説明

検出装置、アナログ変調回路、及び試験装置

【課題】簡単な構成によりスキューを調整する。
【解決手段】
【請求項1】信号発生装置から信号処理装置に対して並列に供給する第1及び第2のアナログ信号のスキューを検出する検出装置であって、信号発生装置が出力する、第1のアナログ信号と第2のアナログ信号とを乗算する乗算部と、乗算部における乗算結果に基づいて、スキューの値に応じたレベルの信号を出力する検出部とを備える検出装置を提供する。検出装置は、信号発生装置に、略同一の周期を有する第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号を出力させる信号制御部を更に備えてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、アナログ変調回路、及び試験装置に関する。特に本発明は、信号発生装置から信号処理装置に対して並列に供給する第1及び第2のアナログ信号のスキューを検出する検出装置、アナログ変調回路、及び試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受信装置を試験する試験装置は、一例として、信号発生装置と、直交変調器とを備える。信号発生装置は、受信装置に送信する2チャンネルの送信信号を生成する。直交変調器は、2チャンネルの送信信号をローカル信号により直交変調した変調信号を生成する。そして、試験装置は、直交変調器により生成された変調信号を試験信号として受信装置に供給して、当該受信装置を試験する。
【0003】
ここで、試験装置は、信号発生装置から発生された2チャンネルの送信信号を互いに位相ずれなく直交変調器に到達させるように、キャリブレーションにより信号発生装置のチャンネル間のスキューを調整していた。試験装置は、一例として、信号発生装置から直交変調器までの第1のチャンネルと第2のチャンネルとの間の遅延差を例えばネットワークアナライザにより解析し、解析結果に応じてスキュー調整をしていた。
【0004】
なお、現時点で先行技術文献の存在を認識していないので、先行技術文献に関する記載を省略する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、信号発生装置から発生された2チャンネルの送信信号のスキューをネットワークアナライザを用いて調整する方法は、手間がかかり、装置構成も大きい。従って、この方法は、コストが高かった。
【0006】
そこで本発明は、上記の課題を解決することのできる検出装置、アナログ変調回路、及び試験装置を提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1形態においては、信号発生装置から信号処理装置に対して並列に供給する第1及び第2のアナログ信号のスキューを検出する検出装置であって、信号発生装置が出力する、第1のアナログ信号と第2のアナログ信号とを乗算する乗算部と、乗算部における乗算結果に基づいて、スキューの値に応じたレベルの信号を出力する検出部とを備える検出装置を提供する。
【0008】
本発明の第2形態においては、生成した送信信号を変調して出力するアナログ変調回路であって、送信信号のI信号及びQ信号を生成する信号発生装置と、信号発生装置から送信信号を受け取り、送信信号を変調して出力する信号処理装置とを備え、信号処理装置は、第1の入力端子を介して受け取ったI信号に所定のローカル信号を乗算するI側乗算部と、ローカル信号の位相を略90度シフトするシフト部と、第2の入力端子を介して受け取ったQ信号に、シフト部が出力するローカル信号を乗算するQ側乗算部と、I側乗算部が出力する信号とQ側乗算部が出力する信号とを加算して出力する出力部と、第1の入力端子が受け取ったI信号と、第2の入力端子が受け取ったQ信号とのスキューを検出する検出装置とを有し、検出装置は、信号発生装置に、略同一の周期を有する第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号を出力させる信号制御部と、第1の入力端子から分岐して第1のアナログ信号を受け取り、第2の入力端子から分岐して第2のアナログ信号を受け取り、第1のアナログ信号と第2のアナログ信号とを乗算する乗算部と、乗算部における乗算結果に基づいて、スキューの値に応じたレベルの信号を出力する検出部とを含むアナログ変調回路を提供する。
【0009】
本発明の第3形態においては、被試験受信回路を試験する試験装置であって、生成した送信信号を変調して被試験受信回路に出力するアナログ変調回路と、アナログ変調回路から出力された信号に応じて被試験受信回路が出力した信号を判定する判定部とを備え、アナログ変調回路は、送信信号のI信号及びQ信号を生成する信号発生装置と、信号発生装置から送信信号を受け取り、送信信号を変調して出力する信号処理装置とを有し、信号処理装置は、第1の入力端子を介して受け取ったI信号に所定のローカル信号を乗算するI側乗算部と、ローカル信号の位相を略90度シフトするシフト部と、第2の入力端子を介して受け取ったQ信号に、シフト部が出力するローカル信号を乗算するQ側乗算部と、I側乗算部が出力する信号とQ側乗算部が出力する信号とを加算して出力する出力部と、第1の入力端子が受け取ったI信号と、第2の入力端子が受け取ったQ信号とのスキューを検出する検出装置とを含み、検出装置は、信号発生装置に、略同一の周期を有する第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号を出力させる信号制御部と、第1の入力端子から分岐して第1のアナログ信号を受け取り、第2の入力端子から分岐して第2のアナログ信号を受け取り、第1のアナログ信号と第2のアナログ信号とを乗算する乗算部と、乗算部における乗算結果に基づいて、スキューの値に応じたレベルの信号を出力する検出部とを含む試験装置を提供する。
【0010】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、本実施形態に係る試験装置10の構成を被試験受信回路100とともに示す。試験装置10は、波形データ発生部12と、アナログ変調回路20と、判定部14とを備え、被試験受信回路100を試験する。
【0013】
波形データ発生部12は、被試験受信回路100に対して送信する2チャンネルの送信信号である第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の波形データを発生する。アナログ変調回路20は、波形データ発生部12により発生された波形データに応じて、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号を生成する。そして、アナログ変調回路20は、生成した送信信号である第1及び第2のアナログ信号を変調して被試験受信回路100に出力する。アナログ変調回路20は、一例として、第1及び第2のアナログ信号をローカル信号により直交変調した変調信号を被試験受信回路100に出力してよい。
【0014】
判定部14は、アナログ変調回路20から出力された信号に応じて被試験受信回路100が出力した信号を判定する。判定部14は、一例として、アナログ変調回路20から供給された変調信号に応じて被試験受信回路100から出力された出力信号と、期待値信号とを比較して、被試験受信回路100の良否を判定してよい。
【0015】
図2は、本実施形態に係るアナログ変調回路20の構成を示す。アナログ変調回路20は、信号発生装置30と、信号処理装置40とを有する。信号発生装置30は、送信信号の第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号を生成する。信号処理装置40は、信号発生装置30から送信信号である第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号を受け取り、送信信号を変調して出力する。信号処理装置40は、一例として、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号をローカル信号により直交変調した変調信号を出力する。
【0016】
信号処理装置40は、第1の入力端子42と、第2の入力端子44と、動作回路50と、検出装置70とを含む。第1の入力端子42は、信号発生装置30から出力された第1のアナログ信号を受け取る。第2の入力端子44は、信号発生装置30から出力された第2のアナログ信号を受け取る。
【0017】
動作回路50は、第1の入力端子42から第1のアナログ信号及び第2の入力端子44から第2のアナログ信号を受け取り、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号に応じて動作する。動作回路50は、一例として、第1の入力端子42が受け取った第1のアナログ信号及び第2の入力端子44が受け取った第2のアナログ信号を所定のローカル信号により変調して被試験受信回路100に出力してよい。
【0018】
動作回路50は、一例として、ローカル信号発生器52と、I側乗算部54と、シフト部56と、Q側乗算部58と、出力部60とを含んでよい。ローカル信号発生器52は、所定周波数の所定のローカル信号を発生する。I側乗算部54は、第1の入力端子42を介して受け取った第1のアナログ信号に、ローカル信号発生器52から発生された所定のローカル信号を乗算する。
【0019】
シフト部56は、ローカル信号発生器52から発生されたローカル信号の位相を略90度シフトする。Q側乗算部58は、第2の入力端子44を介して受け取った第2のアナログ信号に、シフト部56が出力するローカル信号を乗算する。出力部60は、例えば加算器を含み、I側乗算部54が出力する信号とQ側乗算部58が出力する信号とを加算して出力する。このような動作回路50によれば、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号を所定のローカル信号により直交変調することができる。
【0020】
検出装置70は、例えばキャリブレーション時において、第1の入力端子42が受け取った第1のアナログ信号と、第2の入力端子44が受け取った第2のアナログ信号とのスキューを検出する。すなわち、検出装置70は、信号発生装置30から信号処理装置40対して並列に供給する第1及び第2のアナログ信号のスキューを検出する。これに加えて、検出装置70は、検出したスキューに応じて、当該スキューが略0となるように信号発生装置30が出力する第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の位相を調整してよい。なお、検出装置70は、信号処理装置40の内部に設けられてもよいし、信号処理装置40の外部に設けられてもよい。なお、検出装置70は、キャリブレーション以外の時において、第1および第2のアナログ信号の入力がスイッチにより切断されてよい。
【0021】
検出装置70は、信号制御部72と、乗算部74と、検出部76と、スキュー調整部78とを含む。信号制御部72は、信号発生装置30に、略同一の周期を有する第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号を出力させる。信号制御部72は、一例として、第1のアナログ信号としてサイン波信号を出力させるとともに、第2のアナログ信号としてサイン波信号と略同一の位相を有するコサイン波信号(すなわち、サイン波信号の位相を90度シフトした信号)を出力させてよい。
【0022】
乗算部74は、第1のアナログ信号と第2のアナログ信号とを乗算する。乗算部74は、一例として、第1のアナログ信号として信号発生装置30から出力されたサイン波信号と、第2のアナログ信号として信号発生装置30から出力されたコサイン波信号とを乗算してよい。乗算部74は、一例として、第1の入力端子42から分岐して第1のアナログ信号(例えばサイン波信号)を受け取り、第2の入力端子44から分岐して第2のアナログ信号(例えばコサイン波信号)を受け取り、信号発生装置30が出力する第1のアナログ信号と第2のアナログ信号とを乗算してよい。
【0023】
検出部76は、乗算部74における乗算結果に基づいて、第1及び第2のアナログ信号(例えばサイン波信号及びコサイン波信号)のスキューの値に応じたレベルの信号を出力する。検出部76は、一例として、積分部82を含んでよい。積分部82は、乗算部74における乗算結果を積分した積分信号をスキューの値に応じたレベルの信号として出力する。
【0024】
スキュー調整部78は、検出部76から出力されたスキューの値に応じたレベルの信号(例えば積分信号)に基づき、信号発生装置30が出力する第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の位相を調整する。スキュー調整部78は、一例として、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号のスキューが小さくなるように(例えば第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号のスキューが略0となるように)、信号発生装置30が出力する第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の位相を調整してよい。
【0025】
スキュー調整部78は、一例として、信号発生装置30と信号処理装置40との間の第1及び第2のアナログ信号を伝送する伝送線路の遅延量を調整することにより、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の位相を調整してよい。また、スキュー調整部78は、一例として、信号発生装置30内における第1のアナログ信号を生成する回路の動作クロックまたは第2のアナログ信号を生成する回路の動作クロックを遅延することにより、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の位相を調整してよい。
【0026】
そして、キャリブレーション完了後、信号発生装置30は、スキュー調整部78により位相が調整された状態で、波形データ発生部12から出力された波形データに応じた第1及び第2のアナログ信号を出力する。これにより、信号発生装置30は、スキューの小さい第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号を信号処理装置40に供給することができる。従って、信号処理装置40は、スキューの小さい第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号をローカル信号により変調した変調信号を被試験受信回路100に供給することができる。
【0027】
このようなアナログ変調回路20によれば、信号発生装置30から信号処理装置40に対して並列に供給される第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号のスキューを、ネットワークアナライザ等を用いることなく調整することができる。これにより、アナログ変調回路20によれば、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号のスキューを、簡単な構成で調整することができる。そして、このようなアナログ変調回路20を備える試験装置10によれば、低いコストで精度良く被試験受信回路100を試験することができる。
【0028】
図3(A)は第1のアナログ信号(サイン波信号)の一例を示し、図3(B)は第2のアナログ信号(コサイン波信号)の一例を示す。また、図3(C)は第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の間にスキューが有る場合の乗算結果を示し、図3(D)は第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の間にスキューが無い場合の乗算結果の一例を示す。
【0029】
ここで、信号制御部72による制御に応じて、信号発生装置30は、第1のアナログ信号としてサイン波信号を出力し、第2のアナログ信号としてコサイン波信号を出力したとする。この場合、信号処理装置40に入力したサイン波信号及びコサイン波信号のスキューによって生じる位相差をθとすると、乗算部74による乗算結果Vrは、下記式(1)のように表される。
【0030】
【数1】

【0031】
この場合において、積分部82は、式(1)を積分した積分信号を出力する。すなわち、積分部82は、式(1)を平均した下記式(2)に表されるような積分信号Voを出力する。
【0032】
【数2】

【0033】
式(2)を参照すると、積分信号Voは、スキューによって生じる位相差θの増加に応じて単純減少し、スキューによって生じる位相差θが0の場合に値が0となる。すなわち、スキューによって生じる位相差θは、積分信号Voのレベルが増加するに応じて小さくなり、積分信号Voが0の場合に0となる。
【0034】
このことから、スキュー調整部78は、一例として、第1のアナログ信号としてサイン波信号が出力され、第2のアナログ信号としてコサイン波信号が出力された場合、検出部76から出力された積分信号Voのレベルの絶対値が最小となるように、信号発生装置30が出力する第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の位相を調整してよい。これにより、スキュー調整部78は、第1のアナログ信号と第2のアナログ信号とのスキューを略0とすることができる。
【0035】
図4は、本実施形態の信号発生装置30から、信号制御部72の制御に応じて出力される第1及び第2アナログ信号の第1例(矩形波信号)を示す。図5は、本実施形態の信号発生装置30から、信号制御部72の制御に応じて出力される第1及び第2アナログ信号の第2例(三角波信号)を示す。
【0036】
信号制御部72は、サイン波信号及びコサイン波信号に限らず、信号発生装置30から略同一の波形を有する周期信号の第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号を出力させてよい。信号制御部72は、一例として、図4に示すような、略同一周期で略90度の位相差を有する矩形波信号を第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号として出力させてよい。また、信号制御部72は、一例として、図5に示すような、略同一周期で90度の位相差を有する略同一の三角波信号を第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号として出力させてよい。
【0037】
また、信号制御部72は、一例として、略同一周期の波形を有する第1のアナログ信号と第2のアナログ信号との位相シフト量を、90度以外の位相差としてもよい。信号制御部72は、一例として、第1のアナログ信号と第2のアナログ信号との位相シフト量を、0度または180度としてもよい。
【0038】
そして、スキュー調整部78は、一例として、検出部76から出力されたスキューに応じた値が、信号制御部72により設定された位相シフト量に応じた値となるように、信号発生装置30から出力される第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の位相を調整してよい。スキュー調整部78は、一例として、乗算部74の乗算結果を積分した値が、信号制御部72により設定された位相シフト量に応じた値となるように(例えば、乗算部74の乗算結果を積分した値が最大値、最小値または0となるように)、信号発生装置30から出力される第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の位相を調整してよい。なお、波形生成が簡易であり、高周波数成分を含まず、乗算結果の平均値が0の場合にスキューが0となるのでスキューを小さくする制御が簡単であることから、信号制御部72は、信号発生装置30からサイン波信号及びコサイン波信号を第1及び第2のアナログ信号として出力させるのが好ましい。
【0039】
図6は、本実施形態の第1変形例に係るアナログ変調回路20の処理フローを示す。本変形例に係るアナログ変調回路20は、図2に示したアナログ変調回路20と略同一の構成及び機能を採るので、以下相違点を除き説明を省略する。
【0040】
まず、スキュー調整部78は、信号発生装置30から出力される第1及び第2のアナログ信号を停止して、すなわち、第1及び第2のアナログ信号のレベルを0として、検出部76から出力される信号の値(オフセット値)を検出する(S1001)。そして、スキュー調整部78は、検出したオフセット値を記憶する。
【0041】
次に、信号制御部72は、第1のアナログ信号としてサイン波信号を出力させるとともに、第2のアナログ信号としてコサイン波信号を出力させて、検出部76に第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の間のスキューに応じた値を検出させる。これに代えて、信号制御部72は、サイン波信号およびコサイン波信号以外の信号を第1及び第2のアナログ信号として出力させてもよい。そして、スキュー調整部78は、検出部76により検出された信号から、ステップS1001において検出したオフセット値を減算し、減算した値に基づき信号発生装置30から出力される第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の位相を調整する(S1002)。
【0042】
乗算部74及び検出部76等は、第1及び第2のアナログ信号が0であっても出力値が0とならず、オフセット値を出力する場合がある。このような場合であっても、本変形例に係るアナログ変調回路20によれば、オフセット値の影響を除去することができるので、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号のスキューを精度良く測定することができる。
【0043】
図7は、第1のアナログ信号がサイン波信号であり、第2のアナログ信号がコサイン波信号である場合における、スキューによって生じる位相差θに対する積分信号Voを示す。次に本実施形態の第3変形例を説明する。本変形例に係るアナログ変調回路20は、図2に示したアナログ変調回路20と略同一の構成及び機能を採るので、以下相違点を除き説明を省略する。
【0044】
サイン波信号及びコサイン波信号を信号発生装置30に出力させ、スキューによって生じる位相差θを横軸にとった場合における、スキューによって生じる位相差θに対する積分信号Voの傾き(微分値)は、図7に表すように、位相差θ=0(すなわち、サイン波信号とコサイン波信号との間の位相シフト量が90度の場合)に最大となり、位相差θが0から遠ざかるに従って徐々に小さくなる。従って、スキュー調整部78は、積分信号Voのレベルを位相差θで微分した微分値が最大となるように制御することによって、スキューが0となるようにサイン波信号およびコサイン波信号の位相を調整することができる。
【0045】
このことから、本変形例に係る信号制御部72は、信号発生装置30に、位相差θが順次変化する第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号を出力させる。信号制御部72は、一例として、位相差θが順次変化するサイン波信号及びコサイン波信号を出力させてよい。そして、本変形例に係るスキュー調整部78は、位相差θ毎に積分信号Voのレベルを測定し、積分信号Voのレベルを位相差で微分した微分値に基づいて、信号発生装置30が出力する第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の位相を調整する。位相差θが順次変化するサイン波信号及びコサイン波信号が信号発生装置30から出力された場合であれば、スキュー調整部78は、微分値が最大となるように、信号発生装置30が出力する第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の位相を調整してよい。
【0046】
これにより、スキュー調整部78は、スキューが0となるように、信号発生装置30から出力される第1のアナログ信号(例えばサイン波信号)および第2のアナログ信号(例えばコサイン波信号)の位相を調整することができる。さらに、積分信号Voのレベルを位相差で微分した微分値は、検出部76から出力される信号にオフセットが含まれていても、値は変わらない。従って、このようなアナログ変調回路20によれば、検出部76から出力される信号にオフセットが含まれていても、精度良くスキューを測定することができる。
【0047】
図8は、本実施形態の第3変形例に係るアナログ変調回路20の構成を示す。本変形例に係るアナログ変調回路20は、図2に示したアナログ変調回路20と略同一の構成及び機能を採るので、略同一の構成及び機能を有する部材については図8中に同一の符号を付け、以下相違点を除き説明を省略する。
【0048】
本変形例に係る検出装置70は、ローカル信号調整部92と、レジスタ94とを更に含む。ローカル信号調整部92は、動作回路50におけるI側乗算部54が出力する信号と、動作回路50におけるQ側乗算部58が出力する信号との位相差が所定の位相となるように、シフト部56における位相シフト量を調整する。レジスタ94は、ローカル信号調整部92がシフト部56における位相シフト量を調整した状態において、検出部76が出力する信号のレベルを格納する。レジスタ94は、一例として、ローカル信号調整部92がシフト部56における位相シフト量を調整した状態において、積分部82が出力する積分信号のレベルを格納してよい。
【0049】
図9は、本実施形態の第3変形例に係るアナログ変調回路20の処理フローを示す。図10は、本実施形態の第3変形例に係るアナログ変調回路20における、出力信号の周波数特性を示す。
【0050】
まず、第3変形例に係るアナログ変調回路20は、第1調整フェーズにおいて、シフト部56の位相シフト量を調整する(S1101)。より詳しくは、信号制御部72は、信号発生装置30に、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号として、I信号及びQ信号を出力させる。これにより、信号発生装置30は、第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号として、I信号及びQ信号を出力することができる。ここで、I信号は、所定の周波数の正弦波信号であってよく、Q信号は、I信号を90度位相がシフトした信号であってよい。
【0051】
信号発生装置30からI信号及びQ信号が出力された場合、I側乗算部54は、I信号に所定のローカル信号を乗算し、Q側乗算部58は、Q信号に、シフト部56が出力するローカル信号を乗算する。そして、出力部60は、I側乗算部54が出力する信号とQ側乗算部58が出力する信号とを加算して変調信号を出力する。そして、ローカル信号調整部92は、出力部60から出力された変調信号に基づき、I信号及びQ信号がローカル信号により精度良く直交性を保って変調されるように、シフト部56のシフト量を調整する。
【0052】
ここで、I信号及びQ信号がローカル信号により精度良く直交に変調された場合、変調信号における低域側周波数(fLO−f)の信号成分と、変調信号における高域側周波数(fLO+f)の信号成分との差が大きくなる。直交性が良い場合には、好ましくは、低域側周波数(fLO−f)の信号成分または高域側周波数(fLO+f)の信号成分の一方が略0となる。なお、低域側周波数(fLO−f)の信号成分は、ローカル信号の周波数(fLO)からI信号の周波数(f)を減算した周波数の信号成分を含み、高域側周波数(fLO+f)の信号成分は、ローカル信号の周波数(fLO)にI信号の周波数(f)を加算した周波数の信号成分を含んでよい。
【0053】
従って、ローカル信号調整部92は、出力部60から出力された変調信号における低域側周波数(fLO−f)の信号成分と、変調信号における高域側周波数(fLO+f)の信号成分とのレベル差がより大きくなるように、シフト部56の位相シフト量を調整してよい。これにより、ローカル信号調整部92は、I信号及びQ信号をローカル信号により精度良く直交変調させることができる。
【0054】
アナログ変調回路20は、第1調整フェーズにおいて、以上のようにシフト部56の位相シフト量を調整することにより、信号発生装置30により第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号が生成されてから、出力部60から変調信号が出力されるまで経路において生じるスキューおよびキャリア位相差等を総合的に補正して、第1及び第2のアナログ信号をローカル信号により精度良く直交変調した変調信号を出力することができる。
【0055】
次に、記憶フェーズにおいて、レジスタ94は、ローカル信号調整部92がシフト部56における位相シフト量を調整した状態において、検出部76が出力する信号のレベルを格納する(S1102)。一例として、レジスタ94は、積分部82が出力する積分信号のレベルを格納してよい。すなわち、レジスタ94は、最終段の出力信号(変調信号)が調整された状態における、信号発生装置30から出力された第1及び第2のアナログ信号のスキューに応じた値を記憶する。
【0056】
次に、ローカル信号調整部92がシフト部56における位相シフト量を調整した後の第2調整フェーズにおいて、アナログ変調回路20は、信号発生装置30が出力する第1及び第2のアナログ信号の位相を調整する(S1103)。アナログ変調回路20は、一例として、信号処理装置40が取り外されて、他のピンリソースに対応する信号発生装置30に取り付けられた場合、及び、第1調整フェーズにおける調整が完了した後に時間が経過したり温度が変化した場合等において、第2調整フェーズにおける位相調整を実行してよい。
【0057】
より詳細には、第2調整フェーズにおいて、スキュー調整部78は、検出部76(例えば積分部82)が出力する積分信号のレベルと、ローカル信号調整部92が格納した積分信号のレベルとを比較し、信号発生装置30がI信号及びQ信号を出力するタイミングを調整する。すなわち、スキュー調整部78は、記憶フェーズにおいて記憶した値からずれた量に応じて、信号発生装置30がI信号及びQ信号を出力するタイミングを調整する。
【0058】
このようなアナログ変調回路20によれば、装置全体として精度良く変調信号を出力できる場合における、信号発生装置30から出力される第1及び第2のアナログ信号のスキューに応じた値をレジスタ94に記憶する。従って、本変形例に係るアナログ変調回路20によれば、信号処理装置40の前段(例えば信号発生装置30)において誤差が生じた場合、シフト部56の位相シフト量を変化させずに、信号発生装置30から出力された信号をローカル信号により精度良く直交変調させることができる。
【0059】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係る試験装置10の構成を被試験受信回路100とともに示す。
【図2】本発明の実施形態に係るアナログ変調回路20の構成を示す。
【図3】(A)は第1のアナログ信号(サイン波信号)の一例を示し、(B)は第2のアナログ信号(コサイン波信号)の一例を示し、(C)は第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の間にスキューが有る場合の乗算結果を示し、(D)は第1のアナログ信号及び第2のアナログ信号の間にスキューが無い場合の乗算結果の一例を示す。
【図4】本実施形態に係る信号発生装置30から、信号制御部72の制御に応じて出力される第1及び第2アナログ信号の第1例(矩形波信号)を示す。
【図5】本実施形態に係る信号発生装置30から、信号制御部72の制御に応じて出力される第1及び第2アナログ信号の第2例(三角波信号)を示す。
【図6】本実施形態の第1変形例に係るアナログ変調回路20の処理フローを示す。
【図7】第1のアナログ信号がサイン波信号であり、第2のアナログ信号がコサイン波信号である場合における、位相差θに対する積分信号Voを示す。
【図8】本実施形態の第3変形例に係るアナログ変調回路20の構成を示す。
【図9】本実施形態の第3変形例に係るアナログ変調回路20の処理フローを示す。
【図10】本実施形態の第3変形例に係るアナログ変調回路20における、出力信号の周波数特性を示す。
【符号の説明】
【0061】
10 試験装置
12 波形データ発生部
14 判定部
20 アナログ変調回路
30 信号発生装置
40 信号処理装置
42 第1の入力端子
44 第2の入力端子
50 動作回路
52 ローカル信号発生器
54 I側乗算部
56 シフト部
58 Q側乗算部
60 出力部
70 検出装置
72 信号制御部
74 乗算部
76 検出部
78 スキュー調整部
82 積分部
92 ローカル信号調整部
94 レジスタ
100 被試験受信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号発生装置から信号処理装置に対して並列に供給する第1及び第2のアナログ信号のスキューを検出する検出装置であって、
前記信号発生装置が出力する、前記第1のアナログ信号と前記第2のアナログ信号とを乗算する乗算部と、
前記乗算部における乗算結果に基づいて、前記スキューの値に応じたレベルの信号を出力する検出部と
を備える検出装置。
【請求項2】
前記信号発生装置に、略同一の周期を有する前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号を出力させる信号制御部を更に備える請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記乗算部における乗算結果を積分した積分信号を出力する積分部を有する請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記信号制御部は、前記第1のアナログ信号としてサイン波信号を出力させ、前記第2のアナログ信号として、前記サイン波信号と略同一の位相を有するコサイン波信号を出力させる
請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記積分信号のレベルの絶対値が最小となるように、前記信号発生装置が出力する前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号の位相を調整するスキュー調整部を更に備える
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記信号制御部は、前記信号発生装置に、位相差が順次変化する前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号を出力させ、
前記スキュー調整部は、前記位相差毎に前記積分信号のレベルを測定し、前記積分信号のレベルを前記位相差で微分した微分値に基づいて、前記信号発生装置が出力する前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号の位相を調整する
請求項4に記載の検出装置。
【請求項7】
前記信号制御部は、略同一の波形を有する前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号を出力させる
請求項3に記載の検出装置。
【請求項8】
前記検出装置は、前記信号処理装置に設けられ、
前記信号処理装置は、
前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号を受け取る入力端子と、
前記入力端子から前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号を受け取り、第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号に応じて動作する動作回路と
を備え、
前記乗算部は、前記入力端子から前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号を受け取る
請求項3に記載の検出装置。
【請求項9】
前記信号発生装置は、前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号として、I信号及びQ信号を出力し、
前記動作回路は、
前記I信号に所定のローカル信号を乗算するI側乗算部と、
前記ローカル信号の位相を略90度シフトするシフト部と、
前記Q信号に、前記シフト部が出力する前記ローカル信号を乗算するQ側乗算部と、
前記I側乗算部が出力する信号と前記Q側乗算部が出力する信号とを加算して出力する出力部と
を有し、
前記検出装置は、
前記I側乗算部が出力する信号と、前記Q側乗算部が出力する信号との位相差が所定の位相となるように、前記シフト部における位相シフト量を調整するローカル信号調整部と、
前記ローカル信号調整部が前記シフト部における位相シフト量を調整した状態において、前記積分部が出力する積分信号のレベルを格納するレジスタと
を更に備える
請求項8に記載の検出装置。
【請求項10】
前記ローカル信号調整部が前記シフト部における位相シフト量を調整した後に、前記積分部が出力する積分信号のレベルと、前記レジスタが格納した前記積分信号のレベルとを比較し、前記信号発生装置が前記I信号及び前記Q信号を出力するタイミングを調整するスキュー調整部を更に備える
請求項9に記載の検出装置。
【請求項11】
生成した送信信号を変調して出力するアナログ変調回路であって、
前記送信信号のI信号及びQ信号を生成する信号発生装置と、
前記信号発生装置から前記送信信号を受け取り、前記送信信号を変調して出力する信号処理装置と
を備え、
前記信号処理装置は、
第1の入力端子を介して受け取った前記I信号に所定のローカル信号を乗算するI側乗算部と、
前記ローカル信号の位相を略90度シフトするシフト部と、
第2の入力端子を介して受け取った前記Q信号に、前記シフト部が出力する前記ローカル信号を乗算するQ側乗算部と、
前記I側乗算部が出力する信号と前記Q側乗算部が出力する信号とを加算して出力する出力部と、
前記第1の入力端子が受け取った前記I信号と、前記第2の入力端子が受け取った前記Q信号とのスキューを検出する検出装置と
を有し、
前記検出装置は、
前記信号発生装置に、略同一の周期を有する前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号を出力させる信号制御部と、
前記第1の入力端子から分岐して前記第1のアナログ信号を受け取り、前記第2の入力端子から分岐して前記第2のアナログ信号を受け取り、前記第1のアナログ信号と前記第2のアナログ信号とを乗算する乗算部と、
前記乗算部における乗算結果に基づいて、前記スキューの値に応じたレベルの信号を出力する検出部と
を含むアナログ変調回路。
【請求項12】
被試験受信回路を試験する試験装置であって、
生成した送信信号を変調して前記被試験受信回路に出力するアナログ変調回路と、
前記アナログ変調回路から出力された信号に応じて前記被試験受信回路が出力した信号を判定する判定部とを備え、
前記アナログ変調回路は、
前記送信信号のI信号及びQ信号を生成する信号発生装置と、
前記信号発生装置から前記送信信号を受け取り、前記送信信号を変調して出力する信号処理装置と
を有し、
前記信号処理装置は、
第1の入力端子を介して受け取った前記I信号に所定のローカル信号を乗算するI側乗算部と、
前記ローカル信号の位相を略90度シフトするシフト部と、
第2の入力端子を介して受け取った前記Q信号に、前記シフト部が出力する前記ローカル信号を乗算するQ側乗算部と、
前記I側乗算部が出力する信号と前記Q側乗算部が出力する信号とを加算して出力する出力部と、
前記第1の入力端子が受け取った前記I信号と、前記第2の入力端子が受け取った前記Q信号とのスキューを検出する検出装置と
を含み、
前記検出装置は、
前記信号発生装置に、略同一の周期を有する前記第1のアナログ信号及び前記第2のアナログ信号を出力させる信号制御部と、
前記第1の入力端子から分岐して前記第1のアナログ信号を受け取り、前記第2の入力端子から分岐して前記第2のアナログ信号を受け取り、前記第1のアナログ信号と前記第2のアナログ信号とを乗算する乗算部と、
前記乗算部における乗算結果に基づいて、前記スキューの値に応じたレベルの信号を出力する検出部と
を含む試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−104065(P2008−104065A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286303(P2006−286303)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】