説明

椅子

【課題】 簡易な構造としながら目的とする着座者の部位を効率的に振動させる。
【解決手段】 着座者の身体を受け支える弾性を有するサポート面を形成する面形成部材と、この面形成部材の周縁の全部または一部を保持してサポート面を維持する支持フレーム4とを備える椅子において、サポート面の反対側に位置して又はサポート面の一部となって、身体の一部の部位を支持する特定部位サポート部5と、特定部位サポート部5に固定された振動体9とを更に備え、特定部位サポート部5は防振機能を有する連結部7のみを介して支持フレーム4に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。さらに詳述すると、本発明は、痛みの緩和、疲労回復、血行改善などのマッサージ効果やリラクゼーション効果を得るための振動体を備えた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図19に示される健康増進具が開示されている。この健康増進具は、シート体102の少なくとも一面に振動装置103が具備されており、シート体102の周縁部にはシート体102を張設可能な弾性部材としてコイルバネ105が設けられており、弾性部材105の端部は椅子の背凭れなどに連結するための連結部106が設けられている。
【0003】
また、特許文献2には、図20,図21に示される乗用車等の車両シートが開示されている。この車両シートは、シートバック内に埋設された上フレーム130および下フレーム140と、上フレーム130に支持された外側フォームドワイヤ150と、上端が外側フォームドワイヤ150と共に上フレーム130に支持されていて下端が外側フォームドワイヤ150に結合されたS字状ばね107と、S字状ばね107の一部であり下部側が下フレーム140に固定されるジグザグ状部107aと、S字状ばね107のジグザグ状部107aの上部側が固定された内側フォームドワイヤ110と、上端部が外側フォームドワイヤ150に支持されたプレート部材112と、プレート部材112との間に内側フォームドワイヤ110を挟持するようにしてプレート部材112に取り付けられたバイブレータ113と、プレート部材112の下部に連結されたトーションバー117と、背凭れ面を形成するパッド120を備えている。この車両シートでは、モータによりトーションバー117を回動させることにより、S字状ばね107のジグザグ状部107aを伸縮させながらプレート部材112の下部を前後動させ、バイブレータ113の振動によるマッサージ機能と乗員の腰部を支持するランバーサポート機能の双方を実現するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−65794号
【特許文献2】実用新案登録第2578214号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の健康増進具は、既存の椅子にマッサージ機能を後から取り付ける装置であり、このような後付けの装置では、振動装置103の振動が背凭れの広い範囲に伝わってしまうため、着座者の特定の部位(例えば腰部)だけを集中的にマッサージすることが難しい。換言すれば、振動させる必要のない部位や部材等にまで振動が伝達されてしまうため損失が大きく、目的とする部位への振動の伝達効率が極めて悪い。さらに、背凭れの厚さや材質などによっては、着座者の背が接する背凭れ面まで振動装置103の振動が伝わらず、マッサージ効果やリラクゼーション効果が得られない場合もある。また、着座者の背部や腰部などの体形は様々であるが、着座者毎の体形の違いに対応できない。
【0006】
また、特許文献2の車両シートでは、バイブレータ113が取り付けられたプレート部材112が、内側フォームドワイヤ110、外側フォームドワイヤ150、S字状ばね107といった多数の部材を介してフレーム130,140に支持されており、部品点数が多く、構造が極めて複雑である。また、バイブレータ113とプレート部材112との間に内側フォームドワイヤ110が挟持されており、さらにプレート部材112にはモータに繋がるトーションバー117が接続されており、バイブレータ113の振動が内側フォームドワイヤ110やトーションバー117等を介して他部材に伝達されてしまい易い。このため、振動させる必要のない部位や部材等にまで振動が伝達されてしまうため損失が大きく、目的とする部位への振動の伝達効率が悪くなる。また、プレート部材112とフレーム130,140との間に設けられている複数のワイヤ110,150やS字状ばね107が、身体に接触して利用者に硬い異物が身体に接触している違和感・不快感を与えることを防ぐために、パッド120に厚手の物を用いる必要がある。このため、バイブレータ113の振動が利用者の身体まで充分に伝わらず、充分なマッサージ効果やリラクゼーション効果が得られない場合もある。
【0007】
そこで本発明は、簡易な構造でありながら目的とする着座者の部位を効率的に振動させることができる振動体を備えた椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、着座者の身体を受け支える弾性を有するサポート面を形成する面形成部材と、この面形成部材の周縁の全部または一部を保持して前記サポート面を維持する支持フレームとを備える椅子において、前記サポート面の反対側に位置して又は前記サポート面の一部となって、前記身体の一部の部位を支持する特定部位サポート部と、前記特定部位サポート部に固定された振動体とを備え、前記特定部位サポート部は防振機能を有する連結部のみを介して前記支持フレームに固定されるようにしている。
【0009】
したがって、支持フレームと特定部位サポート部がサポート面を形成するための心材として機能し、他に心材となる部材はなく、且つ特定部位サポート部は連結部のみを介して支持フレームに取り付けられているので、連結部以外に特定部位サポート部と支持フレームとを接続する剛体(椅子の使用中に通常作用し得る外力では変形することのない剛性の部材)は存在しない。このため、特定部位サポート部の振動が支持フレームに伝達され難い構造となる。従って、簡易な構造でありながら、振動体の振動を、着座者の特定の部位(例えば腰部)を支持している特定部位サポート部を介して、当該特定部位(例えば腰部)へと確実かつ良好に伝達することができ、痛みの緩和、疲労回復、血行改善などの高いマッサージ効果やリラクゼーション効果を得ることができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の椅子において、前記支持フレームと前記特定部位サポート部とはそれぞれ別部材として形成され、前記特定部位サポート部と前記支持フレームとを接続する前記連結部には防振材が設けられている。
【0011】
この場合、振動体が取り付けられている特定部位サポート部と、支持フレームとはそれぞれ別部材であるため、さらに特定部位サポート部の振動が支持フレームに伝達され難い構造となる。加えて、連結部には防振材が設けられているので、特定部位サポート部の振動エネルギーが防振材に吸収され、特定部位サポート部から支持フレームへの振動伝達がより確実に遮断される。従って、振動体の振動によって特定部位サポート部だけが良好に振動し、支持フレームは殆ど振動しない。また、防振材により振動音も抑制され、静音効果も得られる。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の椅子において、前記特定部位サポート部は前記支持フレームよりも柔軟性の高い材料で形成されるものとしている。この場合、特定部位サポート部は、着座者の体型や荷重の程度に合わせて適宜弾性変形をして、着座者の身体にフィットする。従って、振動体の振動が、着座者の身体に良好にフィットしている特定部位サポート部を介して伝わるので、着座者の特定部位に対して確実かつ良好に振動を伝達することができ、痛みの緩和、疲労回復、血行改善などの高いマッサージ効果やリラクゼーション効果を得ることができる。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1つに記載の椅子において、前記特定部位サポート部の前記支持フレームに対する位置を調整可能であるものとしている。したがって、着座者の体型に合わせて、或いは着座者がマッサージを所望する部位に合わせて、特定部位サポート部の位置を変更調整できる。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、請求項1記載の椅子において、前記支持フレームと前記特定部位サポート部とは一体に形成され、前記連結部またはその近傍にスリットが形成されるようにしている。この場合、特定部位サポート部から支持フレームに向かう振動伝達経路の断面積が小さくなり、且つ支持フレームへの振動伝達はスリットを迂回しなければならなくなる。これにより、特定部位サポート部の振動が支持フレームへ伝わり難くなり、特定部位サポート部から支持フレームへの振動伝達を抑制できる。また、支持フレームと特定部位サポート部とを一体成形品とすることで、背インナーシェルの構成が簡素化され、その製作が容易となり、椅子の製造工程の短縮や部品点数の削減の効果も得られる。
【0015】
また、請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか1つに記載の椅子において、前記特定部位サポート部は前記支持フレームに対して傾動可能であるものとしている。この場合、特定部位サポート部は、着座者の体型や荷重の程度に合わせて適宜傾動をして、着座者の身体にフィットする。従って、振動体の振動が、着座者の身体に良好にフィットしている特定部位サポート部を介して伝わるので、着座者の特定部位に対して確実かつ良好に振動を伝達することができ、痛みの緩和、疲労回復、血行改善などの高いマッサージ効果やリラクゼーション効果を得ることができる。
【0016】
また、請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか1つに記載の椅子において、前記面形成部材は、前記支持フレームを包む張り地であるようにしている。この場合、簡易にサポート面を形成することができる。
【0017】
また、請求項8記載の発明は、請求項7記載の椅子において、前記特定部位サポート部と前記面形成部材との間または前記支持フレームと前記面形成部材との間の少なくとも一方に、クッション材を介在させている。この場合、支持フレームや特定部位サポート部が、張り地のみを介して身体に当たる場合と比較して、着座者により柔らかなサポート面への接触感を与え、使い心地を良好にできる。
【0018】
また、請求項9記載の発明は、請求項1記載の椅子において、前記連結部はその周縁の全部または一部が前記支持フレームに保持されて弾性を有する膜部材であり、前記特定部位サポート部は前記膜部材にインサート成形されたものであるものとしている。
【0019】
この場合、特定部位サポート部と支持フレームとの間に位置する弾性を備えた膜部材が、特定部位サポート部の振動を吸収し、特定部位サポート部から支持フレームへの振動伝達を遮断して、且つ振動音の発生を抑制する。従って、振動体の振動が支持フレームに伝達して逃げてしまうことを抑制できると共に振動音の発生を抑制できる。
【0020】
また、請求項10記載の発明は、請求項9記載の椅子において、前記膜部材と前記特定部位サポート部とで前記サポート面を形成し、前記膜部材が前記面形成部材として機能するようにしている。この場合、クッション材等を省略して、簡易にサポート面を形成できる。
【0021】
また、請求項11記載の発明は、請求項1から10のいずれか1つに記載の椅子において、前記特定部位サポート部は、着座者の腰部を支持するランバーサポートであるようにしている。この場合、着座者の腰部を良好にマッサージできる。
【発明の効果】
【0022】
しかして請求項1記載の椅子によれば、簡易な構造でありながら、振動体の振動が支持フレームに伝達して逃げてしまうことを抑制できると共に振動音の発生を抑制できる。これにより、着座者の特定の部位(例えば腰部)に対してのみ集中的に振動を伝達することができ、痛みの緩和、疲労回復、血行改善などの高いマッサージ効果やリラクゼーション効果を得ることができる。着座者の身体への振動効率が高まるので、振動体の振動の強さを従来と同等にすれば身体には従来よりも強い振動を与えられると共に、身体に与える振動を従来と同等にすれば振動体の消費電力を従来よりも小さくすることができる。
【0023】
さらに、請求項2記載の椅子によれば、支持フレームと特定部位サポート部とが別部材として形成され、連結部には防振材が設けられているので、特定部位サポート部から支持フレームへの振動伝達がより確実に遮断される。
【0024】
さらに、請求項3記載の椅子によれば、特定部位サポート部は支持フレームよりも柔軟性の高い材料で形成されるので、特定部位サポート部が着座者の体型や荷重の程度に合わせて適宜弾性変形して着座者の身体にフィットする。振動体の振動が、着座者の身体に良好にフィットしている特定部位サポート部を介して伝わるので、着座者の特定部位に対して確実かつ良好に振動を伝達することができ、痛みの緩和、疲労回復、血行改善などの高いマッサージ効果やリラクゼーション効果を得ることができる。
【0025】
さらに、請求項4記載の椅子によれば、特定部位サポート部の支持フレームに対する位置を調整可能としているので、着座者の体型に合わせて、或いは着座者がマッサージを所望する部位に合わせて、特定部位サポート部の位置を適宜変更調整できる。
【0026】
さらに、請求項5記載の椅子によれば、支持フレームと特定部位サポート部とは一体に形成され、連結部またはその近傍にスリットが形成されるので、振動体の振動が支持フレームに伝達して逃げてしまうことを抑制でき、尚且つ支持フレームと特定部位サポート部とを一体成形品とすることで、背インナーシェルの構成が簡素化され、その製作が容易となり、椅子の製造工程の短縮や部品点数の削減の効果も得られる。
【0027】
さらに、請求項6記載の椅子によれば、特定部位サポート部は支持フレームに対して傾動可能であるので、特定部位サポート部は着座者の体型や荷重の程度に合わせて適宜傾動して着座者の身体にフィットする。振動体の振動が、着座者の身体に良好にフィットしている特定部位サポート部を介して伝わるので、着座者の特定部位に対して確実かつ良好に振動を伝達することができ、痛みの緩和、疲労回復、血行改善などの高いマッサージ効果やリラクゼーション効果を得ることができる。
【0028】
さらに、請求項7記載の椅子によれば、面形成部材は支持フレームを包む張り地としているので、簡易にサポート面を形成することができる。
【0029】
さらに、請求項8記載の椅子によれば、支持フレームや特定部位サポート部が、張り地のみを介して身体に当たる場合と比較して、クッション材により着座者により柔らかなサポート面への接触感を与え、使い心地を良好にできる。
【0030】
さらに、請求項9記載の椅子によれば、特定部位サポート部と支持フレームとの間に位置する弾性を備えた膜部材が、特定部位サポート部の振動を吸収し、特定部位サポート部から支持フレームへの振動伝達を遮断して、且つ振動音の発生を抑制する。従って、振動体の振動が支持フレームに伝達して逃げてしまうことを抑制できると共に振動音の発生を抑制できる。
【0031】
さらに、請求項10記載の椅子によれば、クッション材等を省略して、簡易にサポート面を形成できる。
【0032】
さらに、請求項11記載の椅子によれば、特定部位サポート部は、着座者の腰部を支持するランバーサポートとしているので、着座者の腰部を良好にマッサージできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0034】
図1から図7に本発明の椅子の実施の一形態を示す。この椅子は、着座者の身体を受け支える弾性を有するサポート面3aを形成する面形成部材3と、この面形成部材3の周縁の全部または一部を保持してサポート面3aを維持する支持フレーム4とを備えており、サポート面3aの反対側に位置して又はサポート面3aの一部となって、身体の一部の部位を支持する特定部位サポート部5と、特定部位サポート部5に固定された振動体9とを更に備え、特定部位サポート部5は防振機能を有する連結部7のみを介して支持フレーム4に固定されるようにしている。
【0035】
例えば本実施形態では、椅子の背凭れ1に本発明を適用した例について説明する。従って、本実施形態におけるサポート面3aは、着座者の背を受け支える背凭れ面となる。また、本実施形態における特定部位サポート部5は、着座者の腰部を支持するランバーサポートとしている。
【0036】
本実施形態では、支持フレーム4と特定部位サポート部5とはそれぞれ別部材として形成されている。本実施形態の支持フレーム4は、例えば図1に示すように枠状に形成されている。支持フレーム4の枠に囲まれた空間を開口部6と呼ぶ。また、本実施形態の特定部位サポート部5は、椅子の幅方向に延びる横長の板状に形成されている。尚、特定部位サポート部5は、着座者の腰部に良好にフィットするように適宜湾曲させた形状としても勿論良い。
【0037】
支持フレーム4の材質は、サポート面3aを維持するべく面形成部材3を張った状態で保持できる剛性を備えたもの、例えば硬質樹脂や金属材料の利用が好ましい。一方、特定部位サポート部5の材質は、着座者の身体に良好にフィットし且つ着座者毎の体系の違いにも対応できる柔軟性や弾性を備えたもの、例えば軟質樹脂の利用が好ましい。そこで、例えば本実施形態では、支持フレーム4をガラス繊維等の強化材が混入されたポリアミドを用いて成形し、特定部位サポート部5をポリプロピレンを用いて成形している。但し、上記材質は好適な例示であって、これらの材質に限定されるものではない。
【0038】
特定部位サポート部5の身体と対向する面とは逆側の面には、振動体9が設けられている。このように振動体9を特定部位サポート部5の裏面側に設けることで、身体からの荷重が特定部位サポート部5に作用しても、特定部位サポート部5が振動体9を身体に押し付けることはなく、着座者に硬い異物が身体に接触している違和感・不快感を与えることを防ぐことができる。例えば本実施形態では、振動体9として、オンキョーリブ株式会社製のリラテックエレメントDU−2506を使用している。また、振動体9による振動の周波数は、例えば50〜70Hzにする。これにより、身体へのマッサージ効果やリラクゼーション効果を高いものにすることができる。マッサージ効果やリラクゼーション効果を高めるための周波数としては、より好ましくは60〜65Hzである。尚、本実施形態では、特定部位サポート部5の略中心となる位置に1つの振動体9を取り付けている。
【0039】
ここで、振動体9を作動させるための電源として、建物内などに配置された電力供給部であるコンセントを利用する場合などには、マグネットプラグ付き電源コードを利用することが好ましい。マグネットプラグ付き電源コードは、磁力により電力利用機器(本発明では振動体9)の電力取込部に装着されると共に、当該装着によって電力利用機器とコンセントとの間を電気的に接続する周知の物である。マグネットプラグ付き電源コードを利用することで、椅子の使用中に電源コードを無理に引っ張る力が作用した場合には、マグネットプラグが振動体9から外れて、振動体9や電源コードの破損を防ぎ、感電や漏電などの事故を防止できる。或いは、椅子に充電可能なバッテリを搭載し、振動体9を作動させるための電源として上記バッテリを利用しても良い。この場合は、所謂コードレスの状態で振動体9を作動させることが可能となり、電源コードの破損による感電や漏電などの事故を防止できる。
【0040】
特定部位サポート部5の長手方向の両端には、支持フレーム4と接続するための凸状の連結部7が形成されている。即ち、特定部位サポート部5と支持フレーム4とを接続する連結部7は本実施形態では2箇所としている。この構成により、連結部7の個所を極力少なくしつつ特定部位サポート部5が支持フレーム4に安定して支持されるようにしている。支持フレーム4の背面側には、特定部位サポート部5の2つの凸状連結部7を受け入れる2つの凹状受部8が形成されている。
【0041】
凸状連結部7を凹状受部8に入れた状態で、図3に示すように、例えばボルト10とナット11よりなる固定手段によって支持フレーム4と特定部位サポート部5とが締結される。尚、符号15は、ボルト10の頭部を受け入れる支持フレーム4に形成された窪みである。特定部位サポート部5は、着座者の身体の目的とする個所(本実施形態では腰部)を支持し得る支持フレーム4における位置に、取り付けられる。このように取り付けられた特定部位サポート部5は、枠状の支持フレーム4の内側の空間すなわち開口部6の中に島状に位置し、連結部7のみを介して支持フレーム4に支持される。これら支持フレーム4と特定部位サポート部5は、背凭れ1の心材となる背インナーシェル2として機能する。
【0042】
本実施形態における連結部7には、特定部位サポート部5において発生する振動を、支持フレーム4に伝達することを遮断もしくはやわらげる防振材12が設けられている。例えば、凹状受部8は凸状連結部7を受け入れた状態でも凸状連結部7との間に隙間ができるように形成され、窪み15はボルト10の頭部を受け入れた状態でもボルト10の頭部との間に隙間ができるように形成され、凸状連結部7および凹状受部8のボルト貫通孔13,14は、ボルト10が挿入された状態でもボルト10との間に隙間ができるように形成されている。従って、支持フレーム4に取り付けられた特定部位サポート部5が支持フレーム4に対して若干遊動できる構成となる。そして、特定部位サポート部5と支持フレーム4との間には、図3に示すように、防振材12として、防振ゴム(より具体的には、ボルト10が貫通するゴム製のワッシャ)が設けられている。ゴム製ワッシャ12は支持フレーム4に対する特定部位サポート部5の振動による衝撃を吸収し和らげる緩衝材として機能する。但し、防振材12はゴム材に限らず、フェルトやコルクなどの振動を吸収し得るあらゆる材質を適宜採用できる。
【0043】
ここで、本実施形態の特定部位サポート部5は、椅子の幅方向に延びる横長形状に柔軟性樹脂であるポリプロピレンを用いて形成されており、その長手方向の両端部が支持フレーム4に支持されているから、外力が作用すると自身が備える弾性により、図4に示すように、椅子の幅方向を回転中心の軸方向として、傾動することができる。即ち、特定部位サポート部5は支持フレーム4に対して傾動可能に構成される。従って、着座者の荷重が加わることにより、特定部位サポート部5が適宜撓みや捩れなどの弾性変形をして、着座者の体にフィットする。
【0044】
本実施形態の面形成部材3は、支持フレーム4を包む布帛などの張り地としている。面形成部材3は例えば袋状に形成され、支持フレーム4と特定部位サポート部5より成る背インナーシェル2を袋状の張り地で包むことによって、弾性を有するサポート面3aである背凭れ面が形成され、椅子の背凭れ1が構成される。このように構成された背凭れ1は、例えば図2に示すように事務用椅子に取り付けられる。図2の例では、例えば面形成部材3としての張り地に孔などを設けて、振動体9の一部(例えばマグネットプラグが装着される電力取込部)が張り地の外に露出するようにしている。尚、面形成部材3は布帛などに限らず、支持フレーム4を内包することで必要な弾力性を発揮させる張力が付与される膜部材、例えばエラストマ糸で構成されるメッシュシートなどであっても良い。この場合、着座者が背凭れ1にもたれかかる際に、サポート面3aを着座者の背に沿ってより柔軟に弾性変形させることができる。
【0045】
尚、特定部位サポート部5と面形成部材3との間や、支持フレーム4と面形成部材3との間には、例えば図5,図6に示すように、スポンジや綿毛状にしてクッション性を持たせた繊維などで構成されたクッション材16を介在させても良い。この場合、樹脂製の支持フレーム4や特定部位サポート部5が、薄地の面形成部材3のみを介して身体に当たる場合と比較して、着座者により柔らかなサポート面3aへの接触感を与え、使い心地を良好にできる。クッション材16は、図5に示すように、支持フレーム4や特定部位サポート部5の身体と対向する面に取り付けても良く、或いは図6に示すように、面形成部材3の内側に取り付けても良い。或いは、面形成部材3自体にある程度の厚みを持たせて、面形成部材3自体を図6に示すクッション材16として機能させても良い。また、特定部位サポート部5と支持フレーム4との間の空間、換言すれば開口部6の空いている空間に、クッション材16を充填しても良い。さらに、袋状の面形成部材3で支持フレーム4を包むのではなく、例えば図7に示すように、クッション材を張り地で包んだものを面形成部材3として、この面形成部材3を支持フレーム4と特定部位サポート部5の着座者の身体と対向する面に取り付けても良い。但し、クッション材16の厚みを大きくし過ぎると振動体9から身体への振動の伝達効率が下がってしまうので、クッション材16は薄手の物とすることが好ましい。
【0046】
以上のように構成される本実施形態の椅子によれば、着座者が背凭れ1にもたれかかると、サポート面3aが着座者の背に沿って弾性変形して着座者を弾性的に受け支え、且つランバーサポート部である特定部位サポート部5が着座者の腰部を支持する。この際、特定部位サポート部5は、着座者の体型や荷重の程度に合わせて適宜撓みや傾動などの弾性変形をして、着座者の腰部にフィットする。このとき、振動体9は特定部位サポート部5の裏面に設けられているので、身体からの荷重が特定部位サポート部5に作用しても特定部位サポート部5が振動体9を身体に押し付けることはなく、着座者に硬い異物が身体に接触している違和感・不快感を与えることを防ぐことができる。このため、特定部位サポート部5の表面に特に厚手のクッションを設ける必要がなくなる。したがって、クッションを用いることなく振動体9に起因する異物感を解消でき、或いは薄手のクッション材16を用いてより柔らかな感触を実現しつつ、振動体9の身体への振動伝達効率を高めることができる。
【0047】
そして、振動体9を振動させることにより、振動は特定部位サポート部5を介して着座者の身体に伝わり、振動によってもたらされる痛みの緩和、疲労回復、血行改善などのマッサージ効果やリラクゼーション効果を発揮することができる。振動体9の振動は、着座者の腰部に良好にフィットしている特定部位サポート部5を介して伝わるので、着座者の腰部に対して確実かつ良好に振動を伝達することができ、高いマッサージ効果やリラクゼーション効果を得ることができる。
【0048】
ここで、支持フレーム4と特定部位サポート部5が背凭れ1の心材として機能し、他に背凭れ1の心材となる部材はなく、且つ特定部位サポート部5は連結部7のみを介して支持フレーム4に取り付けられているので、連結部7以外に特定部位サポート部5と支持フレーム4とを接続する剛体(椅子の使用中に通常作用し得る外力では変形することのない剛性の部材)は存在しない。このため、特定部位サポート部5の振動が支持フレーム4に伝達され難い構造となる。また、振動体9が取り付けられている特定部位サポート部5と、支持フレーム4とはそれぞれ別部材であるため、さらに特定部位サポート部5の振動が支持フレーム4に伝達され難い構造となる。加えて本実施形態では、特定部位サポート部5は柔軟性に富む材質で構成されているので振動体9が発生する振動に反応して自身も振動し易いが、支持フレーム4は剛性の高い材質で構成されているので特定部位サポート部5の振動に反応し難い。このため、さらに特定部位サポート部5の振動が支持フレーム4に伝達され難い構造となる。しかも、本実施形態では、特定部位サポート部5が支持フレーム4に対して若干遊動できる構成になっているので、特定部位サポート部5の振動が支持フレーム4に一層伝わり難い構造となる。さらに、特定部位サポート部5と支持フレーム4との間には、防振材としてゴム製ワッシャ12が設けられているので、特定部位サポート部5が支持フレーム4に対して若干遊動する際の振動エネルギーがゴム製ワッシャ12に吸収され、特定部位サポート部5から支持フレーム4への振動伝達がより確実に遮断される。従って、振動体9の振動によって特定部位サポート部5だけが良好に振動し、支持フレーム4は殆ど振動しない。一方、防振材としてのゴム製ワッシャ12により振動体9の振動時に特定部位サポート部5が支持フレーム4に対して若干遊動する際の音の発生も防止され、支持フレーム4への振動伝達が遮断されることによって支持フレーム4の振動音も抑制される。従って、本発明によれば、静音効果も得られる。
【0049】
以上のように本発明によれば、振動体9の振動が支持フレーム4に伝達して逃げてしまうことを抑制できると共に振動音の発生を抑制できる。これにより、着座者の特定の部位(本実施形態では腰部)に対してのみ集中的に振動を伝達することができ、痛みの緩和、疲労回復、血行改善などの高いマッサージ効果やリラクゼーション効果を得ることができる。着座者の身体への振動効率が高まるので、振動体9の振動の強さを従来と同等にすれば身体には従来よりも強い振動を与えられると共に、身体に与える振動を従来と同等にすれば振動体9の消費電力を従来よりも小さくすることができる。
【0050】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する他の実施形態において上述の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0051】
例えば図8,図9に示すように、特定部位サポート部5の支持フレーム4に対する位置を調整可能に構成しても良い。この場合、着座者の体型に合わせて、或いは着座者がマッサージを所望する部位に合わせて、特定部位サポート部5の位置を変更調整できる。図8,図9に示す例では、凹状受部8および窪み15を鉛直上下方向に延長し、凹状受部8におけるボルト10が貫通する穴を長孔14’とし、ナット11を緩めることで、特定部位サポート部5を長孔14’に沿って移動可能とし、ナット11を締めることで、特定部位サポート部5を凹状受部8における任意の位置に固定できるようにしている。尚、長孔14’に沿った特定部位サポート部5の移動を良好に行えるように、ボルト10における長孔14’と対向する部分10aにはねじが設けられいない段付きねじをボルト10として用いても良い。また、ナット11に対する操作を行い易いように、ナット11をグリップ状としても良い。長孔14’の存在によって特定部位サポート部5が支持フレーム4に対して遊動できる構造となり、特定部位サポート部5の振動が支持フレーム4に伝達し難くなる効果も奏する。
【0052】
尚、樹脂ばね等を利用したクリックストップ機構などを利用して、特定部位サポート部5の支持フレーム4に対する位置を段階的に調整するようにしても良い。クリックストップ機構は、支持フレーム4上に設定された複数個所の中から選択された一の位置に特定部位サポート部5を樹脂ばね等により係止可能であると共に、特定部位サポート部5を移動させる一定以上の力を作用させることによって、樹脂ばね等を弾性変形させ、特定部位サポート部5を他の位置へと移動できる既知または新規の機構である。
【0053】
また、支持フレーム4と特定部位サポート部5とはそれぞれ別部材として形成されるものには限定されず、例えば図10に示すように、支持フレーム4と特定部位サポート部5とを一体に形成しても良い。但し、この場合、連結部7またはその近傍にスリット17を形成するようにする。図10に示す例では、連結部7を縊れた形状とし、この連結部7よりも振動体9側に、特定部位サポート部5の長手方向とは直交する方向に延びるスリット17を形成している。連結部7を縊れた形状とし、且つその連結部7の近傍にスリット17を形成することで、特定部位サポート部5から支持フレーム4に向かう振動伝達経路の断面積が小さくなり、且つ支持フレーム4への振動伝達はスリット17を迂回しなければならなくなる。これにより、特定部位サポート部5の振動が支持フレーム4へ伝わり難くなり、特定部位サポート部5から支持フレーム4への振動伝達を抑制できる。これにより、振動体9の振動が支持フレーム4に伝達して逃げてしまうことを抑制できる。また、連結部7を縊れた形状とすることで、特定部位サポート部5は、外力が作用すると自身が備える弾性により、椅子の幅方向を回転中心の軸方向として、傾動することができる。即ち、特定部位サポート部5を支持フレーム4に対して傾動可能に構成できる。また、支持フレーム4と特定部位サポート部5とを一体成形品とすることで、背インナーシェル2の構成が簡素化され、その製作が容易となり、椅子の製造工程の短縮や部品点数の削減の効果も得られる。
【0054】
また、図11に示すように、連結部はその周縁の全部または一部が支持フレーム4に保持されて弾性を有する膜部材18として、特定部位サポート部5は膜部材18にインサート成形されたものとしても良い。特定部位サポート部5は、枠状の支持フレーム4の内側の空間に島状に位置し、膜部材18のみを介して支持フレーム4に支持される。振動体9は特定部位サポート部5の身体と対向する面とは逆側(裏面側)に取り付けられている。
【0055】
ここで、図11に示す例では、膜部材18と特定部位サポート部5とでサポート面を形成し、膜部材18を面形成部材として機能させている。但し、膜部材18および特定部位サポート部5の身体と対向する面に、例えば図7に示すクッション材16を更に取り付けて、このクッション材16を面形成部材3として機能させても構わない。
【0056】
図11に示す構成の場合は、特定部位サポート部5と支持フレーム4との間に位置する弾性を備えた膜部材18が、特定部位サポート部5の振動を吸収し、特定部位サポート部5から支持フレーム4への振動伝達を遮断して、且つ振動音の発生を抑制する。従って、振動体9の振動が支持フレーム4に伝達して逃げてしまうことを抑制できると共に振動音の発生を抑制できる。
【0057】
膜部材18は、例えばメッシュ、フィルム、布地、不織布等である。膜部材18は着座者の体重を支えるのに充分な強度と、作用する荷重に応じて伸縮する弾力性を有している。膜部材18は、必要な弾力性を発揮できるように所定の張力で張られている。本実施形態では、膜部材18を熱収縮性を有する材料とし、無張力の状態で型27,28の間に挟み込んで、特定部位サポート部5と支持フレーム4をインサート成形した後、加熱することで収縮させて膜部材18に所定の張力を与えるようにしている。本実施形態では、ポリエステル糸とエラストマ性ポリエステル糸との織物によって構成されるメッシュシート、例えば商品名ダイヤフローラ(東洋紡株式会社製)で知られているメッシュシートを膜部材18として用いている。なお、膜部材18における特定部位サポート部5を成形する位置には、インサート成形時に樹脂の通路となる孔23aが形成されている。
【0058】
特定部位サポート部5と支持フレーム4は樹脂製であり、インサート成形される。特定部位サポート部5は、着座者の身体の目的とする個所(例えば腰部)を支持することができ、且つ特定部位サポート部5の身体と対向する面とは逆側の面に振動体9を取り付けることができれば良く、膜部材18の表面側または裏面側のどちらに成形しても良く、或いは膜部材18の表面と裏面の両方に成形しても良い。同様に、支持フレーム4も、膜部材18の表面側または裏面側のどちらに成形しても良く、或いは膜部材18の表面と裏面の両方に成形しても良い。尚、本実施形態では、特定部位サポート部5と支持フレーム4を同時にインサート成形する。
【0059】
図12は、膜部材18の表面側に特定部位サポート部5を、膜部材18の裏面側に支持フレーム4を、同時にインサート成形する手順の一例を示す。図12の例では、インサート成形を行う下型27には特定部位サポート部5を成形するキャビティ29が、上型28には支持フレーム4を成形するキャビティ21がそれぞれ形成されている。膜部材18は下型27と上型28との間に無張力の状態で挟み込まれている(図12(A))。このとき、膜部材18の孔23aの位置を特定部位サポート部成形用のゲート28aの位置に合わせておく。この状態で樹脂22を射出すると、特定部位サポート部成形用のゲート28aから膜部材18の孔23aを通って下型27のキャビティ29に樹脂22が充填されると共に、図示しない支持フレーム成形用のゲートから上型28のキャビティ21に樹脂12が充填される(図12(B))。これにより、膜部材18と特定部位サポート部5と支持フレーム4とが一体化される。そして、膜部材18を加熱して収縮させることにより必要な弾性力を発揮する張力を与える。膜部材18の加熱の手段としては、図示しない加熱した金型を膜部材18に押し当てるようにしても良く、あるいは特定部位サポート部5と支持フレーム4の成形時の熱を利用して膜部材18を加熱するようにしても良い。なお、膜部材18の孔23aは特定部位サポート部5によって隠れるので、製品としての見栄えを悪化させることはない。特定部位サポート部5と支持フレーム4となる樹脂22が硬化した後、型27,28から外し、支持フレーム4の周囲からはみ出した膜部材18を切り取る。これにより、膜部材18と特定部位サポート部5と支持フレーム4とが一体化された構造物(例えば背凭れ1)が完成する。
【0060】
尚、図13は膜部材18の裏面側に特定部位サポート部5をインサート成形する場合を示す。この場合、下型27と上型28との間に膜部材18を挟んだ状態(図13(A))で樹脂22を射出すると、特定部位サポート部成形用のゲート28aから射出された樹脂22が膜部材18を押し退けながら下型27のキャビティ29に充填されると共に、図示しない支持フレーム成形用のゲートから上型28のキャビティ21に樹脂22が充填される(図13(B))。これにより、図14に示すように、膜部材18と特定部位サポート部5と支持フレーム4とが一体化され、且つ膜部材18の裏面側に特定部位サポート部5が形成された構造物(例えば背凭れ1)が完成する。
【0061】
また、図15は特定部位サポート部5を膜部材18の表面と裏面の両方にインサート成形する場合を示す。この場合、膜部材18の表面に特定部位サポート部5をインサート成形した(図15(A)、(B))後、上型28を別の上型28’に代えて膜部材18の裏面に特定部位サポート部5をインサート成形する(図15(C)、(D))。これにより、図16に示すように、膜部材18と特定部位サポート部5と支持フレーム4とが一体化され、且つ膜部材18の表裏両面側に特定部位サポート部5が形成された構造物(例えば背凭れ1)が完成する。
【0062】
上記のように、膜部材18を下型27と上型28との間に無張力の状態で挟み込み、特定部位サポート部5と支持フレーム4のインサート成形後に膜部材18を加熱して収縮させることで所定の張力を与えるようにする構成の場合、膜部材18を型27,28に取り付ける際に膜部材18に予張力を与える必要がなくなる。このため、製造装置に張力付与装置を設ける必要がなくなり、製造装置を簡素化することができる。
【0063】
また、特定部位サポート部5を膜部材18にインサート成形しているので、特定部位サポート部5の膜部材18への取り付けに縫製、接着等の加工が不要で製造が簡単であり、製造コストを安くすることができる。例えばランバーサポートをわざわざ別部品として組み付ける必要がないので、部品点数を減らすことができると共に、ランバーサポートの組み付けに要する作業工数を減らすことができる。また、インサート成形した特定部位サポート部5は外観(見た目)に優れており、表皮部材等で覆う必要がなく、そのまま外観部材として使用するこができる。このことからも製造コストを安くすることができる。なお、これらの効果は、インサート成形した支持フレーム4についても同様である。
【0064】
尚、上述の説明では、特定部位サポート部5と支持フレーム4とを同時にインサート成形しているが、必ずしも同時にインサート成形する必要はない。特定部位サポート部5をインサート成形した後、支持フレーム4をインサート成形しても良く、あるいは支持フレーム4をインサート成形した後、特定部位サポート部5をインサート成形しても良い。
【0065】
また、支持フレーム4をインサート成形によって膜部材18と一体化する必要は必ずしもなく、膜部材18に特定部位サポート部5をインサート成形によって取り付けた後、縫製等の手段によって膜部材18の周囲を支持フレーム4に取り付けるようにしても良い。さらに、上述の説明では、膜部材18を熱収縮性を有する材料で形成し、無張力の状態で型27,28の間に挟み込み、インサート成形後に加熱して収縮させることで所定の張力を与えるようにしていたが、膜部材18に張力を与える手段としてはこれに限るものではない。例えば、膜部材18を熱収縮性を有していない材料で形成した場合には、膜部材18を下型27と上型28との間に所定の張力に張った状態で挟み込み(図12(A),図13(A),図15(A))、この状態で樹脂22を充填する(図12(B),図13(B),図15(B)〜(D))ようにしても良い。さらには、別の方法で膜部材18に張力を与えるようにしても良い。
【0066】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本発明は上記に例示した椅子の背凭れ1の適用に限定されるものではなく、椅子の座、ヘッドレスト、アームレスト、フットレスト等にも適用可能である。更に、振動体9を備えた背凭れ1、座、ヘッドレスト、アームレスト、フットレスト等を適宜組み合わせても勿論よい。
【0067】
図17は、座30に本発明を適用した例を示す。図17の例では、振動体9は、大腿部に対応して2つ設けられている。また、図18は、着座者の首筋を支持する構造物31に本発明を適用した例を示し、当該構造物31により着座者の首筋をマッサージするようにした場合を示す。
【0068】
また、支持フレーム4は、面形成部材3が目的とする形状の面を形成し得るものであれば、必ずしも完全な環状(閉じた枠)を形成するものには限られず、半環状、例えばU字型状であっても良い。支持フレーム4は面形成部材3の周縁全部又は一部を保持するものであって、好ましくは面形成部材3の周縁の少なくとも対向する2辺を保持するものである。ここで、上記の対向する2辺は平行関係にある必要はなく、面形成部材3に張力を生じさせ得るあらゆる形状及び位置関係を含むものである。
【0069】
また、上述の実施形態では、連結部7に防振材12を設けたが、支持フレーム4と特定部位サポート部5とが別部材である場合、さらに特定部位サポート部5の材質が支持フレーム4とは異なる柔軟性の高い材質である場合は、これらの構成だけによっても、特定部位サポート部5から支持フレーム4へと振動が伝わり難くい構造となる、即ち連結部7において防振機能を発揮する構造となるので、部品点数削減等のために防振材12を省略しても良い。
【0070】
また、支持フレーム4に対する特定部位サポート部5の取り付け方向は、図1の例には限定されず、特定部位サポート部5の長手方向を鉛直上下方向とし、当該上下方向の上端と下端を連結部7としても良く、あるいは支持フレーム4に対して特定部位サポート部5を斜めに取り付けても構わない。また、図1等の実施形態では、連結部7を2箇所として連結部7の数を極力減らしながら特定部位サポート部5が支持フレーム4に安定して支持されるようにしたが、場合によっては、特定部位サポート部5の一端側のみを連結部7としても良い。
【0071】
また、本発明に用いる振動体9は、上記に例示した物には限定されず、電気信号を変換することによって種々の振動数・振幅・リズムを有する振動を発生させるデジタル振動機や、ロータ軸にアンバランスウェイトを取り付けた振動モータなど、既存又は新規のマッサージ機などに用いられる種々の物の中から適宜選択可能である。また、特定部位サポート部5に取り付ける振動体9の数は適宜設定でき、例えばランバーサポート部としての特定部位サポート部5に、左右一対の振動体9を設けてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、特定部位サポート部5の身体と対向する面とは逆側の面に振動体9を取り付けたが、必ずしもこの構成例に限定されず、例えば板状の特定部位サポート部5に振動体9を埋設する構成としても良く、或いは特定部位サポート部5の身体と対向する面にクッション材16を取り付けて(図5参照)、このクッション材16に振動体9を埋設する構成としても良い。このように構成する場合も、着座者に硬い異物が身体に接触している違和感・不快感を与えることを防ぐようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明を椅子の背凭れに適用した実施の一形態を示し、当該背凭れの一部を示す斜視図である。
【図2】上記椅子を示す斜視図である。
【図3】連結部の構造を示す断面図である。
【図4】図1の椅子を側面から見た断面図であり、(A)は特定部位サポート部が傾動する前の初期状態を示し、(B)は特定部位サポート部が傾動した後の様子を示す。
【図5】図3の椅子の平面における断面図である。
【図6】図5の他の例を示す断面図である。
【図7】図5の更に他の例を示す断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示し、特定部位サポート部の支持フレームに対する位置を調整可能とした構成例を示す斜視図であり、(A)は特定部位サポート部を下方に移動した場合を示し、(B)は特定部位サポート部を上方に移動した場合を示す。
【図9】図8の連結部の構造を示す断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態を示し、支持フレームと特定部位サポート部とを一体に形成した場合の構成例を示す斜視図である。
【図11】本発明の他の実施形態を示し、膜部材を連結部とした場合の構成例を示す斜視図である。
【図12】特定部位サポート部を膜部材にインサート成形する製造手順を示し、(A)は下型と上型を合わせた状態の断面図、(B)は樹脂を射出した状態の断面図である。
【図13】特定部位サポート部を膜部材にインサート成形する他の製造手順を示し、(A)は下型と上型を合わせた状態の断面図、(B)は樹脂を射出した状態の断面図である。
【図14】図13に示す製造方法により得られた構造物を示す。
【図15】特定部位サポート部を膜部材にインサート成形する他の製造手順を示し、(A)は膜部材の表面に特定部位サポート部を成形する場合の下型と上型を合わせた状態の断面図、(B)は下型のキャビティに樹脂を充填した状態の断面図、(C)は膜部材の裏面に特定部位サポート部を成形する場合の下型と上型を合わせた状態の断面図、(D)は上型のキャビティに樹脂を充填した状態の断面図である。
【図16】図15に示す製造方法により得られた構造物を示す。
【図17】本発明を椅子の座に適用した例を示す斜視図である。
【図18】本発明を着座者の首筋を支持する構造物に適用した例を示す斜視図である。
【図19】既存の椅子に振動体を後付する従来の装置を示す図である。
【図20】振動体を内蔵した従来の車両シートを示す斜視図である。
【図21】上記車両シートの側面の断面図である。
【符号の説明】
【0074】
3a サポート面
3 面形成部材
4 支持フレーム
5 特定部位サポート部
7 連結部
9 振動体
12 防振材(ゴム製ワッシャ)
17 スリット
18 膜部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者の身体を受け支える弾性を有するサポート面を形成する面形成部材と、この面形成部材の周縁の全部または一部を保持して前記サポート面を維持する支持フレームとを備える椅子において、前記サポート面の反対側に位置して又は前記サポート面の一部となって、前記身体の一部の部位を支持する特定部位サポート部と、前記特定部位サポート部に固定された振動体とを備え、前記特定部位サポート部は防振機能を有する連結部のみを介して前記支持フレームに固定されることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記支持フレームと前記特定部位サポート部とはそれぞれ別部材として形成され、前記特定部位サポート部と前記支持フレームとを接続する前記連結部には防振材が設けられることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記特定部位サポート部は前記支持フレームよりも柔軟性の高い材料で形成されることを特徴とする請求項1または2記載の椅子。
【請求項4】
前記特定部位サポート部の前記支持フレームに対する位置を調整可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の椅子。
【請求項5】
前記支持フレームと前記特定部位サポート部とは一体に形成され、前記連結部またはその近傍にスリットが形成されることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項6】
前記特定部位サポート部は前記支持フレームに対して傾動可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の椅子。
【請求項7】
前記面形成部材は、前記支持フレームを包む張り地であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の椅子。
【請求項8】
前記特定部位サポート部と前記面形成部材との間または前記支持フレームと前記面形成部材との間の少なくとも一方に、クッション材が介在していることを特徴とする請求項7記載の椅子。
【請求項9】
前記連結部はその周縁の全部または一部が前記支持フレームに保持されて弾性を有する膜部材であり、前記特定部位サポート部は前記膜部材にインサート成形されたものであることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項10】
前記膜部材と前記特定部位サポート部とで前記サポート面を形成し、前記膜部材が前記面形成部材として機能することを特徴とする請求項9記載の椅子。
【請求項11】
前記特定部位サポート部は、着座者の腰部を支持するランバーサポートであることを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−546(P2006−546A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182478(P2004−182478)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】