説明

棺用畳

【課題】
畳床を1枚又は複数枚のインシュレーションボードで1.5cm以上の厚みにすると火葬の際の燃焼時間がかかってしまうという課題や、軽くて燃焼性の良い材料のみで製作した畳では、強度はなく、簡易的なもので、大切な肉親や親類又は友人と最期のお別れをする際に使用するものとしては安っぽく感じられてしまうという課題を有していた。
【解決手段】
畳床は、1枚又は複数のインシュレーションボードを使用し、燃焼性向上のために敷き込んだ状態で鉛直方向に畳床を貫通する複数の穴を全面に設けたり、1枚又は複数枚のダンボールとインシュレーションボードを接着剤やテープによって固定して一体の畳床に構成したり、ダンボールとインシュレーションボードを接着剤やテープによって固定して一体の畳床としたインシュレーションボードには、燃焼性向上のために敷き込んだ状態で鉛直方向に畳床を貫通する複数の穴を全面に設けて燃焼性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棺桶内に敷き込む畳に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より棺桶内に敷き込む畳が知られている。特許文献1に示す葬儀用畳は、燃焼性が良く、燃焼後の灰も少なくそして、亡くなった人が生前好きであった香りに包まれるようにした構成のものが知られている。そして畳の構造は、畳表と畳床と畳縁からなり、畳床は、燃焼性を考慮して、インシュレーションボード、木製、紙製、不織布等を使用したり、これらの素材を適宜組み合わせた畳床としても良いことが記載され、畳表や畳縁は畳床に燃焼性の良い紙製のテープや両面テープで固定される構成のものである。
【0003】
特許文献2に示す棺桶用畳は、軽くて燃焼性が良く、しかも安価に製造が可能なもとのして提案されたものであり、各ハニカム孔が縦方向を向いて上下に厚紙板を備える紙製のハニカム構造部材と、ハニカム構造部材の表面側を直接覆い、しかもその長手方向端部は折り返して裏面側まで延設された畳表と、ハニカム構造部材を覆った畳表の両端部、並びにハニカム構造部材の両側部及びその裏面側端部を覆う有色又は黒色の縁シート材で構成されたものが知られている。
そして又、特許文献3に示す棺用中敷畳のように、厚さ3mm以内のダンボール材を2枚重ねして畳本体の厚さを1cm以内として、薄くするとともに、軽量化をはかり、かつ火葬の際に短時間で完全燃焼し、有毒ガスを発生しない構成のものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−232121号公報
【特許文献2】特開平11−22161号公報
【特許文献3】実用新案登録第3074630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように種々の棺内に敷き込む畳の提案がなされているが、改善するべき課題を有してもいたのである。特許文献1の畳においては、素材の組合せは適宜とされているものの、亡くなった方との最後のお別れをするにあたって、自宅の畳と同じような畳としたいという要望がある場合が、畳床を1枚又は複数枚のインシュレーションボードで5〜6cm程度の厚みにすると火葬の際の燃焼時間がかかってしまうという課題を有していた。そして、インシュレーションボードの厚みが1.5cm以上になると燃焼時間や燃焼性について問題となる場合があったのである。
【0006】
また、インシュレーションボードを使用した場合には、畳表を従来家屋に敷き込む畳同様に畳表を強いテンションをかけて張った状態で畳床であるインシュレーションボードにステープル打ちにて固定することができるが、紙製や不織布製の畳床では畳表を強いテンションをかけて張った状態では固定できないため、両面テープ等の貼り付け手段を用いて固定しなければならず、通常知られている畳を製造する設備以外の製造工程を取らなければならなかった。
【0007】
特許文献2や特許文献3の畳においては、軽くて燃焼性については非常に良いものではあるが、特に特許文献3のものでは、畳というには畳床に強度はなく、簡易的なもので、大切な肉親や親類又は友人と最期のお別れをする際に使用するものとしては安っぽく感じられてしまっていた。また、特許文献1同様に畳表の固定についても畳表を強いテンションをかけて張った状態にはできないという課題を有してもいた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1は、棺内に敷き込むための畳であって、畳表は畳の框を巻くようにして畳長手方向において畳床の裏面まで配し、畳縁は畳表又は畳床に縫着して取り付けられ、畳床は、1枚又は複数のインシュレーションボードを使用し、燃焼性向上のために敷き込んだ状態で鉛直方向に畳床を貫通する複数の穴を全面になされていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2は、棺内に敷き込むための畳であって、畳表は畳の框を巻くようにして畳長手方向において畳床の裏面まで配し、畳縁は畳表又は畳床に縫着して取り付けられ、畳床は、1枚又は複数枚のダンボールとインシュレーションボードを接着剤やテープによって固定して一体の畳床とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3は畳床に使用した上記インシュレーションボードには、燃焼性向上のために敷き込んだ状態で鉛直方向に畳床を貫通する複数の穴を全面になされていることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4は、上記インシュレーションボードに設けられた鉛直方向に畳床を貫通する穴は、所定の大きさかつ所定の穴間隔で設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項5は、上記インシュレーションボードに設けられた鉛直方向に畳床を貫通する穴は、畳の長さ方向に所定間隔で列を形成し、その隣接する列は穴の設けられているピッチが1/2ずれて配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項6は、上記インシュレーションボードに設けられた鉛直方向に畳床を貫通する穴は、中央部が畳の幅方向端部の穴よりも大きく設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、畳床を構成するインシュレーションボードに、敷き込んだ状態で鉛直方向に畳床を貫通する複数の穴を全面に設けているため厚みの厚い畳である場合においても棺用畳を提供することができ、かつ、亡くなった方との最後の別れをする際に使用する畳として従来家屋に敷き込む畳とほぼ同様の高品質の畳として提供することができる。
【0015】
また、厚い畳とする場合などでは、畳床の上層をダンボールとして提供し、穴を設けていない状態の棺用畳として提供することで、穴開け加工をせずに生産性を高めることができ、かつダンボールを使用することで燃焼性を向上させることができる。
【0016】
また、ダンボールとインシュレーションボードで畳床を構成した場合に、インシュレーションボードに敷き込んだ状態で鉛直方向に畳床を貫通する複数の穴を全面に設けているため、さらに燃焼性を向上させることができる。
【0017】
鉛直方向に畳床を貫通する穴は、所定の大きさかつ所定の穴間隔で設けることにより均等に燃焼できる棺用畳の提供ができる。
【0018】
鉛直方向に畳床を貫通する穴は、畳の長さ方向に所定間隔で列を形成し、その隣接する列は穴の設けられているピッチが1/2ずれて配置することにより、畳床が折れにくくなり、強度を向上させることが可能となる。
【0019】
鉛直方向に畳床を貫通する穴を、中央部が畳の幅方向端部の穴よりも大きく設けることにより、中央部の燃焼を向上させ同径の穴のみの場合よりも燃焼時間の短縮をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態について説明する。まず第1の実施形態を図1に示す。 図1の畳は、インシュレーションボードを畳床2として使用し、畳表1と畳縁3を従来家屋に敷き込む際と同様の製造方法にて縫着したものである。図1に示すように畳床2には燃焼しやすいように多数の穴4を所定ピッチで畳床2の全面に設けている。穴の大きさと穴を設けるピッチは例えば50〜100mmピッチで穴径は10〜30mmとしている。
【0021】
もちろん穴の径やピッチは製作する畳の厚みによって変更してもよく、また、穴の径も列によって変更するようにしてもよい。しかし、機械加工で穴開け加工をすることが生産性の面からも効率的であるため、畳の長手方向の列に対して穴の径やピッチをそろえた状態とすることが望ましい。そして畳の厚みも家屋に敷き込む畳と同等の厚みとしても、穴加工によって燃焼の際に空気の流れが発生し、穴部分からも燃焼するため、穴加工していない状態よりも短時間で燃焼できる畳を提供することができる。
【0022】
畳の幅は、棺のほぼ内寸程度の寸法で、長さ方向については、棺の長さ方向の内寸としたり、又棺の長さ方向の内寸の1/2や1/3と分割し、保管や運搬の際に便利な畳の長さとしてもよい。
【0023】
また、図2に示すように、畳床2への穴加工は、隣接する穴列が1/2ピッチずれた状態で畳の強度を保つような穴列としても良い。この場合においても、長さ方向の1列毎の穴径を変更してもよい。特に燃焼性のことを考慮するならば、中心付近の長さ方向の穴列の穴径を端部付近の穴列よりも大きくしておいた方が望ましい。穴径については特に本発明を限定するものではないが、例示をすれば、穴径は10〜30mm程度の穴を適宜30〜100mmピッチで設けることが望ましい。
【0024】
またさらに、上記の実施形態の場合、畳縁3を縫着する部分の畳床2には穴4の加工はしていない状態とすることは言うまでもない。また、畳縁3の取付けについては、畳表に綿糸や燃焼の際に有毒ガスを発生させない樹脂製の糸等の縫着糸で縫い付けた状態として畳に製造するようにしても良い。何年間も人がその上で生活したりするような使用をしないために畳表1へ畳縁3を縫着しても十分強度は持つのである。
【0025】
次に第2の実施形態を図3に示す。図3の畳は、畳床2の上層はダンボール2aで下層をインシュレーションボード2bで構成した畳床としている。インシュレーションボード2bに対しては上記第1の実施形態で説明した穴4を設けている。穴4については第1の実施形態で説明したことをそのまま第2の実施形態でも用いることができる。
【0026】
畳床2の上層にダンボール2aを入れているために、同じ厚みの畳とした場合に第2の実施形態の方が燃焼しやすく、また軽量である。ただ、畳床2の上層がダンボールであるために、第1の実施形態と同じように畳表1をかなりテンションをかけた状態で張り付けると、ダンボールの上面の角が丸く変形してしまうことになるため、畳表は張るテンションは第1の実施形態よりは低い状態での畳表1の固定となる。
【0027】
上層に設置するダンボール板を複数枚貼り付けて2aとしても良い。燃焼時間の調整としてダンボール2aの寸法をいくらにするかを適宜設計すればよいのである。
【0028】
次に第3の実施形態を図4に示す。 図3と同様に畳床2は上層にダンボール2a、下層にインシュレーションボード2bを設置しているが、インシュレーションボード2bには穴加工をしていない実施形態である。
【0029】
畳表をある程度テンションをかけた状態で固定するためにはインシュレーションボード2bの厚みは最低でも5mm程度あれば良く、畳床2の厚みは上層のダンボールの厚みは5〜15mm程度で、強度を持たせるために畳の厚みを厚くする場合においては、ダンボール2bの板を適宜複数枚を貼り付けする等で構成すると良い。もちろん、ダンボールとインシュレーションボードをそれぞれ1枚づつ使用して薄畳として提供するようにしても良いのである。
【0030】
また、畳縁3の縫着も畳表1に縫着して畳床2に固定する方法を採用することが望ましい。というのも、よく知られている畳縁3を畳床へ縫着する平刺加工では糸締めのテンションが大きいため、上層のダンボールを破ってしまうことになるため、弱い糸締めで縫着できるミシンを使用しなければならないため、畳表1へ畳縁3を綿糸で縫着するようにした方が生産性が良い。
【0031】
以上第1から第3の実施形態まで説明したが、畳表1は畳床2の裏面まで畳の框部分を巻いて配置し、畳床2の裏面でタッカー止めすることを基本としている。そしてタッカーは金属性のものを使用してもよいし、燃焼時に有毒ガスを発生させない樹脂製のタッカーを使用しても良い。金属製のものを使用しても、燃焼後、腐食によって錆びるために環境的にも特に問題とはならない。

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態を説明する図である。
【図2】畳床に設けた穴列を説明する図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を説明する図である。
【図4】本発明の第3の実施形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
1 畳表
2 畳床
3 畳縁
4 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棺内に敷き込むための畳であって、
畳表は畳の框を巻くようにして畳長手方向において畳床の裏面まで配し、
畳縁は畳表又は畳床に縫着して取り付けられ、
畳床は、1枚又は複数のインシュレーションボードを使用し、燃焼性向上のために敷き込んだ状態で鉛直方向に畳床を貫通する複数の穴を全面になされていることを特徴とする棺用畳。
【請求項2】
棺内に敷き込むための畳であって、
畳表は畳の框を巻くようにして畳長手方向において畳床の裏面まで配し、
畳縁は畳表又は畳床に縫着して取り付けられ、
畳床は、1枚又は複数枚のダンボールとインシュレーションボードを接着剤やテープによって固定して一体の畳床とされていることを特徴とする棺用畳。
【請求項3】
畳床に使用した上記インシュレーションボードには、燃焼性向上のために敷き込んだ状態で鉛直方向に畳床を貫通する複数の穴を全面になされていることを特徴とする請求項2記載の棺用畳。
【請求項4】
上記インシュレーションボードに設けられた鉛直方向に畳床を貫通する穴は、所定の大きさかつ所定の穴間隔で設けられていることを特徴とする請求項3記載の棺用畳。
【請求項5】
上記インシュレーションボードに設けられた鉛直方向に畳床を貫通する穴は、畳の長さ方向に所定間隔で列を形成し、その隣接する列は穴の設けられているピッチが1/2ずれて配置されていることを特徴とする請求項3記載の棺用畳。
【請求項6】
上記インシュレーションボードに設けられた鉛直方向に畳床を貫通する穴は、中央部が畳の幅方向端部の穴よりも大きく設けられていることを特徴とする請求項3又は4のいずれかに記載の棺用畳。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−80309(P2011−80309A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234956(P2009−234956)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000163121)極東産機株式会社 (68)
【Fターム(参考)】