説明

根かせ及び支柱の設置方法

【課題】電柱などの支柱が傾倒することなく鉛直姿勢を維持するように設置するための根かせ及び支柱の設置方法を提供する。
【解決手段】本発明の根かせは、設けられた竪穴20の壁面21に打ち込まれる杭状部12が支柱(電柱)1の下端部に固定される基部11に突設されている。杭状部12は、1本もしくは鉛直方向に配置された複数本の棒状体とされる。本発明の支柱の設置方法は、電柱1を設置する場所に竪穴20を設ける工程と、該竪穴20の壁面21に前記根かせの杭状部12を打ち込む工程と、電柱1を竪穴20に直立させる工程と、根かせの基部11と電柱1の下端部とを固定する工程と、竪穴20を埋め戻す工程とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱やポールなどの支柱が鉛直姿勢を維持することができるようにした根かせ(枷)及びその根かせを使用する支柱の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線などを架設する電柱や信号機などを支持するポールその他の支柱(以下、主として「電柱」という。)は、下端部が地面から所定の深さをもって埋め込まれて設置されているが、電線などからの張力に抗して鉛直姿勢を維持することができるように、支線を張設する場合がある。しかし、市街地に設置される電柱にあっては、支線を張設できない場合がる。このような場合は、竪穴が掘削され、地面の上下に亘って電柱の周囲にコンクリートが固められる(「根まき」と呼ばれる。)。
【0003】
そして、電柱が軟弱地盤に立設される場合は、通常よりも大きな竪穴が掘削され、コンクリートが広範囲に固められる。しかし、農地にコンクリートが広範囲に固められると、耕地面積が小さくなることから、地権者の了解が得られない場合がある。このような場合は、電柱を埋設する部分を長くすることにより、対処することができる。しかし、そのためには、通常よりも長い電柱を使用しなければならず、コストアップとなるだけでなく、作業も面倒になる。
【0004】
そこで、軟弱地盤でありながら通常の大きさの竪穴を掘削しても、電柱が鉛直姿勢を維持することができるようにした根かせが各種提供されている。根かせは、地中に埋められる電柱の下端部に当てがうもので、棒状ないし起立した板状に形成されている。このような根かせは、電柱を外嵌するU字形の締結具によって、電柱の片方にのみ固定され、あるいは、2本一組で電柱を挟むように固定される。いずれにしても、従来の根かせは、電柱が傾倒しないように、重量がなければならないことから、一般的にコンクリート製とされている。しかし、重量のある根かせは、作業者の負担が大きく、効率的に電柱に固定することができない。
【0005】
このため、軽量化を図っても、電柱が傾倒しないようにした根かせが特許文献1に開示されている。この根かせは、図6に示すように、電柱1の側面に当接する取付壁101と、この取付壁101の下端から外向きに突出した当接壁102と、取付壁101と当接壁102とに跨って架設された梁103とからなっている。この根かせは、廃プラスチック、合成樹脂、コンクリート、アルミニウム合金などによって一体成形されている。
【0006】
このような根かせを使用して、電柱1を設置するには、まず、電柱1の全長の約1/6の深さの丸穴を掘削し、さらに根かせを入れる段状穴を設ける。次に、電柱1の下部において根かせを締結具(Uボルト)110によって固定し、この電柱1を前記丸穴内に起立した状態に下ろす。最後に、根かせの底が段状穴に一致した段階で、丸穴を山砂などによって埋め戻す。
【0007】
【特許文献1】特開2005−299227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電線が一方向のみ、あるいは角度をもって電柱に架設される場合、電柱にトランスなどが設置される場合、腕金が片方にのみ突出して電線が架設される場合などにあっては、電柱に偏荷重が加えられる。しかし、特許文献1に開示された根かせ、その他の従来の根かせは、段状穴を設けなければならないことから、電柱の周囲が大きく掘削され、この掘り起しによって、地盤が軟弱化する。したがって、このような軟弱な地盤に、根かせを固定した電柱を設置しても、電柱は偏荷重が加えられることによって傾倒することがある。
【0009】
そこで、本発明は、電柱などの支柱が傾倒することなく鉛直姿勢を維持するように設置するための根かせ及び支柱の設置方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る根かせは、下端部が地中に埋められる支柱を鉛直姿勢とするための根かせであって、設けられた竪穴の壁面に打ち込まれる杭状部が支柱の下端部に固定される基部に突設されていることを特徴としている。
【0011】
この根かせによれば、杭状部が掘削された竪穴の壁面に打ち込まれ、基部が支柱に固定されることにより、直立された支柱が鉛直姿勢を維持するようにすることができる。すなわち、この根かせを使用して支柱を設置するには、支柱を竪穴から直立させるために必要最小限の範囲で竪穴を掘削し、その竪穴の壁面に杭状部を打ち込む。したがって、根かせの杭状部が打ち込まれる側の地盤は、埋め戻しによって軟弱化しておらず、この軟弱化していない土によって杭状部が堅固に支持される。このため、支柱を傾倒させようとする偏荷重が加えられても、土からの反作用が杭状部に加えられ、支柱は鉛直姿勢を維持することができる。
【0012】
また、前記本発明に係る根かせにおいて、前記杭状部は、1本又は鉛直方向に配置された複数本の棒状体であることが好ましい。この根かせによれば、杭状部が棒状体によって構成されることにより、杭状部を竪穴の壁面に容易に打ち込むことができる。そして、杭状部が鉛直方向に複数本配置された棒状体によって構成されることにより、支柱を傾倒させるような偏荷重が加えられたときに、複数本の杭状部が土を押圧する押圧力が分散されるため、杭状部が上側又は下側の土内に食い込みにくくなり、杭状部は土中で所期の姿勢を維持するようにすることができる。
【0013】
また、前記本発明に係る根かせにおいて、前記杭状部は、1枚又は鉛直方向に配置された複数枚の板状体であってもよい。この根かせによれば、杭状部が板状体とされることにより、支柱を傾倒させようとする偏荷重が加えられたときに、杭状部が土を面で押圧し、上側又は下側の土内に食い込まないため、支柱が鉛直姿勢を維持するようにすることができる。そして、杭状部が鉛直方向に複数枚配置された板状体によって構成されることにより、支柱を傾倒させるような偏荷重が加えられたときに、複数枚の杭状部が土を押圧する押圧力が分散されるため、根かせは土中で所期の姿勢を維持するようにすることができる。
【0014】
また、前記のいずれかの根かせを使用する本発明に係る支柱の設置方法は、支柱を設置する場所に竪穴を設ける工程と、該竪穴の壁面に前記根かせの杭状部を打ち込む工程と、支柱を竪穴に直立させる工程と、根かせの基部と支柱の下端部とを固定する工程と、竪穴を埋め戻す工程とを含んでいることを特徴としている。
【0015】
この支柱の設置方法によれば、竪穴は、根かせの杭状部を打ち込み、かつ、支柱を直立させることができる大きさに設けられ、地盤は必要最小限で軟弱化する。しかも、杭状部が打ち込まれる側の地盤は、埋め戻されないで軟弱化していないことから、根かせの杭状部は土に堅固に支持され、根かせが所期の姿勢を維持し、支柱が傾倒しないようにすることができる。なお、支柱は、竪穴のほぼ中心に直立させた後、根かせの基部の方に移動させ、根かせの基部と支柱の下端部とを固定してもよい。
【0016】
また、前記本発明に係る支柱の設置方法において、前記根かせは、複数使用されてもよい。この支柱の設置方法によれば、複数の根かせが使用されることにより、支柱を傾倒させるような偏荷重が加えられたときに、複数の杭状部によって土を押圧する押圧力が分散され、各杭状部が上側又は下側の土内に食い込まないようにすることができる。なお、複数の根かせは、杭状部が鉛直方向、すなわち、支柱の長さ方向に複数配置される場合と、放射方向、すなわち、支柱の径方向に複数配置される場合とがある。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る根かせ及び支柱の設置方法によれば、支柱に固定される基部に突設された杭状部が掘削された竪穴の壁面に打ち込まれる。この杭状部が打ち込まれた土は、埋め戻されないで軟弱化していないことから、杭状部が土に堅固に支持され、支柱は偏荷重が加えられても鉛直姿勢を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る根かせ及び支柱の設置方法について図1ないし図5を参照しながら説明する。根かせは、電柱やポールその他の支柱(以下、主として「電柱」という。)1の下端部に固定される基部11に杭状部12が突設されていることを特徴としており、種々の形態を採ることができる。
【0019】
すなわち、根かせは、図1の実線で示すように、基部11が電柱1の側面に、かつ、長さ方向、すなわち鉛直方向に沿う板状の形状とされ、杭状部12が尖端形状の棒状体とされ、基部11の下端部に突設されている。基部11は、図示したような樋形状とするほか、杭状部12の幅と同じ幅の棒状としてもよい。また、杭状部12は、仮想線で示すように、基部11の上端部に突設してもよい。すなわち、杭状部12は、基部11の下端部のみ、上端部のみ、あるいは両端部に突設してもよい。さらに、杭状部12は、図示しないが、基部11の両端部と中間部の合計3か所以上又は中間部にのみ突設してもよい。
【0020】
また、根かせは、図2の実線で示すように、基部11が電柱1の側面に、かつ、長さ方向に沿う樋形状とされ、杭状部12が尖端形状の板状体とされ、基部11の下端部に突設したものとしてもよい。また、杭状部12は、基部11の下端部のみだけでなく、仮想線で示す上端部のみ、あるいは両端部、さらに、図示しないが、基部11の両端部と中間部の合計3か所以上又は中間部にのみ突設してもよい。
【0021】
また、根かせは、図3の実線で示すように、基部11が電柱1の側面に、かつ、長さ方向に沿う樋形状とされ、杭状部12が扇形状の板状体とされ、基部11の下端部に突設したものとしてもよい。杭状部12の先端は、刃先のように尖鋭にされている。また、杭状部12は、基部11の下端部のみだけでなく、仮想線で示す上端部のみ、あるいは両端部、さらに、図示しないが、基部11の両端部と中間部の合計3か所以上又は中間部にのみ突設してもよい。
【0022】
さらに、根かせは、図示しないが、図1ないし図3に示した各杭状部12を下端部、上端部、中間部に突設させてもよい。
【0023】
ここで、このような根かせを使用して、電柱1を設置する方法について図4を参照しながら説明する。なお、図4及び図5の根かせは、杭状部12が基部11の下端部に突設されたものについて図示しているが、上端部及び/又は中間部に突設されていても同じである。
【0024】
電柱1を設置するには、まず、図4(a)に示すように、電柱1を設置する地盤を手掘り及び/又はオーガなどの重機によって掘削し、竪穴20を設け、この竪穴20内に根かせを下ろす。そして、図4(a)の仮想線に示すように、竪穴20の壁面21に根かせの杭状部12を打ち込む。杭状部12は、尖端形状又は尖鋭に形成されていることから、竪穴20の側面21に容易に打ち込むことができる。この杭状部12が打ち込まれる壁面21は、後記のように電柱1が沿うため、鉛直方向(図示したように、鉛直からわずかに傾斜した方向を含む。)に起立していることが好ましい。なお、杭状部12が竪穴20の壁面21に打ち込まれることから、根かせはステンレス製であることが好ましいが、樹脂製、コンクリート製であってもよい。
【0025】
次に、竪穴20に電柱1を直立させる。電柱1は、根かせに衝突しないように、竪穴20のほぼ中心に一旦、下ろし、その後、根かせの方向に移動して直立される。ただし、電柱1は、側面が根かせの基部11に沿うように吊り下げてもよい。また、電柱1を竪穴20に直立させてから、根かせの杭状部12を竪穴20の壁面21に打ち込んでもよい。いずれにしても、電柱1は、図4(b)及び図1ないし図3の仮想線に示すように、根かせの基部11に当接した状態とされ、締結具13によって電柱1と根かせの基部11とが固定される。
【0026】
その後、図4(c)に示すように、竪穴20内に土を埋め戻すと、電柱1の設置作業が終了する。この電柱1が設置された地盤は、根かせの杭状部12が打ち込まれる側が埋め戻されていないことから軟弱化していない。また、竪穴20に土を埋め戻し、軟弱化した領域は、根かせを打ち込み、また、電柱1を吊り下げるために必要最小限とされている。したがって、根かせは、杭状部12が土に堅固に支持された状態となり、基部11が電柱1に固定されていることから、電柱1は鉛直姿勢を維持することができる。
【0027】
例えば、図5(a)に示すように、根かせの杭状部12と反対方向にのみ電線2が架設され、あるいは、トランスなどが電柱1の上部に設置されることにより、その方向に電柱1を傾倒させるような偏荷重(図面において反時計方向のモーメント)Tが加えられると、根かせの杭状部12には持ち上げられる方向の力(図面において反時計方向のモーメント)Fが加えられ、根かせの杭状部12は、その上側の土を押し上げようとする。しかし、この土は軟弱化していないことから、根かせの杭状部12は上側の土内に食い込まず、この土からの反作用Rが根かせの杭状部12に加えられることにより、根かせは所期の姿勢を維持する。したがって、電柱1は鉛直姿勢を維持する。
【0028】
逆に、図5(b)に示すように、根かせの杭状部12と同一方向にのみ電線2が架設され、あるいは、トランスなどが電柱1の上部に設置されることにより、その方向に電柱1を傾倒させるような偏荷重(図面において時計方向のモーメント)Tが加えられると、根かせの杭状部12には押し下げられる方向の力(図面において時計方向のモーメント)Fが加えられ、根かせの杭状部12は、その下側の土を押し下げようとする。しかし、この土は軟弱化されていないことから、根かせの杭状部12は下側の土内に食い込まず、この土からの反作用Rが根かせの杭状部12に加えられることにより、根かせは所期の姿勢を維持する。したがって、電柱1は鉛直姿勢を維持する。
【0029】
このように、根かせの杭状部12は、偏荷重が加えられるいずれの方向に向けてもよい。また、偏荷重が複数の方向から加えられる場合は、複数の根かせを電柱1に固定し、各の杭状部12がそれぞれの方向又は反対方向となるように竪穴20の壁面21に打ち込むことにより、電柱1が傾倒しないようにすることができる。この場合は、根かせの基部11を電柱1の周方向に並列する。
【0030】
また、複数の根かせを鉛直方向に電柱に固定することにより、電柱1が傾倒しないようにする効果を高めることができる。
【0031】
なお、本発明は前記の実施形態に限定することなく種々変更することができる。例えば、杭状部12は、図示した形状に限定されない。すなわち、図1及び図2に示した根かせの杭状部12を三角錐状としてもよいし、全長に亘って扁平な板状としてもよい。また、図3に示した根かせの杭状部12は、先端を鋸歯形状にしてもよい。さらに、電柱1の設置方法において、竪穴20の底部又は全部をコンクリートによって固めてもよい。さらに、本発明の根かせは、電柱1に偏荷重が加えられない場合においても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る根かせの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る根かせの図1と異なる実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る根かせの図1及び図2と異なる実施形態を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る支柱の設置方法の一実施形態であって、(a)は最初の段階、(b)は中間の段階、(c)は完了した段階をそれぞれ示す断面図である。
【図5】本発明に係る根かせを使用して支柱を設置した状態であって、(a)(b)は偏荷重の加えられる方向を異ならせた場合の力の作用方向を示す断面図である。
【図6】従来の根かせの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1……電柱(支柱)
11…基部
12…杭状部
20…竪穴
21…壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部が地中に埋められる支柱を鉛直姿勢とするための根かせであって、
設けられた竪穴の壁面に打ち込まれる杭状部が支柱の下端部に固定される基部に突設されていることを特徴とする根かせ。
【請求項2】
前記杭状部は、1本又は鉛直方向に配置された複数本の棒状体であることを特徴とする請求項1に記載の根かせ。
【請求項3】
前記杭状部は、1枚又は鉛直方向に配置された複数枚の板状体であることを特徴とする請求項1に記載の根かせ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の根かせを使用する支柱の設置方法であって、
支柱を設置する場所に竪穴を設ける工程と、該竪穴の壁面に前記根かせの杭状部を打ち込む工程と、支柱を竪穴に直立させる工程と、根かせの基部と支柱の下端部とを固定する工程と、竪穴を埋め戻す工程とを含んでいることを特徴とする支柱の設置方法。
【請求項5】
前記根かせは、複数使用されることを特徴とする請求項4に記載の支柱の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−197533(P2009−197533A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42498(P2008−42498)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】