説明

植物における真菌病の生物防除のためのトリコデルマ・アトロビリデSC1

本発明の実施態様は、生物防除剤としての、即ち植物の真菌病を治療するためのトリコデルマ・アトロビリデSC1(CBS番号122089)である。本発明の第二実施態様は、トリコデルマ・アトロビリデSC1を有効成分として有効量含む農業組成物である。本発明の組成物は、更に、第二生物防除剤及び/若しくは添加剤、乳化剤、植物栄養剤、湿潤剤、植物微量栄養剤又は基層を含んでもよく、ここで、前記基層は、栄養培地、穀物若しくはその誘導体、アメンダント、野菜若しくはその一部分、ピート、木若しくはその断片、粘土又は樹皮からなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、病原性真菌に起因する植物の病気の、新規トリコデルマ・アトロビリデ(Trichoderma atroviride)菌株で表わされる生物防除剤による生物防除である。
【背景技術】
【0002】
化学殺菌剤の置換又は減少は、生物学に基づいた殺菌剤の使用、Cook及びBaker(1983)が提案した生物防除の定義に含まれるアプローチによって達成された:「生物防除は、ヒト以外の一種以上の生物によって又は介して成し遂げられる、病原体の接種量又は病気を引き起こす活動の低減である」。
【0003】
この広い定義には、病原体の毒性がより低い変種、宿主の耐性がより大きな品種、及び「病原体の生存活動又は病気を引き起こす活動を妨げる」微生物アンタゴニストの使用が含まれる。
【0004】
環境相互作用のより複雑な評価は、かかる生物防除剤(BCAs)を使用することを要する。実際、環境条件は、BCAsの生存のみならず、それらの病原体に対する有効性にも影響を及ぼす(Paulitz,2000)。環境への適応の観点からより柔軟性のあるBCAsは、それらの用途及び目標市場が特定の環境条件を必要とするBCAsより広い場合があるので、商業的な製品として非常に容易に発展することができる。
【0005】
好ましくない環境条件に対する耐性が強化された拮抗性トリコデルマ菌株の選択は、トリコデルマ系生物防除プログラムの信頼性を増大させることができる(Kredics et al.,2000)。また、植物病原体に対する使用に最も有効なBCAsは、それらの目標病原体より優れたストレス耐性を有するものであることに注目することが重要である(Kredics et al.,2000;2004)。
【0006】
トリコデルマは、汎存属であり、土壌、根圏及び葉圏にコロニーを作ることができる。トリコデルマ種は、木質材料及び植物質を腐らせるときにしばしば見つけられる。幾つかのトリコデルマ菌株は、工業用酵素の経済的に重要な産生株である。
【0007】
トリコデルマ菌株は、多くの植物病原体に対する生物防除剤として既に使用されているが、農作物及び温室作物の商業的な生物防除製品(即ち、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum),Trichodex(登録商標)として知られている)としての使用については、かなりの数が開発されてきた(Elad,2000;Harman,2000)。
【0008】
しかしながら、生物防除活動、特異性、作用機序、代謝物の産生、及び土壌中又は植物上での生存の観点から、BCAsとしての使用に影響を及ぼすトリコデルマ種の間で、大きなばらつきが存在する(Benitez et al.,2004)。
【0009】
更に、十分に有効な生物防除剤が単離も特徴付けもされていないブドウ上のアルミラリア属に起因するもののような、幾つかの重要な病原体が依然として存在する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の実施態様は、生物防除剤としての、即ち植物の真菌病を治療するためのトリコデルマ・アトロビリデSC1(CBS番号122089)である。
【0011】
本発明の第二実施態様は、トリコデルマ・アトロビリデSC1を有効成分として有効量含む農業組成物である。本発明の組成物は、更に、第二生物防除剤及び/若しくは添加剤、乳化剤、植物栄養剤、湿潤剤、植物微量栄養剤又は基層を含んでもよく、ここで、前記基層は、栄養培地、穀物若しくはその誘導体、アメンダント(amendant)、野菜若しくはその一部分、ピート、木若しくはその断片、粘土又は樹皮からなる群から選択される。
【0012】
更なる実施態様は、木の病気(ファエオモニエラ・クラミドスポラ(Phaeomoniella chlamydospora)、ファエオアクレモニウム・アレオフィルム(Phaeoacremonium aleophilum)及びフォミチポリア・メジテラネア(Fomitiporia mediterranea))、葉の病気(粉末ウドンコ病病原体ポドスファエラ・キサンチイ(Podosphaera xanthii))、果実及び花の病気(ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea))、並びにアルミラリア属(アルミラリア・メレア(Armillaria mellea)及びA.ガリカ(gallica))に起因する根の病気の原因になるものからなる群から選択される病原菌が原因の植物の病気を治療又は予防する方法である。
【0013】
植物若しくは植物の一部分に直接的に、又は間接的に土壌中若しくはその上にあるトリコデルマ・アトロビリデSC1(CBS番号122089)を富ませた基層を植物の近傍に適用することで、処理を行うことができる。この処理から利益を得る植物は、好ましくは、ウリ科、バラ科、ブドウ科、アブラナ科、キク科、セリ科、ナス科及びユリ科からなる群から選択される。
【0014】
本発明の更なる実施態様は、微生物トリコデルマ・アトロビリデSC1を有効量含むか又は前記菌株を有効量備える組成物で処理した基層である。好ましい基層は、樹皮又は炊いた米で表される。
【0015】
更なる実施態様は、トリコデルマ・アトロビリデSC1の特異的検出のための分子的方法で表わされ、ここで、エンドキチナーゼ42遺伝子(ech42)ジェンバンク受入番号AB041753.1及びGタンパク質αサブユニット遺伝子(tga3)ジェンバンク受入番号AF452097.1の平行増幅を適切なプライマーセットによって達成し、前記トリコデルマ・アトロビリデSC1を含むサンプルにおいては、エンドキチナーゼ42遺伝子の位置185及び196における二つの多形ヌクレオチドを観察する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】異なる温度でのトリコデルマ・アトロビリデSC1の放射方向成長。トリコデルマ・アトロビリデSC1をジャガイモブドウ糖寒天(PDA)上で成長させ、異なる温度でインキュベートした:10℃(◇)、15℃(●)、20℃(■)、25℃(△)及び30℃(×)。−1℃、5℃、37℃又は40℃では、成長が観測されなかった。データ点は、10回の反復試験の平均値である。同一文字を伴う値は、チューキー法によれば有意差がない(P≦0.05)。成長開始前期間(遅延期間)は、20℃、25℃及び30℃で1日であり、15℃で2日であり、10℃で3日であった。
【図2】トリコデルマ・アトロビリデSC1放射方向成長に対するpHの効果。ジャガイモブドウ糖寒天(PDA)上で、異なるpHレベルにて成長を行った。pH3(△)、pH4(□)、pH5(▲)、pH6(+)、pH7(●)、pH8(◇)、pH9(×)及びpH10(■)。データ点は、10回の反復試験の平均値である。同一文字を伴う値は、チューキー法によれば有意差がない(P≦0.05)。
【図3】トリコデルマ・アトロビリデSC1の成長速度に対する水分活性の効果。トリコデルマ・アトロビリデSC1を、グリセロールで修飾したジャガイモブドウ糖寒天上で、0.998(▲)、0.990(■)、0.980(△)、0.960(×)、0.940(●)及び0.910(○)の水分活性レベルにて成長させた。データ点は、10回の反復試験の平均値である。同一文字を伴う値は、チューキー法によれば有意差がない(P≦0.05)。成長開始前期間(遅延期間)は、0.998、0.990及び0.980で1日であり、0.940で2日であり、0.910で4日であった。
【図4】ech42及びtga3の多重増幅。純粋なトリコデルマ・アトロビリデSC1 DNAの特異的プローブech42(■)及び一般的プローブtga3(○)を用いて増幅を行った。二つの希釈曲線は重なり合い、同一の効率、決定係数(R)及び勾配を有する。
【図5】トリコデルマ・アトロビリデSC1 DNAのリアルタイムPCRによる回復。核酸量は、既知量の分生子を接種した土壌1gにおける一倍体ゲノムコピー数として表される。6の独立した数量化から標準偏差(%)を求めた。
【図6】コロニー形成単位(CFU)として評価したイチゴ葉上のトリコデルマ・アトロビリデSC1の生存。0日目に分生子−水の懸濁液(10CFU・ml−1)を吹き付けることによって、葉に接種した。データ点は、10回の反復試験の平均を表す。データをlog(x)で変換した。誤差棒は、平均値の標準偏差を表す。
【図7】静置土壌ミクロ生態系でのトリコデルマ・アトロビリデSC1の生存。0日目に10CFU・g−1土壌の速度で、三つの異なる滅菌(a)及び非滅菌(b)土壌:土壌1(●)、土壌2(□)及び土壌3(△)に対して真菌を適用した。データ点は、5回の反復試験の平均を表しており、log(x)で変換した。各日についての異なる文字は、チューキー法によれば著しく異なる値(P≦0.05)を示唆する。
【図8】粉末ウドンコ病感染の重症度に対するトリコデルマ・アトロビリデSC1の効果。キュウリ(パネルA)及びズッキーニ(パネルB)の植物に対して人工的にポドスファエラ・キサンチイ(Podosphaera xanthii)分生子を接種し、未処理、硫黄及び二つの生物防除標準物質(トリコデルマ・ハルジアナムT39−取引名Trichodex(登録商標)−及びT.アトロビリデF122)と比較した。接種して2週間後に評価を行い、重症度を点数化した(感染した葉組織の割合)。処理につき5回の反復試験(植物)を評価した。同じ文字の列は、チューキーHSDによれば有意差がない(P≦0.05)。人工的な接種では、各植物上に、分生子の水性懸濁液(10分生子ml−1)約5mlを吹き付けた。日々の適用を接種してから12時間後に始めた。
【図9】エスカ病の三つの主要な病原体の成長に対するトリコデルマ・アトロビリデSC1の有効性。(ファエオモニエラ・クラミドスポラ(Phaeomoniella chlamydospora):パネルA;ファエオアクレモニウム・アレオフィルム(Phaeoacremonium aleophilum),パネルB;フォミチポリア・メジテラネア(Fomitiporia mediterranea),パネルC)。制御効力を式:[(C−T)/C]×100(ここで、Cは、処理無しでの病原体の成長であり、Tはトリコデルマ・アトロビリデSC1処理での成長である)に従って算出した。ペトリ皿中のジャガイモブドウ糖寒天上で、エスカ病原体及びT.アトロビリデSC1の接種を行った。グラフは、5回の反復試験(ペトリ皿)の平均を表す。
【図10】トリコデルマ・アトロビリデSC1の存在下及び不在下(未処理)でのアルミラリア・メレア(Armillaria mellea)及びアルミラリア・ガリカ(Armillaria gallica)(根腐れ病原体)の菌糸体成長。トリコデルマ・ハルジアナムT39−Trichodex(登録商標)−の実験効果を標準比較としてここに示す。成長は、20℃のペトリ皿上のPDA上の木片上で成長させた5回の反復試験の直径の平均として表される。
【図11】土壌処理後にアルミラリア・メレア及びA.ガリカに感染した(死んだ)イチゴ植物の割合。トリコデルマ・アトロビリデSC1の効果を未処理のものと比較した。トリコデルマ・ハルジアナムT39−Trichodex(登録商標)−をA.ガリカの比較として用い、T.アトロビリデF122をA.メレアの比較として用いた。値は、植物の10回の反復試験で求めた割合である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の目的は、植物の地上部及び根上での真菌病の発生を抑制するための、トリコデルマ・アトロビリデ種に属する生物防除剤、菌株SC1を提供することである。
【0018】
好ましい実施態様に従って、トリコデルマ・アトロビリデ,菌株SC1は、ブダペスト条約の下、CBS(Centraalbureeau voor Schimmelcultures)にてCBS122089の番号で2007年11月27日に預けられている。
【0019】
本発明の主要な態様によれば、トリコデルマ・アトロビリデ,菌株SC1は、植物病原体の発生、特には果実及び根の腐敗、ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)及びアルミラリア菌種が原因のもの、粉末ウドンコ病、木の病気(エスカ病)等を抑制すること及び防止することが提案されている。
【0020】
好ましい実施態様によれば、本発明は、トリコデルマ・アトロビリデSC1を有効量で、固体組成物を用いる場合には少なくとも10〜10分生子ml−1又はg−1の量で含む組成物を使用することを特徴とした、真菌病の発生を抑制又は防止する方法を提供する。
【0021】
トリコデルマ・アトロビリデSC1は、最も多くのトリコデルマ菌種のように中温性の真菌である(Klein and Eveleingh,1998)。それは、単独の炭素源及び窒素源として広範囲に及ぶ化合物を利用することができる。培地中での真菌の成長は、酵母エキス、亜硝酸塩、トリプトン、ペプトン、グルタミン及びアスパラギン等の一部の窒素源又はマンノース、ガラクトース、スクロース、マルツエキス、セルビオース、グルコース及びスレアロース等の一部の炭素源の場合に優れている。
【0022】
T.アトロビリデSC1は、−1〜35℃の温度範囲において生存し、5〜30℃の温度範囲で成長する。成長の最適温度は、25℃±1℃であるが、20℃での真菌の放射方向成長は、25℃で観測された成長と比べて有意差がない。T.アトロビリデSC1の生存のための最高温度(30℃)は、ヒトの体温より低く、この真菌がヒトに対して病原性が無いことを良く示している。
【0023】
T.アトロビリデSC1のpHに対する許容レベルは、トリコデルマ菌株の通常の範囲内にあり、即ち3〜10のpH範囲である。T.アトロビリデSC1の水分活性許容度(a)の最小限度は、0.910である。水分活性の好ましい値は、0.998であり、大部分の真菌性植物病原体に好まれる高い相対湿度条件の値(90−100%)に相当する。
【0024】
トリコデルマ・アトロビリデSC1は、以下に示す特性によって特徴付けられる:
− それは、アルミラリア菌種が原因の病気、及び有効な化学農薬が知られていない「エスカ病」の病原体に対して特に活性がある。本発明によれば、「アルミラリア菌種」の語は、特にアルミラリア・メレア及びアルミラリア・ガリカを包含し、「エスカ病」の語は、エスカ病を引き起こす最も重要な病原体、特にはファエオモニエラ・クラミドスポラ、ファエオアクレモニウム・アレオフィルム及びフォミチポリア・メジテラネアを包含する。アルミラリア菌種は、400を超える植物種(作物及び森林樹)に影響を及ぼす。「エスカ病」の病原体は、ブドウに影響を及ぼす。
− それは、トリコデルマ・ハルジアナムT39(取引名Trichodex(登録商標))又はT.アトロビリデF122(Longa,2007)等の他の既知のトリコデルマ菌株と比べて、(ポドスファエラ・キサンチイが原因の)粉末ウドンコ病に対して有効である。粉末ウドンコ病は、正常な状態の(order)エリシファレ(Erysiphale)における菌類の多くの異なる種が原因となる真菌病であり(Spencer,1978)、特にはブドウ、リンゴ、イチゴ、園芸作物及び草花栽培作物に対して、経済的に重大な損害を与える。
− それは、土壌中において有効レベルで長い期間(1年を超える期間)持続する。
− それは、野菜又は木の一部に容易に分散でき、そこで、抗真菌剤として1年を超える期間生存する。
【0025】
T.アトロビリデSC1を用いて行った幾つかの試験は、実験パートにおいて更に詳細に説明されるが、それが、植物上での真菌病を抑制するための最適な生物防除剤として提案されることを可能にする。
【0026】
好ましい実施態様によれば、T.アトロビリデSC1の農業組成物の調製は、懸濁液中の一般的な栄養基体上に又は固体基体上に、少なくとも10〜10分生子/ml−1又はg−1の基質(活性濃度)を得るように、T.アトロビリデSC1を接種することで行われる。
【0027】
最も一般的に使用される液体培地又は半固体培地には、栄養ブロス、ジャガイモブドウ糖寒天(PDA)、栄養寒天、マルツエキス寒天、マルツ寒天、LBブロス及び当業者に知られている類似のものが含まれ、そこで、連続振盪下、少なくとも48時間、好ましくは72時間又は分生子が作られるまで、20℃〜30℃の最適な成長温度、好ましくは22〜26℃又は約25℃±1℃にて、真菌を成長させる。これらの条件では、最初の分生子が少なくとも48時間後に作られる。
【0028】
好ましい固体基体は、無菌化穀物(炊いた米又は小麦等)、小麦粉若しくは粉砕した穀物、又は類似の炭水化物が豊富な基体が含まれ、そこに、T.アトロビリデSC1を接種し、少なくとも一週間、20〜30℃又は好ましくは22〜26℃又は約25℃±1℃にてインキュベートする。小麦粉又は粉砕した穀物等の穀物誘導体も同様に適している。
【0029】
植物の治療及び/又は予防は、液体培地若しくは半固体培地中で又は固体基体上で成長したT.アトロビリデSC1培養物を用い、かかるT.アトロビリデSC1懸濁液を植物の一部の上に適用したり又は該SC1の豊富な基体をかかる治療が必要な植物の近傍にある土壌上に又はその中に適用することによって行われる。
【0030】
植物に、植物の葉の上に、切断若しくは刈り込み時にできた創傷上に、又は土壌に、農業組成物を適用し、根についての真菌病の発生を抑えることにより、処理を行うことができる。特定の病気に適応させるべきタイミングで(即ち、感染前で、移植、開花、収穫後のような特定の生物季節学的段階にて)、植物に対して一般的な殺菌剤として吹き付けることにより、処理を適用する。また、土壌に吹き付けたり若しくは注入したりして処理を行うことができ、幾つかの基体上の土壌と共に異なる製剤(即ち、粘土若しくは類似の製品、樹皮、野菜、又は他の有機物若しくは類似物若しくは誘導体と混合させた顆粒剤)を混合させる。植物の生育期間又は休眠中に処理を適用することができる。処理を刈り込み後に吹き付けて行ったり又は刈り込み創傷部に直接適用したりして、感染を防止することができる。処理は、毎週又はより高い頻度で、更には一年に一度適用できる。処理は、一回(即ち、土壌への植え付け時に)適用してもよいし、必要に応じて繰り返してもよい。
【0031】
土壌中での高い持続性、及び樹皮等の土壌支持体上での分散の容易さは、植物及び/又は植物を備える領域を処理するのに特に適した本発明の微生物を提供し、処理の回数を最小限に抑える。
【0032】
培養基層は、液体、固体又は半固体(ゼリー)の場合がある有機培養支持体、米、樹皮若しくは木片若しくはピート等の野菜アメンダントのような有機物のもの、粘土のような無機物(即ち鉱物)のものを意味する。基層は、栄養剤若しくはマトリックス作用剤又はその両方を有していてもよい。木片、樹皮又は無機物の基層は、SC1接種の前に栄養剤で前処理されるのが好ましい。
【0033】
注目すべきは、樹皮片上での成長は、122F菌株のような他のT.アトロビリデ菌株では不可能である。従って、この実施態様は、本発明に従うSC1菌株の更に目立った特徴を表す。
【0034】
また、T.アトロビリデSC1分生子を集めて(即ち、空気フラックス又は培養基層の洗浄により集めて)、液体又は液体栄養剤中に分散させることができる。このような懸濁液、つまり農業組成物は、植物に直接的に又は植物近傍の土壌に対して適用される。それは、炭素源(即ち、糖)及びアミノ酸、ペプチド等の窒素源のような栄養剤、栄養要素、又はインサイチューでの微生物の良好な維持のための植物微量栄養剤と組み合わせて適用されるのが好ましい。
【0035】
上記組成物は、レシチン、サポニン等の乳化剤、Tween80等の湿潤剤、又は類似物、UV保護剤、乳化剤を備える抗酸化剤、希釈剤、湿潤剤、噴霧アジュバントを更に含んでもよい。本発明の目的のため、T.アトロビリデSC1を有効量10〜10分生子ml−1又はg−1含んでなる固体又は液体の培養基層を農業組成物とみなす。
【0036】
少なくとも10〜10ml−1又はg−1の分生子を含む懸濁液又は組成物は、植物若しくは根、葉、種子、果実等の植物の一部分に直接適用されるか、又は土壌、好ましくは上記固体支持体上にある土壌に間接的に適用される。
【0037】
上記農業組成物においては、SC1菌株を、第二の、即ち更なる生物防除剤、栄養補助剤、肥料、鉱物、植物ホルモン、植物成長用の修正剤(amender)、T.アトロビリデSC1に対して無毒性の化学農薬、又は洗浄水中で刈り込み創傷部を保護するためのワックスと任意に混合することができる。
【0038】
T.アトロビリデSC1で土壌を処理する最も好適な方法の一つは、この菌株を穀物(即ち、炊いた米)又は樹皮又は木片又はピート等の野菜修正剤のような基体上で成長させ、処理されるべき植物/複数の植物に近傍の土壌上に又はその中に前記支持体を分布させることである。
【0039】
かかる固体基体(即ち、樹皮片)上での有効量のT.アトロビリデSC1培養物(10〜10分生子ml−1又はg−1)の成長は、それを微生物培地(ジャガイモブドウ糖ブロス、マルツエキス、栄養ブロス又はその類似物等)又は炭素源及び窒素源を含有する栄養物質(牛肉エキス、ペプトン、粉砕穀物、酵母エキス、スクロース又はその類似物等)で前処理し、かかる基層にT.アトロビリデSC1を接種し、それを上記の条件で少なくとも一週間又はコロニー形成が得られるまでインキュベートすることにより行われるのが好ましい。
【0040】
また、組成物は、感染プレート又は培養基体から分生子を洗い流し、病原体の感染前に植物の地上部に、毎週、一部の特異的な植物の生物学的段階で又は刈り込み、切断、植え付けのような一部の農作業の後に、かかる懸濁液を吹き付けることにより調製できる。
【0041】
上記組成物が無事に適用される植物は、ウリ科、バラ科、ブドウ科、アブラナ科、キク科、セリ科、ナス科及びユリ科からなる群から選択されるのが好ましい。特に好ましい植物は、ウリ科、バラ科、ブドウ科である。
【0042】
接種された固体基層(即ち、樹皮又は野菜修正剤)による処理又は吹き付け等の他の手段による処理は、植物の培養を通していつでも行われ、生存する土壌伝播性の病原体の制御を提供したり又は新たな感染を防止する。
【0043】
本発明の生物防除剤による根圏処理の好ましい方法は、無菌化された炊いた米(又は他の穀物)中で、数日(最低限1週間、通常15日)の間、最適範囲の温度、好ましくは約25℃±1℃にて、10〜10分生子/100g炊いた米又は1×10cfu g−1土壌の範囲の最適接種量が得られるまで、T.アトロビリデSC1を成長させることにより達成される。この実施態様によれば、生物防除剤は、菌が豊富な米のマトリックスとして直接適用される。
【0044】
BCAの制御に最重要となる、環境において放出された微生物の運命及び挙動を監視するためには、分子アプローチ(リアルタイムPCR)を開発し、本発明の更なる実施態様を表す。
【0045】
この方法は、環境中のT.アトロビリデSC1を追跡及び数量化すること、特には放出された菌株を同定すること、それを天然の微生物群集と区別すること、その個体群の動態を経時的に追跡することを可能にする。
【0046】
実際には、欧州における農薬としての特異的な生物防除剤(BCA)の登録は、食料品の混入(生存可能な及び生育不能なBCA残留物)の可能性の評価に加えて、環境におけるBCAの持続性及び増殖に焦点を合わせたリスク評価を必要とする。
【0047】
本発明の更なる実施態様に従って開発された分子試験は、T.アトロビリデSC1エンドキチナーゼ遺伝子(ech42)に基づいている(Carsolio et al.,1994)。従って、リアルタイムPCRプライマー及び菌株特異的TaqManプローブセット(Sigma Aldrich,St.ルイス,ミズーリ)が、ジェンバンク受入番号AB041753.1配列の番号付けに従う位置185及び196におけるech42遺伝子の3'ストランド上の二つのヌクレオチドミスマッチに基づいて設計された。第二プライマーセット及びTaqManプローブは、tga3遺伝子に対して設計され、それは、Gタンパク質αサブユニットをコード化する(表1)。
【0048】
ech42及びtga3プライマーを用いたPCRは、トリコデルマ菌種株からの全DNAの特異的な増幅産物をもたらしたが、土壌サンプルからの他の真菌ではなかった(即ち、アスペリギルス(Asperigillus)菌種、ペニシリウム(Penicillium)菌種、クラドスポリウム(Cladosporium)菌種)。該産物は、各遺伝子について単一の融解ピークを与え、該プライマーがech42及びtga3産物だけを増幅したことを示す。
【0049】
逆に言えば、ech42遺伝子配列(好ましくはSEQIDNO3)の二つのSC1特異的点変異を含有するech42TaqManプローブの存在下でリアルタイムPCRを行うと、T.アトロビリデSC1のみが単一の信号を作り、プローブ増幅産物ハイブリダイゼーションはブドウ及び土壌サンプルにおける他の真菌(含まれる菌株F122及びSB18)に対して起こらず、ech42プローブの高い特異性が確認される。
【0050】
一連の濃度のT.アトロビリデSC1 DNAに対するech42及びtga3TaqManプローブの二重増幅は、与えられた濃度それぞれについて同一の閾値にて起こった。これは、ゲノムにおけるech42アンプリコンの単一コピーとTga3遺伝子の単一コピーとがあることを実証し、またそれら二つの配列が類似の標準曲線を有するため、適切な増幅プライマーセットを表すことを実証しており、二つの配列それぞれについてのPCR反応が同等レベルの効率で進行したという事実によって確認されたとおりである(図4)。
【0051】
この方法は、PCR反応につき五つのゲノムコピーの検出限界(LOD)及び定量限界(LOQ)をもたらす。土壌サンプルについては、計算されたLODが、反応混合物につき35のコピーまで増加し、g土壌につき6.2×10分生子に相当し、LOQは、2×10〜3×10g土壌−1の範囲に及んだ。該方法の正確さは、実験パートに示されるように五つの試験分生子濃度レベルにて非常に高いものである。本発明の方法において同定されたEch42Pの対立遺伝子変異から開始する当業者は、代替のプライマーセットと、SC1菌株に特異的な二つの同定されたミスマッチを依然として含む異なるプローブとを容易に特定することができる。また、異なる分子プローブは、プローブ及び/又はプライマーに結合する可能性がある。
【0052】
T.アトロビリデSC1の検出及び定量化のために設計されたリアルタイムPCRプライマー及びプローブを以下の表に示す。ech42TaqManプローブの塩基ミスマッチは太字である。

【0053】
以下に、非制限的な例を与え、本発明を更に説明する。
【実施例】
【0054】
(実験パート)
例1.トリコデルマ・アトロビリデSC1の単離及び成長
真菌株T.アトロビリデSC1を、イタリア北部で腐ったヘーゼルナッツの木から単離し、単一胞子法により純粋培養液中で得た。SafeCrop Microorganism Collection(Instituto Agrario di San Michele all’Adige)において、それをジャガイモブドウ糖寒天(PDA;Oxoid,ケンブリッジ,UK)の斜面上に4℃で保持し、ブダペスト条約の下、CBSコレクションに預けた(CBS 122089)。該菌株をトリコデルマ・アトロビリデP.Karstとして形態学的に同定し、その同一性を、TrichOKEY同定ツール第2版を用いたITS配列分析によって確認した(www.isth.info)。
【0055】
T.アトロビリデSC1は、単独の炭素源及び窒素源として広範囲に及ぶ化合物を利用することができる。培地での真菌の成長は、酵母エキス、亜硝酸塩、トリプトン、ペプトン、グルタミン及びアスパラギン等の一部の窒素源又はマンノース、ガラクトース、スクロース、マルツエキス、セルビオース、グルコース及びスレアロース等の一部の炭素源が供給される場合、有意に優れている。
【0056】
ソルビトール、ラクトース、マルトース、フルクトース、アラビノース、キシロース、NHNO、KNO、NHCl、セリン、アルギニン及びグルタミンは、菌糸体の成長を促進しなかった。
【0057】
T.アトロビリデSC1菌糸体乾燥重量に対する、窒素源(NS)、NHNO、NHCl、KNO、NaNO、NaNO、セリン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン、トリプトン及びペプトン(Sigma,St.ルイス,MO,USA)、並びに炭素源(CS)、ソルビトール、ラクトース、マルトース、フルクトース、アラビノース、キシロース、スレアロース、グルコース、セルビオース、マルツエキス、スクロース、ガラクトース及びマンノース(Sigma)の効果を試験した。NS及びCSをろ過により無菌化し、2g・l−1(NS)及び20g・l−1(CS)の速度で、NS及びCSを試験する際にそれぞれグルコース(10g・l−1)(Sigma)又はグリシン(1g・l−1)(Sigma)で修正されたオートクレーブ処理Czapek Dox液体培地(Oxoid)に加えた。各栄養培地を100ml含有するフラスコに、7日たったT.アトロビリデSC1培養液から寒天プラグをそれぞれ接種した。13日のインキュベーションの後、菌糸体をろ紙によって収集し、乾燥させ、その乾燥重量をモイスチャーバランスAMB110(Adam Equipment,UK)により測定した。各処理及び研究要素について、5回の反復試験に接種した。実験を2回繰り返し行った。
【0058】
T.アトロビリデSC1は、10℃〜30℃の間の温度で成長することができる。成長の最適温度は25℃であった。この温度での成長速度は、他の温度と比べて有意に大きかった(P≦0.05)(図1)。従って、最適な成長は、25℃で達成された。最初の分生子が、接種してから3日後に作られた。20℃での真菌の放射方向成長は、25℃で観察された成長と比べて有意差がなかった。T.アトロビリデSC1は、35℃又はより高い温度で成長しなかった。35℃で30日のインキュベーションの後、真菌は死んでいるとみなした。なぜなら、それは、25℃の最適温度まで温度を低下させた後でさえも、成長できなかったためである。また、−1℃及び5℃の温度も菌糸体の成長を阻害した。しかしながら、−1℃及び5℃では、30日後、再度25℃でインキュベートした際に、真菌はまだ成長することができた。成長がほとんど観察できない又は全く観察できない遅延期は、10℃(2日)及び15℃(3日)で最も長かった。
【0059】
T.アトロビリデSC1は、広範囲に及ぶpHレベルの耐性があり(図2)、酸性培地(pH4〜6)で最適な成長が観察された。T.アトロビリデSC1の菌糸体の成長は、アルカリ性培地(pH≧8)で有意に低減し(P≦0.05)、8以上のpH値と同様に、胞子形成はpH3で低減した。遅延期は、試験された全pHレベルで同じであった(1日)。
【0060】
また、成長速度は、水分活性(a)の変化に影響を受けた。該水分活性は、系中での水のエネルギー状態の測定値であり、即ち、水の蒸気圧を同一温度での純水の蒸気圧で割ったものである(図3)。試験した最高aレベル(0.998)は、真菌の成長の最適なレベルであった。このパラメータを0.990より下に減少させた場合、成長速度は、未修飾PDA培地(a=0.998)のものと比較して有意に低下した(P≦0.05)。制限された成長を0.910で観察した。遅延期は、aが0.940(2日)及び0.910(4日)より下に低下した場合に長かった。
【0061】
実験条件
T.アトロビリデSC1に対する温度、pH及び水分活性(a)の効果を、PDAを含有する90mmペトリ皿上で成長させた培養物中で試験した。各プレートに、7日たった培養物の縁から集めた一つの寒天プラグ(直径5mm)を接種した。接種プラグを各プレートの中央に置いた。菌糸体の成長を毎日評価した。各レベルの研究パラメータについて、10回の反復試験プレートに接種した。
【0062】
温度アッセイでは、プレートを、暗闇で、−1℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、37℃及び40℃にて、培地pH5によってインキュベートした。pHアッセイでは、1NのHCl又は2NのNaOHの滅菌溶液を加えることによりオートクレーブ処理した後、培地のpHレベルを3、4、5、6、7、8、9及び10に調整した。aの効果を試験するため、増加する量のグリセロールを加えることで培地を修飾し、0.990、0.980、0.960、0.940及び0.910のaレベルを得た。培地のpHをオートクレーブ処理の前に1NのHCl又は2NのNaOHで4.5に調整した。全ての培地のa値を、AquaLabシリーズ3計器(Decagon,Pullman,ワシントン USA)で測定した。pH及びaアッセイについては、プレートを暗闇で25℃にてインキュベートした。
【0063】
放射方向成長をインキュベーションの3日目に評価した。インキュベーションの3日目は、おおよそ、真菌が最適条件下でこのサイズのペトリ皿を完全にコロニー形成させるのに必要とする時間である。
【0064】
例2.T.アトロビリデSC1の検出及び数量化
ech42及びtga3プライマーを用いたリアルタイムPCRは、トリコデルマ菌種株からの全DNA、他の真菌及び土壌サンプルの増幅産物をもたらした。該産物は、各遺伝子について単一の融解ピークを与え、該プライマーがech42及びtga3産物だけを増幅したことを示す。逆に言えば、ech42遺伝子配列の二つのSC1特異的点変異を含有するech42TaqManプローブの存在下で、T.アトロビリデSC1のみが単一の信号を作り、プローブ増幅産物ハイブリダイゼーションは、他の真菌(含まれる菌株F122及びSB18)、ブドウ及び土壌サンプルに対して起こらず、ech42プローブの高い特異性が確認された。tga3プローブからなる内部コントロール(二重反応)は、全てのトリコデルマ菌種サンプルのリアルタイムPCR実験において信号を作ることで、プロセスの正確さを確認した。
【0065】
一連の濃度のT.アトロビリデSC1 DNAに対するech42及びtga3TaqManプローブの二重増幅は、所定の濃度それぞれについて同一の閾値にて起こった。これは、ゲノムにおけるech42アンプリコンの単一コピーとTga3遺伝子の単一コピーとがあること、またそれら二つの配列が類似の標準曲線を有することを実証する。また、我々の結果は、二つの配列それぞれについてのPCR反応が同等レベルの効率で進行することを示した(図4)。
【0066】
この方法は、PCR反応につき五つのゲノムコピーのLODをもたらす。土壌サンプルについては、計算されたLODが、反応混合物につき35のコピーまで増加し、g土壌あたり6.2×10分生子に相当し、LOQは、2×10〜3×10g土壌−1の範囲に及んでおり、後者は、一連の別個に接種された土壌に線引きをした(表2)。絶対LODは、PCR反応当たり8.5×10〜1.2×10コピーの範囲である。
【0067】
上記方法の正確さは、試験した五つの分生子濃度レベルで非常に高いものであり(図5)、10〜10分生子g−1の量での分子法によってT.アトロビリデSC1の数量化を得る。
【0068】
実験条件
リアルタイムPCRプライマー及びプローブ:T.アトロビリデSC1エンドキチナーゼ遺伝子(ech42)(Carsolio et al.,1994)を、NCBIジェンバンクに既に存在している配列に基づいた共通プライマーによって増幅させた。得られた完全配列を、BLASTプログラム(Altschul et al.,1997)及びClustalWプログラム(European Bioinformatics Institute,European Molecular Biology Laboratory[http://www.ebi.ac.uk/clustalw/]で入手可能)をそれぞれ用いて、同じデータベースの34の配列と比較し、整列させた。ヌクレオチド配列において幾つかの差異が観測され(特に、特定の遺伝子の第一イントロンでの二つのヌクレオチドミスマッチに気付き)、データベースの一つの配列(日本で単離されたT.ハルジアナムSK−55を指すNCBIジェンバンク受入番号AB041753.1)のみが我々の単離したものと同一であった。従って、リアルタイムPCRプライマー及び菌株特異的TaqManプローブセット(Sigma Aldrich,St.ルイス,ミズーリ)は、ech42遺伝子の3’ストランド上での二つのヌクレオチドミスマッチに基づき、Primer Express v2.0ソフトウェア(PE Applied Biosystems,フォスターシティ,カリフォルニア)を用いて、設計された(表1)。第二プライマーセット及びTaqManプローブは、tga3遺伝子について設計され、それはGタンパク質αサブユニットをコード化する(表1)。
【0069】
リアルタイムPCR:IQ Multiplex Power Mix緩衝液(Bio−Rad,ヘラクレス,カリフォルニア)、それぞれが0.3μMのech42プライマー及びそのプローブ、0.4μMのtga3プローブ及びそれぞれが0.6μMのtga3プライマーを含有する20μlの最終ボリューム中で反応を行った。リアルタイムPCRは、MJ Chromo4サーモサイクラー(MJ Research,ウォルサム,マサチューセッツ)において以下に示す標準プログラムにより行われた:初期変性では2分30秒95℃、伸長工程では95℃で15秒及び1分61℃のサイクルを40サイクルであり、ここで、蛍光信号をOpticon2ソフトウェア(MJ Research,ウォルサム,マサチューセッツ)により測定・分析した。SYBR Green I ケミストリーによりサンプルを分析する場合には、SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystem,フォスターシティ,カリフォルニア)を、0.3μMのech42プライマーセット及び0.3μMのtga3プライマーセットと共に使用した。次いで、増幅条件を変えた:95℃で10分の加熱開始、伸長では95℃15秒及び61℃で1分のサイクルを40サイクル、40℃〜90℃の最終融解曲線、その間、サンプルをゆっくり加熱した(10秒毎に0.5℃)。
【0070】
DNAサンプルの定量は、サンプルの閾値サイクル(Ct)値を、Qubit蛍光光度計(Invitrogen Life Technologies,カールズバッド,カリフォルニア)によって先に定量化された精製ゲノムT.アトロビリデSC1 DNAの既知濃度の標準回帰曲線のCt値で補間することにより行われた。標準曲線は、SC1ゲノムDNAの八つの1:3段階希釈に基づいており、各PCRの実行に含めた。得られた曲線は、傾きが3.0〜3.5の範囲であり、決定係数が0.9より高く、PCR効率が100%であった。SC1の定量は、ゲノムの一倍体コピー数として表され、トリコデルマの単一コピーゲノムサイズが0.034pgであるとみなされた。
【0071】
特異性:上記方法の特異性は、培養収集からのトリコデルマ菌種の50個の単離物(CBSからの26個の単離物、ATCCからの1個の単離物、パビア大学からの13個の単離物、及びSafeCropからの2個の単離物、即ちF122及びSB18)、市販の生物農薬として用いられる2個の単離物(T.ハルジアナムT39及びT.ハルジアナムT22)、イタリア北部の商業ブドウ園で集められた土壌からの6個のトリコデルマ単離物(GIS座標:N46°10.897’及びOE11°06.983’)上で試験された。試験した単離物の7個をT.アトロビリデとして確認した。また、特異性は、土壌中に一般的に存在する真菌属上で試験した:SafeCrop(21)若しくはCBS(1)収集又は土壌からの単離(7)からの、アスペルギルス(Aspergillus)、クラドスポリウム(Cradosporium)、ペニシリウム(Penicilllium)、フサリウム(Fusarium)、アウレオバジジウム(Aureobasidium)、ムコール(Mucor)、グリオクラジウム(Gliocladium)、リゾプス(Rhizopus)、アクレモニウム(Acremonium)、コエロマイセテス(Coelomycetes)、ゲオトリクム(Geotricum)プラスモパラ(Plasmopara)及びアルミラリア(Armillaria)である。
【0072】
全ての真菌単離物をジャガイモブドウ糖寒天(PDA,Oxoid,ベーシングストーク,英国)上で成長させた。DNeasy plant Mini Kit(QIAGEN,ヒルデン,ドイツ)を用いて、50〜100mgの菌糸体からDNAを直接抽出した。T.アトロビリデSC1に対する方法の特異性は、SYBR Green I試験で得た増幅産物及び融解曲線を、ech42及びtga3特異的TaqManプローブを用いて得たものと比較することで試験された。
【0073】
また、トレンティノから4個及び他のイタリア地域(マルケ、バレダオスタ、エミリアロマーニャ、及びカラブリア)から6個の、10個の土壌サンプルも特異性試験に含めた。DNAは、注記されない限り、通常、PowerSoil DNA Isolation Kit(Mo Bio,カールズバッド,カリフォルニア)のために規定されたプロトコルに従って、一晩乾燥した200mgの土壌サンプルから抽出された。
【0074】
ヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis vinifera)栽培品種カベルネ(Cabernet)からのDNAを特異性試験に含め、T.アトロビリデSC1で処理した土壌に存在する根の物質からのDNAの増幅を制御した。植物DNAは、DNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN,イタリア)を用いて抽出された。T.アトロビリデSC1のゲノムDNAのRT−PCR分析では、対照として用いた他の真菌DNA及ぶブドウDNAを約0.2〜1ng取り込み、各PCR反応では、1〜5ngのDNA(4mgの土壌サンプルそれぞれから抽出した合計量)を取り込んだ。
【0075】
再現性、精度及び感度:我々のリアルタイムPCR手順の再現性は、PowerSoil Mega Prep DNA Isolation Kit(Mo Bio,カールズバッド,カリフォルニア)のための製造業者の使用説明書に従い、純粋T.アトロビリデSC1 DNAと真菌(10分生子g−1)が予め接種された土壌7.5gから抽出し、4mlで溶出した全DNAとの懸濁液に対して評価された。方法の精度は、異なる濃度のT.アトロビリデSC1を含有する土壌を用いて評価された。この評価では、篩にかけた滅菌砂状土壌50gのバッチを、最終濃度が10、10、10及び10分生子g−1土壌に達するように、10mlのT.アトロビリデSC1分生子懸濁液と混合した。土壌を一晩60℃にて乾燥させ(200mg)、それらの各分生子濃度を二つの独立したリアルタイムPCRの実行で定量化した後に、各濃度処理について、三つの独立サンプルからDNAを抽出した。
【0076】
定量法の正確さは、推定ゲノムコピーを期待分生子濃度と比較することで求められた。
【0077】
感度:リアルタイムPCR法の感度は、検出限界(LOD)及び定量限界(LOQ)によって定義された。LODは、再現性条件下での標準偏差が33%以下のサンプルにおける最低コピー数に相当する。LOQは、再現性条件下での標準偏差が25%以下のサンプルにおける最低コピー数に相当する。方法の絶対LODは、少なくとも95%の正確さを確保するためにサンプル中に存在する必要のあるコピーの最低数として求められた。
【0078】
表1 トリコデルマ・アトロビリデSC1の検出及び数量化のために設計されたリアルタイムPCRプライマー及びプローブ。ech42TaqManプローブ中の塩基ミスマッチは太字である。
【0079】
【表1】

【0080】
表2 二つの希釈系列の純粋T.アトロビリデSC1 DNAと、二つの希釈系列の、log10分生子g土壌−1が接種された土壌サンプルから抽出した全DNAと、減少する量の分生子が接種された一連の土壌から抽出された全DNAの分析とから決定したゲノムコピー数(CN)の総体標準偏差(RSDr)を用いて決定した検出限界(LOD)及び定量限界(LOQ)。LOD及びLOQは相対標準偏差(RSDr)がそれぞれ33%及び25%に設定された。絶対LODは、95%のDNA検出レベルに相当する。
【0081】
【表2】

【0082】
例3.生成方法及び処理方法
T.アトロビリデSC1は、ジャガイモブドウ糖寒天、栄養ブロス、マルツエキス寒天としての幾つかの一般的な実験用培地上で首尾よく成長させた。
【0083】
それは、以下に示す三つの既知の方法の内の一つによって適用された:培養ブロス中、米上、又は樹皮/ピート上での成長である。
【0084】
三つの方法は、T.アトロビリデSC1のうち99%の生存可能なムカゴを提供した。
【0085】
米上で生成された又は樹皮上で成長したT.アトロビリデSC1は、少なくとも1年間15℃及び98%RHにて生存する。T.アトロビリデSC1は、野菜修正剤又は樹皮上で成長した。
【0086】
他のT.アトロビリデ菌株の場合には違いが観測され、特には、T.アトロビリデF122は、上記条件にて樹皮又はピート上で生存しなかった。
【0087】
実験条件
農業組成物の調製は、以下に示す方法のうち一つに従って行われた:
a)培養ブロス(栄養ブロス又はマルツエキスブロス)のT.アトロビリデSC1菌糸体又は分生子(少なくとも10分生子/L)の接種、及び連続振盪下でのインキュベーションを、20〜25℃の温度にて少なくとも48時間行った。ろ過した又はろ過しない培養ブロスを植物に吹き付け又は土壌に取り入れた。
b)滅菌された炊いた米(又は同等の穀物)に分生子T.アトロビリデSC1菌糸体又は分生子(少なくとも10分生子/100g)を接種し、21日間25℃でインキュベートした。土壌処理では、米−T.アトロビリデSC1を、土壌の最初の3cmにおける接種量が1×10cfu g−1土壌であるように、土壌に混合した。葉の処理では、水で洗浄することで、米からT.アトロビリデSC1分生子を回収し、他の噴霧アジュバント(湿潤剤、乳化剤等)を添加した場合と添加しない場合で適用した。
c)T.アトロビリデSC1を、成長微生物培地(栄養ブロス)で予め処理した若しくは処理しなかった樹皮片上で、又は炭素源及び窒素源を含有する栄養物質(粉砕した米)上で成長させた。樹皮にT.アトロビリデSC1(少なくとも10分生子/100g)を接種し、少なくとも2日間又はコロニー形成まで20〜25℃にてインキュベートした。接種した樹皮は、植物の培養中いつでも修正剤として使用でき、生存する土壌伝播性の病原体の制御を提供したり又は新たな感染を防止する。野菜修正剤(ピート)に、栄養物質なしで、樹皮にしたようにして接種した。
【0088】
例4.イチゴ葉面上でのT.アトロビリデSC1の生存
イチゴ葉面上での生存可能なT.アトロビリデSC1分生子の個体群密度は、接種後の第1週目の間にすぐに減少した。真菌の個体群は、適用後15日目まで、連続する減少を示し、その後、実験を完結した45日目まで低いCFU濃度を維持した(図6)。T.アトロビリデSC1は、植物毒性を起こさず、イチゴの葉、花又は果実の病原体とならず、イチゴ葉上で一月以上生存した。
【0089】
実験条件
T.アトロビリデSC1の分生子懸濁液は、炊いた米上で成長し21日たった培養物を、滅菌蒸留水(SDW)中0.01%のTween80(Sigma)で洗浄することで得られた。三層の滅菌レンズティッシュを通して、分生子懸濁液をろ過し、菌糸体断片を除去した。分生子濃度は、Thomas血球計算器を用いて決定され、10分生子・ml−1の濃度に調整した。接種材料中での生存可能な分生子の濃度は、2ml・l−1のTriton X−100(Sigma)で修正されたPDA上の連続希釈におけるコロニー形成単位(CFUs)を数えることにより決定された。25℃で数日間の培養物のインキュベーションの後に、コロニーを数えた。
【0090】
制御されたグリーンハウス条件(25±2℃、RH=60±10%)下で保たれた10個のイチゴ植物の葉は、ハンドスプレーを用いて、T.アトロビリデSC1接種材料が均一に吹き付けられた。無作為に選んだ一枚の葉を、接種後0日、1日、3日、7日、15日、30日及び35日で、各植物から取り去った。滅菌コルク穿孔器を用いて、各葉から一枚の葉のディスク(直径25mm)を切り取った。ディスクを、Tween80(0.01%)5mlを含有するファルコン管に移し、4分間振盪し、その後、1分間放置した。SDWの希釈系列を、ローズベンガル(100ppm)、ストレプトマイシン(100ppm)及びクロラムフェニコール(50ppm)で修正されたPDAからなる半選択的培地上に固定し、細菌の存在を最小限に抑えた。適切な希釈物上でCFUsを数え、その結果をCFU・mm−2葉として表した。希釈プレートからのCFUカウントを葉mm−2当たりのCFUに変換した。この実験を2回行ったが、2回の実験間で実験上の有意差は観察されなかった。
【0091】
例5.土壌中でのT.アトロビリデSC1の生存
T.アトロビリデSC1は、少なくとも三つの異なる種類の土壌中で生存することができた。土壌中への導入後、T.アトロビリデSC1は、図7に示される滅菌土壌及び非滅菌土壌からの希釈プレート上での回復によって示されるように、実験の終わりまで(45日)生存した。また、異なる土壌の特徴は、真菌の生存に影響を与えた。高いレベルの有機物を備える砂状ローム質土壌(2及び3)で得られた結果は、相互に類似していたが、より少ない有機物を有する粘土質ローム(土壌1)で得られた結果と異なっていた。
【0092】
オートクレーブ処理による土壌無菌化は、T.アトロビリデSC1のより長い生存と関係があった。滅菌土壌では、真菌濃度が、三日でほぼ1桁増加し、滅菌土壌1においては、最大濃度が10CFU・g−1乾燥土壌に達し、土壌2及び3においては少し低かった。その後、T.アトロビリデSC1濃度は、全ての土壌タイプで接種(図7a)してから45日後まで10〜10CFU・g−1乾燥土壌の間にとどまっていた。無菌化土壌中の最終真菌濃度は、土壌1の場合と比べて土壌2及び3の場合が有意に高かった(P≦0.05)。
【0093】
接種後30日での土壌1の場合を除いて、各評価日での各土壌タイプの滅菌処理及び非滅菌処理に対するCFU値間には有意差があった。T.アトロビリデSC1のCFU値は、無菌化土壌中で増加した。非滅菌土壌2中でのCFU値は、非滅菌土壌3と類似していた。未処理土壌1では、接種後1日でのCFUs数の増加が小さかったが、全ての土壌タイプの実験の終わりでの分生子濃度は、初期接種のものより低かった。未処理土壌での最終分生子(CFU)濃度は、土壌2及び3の場合と比べて土壌1の場合が有意に高かった(P≦0.05)。T.アトロビリデSC1の生存に対する土壌無菌化の効果は、土壌1の場合より土壌2及び3の場合の方がより明白であった。
【0094】
対照として用いた未処理(非接種)ミクロ生態系では、非常に低いレベルの天然トリコデルマ菌種(1〜3・10CFU g−1)を検出したが、CFUsのどれもがT.アトロビリデとして同定されなかった。
【0095】
実験条件
土壌生存アッセイは、一部変更があるものの、Bennet et al.(2003)に記載の方法に基づいていた。異なる物理的特性及び化学的特性を持つイタリア北部(トレンティノ地域)からの土壌3種類(表1)を用いた。土壌を室温で乾燥させ、篩にかけた(メッシュ<2mm)。篩にかけた土壌(100g)を500mlのポリプロピレンボトルに置き、サンプルを室温にて未処理のまま置いておくか(非滅菌)又は2度連日でオートクレーブ処理(121℃,30分)した(滅菌)。
【0096】
接種物を上記のようにして用意した。無菌条件下で実験を行った。分生子を土壌に加え、10分生子・g−1土壌の最終濃度を得、滅菌スパチュラで混合した。ボトルを室温でインキュベートした。土壌種類×土壌処理(非滅菌及び滅菌)の組み合わせそれぞれに対し、5回の反復試験をセットした。
【0097】
土壌のサブサンプル(1g)を、滅菌サンプルスプーン(PBI International,ホイットスタブル,UK)を用いて各サンプルボトルから無菌で取り出し、10mlの0.01%Tween80中に置き、4分間振盪し、1分間放置した。希釈系列をセットし、上記のように半選択的培地上に固定した。25℃でのインキュベーションの7日後、適切な希釈プレート上でCFUsを数え、CFU・g−1乾燥土壌として表した。土壌サンプル中でのCFU評価は、接種直後と、接種後1日、5日、10日、20日、30日及び45日目に行われた。希釈プレートからのCFUカウントを乾燥土壌のグラム当たりのCFU(CFU・g−1)として表した。
【0098】
例6.ブドウ園土壌中でのT.アトロビリデSC1の生存
商業ブドウ園における土壌中での生存についても1年間にわたって調べた。実験は2回繰り返し行った。
【0099】
T.アトロビリデSC1は、両方の年で長い期間(処理後少なくとも18週間)、土壌の第一層(土壌表面)上で、高い分生子濃度(10CFU・g乾燥土壌−1)にて生存することができた。T.アトロビリデSC1は、処理後極めて迅速に(一週間)、土壌中を垂直方向に移動し、0.4mの深さに達した。そのときのCFU濃度は、二年間の間18週目の評価まで安定した値を維持した。個体群密度の勾配が、両方の年で表面から土壌深層まで存在していた。検出された最高CFU数は、土壌深さ0.1mで10CFUg乾燥土壌−1であり、0.2mで約10CFUg乾燥土壌−1であり、0.3及び0.4mで10CFUg乾燥土壌−1であった。二年間での個体群動態の違いが、有意に異なる処理(チューキー法;α=0.05)から5週後及び9週後、土壌表面のCFU濃度のみに存在していた。特に9週後には、土壌表面上でのT.アトロビリデSC1のCFUが、5週目の初期減少の後の、初期接種濃度(10CFUg乾燥土壌−1)よりもはるかに増加した。土壌接種後1年では、T.アトロビリデSC1は、未処理領域での常在トリコデルマ菌種と比較できる濃度にて両実験について、10〜10CFUg乾燥土壌−1の濃度で検出された。リアルタイムPCR法は、土壌導入前での菌株の非存在及び土壌層での菌株の持続性を確認した。
【0100】
二つの方法(CFU計算法及び分子法)で得た結果間での直線関係(y=0.8472x+0.1105,R2=0.6794)は、T.アトロビリデSC1の分子検出効率を確認する。
【0101】
その土壌中での9週の放出後、土壌表面における処理穴から0.5及び2mの距離、土壌深さ0.1及び0.3mで、T.アトロビリデSC1を見つけた。CFUは、未処理領域、土壌表面、処理穴から0.5及び2m、処理穴から0.5mの距離での土壌深さ10cmで単離された常在トリコデルマ菌種個体群と比べて有意に高かった(チューキー法;α=0.05)。処理穴から0.5及び2mの距離での他の土壌層におけるSC1分生子濃度は、未処理領域で単離された常在トリコデルマ菌種個体群と比べて有意に高くなかった(チューキー法;α=0.05)。T.アトロビリデSC1の発生頻度は、高く(全ての土壌深さでの処理穴から0.5mでそれぞれ100%)、土壌表面、土壌深さ0.1及び0.3mでの処理穴から2mの距離でそれぞれ90%、70%及び30%に減少した。
【0102】
その土壌中での導入から18週後でも、土壌表面において、処理穴から2及び4mの距離でT.アトロビリデSC1をまだ回復することが可能であった。それらのCFU濃度は、未処理領域から得た常在トリコデルマ菌種の分生子濃度と比較して有意差がなかった(チューキー法;α=0.05)。18週後に低濃度を検出しても、T.アトロビリデSC1の発生頻度は高かった(処理穴から2及び4mでそれぞれ80及び70%)。
【0103】
処理土壌中に植えたブドウの木の葉の上でT.アトロビリデSC1を見つけた。T.アトロビリデSC1のCFU数(葉のmm−1は、未処理領域の植物上で単離した常在トリコデルマ菌種と比較して、処理土壌における植物の葉が有意に高かった(チューキー法;α=0.05)。処理領域における植物の最高部及び底部の葉の間では、表面単位(mm)当たりのT.アトロビリデSC1のCFUにおいて有意差があった(チューキー法;α=0.05)。
【0104】
処理穴に植えてから18週後、ブドウ根圏におけるT.アトロビリデSC1の濃度は、10CFUg乾燥土壌であった。
【0105】
葉数、芽数、乾燥根重、茎長、ブドウ植物の全長は、未処理又はT.アトロビリデSC1処理の土壌に植えたブドウ間で有意差を示さず(チューキー法;α=0.05,データを示さず)、真菌がブドウ培養の病原体でないことを示した。
【0106】
接種から1年後のT.アトロビリデSC1の単離は、それが冬の低温及び土壌中での湿度変動に耐えることができることを示す。接種から1年後の土壌中でのT.アトロビリデSC1の濃度は、常在トリコデルマ菌種と同様に、それが土壌に根付くことができることを示す。
【0107】
異なる菌株T.アトロビリデF122を用いて、2006年に同一の試験を行った。接種してから18週後までのみこの菌株を検出し、接種してから一年後に検出を行わなかった。比較できる成長条件において接種してから1年後にT.アトロビリデF122が生存できないことは、T.アトロビリデSC1の他の菌株に対する優位性を示す。
【0108】
実験条件
全ての実験において、生存可能なT.アトロビリデSC1の濃度は、各プロットから土壌のサンプル1gを回収し、各サンプルを10mlの滅菌水中に置き、次いで、10倍連続希釈後の、この懸濁液1mlを半選択的培地上に置くことで評価された。インキュベーションの7日後に真菌のコロニーを数え、固体群数をlogCFUg乾燥土壌−1の単位で表した。土壌の乾燥重量は、サンプル(又はサブサンプル)の60℃にて48時間のインキュベーションの後で評価された。接種物として用いた米上の分生子は、通常、100%に近い平均生存率を有していた。T.アトロビリデSC1コロニーは、他のトリコデルマ種と、それらの特徴的な気菌糸(最初が白色で、次いで黄色っぽい緑色からオリーブグリーンに変化する)によって区別された。我々の単離物の明確な同定については、T.アトロビリデとして形態学的に識別された各プレートからのコロニーのほぼ10%の同一性が、(例2の場合のように)T.アトロビリデSC1に特異的なエンドキチナーゼ遺伝子(Ech42)の塩基変異に基づく、プライマー及びTaq−Manプローブセットを用いたPCR分析によって確認された。実験は、それぞれが0.6×0.6mである6個のプロットで構成されており、それらは、ブドウ園の作条にあるブドウ植物間に位置していた。3個のプロットにT.アトロビリデSC1を接種し、それぞれがそこで成長した真菌を備える500gの炊いた米の培地を受けた。接種材料を土壌表面層(深さが約30mm)中に混合した。この層中での真菌接種材料の初期濃度は、10CFUg乾燥土壌−1であると評価された。3個の接種されてない追加のプロットを未処理の対照として用いた。各プロットでは、プロットの一面の外側部分を掘削し、土壌断面をさらすことで、土壌のサンプリングをした。異なる深さ(表面、0.1m、0.2m、0.3m、及び0.4m)及び時点(接種時、T.アトロビリデSC1接種の1週間後、5週間後、9週間後、18週間後)で、土壌(直径50ml、300mm)の三つの横ニンジン(transverse carrot)を集めることで、サンプリングを行った。追加の土壌サンプリングを最初の実験の接種から1年後に行った。
【0109】
土壌のサブサンプル(1g)を滅菌スプーンを用いて各サンプルから取り出した。土壌のサブサンプルを0.01%Tween80(Acros Organics,ヘール,ベルギー)10ml中に置き、vortex(Hidolph Instruments,シュワーバハ,ドイツ)を用いて4分間振盪し、1分間放置した。滅菌蒸留水の希釈系列をセットし、希釈懸濁液を半選択的培地を含有するペトリ皿上に固定した。次に、該ペトリ皿を25℃でインキュベートし、インキュベーションの5日後に適切な希釈物に相当する培地上で最終コロニーのカウントを行った(プレート当たり30〜300コロニーの範囲のCFU)。各土壌サンプルについて3回の反復試験があった。結果をCFUg乾燥土壌−1として表した。T.アトロビリデSC1コロニーの同一性を実験番号に記載されるようにして確認した。
【0110】
リアルタイムPCRを用いて、2006年の全てのサンプルにおけるT.アトロビリデSC1ゲノムコピー(CN)の数を決定した。RT−PCR分析では、深さ及び時間の組み合わせそれぞれについて、独立した二つのサブサンプルを集め、各サンプルのDNA抽出及びリアルタイムPCR分析を例2に記載されるように行った。
【0111】
T.アトロビリデSC1の分散を2006年に試験した。0.3×0.3×0.3mの寸法の穴を、ブドウ園の作条においてブドウ植物間に掘った。10個の穴を掘った土壌及びT.アトロビリデ接種材料の混合物でいっぱいに満たした(400g穴−1)。初期真菌接種濃度は、10CFUg乾燥土壌−1であった。他の10個の穴は、未処理の掘った土壌を戻して満たされた。1歳のブドウ植物(Kober5BB上でのピノ・グリ)を各穴に植えた。
【0112】
二組の土壌サンプルを回収した。接種してから9週後に、処理及び未処理の両方の穴(0m)において、また穴から0.5及び2.0mの水平距離にて、第一のサンプリングを行った。それら距離のそれぞれについて、土壌サンプルを、三つの土壌深さ(0、0.1及び0.3m)で集めた。第二のサンプリングを接種してから18週間後に行い、その時には、穴の表面(土壌の最初の30mm)と接種場所から2.0及び4.0mの水平距離のみにて、土壌サンプルを回収した。サンプルを回収し、各サンプルにおけるCFU数を先に記載のように決定した。T.アトロビリデSC1濃度(CFUg乾燥土壌−1)及び頻度(少なくとも1のCFUを持つ土壌サンプルの割合)を考慮して、分散を評価した。
【0113】
土壌からのT.アトロビリデSC1の、ブドウの葉に対する移動を、土壌接種してから10週後に評価した。3枚の頂端側の葉と3枚の底部の葉とを、処理及び未処理穴で成長する各植物(各植物は平均15枚の葉を有していた)から取り除いた。回収された新鮮な葉のそれぞれを、滅菌蒸留水及び0.01%Tween80の30mlを含有するファルコン管に移した。該管を3分間振盪し、次いで、得られた各懸濁液1mlを、半選択的培地を含有するペトリ皿に移した。25℃でのインキュベーションの7日後にCFUを数えた。葉の面積を、画像処理解析プログラム、Image Tool 第2版(UTHSCSA,サンアントニオ,TX,USA)を用いて算出した。実験の終わりに、土壌から植物を取り出した。しっかりと根に付着しなかった土壌は、軽い振盪で慎重に取り去り、次いで、ビニール袋中で根を激しく振盪し、根圏土壌を除去した。根圏土壌のサンプリング及び該サンプルのCFU集計(サブサンプル1g;3回の反復試験)は、先に記載のように行われた。
【0114】
T.アトロビリデSC1の植物の成長に対する影響を評価するため、各植物について、処理及び未処理領域において、土壌接種してから9週及び18週後に、全長、茎長、葉及び芽の数の測定を行った。また、各植物について、実験の終わりに(接種してから18週後に)根乾燥重量を決定した。
【0115】
例7.生体外での生物防除活性
二重培養生物アッセイでは、T.アトロビリデSC1が、100%の拮抗効率で、B.シネレア及びA.メレアを完全に抑制した。
【0116】
実験条件
一つの葉と果物(ボトリチス・シネレア)及び一つの土壌伝染性(アルミラリア・メレア)病原体に対する生体外T.アトロビリデSC1拮抗作用を、以下の通り二重培養法を用いて試験した:病原体(B.シネレア又はA.メレア)を、ペトリ皿(直径90mm)のPDA上のT.アトロビリデSC1(B)から2cmの距離(A)に接種した。B.シネレア、A.メレア及びT.アトロビリデSC1をそれぞれ未処理の対照として単独で成長させた。各組み合わせで、少なくとも3回の反復試験があった。20℃でのインキュベーションの1週後に、拮抗効率を(AD−AC)×100/ADとして算出した。ここで、AC及びADは、それぞれT.アトロビリデSC1が有りの場合と無しの場合での病原体の放射方向成長である。
【0117】
例8.粉末ウドンコ病の生物防除
T.アトロビリデSC1は、キュウリ及びズッキーニのような園芸作物上での粉末ウドンコ病(ポドスファエラ・キサンチイ)を、最も広く使用される化学農薬の一つであり、それ故に標準(図8)として含めた硫黄と同じレベルで制御した。特に、T.アトロビリデSC1が硫黄と同じレベルで病気を制御し、標準として用いた二種のトリコデルマ菌種より優れていることが観測された。また、ズッキーニに対しても、生物防除効力を示した(未処理の場合と有意差があった)。
【0118】
実験条件
感受性栽培品種のうち十分に大きくなった葉を少なくとも5枚持つ植物を用いた。用いた栽培品種は、ズッキーニがAfrodite又はXaraで、キュウリが807であった。1リットルポット中のピート:火山砂利ポッティングミックス(1:1)に種を植えて、20〜30℃に保たれたCPMフリーのグリーンハウス内にて自然な光周期で成長させた。各処理及び穀物の5〜6回反復試験(ポット)があった。P.キサンチイ接種材料は、最初に、商業グリーンハウスにおいて、自然に感染したズッキーニ及びキュウリ植物上で集められ、その後、3週たった植物を感染させ、個別のグリーンハウス区画内で感染植物を最高で一月保持することで、キュウリ及びズッキーニ上に保存した。新鮮で新しい分生子形成菌糸を有する葉を水で洗浄することにより分生子を得、すぐに植物上に吹き付けた。接種濃度は約10分生子ml−1であり、5ml植物−1のボリュームを適用した。乾燥させた時点で、植物を、22℃及び高い相対湿度(RH>95%)で一晩インキュベートした。人為的な接種後の日中の条件は、20〜30℃で、30〜70%RHであり、夜間の条件は、15〜20℃で、85〜90%RHであった。完全に無作為に選ばれたブロックに植物を並べた。
【0119】
T.アトロビリデSC1は、栄養ブロス中で成長させ(方法a),例3)、ハンドスプレーによって葉上に吹き付けた。また、未処理対照、硫黄(Thiovit,Syngenta Crop Protection)及び市販の生物防除剤(トリコデルマ・ハルジアナムT39,Trichodex(登録商標),Intrachem bio)も実験に含めた。各処理では、植物に対して5mlの溶液植物−1を吹き付けた。実験を少なくとも2回繰り返し行った。T.アトロビリデSC1及び対照を完全に無作為に選んだブロックに並べた。接種して7日後から始まり、週一回、粉末ウドンコ病の症状に関して葉を調べた。存在する場合、病気の重症度を点数化した。病気の重症度は、葉全体に対する徴候のある葉の面積の割合として測定された。
【0120】
分散分析(ANOVA)を用いて、逆正弦変換して正規化したデータを分析した。この分析は、Statistica第7版(StatSoft,タルサ,OK,USA)を用いて行われた。チューキーHSD法(α=0.05)に従って、平均値を分けた。ANOVAの条件を満たさない場合には、Kursal−Wallisノンパラメトリック試験を用いた。
【0121】
例9.木の病気(エスカ病)の薬剤の生物防除
T.アトロビリデSC1は、エスカ病の主要な三つの病原体を制御する。ファエオモニエラ・クラミドスポラ、ファエオアクレモニウム・アレオフィルム及びフォミチポリア・メジテラネアの制御の有効性は、非常に高く、100%に近い(図9)。グラフは、5回の反復試験(ペトリ皿)の平均を表す。T.アトロビリデSC1の制御効力は、通常、標準として用いた生物防除剤(バチルス・サブチリスF77)より優れていた。
【0122】
実験条件
先に述べた三つの病原体のそれぞれを、ペトリ皿のPDA上で、縁から3cmに接種し、25℃にて一週間インキュベートした。次いで、T.アトロビリデSC1を、反対側で、縁から3cmの距離に接種した。各病原体及び未処理対照について、5回の反復試験を行った。菌糸体の成長を、処理から2、4、9、14、19、24及び29日後に測定した。特に、Cは、未処理での成長(mm)であり、TはT.アトロビリデSC1による処理での成長(mm)である。効力は、以下の式[(C−T)/C]×100で求めた(Sivakumar et al.,2000)。
【0123】
例10.根腐れの生物防除
アルミラリア・メレア及びA.ガリカは、数種の作物に関する根の腐敗の主要な病原体である。T.アトロビリデSC1は、これら二つの病原体に対して有効であり、また標準的な生物防除剤としてのT.ハルジアナムT39よりも効果的である。それは、病原体の成長を低減し、最終的にはそれらを殺した。これは、図10に示す木片上で成長した二つの病原体に対する制御条件実験において明らかである。ここでは、トリコデルマ・アトロビリデSC1の存在下又はその不存在下におけるアルミラリア・メレア及びアルミラリア・ガリカ(根腐れ病原体)の菌糸体成長を比較した。トリコデルマ・ハルジアナムT39−取引名Trichodex(登録商標)−の実験効果を比較のためにここに示す。その成長は、20℃のペトリ皿のPDA上の木片上で成長した5回の反復試験の直径の平均として表される。
【0124】
また、T.アトロビリデSC1は、植物への感染を防止することもできる。実際、死んだ(感染した)植物の割合を最初の適用から6月後に評価した。それは病気の症状が明らかになった時である。そして、T.アトロビリデSC1がA.メレア(60%の保護)及びA.ガリカ(100%の保護)からイチゴ植物を保護したことが分かった。逆に言えば、該病気に対し、T.アトロビリデF122はほんの20%の保護であり、T.ハルジアナムT39はほんの13%の保護であった(図10及び11の値は、10回の反復試験植物で求めた割合である)。
【0125】
イチゴ植物の場合、それは、適用から6月後であっても、A.メレア及びA.ガリカが原因の病気を有意に減少させた。
【0126】
T.アトロビリデF122をA.メレア用の比較として用い(図11)、それがSC1菌株と比べて有意に低い活性を示すことが分かった。
【0127】
実験条件
A.メレア及びA.ガリカを、ペトリ皿のPDA上の木片上における該木片の一方の面に接種し、25℃で一週間インキュベートした。次いで、T.アトロビリデSC1を反対側に接種した。各病原体及び未処理の対照について5回の反復試験を行った。治療後に週一回6週間、菌糸の成長を測定した。
【0128】
イチゴ植物(Elasanta cv)には、A.メレア又はA.ガリカにより感染した三つの木片を植物の樹冠近傍に置くことにより接種した。植物は、方法b)(例3参照)により成長させたT.アトロビリデSC1を用いて処理され、そして、例3に記載の方法c)は、ブルーベリー植物のような高いレベルの有機物を必要とする植物を保護するという同様の目的のために代わりに使用され、図11に示されるイチゴ植物の場合に得た結果と同様の結果を与えた。植物は、グリーンハウス制御条件下で保たれた。
【0129】
(参考資料)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物防除剤としてのトリコデルマ・アトロビリデSC1(CBS番号122089)。
【請求項2】
植物の真菌病を治療するための請求項1に記載のトリコデルマ。
【請求項3】
同じ植物の病原体特異性を備える請求項1に記載のトリコデルマ・アトロビリデSC1に由来する変異体又は菌株。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のトリコデルマ・アトロビリデSC1を有効成分として含む農業組成物。
【請求項5】
10〜10分生子ml−1又はg−1の有効量を含む請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
更に、第二生物防除剤及び/若しくは添加剤、乳化剤、植物栄養剤、湿潤剤、植物微量栄養剤、又は基層を含む請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
前記基層が、栄養培地、穀物若しくはその誘導体、アメンダント、野菜若しくはその一部分、ピート、木若しくはその断片、粘土又は樹皮からなる群から選択される請求項4〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載のトリコデルマ・アトロビリデSC1を基層の中又は上に接種することと、少なくとも10〜10ml−1又はg−1の分生子数を得るまで1〜30℃の温度でそれを成長させることとを含む農業組成物の調製方法。
【請求項9】
更に、凍結乾燥工程を含む請求項8に記載の農業組成物の調製方法。
【請求項10】
前記基層が、栄養培地、穀物若しくはその誘導体、野菜若しくはその一部分、木若しくはその断片、アメンダント、ピート、粘土又は樹皮からなる群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記栄養培地が、少なくとも炭素源及び窒素源を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記炭素源が、マンノース、ガラクトース、スクロース、マルツエキス、セルビオース、グルコース、及びスレアロースからなる群から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記窒素源は、酵母エキス、亜硝酸塩、トリプトン、ペプトン、グルタミン、及びアスパラギンからなる群から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記穀物が米又は小麦である請求項10に記載の方法。
【請求項15】
トリコデルマ・アトロビリデSC1の接種前に前記基層を栄養培地で処理する請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記栄養培地を前記基層上に吹き付ける請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記吹き付けられた基層が樹皮である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
植物病原菌が原因の病気から植物を保護する方法であって、少なくとも植物の一部分又は前記植物近傍にある土壌を請求項3〜5のいずれかに記載の組成物で処理することを特徴とする方法。
【請求項19】
前記植物の一部分が、葉、果実、種子、又は創傷部である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が請求項7に従って調製されたことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記病原菌が、木の病気(ファエオモニエラ・クラミドスポラ、ファエオアクレモニウム・アレオフィルム及びフォミチポリア・メジテラネア)、葉の病気(粉末ウドンコ病病原体ポドスファエラ・キサンチイ)、果実及び花の病気(ボトリチス・シネレア)、並びにアルミラリア属(アルミラリア・メレア及びA.ガリカ)に起因する根の病気の原因になるものからなる群から選択される請求項18〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記植物が、ウリ科、バラ科、ブドウ科、アブラナ科、キク科、セリ科、ナス科及びユリ科からなる群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記植物が、ウリ科、バラ科又はブドウ科からなる群から選択される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜3のいずれかに記載のトリコデルマ・アトロビリデSC1の凍結乾燥物又は寒天中での培養物。
【請求項25】
請求項1〜3のいずれかに記載の微生物を有効量含むか又は請求項4〜6のいずれかに記載の組成物で処理した基層。
【請求項26】
請求項7〜16のいずれかに記載の方法に従って得られる請求項25に記載の基層。
【請求項27】
樹皮である請求項25又は26に記載の基層。
【請求項28】
トリコデルマ・アトロビリデSC1の特異的検出方法であって、エンドキチナーゼ42遺伝子(ech42)ジェンバンク受入番号AB041753.1及びGタンパク質αサブユニット遺伝子(tga3)ジェンバンク受入番号AF452097.1の平行増幅を適切なプライマーセットによるPCRによって達成し、前記トリコデルマ・アトロビリデSC1を含むサンプルにおいては、エンドキチナーゼ42遺伝子の位置185及び196における二つの多形ヌクレオチドを特異的に同定することを特徴とする方法。
【請求項29】
エンドキチナーゼ42遺伝子(ech42)増幅のためのプライマーセットが、SEQIDNO:1及びSEQIDNO:2の配列を有しており、Gタンパク質αサブユニット遺伝子(tga3)増幅のためのプライマーセットが、SEQIDNO:4及びSECIDNO:5の配列を有する請求項28に記載の方法。
【請求項30】
リアルタイムPCRであり、(ech42)のプローブは、エンドキチナーゼ42遺伝子の位置185及び196における多形ヌクレオチドを含み、好ましくはSEQIDNO:3に対応する請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−518545(P2011−518545A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500351(P2011−500351)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際出願番号】PCT/IT2008/000196
【国際公開番号】WO2009/116106
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(510249575)トレンティノ シヴィルッポ ソシエタ ペル アチオニ (1)
【出願人】(510249586)
【Fターム(参考)】