説明

格納可能なグリップ部材に適合するリッドを具えたケトル

【課題】容器にリッドをロックするための装置を具えつつも、リッドの美的魅力を向上させた電気ケトルを提供する。
【解決手段】本発明ケトル(1)は、容器(3)と、リッド(5)と、リッド(5)を容器(3)にロックするためのロック装置であって、容器(3)に配設された第1ロック手段(11)およびリッド(5)に取り付けられた第2ロック手段(12)を含むとともに、第2ロック手段(12)が第1ロック手段(11)に係合するリッド(5)のロック位置とリッド(5)が解放されるロック解除位置との間でリッドに対して可動の当該装置と、を具え、当該装置はリッド(5)に配設されて第2ロック手段(12)を制御する部材(20)を含む。制御部材(20)は、第2ロック手段(12)がロック位置にあるときにリッド(5)内に組み込まれ、第2ロック手段(12)がロック解除位置にあるときにリッド(5)上に突出してグリップ部材をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リッドによって閉じられる上部充填開口に適合する容器を具えた液体加熱用の装置、特に電気ケトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この分野においては、リッドを用いて容器を閉じるための異なった方法が存在する。
【0003】
特許文献1からは、例えば、容器の軸に実質的に平行な方向に並進して容器を閉じるケトル・リッドをロックするための装置について知ることができる。リッドは、その上面に、回転リングに適合する突出本体を収容し、リッドのロック解除が制御される。
【0004】
しかしながら、かかる突出部に適合するリッドを具える電気製品は審美的な魅力がないものである。さらに、かかるリッドを清掃するのも容易ではない。
【0005】
また特許文献2からは、容器にヒンジ留めされたリッドをロックするための装置を知ることができる。リッドの開閉動作はリッドに配設された押しボタンによって行われる。
【0006】
この種の装置は満足の行くように作動する。しかしながら、数種のケトルでは付加的な機能を含むリッドが備えられており、これによってリッドが重いものとなっている。この場合、リッドを持ち上げる際にケトルが不安定となってしまう。リッドに一体化された付加的な機能としては、ケトルが落下した場合に錘によって注ぎ口を閉鎖する装置を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】仏国特許第2696087号明細書
【特許文献2】仏国特許第2810642号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した不都合を解消し、容器にリッドをロックするための装置を具えつつも、リッドの審美的な魅力を向上させたケトルを提案することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、容器にリッドをロックするための装置を具えつつも、リッドを容易に清掃することができるケトルを提案することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、人間工学的に改善され、より安全な使用を提供するケトルを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの目的は、容器と、リッドと、リッドを容器にロックするための装置であって、容器に配置された第1ロック手段およびリッドに取り付けられたさらなる第2ロック手段を含むとともに、それが第1ロック手段に係合するリッドロック位置およびリッドが解放されるロック解除位置の間でリッドに関して可動である当該装置と、を具え、当該装置がリッドに配設されて第2ロック手段を制御する部材を含み、第2ロック手段がロック位置にあるときに制御部材がリッド内に組み込まれ、第2ロック手段がロック解除位置にあるときに制御部材がリッドの上に突出してグリップ部材をなすことを特徴とするケトルによって達成される。
【0012】
かかるロック装置に適合するケトルは、ロック位置において、上面を滑らかなものとし、突出する部分を持たず清掃を容易にするすっきりとした意匠のリッドを提供する。
【0013】
かかるロック装置は、ロック解除位置において、グリップ部材が目視可能となり、取り扱いが容易なリッドを提供する。
【0014】
有利には、制御部材は押しボタンで構成される。
【0015】
この構成により、制御部材は単純な押圧によって容易に作動することができるものとなる。
【0016】
有利には、容器は鉛直軸を含み、押しボタンは鉛直軸に実質的に平行に並進することで容器のリッドをロック状態またはロック解除状態とするよう作動する。
【0017】
この構成により、押しボタンを作動させる間のケトルの非常に良好な安定性が確保される。
【0018】
好ましくは、リッドは容器の軸に実質的に平行に並進して容器に取り付けられるよう設計される。
この構成により、リッドを容器に取り付ける際の簡単で直感的な動きが可能となる。
【0019】
好ましくは、ロック装置は支持部およびカバーを含み、そのそれぞれがボタンのための案内領域を含む。
【0020】
この構成により、ボタンを非常に良好に案内できるようになる。
【0021】
好ましくは、容器は付加された第1ロック手段を形成する半径方向突出部を含む。
【0022】
有利には、付加された第2ロック手段はリッドに関して可動のアームを含む。
【0023】
これらの構成により、リッドを容器に安全にロックすることが可能となる。
【0024】
有利には、押しボタンは外部のリッドロックボタンおよび内部のリッドロック解除ボタンを含む。
【0025】
この構成により、容器に対しリッドのロックを行う機能とロックを解除する機能との2つの機能を明確に分離することが可能となる。
【0026】
好ましくは、リッドは外側ボタンをロック位置に保持する装置を含み、内側ボタンが当該保持装置に作用して外部のボタンが解放される。
【0027】
非限定的な例として捉えられ、添付の図面に示された実施形態を検討することにより、本発明がより明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の特定の実施形態に係り、リッドに適合するケトルがロック解除位置にある状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示したケトルのリッドがロック位置にある状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示したケトルのリッドの分解図である。
【図4】図1に示したケトルのリッドのIV−IV線に沿った部分的断面図である。
【図5】図2に示したリッドのV−V線に沿った部分的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1および図2に示された実施形態において、ケトル1は、コードにより電力供給されるベース2と、リッド5によって閉じられる充填用上部開口4を備える容器3とを含んでいる。ケトル1は、上部開口4に配設された注ぎ口6と、上部開口4に関して注ぎ口(pouring spout)6の反対側に配設されたハンドル7とを備える。容器3は、鉛直軸8をもつ実質的に円筒形状である。
【0030】
リッド5は容器3に対して取り外し可能であり、容器の鉛直軸8に実質的に平行な方向に並進して容器3に取り付けられるよう設計されている。
【0031】
ケトル1は容器3に対してリッド5をロックするための装置を含み、この装置は容器3上に配置された第1ロック手段およびリッド5内に配設された第2ロック手段を備えている。
【0032】
容器3は、上部開口4の部位に、リッド5を受容する内壁9を含み、この内壁には、容器3の内側に向かって半径方向に延在し、第1ロック手段をなす4つの突出部が設けられている。リッド5は第2ロック手段をなす半径方向に可動である4つのロック12を備える。
【0033】
リッド5に対して、ロック12は、突出部11と相互作用してリッド5を容器3と一体化するロック位置と、突出部11に対しリッド5の内側に向かい半径方向にオフセットしてリッド5を解放するロック解除位置との間で移動する。
【0034】
リッド5は実質的に円筒形状のボタン20を含み、これが可動のロック12を制御する。図1に示すように、ロック12のロック解除位置において押しボタン20はリッド5の上方に突出し、リッドに対するグリップ部材を形成する。図2に示すように、ロック12のロック位置において押しボタン20はリッド5内に組み込まれる(integrate)。押しボタン20は上面21を含み、これがリッド5の上面の一部をなすことで、滑らかな表面が形成される。
【0035】
図3に示すように、リッド5は、ベース31と、支持部32と、中央の開口34に適合するカバー33とを含む。支持部32は、ベース32に取り付けられるとともに、カバー33の下に配置される。支持部32は円筒形状のスリーブを有し、このスリーブは互いに対向して配設された2つの下部ノッチ36をもつ壁35を含んでいる。壁35は軸方向リブ38および半径方向突出部39に適合する内壁37を含む。それぞれの半径方向リブ39は上側の傾斜面40および下側の当接面41を含む。
【0036】
図3〜図5に示すように、押しボタン20は外側ボタン22および内側ボタン23を含んでいる。外側ボタン22は、支持部32内に配される中空円筒状の下側部分24を備える。外側ボタン22の下側部分24にはリブ25が備えられ、これが支持部32の軸方向リブ38と相互作用することで、支持部32内で外側ボタン22が軸方向に摺動することが可能となる。外側ボタン22は実質的に環状の円筒状上側部分26を含み、これが摺動するようにしてカバー33の中央開口34内に配される。よって、中央開口34は外側ボタン22の上側部分26のための案内領域をなす。
【0037】
外側ボタン22の下側部分24は、互いに対向し、かつ支持部32の下側ノッチ36を通って外向きに延在するように配設された2つのプッシャ27を含む。外側ボタン22の下側部分24は周壁27を含み、この周壁が内側空洞を画成するとともに4つの開口29を含んでいる。
【0038】
内側ボタン23は、外側ボタン22の上側部分26内に配されて外側ボタン22を保持するための装置を制御するとともに、外側ボタン22の下側部分24の空洞内に配設される。保持装置は、下側プレート50、上側プレート51および後退可能な4つのフック52を含む。下側プレート50および上側プレート51が組み立てられることでハウジングが画成され、その内部においてフック52が後退位置および延在位置間で半径方向に移動する。4つのばね(不図示)がフック52を延在位置に戻す。内側ボタン23は傾斜した4つのランプ53を含み、その各々が各フック52の傾斜領域54と相互作用する。内側ボタン23を押すことで傾斜したランプ53の下方への移動が生じ、これによってフック52が後退位置に移動する。フック52は先端フィンガ55を含んでおり、これが開口29内を摺動し、支持部32の半径方向突出部39の当接面41と相互作用する。先端フィンガ55が当接面41の下を摺動する際、外側ボタン32は図2に示すようにロック位置に維持される。
【0039】
外側ボタン22を保持するための装置は、上側プレート51と内側ボタン23との間に配された内側ボタン23の戻しばね56を含んでいる。2つのばね57がリッド5のベース31と下側プレート50との間に配設されることで、突出したロック解除位置への押しボタン20の復帰が確保される。
【0040】
図3に示すように、外側ボタン22のプッシャ27と相互作用するようにされた傾斜領域61をそれぞれ含む2つの摺動アーム60が、互いに対向してベース31に配設されている。各アーム60はその両端部にロック12を含んでいる。ロック位置において、ロック12は開口62を通ってベース31の外側に延在し、容器3の突出部11と相互作用する。リッド5のロック解除位置においては、4つのばね63によりロック12はベース31の内側に戻される。
【0041】
リッド5のベース31はダクト65を含み、これが容器3の内部を注ぎ口6に接続している。振子状の錘(不図示)がリッド5のベース31に回動可能に取り付けられ、ケトルの転倒が生じた場合にダクト65を閉塞する。
【0042】
図4および図5はリッドの部分的断面図であり、これらにはベース31、アーム60およびばね63は含まれていない。
【0043】
作動時にリッド5を容器3にロックするために、ユーザが押しボタン20を押すと、押しボタン20はリッドの軸に沿って下方に摺動する。押しボタン20が変位する間、外側ボタン22のプッシャ27は横方向に移動するアーム60の傾斜領域61に支持される。よって、ロック12が摺動し、容器3の突出部11に下方で係合することで、リッド5が容器3にロックされる。
【0044】
同時に、押しボタン20が変位する間、フック52の先端フィンガ55が傾斜面40上で摺動してフック52を押し返すことになる。半径方向突出部39の突出が生じると、フック52の先端フィンガ55が当接面41の下で摺動し、図5に示すように外側ボタン22をロック位置に保持する。
【0045】
リッド5のロックを解除するためにユーザが内側ボタン23を押すと、これが下方に摺動する。すると、内側ボタン23の傾斜したランプ53がフック52を押し返し、その先端フィンガ55と半径方向突出部39の当接面41との係合が解除され、外側ボタン22を解放することになる。ばね57の作用の下、外側ボタン22は上方に移動し、図4に示すように上側部分26を外に出すことでこれをグリップ部材として機能させる。外側ボタン22の変位およびばね63の作用により、摺動アーム60およびロック12の水平方向の後退が生じ、突出部11との係合が解除されることで、リッド5のロックが解除される。そして、ユーザはグリップ部材を保持し、容器3からリッド5を取り外すことができる。
【0046】
以上のように記載し、説明した実施形態は単なる例として挙げたものであって、多少なりとも本発明がその実施形態に限定されるものではないことが理解される。特に種々の要素の構造あるいは技術的な等価物への置換の観点から、本発明の保護の範囲を超えることなくその他の変更が可能である。
【0047】
図示しない実施形態においては、押しボタンは内側ボタンを含まず、上面に開口を持たない外側ボタンを含むものとすることができる。外側装置を位置決めするための装置は、ボールペンに見られるようなラチェットシステムで構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
3 容器
5 リッド
8 鉛直軸
11 半径方向突出部
12 ロック
20 押しボタン
22 外側ボタン
23 内側ボタン
32支持部
33 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(3)と、リッド(5)と、前記リッド(5)を前記容器(3)にロックするためのロック装置であって、前記容器(3)に配置された第1ロック手段(11)および前記リッド(5)に取り付けられたさらなる第2ロック手段(12)を含むとともに、前記第2ロック手段(12)が第1ロック手段(11)に係合する前記リッド(5)のロック位置および前記リッド(5)が解放されるロック解除位置の間で前記リッドに対して可動である当該ロック装置と、を具え、当該ロック装置が前記リッド(5)に配設されて前記第2ロック手段(12)を制御する制御部材(20)を含み、前記第2ロック手段(12)が前記ロック位置にあるときに前記制御部材(20)が前記リッド(5)内に組み込まれ、前記第2ロック手段(12)が前記ロック解除位置にあるときに前記制御部材(20)が前記リッド(5)の上に突出してグリップ部材をなすことを特徴とするケトル(1)。
【請求項2】
前記制御部材が押しボタン(20)で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のケトル(1)。
【請求項3】
前記容器(3)は鉛直軸(8)を含み、前記押しボタン(20)は前記鉛直軸(8)に実質的に平行に並進することで前記容器(3)の前記リッド(5)をロック状態またはロック解除状態とするよう作動することを特徴とする請求項2に記載のケトル(1)
【請求項4】
前記リッド(5)は前記容器(3)の前記鉛直軸(8)に実質的に平行に並進して前記容器(3)に取り付けられるように設計されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のケトル(1)。
【請求項5】
前記ロック装置は支持部(32)およびカバー(33)を含み、該支持部(32)およびカバー(33)のそれぞれが前記押しボタン(20)のための案内領域(38,34)を含むことを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載のケトル(1)。
【請求項6】
前記容器(3)は第1ロック手段を形成する半径方向突出部(11)を含むことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のケトル(1)。
【請求項7】
前記さらなる第2ロック手段は前記リッド(5)に関して半径方向に可動のアーム(60)を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のケトル(1)。
【請求項8】
前記押しボタン(20)は前記リッド(5)をロックする外側ボタン(22)および前記リッド(5)のロックを解除する内側ボタン(23)を含むことを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載のケトル(1)。
【請求項9】
前記リッド(5)は前記外側ボタンを前記ロック位置に保持する保持装置を含み、前記内側ボタンが前記保持装置に作用して前記外側ボタンが解放されることを特徴とする請求項8に記載のケトル(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200606(P2012−200606A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−65472(P2012−65472)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(594034072)セブ ソシエテ アノニム (63)
【Fターム(参考)】