説明

検出装置および方法

IMS検出器(1、100)または同様の物を含む検出装置は、それによって試料ガスが検出器に供給されるガス流路配置(40、41、102)を持つガス注入口(10)を有する。1つの配置では、ガス流路配置の2つの領域(40および41)は、並列に接続される。興味のある化学物質が検出器(1)に到達するのにかかる時間が、2つのコイルに沿って異なり、それによって異なる時間に検出器内に応答を与えるように、その領域は、異なる吸収特性の材料で内部を被覆されたそれぞれGC毛細管類コイル(40)および(41)によって提供される。別法として、ガス流路の2つの領域は、交互に直列に配置される領域(104および106)によって提供されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス注入口を有し、その注入口に供給されるガス中のある種の化学物質の存在を検出するように配置される検出ユニットを含む種類の検出装置に関する。その注入口は、それに沿ってガスが検出ユニットに供給されるガス流路配置と接続される。
【背景技術】
【0002】
イオン移動度分光計(ion mobility spectrometer)は、空気中の有害物質の存在を検出し、その性質を示すために普通使用される。IMSは、広範囲の有害物質に対して有効に働くが、ある種の物質を確実には検出することができない。化学物質検出器の他の形態も、同様の問題を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
代替検出装置および方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によると、検出ユニットが、2つの異なる領域を介してユニットに入るガスに対して異なる応答を提供するように、ガス流路配置は、それぞれの経路に沿って流れるガスに異なる影響を及ぼすように配置される2つの領域を有することを特徴とする、上で特定される種類の検出装置が提供される。
【0005】
2つの領域は、2つのガス流路内で並列に、または共通ガス流路に沿って交互に直列に配置されてもよい。ガス内のその化学物質の存在が、2つの経路に沿って供給されるガスに対する検出ユニットの応答間の差によって示されるように、2つの領域は、ガス内のある種の化学物質を異なる程度に吸収するように配置されてもよい。2つの領域は好ましくは、異なる吸収特性を持つ材料を含み、GC固定相、ポリマーおよびシラン化処理(silanized treatment)から選択されてもよい。ガス流路は、ガスクロマトグラフィー毛細管類によって提供されてもよく、材料は、管類の内側を被覆することによって提供されてもよい。毛細管類は好ましくは、コイルで配置される。応答の差は、化学物質が2つの領域に沿って通過するのにかかる時間の差に起因してもよい。検出ユニットは、イオン移動度分光計を含んでもよい。
【0006】
本発明の別の態様によると、試料ガスをガス流路配置に沿って検出ユニットのガス注入口に供給するステップを含む、試料ガス中のある種の化学物質の存在を検出する方法であって、ガス流路配置は、ある種の化学物質に異なる影響を及ぼす2つの領域を有し、出力は、検出ユニットに供給されるガスに応答して提供されることを特徴とする、方法が提供される。
【0007】
2つの領域は、2つのガス流路内で並列に、または共通ガス流路に沿って交互に直列に配置されてもよい。
【0008】
本発明によるイオン移動度分光計装置およびその操作方法が、添付の図面を参照して、一例として次に述べられるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】装置の概略横断面の側面図である。
【図2】代替装置の概略図である。
【図3】図2の装置の応答を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初に図1を参照すると、装置は、それによって試料ガスが検出および識別のためにユニット内部に供給される注入口10を有する従来のイオン移動度分光計ユニット1の形態で検出ユニットを含む。注入口10は、ユニット1の左側端部において、コロナ放電針12または試料ガス内の物質をイオン化するための他の配置を含むイオン化領域11内に開口する。電気シャッター13は、シャッターから遠く離れたその遠端にコレクタ板15を有するドリフト室(drift chamber)14からイオン化領域11を分離する。シャッター13によって許容されたイオン種に左から右へコレクタ板15の方へ移動させるためにドリフト室に沿って電場を構築できるように、ドリフト室14に沿って一定の間隔に置かれた電極16は、電圧源17に接続される。ポンプ18および分子ふるい19は、ユニット1の左側端部の方の注入口21からユニットの右側端部の方の排出口22まで延びるガス流路20内に接続される。清浄で乾燥したガスは、経路20を介してドリフト室14に沿って右から左へ、イオン流に対抗して、通常の方法で流れる。コレクタ板15はプロセッサ30に接続され、それはまた、シャッター13を制御するためにも接続される。プロセッサ30は、イオンまたはイオン群がコレクタ板15に衝突するときに生成される電荷を検出し、飛行時間を計算する。この情報から、多くのイオン種の性質を識別でき、表示部31などの手段を利用するために出力を提供できる。
【0011】
注入口10が、それによってガス検体材料がIMSユニット1に供給される2つの異なるガス流路40および41によって提供されるガス流路配置と接続するという点において、装置は、従来のIMS装置と異なる。2つの経路40および41は、さもなければIMSユニットが識別することが困難であろう所定の化学物質に、異なる影響を及ぼすように配置される。特に、2つのガス流路は、ガスクロマトグラフィー毛細管類の2つのコイルによって提供される。各コイル40および41は、異なる物質で内部を被覆される。たとえば、コイル40は、GC固定相またはポリマーで被覆されてもよく、それは検体Aの比較的吸着性がある。もう1つのコイル41は、シラン化処理または異なる固定相などのより少ない吸着性の材料で被覆される。したがって、化学物質検体Aまたはこの化学物質の他の化学物質との混合物を含むガスが、異なる時間に2つのコイル40および41の下流側端部から出てくるであろうことがわかる。各コイル40および41の開口端は、両方が同じガスの試料を受け取るように、お互いに隣接して設置される。コイル40での化学物質検体の吸収はまた、より少ない吸着性のコイルと比較して、コイルに沿っての化学物質の通過を遅らせる効果も有するであろう。2つの異なる経路40および41を介してそれに供給されるガスに対するIMS1の応答は、混合物中の選択された化学物質検体の存在を識別するために様々な異なる方法で使用できる。たとえば、2つの経路からの応答間の時間差が測定されてもよい。2つの経路からの応答の時間幅およびこれらの応答の比が測定されてもよい。このようにして検体材料を識別できる。
【0012】
上述の配置は、2つのコイル40および41によって構成されるそれぞれ並列の流路によって提供される2つの異なる領域を持つガス流路配置を使用する。しかしながら、ガス流路配置は、図2で示されるような直列の構成を有してもよい。この配置では、簡単な検出器100が使用され、それは、数字102によって全体的に示されるガス流路配置に接続されるガス注入口101、101’を有する。ガス流路配置102は、第1の試料ループ103、第1相(Phase 1)吸収剤を含む管104、第2の試料ループ105および異なる第2相(Phase 2)吸収剤を含む第2の管106の直列配置を持つ単一経路によって提供される。第2の管106の出力端部は、検出器100の入力に接続される。試料ガスは、第1の試料ループ103の注入口101におよび第2の試料ループ105の注入口端部101’に直接に両方とも供給される。もしガスが、検出されるべき検体を含まないならば、2つの管104および106ならびにそれぞれの試料ループ103および105は、ガス内の化学物質に対して同じ時間遅延を導入するであろう。検出器100がガス内の化学物質に応答すると仮定すると、それは、図3で示されるように、お互いに時間的に分離された2つの出力応答を生成するであろう。1つの応答、即ち時間tの第1の応答は、第2のループ105へ直接入ることを許されたガスに起因するであろうし、時間tの第2の応答は、第1の試料ループ103へ入ることを許されたガスに起因するであろうし、それは、第1の試料ループおよび管104によって、次いで第2の試料ループ105および管106によって両方で遅延され、それは、第1のループおよび管と同じ遅延を導入する(どちらの管による吸着もないと仮定すると)ことが分かる。したがって、この状況では、
2t=t
であることがわかり、ただし、tは、第2のループおよび管によって導入される時間遅延であり、tは、両方の管およびループによって導入される全時間遅延である。
【0013】
しかしながら、もし検出器システムに供給されるガスが、選択された検体を含むならば、これは、第2の管106の通過によるよりも、第1の管104の通過による方がより大きな程度まで遅延されるであろう。したがって、この状況では下記が当てはまる、即ち、
2t≠t
である。特に、
2t<t
である。したがって、応答間の時間を測定することによって、試料ガスが検体を含むか否かを決定することができる。
【0014】
本発明は、イオン移動度分光計と一緒の使用に適しているが、それは、検出されている検体に応答する任意の他の形態の検出器と一緒に使用されてもよい。検出器はスペクトル型である必要はなく、非スペクトル検出器であってもよい。検出器は、簡単なファラデー板およびイオン源配置であってもよい。本発明はまた、LCなどの液相分離を含む装置で使用されてもよい。
【符号の説明】
【0015】
1 イオン移動度分光計ユニット
10 注入口
20 ガス流路
21 注入口
22 排出口
40 ガス流路
41 ガス流路
100 検出器
104 第1相吸収剤を含む管
106 第2相吸収剤を含む管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス注入口(10)を有し、前記注入口に供給されるガス中のある種の化学物質の存在を検出するように配置される検出ユニット(1、100)を含み、前記注入口(10)は、それに沿ってガスが前記検出ユニットに供給されるガス流路配置(40、41、102)と接続される、検出装置であって、
前記検出ユニット(1、100)が、2つの異なる領域(40および41、104および106)を介して前記ユニットに入るガスに対して異なる応答を提供するように、前記ガス流路配置(40、41、102)が、それぞれの経路に沿って流れるガスに異なる影響を及ぼすように配置される前記2つの異なる領域を有することを特徴とする、検出装置。
【請求項2】
前記2つの領域(40および41)は、2つのガス流路内で並列に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記2つの領域(104および106)は、共通ガス流路(102)に沿って交互に直列に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記ガス内のある種の化学物質の存在が、前記2つの経路(40および41、104および106)に沿って供給される前記ガスに対する前記検出ユニット(1、100)の応答間の差によって示されるように、前記2つの領域(40および41、104および106)は、前記ガス内のその化学物質を異なる程度に吸収するように配置されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記2つの領域(40および41、104および106)は、異なる吸収特性を持つ2つの材料を含むことを特徴とする、請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記材料は、GC固定相、ポリマーおよびシラン化処理から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記ガス流路は、ガスクロマトグラフィー毛細管類(40および41)によって提供されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記材料は、前記管類(40および41)の内側に被覆することによって提供されることを特徴とする、請求項7および5に記載の検出装置。
【請求項9】
前記毛細管類(40および41)は、コイルで配置されることを特徴とする、請求項7または8に記載の検出装置。
【請求項10】
前記応答の差は、前記化学物質が前記2つの領域(40および41、104および106)に沿って通過するのにかかる時間の差に起因することを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項11】
前記検出ユニットは、イオン移動度分光計(1)を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項12】
試料ガスをガス流路配置(40、41、102)に沿って検出ユニット(1、100)のガス注入口(10)に供給するステップを含む、前記試料ガス中のある種の化学物質の存在を検出する方法であって、前記ガス流路配置は、前記ある種の化学物質に異なる影響を及ぼす2つの領域(40および41、104および106)を有し、出力は、前記検出ユニット(1、100)に供給される前記ガスに応答して提供されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記2つの領域(40および41)は、2つのガス流路内で並列に配置されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記2つの領域(104および106)は、共通のガス流路に沿って交互に直列に配置されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−541733(P2009−541733A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515952(P2009−515952)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002297
【国際公開番号】WO2007/148084
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(507235789)スミスズ ディテクション−ワトフォード リミテッド (25)
【Fターム(参考)】