説明

桟橋用防舷仕切り装置

【課題】 桟橋において、舟艇間に配置され舟艇同士の接触を防止する桟橋用防舷仕切り装置を提供する。
【解決手段】 中空体構造のフロート12a……12eが弾性ジョイント13を介して複数個一列に連結され、桟橋10に対し直角方向に設置される。一部のフロート12a,12c,12eは、その周囲を緩衝材27にて被覆され、舟艇6が接触したときその衝撃を吸収緩和する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、浮き桟橋等桟橋に係留された舟艇の間に位置せしめられて舟艇同士が接触するのを防止する桟橋用防舷仕切り装置に関する。
【0002】
【従来の技術】通常舟艇は浮き桟橋に対し、直角方向に係留されることが多い。かかる場合、隣り合って係留された舟艇同士が、風、波浪を受けて揺動する際にその側面が衝突し損傷するおそれがある。これを防止するために、通常舟艇間に防舷部材が浮遊せしめられる。図7はその一例を示し、桟橋1と一定間隔を隔てて海底に植設された係留杭2と桟橋上のクリート3との間にロープ4を張り渡し、これに円柱体形状の発泡スチロール製フロート5を通して防舷部材とし、この間に舟艇6をロープ7にてクリート3に繋ぎ、停泊させたものである。かかる防舷部材は、舟艇所有者或いは舟艇管理者が、適当な大きさのフロート6を準備してその中心に孔を開け、ロープ4を通して桟橋3と杭2との間に繋ぐという個人作業によりなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記防舷部材にあっては、フロート5の材料として使用される発泡スチロールが舟艇の接触により破損し、その破片が海洋環境の悪化の原因となっている。また通常フロート5は、桟橋クリート3と係留杭2との間に1個ないし数個繋いで張り渡されるが、フロートはロープにて適当に結ばれるためにはずれやすく、またその作業も面倒なものであり、十分な防舷作用が得られていない。
【0004】本発明は、上述のような不都合を生じない、桟橋用防舷仕切り装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明(請求項1)にかかる桟橋用防舷仕切り装置は、複数個一列に弾性ジョイントを介して連結された中空体のフロートと、該フロートのうちの少なくとも一部のフロートの外周に固定された緩衝層からなり、桟橋に係留されて舟艇と舟艇の間に浮遊せしめられ、舟艇間の接触を防止するものである。
【0006】かかる構成において、防舷仕切り装置は、桟橋において舟艇間に設置され、隣り合う舟艇同士が直接接触するのを防止するとともに、緩衝層にて舟艇の接触の際の衝撃を吸収緩和する。
【0007】本発明(請求項2)にあっては、上記フロートが、平坦面を有する略円筒体形状を有し、上記平坦面部が肉厚に形成されて、該平坦面が下方に位置するごとく形成されてなるものである。かかる構成であれば、フロートの浮遊姿勢が安定化し、その回転による連結ロープの捻れ、劣化、破損等が防止される。
【0008】本発明(請求項3)にあっては、上記フロートが、その両端面に各一対の孔を有する把手部を有し、上記ジョイントは、円環部と該円環部から外方へ突き出して形成された平板部を有し、上記円環部が上記フロートの端面に接し、上記平板部と上記把手部とが固定具にて連結されてなるものである。かかる構成であれば、ジョイントの弾性により、ジョイント部分は屈曲することができ、波浪を受けてもこの屈曲により防舷仕切り装置の無理な力が加わることはない。
【0009】本発明(請求項4)にあっては、上記緩衝層が、衝撃を吸収緩和する発泡層と、該発泡層を被覆する耐摩耗性を有する表皮層よりなるものである。かかる構成において、舟艇が緩衝層に接触すると、その衝撃は、発泡層にて吸収緩和される。また発泡層は表皮層にて保護される。
【0010】
【発明の実施の形態】図1〜4において、1は、舟艇6が係留される浮き桟橋等前述同様の桟橋、3は、この桟橋1の側部に設けられたクリート、10は、クリート3にその一端がロープ11にて連結された防舷仕切り装置である。防舷仕切り装置10は、5個のフロート12a,12b,12c,12d,12eを弾性を有するジョイント13にて一列に連結した構造を有し、その他端はロープ14にてアンカーブイ15に連結されている。この防舷仕切り装置10は、桟橋1に係留された舟艇6間に、桟橋1に対し直角方向に設置される。なおこの角度は、必ずしも桟橋に対し直角とは限らず、舟艇6が桟橋に対し斜め方向に停泊せしめられる場合には、その角度に合わせて設置される。防舷仕切り装置10の他端は、アンカーブイ15のほか、係留杭に連結されることもある。フロート12a…12eの個数は、舟艇の長さに応じて変更できる。
【0011】フロート12a……12eは、それぞれ両端が外側に球面状に湾曲した面を有する中空の略円筒体形状を有し、その下面は平坦面16に形成されている。フロート12a…12eは高密度ポリエチレン(HDPE)のブロー成形にて製造することができる。かかる形状をブロー成形にて成形すると、平坦面16の肉厚が円形部分のそれよりも厚くなり、その結果この面の重量が増し、フロート12a……12eを水面に浮遊させたとき、平坦面16が下面に位置させられ、その姿勢が安定化するからである。17は、フロート12a……12eの両端面において直径方向にそれぞれ一対ずつ突出して形成された孔18を有する把手部である。
【0012】ジョイント13は、円環部19とその両側に突き出て形成された平板部20よりなり、硬度(JISA)60のEPDMにて一体形成することができる。このジョイント13は、フロート12a……12e間に配置され、円環部19がフロート12a……12eの端面に接した状態で、平板部20と把手部17を固定具21にて連結するものである。フロート12a……12eは円環部19及び平板部20を介して接することとなり、ブロート12a……12eは弾性的に僅か屈曲できる。ジョイント13において、22は円環部19に形成された凹部で、フロート12a……12eの把手部17が入り込む。23は平板部20に形成されたネジ孔であり、把手部17の孔18を通された固定具21が平板部20を挟むごとくボルト24及びナット25にて固定される。26はワッシャである。33は、固定具21の内側、すなわち固定具21が把手部17に接する面に配置されたゴム板で把手部17を保護する作用をなす。把手部17は、フロート12a……12eを連結するために使用されるが、そのほかフロート12a……12eを運搬する際の把手として使用される。また、端部のフロート12a,12eにおいては、この把手部17にロープ11,14が連結されてクリート3及びアンカーブイ15に繋がれる。
【0013】フロート12a,12c,12eは、その円周面外面を緩衝材27にて覆われている。この緩衝材27は、図5に示すように、ポリエチレン(PE)又はポリウレタン(PU)よりなる発泡層29を、ポリ塩化ビ二ル(PVC)コーティングカンバス布又はエステルコーティングカンバス布等よりなる耐磨耗性表皮層28にて被覆したもので、表皮層28の2つの長辺にはロープ通し孔30が形成され、これにロープ31が通されている。緩衝材27は、フロート12a,12c,12eの円周に沿わされ、ロープ31を結んでフロート12a,12c,12eに固定される。図6は、緩衝材27の別の構造を示し、表皮層28が予め円筒形に形成されており、その内側に発泡材29が固定され、表皮層28の両端には、前述と同様のロープ通し孔30が形成されてこれにロープ31が通されている。この緩衝材27をフロート12a,12c,12eに通し、ロープ31を結ぶことにより、緩衝材27はフロート12a,12c,12eに固定される。図1に示すように、緩衝材27は、フロート12a……12eのうち一個飛びのフロート12a,12c,12eに取り付けられているが、すべてのフロート12a……12eに取り付けてもよい。
【0014】図1に示すように、かかる構造の防舷仕切り装置10は、舟艇6間であって桟橋1とアンカーブイ15の間に、ロープ11,14に多少の緩みをもたせて設置される。かくすると、風、波浪、潮流等を受けて舟艇6が防舷仕切り装置10に接触しても、緩衝材27にてその衝撃は吸収緩和され、舟艇6が破損するおそれは極めて小さい。また防舷仕切り装置10は、ジョイント13部分にて僅か届曲するごとく揺動し、その揺動はジョイント13にて吸収緩和されるから、この装置がジョイント13部分にて折れたり、破損するおそれは殆どない。
【0015】
【実施例】フロートの円筒体部分の長さ116cm,円筒体の直径60cm,平坦面16の幅24cmとすることができ、円周面には、補強のため数本の溝32が形成されている。緩衝材27の厚さは約5cmとすることができる。ジョイント13の円環部19の直径は30cm,幅5cm,肉厚1cmとすることができる。かかるフロート12a……12e及びジョイント13を使用し、フロート12a……12eを5個一列に連結したとき、約6mの長さの防舷仕切り装置10が実現でさ、桟橋1及びアンカーブイ15に連結される両端のロープ11,14の長さを2〜3mとすると、通常の舟艇6の防舷仕切り装置10として適したものとなる。フロート12a……12eの平坦面16の肉厚は8mm,円周部分の肉厚は6mmであり、重心は平坦面16側に偏心している。
【0016】
【発明の効果】本発明(請求項1)によれば、隣り合う舟艇同士が直接接触するのを防止し、かつ緩衝層にて接触の際の衝撃を吸収緩和することにより、舟艇を保譲することができる。また、桟橋の舟艇停泊水域にこの防舷仕切り装置を設置しておくことにより、隣り合う停泊舟艇が、風、波浪、潮流等によりこの水域に移動することを防ぎ、係留水域が確保でき、舟艇の係留、停泊作業が容易となる。またフロートは中空体構造を有するものであり、舟艇等が衝突しても破損しない優れた耐久性を有するから、従来の発泡スチロール製フロートのような発泡スチロール破片の飛散という問題は生じず、海洋環境に悪影響を及ぼすことはない。
【0017】本発明(請求項2)によれば、フロートが波浪等を受けても、回転しにくいから、桟橋及びアンカーブイ等に連結するロープに捻れ或いはこれに起因するロープの絡み合い等を生じることはなく、防舷仕切り装置の設置を安定なものとすることができる。
【0018】本発明(請求項3)によれば、防舷仕切り装置に波浪等による力が加わったとき、その力はジョイントが僅か弾性的に折れ曲がることにより吸収緩和されるから、破損しにくく装置の耐久住が向上する。
【0019】本発明(請求項4)によれば、緩衝材の発泡層にて衝撃が吸収緩和され、また耐摩耗性を有する表皮層にてその表面が保護されるから、耐久性に優れた緩衝材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に実施の形態に係る防舷機能を備えた係留装置の使用状態を示す斜視図である。
【図2】フロートとジョイントの関係を示す分解斜視図である。
【図3】ジョイント部分を示す正面図である。
【図4】緩衝材を取り付けない状態のフロートを示す斜視図である。
【図5】緩衝材を示す斜視図である。
【図6】緩衝材の別の構造を示す斜視図である。
【図7】従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 桟橋
3 クリート
6 舟艇
10 防舷仕切り装置
11,14,31 ロープ
12a……12e フロート
13 ジョイント
15 アンカーブイ
16 平坦面
17 把手部
18 孔
19 円環部
20 平板部
21 固定具
27 緩衝材
28 表皮層
29 発泡層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数個一列に弾性ジョイントを介して連結された中空体のフロートと、該フロートのうちの少なくとも一部のフロートの外周に固定された緩衝層からなり、桟橋に係留されて舟艇と舟艇の間に浮遊せしめられ、舟艇間の接触を防止する桟橋用防舷仕切り装置。
【請求項2】 上記フロートは、平坦面を有する略円筒体形状を有し、上記平坦面が肉厚に形成されて、該平坦面が下方に位置するごとく形成されてなる請求項1記載の桟橋用防舷仕切り装置。
【請求項3】 上記フロートは、その両端面に各一対の孔を有する把手部を有し、上記ジョイントは、円環部と該円環部から外方へ突き出して形成された平板部を有し、上記円環部が上記フロートの端面に接し、上記平板部と上記把手部とが固定具にて連結されてなる請求項1又は2記載の桟橋用防舷仕切り装置。
【請求項4】 上記緩衝層は、衝撃を吸収緩和する発泡層と、該発泡層を被覆する耐摩耗性を有する表皮層よりなる請求項1ないし3のいずれかに記載の桟橋用防舷仕切り装置。

【図1】
image rotate


【図6】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図7】
image rotate