説明

梯子の安全器具

【課題】作業者が梯子を昇降する際の、安全ベルトフックの掛け替え作業をなくし、円滑で且つ安全に昇降する安全器具を提供することにある。
【解決手段】梯子1に沿って配設されたガイドロッド2に安全器具Aを挿入し、2分割した補助ブレーキパッド6bにて自重降下を防止し、2分割した載頭円すい状の主ブレーキ金物5aを本体3の降下により主ブレーキパッド5bをガイドロッド2に圧着することによりブレーキを掛け作業者の墜落を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梯子の安全装置に係り、作業者が梯子を昇降する際に用いる安全器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高所作業をする際には、一般的に梯子が利用されるが、作業者が梯子を昇降する時は安全ベルトを身体(腰)に締めて、任意の高さを昇降する毎に安全ベルトに装着されているフックをステップに掛け替えながら梯子を昇降する。又、作業員が墜落するのを防止する設備として、特許文献1に記載の「高所作業用安全器具」がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−301872
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
梯子に対して安全器具を装着・設置して、この安全器具と共に作業者が昇降し、万一のときはこの安全器具で作業者の墜落を防止するものであるが、特許文献1の安全器具はステップ2本にまたがる長さを有するため、それなりの重量が有り、作業者が引き上げるには労力を要し軽量化が望まれ、又、作業者墜落時の衝撃荷重はステップにてロックしており、且つ作業者を衝撃力から守るためショックアブソーバ機能を有するランヤード等が必要である。
【0005】
本発明は、上記の問題に留意して、墜落時の衝撃力を緩和するためブレーキにて減速・停止させることでランヤード等を不要とし、且つ安全器具の軽量化が容易である。さらに、安全器具を着脱自在とし、使用後は取り外し作業が簡単に実施できることをもう一つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を達成するために、安全器具を梯子に沿って配設されたガイドロッドに挿入し、中空穴を有する2分割した載頭円すい状の金物中心側に主ブレーキパッドを配し、外側をメス形載頭円すい穴を有する本体と嵌合することで、コッターの如く水平力を発生させ、主ブレーキパッドをガイドロッドに強固に押し当て、減速・停止するものである。
【0007】
又、主ブレーキ下方に中空穴を有する2分割した載頭円すい状の補助ブレーキパッドを外側をメス形載頭円すい穴を有する金物を配し、前記補助ブレーキパッドを中空穴を有する調整ナットにて押し上げることにより、前記同様に水平力を発生させることで、すべり摩擦力にて安全器具の自重降下を防止する。
【0008】
作業者は腰部の安全ベルト付属のリングと安全器具側のシャックルに配されたロープ付フックを該安全ベルト付属のリングに係合し、昇降するものである。
【0009】
ここで、万一作業者が何らかの理由で墜落することとなった場合、落下した作業者の体重による衝撃力で本体と2分割した主ブレーキ金物をコッターの如く嵌合させることにより、主ブレーキパッドをガイドロッドに強固に圧着することで減速・停止する。
【0010】
自重降下防止用の2分割した補助ブレーキパッドは下方の調整ナットをゆるめてガイドロッドに挿入し、その後調整ナットを締め込んで補助ブレーキパッドをガイドロッドに押付けられるため、安全器具の挿入・取出しが容易である。
【発明の効果】
【0011】
上述した発明の安全器具によれば、作業者が高所作業をするため梯子を昇降する際、梯子に沿って配設されるガイドロッドに挿入された安全器具にロープ付フックを掛けたまま作業者は昇降できるので、片手でいちいちフックをステップに掛け替える必要がなく、掛け替えるわずらわしさを無くし、円滑で安全に昇降することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は安全器具の使用状態を示した側面図、(b)は正面図である。
【図2】側部断面図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に記載の発明を実施するための形態に基づいて、この発明をより具体的に説明する。
図1に示すように、梯子1端部に配されたガイドロッド2は上部を手摺1aに固着した固定金物2aに吊り下げられ、下部を手摺1aに着脱自在にガイドロッド2を支持金物2bにて支持している。
【0014】
安全器具Aをガイドロッド2に挿入する時は、支持金物2bを取り外し安全器具AをフロアFLとの空間Cより挿入する。
【0015】
作業者は腰部の安全ベルトB付属のリングと安全器具Aに配されたシャックル12、ロープ付フックBFを掛けて昇降する。
【0016】
安全器具Aをガイドロッド2への挿入時は図2に示すように、本体3下部に配設した載頭円すい穴を有する金物6aと嵌合する2分割した載頭円すい状の補助ブレーキパッド6bとガイドロッド2とのスキマを確保するため調整ナット7を緩めることで容易に挿入でき、補助ブレーキパッド6bの下面に座金8を配設している。
【0017】
図2・3に示すように、本体3の外周端部にはブラケット3aを溶接等にて固着し、該ブラケット3aにシャックル12を配設し、且つ、シャックル12の旋回を制限するためにストッパ11を配している。
【0018】
本体3の内面は、載頭円すい穴を有し、2分割された載頭円すい状の主ブレーキ金物5aと嵌合し、該主ブレーキ金物5a内面には、2分割した主ブレーキパッド5bを挿入又は接着している。
【0019】
主ブレーキ金物5aの上部に圧縮ばね9を配し、該圧縮ばね9の反発力により、外側にある本体3、ブラケット3a、金物4、ブレーキ開放ボルト10、金物10a、ストッパ11、シャックル12等を浮かせることで主ブレーキ金物5aと本体3内面とにスキマを生じさせることで、特に作業者の下降時に主ブレーキパッド5bとガイドロッド2との引きずりを防止する。
【0020】
金物10aは、ブレーキ開放ボルト10を金物4に組付後に抜け止め用として、該ブレーキ開放ボルト10に止ねじ等にて固着され、主ブレーキパッド5bの摩耗に対抗するためのスキマC1を有する。
【0021】
ブレーキ開放ボルト10は、本体3にボルト等にて固定された金物4にねじにて上下可動に配されている。
【0022】
ここで、万一作業者が何らかの理由でステップ1bを踏み外して墜落することとなった場合、落下した作業者の落下荷重はロープ付フックBF、シャックル12を介して本体3が下降し、主ブレーキ金物5aを嵌合し、内側へ押し付けられることにより、主ブレーキパッド5bとガイドロッド2とでブレーキがかかることにより、安全器具Aはガイドロッド2を介し、梯子1に対して下方への移動ができなくなるため、作業者・安全器具Aの墜落が防止される。従って、作業者の万一の墜落事故発生時にも作業者の安全を守ることができる。
【0023】
尚、ブレーキは一瞬でロック停止しないため、ショックアブソーバを備えた安全ロープ等を必要としないものである。
【0024】
ブレーキ開放は、ブレーキ開放ボルト10を締め込み、本体3と主ブレーキ金物5aとのスキマC1を確保した後、ブレーキ開放ボルト10を緩め、図2の状態に戻すことにより原状復帰する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の梯子安全器具は新設・既設を問わず、梯子に対してガイドロッドを付設することで装着でき、小型・軽量で経済的な安全器具を提供できる。
【符号の説明】
【0026】
1 梯子
1a 手摺
1b ステップ
2 ガイドロッド
2a 固定金物
2b 支持金具
3 本体
3a ブラケット
4 金物
5a 主ブレーキ金物
5b 主ブレーキパッド
6a 金物
6b 補助ブレーキパッド
7 調整ナット
8 座金
9 圧縮ばね
10 ブレーキ開放ボルト
10a 金物
11 ストッパ
12 シャックル
A 安全器具
B 安全ベルト
BF ロープ付フック
C 空間
C1 スキマ
FL 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドロッドに挿入した載頭円すい形の穴を有する本体に2分割した載頭円すい状の金物に各々主ブレーキパッドを配し、該金物と本体を嵌合させ、本体が降下することにより主ブレーキパッドをガイドロッドに圧着させ、作業者の墜落を防止するように構成したことを特徴とする梯子の安全器具。
【請求項2】
載頭円すい形の穴を有する金物を本体に固着し、2分割した載頭円すい状の補助ブレーキを調整ナットにて補助ブレーキパッドを押し上げることにより、補助ブレーキパッドをガイドロッドに圧着し、安全器具の自重降下を防止することを特徴とする請求項1に記載の梯子の安全器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−406(P2012−406A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151449(P2010−151449)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(309026163)有限会社福島設計 (3)
【出願人】(397015393)
【Fターム(参考)】