説明

棚在庫管理システム

【課題】 初期導入コストを抑えつつ、各棚の物品の在庫数及びロケーションの確認を行うことができる棚在庫管理システムを提供する。
【解決手段】 棚在庫管理システムは、RFIDリーダライタと上位サーバとを備えている。上位サーバは、まずRFIDリーダライタで読み取った物品IDを入力し、所定時間内の物品IDの読取回数をカウントして棚ID毎の物品IDの読取率を計算し、その棚ID毎の読取率に基づいて現在読取中の棚IDを決定する。そして、上位サーバは、RFIDリーダライタで読み取った物品IDと在庫管理DB上の在庫情報とを照合して、読み取った物品IDが属する棚IDが読取中の棚IDと一致するかどうかを判断し、その判断結果に基づいて読み取った物品IDに対応する物品のロケーションが正しいかどうかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の棚に保管された物品の在庫管理を行う棚在庫管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の棚在庫管理システムとしては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の棚在庫管理システムは、物品を倉庫棚に入庫する際に、物品に貼付された物品RFIDタグの情報をRFIDリーダライタで読み取り、その情報を倉庫棚に貼付された棚RFIDタグに転記した後、RFIDリーダライタにより棚RFIDタグ及び物品RFIDタグの情報を読み取り、それらの情報に基づいて倉庫棚に格納されている物品に変動があったか否かを定期的にチェックするというものである。
【特許文献1】特開2006−36389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術においては、倉庫棚の各棚にRFIDリーダライタがそれぞれ設置されており、それらのRFIDリーダライタを用いて、対応する棚RFIDタグ及び物品RFIDタグの情報を読み取ることで、各棚の物品の在庫数及びロケーションの確認を行っている。しかし、RFIDリーダライタは比較的高価なものであるため、上記従来技術のように各棚毎にRFIDリーダライタが設置されていると、初期導入コストが高くなってしまう。
【0004】
本発明の目的は、初期導入コストを抑えつつ、各棚の物品の在庫数及びロケーションの確認を行うことができる棚在庫管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複数の棚に保管された物品の在庫管理を行う棚在庫管理システムにおいて、物品に取り付けられ、当該物品に関する物品情報が記録された物品タグと、物品タグに記録された物品情報を無線通信により読み取るタグ読取装置と、物品タグに記録された物品情報と物品タグが属する棚に関する棚情報とを含む在庫情報を記憶する記憶手段と、タグ読取装置による所定時間内の棚毎の情報読取率を求め、棚毎の情報読取率に基づいて読取中の棚を決定する棚決定手段と、タグ読取装置により読み取った物品情報と記憶手段に記憶された在庫情報とを照合して、読み取った物品情報を記録した物品タグが属する棚が棚決定手段により決定した読取中の棚に一致するかどうかを判断し、その判断結果に基づいて読み取った物品情報に対応する物品のロケーションが正しいかどうかを判定する判定手段とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
このような本発明の棚在庫管理システムにおいては、物品に取り付けられた物品タグの情報(物品情報)をタグ読取装置により読み取って在庫管理を行う。ここで、読取対象の棚に存在する物品タグの物品情報を確実に読み取るためには、広範囲の読み取りが可能なタグ読取装置を使用するのが好適である。この場合には、複数の棚に存在する物品タグの物品情報がタグ読取装置によって読み取られることとなる。そこで、タグ読取装置による所定時間内の棚毎の情報読取率を求め、その棚毎の情報読取率に基づいて現在読取中の棚を決定する。基本的には、情報読取率が最大の棚を現在読取中の棚とする。そして、タグ読取装置により読み取った物品情報と記憶手段に記憶された在庫情報とを照合して、読み取った物品情報を記録した物品タグが属する棚が読取中の棚に一致するかどうかを判断し、その判断結果に基づいて読み取った物品情報に対応する物品のロケーションが正しいかどうかを判定する。このようにすれば、例えば携帯型のタグ読取装置が使用可能となるため、各棚毎にタグ読取装置を設置しなくて済む。これにより、初期導入コストを抑えつつ、各棚に保管された物品の在庫数及びロケーションの確認を行うことができる。
【0007】
好ましくは、各棚に取り付けられ、棚情報が記録された棚タグを更に備え、棚決定手段は、タグ読取装置による所定時間内の棚情報の読取回数をカウントし、棚情報の読取回数に基づいて棚毎の情報読取率を求める。
【0008】
このように棚情報が記録された棚タグを棚毎に設けることにより、タグ読取装置により読み取った物品情報と記憶手段に記憶された在庫情報とを照合することなく、棚タグから棚情報を取得することができる。従って、棚毎の情報読取率の計算処理を簡素化することができる。
【0009】
また、棚決定手段は、タグ読取装置による所定時間内の物品情報の読取回数をカウントし、物品情報の読取回数に基づいて棚毎の情報読取率を求めても良い。
【0010】
この場合には、特に各棚に棚タグを取り付けなくても、タグ読取装置により読み取った物品情報と記憶手段に記憶された在庫情報とを照合することで棚毎の情報読取率が求められるため、初期導入コストを一層抑えることができる。
【0011】
また、好ましくは、判定手段は、タグ読取装置により読み取った物品情報と記憶手段に記憶された在庫情報とを照合して、読み取った物品情報を記録した物品タグが属する棚が読取中の棚または読取中の棚から所定エリア内に存在する棚に一致するかどうかを判断し、読み取った物品情報を記録した物品タグが属する棚が読取中の棚に一致すると判断されたときは、読み取った物品情報に対応する物品のロケーションが正しいと判定し、読み取った物品情報を記録した物品タグが属する棚が読取中の棚及び読取中の棚から所定エリア内に存在する棚の何れにも一致しないと判断されたときは、読み取った物品情報に対応する物品のロケーションが正しくないと判定する。
【0012】
上述したようにタグ読取装置が広範囲の読み取りを可能とする場合でも、読取対象の棚から離れた棚に存在する物品タグの物品情報の読み取りはできないはずである。それにも拘わらず、タグ読取装置により読み取った物品情報と記憶手段に記憶された在庫情報とを照合したときに、タグ読取装置により読み取った複数の物品情報の中に読取対象の棚から離れた棚に存在する物品タグの物品情報があるときは、その物品情報に対応する物品のロケーションが間違っている可能性が高いと考えられる。そこで、タグ読取装置により読み取った物品情報を記録した物品タグが属する棚が読取中の棚及び読取中の棚から所定エリア内に存在する棚の何れにも一致しないときは、読み取った物品情報に対応する物品のロケーションが正しくないと判定することにより、各棚に保管された物品のロケーション間違いを確実に把握することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、初期導入コストを抑えつつ、各棚の物品の在庫数及びロケーションの確認を行うことができる。これにより、物品の在庫管理を効果的に実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係わる棚在庫管理システムの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係わる棚在庫管理システムの一実施形態の全体構成を示すシステム構成図である。同図において、本実施形態の棚在庫管理システム1は、保管棚構造体2に保管された物品3の棚卸しを行うシステムである。
【0016】
保管棚構造体2は、図2にも示すように、物品3を格納する複数の棚2aを有している。各棚2aにはパレット4が配置されており、このパレット4上に複数の物品3が積み重ねられる。ここでの物品3は、商品を収容したケース(段ボール等)である。物品3の一側面には、物品3の識別コードとして物品ID(物品情報)を記録した物品RFIDタグ(以下、単に物品タグという)5が貼付されている。なお、物品3は、物品タグ5が保管棚構造体2の正面側を向くように棚2aに格納される。
【0017】
棚在庫管理システム1は、携帯型のRFID(無線)リーダライタ6と、このRFIDリーダライタ6と無線通信を行う無線装置7と、この無線装置7とネットワーク通信回線(LAN等)8及びネットワーク機器(HUB等)9を介して接続された上位サーバ10とを備えている。
【0018】
RFIDリーダライタ6は、保管棚構造体2に存在する物品3に貼付された物品タグ5の情報(物品ID)を無線通信により読み取ると共に、物品タグ5に情報を無線通信により書き込む装置である。
【0019】
RFIDリーダライタ6は、広範囲の読み取り(受信)が可能となっている。具体的には、RFIDリーダライタ6を手に持った作業者Sが保管棚構造体2に近づいたときに、RFIDリーダライタ6は、読取対象の棚2aに存在する物品3に貼付された物品タグ5の情報だけでなく、読取対象の棚2aから所定範囲内に位置する棚2a(ここでは、読取対象の棚2aに隣接する棚2a)に存在する物品3に貼付された物品タグ5の情報も幾つか読み取ることができる様になっている。
【0020】
RFIDリーダライタ6は、図3に示すように、タグ側送受信部11と、ネットワーク側送受信部12と、タッチパネル13と、ディスプレイ14と、制御部15とを有している。
【0021】
タグ側送受信部11は、タグ側アンテナ16を介して物品タグ5と無線によるデータ送受信を行う。ネットワーク側送受信部12は、ネットワーク側アンテナ17を介して無線装置7と無線によるデータ送受信を行う。タッチパネル13は、作業者Sが指でタグ読取開始やタグ読取終了等を指示入力する操作手段である。ディスプレイ14は、棚卸し結果等を表示する表示手段である。
【0022】
制御部15は、物品タグ5の物品IDをタグ側送受信部11を介して受信し、その物品IDをネットワーク側送受信部12を介して無線装置7に送信する。また、制御部15は、タッチパネル13によりタグ読取開始やタグ読取終了等が指示入力されたときに、その指示情報をネットワーク側送受信部12を介して無線装置7に送信する。さらに、制御部15は、上位サーバ10からの棚卸し結果等をネットワーク側送受信部12を介して受信し、その旨をディスプレイ14に表示させる。
【0023】
図1に戻り、無線装置7は、RFIDリーダライタ6から送信された物品ID及び指示情報を受信して、ネットワーク通信回線8及びネットワーク機器9を介して上位サーバ10に送出すると共に、上位サーバ10から送られた棚卸し結果等をRFIDリーダライタ6に送信する。
【0024】
上位サーバ10は、図4に示すように、通信制御部18と、演算・判定部19とを有している。通信制御部18は、ネットワーク機器9と演算・判定部19との間の通信を制御する。
【0025】
演算・判定部19は、在庫情報が登録された在庫管理データベース(以下、在庫管理DBという)20と接続されている。在庫情報は、物品タグ5に記録された物品IDと、この物品IDと紐付けされた情報とを含んでいる。物品IDと紐付けされた情報としては、物品タグ5が存在する棚2aのロケーション(位置関係)を表す棚ID(棚情報)や、物品タグ5が貼付されている物品(ケース)3内の商品に関する情報である商品ID等がある(図8参照)。なお、在庫管理DB20への在庫情報の登録は、保管棚構造体2に物品3が入庫された時点で行われる。
【0026】
演算・判定部19は、RFIDリーダライタ6により読み取った物品IDを取得し、所定の処理を行って現在読取中の棚2aを決定し、更に物品IDと在庫管理DB20に登録された在庫情報とを照合して棚卸し判定を行う。
【0027】
図5は、演算・判定部19により実行される棚卸し処理手順の詳細を示すフローチャートである。以下、同フローチャートを用いて、物品3の棚卸し作業を行う流れについて説明する。
【0028】
まず作業者Sは、図1に示すように、携帯型のRFIDリーダライタ6を手で持った状態で、保管棚構造体2の正面側に立ち、RFIDリーダライタ6のタッチパネル13によりタグ読取開始を指示入力する。そして、作業者Sは、RFIDリーダライタ6を棚2aの間口に向けたまま、例えば図2の破線で示すようにRFIDリーダライタ6を移動させることで、各棚2a毎に物品3に貼付された物品タグ5の物品IDを読み取りながら進んでいく。
【0029】
すると、RFIDリーダライタ6により読み取られた物品IDが無線装置7、ネットワーク通信回線8及びネットワーク機器9を介して上位サーバ10に送られる。このとき、読取対象の棚2a(RFIDリーダライタ6が向いている棚2a)とこれに隣接する複数の棚2aに格納された多数の物品タグ5の物品IDがRFIDリーダライタ6によって短時間内(例えば1秒以内)に読み取られる。
【0030】
RFIDリーダライタ6で読み取った物品タグ5の物品IDが上位サーバ10に送られると、上位サーバ10の演算・判定部19は、以下のような処理を実行する。
【0031】
即ち、図5において、まずRFIDリーダライタ6で読み取った物品IDを入力する(手順S101)。続いて、所定時間内(所定時間前から現在まで)に読み取った物品IDの読取回数をカウントする(手順S102)。
【0032】
このとき、通常は、読取対象の棚2aに存在する物品IDの読取回数が読取対象の棚2aに隣接する棚2aに存在する物品IDの読取回数よりも多くなる。所定時間内の物品IDの読取回数の一例を図6(a)に示す。この例では、読取対象の棚IDが「T021」(図2参照)である場合を表している。
【0033】
続いて、所定時間内の物品IDの読取回数から、所定時間内の物品IDの読取率を計算する(手順S103)。そして、棚ID毎に物品IDの読取回数の平均を計算し、この平均値から棚ID毎の物品IDの読取率を計算する(手順S104)。物品IDが属する棚IDについての情報は、在庫管理DB20が在庫情報として持っている。このため、物品IDを在庫情報と照合して、手順S104の処理を実行する。図6(a)に示す例では、棚ID毎の物品IDの読取率を計算すると、図6(b)に示すようになる。
【0034】
続いて、手順S104で得られた読取率が最大となる棚IDを選択する(手順S105)。図6(b)に示す例では、「T021」が選択される。
【0035】
続いて、在庫管理DB20に登録された在庫情報を用いて、手順S105で選択された読取率が最大となる棚IDと手順S104で得られた読取率が最大でない他の棚IDとの位置関係が正しいかどうかを判断する(手順S106)。具体的には、読取率が最大となる棚IDから一定エリア内(ここでは隣接1列以内)のみに読取率が最大でない他の棚IDが存在するかどうかを判断する。
【0036】
読取率が最大となる棚IDから一定エリア内のみに読取率が最大でない他の棚IDが存在すると判断されたときは、読取率が最大となる棚IDを現在読取中の棚IDと決定する(手順S107)。図6(b)に示す例では、読取率が最大でない「T020」,「T022」,「T031」は、読取率が最大である「T021」から隣接1列以内に存在するため、「T021」が読取中の棚IDと決定される。
【0037】
一方、読取率が最大となる棚IDから一定エリア外に読取率が最大でない他の棚IDが存在すると判断されたときは、読取率が最大となる棚IDの棚2aにロケーション間違いの物品3が含まれている可能性が高いことから、当該棚IDをエラー情報としてRFIDリーダライタ6に通知する(手順S108)。
【0038】
手順S107において読取中の棚IDが決定した後、棚卸し判定を実行する。具体的には、まずRFIDリーダライタ6で読み取った物品IDつまり手順S101で入力された物品IDと在庫管理DB20上の在庫情報とを照合する(手順S109)。
【0039】
そして、読み取った物品IDが属する棚IDが読取中の棚IDと一致するかどうかを判断し(手順S110)、読み取った物品IDが属する棚IDが読取中の棚IDと一致すると判断されたときは、物品IDに対応する物品3が格納されている棚2aが合っていると判定し、照合OKフラグ(図8参照)をONにする(手順S111)。
【0040】
一方、読み取った物品IDが属する棚IDが読取中の棚IDと一致しないと判断されたときは、読み取った物品IDが属する棚IDが読取中の棚IDに隣接する棚IDと一致するかどうかを引き続き判断する(手順S112)。読み取った物品IDが属する棚IDが読取中の棚IDに隣接する棚IDと一致すると判断されたときは、何もせずに次の処理に進む。
【0041】
読み取った物品IDが属する棚IDが読取中の棚IDに隣接する棚IDと一致しないと判断されたときは、物品IDに対応する物品3が格納されている棚2aが間違っているロケーションエラーであると判定し、当該物品IDをエラー情報としてRFIDリーダライタ6に通知する(手順S113)。
【0042】
ここで、保管棚構造体2の各棚2aの状態の一例を図7に示す。図7(a)は、在庫管理DB20上の各棚2aの状態の一例を示し、図7(b)は、実際の各棚2aの状態の一例を示している。
【0043】
在庫管理DB20上では、「A001」の物品3が「T021」の棚2aに存在し、「B001」の物品3が「T021」に隣接する「T020」の棚2aに存在し、「E005」の物品3が「T021」から3列離れた「T024」の棚2aに存在しているものとして登録されている。ところが、実際には、「A001」の物品3が「T021」の棚2aに格納され、「B001」の物品3が「T020」の棚2aに格納されているが、「E005」の物品3は、「T024」の棚2aではなく「T021」の棚2aに格納されている。このような事態は、例えばピッキング作業において物品3を棚2aから一旦取り出して戻す際に、誤って別の棚2aに入れてしまうことによって起こり得る。
【0044】
このとき、図8に示すように、現在読取中の棚IDが「T021」であるとすると、「A001」の物品3が属する「T021」は読取中の棚IDと一致するので、照合OKフラグをONにし(図5の手順S111参照)、次の物品IDの照合を行う。
【0045】
「B001」の物品3が属する「T020」は読取中の棚IDである「T021」と一致しないので、「T021」に隣接する棚IDと一致するかどうか照合する。「T020」は「T021」に隣接する棚IDであるため、何の処理もせずに、次の物品IDの照合を行う。
【0046】
「E005」の物品3が属する「T024」は読取中の棚IDである「T021」と一致しないので、「T021」に隣接する棚IDと一致するかどうか照合する。「T024」は「T021」に隣接する棚IDとも一致しないので、「E005」の物品3がロケーションエラーであると判定し、その物品3の物品IDをRFIDリーダライタ6に通知する(図5の手順S113参照)。
【0047】
保管棚構造体2に存在する全ての物品タグ5の物品IDの読み取りが終わると、作業者Sは、RFIDリーダライタ6のタッチパネル13によりタグ読取完了を指示入力する。すると、その旨の指示情報が無線装置7、ネットワーク通信回線8及びネットワーク機器9を介して上位サーバ10に送られる。
【0048】
図5に戻り、上位サーバ10の演算・判定部19では、タグ読取完了の指示情報の有無に基づいて棚卸しが完了したどうかを判断する(手順S114)。棚卸しが完了していないと判断されたときは、手順S101に戻り、上記の処理を繰り返し実行する。
【0049】
一方、棚卸しが完了したと判断されたときは、棚卸し結果をRFIDリーダライタ6に通知し、本フローを終了する(手順S115)。なお、手順S108,113におけるエラー情報の通知は、棚卸し結果の通知と一緒に行っても良い。
【0050】
RFIDリーダライタ6の制御部15は、上位サーバ10から受け取った棚卸し結果をディスプレイ14に表示させる。このとき、物品3の在庫数が合っていない棚2がある場合には、その棚IDとロケーション間違いのある物品IDとをディスプレイ14に表示させる。これにより、作業者Sは、在庫数不一致の棚2aを直ちにチェックすることができる。
【0051】
以上において、図5の手順S101〜S107は、タグ読取装置6による所定時間内の棚2a毎の情報読取率を求め、棚2a毎の情報読取率に基づいて読取中の棚2aを決定する棚決定手段を構成する。同手順S109〜S113は、タグ読取装置6により読み取った物品情報と記憶手段20に記憶された在庫情報とを照合して、読み取った物品情報を記録した物品タグ5が属する棚2aが棚決定手段により決定した読取中の棚2aに一致するかどうかを判断し、その判断結果に基づいて読み取った物品情報に対応する物品3のロケーションが正しいかどうかを判定する判定手段を構成する。
【0052】
以上のように本実施形態にあっては、保管棚構造体2の各棚2aに存在する物品タグ5の情報(物品ID)を携帯型のRFIDリーダライタ6で読み取り、所定時間内の物品IDの読取回数をカウントして棚ID毎の物品情報読取率を計算し、その棚ID毎の物品情報読取率から読取中の棚IDを決定する。そして、RFIDリーダライタ6で読み取った物品IDと在庫管理DB20上の在庫情報とを照合して、物品3の棚卸し判定を行う。これにより、各棚2aにRFIDリーダライタ6を設置して棚卸しを行う従来のシステムに比べ、初期導入コストを削減することができる。
【0053】
このとき、RFIDリーダライタ6で読み取った物品IDの属する棚IDが読取中の棚IDまたは読取中の棚IDに隣接する棚IDに一致するかどうかを判断し、読み取った物品IDの属する棚IDが読取中の棚IDに一致するときは、当該物品IDに対応する物品3が格納される棚2aのロケーションが正しいと判定され、読み取った物品IDの属する棚IDが読取中の棚ID及びこれに隣接する棚IDの何れにも一致しないときは、当該物品IDに対応する物品3が格納される棚2aのロケーションが正しくないと判定される。これにより、物品3の在庫数が合っているかどうかの把握だけでなく、物品3が格納される棚2aのロケーション間違いの把握も確実に行うことができる。
【0054】
次に、本発明に係わる棚在庫管理システムの他の実施形態について説明する。図中、上述した実施形態と同一または同等の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
本実施形態では、図9に示すように、保管棚構造体2の各棚2aの間口に、棚2aのロケーションとして棚ID(棚情報)を記録した棚RFIDタグ(以下、単に棚タグという)21が取り付けられている。棚タグ21は、各棚2aの下部の正面に貼付されている。なお、棚タグ21の貼付箇所としては、該当する棚2aの位置を容易に把握できるのであれば、例えば棚2aの上部や側部、或いは棚2aに配置されたパレット4であっても良い。
【0056】
本実施形態の棚在庫管理システム1の全体構成は、上述した実施形態と同様である(図1参照)。つまり、本実施形態の棚在庫管理システム1は、携帯型のRFIDリーダライタ6、無線装置7及び上位サーバ10等を備えている。RFIDリーダライタ6は、棚タグ21の情報(棚ID)及び物品タグ5の情報(物品ID)を読み取り、それらの情報を無線装置7を介して上位サーバ10に送出する。
【0057】
図10は、本実施形態において上位サーバ10の演算・判定部19により実行される棚卸し処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【0058】
同図において、まずRFIDリーダライタ6で読み取った棚ID及び物品IDを入力する(手順S121)。続いて、所定時間内(所定時間前から現在まで)に読み取った棚IDの読取回数をカウントする(手順S122)。
【0059】
このとき、通常は、読取対象の棚IDの読取回数が読取対象の棚IDに隣接する棚IDの読取回数よりも多くなる。所定時間内の棚IDの読取回数の一例を図11に示す。この例では、読取対象の棚IDが「T021」である場合を表している。
【0060】
続いて、所定時間内の棚IDの読取回数から、所定時間内の棚ID毎の読取率を計算する(手順S123)。そして、読取率が最大となる棚IDを現在読取中の棚IDに決定する(手順S124)。図11に示す例では、「T021」の読取率が最大となるため、「T021」が読取中の棚IDとなる。
【0061】
続いて、RFIDリーダライタ6で読み取った物品IDつまり手順S121で入力された物品IDと在庫管理DB20上の在庫情報とを照合する(手順S125)。その後の処理については、図5に示すフローチャートと同様である。
【0062】
以上において、図10の手順S121〜S124は、タグ読取装置6による所定時間内の棚2a毎の情報読取率を求め、棚2a毎の情報読取率に基づいて読取中の棚2aを決定する棚決定手段を構成する。同手順S125,S110〜S113は、タグ読取装置6により読み取った物品情報と記憶手段20に記憶された在庫情報とを照合して、読み取った物品情報を記録した物品タグ5が属する棚2aが棚決定手段により決定した読取中の棚2aに一致するかどうかを判断し、その判断結果に基づいて読み取った物品情報に対応する物品3のロケーションが正しいかどうかを判定する判定手段を構成する。
【0063】
以上のように本実施形態においては、保管棚構造体2の各棚2aに棚タグ21を取り付け、棚タグ21の情報(棚ID)を携帯型のRFIDリーダライタ6で読み取り、所定時間内の棚IDの読取回数をカウントして棚ID毎の棚情報読取率を計算し、その棚ID毎の棚情報読取率から読取中の棚IDを決定し、その読取中の棚IDを用いて物品3の棚卸し判定を行うので、上述した実施形態と同様に、初期導入コストを削減しつつ、物品3の在庫数及び物品3が格納される棚2aのロケーション間違いの把握を行うことができる。
【0064】
また、本実施形態では、RFIDリーダライタ6で読み取った物品タグ5を在庫管理DB20上の在庫情報と照合して棚IDを取得するのではなく、RFIDリーダライタ6により棚タグ21から棚IDを直接読み取って取得する。また、この場合には、現在読取中の棚IDを決定する際に、物品タグ5のようなロケーション間違いの影響を受けることが無いため、読取率が最大となる棚IDと他の棚IDとの位置関係の照合が不要となる。従って、上位サーバ10の演算・判定部19において現在読取中の棚IDを決定する処理を簡素化することができる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、図5及び図10に示す処理を上位サーバ10で行っているが、RFIDリーダライタ6で行うようにしても良い。この場合、物品タグ5の物品IDを在庫管理DB20上の在庫情報と照合する際には、例えばRFIDリーダライタ6で読み取った物品IDを上位サーバ10に送出し、その時に上位サーバ10が当該物品IDに対応する棚IDを在庫管理DB20から受け取ってRFIDリーダライタ6に送出すれば良い。
【0066】
また、上記実施形態では、無線タグに対してタグ情報の読み取り及び書き込みが可能なRFIDリーダライタ6を用いたが、タグ情報読み取り専用の携帯型リーダ(タグ読取装置)を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係わる棚在庫管理システムの一実施形態の全体構成を示すシステム構成図である。
【図2】図1に示した保管棚構造体の概略正面図である。
【図3】図1に示したRFIDリーダライタの機能ブロック図である。
【図4】図1に示した上位サーバの機能ブロック図である。
【図5】図4に示した演算・判定部により実行される棚卸し処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図6】図5に示した所定時間内の棚ID毎の読取率計算処理の一例を示す表である。
【図7】保管棚構造体の各棚の状態の一例を示す概略正面図である。
【図8】図5に示した棚卸し判定処理の一例を示す表である。
【図9】本発明に係わる棚在庫管理システムの他の実施形態が適用される保管棚構造体の概略正面図である。
【図10】本発明に係わる棚在庫管理システムの他の実施形態において演算・判定部により実行される棚卸し処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図11】図10に示した所定時間内の棚ID毎の読取率計算処理の一例を示す表である。
【符号の説明】
【0068】
1…棚在庫管理システム、2a…棚、3…物品、5…物品タグ、6…RFIDリーダライタ(タグ読取装置)、10…上位サーバ、19…演算・判定部(棚決定手段、判定手段)、20…在庫管理データベース(記憶手段)、21…棚タグ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の棚に保管された物品の在庫管理を行う棚在庫管理システムにおいて、
前記物品に取り付けられ、当該物品に関する物品情報が記録された物品タグと、
前記物品タグに記録された物品情報を無線通信により読み取るタグ読取装置と、
前記物品タグに記録された物品情報と前記物品タグが属する前記棚に関する棚情報とを含む在庫情報を記憶する記憶手段と、
前記タグ読取装置による所定時間内の前記棚毎の情報読取率を求め、前記棚毎の情報読取率に基づいて読取中の棚を決定する棚決定手段と、
前記タグ読取装置により読み取った物品情報と前記記憶手段に記憶された在庫情報とを照合して、前記読み取った物品情報を記録した物品タグが属する棚が前記棚決定手段により決定した前記読取中の棚に一致するかどうかを判断し、その判断結果に基づいて前記読み取った物品情報に対応する物品のロケーションが正しいかどうかを判定する判定手段とを備えることを特徴とする棚在庫管理システム。
【請求項2】
前記各棚に取り付けられ、前記棚情報が記録された棚タグを更に備え、
前記棚決定手段は、前記タグ読取装置による所定時間内の棚情報の読取回数をカウントし、前記棚情報の読取回数に基づいて前記棚毎の情報読取率を求めることを特徴とする請求項1記載の棚在庫管理システム。
【請求項3】
前記棚決定手段は、前記タグ読取装置による所定時間内の物品情報の読取回数をカウントし、前記物品情報の読取回数に基づいて前記棚毎の情報読取率を求めることを特徴とする請求項1記載の棚在庫管理システム。
【請求項4】
前記判定手段は、前記タグ読取装置により読み取った物品情報と前記記憶手段に記憶された在庫情報とを照合して、前記読み取った物品情報を記録した物品タグが属する棚が前記読取中の棚または前記読取中の棚から所定エリア内に存在する棚に一致するかどうかを判断し、
前記読み取った物品情報を記録した物品タグが属する棚が前記読取中の棚に一致すると判断されたときは、前記読み取った物品情報に対応する物品のロケーションが正しいと判定し、
前記読み取った物品情報を記録した物品タグが属する棚が前記読取中の棚及び前記読取中の棚から所定エリア内に存在する棚の何れにも一致しないと判断されたときは、前記読み取った物品情報に対応する物品のロケーションが正しくないと判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の棚在庫管理システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−37104(P2010−37104A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205703(P2008−205703)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】