説明

案内レールへのカバー取付部材、リニアガイド装置

【課題】取付穴係合部の案内レールの取付穴に対する位置精度を厳しくしなくても、案内レールの上面にカバーが容易に取り付けられ、追加の加工無しで、案内レールの上側角部に転動体軌道面が形成されているリニアガイド装置に適用可能とする。
【解決手段】カバー取付部材1を円柱体(取付穴係合部)11と板状部12で構成する。二個の円柱体11を、案内レール3の隣り合う取付穴4に対応させた配置で、板状部12の一方の面に一体化する。円柱体11の直径Aは、案内レール3の取付穴4の座ぐり部41の直径Bより少し大きく、面取り部43の最大直径より小さい。板状部12の幅Cは、カバー2の幅方向中央部21の幅の内寸に対応させた寸法である。板状部12の幅方向両端面の案内レール3との接触面側を、カバー2の側面部22の斜面に対応させた斜面12aに形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リニアガイド装置の案内レールの上面にカバーを取り付けるための取付部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リニアガイド装置の案内レールの上面には、防塵等の目的で、カバーを取り付けることが行われている。
下記の特許文献1には、案内レールの上面に取り付けるカバーとして、案内レールの取付穴(被取付部材に案内レールをボルトで締結するための挿通穴)に係合する取付穴係合部が、カバー本体に固着されるか、合成樹脂でカバー本体と一体に成形されているものが記載されている。
【0003】
下記の特許文献2には、幅方向中央部の両端から側面部が屈曲している形状のカバーであって、前記側面部は、案内レールの上側角部(上面と側面とによる角部)のアンダーカット角度に対応させて、幅方向中央部に対して鋭角となる斜面状に形成されているものが記載されている。
【特許文献1】特開平8−247146号公報
【特許文献2】特許2719985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された、カバー本体に取付穴係合部が固着または一体成形されているものでは、案内レールが長い場合や、案内レールを連結して数十メートルに及ぶようなストロークに対応させる場合には、取付穴係合部のカバー本体に対する位置精度を厳しくしないと、多数ある取付穴係合部が、案内レールの対応する取付穴にきちんと嵌まらない可能性が高くなる。同様に、案内レールに対する取付穴の位置精度も厳しくしないと、各取付穴に対応する取付穴係合部が嵌まらない可能性が高くなる。
【0005】
特許文献2に記載されたカバーは、案内レールの上側角部に転動体軌道面が形成されているタイプのリニアガイド装置には適用できない。このタイプのリニアガイド装置では、従来、案内レールの上面にカバーを収納する凹部を機械加工で設けることが行われているが、製造コストが高くなる。また、長尺な案内レールの上面に凹部を形成するためには大型の加工機が必要となり、設備上の制約が大きい。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点に着目してなされたものであり、取付穴係合部の案内レールの取付穴に対する位置精度を厳しくしなくても、案内レールの上面にカバーが容易に取り付けられ、しかも、案内レールに追加の加工をすることなく、案内レールの上側角部に転動体軌道面が形成されているタイプのリニアガイド装置にも適用できるカバー取付部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、スライダおよび転動体とともにリニアガイド装置を構成する案内レールの上面に、幅方向中央部の両端から側面部が屈曲している形状のカバーを取り付けるための取付部材であって、案内レールの上面に開口する取付穴に係合する取付穴係合部と、案内レールの上面に接触状態で配置される板状部と、からなり、前記板状部の幅方向両端面が前記カバーの側面部との係合部を成し、前記取付穴係合部が、前記板状部の案内レールに接触させる側の面に一体化されていることを特徴とする案内レールへのカバー取付部材を提供する。
【0008】
本発明のカバー取付部材によれば、板状部の幅を案内レールの上面の幅より小さくすることで、案内レールに追加の加工をすることなく、上面と側面との角部に転動体軌道面を有する案内レールの上面に、案内レールの上面の幅より小さい幅のカバーを取り付けることができる。
また、長尺なカバーを取り付ける際には、板状部の長さがカバーの長さより短く、例えば、板状部の長さ方向の両端部に取付穴係合部を設けた複数の取付部材を用意すれば、取付穴係合部の案内レールの取付穴に対する位置精度を厳しくしなくても容易に取り付けることができる。
使用するカバーの側面部を、幅方向中央部に対して鋭角となる斜面状に形成されているものとし、本発明の取付部材の前記板状部の幅方向両端面を、前記側面部の斜面に対応する、幅方向寸法が案内レールとの接触面側で小さくなる斜面状に形成することで、カバーがカバー取付部材から外れにくくなる。
【0009】
本発明のカバー取付部材において、前記取付穴係合部が、案内レールの取付穴に対して締め代で係止される形状とされていると、前記取付穴係合部が案内レールの取付穴から外れにくくなる。また、この場合に、前記取付穴係合部が合成樹脂製の突起であると、案内レールの取付穴の金属面に押しつけられて締め代の部分の合成樹脂が削れて、削りかすが板状部と案内レールの上面との間に入り易くなる。合成樹脂の削りかすが取付部材の板状部と案内レールの上面との間に入ると、カバーが浮き上がり、スライダと接触する可能性が高くなる。よって、これを避けるために、前記板状部の前記突起の周囲となる部分に、案内レールの上面と接触しない逃げ部を設けることが好ましい。
【0010】
本発明のカバー取付部材において、前記取付穴係合部は合成樹脂製の円柱状突起であり、内径が前記円柱状突起の直径より小さく、外径が前記取付穴の直径以下であるC形リングをさらに備えていることが好ましい。このカバー取付部材は、以下の方法で使用する。先ず、C形リングを案内レールの取付穴に入れる。次に、このC形リングに円柱状突起を嵌め入れると、C形リングの開口端間隔が拡がって、C形リングの外周が前記取付穴に押しつけられる。これにより、前記C形リングを介して円柱状突起が取り付け穴に係合され、前記板状部が案内レールの上面に接触状態で配置される。
【0011】
このように前記C形リングをさらに備えることで、取付穴係合部を、合成樹脂製の突起であって、案内レールの取付穴に対して締め代で係止される形状にした場合のように、合成樹脂が削られることがないため、カバーが浮き上がることが防止できる。
本発明はまた、上面に開口する取付穴を有する案内レール、スライダ、および転動体を備え、案内レールの上面に、幅方向中央部の両端から側面部が屈曲している形状のカバーが取り付けられているリニアガイド装置において、案内レールの前記取付穴に係合する取付穴係合部と、案内レールの上面に接触状態で配置される板状部と、からなり、前記板状部の幅方向両端面が前記カバーの側面部との係合部を成し、前記取付穴係合部が、前記板状部の案内レールに接触させる側の面に一体化されているカバー取付部材により、前記カバーが取り付けられていることを特徴とするリニアガイド装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の取付部材を用いることで、取付穴係合部の案内レールの取付穴に対する位置精度を厳しくしなくても、案内レールの上面にカバーが容易に取り付けられ、しかも、案内レールに追加の加工をすることなく、案内レールの上側角部に転動体軌道面が形成されているタイプのリニアガイド装置であっても、案内レールの上面に容易にカバーを取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態のカバー取付部材1を示す斜視図である。図2は、この実施形態で用いるカバー2を示す斜視図である。図3は、図1のカバー取付部材1と、図2のカバー2と、このカバー2を取り付けるリニアガイド装置の案内レール3を一緒に示す斜視図である。図4は、図1のカバー取付部材1を用いて、図2のカバー2を案内レール3に取り付ける手順を説明する断面図である。
【0014】
この案内レール3は金属製で、二対4列の転動体軌道面31〜34を有し、そのうちの一対の転動体軌道面31,32が、上面と側面との角部に形成されている。案内レール3には、上面から下面に貫通する穴が、案内レール3を被取付部材にボルトで締結するための取付穴4として形成されている。取付穴4は、図4に示すように、ボルト5の頭部51を収める座ぐり部41と、ボルト5の軸部52を収める軸収納部42とからなる。また、座ぐり部41の上端に面取り部43が形成されている。
【0015】
カバー2は、長尺な鋼板をプレス加工により、幅方向中央部21の両端から側面部22が屈曲している形状としたものである。幅方向中央部21の幅は、案内レール3の上面の幅方向寸法Dより小さく、取付穴4の面取り部43の最大直径(案内レール3の上面に存在する開口円)より大きい。側面部22は、幅方向中央部21に対して鋭角(図4でθ<90°)となる斜面状に形成されている。
【0016】
カバー取付部材1は合成樹脂製で、円柱体(取付穴係合部)11と板状部12とからなり、二個の円柱体11が案内レール3の隣り合う取付穴4に対応させた配置で、板状部12の一方の面(案内レールに接触させる側の面)に一体化されている。円柱体11の直径Aは、案内レール3の取付穴4の座ぐり部41の直径Bより少し大きく、面取り部43の最大直径より小さい。板状部12の幅Cは、カバー2の幅方向中央部21の幅の内寸に対応させた寸法である。板状部12の幅方向両端面の案内レール3との接触面側は、カバー2の側面部22の斜面に対応させた、幅方向寸法が案内レール3との接触面側で小さくなる斜面12aに形成されている。
【0017】
カバー2を案内レール3に取り付ける際には、先ず、案内レール3の取付穴4にボルト5を入れて、軸部52の先端の雄ねじを基台等の被取付部に螺合させることにより、案内レール3を基台等にボルトで固定する。次に、カバー取付部材1を案内レール3の上に置いて、円柱体11を取付穴4の面取り部43に接触させる。図4(a)は、この状態を示す。
【0018】
次に、この状態で、カバー取付部材1の板状部12の、円柱体11の上側となる部分を叩いて、円柱体11を弾性変形させながら取付穴4の座ぐり部41内に入れて、板状部12を案内レール3と接触させる。これにより、カバー取付部材1の円柱体11が締め代で取付穴4の座ぐり部41に係止され、板状部12が案内レール3の上面に接触状態で配置される。このようにして、カバー取付部材1が案内レール3の上面に取り付けられる。図4(b)は、この状態を示す。
【0019】
次に、案内レール3の上面に取り付けられたカバー取付部材1の上に、カバー2を置いて上から押しつけることで、カバー取付部材1の上にカバー2を被せる。その際に、カバー取付部材1の板状部12の斜面12aにカバー2の側面部22の斜面が係合するため、カバー2がカバー取付部材1から外れにくくなる。このようにして、カバー2がカバー取付部材1を介して、案内レール3の上面に取り付けられる。図4(c)は、この状態を示す。また、図5は、この状態を示す斜視図である。
【0020】
長尺なカバー2を取り付ける際には、図3に示すように、板状部11の長さがカバー2の長さより短いカバー取付部材1を、カバー2の長さに合わせた個数だけ用意する。これにより、円柱体(取付穴係合部)11の案内レール3の取付穴4に対する位置精度を厳しくしなくても、カバー取付部材1を介してカバー2を案内レール3の上面に容易に取り付けることができる。
【0021】
ここで、図6に示すように、カバー取付部材1の板状部12に、円柱体11の外周を縁取る凹部(案内レール3の上面と接触しない逃げ部)13を設けると、合成樹脂製の円柱体11の外周部が取付穴4の金属面に押しつけられて削られたものが、凹部13に溜まるため、カバー取付部材1の板状部11と案内レール3の上面との間に削りかすが入ることを防止できる。
【0022】
また、図1に示す形状のカバー取付部材1とともに、図7に示すC形リング6を用いることで、合成樹脂製の円柱体11の外周部が取付穴4の金属面に押しつけられて削られないようにすることができる。C形リング6としては、内径Eが円柱体(円柱状突起)11の直径Aより小さく、外径Fが案内レール3の取付穴4の座ぐり部41の直径B以下のものを用いる。
【0023】
この場合には、先ず、図8(a)に示すように、C形リング6を案内レール3の取付穴4の座ぐり部41内に入れる。次に、このC形リング6に円柱体11を嵌め入れると、C形リング6の開口端が拡がって、C形リング6の外周が座ぐり部41に押しつけられる。図8(b)はこの状態を示す。これにより、C形リング6を介して、カバー取付部材1の円柱体11が座ぐり部41に係合され、板状部12が案内レール3の上面に接触状態で配置される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態のカバー取付部材を示す斜視図である。
【図2】この実施形態で用いるカバーを示す斜視図である。
【図3】カバー取付部材と、カバーと、カバーを取り付けるリニアガイド装置の案内レールを一緒に示す斜視図である。
【図4】図1のカバー取付部材を用いて、図2のカバーを案内レールに取り付ける手順を説明する断面図である。
【図5】カバーがカバー取付部材を介して、案内レールの上面に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【図6】カバー取付部材の板状部に、円柱体の外周を縁取る凹部を設けた例を示す斜視図である。
【図7】C形リングを用いた例を説明する図であって、(a)は案内レールの一部を示す平面図であり、(b)はC形リングを示す平面図であり、(c)はカバー取付部材の円柱体のみを示す平面図である。
【図8】C形リングを用いた場合の、カバー取付部材の案内レールに対する取付方法を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 カバー取付部材
11 円柱体(取付穴係合部)
12 板状部
13 凹部(案内レールの上面と接触しない逃げ部)
2 カバー
21 幅方向中央部
22 側面部
3 案内レール
31〜34 転動体軌道面
4 取付穴
41 座ぐり部
42 軸収納部
43 面取り部
5 ボルト
51 頭部
52 軸部
6 C形リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダおよび転動体とともにリニアガイド装置を構成する案内レールの上面に、幅方向中央部の両端から側面部が屈曲している形状のカバーを取り付けるための取付部材であって、
案内レールの上面に開口する取付穴に係合する取付穴係合部と、案内レールの上面に接触状態で配置される板状部と、からなり、前記板状部の幅方向両端面が前記カバーの側面部との係合部を成し、
前記取付穴係合部が、前記板状部の案内レールに接触させる側の面に一体化されていることを特徴とする案内レールへのカバー取付部材。
【請求項2】
前記カバーの側面部は、幅方向中央部に対して鋭角となる斜面状に形成され、
前記板状部の幅方向両端面は、前記側面部の斜面に対応する、幅方向寸法が案内レールとの接触面側で小さくなる斜面状に形成されている請求項1記載のカバー取付部材。
【請求項3】
前記取付穴係合部は、案内レールの取付穴に対して締め代で係止される形状とされた請求項1または2記載のカバー取付部材。
【請求項4】
前記取付穴係合部は合成樹脂製の突起であり、前記板状部の前記突起の周囲となる部分に、案内レールの上面と接触しない逃げ部を設けた請求項3記載のカバー取付部材。
【請求項5】
前記取付穴係合部は合成樹脂製の円柱状突起であり、
内径が前記円柱状突起の直径より小さく、外径が前記取付穴の直径以下であるC形リングをさらに備えた請求項1または2記載のカバー取付部材。
【請求項6】
上面に開口する取付穴を有する案内レール、スライダ、および転動体を備え、案内レールの上面に、幅方向中央部の両端から側面部が屈曲している形状のカバーが取り付けられているリニアガイド装置において、
案内レールの前記取付穴に係合する取付穴係合部と、案内レールの上面に接触状態で配置される板状部と、からなり、前記板状部の幅方向両端面が前記カバーの側面部との係合部を成し、前記取付穴係合部が、前記板状部の案内レールに接触させる側の面に一体化されているカバー取付部材により、前記カバーが取り付けられていることを特徴とするリニアガイド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−57699(P2008−57699A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236709(P2006−236709)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】