説明

核酸複合体

【課題】より感度や特異的が高く、また安価な核酸検出方法を提供すること。
【解決手段】複数の第一核酸、複数の第二核酸、及び複数の第三核酸を含む核酸複合体であって、各前記第二核酸に相補的な各前記第一核酸が各前記第三核酸の一部位に相補的な配列を含み、前記第一核酸の数及び前記第二核酸の数が各々、前記第三核酸の数の1〜1012倍であり、前記第一、第二及び第三核酸が架橋されて形成される、核酸複合体。また本発明は、前記核酸複合体を検出手段として用いた、特定の核酸標的部位を同定する検出方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2004年2月28日出願の米国特許仮出願第60/548,963号の優先権を主張するものであり、ここに本明細書の一部を構成するものとして上記の内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
プローブハイブリダイゼーションは、少量の特定の核酸配列の検出に用いられてきた。しかしながらこの検出方法は、標的のシグナルと非特異的結合から生じるノイズとを区別できない事態がしばしば生じるため、高感度とは言えない。そこで、最近開発された方法では、標的配列を増幅することによって、この問題に対処している。
【0003】
標的配列の増幅とは、特定の標的配列のデノボ合成を反復することによって検出感度を向上させるというものである。例えば、特許文献1から特許文献10、並びに非特許文献1を参照されたい。しかしながら、これらの方法は煩雑であり、また高価な装置又は酵素を必要とする。更に、検出できるか否かは、標的配列の完全性に依存する。すなわちこれらの方法では、損傷した標的配列を検出することは困難である。
【0004】
検出の感度は、シグナルの増幅、標的のサイクリング、プローブのサイクリング、又は分岐したDNA分子をシグナル発生源として使用することによっても向上させることができる。例えば、特許文献11、特許文献12、及び特許文献13、並びに非特許文献2を参照されたい。しかしながら、これら方法の臨床的応用は、核酸ハイブリダイゼーションに特有のバックグラウンドノイズの無差別な増幅が障害となり、ごく限られたものとなっている。
【0005】
核酸の増幅及び検出には、組み換え酵素recAベースのDNA鎖の相同組み換え及びDループ形成が利用されてきた。例えば、特許文献14及び特許文献15を参照されたい。ただし、これらの方法は、非相同DNAによる干渉を受けやすい。
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,683,195号
【特許文献2】米国特許第4,683,202号
【特許文献3】米国特許第4,800,159号
【特許文献4】米国特許第5,455,166号
【特許文献5】米国特許第5,288,611号
【特許文献6】米国特許第5,639,604号
【特許文献7】米国特許第5,658,737号
【特許文献8】米国特許第5,854,033号
【特許文献9】欧州特許出願公開第320、308A2号
【特許文献10】国際特許出願第PCT/US87/00880号
【特許文献11】米国特許第4,699,876号
【特許文献12】米国特許第6,114,117号
【特許文献13】米国特許第5,118,605号
【特許文献14】米国特許第5,670,316号
【特許文献15】米国特許第6,335,164号
【非特許文献1】Zehbeら、20 Cell Vision,vol.1,No.1,1994
【非特許文献2】Bekkaouiら、BioTechniques,20:240−248,1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在実施されている方法と比較して、より感度や特異的の高い、また安価な核酸検出方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その構成要素である3種の核酸が、互いに相同な配列を含有する場合にのみ形成され得る架橋された核酸複合体の発見に基づくものである。注目すべきは、非常に少量の標的の核酸配列のコピーのみでみも、前記複合体形成の開始には十分なことである。また、前記複合体は、蛍光色素で染色された後、非常に強力な蛍光を発する。その結果、前記標的の配列を、非常に少量で容易に検出することが可能となる。更に、前記複合体の形成は、標的の配列の断片的な部分によって誘導することができ、それゆえ、前記の検出は配列の完全性に依存することがない。
【0009】
したがって、本発明は、微量の第三核酸の存在下、複数の第一核酸及び複数の第二核酸を使用して架橋された核酸複合体を調製する方法に関する。本願にて使用する用語「複数」とは、少なくとも10(例えば10)を指す。用語「微量」とは、少なくとも1を指す。各前記第一核酸は、各前記第二核酸に相補的であり、かつ各前記第三核酸の一部位、すなわちセグメントに相補的な配列を含む。前記第一核酸及び前記第二核酸は二本鎖DNAとして簡便に調製することができ、それらの数は各々、前記第三核酸の分子数の1〜1016倍(好ましくは、10〜1013倍)である。これらは各々、100〜20,000ヌクレオチド長(例えば200〜8,000ヌクレオチド長)を有する。前記第一核酸と前記第三核酸との間の相補的配列は、10〜20,000ヌクレオチド(例えば20〜8,000ヌクレオチド)長を有し得る。なお、前記核酸複合体の形成を促進するために、前記第一核酸、前記第二核酸及び前記第三核酸を変性し、それらを平面に局在させるのが望ましい。一例として、カオトロピック水性溶媒を使用して前記核酸を変性し、次いでカオトロピック水性溶媒に疎水性有機溶媒を添加して、前記二種の溶媒の界面に核酸を局在させることができる。必要であれば、かように形成した前記の架橋された核酸複合体を、更に前記二種の溶媒の混合物から抽出してもよい。
【0010】
本発明の範囲内に含まれる、かように得られた前記の架橋された核酸複合体に含まれる、前記第一核酸又は前記第二核酸の数は、前記第三核酸の数の1〜1012倍(好ましくは、10〜10倍)である。前記複合体は通常とは異なる蛍光特性を有する。前記複合体は臭化エチジウムで染色された後、518nmで励起されると、臭化エチジウムで同様に染色された非架橋の第一核酸、第二核酸及び第三核酸と比較して少なくとも10倍の強度で、605nmの蛍光を放射する。
【0011】
前記の架橋された核酸複合体は、例えばサンプルから得られた核酸配列内の標的部位を同定する方法において、検出手段としての役割を果たし得る。より詳細には、(前記の)第三核酸が、(前記の)各前記第一核酸の配列に相補的な標的部位を含有するDNA又はRNA分子であるか否かを明らかにしたい場合、前記の工程を実施することにより前記標的部位の存在を確認することができる。架橋型の前記核酸複合体は、標的部位が不存在である場合には形成されないため、そのような複合体の検出はすなわち標的部位の存在を意味する。核酸複合体の形成は、その見かけの分子量の増加により確認することができ、またその量は、二本鎖DNAに挿入される蛍光色素による、染色後の蛍光放射の強度により測定することができる。
【0012】
注目すべきは、前記複合体の形成にデノボDNA合成を必要としないため、前記第三核酸の配列完全性が検出に影響を与えないことである。この利点によって、損傷を受けた、すなわち完全でない標的部位を含むDNAでさえも検出することができる。またそれはPCRベースの増幅方法では達成し得ないことである。
【0013】
また本発明の範囲には多相系も含まれ、そこにおいて前記の反応工程を行わせ、架橋された核酸複合体を形成することができる。この多相系は、混合すると互いに二相に分離する疎水性有機溶媒とカオトロピックな水性溶媒、及び前記二種の溶媒間に形成される平面状の界面に存在する複数の核酸を含む。前記平面状の界面に存在する核酸は、前記疎水性有機溶媒及び前記カオトロピック水性溶媒の混合物に3種の核酸が導入される順序に応じて、第一核酸、第二核酸及び第三核酸の混合物(前記)、前記第一核酸及び前記第二核酸の混合物、又は前記第三核酸のいずれでもあり得る。
【0014】
本発明の他の特徴、目的及び利点は、以下の記載及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の核酸複合体がいかに調製されるかを説明するために、以下に標的核酸部位を検出する工程における前記核酸複合体の形成について詳細に説明する。
【0016】
前記標的部位としては、一本鎖の核酸(例、一本鎖のウイルスDNA又はヒトmRNA)、二本鎖のDNA(例、二本鎖ウイルスDNA又はヒトゲノムDNA)、DNA/RNAハイブリッド、及び上記の一つ又は二つ以上の組み合わせに含まれる一部の配列が使用可能である。例えば、ヒトの血液から単離された二本鎖ウイルスDNAは、以下のように検出することができる。最初に、そのウイルスに特有の、またヒト及び他のウイルスDNAに存在しないウイルスゲノムのコンセンサス配列を同定し、検出対象となる標的部位として選択する。次に、標準的な分子クローニング技術を用いて、前記選択した標的部位に相補的な配列を含む二本鎖DNAプローブを調製する。次に、前記二本鎖ウイルスDNA及び前記二本鎖プローブ(好ましくは、前記ウイルスDNAのコピー数の10〜1010倍)を、カオトロピック水性溶媒中で変性する。そこでは、前記ウイルスDNA及び前記プローブは変性しており、各々の相補的な鎖が解離し、巻きが解けた立体構造を採る。次に、前記水性溶媒に疎水性有機溶媒を加えて二相系を形成する。ここで、前記二種の溶媒の間に平面が形成される。使用可能な疎水性有機溶媒としては、例えばアニリン、n−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、p−メトキシフェノール、ベンジルアルコール、ピリジン、プリン、3−アミノトリアゾール、ブチルアミド、ヘキサアミド、チオアセトアミド、δ−バレロラクタム(valarolactam)、tert−ブチル尿素、エチレンチオ尿素、アリルチオ尿素、チオ尿素、ウレタン、N−プロピルウレタン、N−メチルウレタン、シアノグアニジン、及びそれらの二つ又はそれ以上の組み合わせが挙げられる。使用可能なカオトロピック水性溶媒としては、例えばSCN、Mg2+、Ca2+、Na、K、NH、Cs、Li、及び(CHの一つ又は二つ以上を含むものを、トシル酸イオン、ClCCOO、ClO、I、Br、Cl、BrO、CHCOO、HSO、F、SO2−、(CHCCOO、及びHPOの一つ又は二つ以上を含むものと組み合わせたものが挙げられる。
【0017】
以下に、架橋型の核酸複合体が形成される仮想上のメカニズムについて説明する。カオトロピック水性溶媒−疎水性有機溶媒系(すなわち、両親媒性環境)内において、前記二本鎖プローブ及び前記二本鎖ウイルスDNAは、前記有機溶媒相と水性相との間の界面に引き込まれ、その親水性のリン酸−リボース部分を前記水性相に露出し、その疎水性の環部分を前記有機溶媒相に露出することが考えられる。すなわち、ワトソン−クリック塩基対を保持することができなくなる。また、かように安定化された二つの相補的なプローブ鎖(同様にウイルスDNAの二つの相補的な鎖)が同一平面上で互いに直近して側部同士にて互いに対をなす。すなわち、並行対を形成する。このとき、一対の並行プローブ鎖による対が標的部位を含有するウイルスDNA鎖によって局所的に分断され、標的部位に相補的な配列を含有するプローブ鎖との間で対を形成する。前記の分断された領域以外の領域では、前記プローブ鎖同士の並行対が保持されている。すなわち、前記相補的なプローブ鎖は、その一部のみが他の分子により「置換された」状態になっている。更に、前記の分断された領域の両端には捩れが形成される。この捩れが並行なプローブ鎖の位相構造を歪め、その一部を前記平面から前記水性相中へ押し込むこととなる。前記平面上では、前記標的部位と同一の配列を含む、一部を置換された前記プローブ鎖は、別の一対の並行プローブ鎖との間で、それ(左記「別の一対の並行プローブ鎖」)を一部「置換された」形にして、それがまた別の一対の並行プローブ鎖との対形成をしうる状態にしつつ、対を形成する。反応条件を調整することにより、この工程は、前記プローブ鎖が枯渇して前記複合体のこれ以上の形成工程がエネルギー的にもはや好適でなくなり、更なる並行対形成が抑制されるまで継続する。すなわち、少ないコピー数のウイルスDNAでも十分にプローブ鎖間の架橋カスケードを引き起こし、架橋型の核酸複合体を生成させる。かように形成された前記複合体は、カオトロピック水性溶液の存在下において、エタノール又はイソプロパノール沈殿により容易に単離し得る。
【0018】
かように得られた前記架橋型の複合体は、臭化エチジウムで染色された後に518nmの光で励起されると、臭化エチジウムで染色された非架橋のプローブ核酸及びウイルスDNAの少なくとも10倍の強度で605nmの蛍光を放射する。この非常に強められた蛍光強度は、掻い摘んで以下のように測定することができる。100ngの前記架橋型複合体を0.25μg/mlの臭化エチジウムで5分間染色する。次いで、蛍光強度を測定して、100ngの未反応の核酸、すなわち、未反応のウイルスDNA及び二本鎖プローブを用いて同様に得た測定値と比較する。また、前記複合体は、他の方法によっても検出することができる。例えば、ゲル電気泳動で分離して可視化することができる。架橋型複合体の存在は、未反応の核酸を組み合わせた分子量よりも大きい分子量側のバンドをゲル中に確認することによって示される。あるいは、前記複合体は、沈降平衡法を行い、未反応の核酸と比較して回転軸から遠い側に移動する分子種として検出することもできる。また前記複合体は顕微鏡で検出することもできる。例えば、蛍光色素で染色した複合体は、顕微鏡スライド上にて加湿器にて加湿した後、蛍光顕微鏡下で観察することができる。形成された複合体の量は、一本鎖形態で存在する未反応プローブを、一本鎖DNAに特異的なヌクレアーゼ(例えばマングビーンヌクレアーゼ)で消化して除去した後、定量的PCR(QPCR)にて定量することができる。シグナル生成プライマー(例、AmpliSensor)又はプローブ(例、TaqMan(登録商標)プローブ)の存在下、標的特異的なプライマーを使用して標的配列を増幅して、複合体に含まれるプローブ核酸の総量を解析することができる。
【0019】
前記検出アッセイに先立って、生物又は他のサンプルから核酸を精製することが好ましい。例えば、最初にサンプル(例、血液、リンパ液、尿、食物、又は汚泥)をリシスバッファ中でインキュベートする。次いで、エタノール又はイソプロパノールを加えて、核酸を沈殿させる。上述したように、核酸、及び二本鎖プローブは、前述したカオトロピック水性溶媒によって変性し得る。前記プローブ核酸の相補的な鎖が変性後でも平面上で側部同士にて対を形成するような、前記カオトロピック剤(一種又は複数種)の濃度は、経験的に決定することができる。
【0020】
一般に、検出感度は、前記プローブ鎖の量の増加、又はプローブ長を長くすることにより向上させることができる。またプローブ内にクランプとして高エネルギー障壁(すなわち、より高いGC含量)領域を存在させて分枝の移動を防止することによっても、前記複合体は形成後に安定化すると考えられる。また、検出感度は、前記複合体形成後にその複合体を断片化し、再度複合体を形成させる、という工程の反復によっても向上させることができる。複合体は、ミスマッチDNA及びホリデイ構造を分解するT7エンドヌクレアーゼIを用いて断片化することができる。断片化された複合体は標準的なB型螺旋のワトソン−クリック塩基対に戻り、また新たに二本鎖プローブが供給されると前記架橋反応を起こすことができる。
【0021】
一つの標的部位に特異的な多数のプローブ、又は多数の標的部位に特異的な一つのプローブを使用して、一度のアッセイで異なる標的部位を検出することができる。そのシグナルは、たとえ区別ができなくとも、反応系に存在する個々の標的部位の数と直接関係するため、このアプローチは、サンプル中の多数の病原を同時に検出する際に特に有用であると考えられる。
【0022】
上述した手法はまた、必要であればウイルスDNAを任意の適切な核酸配列と置き換えることによって、被覆材料の製造に応用することができる。前記架橋型の複合体は核酸のポリアニオン基を原因とする高い電荷密度を有するため、それを物体の表面にコーティングしてカチオン分子を固定化する用途に使用することができる。標準的なスプレー技術により、薄膜として表面に塗布することができる。
【0023】
本発明の範囲内には、上述した方法を利用した特定の核酸配列の検出のためのキットも含まれる。前記キットは、以下の試薬の二種又は三種以上、すなわち、標的配列に特異的なプローブ核酸、カオトロピック試薬又はカオトロピック水性溶媒、疎水性有機溶媒、及び検出用の蛍光色素、を含めることができる。
【0024】
更に詳細に説明することなく、当業者は上記の説明(特許請求された本発明の範囲を限定するものではない仮想のメカニズムを含む)に基づいて、本発明を最大限応用することができると思われる。本願に引用された全刊行物、及び先の米国仮特許出願第60/548、963号は、本明細書の一部を構成するものとしてその全ての内容が援用される。以下の特定の実施例は単なる例示であり、開示された以外の部分をいささかも除外するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0025】
ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)表面抗原特異的配列(HBVSAg)に一致するセグメントを含む核酸配列を用いて、HBVゲノムを検出した。このHBVSAgセグメントをHBVゲノムのソースから、以下のプライマーを用いてPCRにより増幅した。すなわち、TCG TGG TGG ACT TCT CTC AAT TTT CTA GG(配列番号1)、及びCGA GGC ATA GCA GCA GGA TGA AGA GA(配列番号2)である。次いで、PCR増幅したHBVSAgセグメントを、HincII制限酵素切断部位を介して修飾pUC18プラスミド内にサブクローニングした。かように得られたHBVSAg/pUC18プラスミドを、E.coli DH5α株内で複製させた。次いで、E.coliからプラスミド抽出により単離したこのプラスミド10μgを制限酵素EcoRIで処理し、HBVSAgセグメントを含有する〜3kb断片を調製した。二本鎖DNAプローブであるこの断片を、HBVを検出するプローブとして使用した。配列番号3に、DNAプローブの二鎖のうちの一方の配列を示す。この配列は「クランプ」領域(太字で示す(181番目の塩基から480番目の塩基の領域))を含み、この領域は特異なエネルギー障壁を提供して、二本鎖の解離を防止する。
【化1】

【0026】
5×10〜5×10−2のHBVゲノムのコピーを、20μlの1.0M GuSCN、50mMリン酸カリウム(pH6.0)溶液中に再懸濁した。次いで、15ngのプローブを各前記HBVゲノム溶液に添加し、更に20μlのアニリンを添加しカオトロピック水性溶媒及び疎水性有機溶媒を含有する二相系を形成した。前記混合液をボルテックスし、30℃で15分間インキュベートし、前記複合体を形成させた。
【0027】
前記複合体を以下のとおり単離した。すなわち、上記の混合液に5M塩化グアニジン及びイソプロパノールを添加し、ボルテックスし、14,000rpmで5分間遠心分離の後、上澄み液をデカントし、複合体を含有するペレットを75%エタノールで洗浄し、10分間風乾し、20μlのTris−EDTAバッファー中に再懸濁した。
【0028】
前記複合体を以下のとおり観察した。すなわち、核酸複合体を再懸濁した前記溶液10μlに、0.2μlのPicoGreen(登録商標) dsDNA Quantitation Reagent(Molecular Probe、Inc.から入手、#P−7581)を添加し、標識核酸複合体5μlを顕微鏡スライド(Kevley Technologiesから入手、#CFR)にアプライし、前記スライドをオーバーナイトで風乾した。前記複合体の凝集体を、顕微鏡により蛍光及び光学両方の設定において、倍率250倍にて観察した。
【0029】
また前記複合体を、以下のとおりゲル電気泳動により分離した。すなわち、10μlの前記核酸複合体溶液を、0.5×TBEバッファ中にて水平式の1%アガロースゲルにアプライし、4V/cmにて8時間電気泳動を行なった。その後前記ゲルを0.5μg/mlの臭化エチジウムで染色し、UV照射の下で、赤色フィルターを用いてゲルの写真を撮影し、前記複合体のレーンから、二個の明確なバンドを観察した。この二個のバンドの大きさは、〜10kb(リラックス型)及び〜4kb(コンパクト型)であった。同一ゲル上で、HBVSAgセグメントを含む核酸配列の大きさは〜2.8kb、HBVゲノムは〜3.2kbと確認された。したがって、前記複合体(すなわち、〜10kb弛緩型)のサイズは、HBVSAg含有核酸配列及びHBVゲノムの組み合わせよりも大きかった。
【0030】
更に、前記複合体を以下のとおりT7エンドヌクレアーゼで処理して断片化した。すなわち、10μlの前記複合体溶液を2ユニットのT7エンドヌクレアーゼI(New England BioLabs、Inc.から入手、M0292S)と共に42℃で1時間、15μlの50mM酢酸カリウム、20mM Tris−酢酸(pH7.9)、10mM酢酸マグネシウム、1mMジチオスレイトール(DTT)溶液中でインキュベートした。断片化した前記複合体は、別の新たな複合体形成のラウンドの出発物質として使用した。
【0031】
他の実施態様
本明細書中に開示した全構成要素は、任意に組み合わせることができる。本明細書中に開示した各構成要素は、同一、同等又は同様の目的を果たす代替的な構成要素と置き換えることができる。したがって、特に言及のない限り、開示した各構成要素は、同等又は同様の構成要素の総称の単なる一例に過ぎない。
【0032】
以上の説明より当業者は、本発明の本質的特徴を容易に理解し、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な用途及び条件に適応するように本発明の多様な変更及び修正に想到することができる。したがって、他の実施態様もまた請求項の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第一核酸、複数の第二核酸及び複数の第三核酸を含む核酸複合体であって、
各前記第二核酸に相補的な各前記第一核酸が各前記第三核酸の一部位に相補的な配列を有し、
前記第一核酸の数及び前記第二核酸の数が各々前記第三核酸の数の1〜1012倍であり、
前記第一核酸、前記第二核酸及び前記第三核酸が架橋された前記核酸複合体を形成し、前記核酸複合体は、臭化エチジウムで染色された後に518nmで励起された際、架橋されていない第一核酸、第二核酸及び第三核酸の少なくとも10倍の強度の605nmの蛍光を放射することを特徴とする、核酸複合体。
【請求項2】
前記第一核酸の数及び前記第二核酸の数が、各々、前記第三核酸の数の10〜10倍である、請求項1に記載の核酸複合体。
【請求項3】
前記第一核酸及び前記第二核酸が、各々、100〜20,000ヌクレオチド長である、請求項2に記載の核酸複合体。
【請求項4】
前記第一核酸及び前記第二核酸が、各々、200〜8,000ヌクレオチド長である、請求項3に記載の核酸複合体。
【請求項5】
前記相補的な配列が、10〜20,000ヌクレオチド長である、請求項4に記載の核酸複合体。
【請求項6】
前記相補的な配列が、20〜8,000ヌクレオチド長である、請求項5に記載の核酸複合体。
【請求項7】
前記相補的な配列が、10〜20,000ヌクレオチド長である、請求項2に記載の核酸複合体。
【請求項8】
前記相補的な配列が、20〜8,000ヌクレオチド長である、請求項7に記載の核酸複合体。
【請求項9】
前記相補的な配列が、10〜20,000ヌクレオチド長である、請求項3に記載の核酸複合体。
【請求項10】
前記相補的な配列が、20〜8,000ヌクレオチド長である、請求項9に記載の核酸複合体。
【請求項11】
核酸内の標的部位を検出する方法であって、以下の工程、すなわち、
複数の第一核酸、複数の第二核酸、及び標的部位を含むと想定される複数の第三核酸を準備する工程であって、各前記第二核酸に相補的な各前記第一核酸が各前記第三核酸の標的部位に相補的な配列を有し、前記第一核酸の数及び前記第二核酸の数が各々前記第三核酸の数の1〜1016倍であることを特徴とする工程、
前記第一核酸、前記第二核酸及び前記第三核酸を変性し、平面に局在させ、各前記第三核酸が前記標的部位を含有する場合は架橋された核酸複合体の形成を促進する工程、及び
架橋された前記核酸複合体の存在又は不存在を検出する工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記第一核酸の数及び前記第二核酸の数が、各々、前記第三核酸の数の10〜1013倍である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第一核酸及び前記第二核酸が、各々、100〜20,000ヌクレオチド長である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第一核酸及び前記第二核酸が、各々、200〜8,000ヌクレオチド長である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記相補的な配列が、10〜20,000ヌクレオチド長である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記相補的な配列が、20〜8,000ヌクレオチド長である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記変性が、前記第一核酸、前記第二核酸及び前記第三核酸を、カオトロピック水性溶媒中で混合することによって行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記局在が、前記カオトロピック水性溶媒に疎水性有機溶媒を加えることによって行われ、左記の二種類の溶媒間の界面が前記平面を構成している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記疎水性有機溶媒が、n−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、p−メトキシフェノール、ベンジルアルコール、アニリン、ピリジン、プリン、3−アミノトリアゾール、ブチルアミド、ヘキサアミド、チオアセトアミド、δ−バレロラクタム(valarolactam)、tert−ブチル尿素、エチレンチオ尿素、アリルチオ尿素、チオ尿素、ウレタン、N−プロピルウレタン、N−メチルウレタン、シアノグアニジン、又はそれらの組み合わせである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疎水性有機溶媒が、アニリンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記カオトロピック水性溶媒が、Mg2+、Ca2+、Na、K、NH、Cs、Li、(CH、又はその組み合わせを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記カオトロピック水性溶媒が、トシル酸イオン、ClCCOO、SCN、ClO、I、Br、Cl、BrO、CHCOO、HSO、F、SO2−、(CHCCOO、HPO、又はそれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記カオトロピック水性溶媒が、SCNを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記変性が、前記第一核酸、前記第二核酸、及び前記第三核酸を、カオトロピック水性溶媒中で混合することによって行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
前記局在が、前記カオトロピック水性溶媒に疎水性有機溶媒を加えることによって行われ、左記二種類の溶媒間の界面が平面を構成している、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記検出が、架橋された前記核酸複合体が二本鎖DNAに挿入される蛍光色素により染色された後に、該核酸複合体から放射される蛍光の強度を測定することによって行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
複数の第一核酸、複数の第二核酸、及び複数の第三核酸を準備する工程であって、各前記第二核酸に相補的な各前記第一核酸が各前記第三核酸の標的部位に相補的な配列を有し、前記第一核酸の数及び前記第二核酸の数が各々前記第三核酸の数の1〜1016倍であることを特徴とする工程、
前記第一核酸、前記第二核酸、及び前記第三核酸を変性し、平面に局在させることによって架橋された核酸複合体の形成を促進する工程であって、前記核酸複合体は、臭化エチジウムで染色された後に518nmで励起された際、架橋されていない第一核酸、第二核酸、及び第三核酸の少なくとも10倍の強度の605nmの蛍光を放射することを特徴とする工程、
を含む方法によって調製される、核酸複合体。
【請求項28】
請求項27に記載の方法によって調製される核酸複合体であって、左記方法は前記第一核酸の数及び前記第二核酸の数が、各々、前記第三核酸の数の10〜1013倍である、核酸複合体。
【請求項29】
請求項28に記載の方法によって調製される核酸複合体であって、左記方法は前記変性が、前記第一核酸、前記第二核酸及び前記第三核酸を、カオトロピック水性溶媒中に配置することによって行われる、核酸複合体。
【請求項30】
請求項29に記載の方法によって調製される核酸複合体であって、左記方法は前記局在が、前記カオトロピック水性溶媒に疎水性有機溶媒を加えることによって行われ、左記二種類の溶媒間の界面が前記平面を構成している、核酸複合体。
【請求項31】
請求項30に記載の方法によって調製される核酸複合体であって、左記方法は架橋された前記核酸複合体を、前記カオトロピック水性溶媒及び前記疎水性有機溶媒の混合液から抽出する工程を更に含む、核酸複合体。
【請求項32】
請求項30に記載の方法によって調製される核酸複合体であって、左記方法は前記疎水性有機溶媒が、n−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、p−メトキシフェノール、ベンジルアルコール、アニリン、ピリジン、プリン、3−アミノトリアゾール、ブチルアミド、ヘキサアミド、チオアセトアミド、δ−バレロラクタム(valarolactam)、tert−ブチル尿素、エチレンチオ尿素、アリルチオ尿素、チオ尿素、ウレタン、N−プロピルウレタン、N−メチルウレタン、シアノグアニジン、又はそれらの組み合わせである、核酸複合体。
【請求項33】
請求項32に記載の方法によって調製される核酸複合体であって、左記方法は前記疎水性有機溶媒がアニリンである、核酸複合体。
【請求項34】
請求項30に記載の方法によって調製される核酸複合体であって、左記方法は前記カオトロピック水性溶媒が、Mg2+、Ca2+、Na、K、NH、Cs、Li、(CH、又はそれらの組み合わせを含む、核酸複合体。
【請求項35】
請求項30に記載の方法によって製造される核酸複合体であって、左記方法は前記カオトロピック水性溶媒が、トシル酸イオン、ClCCOO、SCN、ClO、I、Br、Cl、BrO、CHCOO、HSO、F、SO2−、(CHCCOO、HPO、又はそれらの組み合わせを含む、核酸複合体。
【請求項36】
請求項35に記載の方法によって製造される核酸複合体であって、左記方法は前記カオトロピック水性溶媒がSCNを含む、核酸複合体。
【請求項37】
請求項30に記載の方法によって製造される核酸複合体であって、左記方法は前記第一核酸及び前記第二核酸が、各々100〜20,000ヌクレオチド長である、核酸複合体。
【請求項38】
請求項37に記載の方法によって製造される核酸複合体であって、左記方法は前記第一核酸及び前記第二核酸が、各々200〜8,000ヌクレオチド長である、核酸複合体。
【請求項39】
請求項38に記載の方法によって製造される核酸複合体であって、左記方法は前記相補的な配列が、10〜20,000ヌクレオチド長である、核酸複合体。
【請求項40】
請求項39に記載の方法によって製造される核酸複合体であって、左記方法は前記相補的な配列が、20〜8,000ヌクレオチド長である、核酸複合体。
【請求項41】
請求項37に記載の方法によって製造される核酸複合体であって、左記方法は前記相補的な配列が、10〜20,000ヌクレオチド長である、核酸複合体。
【請求項42】
請求項41に記載の方法によって製造される核酸複合体であって、左記方法は前記相補的な配列が、20〜8,000ヌクレオチド長である、核酸複合体。
【請求項43】
二相に分離した疎水性有機溶媒及びカオトロピック水性溶媒、並びに前記疎水性有機溶媒及び前記カオトロピック水性溶媒の間の界面に存在する複数の核酸を含む多相系であって、前記疎水性有機溶媒及び前記カオトロピック水性溶媒が、前記核酸の変性及び局在を促進する多相系。
【請求項44】
前記疎水性有機溶媒が、n−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、p−メトキシフェノール、ベンジルアルコール、アニリン、ピリジン、プリン、3−アミノトリアゾール、ブチルアミド、ヘキサアミド、チオアセトアミド、δ−バレロラクタム(valarolactam)、tert−ブチル尿素、エチレンチオ尿素、アリルチオ尿素、チオ尿素、ウレタン、N−プロピルウレタン、N−メチルウレタン、シアノグアニジン、又はそれらの組み合わせである、請求項43に記載の多相系。
【請求項45】
前記疎水性有機溶媒が、アニリンである、請求項44に記載の多相系。
【請求項46】
前記カオトロピック水性溶媒が、Mg2+、Ca2+、Na、K、NH、Cs、Li、(CH、又はその組み合わせを含む、請求項43に記載の多相系。
【請求項47】
前記カオトロピック水性溶媒が、トシル酸イオン、ClCCOO、SCN、ClO、I、Br、Cl、BrO、CHCOO、HSO、F、SO2−、(CHCCOO、HPO、又はそれらの組み合わせを含む、請求項43に記載の多相系。
【請求項48】
前記カオトロピック水性溶媒が、SCNを含む、請求項47に記載の多相系。
【請求項49】
前記疎水性有機溶媒が、n−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、p−メトキシフェノール、ベンジルアルコール、アニリン、ピリジン、プリン、3−アミノトリアゾール、ブチルアミド、ヘキサアミド、チオアセトアミド、δ−バレロラクタム(valarolactam)、tert−ブチル尿素、エチレンチオ尿素、アリルチオ尿素、チオ尿素、ウレタン、N−プロピルウレタン、N−メチルウレタン、シアノグアニジン、又はそれらの組み合わせであり、かつ前記カオトロピック水性溶媒が、トシル酸イオン、ClCCOO、SCN、ClO、I、Br、Cl、BrO、CHCOO、HSO、F、SO2−、(CHCCOO、HPO、又はそれらの組み合わせを含む、請求項43に記載の多相系。
【請求項50】
前記核酸が、複数の第一核酸及び複数の第二核酸を含み、各前記第一核酸が各前記第二核酸に相補的である、請求項43に記載の多相系。
【請求項51】
前記核酸が、サンプルからの複数の第三核酸を含み、各前記第三核酸が各前記第一核酸の配列に相補的な一部位を含む、請求項43に記載の多相系。
【請求項52】
サンプルからの複数の第三核酸を更に含み、各前記第三核酸が各前記第一核酸の配列に相補的な一部位を含む、請求項50に記載の多相系。
【請求項53】
前記核酸が、複数の第一核酸、複数の第二核酸、及びサンプルからの複数の第三核酸を含み、各前記第一核酸が各前記第二核酸に相補的であり、各前記第三核酸の一部位に相補的な配列を含む、請求項49に記載の多相系。

【公表番号】特表2007−525224(P2007−525224A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500805(P2007−500805)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/006420
【国際公開番号】WO2005/084272
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506289790)
【Fターム(参考)】