは組合せが望ましいことがある。他の走査評価パラメータを用いて、見かけの肯定信号が実際の肯定に対応する可能性を表できる(一定の核種が、走査中のボクセル内に最小量存在することなど)。
【0057】
対象とするエネルギーチャンネルにおける信号の初期測定値が、ある信号対雑音比を備えた脅威検出閾値を超過する場合、プロセッサ46は1つ又は複数の走査評価パラメータを計算し、検出効率基準が満足されているかを判断できる。仮に検出効率基準が満足されない場合、肯定的な脅威警報を所望の真性肯定確率で発するには、測定値の精度を向上する必要がある。例えば、誤肯定結果の確率(FP)に所望の上限を課しつつ所望の検出確率(DP)を動的且つ/或いは適応的に達成するには、プロセッサ46は、ドウェル時間、強度、又は他のシステムパラメータ(ビームエネルギー、ビームコリメーション、検出器コリメーション、検出器フィルタなど)を、こうした受信者特性曲線を参照しつつ、変更できる。幾つかの実施形態では、本システムは、所望の検出確率及び誤肯定確率値の選択を適応調節してもよい。例えば、本システムは、何らかの検出確率及び誤肯定確率値において高速第1パス測定を実行し、続いて、その測定結果に基づいて判定基準を厳密にしてこの測定を繰り返し、それに応じてシステムパラメータを調節すればよい。例えば、本システムは、検出する脅威の種類に従って所望の検出確率及び誤肯定確率を変更できる。こうすることで、誤肯定イベントの対価を検出失敗の対価と比較検討するに当たっていくらかの柔軟性を見込むことができ、有用となりうる。例えば、爆発物又は核兵器などの脅威に関しては、誤肯定にはいくらかの犠牲が伴う(例えば警察又は軍事専門家の不要な出動など)が、検出失敗は破局的な結果を招きかねない。こうした脅威に関して、本システムは、比較的高い検出確率と低い誤肯定確率からなる厳密な検出効率の判断基準を用いるようにプログラムでき、結果的に、こうした脅威が最初に検出されるとより長時間又は詳細な走査を実行できる。一方、輸出入禁止品などの脅威では、検出失敗及び誤肯定の対価は比較的低いことがあり、本システムは、この走査システムの速度及び費用対効果を優先してそれ程厳密でない検出判定基準を用いてもよい。
【0058】
検出判定基準を達成するために動的に変更可能なシステムパラメータには、限定するわけではないが次のものが含まれる。
・ 光子ビームのドウェル時間
・ 光子ビーム強度
・ 制動放射線源で用いられる電子ビームのエネルギー
・ 検出器アレーの空間解像度
・ 検出器アレーが標的を見る角度
・ 光子ビームの空間解像度及び/又は幾何学的形状
・ 選択した同位元素の寄与を減少する光子ビームフィルタ
・ 光子ビーム内の及び/又は検出器内の光子フィルタ
・ 積分時間、空間解像度、電子クラスタ化などの検出器の特性
【0059】
これらパラメータの1つ又は複数を調節することで、プロセッサ46は、対象とするエネルギーチャンネルにおける信号対雑音比又は計数統計を動的に高めることができる。(当業者であれば、信号対雑音比及び/又は計数統計に影響しうる任意システムパラメータを調節できることは理解するはずである。)従って、例えば、上述したように、仮に脅威検出閾値を上回ったことを公称測定値が示すが、この統計値又は信号対雑音比が不適切であり誤肯定脅威検出イベントの所望最大率が保証できない場合、プロセッサ46は測定時に上述のパラメータの1つ又は複数を適応調節して、有意な脅威検出イベントが発生したか否かを判断できる。一方、仮に何れの検出閾値を上回っていないことを公称測定値が示せば、プロセッサ46は何れのビームパラメータを調節することなく、次のボクセルに進んで新たな公称測定値を得ることができる。
【0060】
あるボクセル50から散乱した光子の測定時に、プロセッサ46はバックグラウンド信号の初期推定値をより正確にするため統計値の収集を継続でき、よって個別チャンネルにおける信号対雑音比の動的測定を向上する。従って、プロセッサ46は推定検出確率(DP)及び誤肯定を得る確率を実時間で適応調節でき、所望の脅威検出確率及び/又は誤肯定確率(FP)の測定に迅速に接近する。
【0061】
仮にプロセッサ46が、対象とするエネルギーチャンネルにおける脅威検出閾値を超え、所望の検出確率(DP)判定基準を満たすのに十分な信号対雑音比が得られ、且つこのイベントが誤肯定である推定確率が所望の誤肯定確率の基準を下回ると判断すると、検出された脅威及び本システムが利用されている状況に従って、様々な方法で脅威検出警告を発することができる。例えば、空港又は貨物置き場環境では、本システムは走査を直ちに注し、脅威検出肯定信号が検出されたことをオペレータに通知してもよく、この時点で標的を移動して検査できる。或いは、隔離及び後の検査のため、その標的に(電子的又は物理的に)標識を付けてもよい。脅威検出肯定信号を確認後に本システムがとる動作は、検出された脅威に従って変化させてよい。当業者であれば、脅威検出肯定信号に対処する様々な方法があることは理解するはずである。
【0062】
これまでの記載は、最も効率的な非侵入性走査アルゴリズムが、必ずしも体積全体にわたる均一走査又は高解像度走査ではないことを示している。これには次のような幾つかの理由がある。先ず、平均密度が非常に低い体積は入射ビームの減衰が少ないので、走査時間が比較的短い。更に、密度が低い領域は、高密度遮蔽体(鉛)又はウラニウムなどの重い放射性物質などの特定の脅威の存在を調べるには重要でないことがある。更に、原子番号が非常に高い領域は、入射ビームのそれに対応した大きな減衰により素早く識別できる。大量の塊状材料の発見を目指す検査は低空間解像度で実行でき、例えば直径が大きい入射光子ビームを用いたり、標的上をビームで高速走査したり、標的をビームに高速で通過させる走査などが可能である。
【0063】
幾つかの実施形態では、対象とする一定領域に対しては、他の形式の検査から得られた情報に基づいて、非常に高い空間解像度を得ることが好ましいことがある。例えば、図1に示したように、従来のX線撮像装置24などの2次元撮像装置を標的の背後に配置して、標的を透過する光子の強度を検出してもよい。或いは、図1に示したように、透過NRF検出器36を基準散乱体28と組み合わせて利用して対象とする幾つかの核種の投影像を作成し、これらの核種の存在度が比較的高い領域を識別してもよい。オペレータ又はプロセッサ46が、得られた2次元投影像上に対象とする領域を識別すると(例えば、高密度物質の存在を示す暗い領域、又は対象とする核種の存在を示すNRF吸収率が高い領域)、その領域において対象とする核種を検出するため、上述の適応走査技法を用いてその領域のNRF走査を実行できる。
【0064】
適応走査方法の代表的な実施形態の概観を図5のフローチャートに示す。ステップ501で、走査対象となるすぐ後の1つ又は複数ボクセルに関する初期走査パラメータが決定される。こうした初期走査パラメータは、例えば1つ又は複数の貨物明細書、コンテナ全体又はその一部の平均密度の測定値など(重量測定値、NRF密度測定値、又は従来のX線或いはCT画像)に基づいて上述のように計算できる。又、ステップ501で決定した初期走査パラメータは、所望の検出確率(DP)及び誤肯定測定を得る確率(FP)を考慮してもよい。
【0065】
ステップ502では、散乱又は透過した光子スペクトルをステップ501で設定したパラメータを使って測定できる。バックグラウンドスペクトルは上述のように推定でき、任意の検出されたピークに関する信号対雑音比の推定が可能となる。一実施形態では、推定バックグラウンド(従って推定信号対雑音比も)は、隣接又は近傍ボクセルのエネルギーチャンネルにおける検出信号に相関性を探すことにより向上できる。(例えば、比較的大きな信号があるボクセルの1つのエネルギーチャンネルで検出されているが、任意の隣接ボクセルの同一エネルギーチャンネルではバックグラウンドを上回る信号が観測されない場合、このボクセルで検出された信号は、ボクセルの相対サイズ及び検出した同位元素に関連付けられた典型的な脅威にもよるが、統計変動である可能性が高い。)それぞれの脅威に関わる検出閾値は推定バックグラウンド信号を用いて決定でき、所望の検出確率及び誤肯定結果を得る確率を考慮してもよい。これら検出閾値は、例えば脅威の存在に対応した1つ又は複数エネルギーチャンネルでのバックグラウンドにおけるカウント数でよい。
【0066】
ステップ503において、システムパラメータと脅威に対応した各エネルギーチャンネルにおける測定した信号対雑音比を考慮して、本システムは、現在の測定状態が全ての脅威を検出するのに適切か、且つ/又は所望の検出確率及び誤肯定結果を得る確率範囲内で全ての脅威の存在を排除するのに適切かを判断できる。本システムは、仮に信号対雑音比はこれら要件を十分に満足できないと判定した場合、ステップ504に進み、複数システムパラメータのうち任意のものを適応変更して、対象とする1つ又は複数エネルギーチャンネルにおける信号対雑音比及び/又は計数統計を改善できる。上述のように、こうしたシステムパラメータは、ビーム強度、電子ビームエネルギー、ドウェル時間、既知の原因からの信号寄与を減少するための光子ビーム内の或いは検出器の前のフィルタの存在又は非存在、ビーム又は検出器コリメーション、及び他のパラメータが含まれる。本システムは、所望の検出確率(DP)及び誤肯定結果を得る確率(FP)を参照して変更システムパラメータを選択してもよい。(例えば、上述のように、本システムは、対象とするエネルギーチャンネルにおける信号対雑音の様々な値及びカウント数に関して計算した受信者特性曲線を参照して、どの程度のカウント数増加が、所望の検出確率及び誤肯定結果を得る確率を、推定信号対雑音比において実現するかを判断し、且つビーム強度をそれに応じて増大できる。)新たなシステムパラメータを設定した後、本システムはステップ502に戻り、再び、光子スペクトルを測定し、対象とするエネルギーチャンネルにおけるバックグラウンドスペクトル及び信号対雑音比を推定し、この信号対雑音比が、所望の検出確率及び誤肯定結果を得る確率範囲内で全ての脅威を検出又は排除するのに適切かを判断するというサイクルを繰り返す。
【0067】
本システムは、所望の検出確率及び誤肯定結果を得る確率範囲内で全ての脅威の存在を検出するのに適切で、且つ/又は全ての脅威の存在を排除するのに適切な測定値の組みを得たと判断した時点で、ステップ505に進む。ステップ505で、本システムは、対象とする各エネルギーチャンネルにおける信号を特定済みの脅威検出閾値と比較し、何れかの信号がこれら脅威検出閾値を上回るか否かを判断する。仮に何れかの脅威検出閾値を上回ると、本システムは適切な動作をとる(ステップ507)。こうした動作には、走査の中止、脅威検出肯定信号の検出のオペレータへの通知、又は隔離或いは後の検査のために標的を電子的或いは物理的に標識を付けるなどが含まれる。又、脅威肯定信号が検出された時点で、更なる調査を実行するように本システムをプログラムしてもよい。例えば、上述のように、本システムをプログラムして、一定の脅威の初期検出に応答して所望の検出確率及び誤肯定結果基準を厳密化できる。従って、ステップ507では所望の検出確率及び誤肯定結果の確率を変更し、ステップ501に戻って1つ又は複数ボクセルをより厳密な判定基準で調査できる。
【0068】
本システムは、走査を実行中の1つ又は複数ボクセルからの信号がないと判断すれば、これら1つ又は複数ボクセルの調査を終了し、1つ又は複数の他のボクセルに進むことができる(ステップ506)。
【0069】
図5及び上述の説明は、代表的な適応走査及び脅威検出方法の「内部ループ」の一実施形態を例示したものである。こうした適応走査は、この「内部ループ」法で調査するためのボクセルを選択できる、「外部ループ」を含むことができる。例えば上述のように、この外部ループは、予期した以上に高密度な領域又は他の意味で興味を引く領域を識別するための高速走査又は画像化ステップを含むことができる。又、こうした領域が識別されれば更なる走査を実行できる。更に、外部ループは、隣接又は近傍ボクセルなどの複数ボクセルで検出された信号における相関性を探し出すことを含んでもよい。例えば、何れの単一のボクセルも閾値脅威質量からなる物質を含んでいないが、幾つかの隣接ボクセルを合わせるとその閾値質量に達する場合、本システムは統計的に有意な脅威を識別できる。別の実施形態では、本システムは隣接ボクセル内の情報を用いることで、個別のボクセルへのアプローチに関して光子ビーム34の減衰測定を補正又は向上でき、且つこのボクセルへの入射束の推定を向上可能であり、そのボクセル含まれる同位元素の存在度の測定を適切に正規化するか、閾値脅威信号が適切に設定されるようにする。
【0070】
又、外部ループを適応性としてもよい。すなわち本システムは、どのボクセルを調査するか、どのように調査するかという選択を、他のボクセル走査の結果に基づいて再評価してもよい。例えば、高密度(或いは高原子番号)の物質が光子ビーム34に沿った1つのボクセル50に存在しており、このボクセル50の後では、光子ビーム34が大きく減衰するので下流ボクセルを有意義に測定できないことがある。この場合、一実施形態では、こうした「隠れた」ボクセルを観測するには、本システムは標的20を(例えば90度又は180度)回転すべきだと判断できる。別法として、本システムはこれら隠れたボクセルの密度を間接的に測定しもよい。この間接測定を行うには、光子ビームが標的コンテナ20内の他の位置にある他のボクセルを走査している時に、検出器に到着する途中でこれら隠れたボクセルを必ず通過する光子の減衰を分析する。
【0071】
更に、本システムは、一定の組合せの一定物質の存在に関連した脅威についてのプログラム済み「知識」に基づいて脅威を判断してもよい。例えば、コンテナ明細書が大量の硝酸アンモニウム肥料の存在を示す場合、ある領域が、強い窒素及び酸素信号が検出される多くの隣接ボクセルを含んでいても、必ずしもそれが内部ループ検出イベントをトリガする必要はない。しかし、大量の炭素も存在していれば、外部ループにディーゼル硝安爆薬混合物が存在する可能性を検出させるようにしてもよい。
【0072】
又、外部ループも、測定時に検出判定基準(検出確率及び誤肯定測定を得る確率)を適応調節する段階を含んでもよい。例えば上述のように、本システムは、一定の脅威に関しては、検出効率の厳密な判定基準(すなわち、比較的高い検出確率値及び比較的低い誤肯定確率値)を用いるようプログラムできるが、それ以外のある種の脅威に関しては、走査システムの速度及び費用対効果を優先して比較的緩い検出判定基準(すなわち、比較的低い検出確率値及び比較的高い誤肯定確率値)を用いるようプログラムできる。
【0073】
代表的な実施形態を参照しつつ本明細書に開示したシステム及び方法を具体的に示し且つ説明してきたが、通常の技能を備えた当業者であれば、形式及び細部は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく様々に変更できることは理解するはずである。当業者であれば、ここに具体的に記載した代表的な実施形態の多くの等価物を理解し、或いは、通常の実験を行うだけでそれらを特定できるはずである。こうした同等物は、添付の特許請求の範囲に包含されるものと意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0074】
本明細書に開示した、核共鳴蛍光を用いた物質の適応走査方法の上述及び他の特徴や利点は、添付の図面と組み合わせて次の詳細な説明を参照すればより完全に理解できるはずである。これら図面は、本明細書に開示した原理を表すもので、縮尺は一定ではない。
【図1】核共鳴蛍光を用いて物質を適応走査するために使用可能なシステム一実施形態を表す概略図である。
【図2】4.1メガ電子ボルト及び11メガ電子ボルトで生成された制動放射線光子ビームを用いて発生した48Ti及び27AlのNRFスペクトルを示す。
【図3】2.72メガ電子ボルトの電子ビームで生成された制動放射線光子ビームを用いて発生した209Bi及び208PbのNRFスペクトルを示す。
【図4】30カウントの信号(図4a)及び42カウント(図4b)について計算された、3つの信号対雑音比の典型的な受信者特性(ROC)曲線を示す。
【図5】適応走査方法の代表的な実施形態を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的試料内の核種を検出するための方法であって、
a) 前記標的試料を光子源からの光子で照光する段階と、
b) 少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて信号を検出する段階と
c) 前記少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて検出した前記信号を用いて走査評価パラメータを決定する段階と、
d) 前記走査評価パラメータが検出効率基準を満たすか否かを判断する段階と、
e) 前記走査評価パラメータが前記検出効率基準を満たすように、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する段階と、
f) 少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおける前記信号を所定の核種検出基準と比較して核種検出イベントを特定する段階とを含む、方法。
【請求項2】
前記検出した信号を用いて前記走査評価パラメータを決定する前記段階が、前記少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおける前記信号へのバックグラウンド寄与を特定する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出した信号を用いて前記走査評価パラメータを決定する前記段階が、前記少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおける信号対雑音比を特定する段階を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
すくなくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて信号を検出する前記段階が、前記すくなくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて前記標的試料の前記少なくとも一部から散乱する光子を検出する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて信号を検出する前記段階が、前記標的試料を透過すると共に少なくとも1つの基準散乱体から散乱する光子を検出する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
潜在的な脅威を探して標的試料を走査するための方法であって、
a) 前記標的試料に入射する光子の光子源を提供する段階と、
b) 前記標的試料から散乱した光子のエネルギースペクトルを測定する段階と、
c) 前記標的試料から散乱した光子の前記エネルギースペクトルを用いて少なくとも1つの走査評価パラメータを計算する段階と、
d) 前記標的試料から散乱した光子の前記測定エネルギースペクトルを用いて、脅威が検出されたか否かを特定する段階と
e) 脅威が検出された場合は、
i) 前記少なくとも1つの走査評価パラメータが検出効率基準を満たすか否かを判断する段階と、
ii) 前記少なくとも1つの走査評価パラメータが前記検出効率基準を満たさない場合は、1つ又は複数のシステムパラメータを調節し、且つ前記(b)乃至(e)段階を繰り返す段階と、
iii) 前記少なくとも1つの走査評価パラメータが前記検出効率基準を満たす場合は、脅威検出肯定イベントを識別する段階とを含む、方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの走査評価パラメータが検出確率を含み、更に、前記検出効率基準が、最小所望検出確率を上回る前記検出確率を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの走査評価パラメータが、誤肯定結果を得る確率を含むことができ、前記検出効率基準が、誤肯定結果を得る最大所望確率を下回る前記誤肯定結果を得る確率を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの走査評価パラメータが、検出確率及び誤肯定結果を得る確率を含み、更に、前記検出効率基準が、最小所望検出確率を上回る前記検出確率と、誤肯定結果を得る最大所望確率を下回る前記誤肯定結果を得る確率とを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
潜在的な脅威を探して標的試料を走査するための方法であって、
a) 前記標的試料に入射する光子の光子源を提供する段階であって、少なくとも幾らかの光子を前記試料内に透過させる、提供する段階と、
b) 前記試料を透過した前記光子の少なくとも幾らかを少なくとも1つの基準散乱体から散乱させる段階と、
c) 前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱した光子のエネルギースペクトルを測定する段階と、
d) 前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱した光子の前記エネルギースペクトルを用いて少なくとも1つの走査評価パラメータを計算する段階と、
e) 前記基準散乱体から散乱した光子の前記測定エネルギースペクトルを用いて、脅威が検出されたか否かを特定する段階と、
f) 脅威が検出された場合は、
i) 前記少なくとも1つの走査評価パラメータが検出効率基準を満たすか否かを判断する段階と、
ii) 前記少なくとも1つの走査評価パラメータが前記検出効率基準を満たさない場合は、1つ又は複数のシステムパラメータを調節し、且つ前記(c)乃至(f)段階を繰り返す段階と、
iii) 前記少なくとも1つの走査評価パラメータが前記検出効率基準を満たす場合は、脅威検出肯定イベントを識別する段階とを含む、方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの走査評価パラメータが検出確率を含み、更に、前記検出効率基準が、最小所望検出確率を上回る前記検出確率を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの走査評価パラメータが、誤肯定結果を得る確率を含むことができ、前記検出効率基準が、誤肯定結果を得る最大所望確率を下回る前記誤肯定結果を得る確率を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの走査評価パラメータが、検出確率及び誤肯定結果を得る確率を含み、更に、前記検出効率基準が、最小所望検出確率を上回る前記検出確率と、誤肯定結果を得る最大所望確率を下回る前記誤肯定結果を得る確率とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
標的試料内の潜在的脅威を検出するための方法であって、
a) 光子の光子源を提供する段階と、
b) 前記標的試料を前記光子源からの光子で照光する段階と、
c) 少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて前記標的試料の少なくとも一部から散乱する光子の強度を測定するための少なくとも1つの光子検出器を提供する段階と、
d) 前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれにおいて公称バックグラウンド信号を特定する段階と、
e) 前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれにおいて信号対雑音比を計算する段階と、
f) 1つ又は複数のシステムパラメータを調節して、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて収集するデータの信号対雑音比を向上する段階と、
g) 前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて検出された光子の前記強度が所定の脅威検出基準を満たす場合は、脅威検出イベントを識別する段階とを含む、方法。
【請求項15】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記標的試料の領域における前記光子の実効ドウェル時間を変更する段階を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、フィルタを前記光子源に挿入する段階を更に含み、前記フィルタが、選択したエネルギー又はエネルギー領域を備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記光子源が、電子ビームエネルギー及び制動放射線標的を含み、更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記電子ビームエネルギーを変更する段階を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記光子源の強度を変更する段階を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記光子源がコリメートされており、前記光子源の強度を変更する前記段階が、前記光子源のコリメーションを変更する段階を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記光子検出器の少なくとも1つがコリメートされており、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記コリメートした光子検出器のコリメーションを変更する段階を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、フィルタを前記少なくとも1つの光子検出器の少なくとも1つの前に挿入する段階を更に含み、前記フィルタが、選択したエネルギー領域内のエネルギーを備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記光子源からの前記光子が前記標的試料を入射ビームとして照光し、前記少なくとも1つの光子検出器それぞれが、前記標的試料を前記入射ビームに対して検出角度で眺め、更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記検出角度を変更する段階を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記光子源からの前記光子が、前記標的試料上の入射点におけるスポット領域を備えた入射ビームとして前記標的試料を照光し、更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記入射ビームの前記スポット領域を変更する段階を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
標的試料内の潜在的脅威を検出するための方法であって、
a) 光子の光子源を提供する段階と、
b) 前記標的試料を前記光子源からの光子で照光する段階と、
c) 少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて前記標的試料の少なくとも一部から散乱する光子の強度を測定するための少なくとも1つの光子検出器を提供する段階と、
d) 前記標的試料を透過する光子の強度を、前記光子が前記標的試料を照光する前記標的試料上の位置の関数として測定するための透過検出器を提供する段階と、
e) 前記標的試料を透過する光子の強度を、前記光子が前記標的試料を照光する前記標的試料上の位置の関数として用いて、更なる走査を行うために、対象とする少なくとも1つの領域を識別する段階と、
f) 前記対象とする少なくとも1つの領域の少なくとも1つから前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれ内に散乱する光子の公称バックグラウンド信号を特定する段階と、
g) 前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれにおいて信号対雑音比を計算する段階と、
h) 1つ又は複数のシステムパラメータを調節して、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて信号対雑音比及び/又は統計精度を向上する段階と、
i) 前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて検出された光子の前記強度が所定の脅威検出基準を満たす場合は、脅威検出イベントを識別する段階とを含む、方法。
【請求項25】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記標的試料の領域における前記光子の実効ドウェル時間を変更する段階を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、フィルタを前記光子源に挿入する段階を更に含み、前記フィルタが、選択したエネルギー又はエネルギー領域を備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記光子源が、電子ビームエネルギー及び制動放射線標的を含み、更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記電子ビームエネルギーを変更する段階を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記光子源の強度を変更する段階を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記光子源がコリメートされており、前記光子源の強度を変更する前記段階が、前記光子源のコリメーションを変更する段階を更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記光子検出器の少なくとも1つがコリメートされており、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記コリメートした光子検出器のコリメーションを変更する段階を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、フィルタを前記少なくとも1つの光子検出器の少なくとも1つの前に挿入する段階を更に含み、前記フィルタが、選択したエネルギー領域内のエネルギーを備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記光子源からの前記光子が前記標的試料を入射ビームとして照光し、前記少なくとも1つの光子検出器それぞれが、前記標的試料を前記入射ビームに対して検出角度で眺め、更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記検出角度を変更する段階を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記光子源からの前記光子が、前記標的試料上の入射点におけるスポット領域を備えた入射ビームとして前記標的試料を照光し、更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記入射ビームの前記スポット領域を変更する段階を更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記透過検出器がX線撮像装置を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
標的試料内の潜在的脅威を検出するための方法であって、
a) 光子の光子源を提供する段階と、
b) 前記標的試料を前記光子源からの光子で照光する段階と、
c) 対象とする少なくとも1つの核種を含む少なくとも1つの基準散乱体を提供する段階と、
d) 前記試料を透過した光子を前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱させる段階と、
e) 少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱する光子の強度を測定するための少なくとも1つの光子検出器を提供する段階と、
f) 前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれにおいて公称バックグラウンド信号を特定する段階と、
g) 前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれにおいて信号対雑音比を計算する段階と、
h) 1つ又は複数のシステムパラメータを調節して、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて信号対雑音比を向上する段階と、
i) 前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて検出された光子の前記強度が所定の脅威検出基準を満たす場合は、脅威検出イベントを識別する段階とを含む、方法。
【請求項36】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記標的試料の領域における前記光子の実効ドウェル時間を変更する段階を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、フィルタを前記光子源に挿入する段階を更に含み、前記フィルタが、選択したエネルギー又はエネルギー領域を備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記光子源が、電子ビームエネルギー及び制動放射線標的を含み、更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記電子ビームエネルギーを変更する段階を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記光子源の強度を変更する段階を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記光子源がコリメートされており、前記光子源の強度を変更する前記段階が、前記光子源のコリメーションを変更する段階を更に含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記光子検出器の少なくとも1つがコリメートされており、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記コリメートした光子検出器のコリメーションを変更する段階を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、フィルタを前記少なくとも1つの光子検出器の少なくとも1つの前に挿入する段階を更に含み、前記フィルタが、選択したエネルギー領域内のエネルギーを備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記光子源からの前記光子が、前記標的試料上の入射点におけるスポット領域を備えた入射ビームとして前記標的試料を照光し、更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記入射ビームの前記スポット領域を変更する段階を更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
標的試料内の潜在的脅威を検出するための方法であって、
a) 光子の光子源を提供する段階と、
b) 前記標的試料を前記光子源からの光子で照光する段階と、
c) 前記標的試料を透過する光子の強度を、前記光子が前記標的試料を照光する前記標的試料上の位置の関数として測定するための透過検出器を提供する段階と、
d) 前記標的試料を透過する光子の強度を、前記光子が前記標的試料を照光する前記標的試料上の位置の関数として用いて、更なる走査を行うために、対象とする少なくとも1つの領域を識別する段階と、
e) 対象とする少なくとも1つの核種を含む少なくとも1つの基準散乱体を提供する段階と、
f) 前記試料の前記対象とする少なくとも1つの領域を透過した光子を、前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱させる段階と、
g) 少なくとも1つのエネルギーチャンネルにおいて前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱する光子の強度を測定するための少なくとも1つの光子検出器を提供する段階と、
h) 前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれにおいて公称バックグラウンド信号を特定する段階と、
i) 前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルそれぞれにおいて信号対雑音比を計算する段階と、
j) 1つ又は複数のシステムパラメータを調節して、前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて信号対雑音比を向上する段階と、
k) 前記対象とする少なくとも1つのエネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて検出された光子の前記強度が所定の脅威検出基準を満たす場合は、脅威検出イベントを識別する段階とを含む、方法。
【請求項45】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記標的試料の領域における前記光子の実効ドウェル時間を変更する段階を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、フィルタを前記光子源に挿入する段階を更に含み、前記フィルタが、選択したエネルギー又はエネルギー領域を備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記光子源が、電子ビームエネルギー及び制動放射線標的を含み、更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記電子ビームエネルギーを変更する段階を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記光子源の強度を変更する段階を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記光子源がコリメートされており、前記光子源の強度を変更する前記段階が、前記光子源のコリメーションを変更する段階を更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記光子検出器の少なくとも1つがコリメートされており、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記コリメートした光子検出器のコリメーションを変更する段階を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、フィルタを前記少なくとも1つの光子検出器の少なくとも1つの前に挿入する段階を更に含み、前記フィルタが、選択したエネルギー領域内のエネルギーを備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記光子源からの前記光子が、前記標的試料上の入射点におけるスポット領域を備えた入射ビームとして前記標的試料を照光し、更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記入射ビームの前記スポット領域を変更する段階を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記透過検出器がX線撮像装置を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項54】
標的試料内の潜在的脅威を検出するための方法であって、
a) 光子の光子源を提供する段階と、
b) 前記標的試料を前記光子源からの光子で照光する段階と、
c) 対象とする少なくとも1つの核種を含む少なくとも1つの基準散乱体を提供する段階と、
d) 前記試料を透過した光子を前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱させる段階と、
e) 少なくとも1つの基準光子エネルギーチャンネルにおいて、前記少なくとも1つの基準散乱体から散乱する光子の強度を、前記光子が前記標的試料を照光する前記標的試料上の位置の関数として測定するための少なくとも1つの基準光子検出器を提供する段階と、
f) 前記対象とする少なくとも1つの基準光子それぞれにおいて前記基準光子検出器により測定された光子の前記強度を用いて、更なる走査のための対象とする少なくとも1つの領域を識別する段階と、
g) 少なくとも1つの散乱光子エネルギーチャンネルにおいて前記標的内の対象とする領域から散乱する光子の強度を測定するための少なくとも1つの散乱光子検出器を提供する段階と、
h) 前記対象とする少なくとも1つの散乱光子エネルギーチャンネルそれぞれにおいて、前記少なくとも1つの散乱光子検出器により測定された光子の公称バックグラウンド信号を特定する段階と、
i) 前記対象とする少なくとも1つの散乱光子エネルギーチャンネルそれぞれにおいて信号対雑音比を計算する段階と、
j) 1つ又は複数のシステムパラメータを調節して、前記対象とする少なくとも1つの散乱光子エネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて信号対雑音比及び/又は統計精度を向上する段階と、
k) 前記対象とする少なくとも1つの散乱光子エネルギーチャンネルの少なくとも1つにおいて検出された光子の前記強度が所定の脅威検出基準を満たす場合は、脅威検出イベントを識別する段階とを含む、方法。
【請求項55】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記標的試料の領域における前記光子の実効ドウェル時間を変更する段階を更に含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、フィルタを前記光子源に挿入する段階を更に含み、前記フィルタが、選択したエネルギー又はエネルギー領域を備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記光子源が、電子ビームエネルギー及び制動放射線標的を含み、更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記電子ビームエネルギーを変更する段階を更に含む、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記光子源の強度を変更する段階を更に含む、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記光子源がコリメートされており、前記光子源の強度を変更する前記段階が、前記光子源のコリメーションを変更する段階を更に含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記散乱光子検出器の少なくとも1つがコリメートされており、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記コリメートした散乱光子検出器のコリメーションを変更する段階を更に含む、請求項54に記載の方法。
【請求項61】
1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、フィルタを前記少なくとも1つの散乱光子検出器の少なくとも1つの前に挿入する段階を更に含み、前記フィルタが、選択したエネルギー領域内のエネルギーを備えた光子を吸収する1つ又は複数の核種を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項62】
前記光子源からの前記光子が前記標的試料を入射ビームとして照光し、前記少なくとも1つの散乱光子検出器それぞれが、前記標的試料を前記入射ビームに対して検出角度で眺め、更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記検出角度を変更する段階を更に含む、請求項54に記載の方法。
【請求項63】
前記光子源からの前記光子が、前記標的試料上の入射点におけるスポット領域を備えた入射ビームとして前記標的試料を照光し、更に、1つ又は複数のシステムパラメータを調節する前記段階が、前記入射ビームの前記スポット領域を変更する段階を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項64】
潜在的な脅威を探して標的試料を走査するための方法であって、
a) 前記標的試料に入射する光子の光子源を提供する段階であって、幾らかの光子を前記試料から散乱させ、幾らかの光子を前記試料内に透過させる、提供する段階と、
b) 前記標的試料の少なくとも一部を透過した光子の強度を測定する段階と、
c) 前記標的試料の前記少なくとも一部を透過した光子の前記測定強度を用いて、更なる検討のため、対象とする少なくとも1つの領域を識別する段階と、
d) 前記対象とする少なくとも1つの領域に関して、
i) 前記標的試料から散乱した光子のエネルギースペクトルを測定する段階と、
ii) 前記対象とする領域から散乱する光子の前記エネルギースペクトルを用いて、検出確率及び誤肯定結果を得る確率を計算する段階と、
iii) 前記対象とする領域から散乱した光子の前記測定エネルギースペクトルを用いて、脅威が検出されたか否かを特定する段階と、
iv) 脅威が検出されなかった場合は、
A) 前記検出確率が、所定の所望検出確率を満たし或いは上回ったかを判断する段階と、
B) 前記検出確率が所定の前記所望の検出確率を満たし或いは上回った場合、前記対象とする領域の走査を終了する段階と、
C) 前記少なくとも1つの走査評価パラメータが前記所定の所望検出確率を満たさない或いは上回った場合は、1つ又は複数のシステムパラメータを調節し、且つ前記(i)乃至(iv)段階を繰り返す段階と、
v) 脅威が検出された場合は、
A) 前記脅威検出が誤肯定結果信号である確率が、誤肯定結果を得る所定の所望確率を上回るか否かを特定する段階と、
B) 前記脅威検出が誤肯定信号である確率が、誤肯定結果を得る所定の所望確率を満たす或いは上回った場合は、1つ又は複数のシステムパラメータを調節し、且つ前記(i)乃至(v)段階を繰り返す段階と、
C) 前記脅威検出が誤肯定結果信号である確率が、誤肯定結果を得る所定の所望確率を満たさない又は上回らない場合、脅威検出肯定イベントを識別する段階とを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−513336(P2007−513336A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541575(P2006−541575)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/039043
【国際公開番号】WO2005/081017
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506174337)パスポート システムズ, インク. (4)
【氏名又は名称原語表記】PASSPORT SYSTEMS, INC.
【住所又は居所原語表記】15 Craig Road, Acton, MA 01720(US)
【Fターム(参考)】