核酸およびタンパク質の解析のための高耐久性装置
本発明は、核酸解析装置を高耐久化するための方法およびシステムを提供する。高耐久性装置は、法医学的データを収集し解析するために例えば犯罪現場などの非管理環境において、および例えば看護所の地でなどの半管理環境において、確実に効果的に使用されることが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、核酸および/またはタンパク質解析デバイスに関し、より詳細には、移動実験室と、診療所と、病院検査室と、他の人間の、動物の、または環境の診療および/または検査実験室ならびに看護所の地とを含む非管理環境または半管理環境において、核酸およびタンパク質のシークエンシングまたは分離のために使用されることが可能な、低消費電力要求仕様の高耐久性デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムプロジェクトが、ゲノム解析のための多種多様な技術の開発に触媒作用的な影響を及ぼしてきた。進歩の主要な分野は、DNAシークエンシングの方法に関する。また、さらに、一塩基多型(SNP)検出、一本鎖高次構造多型(SSCP)、ヘテロデュプレックス分析(HA)、縦列型反復配列(STR)、およびマイクロサテライト分析または単純反復配列(SSR)分析を含む、いくつかの重要な遺伝子型決定技術および遺伝子差異検出技術が、開発されてきた。
【0003】
上述のDNAシークエンシングの方法は、DNA断片をサイズにより分離するために電気泳動法を使用し、特定の断片の検出のために標識(最も普通には蛍光標識色素)を使用する。多数の市販の色素、およびInvitrogen−Molecular Probesを含む市販業者より入手可能な核酸の標識化用の関連するリンカーがある。
【0004】
DNAシークエンシング法は、チェーンターミネーション法(Sangerら、1977年)と、化学分解法(MaxamおよびGilbert、1977年)とに基礎を置かれることが可能である。Sangerのシークエンシング法においては、一本鎖DNA分子の配列が、相補的なポリヌクレオチド鎖の酵素による合成により決定され、これらの鎖は、特定のヌクレオチド配列部位で終結する。MaxamおよびGilbertのシークエンシング法においては、二本鎖DNA分子の配列が、特定のヌクレオチド配列部位で分子を断片化する化学薬品を用いた処理により決定される。シークエンシングの方法は共に、それぞれの塩基を同定するために色素標識を使用し、所与の塩基の鎖の終端の断片サイズを決定するために電気泳動に基礎を置く分離を使用する。
【0005】
解析のために標識DNA断片を生成するための反応において色素プライマまたは色素ターミネータを使用するSangerにもとづく反応が、今日では広く普及している。Applied BiosystemsおよびGE Amershamを含む、市販のサイクルシークエンシングキットの多数の製造業者がある。これらの市販のキットは、R110、R6G、TMR、およびROXの色素(Amersham Thermosequenase II Dye Terminator Cycle Sequencing Kits)と、5CFB−R110、5CFB−R6G、5CFB−TMR、5CFB−ROXのエネルギー伝達色素(Amersham DYEnamic ET Terminator Cycle Sequencing Kit)とを使用する。DNAシークエンシング用に設計された市販の色素キットに加えて、色素、およびInvitrogen−Molecular Probesを含む市販業者より入手可能な核酸の標識化用の関連するリンカーもまた、使用可能である。
【0006】
所与の断片のDNA配列の迅速な決定が可能であること、または所与の断片のサイズの決定が可能であることにより、多くの医学的および法医学的な問題への解決法が提供される。例えば、DNA解析は、癌、感染症(例えば、敗血症などのウイルス性疾患および細菌性疾患)、および遺伝性疾患(嚢胞性線維症など)の診断を補助することが可能である。DNA解析は、患者の薬剤反応性を判定するのを可能にすることにより、医薬品を個人用に決定するのを補助することが可能である。同様に、DNAシークエンシングまたは断片サイジングが、疾病に関して明らかに健康である患者を審査にかける際に、あるいは遺伝子または遺伝子マーカの綿密な特徴づけにもとづく臨床試験において患者または志願者を包含もしくは除外するために、有用性を有する。
【0007】
ヒトゲノムの研究が、特定の突然変異または多形現象の存在を明らかにしてきており、
明らかにし続ける。頻度を増加させながら、これらの突然変異または多形現象は、単一遺伝子疾患または複数遺伝子疾患に関連している。結果として、分子診断学の分野が成長し拡大しつつある。分子診断テストは、マイクロサテライトおよびSTRなどの多形性マーカと、腫瘍性疾患および他の疾患に関連する突然変異の決定とを使用する。例えば、単純疱疹ウイルス(HSV)、サイトメグリアウイルス(CMV)、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのいくつかのウイルス感染の存在が、増殖されたおよび分離されたDNA断片を使用して、診断されてきた。また、いくつかのタイプの癌診断が、増殖されたDNA断片の分離を利用して実施される。具体的には、B細胞リンパ腫およびT細胞リンパ腫の診断が、同カテゴリーに該当する。癌が発症すると、単一形式の再配列されたDNAを有する単一の細胞が、高い割合で成長し、その形式の遺伝子が優位となるに至る。突然変異遺伝子の分離および同定が、従来のまたはマイクロチップのデバイスを使用して実施されることが可能である。シークエンシングおよび分離の方法ならびに装置の分子診断学への適用の説明については、概して、Bosserhoffらによる、「Use of
Capillary Electrophoresis for High Throughput Screening in Biomedical Applications,A Minireview」(「Combinational Chemistry & High Throughput Screening」、第3号、455〜66ページ、2000年)と、Ferranceらによる「Exploiting Sensitive Laser−Induced Fluorescence Detection on Electrophoretic Microchips for Executing Rapid Clinical Diagnostics」(「Luminescence」、第16号、79〜88ページ、2001年)を参照されたい。またそれらの開示は、それら全体として、参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
法医学的分析に関して、シークエンシング、および特にDNA断片のサイジングが可能であることは、被疑者の迅速な逮捕(故に、累犯の減少)を可能にし、および無実の罪を課された人の容疑を晴らすことを可能にする可能性を有する。ヒトゲノムは、縦列型反復配列(STR)から構成された複数の一続きのDNAを含む。今日まで、数百のSTRの遺伝子座が、ヒトゲノム中で位置付けられてきた。そのような遺伝子座の解析(ミニ−STR、Y−STR、およびミトコンドリア配列を含む)は、法医学的研究のための重要な手段である。例えば、通常、法医学的ケースワークは、複数の遺伝子座の分離および解析を伴う。いくつかのテストは、アメロゲニン(性別決定マーカ)と、4つの追加遺伝子座であるD351358、D19S433、D16S539、およびD2S1338と共に、「Second Generation Multiplex」(SGM)として知られる6遺伝子座テストを使用する。他の市販のキットが、15のテトラヌクレオチドSTR遺伝子座およびアメロゲニンマーカ(例えば、AmpFISTR Identifiler PCR Amplification Kitを参照)を同時に増殖させる。一般的に、米国連邦捜査局(FBI)、欧州法科学研究所連合(European Network of Forensic Science Institutes)(ENFSI)、および国際刑事警察機構は、Combined DNA Index System(CODIS)の下で基準化された、少なくとも13のコアSTR遺伝子座、すなわちCSF1PO、D3S1358、D5S818、D7S820、D8S1179、D13S317、D16S539、D18S51、D21S11、vWA、FGA、TH01、およびTPOXを含むキットによる結果を識別する。概略的な説明については、Budowle,Bらによる「CODIS and PCR Based Short Tandem Repeat Loci:Law Enforcement Tools」(Second European Symposium on Human Identification、73〜88ページ、1998年)を参照されたい。またこれは、その全体として、参照により本明細書に組み込まれる。
【0009】
典型的なSTR遺伝子座は、400塩基対の長さを下回り、2から7塩基対の長さである単一の反復ユニットを含む。STRは、反復数における個々の間の大きな差異により高
度に多形性である対立遺伝子を画定することができる。例えば、ヒトゲノム中の4つの遺伝子座CSF1PO、TPOX、THO1、およびvWA(短形のCTTv)が、反復数において異なるSTR対立遺伝子により特徴付けられる。2つの反復ユニット、つまり、TPOXおよびTHO1についてはAATGが、ならびにCSF1POおよびvWAについてはAGATが、これらの遺伝子座にて見られる。
【0010】
一般的に、STR解析は、DNAサンプルからSTRプロファイルを生成することと、生成されたSTRプロファイルを他のSTRプロファイルと比較することを伴う。通常、STRプロファイルの生成は、PCRまたは他の増殖法を使用するSTR遺伝子座の増殖と、DNAサンプル中のSTRの染色および標識付けと、電気泳動法を使用する(電界を印加する)サンプル中の標識付けされたSTRの分離と、サンプルへおよび次いで光検出器へ蛍光励起デバイスを向けるための、レーザまたは他の蛍光励起デバイスおよび検流計または他のデバイスを使用する標識付けされたSTRの記録とを伴う。
【0011】
STRプロファイルを生成するための一工程が、約35cmの長さの細長いゲルプレート(またはスラブゲル)を使用する。一般的に、同プロセス(以下、「ゲルプレートプロセス」と呼ぶ)は、ゲルプレートの領域上への、標識付けされた核酸サンプル(ほとんどの場合はDNAだが、当業者に理解されるように、RNAもまたいくつかの適用例に使用されてよい)の配置と、電気泳動法を使用するゲルプレート上の標識付けされたDNAサンプル中のSTRの分離と、標識付けされたSTRを記録するための検出器を用いたゲルプレートの走査とを伴う。通常、ゲルプレートプロセスは、完了するのに2〜3時間を要する。
【0012】
STRプロファイルを生成するための他の工程が、直径50〜75ミクロンのキャピラリーを使用する。一般的に、同プロセス(以下、「キャピラリープロセス」と呼ぶ)は、キャピラリーの一方の端部で標識付けされたDNAサンプルを動電学的に注入することと、STRを分離させるために電気泳動法を使用してキャピラリーを介してサンプルを引きつけることとを伴う。レーザ光線が、サンプル中の標識付けされたSTRを励磁して、標識付けされたSTRを蛍光発光させるために使用される。STRにより発光された蛍光が、例えばレーザなどの蛍光励起デバイスを用いてキャピラリーの部分を走査することにより、検知される。
【0013】
通常、STR分離は、ゲルプレートプロセスにおけるものに比べ、キャピラリープロセスにおけるものの方が早い。一般的に、電気泳動流の増進が、STR分離速度の増進をもたらし、通常は、より高速の電気泳動流が、キャピラリーは分離結果をゆがめ得る(電気泳動流により引き起こされた)熱をより容易に放散させるので、ゲルプレートに比べ、キャピラリーへ適用されることが可能である。通常のキャピラリープロセスは、完了するのに10分から1時間の間の時間を要する。
【0014】
しかし、温度制御は、キャピラリーにもとづくDNA分離デバイスの精度に関して、決定的な要素である。このことが、なぜ先行技術のデバイスが、険しく、非管理または半管理の環境あるいは適用例について適していないかの理由を示す。先行技術のデバイスは、注入され、同一温度にて同時に流れる16ものキャピラリーを使用し、それにより、流れの中の精度が高いことが予期されることが可能となり、流れ中の対立遺伝子ラダーに関連しサイジングされたデータが信頼性のあるものであることが予期されることが可能となる。しかし、流れの中の精度は、温度の変動に左右されるようである。温度が流れごとに変化すれば、知られていない断片が、別の流れの中の対立遺伝子ラダーによりサイジングされることが不可能となり得る。ビンの外にある断片は、「オフ・ラダー」対立遺伝子と呼ばれてよく、または隣接ビン中へ落ちることによりミスタイプされ得る。結果として、動タイプのデバイスを使用して解析されたサンプルは、誤って特徴付けられ、それにより、得られる結果の質がかなり低下し得る。
【0015】
STRプロファイルの生成のための他の工程は、マイクロ流体チッププロセスを使用する。マイクロ流体技術は、微量(マイクロリットル、ナノリットル、またはピコリットル)の液体を操作することが可能な構造物を作るため半導体製造技術を使用して組み立てられるシステムを示すために概して使用される用語であり、大規模な分析化学装置を、数百
倍または数千倍より小さくより効率的であり得るデバイスと交換する。概して、マイクロ流体デバイス(チップ)は、1ミリメートル未満の1寸法を少なくとも有するチャネルがあることにより特徴付けられる。同様に、マイクロチャネルは、約1ミリメートル未満である1寸法を少なくとも有するチャネルである。マイクロ流体チップは、従来のデバイスに比較して、少なくとも2つの主要な利点を提供する。第1に、これらのチャネル中で必要とされるサンプルおよび試薬の量が少なく、最小限のサンプルの量(一般的に数ナノリットル)が可能であり、試薬コストを低減させる。第2に、そのようなチャネルおよび同一の寸法の電気的または機械的デバイスを含むシステムにより、少量中での多数の複雑なサンプル操作の実行を可能にする。最後に、このような小さな構造物を含むシステムが、複数のサンプルの同時処理を可能にするように高度に多重化されることが可能である。
【0016】
概して、チップは、耐久性透明ガラスから構成される。典型的なチップは、チャネル中へ導入されるサンプルのためのアクセスポイントを有する平面基板中に製造された1つまたはそれ以上のチャネルから構成される。一実施形態において、チャネルは、ロングアーム(場合により「ロングチャネル」と呼ぶ)およびショートアーム(場合により「ショートチャネル」と呼ぶ)から構成されることが可能である。個々のSTR分離が、各チャネルで実行されることが可能である。ショートアームは、ロングアームの一方の端部の付近で、ある角度で、ロングチャネルと交差する。いくつかのチップにおいては、ショートアームは、ジョグを有し、そこにおいて、それは、ショートチャネルの部分が平行であるがしかし同一直線ではないように、ロングチャネルと交差する。通常、チップは、溶融シリカウエハ中にチャネル構造体を生成するために、フォトリソグラフィ技術および化学エッチング技術を使用して形成される。これらの食刻されたチャネル構造体は、食刻されていない溶融シリカウエハへ結合されて、完全なチャネル構造体を形成する。
【0017】
概して、チップを使用するSTR分離プロセスは、マイクロチップおよびチャネルが中に水平に(すなわち、重力方向へ垂直に)位置するようにマイクロチップを配向し、一対のチャネルのショートチャネルの一方の端部に接続されるマイクロチップの上面中の孔の上に標識付けされたDNAのサンプルを配置することを伴う。次に、標識付けされたDNAのサンプルは、サンプル中のSTRが、ショートチャネルに沿って部分的に分離されるように、電気泳動法を使用して、ショートチャネルを通り水平に引きつけられる。次いで、ロングチャネルおよびショートチャネルの交差部のサンプル部分が、電気泳動法を使用して、ロングチャネルに沿ってさらに分離される。レーザが、蛍光発光する標識付けされたSTRを励磁する。STRより発光される蛍光が、ゲルプレートプロセスおよびキャピラリープロセスのそれと同様の態様において、検出され、記録される。
【0018】
チップを使用する従来の高速DNA遺伝子型決定が、「High−Speed DNA
Genotyping Using Microfabricated Capillary Array Electrophoresis Chips」(「Analytical Chemistry」、第69巻、11号、2181〜2186ページ、1997年6月1日)と題された記事の中で説明されており、その教示が、その全体において、参照により本明細書に組み込まれる。キャピラリー電気泳動チップを使用する超高速DNAシークエンシングが、「Ultra−High−Speed DNA Sequencing Using Capillary Electrophoresis Chips」(「Analytical Chemistry」、第67巻、20号、3676〜3680ページ、1995年10月15日)と題された記事の中で説明されており、その教示が、その全体において、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
その教示がその全体において参照により本明細書に組み込まれる、Adourianらへ発行された米国特許第6,207,031号が、対立遺伝子プロファイリング分析において有用な自動分離デバイスを説明する。米国特許第6,207,031号に説明される分離デバイスは、サンプルを迅速に解析することが可能となるために十分な寸法の断面および長さのチャネルを有する微細加工チャネルデバイスを有する。具体的には、微細加工チャネルは、変性条件下で施される交換可能なポリアクリルアミドマトリックスを充填され、蛍光標識されたSTRラダーが、対立遺伝子の同定のための内部標準として使用され
る。分析法により解析されるサンプルが、標準的な工程により準備されることが可能であり、少量の分析物だけが、解析ごとに必要とされる。同デバイスは、反復的に実施することが可能であり、自動高速の適用例に適する。
【0020】
米国特許第6,207,031号に説明される分離デバイスは、比較的短時間における多数のサンプルの分離に効果的である一方で、米国特許第6,207,031号のデバイスは、管理環境下の実験室環境内に配置される必要がある。結果として、例えば、診療所などの看護所の地にて、または非常災害地にての上述のデバイスの使用などの現場使用においては、これは、これらのデバイスの寸法、エネルギー必要量、および操作上(すなわち、高精度の光学機器への最小限の振動衝撃)の制約のため、実用的でない。また、さらに、これらのデバイスは、これらのデバイスの現場使用の有用性を制限する高電力消費性を有する。
【0021】
したがって、シークエンシングデバイスおよび分離デバイスを高耐久性にし、それにより現場において、または非管理環境において、確実で時宜を得た計測を求めることを可能にするための産業において、満たされていない需要がある。さらに、マイクロ流体工学を使用した市販の適切に高耐久化されたシークエンシングおよび/または分離デバイスを提供する産業ニーズがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
概して、本発明は、小型化された、高速の、高耐久化された、核酸シークエンシングおよび分離デバイスに関する。このようなデバイスは、診療所、病院検査室、ならびに他の人間と、動物と、環境との診療および/または検査実験室、ならびに他の看護所の地における用途を有する。本発明のデバイスは、技術のないまたはあまり技術のない操作者による、管理されたまたは非管理の環境地における利用に適している。本発明のデバイスは、先行技術の機械に対する大幅な性能改善をもたらすことが予期され得る。本発明のデバイスは、サンプルおよび試薬の量の劇的な削減と、マクロスケール計測装置を用いてでは不可能である独自のマイクロスケール化学実験を可能にすることと、さらに例えば診療所などの非管理、半管理の環境、実験室、または例えば移動式の法医学科学捜査研究所などの厳しい環境、実験室、あるいは過酷もしくはやや過酷な物理的位置または環境にある診察所において、作動が可能であることとの、圧倒的な利点を提供する。
【0023】
さらに、本発明にしたがって説明されるデバイスは、キャピラリーアレイまたはその均等物の温度を、非常に正確な温度範囲(例えば、±1℃以内)に維持し、それにより外部環境の温度の変化による実施ごとの変動を最小化する、新規のシステムを含むことが可能である。結果として、分離の際に生成される「オフ・ラダー」対立遺伝子の数が、低減され、したがって、取得される結果の質が、先行技術のデバイスに比べて向上する。さらに、本明細書中で説明される本発明の実施形態は、低電力レベルを使用して実施され、それにより、本発明による機械およびデバイスを、携帯使用および/または現場使用に適したものにする。
【0024】
また、本発明は、DNA分離/シークエンシングデバイスのための、反射鏡、レーザ、スキャナなどを含む光検出素子および発光素子の支持に関する。本発明の核酸およびタンパク質解析デバイスは、良好な成果のためマイクロ流体レーンを再現性よく検出する、特別なレーザレンズおよび高精度光学式走査デバイスを組み込む。光発光および検出システムの構成要素のそれぞれが(例えば、レーザ、反射鏡、スキャナ、フィルタ、光検出器)、レーザ光線経路のある部分を制御するため、構成要素の任意の移動または転位が、データ収集において障害を引き起こし得る。これらの障害の結果として、データフローが、中断または損なわれるおそれがあり、それにより不正確な結果を生じさせる。また、キャピラリーシステムを使用する先行技術のデバイスも、レーザにもとづく光発光および検出システムを利用し、したがって、本明細書中で説明される本発明を使用して高耐久化なされ得る。本発明のデバイスは、高耐久性のレーザレンズと、振動および/または衝撃の結果として、検出された信号中に生成されるノイズの量を最小化する、マイクロ流体レーンを再現性よく検出するための検出システムとを有する。さらに、いくつかの実施形態におい
て、本発明は、電気泳動および解析のための従来の実験室用シークエンシングデバイスに比べ、より少ないエネルギーを要するデバイスに関する。結果として、本発明のデバイスは、現場において確実に使用されることが可能でありながら、高分解能の結果を得る。先行技術の核酸シークエンシングおよび分離デバイスもまた、キャピラリーレーン中で、特別なレーザレンズおよび検出システムを使用する。当業者は、本発明の教示により高耐久化された、キャピラリーシステム内で通常使用されるレーザレンズおよび検出システムを、容易に利用することが可能であろう。
【0025】
概して、本明細書中で使用される「生体分子検体」という用語は、非合成のおよび合成の核酸(例えばDNAおよびRNA)とそれらのいくつかの部分、ならびに生体タンパク質の両者を指す。本明細書で説明されるのは、現場におけるそのような生体分子検体の対立遺伝子プロファイリングのための、実用的な超高速技術である。特に、技術は、核酸またはタンパク質のサンプル内の縦列型反復配列(STR)を解析するため、または核酸配列の決定が可能になるようにDNA分子を分離するため、マイクロ流体電気泳動デバイスを使用することを含む。さらに、当業者は理解するであろうが、サンプルは、検出デバイスにより検出されることが可能なものを含むように、修正され、標識付けされ得る。標識付けは、色素、クロモフォア、フルオロフォア、熱量測定の付加化合物、または放射性付加化合物をサンプル中へ混合することを無制限に含む、任意の適用可能な方法により遂行され得る。本発明の分析方法は、単一遺伝子座のSTRサンプルの、基線分解される電気泳動分離を迅速に実現することを可能にした。一実施形態において、数または反復数において異なるSTRにより定義され特徴付けられる遺伝子座を含むサンプル(例えば、PCRサンプル)の解析が、本明細書中で説明される対立遺伝子プロファイリング分析を利用して、迅速に実施される。例えば、4〜5の遺伝子座を含むPCRサンプルの解析が、約30分未満で実施されることが可能である。
【0026】
また本明細書中で説明されるのは、本発明の対立遺伝子プロファイリング分析において有用な、分離デバイス(またはテストモジュール)である。分離デバイスは、サンプルが迅速に解析されることが可能となるのに十分な断面および長さにおける寸法のチャネルを有するマイクロチャネルデバイスを含む。一実施形態においては、分離デバイスが、断面が約300〜16,000平方ミクロンで、長さが約100〜500mmである断面積を有するマイクロチャネルから構成される。いくつかの実施形態においては、マイクロチャネルが、約2,500平方ミクロンで、長さ180mmの、好ましい断面積を有する。蛍光標識付けされたSTRラダーが、対立遺伝子同定のための内部標準として使用される。解析法により解析されるサンプルは、標準的な工程により用意されることが可能であり、少量(例えば、4マイクロリットルまたはそれ未満)のみが、解析ごとに必要とされる。
【0027】
さらに、本発明のデバイスは、シークエンシングにおいて使用されることが可能である。人間および他のゲノムの大量のシークエンシングが完了したが、特に半管理または非管理の環境において、小部分のゲノムをシークエンスする十分な事情がまだなお存在する。例えば、1,000を上回る多様な突然変異が、嚢胞性線維症を有する患者の中に発見されている。これらの突然変異はそれぞれ、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)として知られる1,480のアミノ酸のタンパク質をエンコードする非常に大きな遺伝子中で起きる。遺伝子は、7番染色体の27エクソンに散らばる6,000を上回るヌクレオチドを含む。タンパク質中の欠陥が、疾患の多様な症状を引き起こす。単一の突然変異が、嚢胞性線維症の全てのケースの要因となるわけではない。疾患を有する人々は、2つの突然変異遺伝子を受け継ぐが、特定の突然変異が必ずしも同一である必要はない。したがって、特定の突然変異を同定可能であることは、いくらかの予測上の価値がある。他の例として、AIDSウイルスは、非常に急速に突然変異し、治療を行う医者は、患者が疾患の経過の各段階で突然変異ウイルスと戦うために、適切な治療を受けて帰宅することが可能となるように、看護所の地で突然変異ウイルスのシークエンスを行うことができる必要がある。さらに他の適用例において、癌患者の術中診断を行う腫瘍外科医は、看護所の地で、配列情報を受け取ることができる必要がある。
【0028】
また、本明細書中で説明されるのは、ソースが自然のものであるか(例えば、鳥インフ
ルエンザまたは重症急性呼吸器症候群(SARS)など)、あるいは人的活動に関するものであるか(例えば、炭疽菌または他の生物兵器など)に関わらず、環境中の感染性因子の同定において有用である携帯用デバイスである。本明細書中で説明される多くの有用物および方法において、DNAシークエンシングおよびサイジングデータを収集することの価値は、現場においてそれが可能であることにより、強化される。したがって、携帯用の高耐久性DNA解析計測装置は、多様な適用例について利用価値がある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
概して、一態様において、本発明は、生体分子検体のサンプルの解析のための高耐久性装置を特徴とする。高耐久性装置は、ホルダと、電気泳動デバイスと、低出力光源(すなわち、240ボルトで約10アンペア未満を消費する光源)と、光検出器と、複数の光学デバイスとを有する。高耐久性装置のホルダは、透明テストモジュールに配設された少なくとも1つのチャネルを有する透明テストモジュールを支持する。電気泳動デバイスは、ホルダに接続され、透明テストモジュールへエネルギーを供給する。光源は、生体分子検体のサンプルを励起することが可能な光線を発光する。装置内に設けられた複数の光学デバイスは、蛍光標識付けされた生体分子検体のサンプルを励起するために、光源から透明テストモジュールへ光線を伝送する。また、これらの光学デバイスは、生体分子検体のサンプルから蛍光を収集し、光検出器へ同蛍光を伝送する。
【0030】
本発明の一実施形態において、高耐久性装置は、高耐久性装置へ電気エネルギーを供給するための、1.5kVAまたはそれ未満の最大電気消費量を有する携帯用電源をさらに備える。本発明の他の実施形態において、電気泳動デバイスは、透明テストモジュールへ熱エネルギーを供給するためのヒータと、複数の分離マイクロチャネルへ電気エネルギーを供給するための複数対の電極とを有する。他の実施形態において、装置は、透明テストモジュールへ熱エネルギーを供給するためのヒータと、少なくとも1つのチャネルへ電気エネルギーを供給するための複数対の電極とを有する。
【0031】
複数の光学デバイスは、装置内に配設されたベースプレートへ堅固に搭載されることが可能である。装置の光源は、固体レーザまたは任意の他の適切なレーザなどの、低出力レーザであってよい。透明テストモジュールの少なくとも1つのチャネルは、マイクロチャネルまたは複数のチャネルであってよい。
【0032】
他の態様において、本発明は、生体分子検体のサンプルを解析するための装置を特徴とする。装置は、その中に配設された少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを有する透明テストモジュールを支持するためのホルダを有する。電気泳動デバイスは、ホルダに接続され、透明テストモジュールへエネルギーを供給する。低出力光源は、生体分子検体のサンプル中に蛍光を励起する光線を発光する。装置内に設けられた複数の光学デバイスは、透明テストモジュールへ、および透明テストモジュールから光検出器へ、光源により発光された光線を伝送する。
【0033】
一実施形態において、複数の光学デバイスは、装置内に配設されたベースプレートへ堅固に搭載される。他の実施形態において、電気泳動デバイスは、透明テストモジュールへ熱エネルギーを供給するためのヒータと、少なくとも1つのマイクロ流体チャネルへ電気エネルギーを供給するための一対の電極とを有する。いくつかの実施形態において、透明テストモジュールは、複数のマイクロ流体チャネルを有する。いくつかの実施形態において、低出力光源は、低出力レーザを含む。いくつかの実施形態において、装置は、装置へエネルギーを供給するための携帯用エネルギー源をさらに有する。携帯用エネルギー源は、約1.5kVA未満の最大電力消費量を有することが可能である。
【0034】
他の態様において、本発明は、生体分子検体のサンプルを処理するための装置を特徴とする。装置は、その中に配設された少なくとも1つのチャネルを有する透明テストモジュールを支持するためのホルダを有する。電気泳動デバイスは、ホルダに接続され、透明テストモジュールへエネルギーを供給する。光線を発光するための光源は、生体分子検体のサンプル中に蛍光を励起させる。複数の光学デバイスは、単一部材の材料から形成されたベースプレートへ堅固に搭載される。ベースプレートに配設された光学デバイスは、透明テストモジュールへ、および透明テストモジュールから光検出器へ、光源により発光され
た光線を伝送する。一実施形態において、ベースプレートは、ベースプレートへの、フレームの下で生成された振動の伝送を低減するための減衰デバイスを含むフレームにより支持される。ベースプレートは、ベースプレート上の複数の光学デバイスの回転的な動きを制限するための複数の固定要素を有することが可能である。
【0035】
一実施形態において、透明テストモジュールを支持するためのホルダは、透明テストモジュールに配設された開口に電気的に接続されるように配設された一対の電極を有する第1の部材を有することが可能である。第2の部材は、透明テストモジュールが第1の部材と第2の部材との間に配置される場合に、透明テストモジュールの横方向への移動を低減するための自動ロック機能を備える。
【0036】
一実施形態において、装置の光源は、固定レーザ、低出力レーザ、または任意の他の適切なレーザである。装置の光検出器は、少なくとも5つの光電子増倍管を有することが可能である。
【0037】
他の態様において、本発明は、生体分子検体のサンプルを解析するための透明テストモジュールを特徴とする。透明テストモジュールは、透明な材料から形成された部材内に配設される、少なくとも1つの流体チャネルを有する。少なくとも1つの流体チャネルのそれぞれは、分離部分、不要物アーム部分、第1のサンプルアーム部分、および第2のサンプルアーム部分を有する。一実施形態において、第1のサンプルアーム部分は、バイアス溶液を受容するようになされ、第2のサンプルアーム部分は、生体分子検体のサンプルを受容するようになされる。他の実施形態において、少なくとも1つの流体チャネルは、マイクロ流体チャネルを有する。透明テストモジュールは、ガラス、ポリマー、コポリマー、またはそれらの任意の組合せから形成されることが可能である。
【0038】
他の態様において、本発明は、その中に配設される複数の分離流体チャネルを有する透明テストモジュールにおける、中央チャネル部分を決定する方法を特徴とする。方法は、複数の分離流体チャネルを有する透明テストモジュールを提供するステップであって、複数の分離流体チャネルのそれぞれは、前端位置、中央チャネル位置、および既知のチャネル幅を有するステップと、反射光線を生成するための光線を用いて、複数の分離流体チャネルのそれぞれを有する透明テストモジュールの部分にわたり走査するステップと、複数の分離流体チャネルのそれぞれを含む透明テストモジュールの部分を通る強度の波形を生成するために、光検出器を用いて反射光線を収集するステップと、複数の分離流体チャネルに関連付けされないことが決定されたピークを除外するステップと、複数の分離流体チャネルのそれぞれについて、前端位置の波形内の位置を同定するステップと、同定された前端位置のそれぞれから延在する、第1の距離内の波形に沿った全ての残りのピークを同定するステップと、同定された前端位置のそれぞれからの、第1の距離内の全ての残りのピークの位置の平均より、複数の分離流体チャネルのそれぞれの中央チャネル位置を決定するステップとを含む。
【0039】
前述のおよび他の本発明の特徴ならびに利点が、それらの中において同様の参照記号が種々の図面にわたり同一部分を示している添付の図面に示される、本発明の好ましい実施形態の、以下のより個別的な説明より明らかになろう。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、本発明の原理を図示することに重点が置かれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
現場(すなわち、実験室以外の使用)にて迅速におよび確実にサンプルを解析することが可能な高耐久性DNA分離/シークエンシングデバイスに対する切実な需要がある。DNA分離/シークエンシングデバイスを高耐久化するための伝統的なアプローチには、従来の実験室用デバイスへ、大きくて扱いにくい、クッションおよび/または構造的支持部材を追加することが含まれてきた。これらのアプローチは、クッションおよび/または構造的支持部材の追加重量によるデバイスの携帯不可能性と、デバイスが動かされた場合の衝撃および振動よりもたらされる励起および検出システムにおける光学的配列の欠損と、高精度装置に影響を及ぼす抑制できない振動力により生成される背景雑音の増加による、デバイスの結果の信頼度の欠如と、従来のデバイスに必要とされる固有の高電力消費率とを含む多数の理由により、産業ニーズを満たしてこなかった。
【0041】
伝統的なアプローチとは対照的に、本発明の実施形態は、生体分子検体の解析のために使用される、高耐久性DNA分離/シークエンシングデバイス(例えば、携帯ユニット中に設けられることが可能なデバイス)を対象とする。概して、本発明は、現場における、高速で確実な分離およびシークエンシング解析を可能にする。図1A、図1B、図2A、および図2Bを参照すると、高耐久性分離デバイス10が、テストモジュールホルダ20と、ホルダ20に連結された電気泳動組立体30と、サンプルホルダ20の下に配置され、保護カバー50(図1Aを参照)により保護された蛍光励起および検出システム40(図2Aおよび図2Bを参照)とを有する。蛍光励起および検出システム40は、ホルダ20中に開口42を有し、それにより、蛍光発光(例えば、レーザ光線)および結果的として誘発される蛍光発光を誘発するエネルギー源が、ホルダ20と、蛍光励起および検出システム40との間に生じることが可能となる。
【0042】
本発明の他の実施形態が、警察署、移動式法医学実験室、診療所、病院検査室、臨床検査室、および他の看護所の地などの非管理または半管理環境を対象とする。そのような環境において、技術のないまたはあまり技術のない操作者が、低コストで、殆どもしくは全く訓練または経験を必要とせずに、デバイスを操作し管理できなければならない。さらに、これらの環境は、周囲状況が大きく変化するような環境地にあるだろう。デバイスは、結果に影響を及ぼさずに、気温および他の環境的な変動に耐えることが可能でなければならない。この一態様は、手動の再配列または再初期化を必要としない、衝撃および振動に耐える能力である。さらに、これらの環境の多くにおいて、患者がデバイスの使用者(例えば、処置医、刑事巡査、科学捜査官、または他の使用者)と共にまだいる間に、迅速で、確実で、正確な結果が必要とされる。例えば、本発明によるデバイスは、病気の患者へ施すための適切な抗体療法を選択するために、検査の際に感染病医により、または、癌患者の術中診断を行うために、癌専門外科医により使用されることが可能である。
【0043】
テストモジュールホルダ20は、複数の個別のマイクロチャネルを有するテストモジュール55を受容し支持する。生体分子検体のサンプルが、マイクロチャネル中へ注入され、次いで、テストモジュール55は、解析のためホルダ20内へ配置される。テストモジュール55をホルダ20内へ挿入した後、使用者は、ホルダ20を閉状態に設置し(図1Bを参照)、それにより電気泳動組立体30は、テストモジュール55に接触する。ホルダ20が閉状態にある状態で、使用者は、電気泳動組立体30を作動させてテストモジュール55へ電圧を印加し、それにより生体分子検体を構成する構成要素(例えばSTR)が分離する。
【0044】
デバイス10中の、またはデバイス10へ取り付けられた各構成部材の寸法は、以下の要因のいずれかまたは組合せにより、小型化されることが可能である。すなわち、蛍光発光を誘発するために使用されるエネルギー源タイプの変更、必要電力消費量の低減、電子装置の寸法の削減、およびユニット中への試料調製の内蔵である。例えば、少分割量の血液が、デバイスのひとつのポートの中へ導入され、DNA抽出のため試料調整区域へ送られることが可能である。次いで、結果として得られたDNAサンプルが、本明細書の他の箇所で説明されるマイクロ流体チップにより処理され解析される。
【0045】
蛍光励起および検出システム40は、各マイクロチャネルの部分にわたりエネルギー源(例えばレーザ光線)を走査することにより、DNAサンプル(例えばSTR)の電気泳動により分離された構成要素を励起するとともに、記録し最終的に解析するために、生体分子検体から1つまたはそれ以上の光検出器へと、誘発された蛍光発光を収集し伝送する。一実施形態において、蛍光励起および検出システム40は、レーザ60、スキャナ62、1つまたはそれ以上の光検出器64、および様々な反射鏡68と、フィルタ70(例えば、バンドパスフィルタ、ダイクロイックミラー)、ピンホール500、レーザ光線調整器501、およびレーザ60から放射されたレーザ光線を開口42に通してモジュール55へ伝送し、誘発された蛍光発光を光検出器64へ送り戻すためのレンズ72とを有する。スキャナ62は、テストモジュール55に対し様々な走査位置へ入射レーザ光線を動かす。具体的には、レーザ光線は、レーザ光線調整器501を通過し、次いでスキャナ62へ進み、スキャナ62はテストモジュール55に対し様々な走査位置へ入射レーザ光線を
動かして、マイクロチャネル中のそれぞれの個別の構成要素から蛍光発光を誘発させる。誘発された蛍光発光は、開口数0.45および10倍率42の無限補正対物レンズ(Thales−Optem、Centerpoint、NY)を用いて収集され、スキャナ62(Cambridge Technologies,Cambridge,MA)により方向付けられ、検出器組立体502の前に配置されるピンホール500で像平面へ送られる。レンズ72Aは、焦点距離150mm、直径50.8mmの、2つの色消し複層レンズからなる組立体である。レンズ72Bは、焦点距離100mm、直径50.8mmの、色消し複層レンズである。レンズ72Cは、焦点距離150mm、直径50.8mmの、色消し複層レンズである。レンズ72Dは、ピンホール500を通過する蛍光発光を平行にし、検出器組立体502中へそれを伝達する。レンズ72Dは、焦点距離25.0mm、直径12.7mmの、平凸レンズである。検出器組立体502は、一組のバンドパスフィルタおよびロングパス・ダイクロイックミラーを通過する際に、検出器により収集される前に、蛍光発光の波長成分を分離させる。ダイクロックおよびバンドパスフィルタの組合せは、使用される色素について選択され最適化され、Chroma Technology Corp,Rockingham,VTを含む光学フィルタ業者より入手可能である。同実施形態において、1つまたはそれ以上の光検出器は、光電子増倍管(Hamamatsu,USA)である。また他の実施形態においては、検出器は、光電子増倍管、フォトダイオード、およびアバランシェフォトダイオードを有することが可能である。
【0046】
光検出器64の1つが、テストモジュール55からデータ(例えば、蛍光発光DNA/STR信号)を収集し、ポート75へ取り付けられたケーブルを介して、保護カバー50の外側に配置されたデータ取得および記憶システムへデータを電子的に供給する。一実施形態において、データ取得および記憶システムは、Option Industrial
Computers(Vaureuil−Dorion,Quebec,Canada)より市販の高耐久性コンピュータを含むことが可能である。
【0047】
ピンホール501で蛍光発光を画像化することにより、隣接するレーンからの色素と、基板からの蛍光発光と、検出経路中の光学素子からの蛍光発光とを含む背景信号を除去するために、蛍光発光の空間フィルタリングが可能になる。ピンホールの寸法は、50から2,000ミクロンの範囲であってよく、600ミクロンのものが、同実施形態のために選択されている。ピンホールの寸法は、チャネル中からの蛍光発光のみが通過することができ、したがってデバイスの信号対雑音比の結果的な増加が可能となるように選択される。
【0048】
光線調整器組立体501は、3つのレンズ72E、72F、および72Gから構成される。レンズ72Eおよび72Gは、焦点距離−75mm、直径1.27cm(1/2インチ)の平凹レンズであり、レンズ72Fは、焦点距離+75.6mm、直径1.27cm(1/2インチ)の平凸レンズである。レンズにより、レーザからの光線の寸法が調整されることが可能となり、マイクロチップ上の励起スポットの寸法が決定されることが可能となる。
【0049】
一実施形態において、ピンホール500およびコリメートレンズ72Dは欠如しており、蛍光発光が検出器組立体502中へ直接的に転送されることが可能である。同実施形態において、蛍光発光は、レンズ72Cにより、検出器64同士の間にある像平面へ集束される。
【0050】
一実施形態において、ビーム拡大器501組立体が欠如しており、そのため励起スポットの寸法は、レーザ60固有のスポット寸法により規制される。
一実施形態において、励起された蛍光からの波長識別が、検出器の前で、ショートパス・ダイクロイックミラー70、ロングパス・ダイクロイックミラー68、およびバンドパスフィルタの組合せを使用することにより実現される。デバイスの他の実施形態においては、フルオロフォアの波長識別は、CCDカメラまたはリニアアレイ検出器により検出されることの可能な空間分離された波長スペクトルを生成するために、検出器組立体502を分光計またはプリズムと交換することにより遂行されることが可能である。
【0051】
一実施形態において、光学素子は、短波長のレーザからの光を通過させるが、励起され
た蛍光発光からの光を検出器へ反射する、ショートパス・ダイクロイックミラー70である。他の実施形態において、光学素子70は、45度で穿孔された孔を有する反射鏡である。反射鏡中の孔は、レーザのビーム直径に比べ、50パーセントほどやや大きくなるように設計される。同素子により、ビーム直径が2mmであるレーザ光線からの光が通過することを可能としながら、同反射鏡で28mmのスポット寸法を有する蛍光発光の95パーセントを検出器へ反射する。
【0052】
蛍光励起および検出システム40と相互に影響し合う抑制されない振動が、データ収集に不利益をもたらし、最終的には信頼性のある結果の取得に対する障害となるおそれがある。これらの問題は、デバイスが移送され犯罪現場にて使用される場合(すなわち現場使用)などのように、DNA分離/シークエンシングデバイスが非管理環境において使用される場合に、悪化するおそれがある。環境振動の影響を低減するため、本発明は、1つまたはそれ以上の以下の様々な要素を含む。これらの要素のそれぞれは、デバイスの全重量または全容積へ最小限の影響を有し、したがって、本発明のデバイスが容易に移送される(すなわち携帯可能である)ことを可能にする。例えば、一実施形態において、蛍光励起および検出システム40は、単一部材の材料(すなわち単一構造体)から形成されたプレート80上に存在する。すわなち、レーザ60、スキャナ62、1つまたはそれ以上の光検出器64、反射鏡68、フィルタ70、およびレンズ72は、例えばアルミニウムの単一部材などの単一部材の材料から構成されるプレート80へ固定される。結果として、蛍光励起および検出システム40の全構成要素は、連結部を有さない共有ベース、あるいは蛍光励起および検出システム40へ振動を伝送しかつ/または生成することが可能でありうる他の交点を有する。蛍光励起および検出システム40の構成要素は、1つまたはそれ以上の光学工業で通常使用される固定具を用いて、単一のプレート80へ固定される。また固定具の使用に加えて、本発明のいくつかの実施形態は、使用の際にこれらの構成要素の回転的な動きをさらに低減するための固定要素を有する。蛍光励起および検出システムの各構成要素が、レーザ光線の経路のいくつかの部分を制御するため、構成要素の任意の動きが、データ収集に妨害を引き起こし得る。これらの妨害の結果として、データフローが中断または損なわれ、それにより不確実な結果を生じさせる。それらの上に構成要素を設置する前にプレート80へ取り付けられることが可能な固定要素は、プレート80から離れるように垂直に延在し、構成要素中に作られた開口へ嵌入して、使用の際にそれらの構成要素の回転的な動きを制限するようにする。例えば、一実施形態において、固定要素は、プレート80から延在するダウエルピンを含む。蛍光励起および検出システム40の構成要素は、構成要素中の孔が、ダウエルピンにぴったり合って、構成要素の回転を制限するように、プレート80上へ配置される。プレート80へ構成要素を維持するために、例えばねじなどの固定具が使用されて、プレート80へ構成要素を連結する。
【0053】
本発明においてどのように振動および衝撃が抑制されることが可能であるかについての他の例として、いくつかの実施形態が、地面とプレート80との間に位置する1つまたはそれ以上の減衰デバイスを有し、蛍光励起および検出システム40を支持する。これらの減衰デバイスは、振動力を吸収し、蛍光励起および検出システム40への振動の伝達を低減する。例えば、図1A、図1B、および図1Cに図示された本発明の実施形態においては、デバイス10は、プレート80を支持するフレーム82を有する。フレームとプレート80との間に配設されるのは、衝撃および他の力を吸収し、それにより蛍光励起および検出システム40への振動の伝達を防止するまたはかなり低減する、4つの制動コイル84(それらのうち2つは図1Aおよび図1Bに見られ、4つは図1Cに見られる)である。図1Aおよび図1Bに図示される実施形態における制動コイル84は、デバイスの重量の釣り合いを均等にとるように配置される。すなわち、各コイル84は、均一量の重量を支持する。他の実施形態においては、制動コイル84は、フレーム82の周辺に対称的に配置されることが可能であり、または所望のように配置されることが可能である。さらに、4つを上回るまたは下回る個数の減衰デバイスが、衝撃を吸収するために使用され得る。衝撃および振動を抑制するための適切な減衰デバイスの例が、ワイヤ・ロープ・アイソレータ(例えば、Orchard Park,NYのEnidineより市販のステンレ
ス鋼ワイヤロープ)のコイル、あるいは弾性係数の大きな、空気圧式または油圧式の衝撃吸収台と、ゴムを引かれた衝撃吸収台とを有する金属ばねのコイルを有する。
【0054】
いくつかの実施形態において、自動ロック機能が、解析の際にテストモジュール55の揺れを低減するために使用される。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、ホルダ20は、非可動テストモジュール止め具86と、自動位置決め緩衝装置88とをさらに有することが可能である。自動位置決め緩衝装置88は、ホルダ20の上部が閉じられると、非可動止め具86の方へ動く。したがって、自動位置決め緩衝装置88は、挿入されたテストモジュール55を誘導し、非可動テストモジュール止め具86に対し押し付ける。結果として、テストモジュール55は、テストモジュール止め具86と自動位置決め緩衝装置88との間にぴったり配置され、それにより所定位置にテストモジュールを固定し、解析の際にテストモジュールの横方向の移動を低減させる。
【0055】
上述の特徴の全ては、デバイス10の高耐久性の特質および/または小さな小型化された寸法を無効化させるような追加重量を加えることなく、衝撃吸収を提供し、蛍光励起および検出システム40への振動伝達を防ぐために、単独で、または組み合わせにおいて使用されることが可能である。
【0056】
また、本発明の他の特徴が、デバイス10の高耐久性の特性に寄与する。例えば、蛍光励起および検出システム40中で使用されるレーザ60は、少ないエネルギーを使用しながら大量の電力を放射するように選択されることが可能である。結果として、確実な計測が、レーザ60の使用によってなされ、検出されるとともに、ポート77を介してデバイス10へ接続された外部エネルギー源から大量の電力を必要としない。一般的に、実験室内で使用されるタイプなどの、従来の固定式デバイスは、ガスレーザ(例えば、アルゴン・イオン・レーザおよびヘリウム・ネオン・レーザ)を使用する。これらのガスレーザは、適切にレーザとして使用できるためには大量のエネルギーを必要とする。例えば、典型的なガスレーザは、240ボルトにて約20〜30アンペアを消費する(すなわち、7,200ワットの電力を要し、約2.5kVAまたはそれを上回る最大電力消費量を有する)。したがって、同タイプのレーザに接続される携帯用エネルギー源は、同電力消費を維持するのに十分な大型のものでなければならないであろう。一般的に、固体レーザは、より少ないエネルギーを必要とし、それらのガス状態のレーザの同等物に比べより効率的であり、したがって本発明の携帯性および高耐久特性へ寄与する。適切な運用のために限定された電力を必要とし、本発明と共に使用するために適しているレーザの例は、例えばダイオード励起固体レーザなどの固体レーザである。通常、ダイオード励起固体レーザは、240ボルトで2アンペア未満を消費する(すなわち、480Wの電力であり、1.5kVA未満の、およびいくつかのケースでは0.5kVA未満の最大電力消費量を有する)。いくつかの実施形態において、レーザまたは240ボルトで10アンペア未満を消費する他の光源が、デバイス10の携帯性を減ずることなく使用されることが可能である。例えば、240ボルトで10アンペア未満を消費する光源は、3,000W未満の電力を消費する。これらの光源は、小型の携帯用エネルギー源(例えば、6,000Wまたはそれ未満の電源、1.5kVAまたはそれ未満の最大電力消費量電源)により電力供給されることが可能であり、それにより本発明の小型化の特性を維持する。本発明の一実施形態において、光源が、Sapphire 488 HP(Santa Clara,CA)固体レーザなどの個体性を有し、これは、0.75kVAの最大電力消費量を有する。さらに、Sapphire固体レーザは、7gの側方衝撃および15gの垂直衝撃に耐えることが可能である。当業者が理解するであろうように、所望の光学的特性を有する任意のレーザが、本発明の教示内で使用されることが可能である。
【0057】
また、ホルダ20内に配設された薄サーモフォイルヒータ90が、デバイスの携帯性および現場利用性に寄与する。ヒータ90は、挿入されたテストモジュール55に熱的接触状態になるように、ホルダ20内に位置する。同設計により、ヒータ90の直径が、小さくなり、テストモジュール55と均等の寸法になることが可能となる。デバイス10の外部に置かれた遠隔制御装置を介して作動され得るヒータ90は、テストモジュール55へ熱エネルギーを加えるために使用されることが可能である。テストモジュール55に加え
られた熱は、生体分子検体の分離を補助する(すなわち、ヒータ90は、電気泳動デバイス30の部分である)。テストモジュール55(例えば、平面のマイクロ流体チップ)と共に小さなサーモフォイルヒータ90を使用することにより、ヒータ90とテストモジュール55との間の効率的な熱伝達が可能となる。結果として、テストモジュールを加熱し、改善された温度制御を維持するために必要とされる、電気エネルギー量または電力消費量の大きな削減が、実現される。従来のキャピラリー電気泳動システムにおいて、キャピラリーの加熱および温度制御は、オーブン中にキャピラリーを置くことにより成される。大容量のオーブンと、オーブンヒータ要素とキャピラリーとの間の非効率的な熱伝達とにより、大量のエネルギーが必要となり、これは、携帯用エネルギー源で流出し、および/または大量の電力供給を必要とするおそれがあり、したがって核酸分離/シークエンシングデバイスの携帯性を減じる。結果として、本発明のデバイスは、かなりの期間の間、取り付けられた小型の携帯用エネルギー源(例えば、6,000Wまたはそれ未満および/あるいは1.5kVAまたはそれ未満の最大電力消費量)により電力供給されることが可能であり、それにより本発明の携帯性を向上させる。
【0058】
また、生体分子検体の分離における補助に加えて、ヒータ90は、高分解能および高精度の結果の取得に寄与する。例えば、ヒータ90とテストモジュール55との間の密接な接触が、それらの間の効率的な熱伝達を可能にする。結果として、ヒータは、所望の温度設定の±1度の範囲内でテストモジュール55の温度を維持することが可能であり、それにより任意の不利益な環境温度の影響を最小化する。
【0059】
生体分子検体の分離または電気泳動が、テストモジュール55内のマイクロチャネル中で起きる。一般的に、テストモジュール55は、少なくともエネルギー源が誘発する、蛍光励起および検出システム40からの蛍光発光(例えばレーザ光線)が、テストモジュール55を介して伝送されて、その中にあるサンプルと相互に影響し合うようにすることが可能な、透明の材料から構成される。適切な透明の材料の例としては、ガラス(例えば、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、溶融シリカガラス、およびソーダ石灰ガラス)、単結晶アルミナ、ならびに透明性ポリマーまたはコポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート、uv加工されたポリカーボネート、もしくは環状オレフィンコポリマー)が含まれる。
【0060】
図3Aおよび図4を参照すると、1つまたはそれ以上のマイクロチャネル110(16チャネルが図3Aに図示され、1チャネルが図4に図示される)のそれぞれが、サンプルアーム112、不要物アーム114、および分離チャネル116を有する。マイクロチャネル110は、約5〜200ミクロンの深さおよび約10〜2,000ミクロンの幅をチャネルが有するように、標準的なフォトリソグラフィ工程および化学エッチング工程の利用により、透明のプレート上に製造されることが可能である。一実施形態において、好ましいチャネル深さは約40ミクロンであり、好ましいチャネル幅は90ミクロンである。図4に図示されるように、サンプルアーム112および不要物アーム114は、分離チャネル116の全長に沿って約5〜2,000ミクロンの距離で互いから分かれている。一実施形態においては、サンプルアーム112および不要物アーム114は、分離チャネル116の全長に沿って500ミクロンの距離で互いから分かれている。サンプルを挿入し、不要物を除去し、ならびにアノード100およびカソード102と電気接続をするための開口118(例えば118a、118b、118c、118d)が、透明のプレート中にレーザドリル加工される。例えば、一実施形態において、16のマイクロチャネルを有するプレートは、16のサンプル孔と、16の不要物孔と、1つまたはそれ以上のアノード孔と、1つまたはそれ以上のカソード孔とを有する。単一の透明プレート上に形成された複数のテストモジュール55(例えば、10のテストモジュールがそれぞれ16のマイクロチャネルを有する)を有する他の実施形態において、それは、160のサンプル孔と、160の不要物孔と、160のアノード孔と、160のカソード孔とを有する。マイクロチャネルごとに2つのサンプルアーム112aおよび112bを有するさらに他の実施形態においては、プレートが、レーザドリル加工されて、32のサンプル孔と、16の不要物孔と、1つまたはそれ以上のアノード孔と、1つまたはそれ以上のカソード孔とを、
テストモジュール55ごとに有する。これらのマイクロチャネルの構造は、伝統的な半導体製造プロセスにより、透明プレート中にパターン形成され、食刻される。パターン形成後に、チャネルにアクセスするためのポートが、レーザドリル加工、アブレシブジェットドリル加工、および超音波ドリル加工を含むドリル加工プロセスにより形成される。次いで、食刻された透明プレートは、ゴミおよび表面の汚染物質を取り除くために、複数の浄化プロセスで浄化される。
【0061】
チャネル110を閉鎖および密閉し、それによりそれらが生体分子検体を充填されることができるようにするため、食刻された透明プレートは、未使用のまたは食刻されていない透明プレートへ熱的に結合される。結合プロセスは、2つのステップのプロセスにおいて、オーブンの中で実施される。2つのステップの結合プロセスは、食刻されていないプレートが食刻されたプレートの食刻された面を覆う状態で、オーブン中に2つの透明プレート(すなわち、1つの食刻されたプレートと1つの食刻されていないプレート)を配置することを含み、それにより、閉鎖部が、食刻されたマイクロチャネル間中を含む全ポイントで形成される。透明プレートは、約200℃未満の温度へ、約120分間加熱される。約226.79〜4535.92グラム(約0.5〜10ポンド)の力が、熱的結合を促進するために、加熱プロセスの間中、プレートに均一に加えられる。上述の低温加熱プロセスが完了すると、結合された透明テストモジュール55は、視覚的に検査される。明らかなひびまたは他の損傷がない場合、結合された透明テストモジュール55は、密閉部を完成させるために、約735℃の温度で、高温オーブン中にて加熱される。上述の熱的結合プロセスは、Wiley Publishersから1998年11月に出版された、Q.−Y.TongとU.Goseleによる「Semiconductor Wafer Boding:Science and Technology」の中にさらに説明されており、これは、その全体として、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
図3Bを参照すると、いくつかの実施形態において、テストモジュール55は、食刻されたマイクロチャネルへの開口を有する上面に取り付けられたサンプルボード57を有する。サンプルボード57は、電気泳動において使用されるサンプルおよび流体を保持するための、多数のリザーバ59を有する。流体のためのホルダとしての役割を果たすことに加えて、またサンプルボード57は、ホルダ20内でテストモジュール55の適切な整列の実現を補助する。例えば、リザーバ59は、テストモジュール55がホルダ20内へ挿入される場合に、サンプルボード57内へ配置されて、リザーバと電気泳動組立体30の電極の整列および位置合わせを実現する。
【0063】
テストモジュール55が密閉されると、チャネルの内面が、Luba Mitnikらにより「Electropheresis」(第23巻、719〜26ページ、2002年)中にて説明されている若干修正されたHjertenプロトコルを使用して、電気浸透およびサンプル壁相互作用を防止するように処理され、これは、その全体として、参照により本明細書に組み込まれる。チャネルは、ふるい分けマトリックス材料を充填され、チャネルに通じる開口は、緩衝液または脱イオン水のいずれかを充填される。開口118は密閉され、テストモジュール55は、その使用が必要となるまで(すなわち、テストモジュールが、解析のため生体分子検体のサンプルを保持するために必要となるまで)保管される。
【0064】
1つまたはそれ以上のサンプルが解析される準備が整うと、テストモジュール55の密閉部が除去され、緩衝液または脱イオン水が、テストモジュール55中へ食刻されたチャネル110へ通じる各開口から除去される。使用のためにチャネルを調整するため、チャネル110への開口は、脱イオン水で3回流される。各回において、水は、乾燥するまで吸引により除去される。電気泳動ゲルまたはふるい分けマトリックス/材料が、注入器で各チャネル中へ注入される。当業者が理解するであろうように、様々な表面壁処理およびふるい分け材料が、使用されてよい。適切なふるい分け材料の例は、例えばDakota
Scientific(Sioux Falls,SD)から市販されている高分子量4%LPAなどの、高分子量のリニアポリアクリルアミド(LPA)である。他の適切なふるい分け材料の例が、Methalらによって「Polymeric Matrice
s for DNA Sequencing by Capillary Eleetrophoresis」(「Electrophoresis 2000」第21巻、4096〜4111ページ)において、ならびにRuiz−Martinezによって「DNA Sequencing by Capillary Electrophoresis with Replaceable Linear Polyacrylamide
and Laser−Induced Fluorescence Detection」(「Anal,Chem」第65巻、2851〜58ページ、1993年)において説明され、これらの開示は共に、それらの全体として、参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
チャネルは、まずアノード開口118bから、チャネル分相当の3倍の量のふるい分けゲルを充填され、次いでカソード開口118aから、チャネル分相当の3倍の量のふるい分けゲルを充填されて、ゲルでマイクロチャネル110を完全に被覆し、水が全て除去されるのを確実にする。次いで、アノード100の開口118(すなわち開口118b)、カソード102の開口118(開口118a)、および不要物アーム114の開口118(開口118c)は、緩衝液を充填され、サンプルアーム112の開口118dは、脱イオン水を充填される。
【0066】
マイクロチャネルの調整を完了するため、テストモジュール55はホルダ20内へ挿入され、ホルダ20は閉じられて、それによりカソード102およびアノード100のホルダ20上の連結箇所が、テストモジュール55上のカソード開口118aおよびアノード開口118bに連結する。第1のバイアス配置が、チャネルを調整するためにテストモジュール55へかけられ、そこで、約10kV未満の電圧が、カソード102およびアノード100にわたり印加されて、ふるい分けマトリックスを、分離チャネル116の下方へ、カソード開口118aからアノード開口118bへ移動させる。次いで、第2のバイアス配置が、調整を完了するためにテストモジュール55へかけられる。第2のバイアス配置は、サンプルアーム112と不要物アーム114との間に4kV未満の電圧をかけて、サンプルアーム開口118dから不要物アーム開口118c中へイオンを移動させることを含む。テストモジュール55は、ホルダ20から取り除かれ、全ての水および緩衝剤を除去するために洗浄される。各ポートが、脱イオン水を用いて少なくとも3回すすがれ、次いでマイクロチャネル110は、泡の存在を点検するために、拡大下で視覚的に検査される。ここにきてテストモジュール55は、使用の準備が整う。調整プロセスが、40〜約70℃の間の温度にてテストモジュールに実施される。すなわち、ヒータ90が、調整プロセスの際に、約40〜70℃の間の温度へテストモジュールを温める。いくつかの実施形態において、実施の好ましい温度は50℃である。
【0067】
操作者が、サンプルボード57を介して1つまたはそれ以上のマイクロチャネル110のサンプル開口118d中へサンプルまたはテスト対照を注入することにより、テストモジュール55中へ生体分子検体のサンプル(STRを標識付けするための蛍光色素を含む)を装填する。アノード開口118a、カソード開口118b、および不要物開口118cは、緩衝液を充填される。テストモジュール55は、ホルダ20中へ戻して配置され、アノード100およびカソード102は、テストモジュール55へ接続される。
【0068】
本発明の他の実施形態においては、1つまたはそれ以上の上述の洗浄ステップが、調整プロセスにおいて除外される。具体的には、本発明のいくつかの実施形態において(図5を参照)、テストモジュールは、分離チャネル116、不要物アーム114、および2つのサンプルアーム112aおよび112bを有する、少なくとも1つのマイクロチャネル110を有する。2つのサンプルアーム112aおよび112bを有する結果として、調整後にテストモジュール55を洗浄するために利用される洗浄プロセスが除外される。すなわち、マイクロチャネルは、ふるい分けマトリックスを添加する前に、1回洗浄される。同実施形態において、サンプルアーム112aは、脱イオン水を充填され、サンプルアーム112bは、蛍光色素を含む生体分子検体を充填される。まず、マイクロチャネル110は、第1および第2のバイアス配置をかけることにより調整される。次いで、生体分子検体のサンプルは、2回目の実施用にテストモジュール55を洗浄し準備するためにホ
ルダ20からテストモジュール55を取り外す必要なく、解析される。第2のサンプルアーム112bを追加した結果として、プロセス時間の大幅な節減が実現されることが可能となる。
【0069】
サンプルを解析するため、様々な電気泳動工程が、サンプルをSTRへ準備し分離するために利用されることが可能である。これらの工程の1つが、約40〜70℃の温度へテストモジュール55を加熱しつつ、生体分子検体を分離するため電圧を印加することを含む。例えば、好ましい一実施形態において、テストモジュールの温度は、電気泳動の際に50℃に維持される。テストモジュール55へ分離条件を印加する前に、少なくとも1つのバイアス条件が、分離用にサンプルを準備するために、テストモジュール55内の各マイクロチャネル110へ印加される。第1のバイアス条件が、カソード開口118aからアノード開口118bの方へ、分離チャネル116中へ緩衝液を移動させる。第1のバイアス条件は図6に示され、そこで10kV未満の電圧が、カソード102とアノード100との間に印加される。図7に示される第2のバイアス条件が、サンプルアーム112と不要物アーム114との間に電圧を印加し、サンプルアーム112から不要物アーム114の方へ検体を移動させる。図8に示される第3のバイアス条件が、不要物アーム114からサンプルアーム112へ電圧を印加して、不要物アーム114からサンプルアーム112の方へ検体を移動させる。図9に示される第4のバイアス条件が、カソード102と不要物アーム114との間に電圧を印加して、分離チャネルから離れるように、およびサンプルアーム112と不要物アーム114との中へ戻るように、検体を移動させる。第1のバイアス条件は、第1の電源装置を用いて印加され、第2、第3、および第4のバイアス条件は、第2の電源装置を用いて印加される。第1のバイアス条件と、第2、第3、または第4のバイアス条件からの1つとの両方が、同時に印加される場合、他のバイアス条件が、マイクロチャネル110へ印加されることが可能である。例えば、図10に図示されるように、第1および第2のバイアス条件の組合せである第5のバイアス条件が、サンプルアーム114から不要物アーム114の方へ検体を移動させるとともに、またカソード102からアノード100の方へ分離チャネル116中の検体を移動させる。第6のバイアス条件が、第1および第3のバイアス条件の組合せにより構成され、図11に図示される。図12に示される第7のバイアス条件は、第1および第4のバイアス条件の組合せである。第7のバイアス条件は、サンプルアーム112および不要物アーム114の方へ、分離チャネルとサンプルアームおよび不要物アームとの間の交点の領域(例えば交点領域125)中の検体を移動させると共に、またカソード102からアノード100の方へ、分離チャネル116の残りのまたは他の部分中の検体を移動させる。
【0070】
上述のバイアス条件の順次の印加により、充填、積み重ね、分離、および分離の際に過剰な検体が分離チャネル中へ拡散することの防止を含む、多くの様々な働きが可能になる。通常、約50〜500V/cmの間の電界が、カソード102およびアノード100にわたり印加され、一方約50V/cm〜約500V/cmの電界が、不要物アーム開口118dおよびサンプルアーム開口118cへ印加される。分離チャネル116中への検体の充填が、サンプルアーム112および不要物アーム114の周辺に、0.5〜5分間、約50V/cm〜約400V/cmの電界と共に、第2のバイアス配置をかけることにより遂行される。交点領域125に検体を積み重ねることが、比較的短時間(例えば、約1秒〜約10秒)の間、約500V/cmまでの、チャネル110の周辺の電界と共に、第1のバイアス配置をかけることにより遂行される。交点領域125と分離チャネル116との間の伝導度の差が、交点領域125中の検体に圧縮されたバンドを形成させ、これにより、高分解能分離が可能となる。検体の分離は、約50〜500V/cmの電界と共に第1のバイアス配置をかけて、カソード102からアノード100の方へ検体の圧縮されたバンドを移動させることにより遂行される。第1のバイアス配置は、対象の最大断片が、検出区域150(すなわち、レーザ光線と相互に影響しあう分離チャネルの部分)を通り移動するまで、圧縮されたバンドへかけられる。サンプルアーム112および不要物アーム114からの検体が、分離チャネル116中へ拡散することが可能であり、電気泳動図の基線のゆがみと、信号対雑音比における低減とをもたらす。結果として、第7のバイ
アス配置をかけて、負の電界が、カソード開口118aと、サンプル開口118dおよび不要物開口118cのそれぞれとの間に設定されるのを確実にすることにより、サンプルアーム112または不要物アーム114中の過剰な検体が、解析の際に分離チャネル116へ侵入することが防がれる。本発明のいくつかの実施形態において、上述の第7のバイアス配置は、解析の残りの間かけられて、蛍光励起および検出システム40により収集される信号の品質を確かなものにする。他の実施形態において、伝導バンドが、交点領域125から離れて検出区域150の方へ移動すると、第7のバイアス条件の電源が切られ、第1のバイアス条件が印加される。同実施形態において、過剰な検体は、伝導バンドが交点領域125から離れるように移動しているため、分離チャネル116中へ拡散し得ない。結果として、過剰な検体は、データ収集の妨げとはなり得ない。他の実施形態において、過剰な検体は、分離の際にサンプル開口118dおよび/または不要物開口118cから検体を除去することにより、分離チャネル116中へ侵入することが防がれる。第3または第4のバイアス配置のいずれかが、分離の際にかけられて、除去のために、サンプルアーム112あるいはサンプルアームと不用物アーム114との組合せのいずれかへ過剰な検体が移動される。
【0071】
生体分子検体サンプルが分離されると、バイアス配置がかけられて、検出区域150の方へ分離された構成要素(STR遺伝子座)を移動させる。レーザ60から放射されるレーザ光線が、検出区域150にわたって走査し、DNAからの誘発された蛍光が、蛍光励起および検出システム40内の光検出器64により、収集され伝送される。レーザ光線は、検出区域150にわたって走査するので、レーザ光線は、そこの間を移動する蛍光標識付けされたSTR遺伝子座により吸収される。各標識付けされたSTRからの誘発された蛍光は、蛍光励起および検出システム40により収集され、検出器64へ伝送される。ダイクロイックミラーとバンドパスフィルタとの組合せを介して、特定の蛍光標識付けをされた、したがって特定のSTRの発光波長が、同定される。これらの結果は、法鑑定のために、業界基準または他のサンプルと比較されることが可能である。
【0072】
本発明においては、新規の「レーンファインディング」プロセスが、使用者が再整列工程を実施することを必要とせずに、チップ位置における変化または光列への素子の不整列を自動的に補正するために使用される。いくつかの実施形態において、「レーンファインディング」は、本明細書で説明される高耐久性装置へ使用される構成要素の1つとして含まれる。
【0073】
蛍光励起および検出システム40とテストモジュール55との間の整列に関する問題が、信号品質、特に背景ノイズレベルに対する誘発された蛍光の相対強度レベルにおける低下を導くおそれがある。「レーンファインディング」は、STRからの蛍光データの信号対雑音比を最大化し、検出区域150をより正確に見出すために、本発明のいくつかの実施形態において使用されるプロセスである。具体的には、励起エネルギー源とテストモジュール55中のチャネルとの間の整列に欠陥がある場合には、検出区域150を通り移動する標識付けされたDNAが、効率的に励起されない。さらに、例えばチャネル間からのチップの他の領域が、励起され、したがって過剰なバックグラウンド蛍光の生成をもたらす。また、励起エネルギー光線とチャネルとの間の不整列は、DNAからの低減された誘発された蛍光に対する過度のバックグラウンド蛍光の収集に至り、それにより信号対雑音比を低下させる。検出区域150以外の他の領域からのデータをサンプリングする結果として、不確実なおよび/または使用不可能な結果が作成される。蛍光励起エネルギー光線と検出区域との間の不整列が、そこで作動するレーンファインディングプログラムを有するソフトウェアを作動させる取り付けられたコンピュータなどの、取り付けられた処理装置により、監視され修正されることが可能である。
【0074】
先行技術のデバイスとは異なり、本発明のデバイスは、取り外し可能なテストモジュール55またはチップを組み込むように設計される。本発明において、いくつかの実施形態が、テストモジュール55の初めの挿入または取り外しおよび再挿入の後で、各マイクロチャネル110の位置を決定するために、新規のレーンファインディング方法を使用する。レーンファインディングは、テストモジュール55が取り除かれおよび/または再挿入
される際の、蛍光励起および検出システム40内の複数のレンズの手動による再整列の必要性を不要にする。一実施形態において、テストされるチップのレーン位置は、テストチップのフォトダイオード走査を参照チップのそれに相関させることにより決定される。これは、テストチップに対するフォトダイオード走査を初めに収集することによりなされる。相関分析が、特に2つのフォトダイオード走査間の最大相関が生じる位置を決定するために、テストチップおよび参照チップのフォトダイオード走査間で実施される。2つのフォトダイオード走査間の最大相関の位置が、テストチップと参照チップとの間の位置的なずれの判定を可能にし、したがって参照チップのレーン位置へ同ずれを適用することにより、テストチップのレーン位置を判定することが可能となる。参照フォトダイオード走査およびレーン位置は、蛍光色素を充填されるテストモジュールを使用することにより生成される。これにより、検出器により収集された各レーンからの最大蛍光を生成するスキャナ位置と共に、フォトダイオード操作データの同時捕獲が可能となる。
【0075】
他の実施形態において、レーンファインディングが、透明テストモジュール55中の引っかき傷または他の欠陥、および透明テストモジュール55中の異物の存在などにより引き起こされる収差を無制限に含む収差よりもたらされる偽ピークを除去する。図13を参照すると、励起エネルギー源(例えば、レーザ光線)が、サンプルを解析するためにデバイス10を使用する前に、ある特定のテストモジュール上の検出区域150にわたって走査される。レーザ光線が、各チャネル110を通過する際に、それは、チャネル110間の透明材料と、チャネル中の媒体との間の屈折率の不連続により屈折される。屈折された光線は、テストモジュール55を介して散乱しおよび/または導波することが可能であり、テストモジュールの両面に配置されたフォトダイオード170、172により検出されることが可能である。図14を参照すると、4つの一般的なケースがあり、そこでは、チャネル上のレーザ光線入射が、フォトダイオードの方へ屈折され、フォトダイオードにより検出される。図14に示されるように、第1レーザ経路は、チャネルの前端に交差し、フォトダイオード170の方へ屈折される。第2レーザ経路は、チャネルに交差せず、テストモジュールの透明材料だけを貫通して進む。結果として、光は、フォトダイオード170または172のどちらの方へも方向付けられない。第3レーザ経路は、マイクロチャネルの中央または中間に交差する。図14に示されるように、第3レーザ経路中のレーザ光線は、フォトダイオード170および172の両方の方へ方向付けられ、したがってデータを検出するのに最善の位置である。最後に、第4レーザ経路は、チャネルの後端に交差し、フォトダイオード172の方へのみ屈折される。図15は、レーザ光線が1つのマイクロチャネルにわたって走査する際の、フォトダイオード172での典型的な波形を示す。波形は、チャネル110の前端位置が、約1385カウントに位置し、中間位置が、約1425カウントに位置し、チャネルの後端が、約1475カウントに位置することを示す。
【0076】
一実施形態において、レーンファインディングソフトウェアが、偽ピークを除外し、各マイクロチャネル110の前端位置および後端位置を同定するように設計された一連のステップにより、各チャネル110の中間位置を決定する。同実施形態において、フォトダイオード170および172により検出された全チャネルからのピークの強度が、その最大値へ正規化される。検出区域の少なくとも3つの走査が記録され、3点ボックスカーアベレージが、収集されたデータの不整をならし、判読精度を確実にするためにトレースの不整をならすために、実施される。検出区域150内の全ピークが、同定され、フォトダイオード170およびフォトダイオード172により収集された両方の波形にもとづき同定されなかった任意のピークが、除外される。残りのピークは、例えば透明テストモジュール55中の引っかき傷または他の欠陥、あるいは異物により引き起こされる収差などの、収差によりもたらされる偽ピークについて再点検される。これらのひびまたは引っかき傷よりもたらされるピークは、各ピーク間のスペースを検討することにより同定される。図15に示されるように、ある特定のチャネルに関連するそれぞれのピークは、チャネルの前部、中間部、後部に対応して一定の間隔で間が空く。すなわち、各ピークは、3分の1のチャネル幅の距離内に互いから離れて位置する。したがって、それらの間が3分の1
のチャネル幅の距離で他のピークへ相関しない任意のピークが、波形から除外される。残りのピークの全てが、各チャネル110の中間位置を決定するために使用される。
【0077】
一実施形態において、チャネルの中間位置は、波形における第1のピークを初めに同定することにより決定される。同ピークは、第1のチャネルの前端として同定される。前端から1.2チャネル幅内のピークが、同定される。これらの同定されたピークは、第1のチャネルの中間位置を決定するために、平均化される。第1のピークから1.2チャネル幅よりも上回る距離で波形に沿い位置する次のピークが、同定され、第2のチャネルの前端に特定される。第2のチャネルの前端から1.2チャネル幅内のピークが、同定され、第2のチャネルの中間位置を決定するために共に平均化される。前端および中間位置を同定する同プロセスは、テストモジュール55の全チャネルが同定されるまで、継続される。各チャネルの中間位置が、チャネルの前端位置からの平均的なずれを決定するために、共に平均化される。同ずれは、各チャネルの前端と中間位置との間の距離を表す。各チャネルの前端位置を含む参照ファイルが、データ収集のための適切な位置へレーザ光線を方向付けるようにスキャナ62の動作を誘導するため、決定されたずれを用いて更新される。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態において、高耐久性核酸分離/シークエンシングデバイス10は、蛍光励起および検出システム40により収集された信号から背景ノイズを除去するための、新規のシステムをさらに含む。具体的には、検出システムにより収集され、検出器へ伝送される蛍光信号が、標識付けされた生体検体および背景ノイズの2つのソースから主に構成される。背景構成要素は、標識付けされた生体検体を除く全ての検出可能な構成要素に関連し、テストモジュール55の蛍光と、検出経路中の蛍光発光素子と、遮断されない背景光とを含む。同背景は、固定的な強度レベルのものであり、標識付けされた生体検体からの信号へ直接加えられる。本発明の一実施形態において、基線相殺回路が、電子増幅およびアナログからデジタル形式への信号の変換に先立って、検出器からの固定的な背景レベルを除去するために、実装される。背景ノイズの除去(すなわち、バックグラウンドオフセット)により、信号検出のためのより大きなダイナミックレンジが可能となる。先行技術のシステムにおいては、検出器が、検出された蛍光(背景および信号)を電流へ変換し、次いでこれが、電子増幅を介して電圧へ変換される。アナログ電圧が、アナログ・デジタル変換を介して、デジタル形式へ変換される。本発明のいくつかの実施形態においては、電流源が、背景の除去のための相殺電流の印加が可能となるように、検出器の直ぐ後および電子増幅の直ぐ前で、検出回路へ接続されて、先行技術のデバイスに比べより大きなダイナミックレンジがもたらされる。本発明において、電流は、電子的に制御され、使用者により選択可能である。
【0079】
先行技術のシステムに対する、本発明の背景相殺システムの利点の1つは、増大された信号のダイナミックレンジである。増大された信号のダイナミックレンジの結果として、より大きな範囲のサンプル濃度が検出されることが可能となる。例えば、通常、犯罪現場より収集されたサンプルは、高濃度の被害者のDNAと、低濃度の加害者のDNAとを含む。すなわち、サンプルは、薄い量の加害者のDNAと、高い濃度の被害者のDNAとを含む。本発明の背景相殺システムにより、使用者は、背景ノイズに対しA/D変換器を最大値化させることなく、単一のサンプル中で大きな範囲の信号/サンプル濃度を検出することが可能となり、同時に、薄い濃度の第2ソースのDNA(例えば加害者のDNA)の検出をするのに十分な感度を有する。
【0080】
以下の実施例が、本発明をさらに説明し、本発明の理解をさらに容易化するために提供される。これらの特定の実施例は、本発明の例示として意図され、限定的なものとしては意図されない。
【実施例1】
【0081】
以下の実施例が、本発明による高耐久性核酸解析デバイスの法医学的な使用例を説明する。同実施例においては、図1A、図1B、および図1Cに図示されるものと同様の高耐久性核酸解析デバイスが、参照サンプルを解析するために使用された。
【0082】
参照サンプルは、市販のSTRキット(AmpFISTR SGM Plus、App
lied Biosystems社、Foster City、CA)による対立遺伝子ラダーと、サイズ基準(GeneScan 400 HD (ROX) Size Standard、Applied Biosysteme社、Foster City、CA)から構成された。サンプルは、2マイクロリットルの対立遺伝子ラダーと、0.5マイクロリットルのサイズ基準と、10.5マイクロリットルの脱イオン水とを使用して用意された。サンプルは、解析に先立ち、サンプルを約3分間、約90℃へ加熱することにより変性され、その後サンプルは氷で急速に冷却された。次いで、サンプルは、洗浄されたマイクロ流体チップ中へ注入された。
【0083】
サンプル注入の前に、マイクロ流体チップは、チップのチャネル中の余分なイオンを除去するために、洗浄され、調整された。具体的には、マイクロ流体チップ中の各チャネルが、チャネルと、アノード開口、カソード開口、サンプルアーム開口、および不要物アーム開口とを洗浄するために、圧力を介して4%LPAふるい分け材料(Dakota Scientific、Sioux Falls、SD)を充填された。洗浄が完了した後、アノード開口およびカソード開口は、500マイクロリットルの 1x TTE buffer(Dakota Scientific、Sioux Falls、SDより市販)を充填され、不要物アーム開口は、33マイクロリットルの 1x TTE bufferを充填され、サンプルアーム開口は、13マイクロリットルの脱イオン水を充填された。各チャネルは、190V/cmの電界がカソードおよびアノードにわたり6分間印加される予備電気泳動プロセスを介して調整され、その後、875V/cmの電界が、サンプルアームおよび不要物アームにわたり3分間印加された。
【0084】
予備先電気泳動の後に、カソード開口、アノード開口、サンプルアーム開口、および不要物アーム開口は、洗浄され、次いで充填された。カソード開口およびアノード開口は、500マイクロリットルの 1x TTE bufferを充填され、不要物アーム開口は、33マイクロリットルのTTE bufferを充填され、サンプルアーム開口は、13マイクロリットルの上述のサンプルを充填された。
【0085】
サンプルは、サンプルアームおよび不要物アームにわたり875V/cmの電界を印加しつつ、同時にアノードおよびカソードにわたり88V/cmの電界を1.5分間印加することにより、分離チャネル中へ充填された。充填の後に、サンプルは分離され、過剰なサンプルは、カソードおよびアノードにわたり190Vを印加しつつ、同時にサンプルアーム開口および不要物アーム開口のそれぞれへ800Vを印加することにより、分離チャネルから離れるように引き戻された。これらの条件は、サンプルを分離するために、マイクロ流体チップへ45分間適用された。
【0086】
次いで、蛍光励起および検出システムが、分離されたサンプル中の蛍光標識付けされたSTR遺伝子座を励起するために、作動された。図16A、図16B、図16C、および図16Dが、蛍光励起および検出システムにより収集されたデータにより生成された、遺伝子座ラダーの未加工の電気泳動図を示す。収集された各電気泳動図は、装置内に配置された光電子増倍管の1つにより捕獲された強度データの1つを表す。すなわち、図16Aは、青の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示し、図16Bは、緑の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示し、図16Cは、黄の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示し、図16Dは、赤の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示す。
【0087】
各電気泳動図からのデータが、L.Liらにより「Electrophoresis」(第20巻、1号、1433〜1442ページ、1999年)の中で説明される4x4マトリックス法を用いた、基線の不整ならし、相殺、および色補正のための信号処理方法を使用して補正された。またこの開示は、その全体として、参照により本明細書に組み込まれる。図17A、図17B、図17C、および図17Dが、補正されたデータの拡大図を示す。青の波長の光についてのデータの補正されたトレースを示す図17Aは、以下の遺伝子座、すなわちD3S1358、VWA、D16S539、およびD2S1338、ならびに各遺伝子座に関連する全ての対立遺伝子(すなわち、8、14、9、および14の
それぞれ)の存在を示す。図17Bにおいて、緑の波長の光の補正されたトレースが、アメロゲニン、ならびに遺伝子座D8S1179、D21S11、D18S51、およびそれらに関連する全ての対立遺伝子の存在を示す。図17Cは、黄の波長の光のデータの補正されたトレースを示す。図17Cは、以下の遺伝子座、すなわちD19S433、TH01、およびFGA(高分子量および低分子量の組合せ)と、各遺伝子座に関連する全ての対立遺伝子との存在を示す。図17Dは、赤の波長の光のデータの補正されたトレースを示す。補正された赤の波長の光のトレースは、90、100、120、150、160、180、190、200、220、240、260、280、290、300、320、340、360、380、および400にてサイズ基準のピークを示す。
【0088】
サンプル中の全てのサイズ基準との、全11遺伝子座関連対立遺伝子の明確な同定より、高耐久性核酸解析装置は、法医学的解析に非常に適した識別能を有することが明らかである。具体的には、図16A〜Dおよび図17A〜Dは、同装置が、約1〜3.3x1012の識別力を有することを示す。
【実施例2】
【0089】
以下の実施例が、本発明による高耐久性核酸解析デバイスのDNAシークエンシング使用例を説明する。同実施例において、図1A、図1B、および図1Cに図示されるものと同様の高耐久性核酸解析デバイスが、HIV単位複製配列B.FR.HXB2からのDNA鋳型を含むサンプルを、プライマGB107を用いて解析するために使用された。サンプルは、現在ではGE Healthcare社(Waukesha、Wisconsin)の一部であるAmersham Biosciences社より入手可能な、市販のサイクルシークエンシングキット(Thermo Sequenase II Dye Terminator Cycle Sequencing Premix Kit)を用いて、増殖され、標識付けされた。サイクルシークエンシング反応が、製造業者の推奨する工程にしたがって実施された。全シークエンシング反応は、750ナノグラムのDNA鋳型と、1マイクロリットルの5ミクロモルプライマと、2マイクロリットルのThermo Sequenase II reagent mix Aと、2マイクロリットルのThermo Sequenase II reagent mix Bと、水とから構成され、全分量は20マイクロリットルとなった。反応は、以下のプログラムでサイクルされ、ステップ2からステップ4が、30回反復された。すなわち、1)96℃を1分間、2)96℃を30秒間、3)50℃を15秒間、4)60℃を1.5分間、5)60℃を5分間、である。反応生成物が、使用の準備が整うまで6℃で保管されたが、その際には、サンプルは130マイクロリットルの水中に再懸濁され、サンプルを70℃へ3分間加熱しその後氷で冷却することにより変性される。
【0090】
透明テストモジュール中へサンプルを注入する前に、テストモジュールのチャネルが、実施例1中で説明されたように、洗浄され、調整された(すなわち、予備電気泳動を受けた)。予備電気泳動の後に、各チャネルのアノード開口、カソード開口、サンプルアーム開口、および不要物アーム開口が、洗浄され充填された。カソード開口およびアノード開口は、Dakota Scientific、Sioux Falls、SDより市販の500マイクロリットルの 1x TTE bufferを充填された。不要物アーム開口は、33マイクロリットルの 1x TTE bufferを充填され、サンプルアーム開口は、13マイクロリットルの、再懸濁され変性されたサンプルを充填された。
【0091】
サンプルは、サンプルアームおよび不要物アームにわたり875V/cmの電界を60秒間印加することにより、サンプルアーム開口から分離チャネル中へ充填された。次いで、サンプルは、カソードおよびアノードにわたり190Vを印加しつつ、同時にサンプルアーム開口および不要物アーム開口のそれぞれへ400Vを印加することによって、分離され、過剰なサンプルが、サンプルアーム開口および不要物アーム開口中へ押し戻された。これらの電圧条件が、サンプルを分離するために60分間適用された。
【0092】
次いで、蛍光励起および検出システムが、分離されたサンプル中の蛍光標識付けされたDNAを励起するために、作動された。図18A、図18B、図18C、および図18Dが、蛍光励起および検出システムにより収集されたデータにより生成されたDNA配列の
、未加工の電気泳動図を示す。収集された各電気泳動図は、装置内に配置された光電子増倍管の1つにより捕獲された強度データの1つを表す。すなわち、図18Aは、青の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示し、図18Bは、緑の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示し、図18Cは、黄の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示し、図18Dは、赤の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示す。
【0093】
各電気泳動図からのデータが、L.Liらにより「Electrophoresis」(第20巻、1号、1433〜1442ページ、1999年)の中で説明される信号処理方法を使用して、補正された。さらなる補正されたトレースの処理が、トレース中の各ピークに4つのヌクレオチドの1つを関連付けるベースコーリングにより遂行された。トレースは、9点ボックスカーアベレージの使用により、不整ならしがなされ、次いでトレースは、変更される。ピークが、変更されたトレースを評価して正から負への勾配変化に対するゼロ交差を位置決めすることによって、同定される。青の波長の光のトレース、緑の波長の光のトレース、黄の波長の光のトレース、および赤の波長の光のトレースにおいて同定されるピークは、塩基G、A、T、およびCにそれぞれ相関される。データ処理の当業者は、同ベースコーリングルーチンの基本性質を理解することが可能であり、これが、同デバイスの効率性を実証するために使用された。通常、より洗練されたベースコーラーが、上述の方法に比べ、同一データに関してより長く継続的な読取値を生成するであろう。ベースコーリングの詳細な説明は、Ewingらによる「Base−Calling of Automated Sequencer Traces Using Phred I.Accuracy Assessment」(「Genome Research」、第8巻、175〜185ページ、1998年)と、Ewingらによる「Base−Calling of Automated Sequencer Traces Using Phred II.Error Probabilities」(「Genome Research」、第8巻、186〜194ページ、1998年)とに見られ、これらの開示は、それら全体として、参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
図19A、図19B、図19C、および図19Dが、補正されたデータの拡大図を示す。青の波長の光についてのデータの補正されたトレースを示す図19Aは、ヌクレオチドグアニンの明確な同定を示す。図19Bにおいて、緑の波長の光のデータの補正されたトレースが、アデニンの明確な同定を示す。図19Cは、黄の波長の光のデータの補正されたトレースを示す。図19Cは、チミンの明確な同定を示す。図19Dは、赤の波長の光のデータの補正されたトレースを示す。補正された赤の波長の光のトレースは、シトシンの同定を示す。
【0095】
図20A、図20B、および図20Cを参照すると、既知のHIV単位複製配列B.FR.HXB2からのDNA鋳型に関連するヌクレオチドの明確な同定より、高耐久性核酸解析デバイスは、看護所の地で実施されるシークエンシング解析に非常に適していることが明らかである。図20Aは、既知の単位複製配列の配列一覧を示す。図20Bは、同実施例において使用される高耐久性核酸解析デバイスから生成された結果の解析より取得された、配列一覧である。図20Bに示される配列一覧は、未編集であり、図19A〜Dに示されるデータが、同サンプルに使用されたプライマを反転させるため、当技術分野において既知である技術を使用して逆相補鎖化(reverse−complemented)された後に、生成された。図20Bに示される未編集の配列一覧は、塩基436から813まで、図20Aの単位複製配列の100%の同定を表示する、378の連続する塩基から構成される。同結果は、ベースコーリングの際に含まれる明らかな誤りを除去し置換するために、データを手動的に編集することにより、さらに改善した。編集された配列一覧は、塩基297から840まで、単位複製配列の100%の同定を表示する、544の連続する塩基から構成される。
【0096】
同発明が、その好ましい実施形態に関して特に図示され説明されてきたが、形態および詳細における多様な変更が、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神および
範囲から逸脱することなく、それにおいてなされ得ることが、当業者には理解されよう。当業者は、通常以下の程度の実験法を利用して、本明細書中で特定的に説明された本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を理解し、または確認することが可能であろう。それらの均等物は、特許請求の範囲の中に包含されることが意図される。
【0097】
例えば、いくつかの実施形態における本発明が、その中に配設された1つまたはそれ以上のマイクロチャネルを含む透明テストモジュールを使用して説明されてきたが、他のタイプのチャネルが使用されることが可能である。具体的には、透明テストモジュールは、標準的な非マイクロ流体キャピラリー電気泳動工程にしたがって寸法設定されたチャネルを含むことが可能である。さらに他の実施例として、本発明が、各チャネルの中間地点を決定するために特定のレーンファインディング手法を利用して説明されてきたが、一方、他のレーンファインディングアルゴリズムが適用されることが可能である。本発明のいくつかの実施形態において、レーンファインディング手法は、光度ではない蛍光における変化を検出するように修正されることが可能である。この特定の実施形態においては、光電子増倍管が、フォトダイオードの代わりに、反射された信号を捕獲するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1A】本発明による生体分子解析を処理するための携帯用システムの斜視図である。携帯用システムのサンプルホルダが、開状態で図示される。
【図1B】図1−Aの携帯用システムの他の斜視図である。携帯用システムのサンプルホルダは、閉状態で図示される。
【図1C】図1−Aの携帯用システムの側面図である。カバー部分が、携帯用システムの内部が見えるように、取り除かれている。
【図2A】本発明の携帯用処理システム内で使用される、レーザ励起および蛍光検出システムの概略図である。
【図2B】本発明の携帯用処理システム内で使用される、レーザ励起および蛍光検出システムの他の概略図である。
【図3A】図1−Aおよび図1−Bのシステム中で使用可能な、テストモジュールの上面図である。
【図3B】図1−Aおよび図1−Bのシステム中で使用可能な、テストモジュールの他の上面図である。同図面に示されるテストモジュールは、テストホルダ中へ注入されるサンプルおよび流体を保持するために取り付けられたサンプルボードを有する。
【図4】図3のテストモジュール中で使用可能なチャネルの概略図である。
【図5】本発明中で使用可能な他のチャネルの概略図である。
【図6】電気泳動の際に、本発明において使用されるテストモジュールへ印加される、第1のバイアス条件の実施形態の概略図である。
【図7】電気泳動の際にテストモジュールへ印加される、第2のバイアス条件の実施形態の概略図である。
【図8】電気泳動の際にテストモジュールへ印加される、第3のバイアス条件の実施形態の概略図である。
【図9】電気泳動の際にテストモジュールへ印加される、第4のバイアス条件の実施形態の概略図である。
【図10】電気泳動の際にテストモジュールへ印加される、第5のバイアス条件の実施形態の概略図である。
【図11】電気泳動の際にテストモジュールへ印加される、第6のバイアス条件の実施形態の概略図である。
【図12】電気泳動の際にテストモジュールへ印加される、第7のバイアス条件の実施形態の概略図である。
【図13】ホルダの部分中に配設されたテストモジュールの実施形態の概略図である。
【図14】テストモジュールを貫通するレーザ光線進路の図である。
【図15】テストモジュールのチャネルの間の位置に対する光度のグラフである。
【図16A】市販の対立遺伝子ラダーおよびサイズ基準を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図16B】市販の対立遺伝子ラダーおよびサイズ基準を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図16C】市販の対立遺伝子ラダーおよびサイズ基準を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図16D】市販の対立遺伝子ラダーおよびサイズ基準を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図17A】図16−Aに図示される未加工データの修正されたデータのグラフである。
【図17B】図16−Bに図示される未加工データの修正されたデータのグラフである。
【図17C】図16−Cに図示される未加工データの修正されたデータのグラフである。
【図17D】図16−Dに図示される未加工データの修正されたデータのグラフである。
【図18A】プライマによるHIV単位複製配列からのDNA鋳型を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図18B】プライマによるHIV単位複製配列からのDNA鋳型を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図18C】プライマによるHIV単位複製配列からのDNA鋳型を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図18D】プライマによるHIV単位複製配列からのDNA鋳型を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図19A】図18−Aに図示される未加工データの、修正されベースコールされたデータのグラフである。
【図19B】図18−Bに図示される未加工データの、修正されベースコールされたデータのグラフである。
【図19C】図18−Cに図示される未加工データの、修正されベースコールされたデータのグラフである。
【図19D】図18−Dに図示される未加工データの、修正されベースコールされたデータのグラフである。
【図20A】既知の単位複製配列の配列一覧である。
【図20A1】既知の単位複製配列の配列一覧である。
【図20A2】既知の単位複製配列の配列一覧である。
【図20B】本発明の核酸解析デバイスより生成された、既知のHIV単位複製配列の未編集データの配列一覧である。
【図20C】本発明の核酸解析デバイスより生成された、既知のHIV単位複製配列の編集済みデータの配列一覧である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、核酸および/またはタンパク質解析デバイスに関し、より詳細には、移動実験室と、診療所と、病院検査室と、他の人間の、動物の、または環境の診療および/または検査実験室ならびに看護所の地とを含む非管理環境または半管理環境において、核酸およびタンパク質のシークエンシングまたは分離のために使用されることが可能な、低消費電力要求仕様の高耐久性デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムプロジェクトが、ゲノム解析のための多種多様な技術の開発に触媒作用的な影響を及ぼしてきた。進歩の主要な分野は、DNAシークエンシングの方法に関する。また、さらに、一塩基多型(SNP)検出、一本鎖高次構造多型(SSCP)、ヘテロデュプレックス分析(HA)、縦列型反復配列(STR)、およびマイクロサテライト分析または単純反復配列(SSR)分析を含む、いくつかの重要な遺伝子型決定技術および遺伝子差異検出技術が、開発されてきた。
【0003】
上述のDNAシークエンシングの方法は、DNA断片をサイズにより分離するために電気泳動法を使用し、特定の断片の検出のために標識(最も普通には蛍光標識色素)を使用する。多数の市販の色素、およびInvitrogen−Molecular Probesを含む市販業者より入手可能な核酸の標識化用の関連するリンカーがある。
【0004】
DNAシークエンシング法は、チェーンターミネーション法(Sangerら、1977年)と、化学分解法(MaxamおよびGilbert、1977年)とに基礎を置かれることが可能である。Sangerのシークエンシング法においては、一本鎖DNA分子の配列が、相補的なポリヌクレオチド鎖の酵素による合成により決定され、これらの鎖は、特定のヌクレオチド配列部位で終結する。MaxamおよびGilbertのシークエンシング法においては、二本鎖DNA分子の配列が、特定のヌクレオチド配列部位で分子を断片化する化学薬品を用いた処理により決定される。シークエンシングの方法は共に、それぞれの塩基を同定するために色素標識を使用し、所与の塩基の鎖の終端の断片サイズを決定するために電気泳動に基礎を置く分離を使用する。
【0005】
解析のために標識DNA断片を生成するための反応において色素プライマまたは色素ターミネータを使用するSangerにもとづく反応が、今日では広く普及している。Applied BiosystemsおよびGE Amershamを含む、市販のサイクルシークエンシングキットの多数の製造業者がある。これらの市販のキットは、R110、R6G、TMR、およびROXの色素(Amersham Thermosequenase II Dye Terminator Cycle Sequencing Kits)と、5CFB−R110、5CFB−R6G、5CFB−TMR、5CFB−ROXのエネルギー伝達色素(Amersham DYEnamic ET Terminator Cycle Sequencing Kit)とを使用する。DNAシークエンシング用に設計された市販の色素キットに加えて、色素、およびInvitrogen−Molecular Probesを含む市販業者より入手可能な核酸の標識化用の関連するリンカーもまた、使用可能である。
【0006】
所与の断片のDNA配列の迅速な決定が可能であること、または所与の断片のサイズの決定が可能であることにより、多くの医学的および法医学的な問題への解決法が提供される。例えば、DNA解析は、癌、感染症(例えば、敗血症などのウイルス性疾患および細菌性疾患)、および遺伝性疾患(嚢胞性線維症など)の診断を補助することが可能である。DNA解析は、患者の薬剤反応性を判定するのを可能にすることにより、医薬品を個人用に決定するのを補助することが可能である。同様に、DNAシークエンシングまたは断片サイジングが、疾病に関して明らかに健康である患者を審査にかける際に、あるいは遺伝子または遺伝子マーカの綿密な特徴づけにもとづく臨床試験において患者または志願者を包含もしくは除外するために、有用性を有する。
【0007】
ヒトゲノムの研究が、特定の突然変異または多形現象の存在を明らかにしてきており、
明らかにし続ける。頻度を増加させながら、これらの突然変異または多形現象は、単一遺伝子疾患または複数遺伝子疾患に関連している。結果として、分子診断学の分野が成長し拡大しつつある。分子診断テストは、マイクロサテライトおよびSTRなどの多形性マーカと、腫瘍性疾患および他の疾患に関連する突然変異の決定とを使用する。例えば、単純疱疹ウイルス(HSV)、サイトメグリアウイルス(CMV)、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのいくつかのウイルス感染の存在が、増殖されたおよび分離されたDNA断片を使用して、診断されてきた。また、いくつかのタイプの癌診断が、増殖されたDNA断片の分離を利用して実施される。具体的には、B細胞リンパ腫およびT細胞リンパ腫の診断が、同カテゴリーに該当する。癌が発症すると、単一形式の再配列されたDNAを有する単一の細胞が、高い割合で成長し、その形式の遺伝子が優位となるに至る。突然変異遺伝子の分離および同定が、従来のまたはマイクロチップのデバイスを使用して実施されることが可能である。シークエンシングおよび分離の方法ならびに装置の分子診断学への適用の説明については、概して、Bosserhoffらによる、「Use of
Capillary Electrophoresis for High Throughput Screening in Biomedical Applications,A Minireview」(「Combinational Chemistry & High Throughput Screening」、第3号、455〜66ページ、2000年)と、Ferranceらによる「Exploiting Sensitive Laser−Induced Fluorescence Detection on Electrophoretic Microchips for Executing Rapid Clinical Diagnostics」(「Luminescence」、第16号、79〜88ページ、2001年)を参照されたい。またそれらの開示は、それら全体として、参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
法医学的分析に関して、シークエンシング、および特にDNA断片のサイジングが可能であることは、被疑者の迅速な逮捕(故に、累犯の減少)を可能にし、および無実の罪を課された人の容疑を晴らすことを可能にする可能性を有する。ヒトゲノムは、縦列型反復配列(STR)から構成された複数の一続きのDNAを含む。今日まで、数百のSTRの遺伝子座が、ヒトゲノム中で位置付けられてきた。そのような遺伝子座の解析(ミニ−STR、Y−STR、およびミトコンドリア配列を含む)は、法医学的研究のための重要な手段である。例えば、通常、法医学的ケースワークは、複数の遺伝子座の分離および解析を伴う。いくつかのテストは、アメロゲニン(性別決定マーカ)と、4つの追加遺伝子座であるD351358、D19S433、D16S539、およびD2S1338と共に、「Second Generation Multiplex」(SGM)として知られる6遺伝子座テストを使用する。他の市販のキットが、15のテトラヌクレオチドSTR遺伝子座およびアメロゲニンマーカ(例えば、AmpFISTR Identifiler PCR Amplification Kitを参照)を同時に増殖させる。一般的に、米国連邦捜査局(FBI)、欧州法科学研究所連合(European Network of Forensic Science Institutes)(ENFSI)、および国際刑事警察機構は、Combined DNA Index System(CODIS)の下で基準化された、少なくとも13のコアSTR遺伝子座、すなわちCSF1PO、D3S1358、D5S818、D7S820、D8S1179、D13S317、D16S539、D18S51、D21S11、vWA、FGA、TH01、およびTPOXを含むキットによる結果を識別する。概略的な説明については、Budowle,Bらによる「CODIS and PCR Based Short Tandem Repeat Loci:Law Enforcement Tools」(Second European Symposium on Human Identification、73〜88ページ、1998年)を参照されたい。またこれは、その全体として、参照により本明細書に組み込まれる。
【0009】
典型的なSTR遺伝子座は、400塩基対の長さを下回り、2から7塩基対の長さである単一の反復ユニットを含む。STRは、反復数における個々の間の大きな差異により高
度に多形性である対立遺伝子を画定することができる。例えば、ヒトゲノム中の4つの遺伝子座CSF1PO、TPOX、THO1、およびvWA(短形のCTTv)が、反復数において異なるSTR対立遺伝子により特徴付けられる。2つの反復ユニット、つまり、TPOXおよびTHO1についてはAATGが、ならびにCSF1POおよびvWAについてはAGATが、これらの遺伝子座にて見られる。
【0010】
一般的に、STR解析は、DNAサンプルからSTRプロファイルを生成することと、生成されたSTRプロファイルを他のSTRプロファイルと比較することを伴う。通常、STRプロファイルの生成は、PCRまたは他の増殖法を使用するSTR遺伝子座の増殖と、DNAサンプル中のSTRの染色および標識付けと、電気泳動法を使用する(電界を印加する)サンプル中の標識付けされたSTRの分離と、サンプルへおよび次いで光検出器へ蛍光励起デバイスを向けるための、レーザまたは他の蛍光励起デバイスおよび検流計または他のデバイスを使用する標識付けされたSTRの記録とを伴う。
【0011】
STRプロファイルを生成するための一工程が、約35cmの長さの細長いゲルプレート(またはスラブゲル)を使用する。一般的に、同プロセス(以下、「ゲルプレートプロセス」と呼ぶ)は、ゲルプレートの領域上への、標識付けされた核酸サンプル(ほとんどの場合はDNAだが、当業者に理解されるように、RNAもまたいくつかの適用例に使用されてよい)の配置と、電気泳動法を使用するゲルプレート上の標識付けされたDNAサンプル中のSTRの分離と、標識付けされたSTRを記録するための検出器を用いたゲルプレートの走査とを伴う。通常、ゲルプレートプロセスは、完了するのに2〜3時間を要する。
【0012】
STRプロファイルを生成するための他の工程が、直径50〜75ミクロンのキャピラリーを使用する。一般的に、同プロセス(以下、「キャピラリープロセス」と呼ぶ)は、キャピラリーの一方の端部で標識付けされたDNAサンプルを動電学的に注入することと、STRを分離させるために電気泳動法を使用してキャピラリーを介してサンプルを引きつけることとを伴う。レーザ光線が、サンプル中の標識付けされたSTRを励磁して、標識付けされたSTRを蛍光発光させるために使用される。STRにより発光された蛍光が、例えばレーザなどの蛍光励起デバイスを用いてキャピラリーの部分を走査することにより、検知される。
【0013】
通常、STR分離は、ゲルプレートプロセスにおけるものに比べ、キャピラリープロセスにおけるものの方が早い。一般的に、電気泳動流の増進が、STR分離速度の増進をもたらし、通常は、より高速の電気泳動流が、キャピラリーは分離結果をゆがめ得る(電気泳動流により引き起こされた)熱をより容易に放散させるので、ゲルプレートに比べ、キャピラリーへ適用されることが可能である。通常のキャピラリープロセスは、完了するのに10分から1時間の間の時間を要する。
【0014】
しかし、温度制御は、キャピラリーにもとづくDNA分離デバイスの精度に関して、決定的な要素である。このことが、なぜ先行技術のデバイスが、険しく、非管理または半管理の環境あるいは適用例について適していないかの理由を示す。先行技術のデバイスは、注入され、同一温度にて同時に流れる16ものキャピラリーを使用し、それにより、流れの中の精度が高いことが予期されることが可能となり、流れ中の対立遺伝子ラダーに関連しサイジングされたデータが信頼性のあるものであることが予期されることが可能となる。しかし、流れの中の精度は、温度の変動に左右されるようである。温度が流れごとに変化すれば、知られていない断片が、別の流れの中の対立遺伝子ラダーによりサイジングされることが不可能となり得る。ビンの外にある断片は、「オフ・ラダー」対立遺伝子と呼ばれてよく、または隣接ビン中へ落ちることによりミスタイプされ得る。結果として、動タイプのデバイスを使用して解析されたサンプルは、誤って特徴付けられ、それにより、得られる結果の質がかなり低下し得る。
【0015】
STRプロファイルの生成のための他の工程は、マイクロ流体チッププロセスを使用する。マイクロ流体技術は、微量(マイクロリットル、ナノリットル、またはピコリットル)の液体を操作することが可能な構造物を作るため半導体製造技術を使用して組み立てられるシステムを示すために概して使用される用語であり、大規模な分析化学装置を、数百
倍または数千倍より小さくより効率的であり得るデバイスと交換する。概して、マイクロ流体デバイス(チップ)は、1ミリメートル未満の1寸法を少なくとも有するチャネルがあることにより特徴付けられる。同様に、マイクロチャネルは、約1ミリメートル未満である1寸法を少なくとも有するチャネルである。マイクロ流体チップは、従来のデバイスに比較して、少なくとも2つの主要な利点を提供する。第1に、これらのチャネル中で必要とされるサンプルおよび試薬の量が少なく、最小限のサンプルの量(一般的に数ナノリットル)が可能であり、試薬コストを低減させる。第2に、そのようなチャネルおよび同一の寸法の電気的または機械的デバイスを含むシステムにより、少量中での多数の複雑なサンプル操作の実行を可能にする。最後に、このような小さな構造物を含むシステムが、複数のサンプルの同時処理を可能にするように高度に多重化されることが可能である。
【0016】
概して、チップは、耐久性透明ガラスから構成される。典型的なチップは、チャネル中へ導入されるサンプルのためのアクセスポイントを有する平面基板中に製造された1つまたはそれ以上のチャネルから構成される。一実施形態において、チャネルは、ロングアーム(場合により「ロングチャネル」と呼ぶ)およびショートアーム(場合により「ショートチャネル」と呼ぶ)から構成されることが可能である。個々のSTR分離が、各チャネルで実行されることが可能である。ショートアームは、ロングアームの一方の端部の付近で、ある角度で、ロングチャネルと交差する。いくつかのチップにおいては、ショートアームは、ジョグを有し、そこにおいて、それは、ショートチャネルの部分が平行であるがしかし同一直線ではないように、ロングチャネルと交差する。通常、チップは、溶融シリカウエハ中にチャネル構造体を生成するために、フォトリソグラフィ技術および化学エッチング技術を使用して形成される。これらの食刻されたチャネル構造体は、食刻されていない溶融シリカウエハへ結合されて、完全なチャネル構造体を形成する。
【0017】
概して、チップを使用するSTR分離プロセスは、マイクロチップおよびチャネルが中に水平に(すなわち、重力方向へ垂直に)位置するようにマイクロチップを配向し、一対のチャネルのショートチャネルの一方の端部に接続されるマイクロチップの上面中の孔の上に標識付けされたDNAのサンプルを配置することを伴う。次に、標識付けされたDNAのサンプルは、サンプル中のSTRが、ショートチャネルに沿って部分的に分離されるように、電気泳動法を使用して、ショートチャネルを通り水平に引きつけられる。次いで、ロングチャネルおよびショートチャネルの交差部のサンプル部分が、電気泳動法を使用して、ロングチャネルに沿ってさらに分離される。レーザが、蛍光発光する標識付けされたSTRを励磁する。STRより発光される蛍光が、ゲルプレートプロセスおよびキャピラリープロセスのそれと同様の態様において、検出され、記録される。
【0018】
チップを使用する従来の高速DNA遺伝子型決定が、「High−Speed DNA
Genotyping Using Microfabricated Capillary Array Electrophoresis Chips」(「Analytical Chemistry」、第69巻、11号、2181〜2186ページ、1997年6月1日)と題された記事の中で説明されており、その教示が、その全体において、参照により本明細書に組み込まれる。キャピラリー電気泳動チップを使用する超高速DNAシークエンシングが、「Ultra−High−Speed DNA Sequencing Using Capillary Electrophoresis Chips」(「Analytical Chemistry」、第67巻、20号、3676〜3680ページ、1995年10月15日)と題された記事の中で説明されており、その教示が、その全体において、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
その教示がその全体において参照により本明細書に組み込まれる、Adourianらへ発行された米国特許第6,207,031号が、対立遺伝子プロファイリング分析において有用な自動分離デバイスを説明する。米国特許第6,207,031号に説明される分離デバイスは、サンプルを迅速に解析することが可能となるために十分な寸法の断面および長さのチャネルを有する微細加工チャネルデバイスを有する。具体的には、微細加工チャネルは、変性条件下で施される交換可能なポリアクリルアミドマトリックスを充填され、蛍光標識されたSTRラダーが、対立遺伝子の同定のための内部標準として使用され
る。分析法により解析されるサンプルが、標準的な工程により準備されることが可能であり、少量の分析物だけが、解析ごとに必要とされる。同デバイスは、反復的に実施することが可能であり、自動高速の適用例に適する。
【0020】
米国特許第6,207,031号に説明される分離デバイスは、比較的短時間における多数のサンプルの分離に効果的である一方で、米国特許第6,207,031号のデバイスは、管理環境下の実験室環境内に配置される必要がある。結果として、例えば、診療所などの看護所の地にて、または非常災害地にての上述のデバイスの使用などの現場使用においては、これは、これらのデバイスの寸法、エネルギー必要量、および操作上(すなわち、高精度の光学機器への最小限の振動衝撃)の制約のため、実用的でない。また、さらに、これらのデバイスは、これらのデバイスの現場使用の有用性を制限する高電力消費性を有する。
【0021】
したがって、シークエンシングデバイスおよび分離デバイスを高耐久性にし、それにより現場において、または非管理環境において、確実で時宜を得た計測を求めることを可能にするための産業において、満たされていない需要がある。さらに、マイクロ流体工学を使用した市販の適切に高耐久化されたシークエンシングおよび/または分離デバイスを提供する産業ニーズがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
概して、本発明は、小型化された、高速の、高耐久化された、核酸シークエンシングおよび分離デバイスに関する。このようなデバイスは、診療所、病院検査室、ならびに他の人間と、動物と、環境との診療および/または検査実験室、ならびに他の看護所の地における用途を有する。本発明のデバイスは、技術のないまたはあまり技術のない操作者による、管理されたまたは非管理の環境地における利用に適している。本発明のデバイスは、先行技術の機械に対する大幅な性能改善をもたらすことが予期され得る。本発明のデバイスは、サンプルおよび試薬の量の劇的な削減と、マクロスケール計測装置を用いてでは不可能である独自のマイクロスケール化学実験を可能にすることと、さらに例えば診療所などの非管理、半管理の環境、実験室、または例えば移動式の法医学科学捜査研究所などの厳しい環境、実験室、あるいは過酷もしくはやや過酷な物理的位置または環境にある診察所において、作動が可能であることとの、圧倒的な利点を提供する。
【0023】
さらに、本発明にしたがって説明されるデバイスは、キャピラリーアレイまたはその均等物の温度を、非常に正確な温度範囲(例えば、±1℃以内)に維持し、それにより外部環境の温度の変化による実施ごとの変動を最小化する、新規のシステムを含むことが可能である。結果として、分離の際に生成される「オフ・ラダー」対立遺伝子の数が、低減され、したがって、取得される結果の質が、先行技術のデバイスに比べて向上する。さらに、本明細書中で説明される本発明の実施形態は、低電力レベルを使用して実施され、それにより、本発明による機械およびデバイスを、携帯使用および/または現場使用に適したものにする。
【0024】
また、本発明は、DNA分離/シークエンシングデバイスのための、反射鏡、レーザ、スキャナなどを含む光検出素子および発光素子の支持に関する。本発明の核酸およびタンパク質解析デバイスは、良好な成果のためマイクロ流体レーンを再現性よく検出する、特別なレーザレンズおよび高精度光学式走査デバイスを組み込む。光発光および検出システムの構成要素のそれぞれが(例えば、レーザ、反射鏡、スキャナ、フィルタ、光検出器)、レーザ光線経路のある部分を制御するため、構成要素の任意の移動または転位が、データ収集において障害を引き起こし得る。これらの障害の結果として、データフローが、中断または損なわれるおそれがあり、それにより不正確な結果を生じさせる。また、キャピラリーシステムを使用する先行技術のデバイスも、レーザにもとづく光発光および検出システムを利用し、したがって、本明細書中で説明される本発明を使用して高耐久化なされ得る。本発明のデバイスは、高耐久性のレーザレンズと、振動および/または衝撃の結果として、検出された信号中に生成されるノイズの量を最小化する、マイクロ流体レーンを再現性よく検出するための検出システムとを有する。さらに、いくつかの実施形態におい
て、本発明は、電気泳動および解析のための従来の実験室用シークエンシングデバイスに比べ、より少ないエネルギーを要するデバイスに関する。結果として、本発明のデバイスは、現場において確実に使用されることが可能でありながら、高分解能の結果を得る。先行技術の核酸シークエンシングおよび分離デバイスもまた、キャピラリーレーン中で、特別なレーザレンズおよび検出システムを使用する。当業者は、本発明の教示により高耐久化された、キャピラリーシステム内で通常使用されるレーザレンズおよび検出システムを、容易に利用することが可能であろう。
【0025】
概して、本明細書中で使用される「生体分子検体」という用語は、非合成のおよび合成の核酸(例えばDNAおよびRNA)とそれらのいくつかの部分、ならびに生体タンパク質の両者を指す。本明細書で説明されるのは、現場におけるそのような生体分子検体の対立遺伝子プロファイリングのための、実用的な超高速技術である。特に、技術は、核酸またはタンパク質のサンプル内の縦列型反復配列(STR)を解析するため、または核酸配列の決定が可能になるようにDNA分子を分離するため、マイクロ流体電気泳動デバイスを使用することを含む。さらに、当業者は理解するであろうが、サンプルは、検出デバイスにより検出されることが可能なものを含むように、修正され、標識付けされ得る。標識付けは、色素、クロモフォア、フルオロフォア、熱量測定の付加化合物、または放射性付加化合物をサンプル中へ混合することを無制限に含む、任意の適用可能な方法により遂行され得る。本発明の分析方法は、単一遺伝子座のSTRサンプルの、基線分解される電気泳動分離を迅速に実現することを可能にした。一実施形態において、数または反復数において異なるSTRにより定義され特徴付けられる遺伝子座を含むサンプル(例えば、PCRサンプル)の解析が、本明細書中で説明される対立遺伝子プロファイリング分析を利用して、迅速に実施される。例えば、4〜5の遺伝子座を含むPCRサンプルの解析が、約30分未満で実施されることが可能である。
【0026】
また本明細書中で説明されるのは、本発明の対立遺伝子プロファイリング分析において有用な、分離デバイス(またはテストモジュール)である。分離デバイスは、サンプルが迅速に解析されることが可能となるのに十分な断面および長さにおける寸法のチャネルを有するマイクロチャネルデバイスを含む。一実施形態においては、分離デバイスが、断面が約300〜16,000平方ミクロンで、長さが約100〜500mmである断面積を有するマイクロチャネルから構成される。いくつかの実施形態においては、マイクロチャネルが、約2,500平方ミクロンで、長さ180mmの、好ましい断面積を有する。蛍光標識付けされたSTRラダーが、対立遺伝子同定のための内部標準として使用される。解析法により解析されるサンプルは、標準的な工程により用意されることが可能であり、少量(例えば、4マイクロリットルまたはそれ未満)のみが、解析ごとに必要とされる。
【0027】
さらに、本発明のデバイスは、シークエンシングにおいて使用されることが可能である。人間および他のゲノムの大量のシークエンシングが完了したが、特に半管理または非管理の環境において、小部分のゲノムをシークエンスする十分な事情がまだなお存在する。例えば、1,000を上回る多様な突然変異が、嚢胞性線維症を有する患者の中に発見されている。これらの突然変異はそれぞれ、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)として知られる1,480のアミノ酸のタンパク質をエンコードする非常に大きな遺伝子中で起きる。遺伝子は、7番染色体の27エクソンに散らばる6,000を上回るヌクレオチドを含む。タンパク質中の欠陥が、疾患の多様な症状を引き起こす。単一の突然変異が、嚢胞性線維症の全てのケースの要因となるわけではない。疾患を有する人々は、2つの突然変異遺伝子を受け継ぐが、特定の突然変異が必ずしも同一である必要はない。したがって、特定の突然変異を同定可能であることは、いくらかの予測上の価値がある。他の例として、AIDSウイルスは、非常に急速に突然変異し、治療を行う医者は、患者が疾患の経過の各段階で突然変異ウイルスと戦うために、適切な治療を受けて帰宅することが可能となるように、看護所の地で突然変異ウイルスのシークエンスを行うことができる必要がある。さらに他の適用例において、癌患者の術中診断を行う腫瘍外科医は、看護所の地で、配列情報を受け取ることができる必要がある。
【0028】
また、本明細書中で説明されるのは、ソースが自然のものであるか(例えば、鳥インフ
ルエンザまたは重症急性呼吸器症候群(SARS)など)、あるいは人的活動に関するものであるか(例えば、炭疽菌または他の生物兵器など)に関わらず、環境中の感染性因子の同定において有用である携帯用デバイスである。本明細書中で説明される多くの有用物および方法において、DNAシークエンシングおよびサイジングデータを収集することの価値は、現場においてそれが可能であることにより、強化される。したがって、携帯用の高耐久性DNA解析計測装置は、多様な適用例について利用価値がある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
概して、一態様において、本発明は、生体分子検体のサンプルの解析のための高耐久性装置を特徴とする。高耐久性装置は、ホルダと、電気泳動デバイスと、低出力光源(すなわち、240ボルトで約10アンペア未満を消費する光源)と、光検出器と、複数の光学デバイスとを有する。高耐久性装置のホルダは、透明テストモジュールに配設された少なくとも1つのチャネルを有する透明テストモジュールを支持する。電気泳動デバイスは、ホルダに接続され、透明テストモジュールへエネルギーを供給する。光源は、生体分子検体のサンプルを励起することが可能な光線を発光する。装置内に設けられた複数の光学デバイスは、蛍光標識付けされた生体分子検体のサンプルを励起するために、光源から透明テストモジュールへ光線を伝送する。また、これらの光学デバイスは、生体分子検体のサンプルから蛍光を収集し、光検出器へ同蛍光を伝送する。
【0030】
本発明の一実施形態において、高耐久性装置は、高耐久性装置へ電気エネルギーを供給するための、1.5kVAまたはそれ未満の最大電気消費量を有する携帯用電源をさらに備える。本発明の他の実施形態において、電気泳動デバイスは、透明テストモジュールへ熱エネルギーを供給するためのヒータと、複数の分離マイクロチャネルへ電気エネルギーを供給するための複数対の電極とを有する。他の実施形態において、装置は、透明テストモジュールへ熱エネルギーを供給するためのヒータと、少なくとも1つのチャネルへ電気エネルギーを供給するための複数対の電極とを有する。
【0031】
複数の光学デバイスは、装置内に配設されたベースプレートへ堅固に搭載されることが可能である。装置の光源は、固体レーザまたは任意の他の適切なレーザなどの、低出力レーザであってよい。透明テストモジュールの少なくとも1つのチャネルは、マイクロチャネルまたは複数のチャネルであってよい。
【0032】
他の態様において、本発明は、生体分子検体のサンプルを解析するための装置を特徴とする。装置は、その中に配設された少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを有する透明テストモジュールを支持するためのホルダを有する。電気泳動デバイスは、ホルダに接続され、透明テストモジュールへエネルギーを供給する。低出力光源は、生体分子検体のサンプル中に蛍光を励起する光線を発光する。装置内に設けられた複数の光学デバイスは、透明テストモジュールへ、および透明テストモジュールから光検出器へ、光源により発光された光線を伝送する。
【0033】
一実施形態において、複数の光学デバイスは、装置内に配設されたベースプレートへ堅固に搭載される。他の実施形態において、電気泳動デバイスは、透明テストモジュールへ熱エネルギーを供給するためのヒータと、少なくとも1つのマイクロ流体チャネルへ電気エネルギーを供給するための一対の電極とを有する。いくつかの実施形態において、透明テストモジュールは、複数のマイクロ流体チャネルを有する。いくつかの実施形態において、低出力光源は、低出力レーザを含む。いくつかの実施形態において、装置は、装置へエネルギーを供給するための携帯用エネルギー源をさらに有する。携帯用エネルギー源は、約1.5kVA未満の最大電力消費量を有することが可能である。
【0034】
他の態様において、本発明は、生体分子検体のサンプルを処理するための装置を特徴とする。装置は、その中に配設された少なくとも1つのチャネルを有する透明テストモジュールを支持するためのホルダを有する。電気泳動デバイスは、ホルダに接続され、透明テストモジュールへエネルギーを供給する。光線を発光するための光源は、生体分子検体のサンプル中に蛍光を励起させる。複数の光学デバイスは、単一部材の材料から形成されたベースプレートへ堅固に搭載される。ベースプレートに配設された光学デバイスは、透明テストモジュールへ、および透明テストモジュールから光検出器へ、光源により発光され
た光線を伝送する。一実施形態において、ベースプレートは、ベースプレートへの、フレームの下で生成された振動の伝送を低減するための減衰デバイスを含むフレームにより支持される。ベースプレートは、ベースプレート上の複数の光学デバイスの回転的な動きを制限するための複数の固定要素を有することが可能である。
【0035】
一実施形態において、透明テストモジュールを支持するためのホルダは、透明テストモジュールに配設された開口に電気的に接続されるように配設された一対の電極を有する第1の部材を有することが可能である。第2の部材は、透明テストモジュールが第1の部材と第2の部材との間に配置される場合に、透明テストモジュールの横方向への移動を低減するための自動ロック機能を備える。
【0036】
一実施形態において、装置の光源は、固定レーザ、低出力レーザ、または任意の他の適切なレーザである。装置の光検出器は、少なくとも5つの光電子増倍管を有することが可能である。
【0037】
他の態様において、本発明は、生体分子検体のサンプルを解析するための透明テストモジュールを特徴とする。透明テストモジュールは、透明な材料から形成された部材内に配設される、少なくとも1つの流体チャネルを有する。少なくとも1つの流体チャネルのそれぞれは、分離部分、不要物アーム部分、第1のサンプルアーム部分、および第2のサンプルアーム部分を有する。一実施形態において、第1のサンプルアーム部分は、バイアス溶液を受容するようになされ、第2のサンプルアーム部分は、生体分子検体のサンプルを受容するようになされる。他の実施形態において、少なくとも1つの流体チャネルは、マイクロ流体チャネルを有する。透明テストモジュールは、ガラス、ポリマー、コポリマー、またはそれらの任意の組合せから形成されることが可能である。
【0038】
他の態様において、本発明は、その中に配設される複数の分離流体チャネルを有する透明テストモジュールにおける、中央チャネル部分を決定する方法を特徴とする。方法は、複数の分離流体チャネルを有する透明テストモジュールを提供するステップであって、複数の分離流体チャネルのそれぞれは、前端位置、中央チャネル位置、および既知のチャネル幅を有するステップと、反射光線を生成するための光線を用いて、複数の分離流体チャネルのそれぞれを有する透明テストモジュールの部分にわたり走査するステップと、複数の分離流体チャネルのそれぞれを含む透明テストモジュールの部分を通る強度の波形を生成するために、光検出器を用いて反射光線を収集するステップと、複数の分離流体チャネルに関連付けされないことが決定されたピークを除外するステップと、複数の分離流体チャネルのそれぞれについて、前端位置の波形内の位置を同定するステップと、同定された前端位置のそれぞれから延在する、第1の距離内の波形に沿った全ての残りのピークを同定するステップと、同定された前端位置のそれぞれからの、第1の距離内の全ての残りのピークの位置の平均より、複数の分離流体チャネルのそれぞれの中央チャネル位置を決定するステップとを含む。
【0039】
前述のおよび他の本発明の特徴ならびに利点が、それらの中において同様の参照記号が種々の図面にわたり同一部分を示している添付の図面に示される、本発明の好ましい実施形態の、以下のより個別的な説明より明らかになろう。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、本発明の原理を図示することに重点が置かれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
現場(すなわち、実験室以外の使用)にて迅速におよび確実にサンプルを解析することが可能な高耐久性DNA分離/シークエンシングデバイスに対する切実な需要がある。DNA分離/シークエンシングデバイスを高耐久化するための伝統的なアプローチには、従来の実験室用デバイスへ、大きくて扱いにくい、クッションおよび/または構造的支持部材を追加することが含まれてきた。これらのアプローチは、クッションおよび/または構造的支持部材の追加重量によるデバイスの携帯不可能性と、デバイスが動かされた場合の衝撃および振動よりもたらされる励起および検出システムにおける光学的配列の欠損と、高精度装置に影響を及ぼす抑制できない振動力により生成される背景雑音の増加による、デバイスの結果の信頼度の欠如と、従来のデバイスに必要とされる固有の高電力消費率とを含む多数の理由により、産業ニーズを満たしてこなかった。
【0041】
伝統的なアプローチとは対照的に、本発明の実施形態は、生体分子検体の解析のために使用される、高耐久性DNA分離/シークエンシングデバイス(例えば、携帯ユニット中に設けられることが可能なデバイス)を対象とする。概して、本発明は、現場における、高速で確実な分離およびシークエンシング解析を可能にする。図1A、図1B、図2A、および図2Bを参照すると、高耐久性分離デバイス10が、テストモジュールホルダ20と、ホルダ20に連結された電気泳動組立体30と、サンプルホルダ20の下に配置され、保護カバー50(図1Aを参照)により保護された蛍光励起および検出システム40(図2Aおよび図2Bを参照)とを有する。蛍光励起および検出システム40は、ホルダ20中に開口42を有し、それにより、蛍光発光(例えば、レーザ光線)および結果的として誘発される蛍光発光を誘発するエネルギー源が、ホルダ20と、蛍光励起および検出システム40との間に生じることが可能となる。
【0042】
本発明の他の実施形態が、警察署、移動式法医学実験室、診療所、病院検査室、臨床検査室、および他の看護所の地などの非管理または半管理環境を対象とする。そのような環境において、技術のないまたはあまり技術のない操作者が、低コストで、殆どもしくは全く訓練または経験を必要とせずに、デバイスを操作し管理できなければならない。さらに、これらの環境は、周囲状況が大きく変化するような環境地にあるだろう。デバイスは、結果に影響を及ぼさずに、気温および他の環境的な変動に耐えることが可能でなければならない。この一態様は、手動の再配列または再初期化を必要としない、衝撃および振動に耐える能力である。さらに、これらの環境の多くにおいて、患者がデバイスの使用者(例えば、処置医、刑事巡査、科学捜査官、または他の使用者)と共にまだいる間に、迅速で、確実で、正確な結果が必要とされる。例えば、本発明によるデバイスは、病気の患者へ施すための適切な抗体療法を選択するために、検査の際に感染病医により、または、癌患者の術中診断を行うために、癌専門外科医により使用されることが可能である。
【0043】
テストモジュールホルダ20は、複数の個別のマイクロチャネルを有するテストモジュール55を受容し支持する。生体分子検体のサンプルが、マイクロチャネル中へ注入され、次いで、テストモジュール55は、解析のためホルダ20内へ配置される。テストモジュール55をホルダ20内へ挿入した後、使用者は、ホルダ20を閉状態に設置し(図1Bを参照)、それにより電気泳動組立体30は、テストモジュール55に接触する。ホルダ20が閉状態にある状態で、使用者は、電気泳動組立体30を作動させてテストモジュール55へ電圧を印加し、それにより生体分子検体を構成する構成要素(例えばSTR)が分離する。
【0044】
デバイス10中の、またはデバイス10へ取り付けられた各構成部材の寸法は、以下の要因のいずれかまたは組合せにより、小型化されることが可能である。すなわち、蛍光発光を誘発するために使用されるエネルギー源タイプの変更、必要電力消費量の低減、電子装置の寸法の削減、およびユニット中への試料調製の内蔵である。例えば、少分割量の血液が、デバイスのひとつのポートの中へ導入され、DNA抽出のため試料調整区域へ送られることが可能である。次いで、結果として得られたDNAサンプルが、本明細書の他の箇所で説明されるマイクロ流体チップにより処理され解析される。
【0045】
蛍光励起および検出システム40は、各マイクロチャネルの部分にわたりエネルギー源(例えばレーザ光線)を走査することにより、DNAサンプル(例えばSTR)の電気泳動により分離された構成要素を励起するとともに、記録し最終的に解析するために、生体分子検体から1つまたはそれ以上の光検出器へと、誘発された蛍光発光を収集し伝送する。一実施形態において、蛍光励起および検出システム40は、レーザ60、スキャナ62、1つまたはそれ以上の光検出器64、および様々な反射鏡68と、フィルタ70(例えば、バンドパスフィルタ、ダイクロイックミラー)、ピンホール500、レーザ光線調整器501、およびレーザ60から放射されたレーザ光線を開口42に通してモジュール55へ伝送し、誘発された蛍光発光を光検出器64へ送り戻すためのレンズ72とを有する。スキャナ62は、テストモジュール55に対し様々な走査位置へ入射レーザ光線を動かす。具体的には、レーザ光線は、レーザ光線調整器501を通過し、次いでスキャナ62へ進み、スキャナ62はテストモジュール55に対し様々な走査位置へ入射レーザ光線を
動かして、マイクロチャネル中のそれぞれの個別の構成要素から蛍光発光を誘発させる。誘発された蛍光発光は、開口数0.45および10倍率42の無限補正対物レンズ(Thales−Optem、Centerpoint、NY)を用いて収集され、スキャナ62(Cambridge Technologies,Cambridge,MA)により方向付けられ、検出器組立体502の前に配置されるピンホール500で像平面へ送られる。レンズ72Aは、焦点距離150mm、直径50.8mmの、2つの色消し複層レンズからなる組立体である。レンズ72Bは、焦点距離100mm、直径50.8mmの、色消し複層レンズである。レンズ72Cは、焦点距離150mm、直径50.8mmの、色消し複層レンズである。レンズ72Dは、ピンホール500を通過する蛍光発光を平行にし、検出器組立体502中へそれを伝達する。レンズ72Dは、焦点距離25.0mm、直径12.7mmの、平凸レンズである。検出器組立体502は、一組のバンドパスフィルタおよびロングパス・ダイクロイックミラーを通過する際に、検出器により収集される前に、蛍光発光の波長成分を分離させる。ダイクロックおよびバンドパスフィルタの組合せは、使用される色素について選択され最適化され、Chroma Technology Corp,Rockingham,VTを含む光学フィルタ業者より入手可能である。同実施形態において、1つまたはそれ以上の光検出器は、光電子増倍管(Hamamatsu,USA)である。また他の実施形態においては、検出器は、光電子増倍管、フォトダイオード、およびアバランシェフォトダイオードを有することが可能である。
【0046】
光検出器64の1つが、テストモジュール55からデータ(例えば、蛍光発光DNA/STR信号)を収集し、ポート75へ取り付けられたケーブルを介して、保護カバー50の外側に配置されたデータ取得および記憶システムへデータを電子的に供給する。一実施形態において、データ取得および記憶システムは、Option Industrial
Computers(Vaureuil−Dorion,Quebec,Canada)より市販の高耐久性コンピュータを含むことが可能である。
【0047】
ピンホール501で蛍光発光を画像化することにより、隣接するレーンからの色素と、基板からの蛍光発光と、検出経路中の光学素子からの蛍光発光とを含む背景信号を除去するために、蛍光発光の空間フィルタリングが可能になる。ピンホールの寸法は、50から2,000ミクロンの範囲であってよく、600ミクロンのものが、同実施形態のために選択されている。ピンホールの寸法は、チャネル中からの蛍光発光のみが通過することができ、したがってデバイスの信号対雑音比の結果的な増加が可能となるように選択される。
【0048】
光線調整器組立体501は、3つのレンズ72E、72F、および72Gから構成される。レンズ72Eおよび72Gは、焦点距離−75mm、直径1.27cm(1/2インチ)の平凹レンズであり、レンズ72Fは、焦点距離+75.6mm、直径1.27cm(1/2インチ)の平凸レンズである。レンズにより、レーザからの光線の寸法が調整されることが可能となり、マイクロチップ上の励起スポットの寸法が決定されることが可能となる。
【0049】
一実施形態において、ピンホール500およびコリメートレンズ72Dは欠如しており、蛍光発光が検出器組立体502中へ直接的に転送されることが可能である。同実施形態において、蛍光発光は、レンズ72Cにより、検出器64同士の間にある像平面へ集束される。
【0050】
一実施形態において、ビーム拡大器501組立体が欠如しており、そのため励起スポットの寸法は、レーザ60固有のスポット寸法により規制される。
一実施形態において、励起された蛍光からの波長識別が、検出器の前で、ショートパス・ダイクロイックミラー70、ロングパス・ダイクロイックミラー68、およびバンドパスフィルタの組合せを使用することにより実現される。デバイスの他の実施形態においては、フルオロフォアの波長識別は、CCDカメラまたはリニアアレイ検出器により検出されることの可能な空間分離された波長スペクトルを生成するために、検出器組立体502を分光計またはプリズムと交換することにより遂行されることが可能である。
【0051】
一実施形態において、光学素子は、短波長のレーザからの光を通過させるが、励起され
た蛍光発光からの光を検出器へ反射する、ショートパス・ダイクロイックミラー70である。他の実施形態において、光学素子70は、45度で穿孔された孔を有する反射鏡である。反射鏡中の孔は、レーザのビーム直径に比べ、50パーセントほどやや大きくなるように設計される。同素子により、ビーム直径が2mmであるレーザ光線からの光が通過することを可能としながら、同反射鏡で28mmのスポット寸法を有する蛍光発光の95パーセントを検出器へ反射する。
【0052】
蛍光励起および検出システム40と相互に影響し合う抑制されない振動が、データ収集に不利益をもたらし、最終的には信頼性のある結果の取得に対する障害となるおそれがある。これらの問題は、デバイスが移送され犯罪現場にて使用される場合(すなわち現場使用)などのように、DNA分離/シークエンシングデバイスが非管理環境において使用される場合に、悪化するおそれがある。環境振動の影響を低減するため、本発明は、1つまたはそれ以上の以下の様々な要素を含む。これらの要素のそれぞれは、デバイスの全重量または全容積へ最小限の影響を有し、したがって、本発明のデバイスが容易に移送される(すなわち携帯可能である)ことを可能にする。例えば、一実施形態において、蛍光励起および検出システム40は、単一部材の材料(すなわち単一構造体)から形成されたプレート80上に存在する。すわなち、レーザ60、スキャナ62、1つまたはそれ以上の光検出器64、反射鏡68、フィルタ70、およびレンズ72は、例えばアルミニウムの単一部材などの単一部材の材料から構成されるプレート80へ固定される。結果として、蛍光励起および検出システム40の全構成要素は、連結部を有さない共有ベース、あるいは蛍光励起および検出システム40へ振動を伝送しかつ/または生成することが可能でありうる他の交点を有する。蛍光励起および検出システム40の構成要素は、1つまたはそれ以上の光学工業で通常使用される固定具を用いて、単一のプレート80へ固定される。また固定具の使用に加えて、本発明のいくつかの実施形態は、使用の際にこれらの構成要素の回転的な動きをさらに低減するための固定要素を有する。蛍光励起および検出システムの各構成要素が、レーザ光線の経路のいくつかの部分を制御するため、構成要素の任意の動きが、データ収集に妨害を引き起こし得る。これらの妨害の結果として、データフローが中断または損なわれ、それにより不確実な結果を生じさせる。それらの上に構成要素を設置する前にプレート80へ取り付けられることが可能な固定要素は、プレート80から離れるように垂直に延在し、構成要素中に作られた開口へ嵌入して、使用の際にそれらの構成要素の回転的な動きを制限するようにする。例えば、一実施形態において、固定要素は、プレート80から延在するダウエルピンを含む。蛍光励起および検出システム40の構成要素は、構成要素中の孔が、ダウエルピンにぴったり合って、構成要素の回転を制限するように、プレート80上へ配置される。プレート80へ構成要素を維持するために、例えばねじなどの固定具が使用されて、プレート80へ構成要素を連結する。
【0053】
本発明においてどのように振動および衝撃が抑制されることが可能であるかについての他の例として、いくつかの実施形態が、地面とプレート80との間に位置する1つまたはそれ以上の減衰デバイスを有し、蛍光励起および検出システム40を支持する。これらの減衰デバイスは、振動力を吸収し、蛍光励起および検出システム40への振動の伝達を低減する。例えば、図1A、図1B、および図1Cに図示された本発明の実施形態においては、デバイス10は、プレート80を支持するフレーム82を有する。フレームとプレート80との間に配設されるのは、衝撃および他の力を吸収し、それにより蛍光励起および検出システム40への振動の伝達を防止するまたはかなり低減する、4つの制動コイル84(それらのうち2つは図1Aおよび図1Bに見られ、4つは図1Cに見られる)である。図1Aおよび図1Bに図示される実施形態における制動コイル84は、デバイスの重量の釣り合いを均等にとるように配置される。すなわち、各コイル84は、均一量の重量を支持する。他の実施形態においては、制動コイル84は、フレーム82の周辺に対称的に配置されることが可能であり、または所望のように配置されることが可能である。さらに、4つを上回るまたは下回る個数の減衰デバイスが、衝撃を吸収するために使用され得る。衝撃および振動を抑制するための適切な減衰デバイスの例が、ワイヤ・ロープ・アイソレータ(例えば、Orchard Park,NYのEnidineより市販のステンレ
ス鋼ワイヤロープ)のコイル、あるいは弾性係数の大きな、空気圧式または油圧式の衝撃吸収台と、ゴムを引かれた衝撃吸収台とを有する金属ばねのコイルを有する。
【0054】
いくつかの実施形態において、自動ロック機能が、解析の際にテストモジュール55の揺れを低減するために使用される。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、ホルダ20は、非可動テストモジュール止め具86と、自動位置決め緩衝装置88とをさらに有することが可能である。自動位置決め緩衝装置88は、ホルダ20の上部が閉じられると、非可動止め具86の方へ動く。したがって、自動位置決め緩衝装置88は、挿入されたテストモジュール55を誘導し、非可動テストモジュール止め具86に対し押し付ける。結果として、テストモジュール55は、テストモジュール止め具86と自動位置決め緩衝装置88との間にぴったり配置され、それにより所定位置にテストモジュールを固定し、解析の際にテストモジュールの横方向の移動を低減させる。
【0055】
上述の特徴の全ては、デバイス10の高耐久性の特質および/または小さな小型化された寸法を無効化させるような追加重量を加えることなく、衝撃吸収を提供し、蛍光励起および検出システム40への振動伝達を防ぐために、単独で、または組み合わせにおいて使用されることが可能である。
【0056】
また、本発明の他の特徴が、デバイス10の高耐久性の特性に寄与する。例えば、蛍光励起および検出システム40中で使用されるレーザ60は、少ないエネルギーを使用しながら大量の電力を放射するように選択されることが可能である。結果として、確実な計測が、レーザ60の使用によってなされ、検出されるとともに、ポート77を介してデバイス10へ接続された外部エネルギー源から大量の電力を必要としない。一般的に、実験室内で使用されるタイプなどの、従来の固定式デバイスは、ガスレーザ(例えば、アルゴン・イオン・レーザおよびヘリウム・ネオン・レーザ)を使用する。これらのガスレーザは、適切にレーザとして使用できるためには大量のエネルギーを必要とする。例えば、典型的なガスレーザは、240ボルトにて約20〜30アンペアを消費する(すなわち、7,200ワットの電力を要し、約2.5kVAまたはそれを上回る最大電力消費量を有する)。したがって、同タイプのレーザに接続される携帯用エネルギー源は、同電力消費を維持するのに十分な大型のものでなければならないであろう。一般的に、固体レーザは、より少ないエネルギーを必要とし、それらのガス状態のレーザの同等物に比べより効率的であり、したがって本発明の携帯性および高耐久特性へ寄与する。適切な運用のために限定された電力を必要とし、本発明と共に使用するために適しているレーザの例は、例えばダイオード励起固体レーザなどの固体レーザである。通常、ダイオード励起固体レーザは、240ボルトで2アンペア未満を消費する(すなわち、480Wの電力であり、1.5kVA未満の、およびいくつかのケースでは0.5kVA未満の最大電力消費量を有する)。いくつかの実施形態において、レーザまたは240ボルトで10アンペア未満を消費する他の光源が、デバイス10の携帯性を減ずることなく使用されることが可能である。例えば、240ボルトで10アンペア未満を消費する光源は、3,000W未満の電力を消費する。これらの光源は、小型の携帯用エネルギー源(例えば、6,000Wまたはそれ未満の電源、1.5kVAまたはそれ未満の最大電力消費量電源)により電力供給されることが可能であり、それにより本発明の小型化の特性を維持する。本発明の一実施形態において、光源が、Sapphire 488 HP(Santa Clara,CA)固体レーザなどの個体性を有し、これは、0.75kVAの最大電力消費量を有する。さらに、Sapphire固体レーザは、7gの側方衝撃および15gの垂直衝撃に耐えることが可能である。当業者が理解するであろうように、所望の光学的特性を有する任意のレーザが、本発明の教示内で使用されることが可能である。
【0057】
また、ホルダ20内に配設された薄サーモフォイルヒータ90が、デバイスの携帯性および現場利用性に寄与する。ヒータ90は、挿入されたテストモジュール55に熱的接触状態になるように、ホルダ20内に位置する。同設計により、ヒータ90の直径が、小さくなり、テストモジュール55と均等の寸法になることが可能となる。デバイス10の外部に置かれた遠隔制御装置を介して作動され得るヒータ90は、テストモジュール55へ熱エネルギーを加えるために使用されることが可能である。テストモジュール55に加え
られた熱は、生体分子検体の分離を補助する(すなわち、ヒータ90は、電気泳動デバイス30の部分である)。テストモジュール55(例えば、平面のマイクロ流体チップ)と共に小さなサーモフォイルヒータ90を使用することにより、ヒータ90とテストモジュール55との間の効率的な熱伝達が可能となる。結果として、テストモジュールを加熱し、改善された温度制御を維持するために必要とされる、電気エネルギー量または電力消費量の大きな削減が、実現される。従来のキャピラリー電気泳動システムにおいて、キャピラリーの加熱および温度制御は、オーブン中にキャピラリーを置くことにより成される。大容量のオーブンと、オーブンヒータ要素とキャピラリーとの間の非効率的な熱伝達とにより、大量のエネルギーが必要となり、これは、携帯用エネルギー源で流出し、および/または大量の電力供給を必要とするおそれがあり、したがって核酸分離/シークエンシングデバイスの携帯性を減じる。結果として、本発明のデバイスは、かなりの期間の間、取り付けられた小型の携帯用エネルギー源(例えば、6,000Wまたはそれ未満および/あるいは1.5kVAまたはそれ未満の最大電力消費量)により電力供給されることが可能であり、それにより本発明の携帯性を向上させる。
【0058】
また、生体分子検体の分離における補助に加えて、ヒータ90は、高分解能および高精度の結果の取得に寄与する。例えば、ヒータ90とテストモジュール55との間の密接な接触が、それらの間の効率的な熱伝達を可能にする。結果として、ヒータは、所望の温度設定の±1度の範囲内でテストモジュール55の温度を維持することが可能であり、それにより任意の不利益な環境温度の影響を最小化する。
【0059】
生体分子検体の分離または電気泳動が、テストモジュール55内のマイクロチャネル中で起きる。一般的に、テストモジュール55は、少なくともエネルギー源が誘発する、蛍光励起および検出システム40からの蛍光発光(例えばレーザ光線)が、テストモジュール55を介して伝送されて、その中にあるサンプルと相互に影響し合うようにすることが可能な、透明の材料から構成される。適切な透明の材料の例としては、ガラス(例えば、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、溶融シリカガラス、およびソーダ石灰ガラス)、単結晶アルミナ、ならびに透明性ポリマーまたはコポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート、uv加工されたポリカーボネート、もしくは環状オレフィンコポリマー)が含まれる。
【0060】
図3Aおよび図4を参照すると、1つまたはそれ以上のマイクロチャネル110(16チャネルが図3Aに図示され、1チャネルが図4に図示される)のそれぞれが、サンプルアーム112、不要物アーム114、および分離チャネル116を有する。マイクロチャネル110は、約5〜200ミクロンの深さおよび約10〜2,000ミクロンの幅をチャネルが有するように、標準的なフォトリソグラフィ工程および化学エッチング工程の利用により、透明のプレート上に製造されることが可能である。一実施形態において、好ましいチャネル深さは約40ミクロンであり、好ましいチャネル幅は90ミクロンである。図4に図示されるように、サンプルアーム112および不要物アーム114は、分離チャネル116の全長に沿って約5〜2,000ミクロンの距離で互いから分かれている。一実施形態においては、サンプルアーム112および不要物アーム114は、分離チャネル116の全長に沿って500ミクロンの距離で互いから分かれている。サンプルを挿入し、不要物を除去し、ならびにアノード100およびカソード102と電気接続をするための開口118(例えば118a、118b、118c、118d)が、透明のプレート中にレーザドリル加工される。例えば、一実施形態において、16のマイクロチャネルを有するプレートは、16のサンプル孔と、16の不要物孔と、1つまたはそれ以上のアノード孔と、1つまたはそれ以上のカソード孔とを有する。単一の透明プレート上に形成された複数のテストモジュール55(例えば、10のテストモジュールがそれぞれ16のマイクロチャネルを有する)を有する他の実施形態において、それは、160のサンプル孔と、160の不要物孔と、160のアノード孔と、160のカソード孔とを有する。マイクロチャネルごとに2つのサンプルアーム112aおよび112bを有するさらに他の実施形態においては、プレートが、レーザドリル加工されて、32のサンプル孔と、16の不要物孔と、1つまたはそれ以上のアノード孔と、1つまたはそれ以上のカソード孔とを、
テストモジュール55ごとに有する。これらのマイクロチャネルの構造は、伝統的な半導体製造プロセスにより、透明プレート中にパターン形成され、食刻される。パターン形成後に、チャネルにアクセスするためのポートが、レーザドリル加工、アブレシブジェットドリル加工、および超音波ドリル加工を含むドリル加工プロセスにより形成される。次いで、食刻された透明プレートは、ゴミおよび表面の汚染物質を取り除くために、複数の浄化プロセスで浄化される。
【0061】
チャネル110を閉鎖および密閉し、それによりそれらが生体分子検体を充填されることができるようにするため、食刻された透明プレートは、未使用のまたは食刻されていない透明プレートへ熱的に結合される。結合プロセスは、2つのステップのプロセスにおいて、オーブンの中で実施される。2つのステップの結合プロセスは、食刻されていないプレートが食刻されたプレートの食刻された面を覆う状態で、オーブン中に2つの透明プレート(すなわち、1つの食刻されたプレートと1つの食刻されていないプレート)を配置することを含み、それにより、閉鎖部が、食刻されたマイクロチャネル間中を含む全ポイントで形成される。透明プレートは、約200℃未満の温度へ、約120分間加熱される。約226.79〜4535.92グラム(約0.5〜10ポンド)の力が、熱的結合を促進するために、加熱プロセスの間中、プレートに均一に加えられる。上述の低温加熱プロセスが完了すると、結合された透明テストモジュール55は、視覚的に検査される。明らかなひびまたは他の損傷がない場合、結合された透明テストモジュール55は、密閉部を完成させるために、約735℃の温度で、高温オーブン中にて加熱される。上述の熱的結合プロセスは、Wiley Publishersから1998年11月に出版された、Q.−Y.TongとU.Goseleによる「Semiconductor Wafer Boding:Science and Technology」の中にさらに説明されており、これは、その全体として、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
図3Bを参照すると、いくつかの実施形態において、テストモジュール55は、食刻されたマイクロチャネルへの開口を有する上面に取り付けられたサンプルボード57を有する。サンプルボード57は、電気泳動において使用されるサンプルおよび流体を保持するための、多数のリザーバ59を有する。流体のためのホルダとしての役割を果たすことに加えて、またサンプルボード57は、ホルダ20内でテストモジュール55の適切な整列の実現を補助する。例えば、リザーバ59は、テストモジュール55がホルダ20内へ挿入される場合に、サンプルボード57内へ配置されて、リザーバと電気泳動組立体30の電極の整列および位置合わせを実現する。
【0063】
テストモジュール55が密閉されると、チャネルの内面が、Luba Mitnikらにより「Electropheresis」(第23巻、719〜26ページ、2002年)中にて説明されている若干修正されたHjertenプロトコルを使用して、電気浸透およびサンプル壁相互作用を防止するように処理され、これは、その全体として、参照により本明細書に組み込まれる。チャネルは、ふるい分けマトリックス材料を充填され、チャネルに通じる開口は、緩衝液または脱イオン水のいずれかを充填される。開口118は密閉され、テストモジュール55は、その使用が必要となるまで(すなわち、テストモジュールが、解析のため生体分子検体のサンプルを保持するために必要となるまで)保管される。
【0064】
1つまたはそれ以上のサンプルが解析される準備が整うと、テストモジュール55の密閉部が除去され、緩衝液または脱イオン水が、テストモジュール55中へ食刻されたチャネル110へ通じる各開口から除去される。使用のためにチャネルを調整するため、チャネル110への開口は、脱イオン水で3回流される。各回において、水は、乾燥するまで吸引により除去される。電気泳動ゲルまたはふるい分けマトリックス/材料が、注入器で各チャネル中へ注入される。当業者が理解するであろうように、様々な表面壁処理およびふるい分け材料が、使用されてよい。適切なふるい分け材料の例は、例えばDakota
Scientific(Sioux Falls,SD)から市販されている高分子量4%LPAなどの、高分子量のリニアポリアクリルアミド(LPA)である。他の適切なふるい分け材料の例が、Methalらによって「Polymeric Matrice
s for DNA Sequencing by Capillary Eleetrophoresis」(「Electrophoresis 2000」第21巻、4096〜4111ページ)において、ならびにRuiz−Martinezによって「DNA Sequencing by Capillary Electrophoresis with Replaceable Linear Polyacrylamide
and Laser−Induced Fluorescence Detection」(「Anal,Chem」第65巻、2851〜58ページ、1993年)において説明され、これらの開示は共に、それらの全体として、参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
チャネルは、まずアノード開口118bから、チャネル分相当の3倍の量のふるい分けゲルを充填され、次いでカソード開口118aから、チャネル分相当の3倍の量のふるい分けゲルを充填されて、ゲルでマイクロチャネル110を完全に被覆し、水が全て除去されるのを確実にする。次いで、アノード100の開口118(すなわち開口118b)、カソード102の開口118(開口118a)、および不要物アーム114の開口118(開口118c)は、緩衝液を充填され、サンプルアーム112の開口118dは、脱イオン水を充填される。
【0066】
マイクロチャネルの調整を完了するため、テストモジュール55はホルダ20内へ挿入され、ホルダ20は閉じられて、それによりカソード102およびアノード100のホルダ20上の連結箇所が、テストモジュール55上のカソード開口118aおよびアノード開口118bに連結する。第1のバイアス配置が、チャネルを調整するためにテストモジュール55へかけられ、そこで、約10kV未満の電圧が、カソード102およびアノード100にわたり印加されて、ふるい分けマトリックスを、分離チャネル116の下方へ、カソード開口118aからアノード開口118bへ移動させる。次いで、第2のバイアス配置が、調整を完了するためにテストモジュール55へかけられる。第2のバイアス配置は、サンプルアーム112と不要物アーム114との間に4kV未満の電圧をかけて、サンプルアーム開口118dから不要物アーム開口118c中へイオンを移動させることを含む。テストモジュール55は、ホルダ20から取り除かれ、全ての水および緩衝剤を除去するために洗浄される。各ポートが、脱イオン水を用いて少なくとも3回すすがれ、次いでマイクロチャネル110は、泡の存在を点検するために、拡大下で視覚的に検査される。ここにきてテストモジュール55は、使用の準備が整う。調整プロセスが、40〜約70℃の間の温度にてテストモジュールに実施される。すなわち、ヒータ90が、調整プロセスの際に、約40〜70℃の間の温度へテストモジュールを温める。いくつかの実施形態において、実施の好ましい温度は50℃である。
【0067】
操作者が、サンプルボード57を介して1つまたはそれ以上のマイクロチャネル110のサンプル開口118d中へサンプルまたはテスト対照を注入することにより、テストモジュール55中へ生体分子検体のサンプル(STRを標識付けするための蛍光色素を含む)を装填する。アノード開口118a、カソード開口118b、および不要物開口118cは、緩衝液を充填される。テストモジュール55は、ホルダ20中へ戻して配置され、アノード100およびカソード102は、テストモジュール55へ接続される。
【0068】
本発明の他の実施形態においては、1つまたはそれ以上の上述の洗浄ステップが、調整プロセスにおいて除外される。具体的には、本発明のいくつかの実施形態において(図5を参照)、テストモジュールは、分離チャネル116、不要物アーム114、および2つのサンプルアーム112aおよび112bを有する、少なくとも1つのマイクロチャネル110を有する。2つのサンプルアーム112aおよび112bを有する結果として、調整後にテストモジュール55を洗浄するために利用される洗浄プロセスが除外される。すなわち、マイクロチャネルは、ふるい分けマトリックスを添加する前に、1回洗浄される。同実施形態において、サンプルアーム112aは、脱イオン水を充填され、サンプルアーム112bは、蛍光色素を含む生体分子検体を充填される。まず、マイクロチャネル110は、第1および第2のバイアス配置をかけることにより調整される。次いで、生体分子検体のサンプルは、2回目の実施用にテストモジュール55を洗浄し準備するためにホ
ルダ20からテストモジュール55を取り外す必要なく、解析される。第2のサンプルアーム112bを追加した結果として、プロセス時間の大幅な節減が実現されることが可能となる。
【0069】
サンプルを解析するため、様々な電気泳動工程が、サンプルをSTRへ準備し分離するために利用されることが可能である。これらの工程の1つが、約40〜70℃の温度へテストモジュール55を加熱しつつ、生体分子検体を分離するため電圧を印加することを含む。例えば、好ましい一実施形態において、テストモジュールの温度は、電気泳動の際に50℃に維持される。テストモジュール55へ分離条件を印加する前に、少なくとも1つのバイアス条件が、分離用にサンプルを準備するために、テストモジュール55内の各マイクロチャネル110へ印加される。第1のバイアス条件が、カソード開口118aからアノード開口118bの方へ、分離チャネル116中へ緩衝液を移動させる。第1のバイアス条件は図6に示され、そこで10kV未満の電圧が、カソード102とアノード100との間に印加される。図7に示される第2のバイアス条件が、サンプルアーム112と不要物アーム114との間に電圧を印加し、サンプルアーム112から不要物アーム114の方へ検体を移動させる。図8に示される第3のバイアス条件が、不要物アーム114からサンプルアーム112へ電圧を印加して、不要物アーム114からサンプルアーム112の方へ検体を移動させる。図9に示される第4のバイアス条件が、カソード102と不要物アーム114との間に電圧を印加して、分離チャネルから離れるように、およびサンプルアーム112と不要物アーム114との中へ戻るように、検体を移動させる。第1のバイアス条件は、第1の電源装置を用いて印加され、第2、第3、および第4のバイアス条件は、第2の電源装置を用いて印加される。第1のバイアス条件と、第2、第3、または第4のバイアス条件からの1つとの両方が、同時に印加される場合、他のバイアス条件が、マイクロチャネル110へ印加されることが可能である。例えば、図10に図示されるように、第1および第2のバイアス条件の組合せである第5のバイアス条件が、サンプルアーム114から不要物アーム114の方へ検体を移動させるとともに、またカソード102からアノード100の方へ分離チャネル116中の検体を移動させる。第6のバイアス条件が、第1および第3のバイアス条件の組合せにより構成され、図11に図示される。図12に示される第7のバイアス条件は、第1および第4のバイアス条件の組合せである。第7のバイアス条件は、サンプルアーム112および不要物アーム114の方へ、分離チャネルとサンプルアームおよび不要物アームとの間の交点の領域(例えば交点領域125)中の検体を移動させると共に、またカソード102からアノード100の方へ、分離チャネル116の残りのまたは他の部分中の検体を移動させる。
【0070】
上述のバイアス条件の順次の印加により、充填、積み重ね、分離、および分離の際に過剰な検体が分離チャネル中へ拡散することの防止を含む、多くの様々な働きが可能になる。通常、約50〜500V/cmの間の電界が、カソード102およびアノード100にわたり印加され、一方約50V/cm〜約500V/cmの電界が、不要物アーム開口118dおよびサンプルアーム開口118cへ印加される。分離チャネル116中への検体の充填が、サンプルアーム112および不要物アーム114の周辺に、0.5〜5分間、約50V/cm〜約400V/cmの電界と共に、第2のバイアス配置をかけることにより遂行される。交点領域125に検体を積み重ねることが、比較的短時間(例えば、約1秒〜約10秒)の間、約500V/cmまでの、チャネル110の周辺の電界と共に、第1のバイアス配置をかけることにより遂行される。交点領域125と分離チャネル116との間の伝導度の差が、交点領域125中の検体に圧縮されたバンドを形成させ、これにより、高分解能分離が可能となる。検体の分離は、約50〜500V/cmの電界と共に第1のバイアス配置をかけて、カソード102からアノード100の方へ検体の圧縮されたバンドを移動させることにより遂行される。第1のバイアス配置は、対象の最大断片が、検出区域150(すなわち、レーザ光線と相互に影響しあう分離チャネルの部分)を通り移動するまで、圧縮されたバンドへかけられる。サンプルアーム112および不要物アーム114からの検体が、分離チャネル116中へ拡散することが可能であり、電気泳動図の基線のゆがみと、信号対雑音比における低減とをもたらす。結果として、第7のバイ
アス配置をかけて、負の電界が、カソード開口118aと、サンプル開口118dおよび不要物開口118cのそれぞれとの間に設定されるのを確実にすることにより、サンプルアーム112または不要物アーム114中の過剰な検体が、解析の際に分離チャネル116へ侵入することが防がれる。本発明のいくつかの実施形態において、上述の第7のバイアス配置は、解析の残りの間かけられて、蛍光励起および検出システム40により収集される信号の品質を確かなものにする。他の実施形態において、伝導バンドが、交点領域125から離れて検出区域150の方へ移動すると、第7のバイアス条件の電源が切られ、第1のバイアス条件が印加される。同実施形態において、過剰な検体は、伝導バンドが交点領域125から離れるように移動しているため、分離チャネル116中へ拡散し得ない。結果として、過剰な検体は、データ収集の妨げとはなり得ない。他の実施形態において、過剰な検体は、分離の際にサンプル開口118dおよび/または不要物開口118cから検体を除去することにより、分離チャネル116中へ侵入することが防がれる。第3または第4のバイアス配置のいずれかが、分離の際にかけられて、除去のために、サンプルアーム112あるいはサンプルアームと不用物アーム114との組合せのいずれかへ過剰な検体が移動される。
【0071】
生体分子検体サンプルが分離されると、バイアス配置がかけられて、検出区域150の方へ分離された構成要素(STR遺伝子座)を移動させる。レーザ60から放射されるレーザ光線が、検出区域150にわたって走査し、DNAからの誘発された蛍光が、蛍光励起および検出システム40内の光検出器64により、収集され伝送される。レーザ光線は、検出区域150にわたって走査するので、レーザ光線は、そこの間を移動する蛍光標識付けされたSTR遺伝子座により吸収される。各標識付けされたSTRからの誘発された蛍光は、蛍光励起および検出システム40により収集され、検出器64へ伝送される。ダイクロイックミラーとバンドパスフィルタとの組合せを介して、特定の蛍光標識付けをされた、したがって特定のSTRの発光波長が、同定される。これらの結果は、法鑑定のために、業界基準または他のサンプルと比較されることが可能である。
【0072】
本発明においては、新規の「レーンファインディング」プロセスが、使用者が再整列工程を実施することを必要とせずに、チップ位置における変化または光列への素子の不整列を自動的に補正するために使用される。いくつかの実施形態において、「レーンファインディング」は、本明細書で説明される高耐久性装置へ使用される構成要素の1つとして含まれる。
【0073】
蛍光励起および検出システム40とテストモジュール55との間の整列に関する問題が、信号品質、特に背景ノイズレベルに対する誘発された蛍光の相対強度レベルにおける低下を導くおそれがある。「レーンファインディング」は、STRからの蛍光データの信号対雑音比を最大化し、検出区域150をより正確に見出すために、本発明のいくつかの実施形態において使用されるプロセスである。具体的には、励起エネルギー源とテストモジュール55中のチャネルとの間の整列に欠陥がある場合には、検出区域150を通り移動する標識付けされたDNAが、効率的に励起されない。さらに、例えばチャネル間からのチップの他の領域が、励起され、したがって過剰なバックグラウンド蛍光の生成をもたらす。また、励起エネルギー光線とチャネルとの間の不整列は、DNAからの低減された誘発された蛍光に対する過度のバックグラウンド蛍光の収集に至り、それにより信号対雑音比を低下させる。検出区域150以外の他の領域からのデータをサンプリングする結果として、不確実なおよび/または使用不可能な結果が作成される。蛍光励起エネルギー光線と検出区域との間の不整列が、そこで作動するレーンファインディングプログラムを有するソフトウェアを作動させる取り付けられたコンピュータなどの、取り付けられた処理装置により、監視され修正されることが可能である。
【0074】
先行技術のデバイスとは異なり、本発明のデバイスは、取り外し可能なテストモジュール55またはチップを組み込むように設計される。本発明において、いくつかの実施形態が、テストモジュール55の初めの挿入または取り外しおよび再挿入の後で、各マイクロチャネル110の位置を決定するために、新規のレーンファインディング方法を使用する。レーンファインディングは、テストモジュール55が取り除かれおよび/または再挿入
される際の、蛍光励起および検出システム40内の複数のレンズの手動による再整列の必要性を不要にする。一実施形態において、テストされるチップのレーン位置は、テストチップのフォトダイオード走査を参照チップのそれに相関させることにより決定される。これは、テストチップに対するフォトダイオード走査を初めに収集することによりなされる。相関分析が、特に2つのフォトダイオード走査間の最大相関が生じる位置を決定するために、テストチップおよび参照チップのフォトダイオード走査間で実施される。2つのフォトダイオード走査間の最大相関の位置が、テストチップと参照チップとの間の位置的なずれの判定を可能にし、したがって参照チップのレーン位置へ同ずれを適用することにより、テストチップのレーン位置を判定することが可能となる。参照フォトダイオード走査およびレーン位置は、蛍光色素を充填されるテストモジュールを使用することにより生成される。これにより、検出器により収集された各レーンからの最大蛍光を生成するスキャナ位置と共に、フォトダイオード操作データの同時捕獲が可能となる。
【0075】
他の実施形態において、レーンファインディングが、透明テストモジュール55中の引っかき傷または他の欠陥、および透明テストモジュール55中の異物の存在などにより引き起こされる収差を無制限に含む収差よりもたらされる偽ピークを除去する。図13を参照すると、励起エネルギー源(例えば、レーザ光線)が、サンプルを解析するためにデバイス10を使用する前に、ある特定のテストモジュール上の検出区域150にわたって走査される。レーザ光線が、各チャネル110を通過する際に、それは、チャネル110間の透明材料と、チャネル中の媒体との間の屈折率の不連続により屈折される。屈折された光線は、テストモジュール55を介して散乱しおよび/または導波することが可能であり、テストモジュールの両面に配置されたフォトダイオード170、172により検出されることが可能である。図14を参照すると、4つの一般的なケースがあり、そこでは、チャネル上のレーザ光線入射が、フォトダイオードの方へ屈折され、フォトダイオードにより検出される。図14に示されるように、第1レーザ経路は、チャネルの前端に交差し、フォトダイオード170の方へ屈折される。第2レーザ経路は、チャネルに交差せず、テストモジュールの透明材料だけを貫通して進む。結果として、光は、フォトダイオード170または172のどちらの方へも方向付けられない。第3レーザ経路は、マイクロチャネルの中央または中間に交差する。図14に示されるように、第3レーザ経路中のレーザ光線は、フォトダイオード170および172の両方の方へ方向付けられ、したがってデータを検出するのに最善の位置である。最後に、第4レーザ経路は、チャネルの後端に交差し、フォトダイオード172の方へのみ屈折される。図15は、レーザ光線が1つのマイクロチャネルにわたって走査する際の、フォトダイオード172での典型的な波形を示す。波形は、チャネル110の前端位置が、約1385カウントに位置し、中間位置が、約1425カウントに位置し、チャネルの後端が、約1475カウントに位置することを示す。
【0076】
一実施形態において、レーンファインディングソフトウェアが、偽ピークを除外し、各マイクロチャネル110の前端位置および後端位置を同定するように設計された一連のステップにより、各チャネル110の中間位置を決定する。同実施形態において、フォトダイオード170および172により検出された全チャネルからのピークの強度が、その最大値へ正規化される。検出区域の少なくとも3つの走査が記録され、3点ボックスカーアベレージが、収集されたデータの不整をならし、判読精度を確実にするためにトレースの不整をならすために、実施される。検出区域150内の全ピークが、同定され、フォトダイオード170およびフォトダイオード172により収集された両方の波形にもとづき同定されなかった任意のピークが、除外される。残りのピークは、例えば透明テストモジュール55中の引っかき傷または他の欠陥、あるいは異物により引き起こされる収差などの、収差によりもたらされる偽ピークについて再点検される。これらのひびまたは引っかき傷よりもたらされるピークは、各ピーク間のスペースを検討することにより同定される。図15に示されるように、ある特定のチャネルに関連するそれぞれのピークは、チャネルの前部、中間部、後部に対応して一定の間隔で間が空く。すなわち、各ピークは、3分の1のチャネル幅の距離内に互いから離れて位置する。したがって、それらの間が3分の1
のチャネル幅の距離で他のピークへ相関しない任意のピークが、波形から除外される。残りのピークの全てが、各チャネル110の中間位置を決定するために使用される。
【0077】
一実施形態において、チャネルの中間位置は、波形における第1のピークを初めに同定することにより決定される。同ピークは、第1のチャネルの前端として同定される。前端から1.2チャネル幅内のピークが、同定される。これらの同定されたピークは、第1のチャネルの中間位置を決定するために、平均化される。第1のピークから1.2チャネル幅よりも上回る距離で波形に沿い位置する次のピークが、同定され、第2のチャネルの前端に特定される。第2のチャネルの前端から1.2チャネル幅内のピークが、同定され、第2のチャネルの中間位置を決定するために共に平均化される。前端および中間位置を同定する同プロセスは、テストモジュール55の全チャネルが同定されるまで、継続される。各チャネルの中間位置が、チャネルの前端位置からの平均的なずれを決定するために、共に平均化される。同ずれは、各チャネルの前端と中間位置との間の距離を表す。各チャネルの前端位置を含む参照ファイルが、データ収集のための適切な位置へレーザ光線を方向付けるようにスキャナ62の動作を誘導するため、決定されたずれを用いて更新される。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態において、高耐久性核酸分離/シークエンシングデバイス10は、蛍光励起および検出システム40により収集された信号から背景ノイズを除去するための、新規のシステムをさらに含む。具体的には、検出システムにより収集され、検出器へ伝送される蛍光信号が、標識付けされた生体検体および背景ノイズの2つのソースから主に構成される。背景構成要素は、標識付けされた生体検体を除く全ての検出可能な構成要素に関連し、テストモジュール55の蛍光と、検出経路中の蛍光発光素子と、遮断されない背景光とを含む。同背景は、固定的な強度レベルのものであり、標識付けされた生体検体からの信号へ直接加えられる。本発明の一実施形態において、基線相殺回路が、電子増幅およびアナログからデジタル形式への信号の変換に先立って、検出器からの固定的な背景レベルを除去するために、実装される。背景ノイズの除去(すなわち、バックグラウンドオフセット)により、信号検出のためのより大きなダイナミックレンジが可能となる。先行技術のシステムにおいては、検出器が、検出された蛍光(背景および信号)を電流へ変換し、次いでこれが、電子増幅を介して電圧へ変換される。アナログ電圧が、アナログ・デジタル変換を介して、デジタル形式へ変換される。本発明のいくつかの実施形態においては、電流源が、背景の除去のための相殺電流の印加が可能となるように、検出器の直ぐ後および電子増幅の直ぐ前で、検出回路へ接続されて、先行技術のデバイスに比べより大きなダイナミックレンジがもたらされる。本発明において、電流は、電子的に制御され、使用者により選択可能である。
【0079】
先行技術のシステムに対する、本発明の背景相殺システムの利点の1つは、増大された信号のダイナミックレンジである。増大された信号のダイナミックレンジの結果として、より大きな範囲のサンプル濃度が検出されることが可能となる。例えば、通常、犯罪現場より収集されたサンプルは、高濃度の被害者のDNAと、低濃度の加害者のDNAとを含む。すなわち、サンプルは、薄い量の加害者のDNAと、高い濃度の被害者のDNAとを含む。本発明の背景相殺システムにより、使用者は、背景ノイズに対しA/D変換器を最大値化させることなく、単一のサンプル中で大きな範囲の信号/サンプル濃度を検出することが可能となり、同時に、薄い濃度の第2ソースのDNA(例えば加害者のDNA)の検出をするのに十分な感度を有する。
【0080】
以下の実施例が、本発明をさらに説明し、本発明の理解をさらに容易化するために提供される。これらの特定の実施例は、本発明の例示として意図され、限定的なものとしては意図されない。
【実施例1】
【0081】
以下の実施例が、本発明による高耐久性核酸解析デバイスの法医学的な使用例を説明する。同実施例においては、図1A、図1B、および図1Cに図示されるものと同様の高耐久性核酸解析デバイスが、参照サンプルを解析するために使用された。
【0082】
参照サンプルは、市販のSTRキット(AmpFISTR SGM Plus、App
lied Biosystems社、Foster City、CA)による対立遺伝子ラダーと、サイズ基準(GeneScan 400 HD (ROX) Size Standard、Applied Biosysteme社、Foster City、CA)から構成された。サンプルは、2マイクロリットルの対立遺伝子ラダーと、0.5マイクロリットルのサイズ基準と、10.5マイクロリットルの脱イオン水とを使用して用意された。サンプルは、解析に先立ち、サンプルを約3分間、約90℃へ加熱することにより変性され、その後サンプルは氷で急速に冷却された。次いで、サンプルは、洗浄されたマイクロ流体チップ中へ注入された。
【0083】
サンプル注入の前に、マイクロ流体チップは、チップのチャネル中の余分なイオンを除去するために、洗浄され、調整された。具体的には、マイクロ流体チップ中の各チャネルが、チャネルと、アノード開口、カソード開口、サンプルアーム開口、および不要物アーム開口とを洗浄するために、圧力を介して4%LPAふるい分け材料(Dakota Scientific、Sioux Falls、SD)を充填された。洗浄が完了した後、アノード開口およびカソード開口は、500マイクロリットルの 1x TTE buffer(Dakota Scientific、Sioux Falls、SDより市販)を充填され、不要物アーム開口は、33マイクロリットルの 1x TTE bufferを充填され、サンプルアーム開口は、13マイクロリットルの脱イオン水を充填された。各チャネルは、190V/cmの電界がカソードおよびアノードにわたり6分間印加される予備電気泳動プロセスを介して調整され、その後、875V/cmの電界が、サンプルアームおよび不要物アームにわたり3分間印加された。
【0084】
予備先電気泳動の後に、カソード開口、アノード開口、サンプルアーム開口、および不要物アーム開口は、洗浄され、次いで充填された。カソード開口およびアノード開口は、500マイクロリットルの 1x TTE bufferを充填され、不要物アーム開口は、33マイクロリットルのTTE bufferを充填され、サンプルアーム開口は、13マイクロリットルの上述のサンプルを充填された。
【0085】
サンプルは、サンプルアームおよび不要物アームにわたり875V/cmの電界を印加しつつ、同時にアノードおよびカソードにわたり88V/cmの電界を1.5分間印加することにより、分離チャネル中へ充填された。充填の後に、サンプルは分離され、過剰なサンプルは、カソードおよびアノードにわたり190Vを印加しつつ、同時にサンプルアーム開口および不要物アーム開口のそれぞれへ800Vを印加することにより、分離チャネルから離れるように引き戻された。これらの条件は、サンプルを分離するために、マイクロ流体チップへ45分間適用された。
【0086】
次いで、蛍光励起および検出システムが、分離されたサンプル中の蛍光標識付けされたSTR遺伝子座を励起するために、作動された。図16A、図16B、図16C、および図16Dが、蛍光励起および検出システムにより収集されたデータにより生成された、遺伝子座ラダーの未加工の電気泳動図を示す。収集された各電気泳動図は、装置内に配置された光電子増倍管の1つにより捕獲された強度データの1つを表す。すなわち、図16Aは、青の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示し、図16Bは、緑の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示し、図16Cは、黄の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示し、図16Dは、赤の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示す。
【0087】
各電気泳動図からのデータが、L.Liらにより「Electrophoresis」(第20巻、1号、1433〜1442ページ、1999年)の中で説明される4x4マトリックス法を用いた、基線の不整ならし、相殺、および色補正のための信号処理方法を使用して補正された。またこの開示は、その全体として、参照により本明細書に組み込まれる。図17A、図17B、図17C、および図17Dが、補正されたデータの拡大図を示す。青の波長の光についてのデータの補正されたトレースを示す図17Aは、以下の遺伝子座、すなわちD3S1358、VWA、D16S539、およびD2S1338、ならびに各遺伝子座に関連する全ての対立遺伝子(すなわち、8、14、9、および14の
それぞれ)の存在を示す。図17Bにおいて、緑の波長の光の補正されたトレースが、アメロゲニン、ならびに遺伝子座D8S1179、D21S11、D18S51、およびそれらに関連する全ての対立遺伝子の存在を示す。図17Cは、黄の波長の光のデータの補正されたトレースを示す。図17Cは、以下の遺伝子座、すなわちD19S433、TH01、およびFGA(高分子量および低分子量の組合せ)と、各遺伝子座に関連する全ての対立遺伝子との存在を示す。図17Dは、赤の波長の光のデータの補正されたトレースを示す。補正された赤の波長の光のトレースは、90、100、120、150、160、180、190、200、220、240、260、280、290、300、320、340、360、380、および400にてサイズ基準のピークを示す。
【0088】
サンプル中の全てのサイズ基準との、全11遺伝子座関連対立遺伝子の明確な同定より、高耐久性核酸解析装置は、法医学的解析に非常に適した識別能を有することが明らかである。具体的には、図16A〜Dおよび図17A〜Dは、同装置が、約1〜3.3x1012の識別力を有することを示す。
【実施例2】
【0089】
以下の実施例が、本発明による高耐久性核酸解析デバイスのDNAシークエンシング使用例を説明する。同実施例において、図1A、図1B、および図1Cに図示されるものと同様の高耐久性核酸解析デバイスが、HIV単位複製配列B.FR.HXB2からのDNA鋳型を含むサンプルを、プライマGB107を用いて解析するために使用された。サンプルは、現在ではGE Healthcare社(Waukesha、Wisconsin)の一部であるAmersham Biosciences社より入手可能な、市販のサイクルシークエンシングキット(Thermo Sequenase II Dye Terminator Cycle Sequencing Premix Kit)を用いて、増殖され、標識付けされた。サイクルシークエンシング反応が、製造業者の推奨する工程にしたがって実施された。全シークエンシング反応は、750ナノグラムのDNA鋳型と、1マイクロリットルの5ミクロモルプライマと、2マイクロリットルのThermo Sequenase II reagent mix Aと、2マイクロリットルのThermo Sequenase II reagent mix Bと、水とから構成され、全分量は20マイクロリットルとなった。反応は、以下のプログラムでサイクルされ、ステップ2からステップ4が、30回反復された。すなわち、1)96℃を1分間、2)96℃を30秒間、3)50℃を15秒間、4)60℃を1.5分間、5)60℃を5分間、である。反応生成物が、使用の準備が整うまで6℃で保管されたが、その際には、サンプルは130マイクロリットルの水中に再懸濁され、サンプルを70℃へ3分間加熱しその後氷で冷却することにより変性される。
【0090】
透明テストモジュール中へサンプルを注入する前に、テストモジュールのチャネルが、実施例1中で説明されたように、洗浄され、調整された(すなわち、予備電気泳動を受けた)。予備電気泳動の後に、各チャネルのアノード開口、カソード開口、サンプルアーム開口、および不要物アーム開口が、洗浄され充填された。カソード開口およびアノード開口は、Dakota Scientific、Sioux Falls、SDより市販の500マイクロリットルの 1x TTE bufferを充填された。不要物アーム開口は、33マイクロリットルの 1x TTE bufferを充填され、サンプルアーム開口は、13マイクロリットルの、再懸濁され変性されたサンプルを充填された。
【0091】
サンプルは、サンプルアームおよび不要物アームにわたり875V/cmの電界を60秒間印加することにより、サンプルアーム開口から分離チャネル中へ充填された。次いで、サンプルは、カソードおよびアノードにわたり190Vを印加しつつ、同時にサンプルアーム開口および不要物アーム開口のそれぞれへ400Vを印加することによって、分離され、過剰なサンプルが、サンプルアーム開口および不要物アーム開口中へ押し戻された。これらの電圧条件が、サンプルを分離するために60分間適用された。
【0092】
次いで、蛍光励起および検出システムが、分離されたサンプル中の蛍光標識付けされたDNAを励起するために、作動された。図18A、図18B、図18C、および図18Dが、蛍光励起および検出システムにより収集されたデータにより生成されたDNA配列の
、未加工の電気泳動図を示す。収集された各電気泳動図は、装置内に配置された光電子増倍管の1つにより捕獲された強度データの1つを表す。すなわち、図18Aは、青の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示し、図18Bは、緑の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示し、図18Cは、黄の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示し、図18Dは、赤の波長の光を増幅し検出するように構成された光電子増倍管により収集されたデータを示す。
【0093】
各電気泳動図からのデータが、L.Liらにより「Electrophoresis」(第20巻、1号、1433〜1442ページ、1999年)の中で説明される信号処理方法を使用して、補正された。さらなる補正されたトレースの処理が、トレース中の各ピークに4つのヌクレオチドの1つを関連付けるベースコーリングにより遂行された。トレースは、9点ボックスカーアベレージの使用により、不整ならしがなされ、次いでトレースは、変更される。ピークが、変更されたトレースを評価して正から負への勾配変化に対するゼロ交差を位置決めすることによって、同定される。青の波長の光のトレース、緑の波長の光のトレース、黄の波長の光のトレース、および赤の波長の光のトレースにおいて同定されるピークは、塩基G、A、T、およびCにそれぞれ相関される。データ処理の当業者は、同ベースコーリングルーチンの基本性質を理解することが可能であり、これが、同デバイスの効率性を実証するために使用された。通常、より洗練されたベースコーラーが、上述の方法に比べ、同一データに関してより長く継続的な読取値を生成するであろう。ベースコーリングの詳細な説明は、Ewingらによる「Base−Calling of Automated Sequencer Traces Using Phred I.Accuracy Assessment」(「Genome Research」、第8巻、175〜185ページ、1998年)と、Ewingらによる「Base−Calling of Automated Sequencer Traces Using Phred II.Error Probabilities」(「Genome Research」、第8巻、186〜194ページ、1998年)とに見られ、これらの開示は、それら全体として、参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
図19A、図19B、図19C、および図19Dが、補正されたデータの拡大図を示す。青の波長の光についてのデータの補正されたトレースを示す図19Aは、ヌクレオチドグアニンの明確な同定を示す。図19Bにおいて、緑の波長の光のデータの補正されたトレースが、アデニンの明確な同定を示す。図19Cは、黄の波長の光のデータの補正されたトレースを示す。図19Cは、チミンの明確な同定を示す。図19Dは、赤の波長の光のデータの補正されたトレースを示す。補正された赤の波長の光のトレースは、シトシンの同定を示す。
【0095】
図20A、図20B、および図20Cを参照すると、既知のHIV単位複製配列B.FR.HXB2からのDNA鋳型に関連するヌクレオチドの明確な同定より、高耐久性核酸解析デバイスは、看護所の地で実施されるシークエンシング解析に非常に適していることが明らかである。図20Aは、既知の単位複製配列の配列一覧を示す。図20Bは、同実施例において使用される高耐久性核酸解析デバイスから生成された結果の解析より取得された、配列一覧である。図20Bに示される配列一覧は、未編集であり、図19A〜Dに示されるデータが、同サンプルに使用されたプライマを反転させるため、当技術分野において既知である技術を使用して逆相補鎖化(reverse−complemented)された後に、生成された。図20Bに示される未編集の配列一覧は、塩基436から813まで、図20Aの単位複製配列の100%の同定を表示する、378の連続する塩基から構成される。同結果は、ベースコーリングの際に含まれる明らかな誤りを除去し置換するために、データを手動的に編集することにより、さらに改善した。編集された配列一覧は、塩基297から840まで、単位複製配列の100%の同定を表示する、544の連続する塩基から構成される。
【0096】
同発明が、その好ましい実施形態に関して特に図示され説明されてきたが、形態および詳細における多様な変更が、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神および
範囲から逸脱することなく、それにおいてなされ得ることが、当業者には理解されよう。当業者は、通常以下の程度の実験法を利用して、本明細書中で特定的に説明された本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を理解し、または確認することが可能であろう。それらの均等物は、特許請求の範囲の中に包含されることが意図される。
【0097】
例えば、いくつかの実施形態における本発明が、その中に配設された1つまたはそれ以上のマイクロチャネルを含む透明テストモジュールを使用して説明されてきたが、他のタイプのチャネルが使用されることが可能である。具体的には、透明テストモジュールは、標準的な非マイクロ流体キャピラリー電気泳動工程にしたがって寸法設定されたチャネルを含むことが可能である。さらに他の実施例として、本発明が、各チャネルの中間地点を決定するために特定のレーンファインディング手法を利用して説明されてきたが、一方、他のレーンファインディングアルゴリズムが適用されることが可能である。本発明のいくつかの実施形態において、レーンファインディング手法は、光度ではない蛍光における変化を検出するように修正されることが可能である。この特定の実施形態においては、光電子増倍管が、フォトダイオードの代わりに、反射された信号を捕獲するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1A】本発明による生体分子解析を処理するための携帯用システムの斜視図である。携帯用システムのサンプルホルダが、開状態で図示される。
【図1B】図1−Aの携帯用システムの他の斜視図である。携帯用システムのサンプルホルダは、閉状態で図示される。
【図1C】図1−Aの携帯用システムの側面図である。カバー部分が、携帯用システムの内部が見えるように、取り除かれている。
【図2A】本発明の携帯用処理システム内で使用される、レーザ励起および蛍光検出システムの概略図である。
【図2B】本発明の携帯用処理システム内で使用される、レーザ励起および蛍光検出システムの他の概略図である。
【図3A】図1−Aおよび図1−Bのシステム中で使用可能な、テストモジュールの上面図である。
【図3B】図1−Aおよび図1−Bのシステム中で使用可能な、テストモジュールの他の上面図である。同図面に示されるテストモジュールは、テストホルダ中へ注入されるサンプルおよび流体を保持するために取り付けられたサンプルボードを有する。
【図4】図3のテストモジュール中で使用可能なチャネルの概略図である。
【図5】本発明中で使用可能な他のチャネルの概略図である。
【図6】電気泳動の際に、本発明において使用されるテストモジュールへ印加される、第1のバイアス条件の実施形態の概略図である。
【図7】電気泳動の際にテストモジュールへ印加される、第2のバイアス条件の実施形態の概略図である。
【図8】電気泳動の際にテストモジュールへ印加される、第3のバイアス条件の実施形態の概略図である。
【図9】電気泳動の際にテストモジュールへ印加される、第4のバイアス条件の実施形態の概略図である。
【図10】電気泳動の際にテストモジュールへ印加される、第5のバイアス条件の実施形態の概略図である。
【図11】電気泳動の際にテストモジュールへ印加される、第6のバイアス条件の実施形態の概略図である。
【図12】電気泳動の際にテストモジュールへ印加される、第7のバイアス条件の実施形態の概略図である。
【図13】ホルダの部分中に配設されたテストモジュールの実施形態の概略図である。
【図14】テストモジュールを貫通するレーザ光線進路の図である。
【図15】テストモジュールのチャネルの間の位置に対する光度のグラフである。
【図16A】市販の対立遺伝子ラダーおよびサイズ基準を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図16B】市販の対立遺伝子ラダーおよびサイズ基準を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図16C】市販の対立遺伝子ラダーおよびサイズ基準を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図16D】市販の対立遺伝子ラダーおよびサイズ基準を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図17A】図16−Aに図示される未加工データの修正されたデータのグラフである。
【図17B】図16−Bに図示される未加工データの修正されたデータのグラフである。
【図17C】図16−Cに図示される未加工データの修正されたデータのグラフである。
【図17D】図16−Dに図示される未加工データの修正されたデータのグラフである。
【図18A】プライマによるHIV単位複製配列からのDNA鋳型を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図18B】プライマによるHIV単位複製配列からのDNA鋳型を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図18C】プライマによるHIV単位複製配列からのDNA鋳型を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図18D】プライマによるHIV単位複製配列からのDNA鋳型を含むサンプルから収集された未加工データのグラフである。
【図19A】図18−Aに図示される未加工データの、修正されベースコールされたデータのグラフである。
【図19B】図18−Bに図示される未加工データの、修正されベースコールされたデータのグラフである。
【図19C】図18−Cに図示される未加工データの、修正されベースコールされたデータのグラフである。
【図19D】図18−Dに図示される未加工データの、修正されベースコールされたデータのグラフである。
【図20A】既知の単位複製配列の配列一覧である。
【図20A1】既知の単位複製配列の配列一覧である。
【図20A2】既知の単位複製配列の配列一覧である。
【図20B】本発明の核酸解析デバイスより生成された、既知のHIV単位複製配列の未編集データの配列一覧である。
【図20C】本発明の核酸解析デバイスより生成された、既知のHIV単位複製配列の編集済みデータの配列一覧である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分子検体のサンプルの解析のための高耐久性装置であって、
前記高耐久性装置は、透明テストモジュールを支持するためのホルダを有し、前記ホルダは、前記ホルダの中に配設された少なくとも1つのチャネルを備え、
前記高耐久性装置は、さらに、前記透明テストモジュールへエネルギーを供給するための、前記ホルダへ接続される電気泳動デバイスと、
240ボルトで約10アンペア未満を消費する、生体分子検体のサンプル中に蛍光を励起させる光線を発光するための光源と、
光検出器と、
前記光源により発光された光線を、前記透明テストモジュールへ、および前記透明テストモジュールから前記光検出器へ伝送するための、前記装置内に設けられた複数の光学デバイスとを備える、高耐久性装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高耐久性装置であって、1.5kVAまたはそれ未満の最大電力消費量を有する携帯用電源をさらに備える、高耐久性装置。
【請求項3】
請求項1に記載の高耐久性装置であって、前記複数の光学デバイスは、前記装置内に配設されたベースプレートへ堅固に搭載される、高耐久性装置。
【請求項4】
請求項1に記載の高耐久性装置であって、前記電気泳動デバイスは、前記透明テストモジュールへ熱エネルギーを供給するためのヒータと、前記少なくとも1つのチャネルへ電気エネルギーを供給するための1対の電極とを備える、高耐久性装置。
【請求項5】
請求項1に記載の高耐久性装置であって、前記光源は、低出力レーザである、高耐久性装置。
【請求項6】
請求項1に記載の高耐久性装置であって、前記透明テストモジュールの前記少なくとも1つのチャネルは、複数のチャネルを備える、高耐久性装置。
【請求項7】
生体分子検体のサンプルを解析するための装置であって、
前記装置は、透明テストモジュールを支持するためのホルダを有し、前記ホルダは、前記ホルダの中に配設された少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを備え、
前記装置は、さらに、前記透明テストモジュールへエネルギーを供給するための、前記ホルダへ接続される電気泳動デバイスと、
生体分子検体のサンプル中に蛍光を励起させる光線を発光するための低出力光源と、
光検出器と、
前記光源により発光された光線を、前記透明テストモジュールへ、および前記透明テストモジュールから前記光検出器へ伝送するための、前記装置内に設けられた複数の光学デバイスとを備える、装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、前記透明テストモジュールは、複数のマイクロ流体チャネルを備える、装置。
【請求項9】
請求項7に記載の装置であって、前記複数の光学デバイスは、前記装置内に配設されたベースプレートへ堅固に搭載される、装置。
【請求項10】
請求項7に記載の装置であって、前記電気泳動デバイスは、前記透明テストモジュールへ熱エネルギーを供給するためのヒータと、前記少なくとも1つのマイクロ流体チャネルへ電気エネルギーを供給するための1対の電極とを備える、装置。
【請求項11】
請求項7に記載の装置であって、前記低出力光源は、低出力レーザである、装置。
【請求項12】
請求項7に記載の装置であって、前記装置へエネルギーを供給するための携帯用エネルギー源をさらに備える、装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、前記携帯用エネルギー源は、約1.5kVA未満の最大電力消費量を有する、装置。
【請求項14】
生体分子検体のサンプルを処理するための装置であって、
前記装置は、透明テストモジュールを支持するためのホルダを有し、前記ホルダは、前記ホルダの中に配設された少なくとも1つのチャネルを備え、
前記装置はさらに、前記透明テストモジュールへエネルギーを供給するための、前記ホルダへ接続される電気泳動デバイスと、
生体分子検体のサンプル中に蛍光を励起させる光線を発光するための光源と、
光検出器と、
単一部材の材料から形成されたベースプレートへ堅固に搭載され、前記光源により発光された光線を、前記透明テストモジュールへ、および前記透明テストモジュールから前記光検出器へ伝送するように、前記前記ベースプレートに配設される、複数の光学デバイスとを備える、生体分子検体のサンプルを処理するための装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、前記ベースプレートはフレームにより支持され、前記フレームは、前記フレームの下で生成された振動の前記ベースプレートへの伝送を低減するための減衰デバイスを含む、装置。
【請求項16】
請求項14に記載の装置であって、前記ベースプレートは、前記ベースプレート上の前記複数の光学デバイスの回転運動を制限するための複数の固定要素を含む、装置。
【請求項17】
請求項14に記載の装置であって、前記透明テストモジュールを支持するための前記ホルダは、
透明テストモジュールに配設された開口に電気的に接続されるように配設された、一対の電極を含む第1の部材と、
前記透明テストモジュールが前記第1の部材と第2の部材との間に配置されたときに、前記透明テストモジュールの横方向への移動を低減するための、自動ロック機能を含む、第2の部材と、を備える、装置。
【請求項18】
請求項14に記載の装置であって、前記少なくとも1つのチャネルが、少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを備える、装置。
【請求項19】
請求項14に記載の装置であって、1.5kVAまたはそれ未満の最大電力消費量を有する携帯用電源をさらに備える、装置。
【請求項20】
請求項14に記載の装置であって、前記光検出器は、少なくとも5つの光電子増倍管を有する、装置。
【請求項21】
生体分子検体のサンプルを解析するための透明テストモジュールであって、
前記透明テストもクールは、透明な材料から形成された部材内に配設される少なくとも1つの流体チャネルであって、前記少なくとも1つの流体チャネルのそれぞれが、分離部分、不要物アーム部分、第1のサンプルアーム部分、および第2のサンプルアーム部分を有する流体チャネルを備える、透明テストモジュール。
【請求項22】
請求項21に記載の透明テストモジュールであって、前記第1のサンプルアーム部分は、バイアス溶液を受容するように構成され、前記第2のサンプルアーム部分は、前記生体分子検体のサンプルを受容するように構成される、透明テストモジュール。
【請求項23】
請求項21に記載の透明テストモジュールであって、前記少なくとも1つの流体チャネルは、マイクロ流体チャネルを備える、透明テストモジュール。
【請求項24】
請求項21に記載の透明テストモジュールであって、前記透明テストモジュールは、ガラスから形成される、透明テストモジュール。
【請求項25】
請求項21に記載の透明テストモジュールであって、前記透明テストモジュールは、ポリマーから形成される、透明テストモジュール。
【請求項26】
透明テストモジュールが、その中に配設された複数の分離流体チャネルを有し、前記透明テストモジュールにおける、中央チャネル位置を決定する方法であって、前記方法は、
複数の分離流体チャネルを有する透明テストモジュールを提供するステップを有し、前記複数の分離流体チャネルのそれぞれが、前端位置、中央チャネル位置、および既知のチャネル幅を有し、
前記方法はさらに、反射光線を生成するための光線を用いて、前記複数の分離流体チャネルのそれぞれを有する前記透明テストモジュールの部分にわたり走査するステップと、
前記複数の分離流体チャネルのそれぞれを含む前記透明テストモジュールの前記部分を通る強度の波形を生成するために、光検出器を用いて前記反射光線を収集するステップと、
前記複数の分離流体チャネルに関連付けされないことが決定されたピークを除外するステップと、
前記複数の分離流体チャネルのそれぞれについて、前記前端位置の波形内の位置を同定するステップと、
前記同定された前端位置のそれぞれから延びる第1の距離内の前記波形に沿った、全ての残りのピークを同定するステップと、
前記同定された前端位置のそれぞれからの、前記第1の距離内の前記全ての残りのピークの位置の平均より、前記複数の分離流体チャネルのそれぞれの中央チャネル位置を決定するステップとを含む、方法。
【請求項1】
生体分子検体のサンプルの解析のための高耐久性装置であって、
前記高耐久性装置は、透明テストモジュールを支持するためのホルダを有し、前記ホルダは、前記ホルダの中に配設された少なくとも1つのチャネルを備え、
前記高耐久性装置は、さらに、前記透明テストモジュールへエネルギーを供給するための、前記ホルダへ接続される電気泳動デバイスと、
240ボルトで約10アンペア未満を消費する、生体分子検体のサンプル中に蛍光を励起させる光線を発光するための光源と、
光検出器と、
前記光源により発光された光線を、前記透明テストモジュールへ、および前記透明テストモジュールから前記光検出器へ伝送するための、前記装置内に設けられた複数の光学デバイスとを備える、高耐久性装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高耐久性装置であって、1.5kVAまたはそれ未満の最大電力消費量を有する携帯用電源をさらに備える、高耐久性装置。
【請求項3】
請求項1に記載の高耐久性装置であって、前記複数の光学デバイスは、前記装置内に配設されたベースプレートへ堅固に搭載される、高耐久性装置。
【請求項4】
請求項1に記載の高耐久性装置であって、前記電気泳動デバイスは、前記透明テストモジュールへ熱エネルギーを供給するためのヒータと、前記少なくとも1つのチャネルへ電気エネルギーを供給するための1対の電極とを備える、高耐久性装置。
【請求項5】
請求項1に記載の高耐久性装置であって、前記光源は、低出力レーザである、高耐久性装置。
【請求項6】
請求項1に記載の高耐久性装置であって、前記透明テストモジュールの前記少なくとも1つのチャネルは、複数のチャネルを備える、高耐久性装置。
【請求項7】
生体分子検体のサンプルを解析するための装置であって、
前記装置は、透明テストモジュールを支持するためのホルダを有し、前記ホルダは、前記ホルダの中に配設された少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを備え、
前記装置は、さらに、前記透明テストモジュールへエネルギーを供給するための、前記ホルダへ接続される電気泳動デバイスと、
生体分子検体のサンプル中に蛍光を励起させる光線を発光するための低出力光源と、
光検出器と、
前記光源により発光された光線を、前記透明テストモジュールへ、および前記透明テストモジュールから前記光検出器へ伝送するための、前記装置内に設けられた複数の光学デバイスとを備える、装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、前記透明テストモジュールは、複数のマイクロ流体チャネルを備える、装置。
【請求項9】
請求項7に記載の装置であって、前記複数の光学デバイスは、前記装置内に配設されたベースプレートへ堅固に搭載される、装置。
【請求項10】
請求項7に記載の装置であって、前記電気泳動デバイスは、前記透明テストモジュールへ熱エネルギーを供給するためのヒータと、前記少なくとも1つのマイクロ流体チャネルへ電気エネルギーを供給するための1対の電極とを備える、装置。
【請求項11】
請求項7に記載の装置であって、前記低出力光源は、低出力レーザである、装置。
【請求項12】
請求項7に記載の装置であって、前記装置へエネルギーを供給するための携帯用エネルギー源をさらに備える、装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、前記携帯用エネルギー源は、約1.5kVA未満の最大電力消費量を有する、装置。
【請求項14】
生体分子検体のサンプルを処理するための装置であって、
前記装置は、透明テストモジュールを支持するためのホルダを有し、前記ホルダは、前記ホルダの中に配設された少なくとも1つのチャネルを備え、
前記装置はさらに、前記透明テストモジュールへエネルギーを供給するための、前記ホルダへ接続される電気泳動デバイスと、
生体分子検体のサンプル中に蛍光を励起させる光線を発光するための光源と、
光検出器と、
単一部材の材料から形成されたベースプレートへ堅固に搭載され、前記光源により発光された光線を、前記透明テストモジュールへ、および前記透明テストモジュールから前記光検出器へ伝送するように、前記前記ベースプレートに配設される、複数の光学デバイスとを備える、生体分子検体のサンプルを処理するための装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、前記ベースプレートはフレームにより支持され、前記フレームは、前記フレームの下で生成された振動の前記ベースプレートへの伝送を低減するための減衰デバイスを含む、装置。
【請求項16】
請求項14に記載の装置であって、前記ベースプレートは、前記ベースプレート上の前記複数の光学デバイスの回転運動を制限するための複数の固定要素を含む、装置。
【請求項17】
請求項14に記載の装置であって、前記透明テストモジュールを支持するための前記ホルダは、
透明テストモジュールに配設された開口に電気的に接続されるように配設された、一対の電極を含む第1の部材と、
前記透明テストモジュールが前記第1の部材と第2の部材との間に配置されたときに、前記透明テストモジュールの横方向への移動を低減するための、自動ロック機能を含む、第2の部材と、を備える、装置。
【請求項18】
請求項14に記載の装置であって、前記少なくとも1つのチャネルが、少なくとも1つのマイクロ流体チャネルを備える、装置。
【請求項19】
請求項14に記載の装置であって、1.5kVAまたはそれ未満の最大電力消費量を有する携帯用電源をさらに備える、装置。
【請求項20】
請求項14に記載の装置であって、前記光検出器は、少なくとも5つの光電子増倍管を有する、装置。
【請求項21】
生体分子検体のサンプルを解析するための透明テストモジュールであって、
前記透明テストもクールは、透明な材料から形成された部材内に配設される少なくとも1つの流体チャネルであって、前記少なくとも1つの流体チャネルのそれぞれが、分離部分、不要物アーム部分、第1のサンプルアーム部分、および第2のサンプルアーム部分を有する流体チャネルを備える、透明テストモジュール。
【請求項22】
請求項21に記載の透明テストモジュールであって、前記第1のサンプルアーム部分は、バイアス溶液を受容するように構成され、前記第2のサンプルアーム部分は、前記生体分子検体のサンプルを受容するように構成される、透明テストモジュール。
【請求項23】
請求項21に記載の透明テストモジュールであって、前記少なくとも1つの流体チャネルは、マイクロ流体チャネルを備える、透明テストモジュール。
【請求項24】
請求項21に記載の透明テストモジュールであって、前記透明テストモジュールは、ガラスから形成される、透明テストモジュール。
【請求項25】
請求項21に記載の透明テストモジュールであって、前記透明テストモジュールは、ポリマーから形成される、透明テストモジュール。
【請求項26】
透明テストモジュールが、その中に配設された複数の分離流体チャネルを有し、前記透明テストモジュールにおける、中央チャネル位置を決定する方法であって、前記方法は、
複数の分離流体チャネルを有する透明テストモジュールを提供するステップを有し、前記複数の分離流体チャネルのそれぞれが、前端位置、中央チャネル位置、および既知のチャネル幅を有し、
前記方法はさらに、反射光線を生成するための光線を用いて、前記複数の分離流体チャネルのそれぞれを有する前記透明テストモジュールの部分にわたり走査するステップと、
前記複数の分離流体チャネルのそれぞれを含む前記透明テストモジュールの前記部分を通る強度の波形を生成するために、光検出器を用いて前記反射光線を収集するステップと、
前記複数の分離流体チャネルに関連付けされないことが決定されたピークを除外するステップと、
前記複数の分離流体チャネルのそれぞれについて、前記前端位置の波形内の位置を同定するステップと、
前記同定された前端位置のそれぞれから延びる第1の距離内の前記波形に沿った、全ての残りのピークを同定するステップと、
前記同定された前端位置のそれぞれからの、前記第1の距離内の前記全ての残りのピークの位置の平均より、前記複数の分離流体チャネルのそれぞれの中央チャネル位置を決定するステップとを含む、方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20A】
【図20A1】
【図20A−2】
【図20B】
【図20C】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図18D】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図19D】
【図20A】
【図20A1】
【図20A−2】
【図20B】
【図20C】
【公表番号】特表2008−545956(P2008−545956A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512426(P2008−512426)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/018838
【国際公開番号】WO2006/124842
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507382050)ネットワーク・バイオシステムズ・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/018838
【国際公開番号】WO2006/124842
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507382050)ネットワーク・バイオシステムズ・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】
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