説明

検出装置

【課題】装置の小型化が実現可能であり、かつ、複数の貯留槽と反応槽とをそれぞれ連結する複数の流路の開閉可能な簡易な構造を提供する。
【解決手段】カセット12は、核酸検出反応に含まれる各ステップにおいてそれぞれ用いられる第1試薬、第2試薬、洗浄液をそれぞれ貯留する第1試薬槽54、第2試薬槽55、洗浄液槽56と、核酸検出反応が行われるHD槽52と、第1試薬槽54、第2試薬槽55、洗浄液槽56とHD槽52とをそれぞれ連結する第5流路66、第6流路67及び第7流路68と、これら各流路に対応して回転軸88にそれぞれ設けられ、回転軸88の回転に伴って各々が対応する流路を開閉する複数のカム89〜91とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の検出反応に用いられる貯留槽と反応槽とを連結する流路を開閉する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる血液検査などにおいては、サンプル中に存在する所望の物質を特異的に検出するために、化学反応や酵素反応、抗原抗体反応などの多様な検出反応が行われる。また、核酸マイクロアレイを用いた核酸検出は、複数の遺伝子を同時に解析できる技術であり、塩基配列決定法のみではなく、遺伝子の発現量や多型などを効率よく調べる方法として開発され、テーラーメイド医療や、菌類などの生物学的分類の特定、疾病の診断などへの技術展開が図られている。例えば、核酸マイクロアレイは、特定の塩基配列を定性的に検出できる程度の性能を有すれば十分であり、例えば、試験紙やプラスチックのようなディスポーザル使用に適した安価なものが期待されている。
【0003】
また、核酸マイクロアレイを用いた核酸検出反応に先立って、血液などのサンプル中に含まれる被検出対象の核酸を増幅させるためにPCRを行うことが多い。一般に、PCRを利用して核酸の検出を行うには、血液などに含まれるPCR阻害物質を除去するためにサンプルから核酸を抽出する前処理が行われる。このような核酸検出における抽出・増幅・検出の3つのステップが、所要の試薬や核酸マイクロアレイがキット化された1つのカセットにおいて簡易に実行できれば、医療施設や研究施設において利用価値が高いと考えられる。また、カセットが小型化されれば、少ないサンプル量から所望の核酸検出を行うことができるので、被検者の負担が軽減されるとともに、このカセットが装填される自動分析装置を小型化して省スペースを実現することもできる。
【0004】
核酸検出に限らず、多様な検出反応においては、複数の試薬や洗浄液などが反応槽に所定の順序及びタイミングで供給される必要がある。したがって、キット化されたカセットや自動分析装置においても、複数の試薬槽と反応槽とが独立して設けられ、各試薬が反応槽へ所定の順序及びタイミングで供給可能に構成される必要がある。
【0005】
例えば、各試薬槽と反応槽とを流路で連結するとすれば、試薬の移動に応じて、その流路は弁などにより開閉可能でなければならない。しかし、一般的な弁を利用すると、その弁を駆動させるための機構が大きくなり、その結果、自動分析装置が大型化するという問題がある。特に、試薬槽が複数となれば、流路及び弁も複数となるので、この問題が顕著である。これに対し、例えば、ディスポーザブル使用に適した核酸検出カセットとして次のものが発案されている。
【0006】
特許文献1に開示された核酸検出カセットにおいては、固定部材と可撓性部材との組み合わせにより流路が構成されている。この流路は、押圧機構によって可撓性部材が変形されることによって開閉される(特許文献1の図3及び図5等)。
【0007】
特許文献2に開示された増幅反応用使い捨てデュアルチャンバ反応容器においては、第1チャンバと第2チャンバとを流体サンプルが流通可能に結合する接続導管が、バルブ手段により開閉される(特許文献2の図44,45等)。
【0008】
【特許文献1】特開2005−176836号公報
【特許文献2】特開平11−341975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された核酸検出カセットでは、各機能に応じてカセットがブロック化されているので、複数の試薬を用いる検出反応ではカセットが大型化するという問題がある。また、各カセットの毎に押圧機構を必要とするため、装置全体が大型化することが懸念される。
【0010】
特許文献2に開示された増幅反応用使い捨てデュアルチャンバ反応容器では、段落「0064」から「0084」に開示されているように、導管を開閉するために弁のような制御システムが必要となるが、この制御システムの具体的機構は開示されておらず、いかにして小型かつ簡易な構成で制御システムを実現するかは不明である。
【0011】
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の小型化が実現可能であり、かつ、複数の貯留槽と反応槽とをそれぞれ連結する複数の流路の開閉可能な簡易な構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1) 本発明にかかる検出装置は、所定の検出反応に含まれる各ステップにおいてそれぞれ用いられる複数種の液体をそれぞれ貯留する複数の貯留槽と、上記検出反応が行われる反応槽と、上記各貯留槽と上記反応槽とを当該貯留槽に貯留された液体を流通可能にそれぞれ連結し、少なくとも一部に弾性変形可能な変形部をそれぞれ有する複数の流路と、駆動源からの駆動伝達に基づいて回転する回転軸と、上記複数の流路に対応して上記回転軸にそれぞれ設けられ、当該回転軸の回転に伴って各々が対応する流路の変形部を弾性変形又は弾性復帰させて当該流路を開閉する複数のカムと、を具備する。
【0013】
本検出装置は、複数のステップを含む所定の検出反応に用いられる。この検出反応として、例えば血液などから特定の核酸を検出する反応があげられる。核酸検出反応においては、ハイブリダイズ、光学検出などの各ステップにおいて、複数種の試薬が用いられる。複数の貯留槽は、これら複数種の試薬をそれぞれ貯留する。また、反応槽は、例えば核酸検出においてはハイブリダイズ・光学検出が行われる空間である。各貯留槽と反応槽とは、それぞれ流路により連結されている。この各流路を通じて各試薬が各貯留槽から反応槽へ流出される。各流路は、変形部の弾性変形により開閉可能である。この各流路の開閉は、複数のカムの回転位置に基づいて制御される。
【0014】
(2) 上記検出装置は、さらに、上記複数の流路の各変形部をそれぞれ弾性変形させて当該流路を閉塞する第1姿勢と、各変形部をそれぞれ弾性復帰させて当該流路を開放する第2姿勢とに姿勢変化する複数のカムフォロワと、上記各カムフォロワを第1姿勢にそれぞれ弾性付勢する弾性部材とを、具備するものであってもよい。
【0015】
各カムフォロワの姿勢変化に基づいて、各流路は開閉される。各カムフォロワは、弾性部材に弾性付勢されて第1姿勢とされている。各カムフォロワに対応するカムは、この弾性付勢に抗してカムフォロワを姿勢変化させる。したがって、カムが所定の回転位置に回転されなければ、各流路は閉塞された状態にある。これにより、検出装置が保管や搬送される際に、貯留槽に充填された試薬が反応槽へ流出することが防止される。
【0016】
(3) 上記複数のカムは、上記回転軸の回転位置に応じて、一部のカムが当該カムに従動するカムフォロワを第2姿勢へ姿勢変化させるものであってもよい。
【0017】
これにより、回転軸の回転位置によって所望の流路を開放させることができる。
【0018】
(4) 上記複数のカムは、上記回転軸の所定の回転位置において、当該カムに従動するカムフォロワをすべて第1姿勢とするものであってもよい。
【0019】
この所定の回転位置においては、すべての流路が閉塞されるので、検出装置が保管や搬送される際に、貯留槽に充填された試薬が反応槽へ流出することが防止される。
【0020】
(5) 上記カムフォロワをすべて第1姿勢とする上記回転位置に隣接する回転位置において、上記検出反応において第1番目及び第2番目に使用される各液体が流通する各流路に対応する各カムフォロワをそれぞれ第1姿勢とすべく、上記複数のカムが回転軸に配置されていてもよい。
【0021】
すべての流路が閉塞される所定の回転位置から、隣接するいずれか一方の回転位置へ回転軸が回転されると、上記検出反応において第1番目又は第2番目に使用される各液体が流通するいずれかの流路が開放される。これにより、検出反応の各ステップにおいて使用される各液体を混合させることなく反応槽へ供給させることができる。
【0022】
(6) 上記反応槽に、核酸マイクロアレイが固定されていてもよい。
【0023】
これにより、核酸検出に好適な検出装置が実現される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、各貯留槽と反応槽とを連結する各流路の開閉が、回転軸に設けられた複数のカムの回転位置に基づいて制御されるので、簡易な構造で複数の流路の開閉を実現することができ、装置が小型化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
【0026】
図1は、検出装置10の装置本体11の概略構成を示すブロック図である。図2は、カセット12の概略構成を示すブロック図である。図3は、カセット12の外観構成を示す平面図である。図4は、図3におけるIV−IV断面を示す部分断面である。図5は、図3におけるV−V断面を示す部分断面図である。図6は、図3におけるVI−VI断面を示す部分断面図である。図7は、本実施形態における検出方法を示すフローチャートである。
【0027】
[検出装置10の全体構成]
検出装置10は、装置本体11と、装置本体11に装着可能なカセット12とから構成される。装置本体11は、いわゆる分析装置であり、使用毎にカセット12が装着されて繰り返し使用される。カセット12は、1回の核酸検出において使用されると捨てられる所謂ディスポーザブルのカセットである。本発明にかかる検出装置は、カセット12として実現されている。なお、本明細書では、本発明にかかる検出装置が、血液から特定の核酸を検出するために用いられるものとして好ましい実施形態が説明されるが、本発明における検出反応は核酸検出反応に限定されず、その他の血液検査や尿検査などにおいて用いられる複数のステップを含む所定の検出反応に広く適用される。
【0028】
[装置本体11]
装置本体11は、主として、加温部21、駆動部22、エアー供給部23、光学検出部24、制御部25から構成される。なお、図1には示されていないが、装置本体11は、電源部や操作部、液晶表示部、外部情報機器と接続するためのインタフェースなどの公知の構成をも有する。加温部21は、カセット12のPCR槽51及びハイブリダイズ槽52(以下「HD槽52」とも称される。)を加温する。加温部21は、ペルチェ素子31、カウンターヒータ32及びセラミックヒータ33を有する。ペルチェ素子31及びカウンターヒータ32は、PCR槽51の温度調整に使用される。ペルチェ素子31及びカウンターヒータ32は、装置本体11に装着されたカセット12のPCR槽51を上下から挟み込むように配置されている(図4参照)。ペルチェ素子31は、PCR槽51の下側に配置されており、カウンターヒータ32は、PCR槽51の上側に配置されている。カウンターヒータ32は、上下方向に可動であり、カセット12が脱着される際に、PCR槽51から離反される。この一対のペルチェ素子31及びカウンターヒータ32によって、PCR槽51内においてPCRに適した所定の温度サイクルが実現される。セラミックヒータ33は、HD槽52内を加温するために用いられる。
【0029】
駆動部22は、第1マイクロアクチュエータ34、第2マイクロアクチュエータ35、第3マイクロアクチュエータ36及びステッピングモータ37を有する。ステッピングモータ37が、本発明における駆動源に相当する。第1マイクロアクチュエータ34、第2マイクロアクチュエータ35及び第3マイクロアクチュエータ36は、各流路に対応して装置本体11における配置が異なるほかは同じ構成のものなので、第1マイクロアクチュエータ34を例に構成が説明される。
【0030】
図5に示されるように、第1マイクロアクチュエータ34は、装置本体11に装着されたカセット12に対して下側に配置されている。第1マイクロアクチュエータ34は、モータ38及びピストン39を有する。図5には詳細に示されていないが、ピストン39は、回転−直動変換機構を介してモータ38の出力軸に連結されている。この回転−直動変換機構は、所謂減速機としても作用する。このような減速機の一例として、特開2006−349013号に開示されている小型減速機があげられる。第1マイクロアクチュエータ34に所定の駆動電流が付与されてモータ38が駆動されると、モータ38の回転方向に基づいてピストン39が上下動する。この上下動によって、各流路を開放する開姿勢又は閉塞する閉姿勢に第1マイクロアクチュエータ34が姿勢変化する。ステッピングモータ37は、その出力軸が後述される回転軸88のギヤ99(図3参照)に連結される。
【0031】
エアー供給部23は、エアーポンプ40及び切換バルブ41を有する。エアーポンプ40は、圧縮空気(以下、単に「エアー」とも称される。)を送出するポンプであり、エアーが流通可能な流路により切換バルブ41と連結されている。切換バルブ41は、装置本体11にカセット12が装着されることにより、そのカセット12のPCR槽51、第1試薬槽54、第2試薬槽55及び洗浄液槽56,57とそれぞれエアーを送出可能に連結される。切換バルブ41の流路切換によって、エアーポンプ40から送出されたエアーが、PCR槽51、第1試薬槽54、第2試薬槽55又は洗浄液槽56,57のいずれかに選択的に送出される。
【0032】
光学検出部24は、光源42及び検出用カメラ43を有する。光源42及び検出用カメラ43は、HD槽52に対応して配置されている。光源42は、後述される第2試薬に対応して種類が選択されるが、本実施形態ではインターカレータの励起波長である200〜400nmの波長の光が照射可能な光源が選択される。検出用カメラ43は、CCDカメラであり、核酸マイクロアレイの画像解析が可能な所定の画素数以上のものが採用される。
【0033】
制御部25は、主としてCPU、ROM、RAMなどの演算装置として構成されており、加温部21、駆動部22、エアー供給部23及び光学検出部24の動作の制御や画像解析を行う。なお、図1には示されていないが、制御部25は、必要に応じて駆動回路などのハードウェアを有する。また、装置本体11に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部情報機器によって、制御部25の一部が構成されてもよい。
【0034】
[カセット12]
図2及び図3に示されるように、カセット12は、装置本体11に着脱可能なカセット型に構成されている。このカセット12には、PCR及びハイブリダイズによってサンプルから所望の核酸を検出するために必要な試薬及び反応槽が備えられている。つまり、装置本体11にカセット12を装着することによって、1回の核酸検出が実施可能である。
【0035】
カセット12は、カセット本体50にそれぞれ形成されたPCR槽51、HD槽52、廃液槽53、第1試薬槽54、第2試薬槽55、及び2つの洗浄液槽55,56を有する。HD槽52が、本発明における反応槽に相当する。第1試薬槽54、第2試薬槽55、及び洗浄液槽55が、本発明における貯留槽に相当する。カセット本体50は、概ねトレイ形状であり、所定の位置に前述された各槽が凹陥されて一体に形成されている。カセット本体50の形状や大きさは特に限定されないが、装置本体11に着脱するに際して取り扱いが容易な大きさ及び形状が採用される。また、カセット本体50は、カセット12の着脱方向が容易に認識である形状であることが好ましい。
【0036】
詳細には、カセット本体50の手前側(図3における下側)に、右側から左側へ向かってPCR槽51、HD槽52及び廃液槽53が並んで形成されている。また、カセット本体50の奥側(図3における上側)に、左側から右側へ向かって第1試薬槽54、第2試薬槽55及び2つの洗浄液槽55,56が並んで形成されている。図3に示されるように、カセット本体50の右奥側には、第1ジョイント部58が形成されている。第1ジョイント部58は、カセット12が装置本体11に装着されることにより、切換バルブ41を介してエアーポンプ40に接続される。
【0037】
図3において点線で示されるように、第1ジョイント部58からPCR槽51に渡って、エアーポンプ40から送出されるエアーが流通可能な第1流路59が形成されている。第1流路59は、第1ジョイント部58とPCR槽51の開口とを連結するチューブにより構成されている。このチューブは、カセット本体50の底側に露出されて配置されている。チューブの材質は特に限定されないが、所定の圧力により弾性変形して圧潰可能であって、PCRの温度サイクルに対して耐熱性を有し、血液や試薬などと反応性を有しないものが好適である。
【0038】
図3において点線で示されるように、PCR槽51からHD槽52に渡って、エアー並びに血液や試薬などの液体が流通可能な第2流路60が形成されている。第2流路60は、PCR槽51の開口とHD槽52の開口とを連結するチューブにより構成されている。このチューブは、第1流路59を構成するチューブと同様であり、カセット本体50の底側に露出されて配置されている。
【0039】
図3において点線で示されるように、HD槽52から廃液槽53に渡って、エアー並びに血液や試薬などの液体が流通可能な第3流路61が形成されている。第3流路61は、HD槽52の開口と廃液槽53の開口とを連結するチューブにより構成されている。このチューブは、第1流路59を構成するチューブと同様であり、カセット本体50の底側に露出されて配置されている。
【0040】
図3に示されるように、カセット本体50の左奥側には、第2ジョイント部62が形成されている。第2ジョイント部62は、カセット12が装置本体11に装着されることにより、切換バルブ41を介してエアーポンプ40に接続される。第2ジョイント部62は、第1試薬槽54へ通じるエアーの流路を構成する。第2ジョイント部62は、第1試薬槽54の上端付近に連結されている。
【0041】
図3に示されるように、カセット本体50の左中央部には、第3ジョイント部63が形成されている。第3ジョイント部63は、カセット12が装置本体11に装着されることにより、切換バルブ41を介してエアーポンプ40に接続される。第3ジョイント部63は、第2試薬槽55へ通じるエアーの流路を構成する。第3ジョイント部63は、第2試薬槽55の上端付近に連結されている。
【0042】
図3に示されるように、カセット本体50の右奥側には、第4ジョイント部64が形成されている。第4ジョイント部64は、カセット12が装置本体11に装着されることにより、切換バルブ41を介してエアーポンプ40に接続される。第4ジョイント部64は、洗浄液槽57へ通じるエアーの流路を構成する。第4ジョイント部64は、洗浄液槽57の上端付近に連結されている。洗浄液槽56と洗浄液槽57との間には、エアーポンプ40からのエアー及び洗浄液が流通可能な第4流路65が形成されている。
【0043】
図3において点線で示されるように、第1試薬槽54からHD槽52に渡って、エアー並びに第1試薬が流通可能な第5流路66が形成されている。第5流路66は、第1試薬槽54の開口とHD槽52の開口とを連結するチューブにより構成されている。このチューブは、第1流路59を構成するチューブと同様である。このチューブにより、本発明における流路及び変形部が構成されている。
【0044】
図3において点線で示されるように、第2試薬槽55からHD槽52に渡って、エアー並びに第2試薬が流通可能な第6流路67が形成されている。第6流路67は、第2試薬槽55の開口とHD槽52の開口とを連結するチューブにより構成されている。このチューブは、第1流路59を構成するチューブと同様である。このチューブにより、本発明における流路及び変形部が構成されている。
【0045】
図3において点線で示されるように、洗浄液槽56からHD槽52に渡って、エアー並びに洗浄液が流通可能な第7流路68が形成されている。第7流路68は、洗浄液槽56の開口とHD槽52の開口とを連結するチューブにより構成されている。このチューブは、第1流路59を構成するチューブと同様である。このチューブにより、本発明における流路及び変形部が構成されている。また、第5流路66、第6流路67及び第7流路68が、本発明における複数の流路である。
【0046】
以下に、カセット12の各部の詳細な構成が説明される。図4に示されるように、PCR槽51は、上部が開口された三重椀形状のタンクであり、所定容量の液体を貯留可能である。三重椀形状は、円孔形状の孔71と、椀形状の大椀72及び小椀73とが、上側から下側へ向かって重なりながら連続した空間を形成してなる。孔71は、大椀72の上部開口を閉止する蓋74が圧入される。この蓋74が大椀72の上部開口に密着して閉止する。蓋74は、その中央部が孔71に沿って凹陥した形状である。装置本体11にカセット12が装着されると、蓋74の凹陥部分にカウンターヒータ32が嵌め込まれる。これにより、PCR槽51の内部の蒸気圧が増加しても、蓋74が孔71に圧入された姿勢を維持する。なお、図4においては、装置本体11のペルチェ素子31及びカウンターヒータ32が示されているが、これらはカセット12を構成するものではない。
【0047】
大椀72及び小椀73は、蓋74が孔71に圧入された状態で液体を貯留する空間である。大椀72と小椀73との境界には、水平方向に形成された第1流路59及び第2流路60がそれぞれ連結されている。図3には示されていないが、この第1流路59及び第2流路60は、後述されるクリップ76,77により閉塞されている。つまり、蓋74が孔71に圧入された状態において、大椀72及び小椀73により形成される空間は閉空間となる。蓋74が孔71から取り外されると、大椀72の上部開口が開放される。この上部開口からサンプル及びサンプルの前処理試薬が大椀72及び小椀73へ注入可能となる。小椀73は、第1流路59及び第2流路60が連結される位置(開口)より下側にあるので、小椀73に貯留された液体は、第2流路60へ流れにくい。したがって、PCRにおいて生じた血液凝固物など固体が小椀73に溜まる。これにより、第2流路60が固体により詰まることが防止される。
【0048】
図3に示されるように、HD槽52はカセット本体50に円孔として形成されて所定容量の液体を貯留する。HD槽52は、本発明における反応槽として核酸検出反応が行われる槽である。HD槽52の底には、核酸マイクロアレイ75が固定されている。HD槽52の上部は蓋により閉止されている。HD槽52の蓋は、光源42から照射された光が上下方向に透過可能な透光部材から構成されている。HD槽52には、第2流路60及び第3流路61がそれぞれ連結されているが、この第2流路60及び第3流路61は、後述されるクリップ77,78により閉塞されている。また、HD槽52には、第5流路66、第6流路67及び第7流路68がそれぞれ連結されているが、この第5流路66、第6流路67及び第7流路68は、後述されるカムフォロワ85,86,87により閉塞されている。
【0049】
核酸マイクロアレイ75は、検出対象となるサンプル中の核酸、又はその核酸とハイブリダイズしうる一本鎖の核酸を基材上に固定したものであり、DNAチップとも称される。基材として、プラスチックやガラスなどが使用され、その形状は特に限定されないが、数十から数千平方ミリメートルの平板が一般的である。基材に固定される核酸として、検出対象である核酸や核酸プローブがあげられる。基材への核酸又は核酸プローブの固定は、物理的処理又は化学的処理が採用されうる。物理的処理として、ディスペンサなどを用いた押出法やインクジェット法により、核酸プローブなどの溶液を基材にスポッティングするスポッティング方法があげられる。化学的処理として、核酸プローブの末端に基材と共有結合形成可能な官能基を修飾する方法や、核酸プローブの末端及び基材それぞれに共有結合可能な官能基を修飾する方法があげられる。また、必要に応じて、基材にプラズマ処理が施されてもよい。
【0050】
図3に示されるように、廃液槽53はカセット本体50に角孔として形成されて所定容量の液体を貯留する。廃液槽53は、HD槽52からの廃液を貯留するに十分な容量である。廃液槽53は封止されているが、その上端付近に開口が形成されて大気開放されており、その開口には、廃液が流出しないようにフィルタが設けられている。
【0051】
図3に点線で示されるように、第1流路59、第2流路60及び第3流路61には、それぞれクリップ76,77,78が設けられている。各クリップ76〜78は、開閉する流路が異なる他は同様の構成なので、第1流路59に設けられたクリップ76を例として詳細な構成が説明される。
【0052】
図5に示されるように、クリップ76は、カセット本体50の底面側に設けられて、第1流路59を開閉する。クリップ76は、カセット本体50の底面側に垂下された軸受け部79に軸80が支持されて、その両端がシーソー運動をする棒材である。クリップ76の第1端部81は上方へ曲折されており、第1流路59を構成するチューブと接離可能である。第1端部81の反対側となる第2端部82も上方へ曲折されている。装置本体11にカセット12が配置されると、この第2端部82の下側に第1マイクロアクチュエータ34が位置する。なお、図5においては、第1マイクロアクチュエータ34が示されているが、第1マイクロアクチュエータ34はカセット12を構成するものではない。
【0053】
第1端部81の下側には所定の空間が隔てられて支持板83が配置されている。この支持板83は、カセット本体50に一体に形成されている。支持板83の上面をバネ座として、第1端部81と支持板83との間にコイルバネ84が介設されている。このコイルバネ84により、第1端部81が上側へ付勢されている。つまり、図5において、クリップ76は、軸80を中心として反時計回りに付勢されている(以下、クリップ76について単に時計回り又は反時計回りと称する場合は、図5における状態を指す。)。コイルバネ84の付勢力は、第1流路59を構成するチューブを圧潰するに十分な強さである。したがって、クリップ76が反時計回りに付勢されて、第1端部81がチューブ(第1流路59)をカセット本体50と挟み込みようにして圧潰する。これにより、第1流路59は閉塞される。
【0054】
第1マイクロアクチュエータ34は、図5(A)に示される閉姿勢と、図5(B)に示される開姿勢に姿勢変化する。第1マイクロアクチュエータ34の駆動力は、コイルバネ84の付勢力に抗してクリップ76を時計回りさせるに十分な強さである。したがって、第1マイクロアクチュエータ34がピストン39を押し上げて開姿勢となると、そのピストン39によって第2端部82が上方へ押しやられ、コイルバネ84の付勢力に抗してクリップ76が時計回りに回転する。これにより、第1端部81が下がってチューブ(第1流路59)から離れ、チューブが弾性復帰して第1流路59が開放される。
【0055】
クリップ77については、図面を用いた詳細な説明が省略されるが、クリップ76と同様に、第2アクチュエータ35が閉姿勢となると第2流路60を閉塞し、第2アクチュエータ35が開姿勢となると第2流路60を開放する。同様に、クリップ77は、第3アクチュエータ36が閉姿勢となると第3流路61を閉塞し、第3アクチュエータ36が開姿勢となると第3流路61を開放する。
【0056】
図3に点線で示されるように、第5流路66、第6流路67及び第7流路68には、それぞれカムフォロワ85,86,87が設けられている。そして、各カムフォロワ85,86,87に対応して、回転軸88に3つのカム89,90,91が設けられている。各カムフォロワ85,86,87及び各カム89,90,91は、開閉する流路が異なる他は同様の構成なので、第6流路67に設けられたカムフォロワ86及びカム90を例として詳細な構成が説明される。
【0057】
図6に示されるように、カムフォロワ86は、カセット本体50の底面側に設けられて、第6流路67を開閉する。カムフォロワ86は、カセット本体50の底面側に設けられた軸92に回転自在に支持されている。カムフォロワ86は、2つの凸部93,94を有する概ね円盤形状である。凸部93は上方へ突出しており、第6流路67を構成するチューブと接離可能である。凸部94は側方へ突出しており、カム90と接触する。
【0058】
凸部94の上側には所定の空間が隔てられて支持板95が配置されている。この支持板95は、カセット本体50に一体に形成されている。支持板95の下面をバネ座として、凸部94と支持板95との間にコイルバネ96が介設されている。このコイルバネ96により、凸部94が下側へ付勢されている。コイルバネ96が、本発明における弾性部材に相当する。つまり、図6において、カムフォロワ86は、軸92を中心として時計回りに付勢されている(以下、カムフォロワ86について単に時計回り又は反時計回りと称する場合は、図6における状態を指す。)。コイルバネ96の付勢力は、第6流路67を構成するチューブを圧潰するに十分な強さである。したがって、カムフォロワ86が時計回りに付勢されて、凸部93がチューブ(第6流路67)をカセット本体50と挟み込みようにして圧潰する。これにより、第6流路67は閉塞される。第6流路67を閉塞するカムフォロワ86の姿勢が、本発明において第1姿勢と称される。
【0059】
カム90は、回転軸88の径方向に対して短い小径部97と長い大径部98とが連続して形成されることにより、その円周面の半径が連続して変化する形状である。大径部98が円周面全体に対して占める割合は1/4以下である。つまり、大径部98から回転軸88のいずれかの回転方向へ90°回転した位置には常に小径部97が存在する。回転軸の径方向における大径部98の長さと小径部97の長さとの割合は、カムフォロワ86を姿勢変化させるに必要な寸法として設定される。
【0060】
図3に示されるように、回転軸88には、3つのカム89〜91が軸方向に隔てられて固定されている。カム89,91については、ここでは図面を用いて詳細には説明されないが、カム90と同じ小径部及び大径部をそれぞれ有する。3つのカム89〜91は、回転軸88に同軸上に固定され、回転軸88の回転に伴って一体に回転される。各カム89〜91の大径部が回転軸88に対して突出する方向は、それぞれ異なるが、これについては後述される。回転軸88は、その軸方向を第5流路66、第6流路67及び第7流路68と交差させて、カセット本体50の底面側に設けられた軸受け(不図示)に回転自在に支持されている。
【0061】
回転軸88の一端にはギヤ99が設けられている。このギヤ99は、装置本体11にカセット12が配置されると、ステッピングモータ37の出力軸と連結される。そして、ステッピングモータ37が回転されると、その回転が回転軸88に駆動伝達されて、カム89〜91が回転して姿勢変化する。
【0062】
図6(A)に示されるように、カムフォロワ86の凸部93がチューブ(第6流路67)を圧潰して、第6流路67を閉塞可能とするカム90の姿勢が閉姿勢である。図6(B)に示されるように、回転軸88が回転すると、カム90が開姿勢に姿勢変化する。このとき、カム90の大径部98がカムフォロワ86の凸部94と接触する。これにより、凸部94がコイルバネ96の付勢力に抗して上側へ押しやられ、カムフォロワ86は反時計回りに回転する。これにより、凸部93が下がってチューブ(第6流路67)から離れ、チューブが弾性復帰して第6流路67が開放される。第6流路67を開放るカムフォロワ86の姿勢が、本発明において第2姿勢と称される。
【0063】
他のカムフォロワ85,87及びカム89,91については、図面を用いた詳細な説明が省略されるが、カムフォロワ86及びカム90と同様に、カム89が閉姿勢となるとカムフォロワ85が第5流路66を閉塞し、カム89が開姿勢となるとカムフォロワ86が第5流路66を開放する。同様に、カム91が閉姿勢となるとカムフォロワ87が第7流路68を閉塞し、カム91が開姿勢となるとカムフォロワ87が第7流路68を開放する。
【0064】
各カム89〜91は、対応するカムフォロワ85〜87を開姿勢とするタイミングが回転軸88の回転タイミングに対して異なる。換言すれば、回転軸88における相異なる回転位置において、各カム89が、対応するカムフォロワ85〜87を開姿勢へ姿勢変化させる。したがって、回転軸88の回転位置に応じて、第5流路66、第6流路67又は第7流路68のいずれかが開放され、その他は閉塞される。また、回転軸88が所定の回転位置となると、各カム89〜91のすべてが、対応するカムフォロワ85〜87を閉姿勢に維持する。換言すれば、その回転軸88の回転位置においては、第5流路66、第6流路67及び第7流路68のすべてが閉塞される。この回転位置は、回転軸88の初期位置として設定されている。
【0065】
回転軸88の各回転位置は、一定の回転方向に対して、各カム89〜91が従動するカムフォロワ85〜87を開姿勢へ姿勢変化させて第5流路66、第6流路67又は第7流路68が開放される順序が、後述される核酸検出反応に含まれる各ステップの順序を考慮して配置されている。
【0066】
【表1】

【0067】
回転軸88が一定の回転方向、つまり時計周り方向又は反時計回りのいずれかに回転すると、順次到来する各回転位置(No.1〜4)において、対応するカム89〜91がいずれか1つのカムフォロワ85〜87を開放姿勢へ姿勢変化させて第5流路66、第6流路67又は第7流路68のいずれかを開放する。つまり、各カム89〜91における各大径部が突出する方向は、各回転位置(No.1〜4)のいずれかである。なお、本実施形態では、各回転位置が昇順(1→4へ)に到来する回転軸88の回転方向を正転と称し、降順(4→1へ)に到来する回転軸88の回転方向を逆転と称する。
【0068】
表1に示されるように、No.1で示される回転位置は、前述された回転軸88の初期位置であり、この回転位置ではいずれのカム89〜91も対応する流路を開放しない。No.2で示される回転位置では、カム89がカムフォロワ85を姿勢変化させて、第5流路66を開放する。つまり、カム89の大径部は、初期位置から正転方向へ90°回転した位置にある。No.3で示される回転位置では、カム90がカムフォロワ86を姿勢変化させて、第6流路67を開放する。つまり、カム90の大径部98は、初期位置から正転方向へ180°回転した位置にある。No.4で示される回転位置では、カム91がカムフォロワ87を姿勢変化させて、第7流路68を開放する。つまり、カム97の大径部は、初期位置から正転方向へ270°回転した位置にある。
【0069】
第5流路66、第6流路67又は第7流路68のいずれかが開放されると、後述されるように、その流路に対応する第1試薬槽54、第2試薬槽55又は洗浄液槽56,57にそれぞれ貯留された第1試薬、第2試薬又は洗浄液がHD槽52へ流出する。表1に示されるように、回転軸88の回転位置がNo.1〜4へ順次変化するように正転されると、第5流路66、第6流路67、第7流路68の順序で各流路が開放され、第1試薬、第2試薬、洗浄液の順序で、HD槽52へ各液体が流出する。このHD槽52へ流出する第1試薬、第2試薬、洗浄液の順序は、後述される核酸検出反応に含まれる各ステップの順序に基づいて設定されている。
【0070】
つまり、初期位置となる回転位置No.1に隣接した回転位置No.2,4において、第5流路66又は第7流路68が開放されるように設定されている。したがって、初期位置から正転又は逆転のいずれかの回転方向へ回転軸88を回転させると、他の流路を開放することなく第5流路66又は第7流路68が開放される。これにより、第1試薬又は洗浄液がHD槽52へ流出される。第1試薬は、カセット12に充填された試薬のうち、核酸検出反応において第1番目に使用される試薬であり、洗浄液は、第2番目に使用される試薬である。そして、第3番目に使用される第2試薬は、初期位置に隣接しない回転位置No.3において第6流路67が開放されるように設定されている。
【0071】
第1試薬、第2試薬及び洗浄液はカセット12に予め充填されている。第1試薬槽54には、第1試薬が充填されている。第1試薬は、サンプル中の検出対象の核酸と、核酸マイクロアレイ75に固定された核酸プローブとが二本鎖を形成するための反応場となる液体であり、ハイブリダイズ液とも称される。第1試薬は、主として界面活性剤を含む溶液であり、その種類は特に限定されず公知のものが使用できる。第1試薬槽54は、第1試薬が充填された状態で封止されている。
【0072】
第2試薬槽55には、第2試薬が充填されている。第2試薬は、ハイブリダイズされて核酸マイクロアレイ75に固定された検出対象の核酸を、光学的に検出可能とする液体である。第2試薬は、主としてモノ修飾シクロデキストリンを含む。モノ修飾シクロデキストリンは、シクロデキストリンにリンカーを介してインターカレータが修飾された化合物である。第2試薬槽55は、第2試薬が充填された状態で封止されている。なお、本実施形態では、モノ修飾シクロデキストリンによってハイブリダイズされた核酸が検出されるが、この核酸検出は、酵素発色法、化学発光法、蛍光標識法、放射性物質標識法などの公知の手法により行うことができ、これら手法に応じた公知の試薬が第2試薬として使用できる。
【0073】
各洗浄液槽56,57には、洗浄液がそれぞれ充填されている。洗浄液は、ハイブリダイズ及びモノ修飾シクロデキストリンの吸着の各反応の間に、核酸マイクロアレイ75を洗浄して未反応の試薬を除去するための液体である。洗浄液は、特に限定されず公知のものが使用でき、例えば、水又は緩衝液等が洗浄液として使用できる。各洗浄液槽56,57は、洗浄液が充填された状態で封止されている。
【0074】
[核酸検出方法]
以下に、検出装置10を用いた核酸検出方法が詳細に説明される。
図7に示されるように、最初に装置本体11にカセット12を装着する。カセット12において、回転軸88は初期位置(回転位置No.1)に位置せしめられている。したがって、各カム89〜91は、対応する各カムフォロワ85〜87を閉姿勢としている。これにより、第5流路66、第6流路67及び第7流路68が閉塞されるので、第1試薬槽54、第2試薬槽55及び洗浄液槽56,57からHD槽52へ試薬又は洗浄液が流出することがない。また、装置本体11において、第1マイクロアクチュエータ34、第2マイクロアクチュエータ35及び第3マイクロアクチュエータ36は、いずれも閉姿勢にされている。したがって、カセット12が装置本体11に装着されても、各クリップ76〜78は閉姿勢であり、第1流路59、第2流路60及び第3流路61は閉塞されている。
【0075】
つづいて、PCR槽51の蓋74を取り外して大椀72及び小椀73(図4参照)を開放し、サンプル、サンプルの前処理試薬及びPCR試薬を順次注入する(S2)。サンプルは、例えばヒト血液であるが、検出対象の核酸が含まれる液体であれば、血液に限定されず、前処理した核酸或いは細胞、細胞を含む液などであってもよく、その他の例として、口拭い液、尿、唾液、その他の分泌液などがあげられる。また、サンプルは、必要に応じてpH調整液などに溶解される。
【0076】
サンプルの前処理試薬は、血液などに含まれるPCR阻害物質を失活させる試薬であり、市販品(例えば、島津製作所製、商品名:Ampdirect Plus)を使用すればよい。また、PCR試薬は、検出対象の核酸と二本鎖を形成する増幅プライマー及び核酸ポリメラーゼを含むものであれば公知の試薬が使用できる。また、サンプルの前処理試薬及びPCR試薬を1つの溶液として調製してもよい。
【0077】
サンプルの前処理試薬は、泡立てることやサンプルと混合撹拌することが好ましくない。したがって、サンプル又は前処理試薬は、既にPCR槽51に注入した溶液に重層するように静かに注入する。例えば、サンプルを小椀73に注入した後、前処理試薬をサンプルに重層するようにして大椀74に静かに注入する。PCR槽51に、サンプル、サンプルの前処理試薬及びPCR試薬を順次注入した後、PCR槽51を蓋74により封止する。
【0078】
なお、装置本体11へのカセット12の装着(S1)と、PCR槽51へのサンプル、サンプルの前処理試薬及びPCR試薬の注入(S2)とは、順序を逆にしてもよいが、カセット12を移動させると、PCR槽51内において液面が波立ったりサンプルが混合されたりするおそれがあるので、装置本体11へのカセット12の装着を先に行うことが好ましい。
【0079】
つづいて、検出装置10を動作させて前処理及びPCRを行う(S3)。装置本体11の制御部25には、予め前処理及びPCRのための処理ステップが入力されている。この処理ステップに基づいて、制御部25がペルチェ素子31及びカウンターヒータ32を動作させることにより、PCR槽51において前処理及びPCRが行われる。カウンターヒータ32は、この処理ステップにおいて、PCR槽51の蓋74を押圧するように移動される。この処理ステップは、主として温度サイクルと保持時間とによって制御される。まず、前処理として、PCR槽51が、約80℃に加温されて15分間保持される。これにより、サンプル中のPCR阻害物質が失活される。
【0080】
その後、PCRとして、(1)約92〜95℃、約0.1秒〜1分間の変性ステップ、(2)約50〜65℃、約0.1秒〜1分間のアニールステップ、(3)約70〜75℃、約0.1秒〜5分間の鎖伸長ステップの3つのステップが1〜40回程度繰り返される。変性ステップにおいて、サンプル中の核酸が1本鎖に変性される。アニールステップにおいて、1本鎖の核酸に増幅プライマーが結合され、PCRの反応開始点となる二本鎖部分が作成される。鎖伸長ステップにおいて、核酸ポリメラーゼが反応して二本鎖部分が伸張されて二本鎖の核酸が作成される。なお、この前処理及びPCRは必ずしも明確に区別されなくてもよい。
【0081】
前処理及びPCRを終えると、制御部25は、第1マイクロアクチュエータ34及び第2マイクロアクチュエータ35を動作させると共に、エアーポンプ40及び切換バルブ41を動作させる(S4)。第1マイクロアクチュエータ34及び第2アクチュエータ35は、閉姿勢から開姿勢にそれぞれ姿勢変化される。これに連動して、クリップ76,77が姿勢変化されて、第1流路59及び第2流路60が開放される。エアーポンプ40は、エアーを送出し、切換バルブ41は、そのエアーを第1流路59へ送出する。このエアーは、内部圧を高めながら第1流路59からPCR槽51内へ流入する。つまり、第1流路59及びPCR槽51内の空気は、エアーにより圧縮される。そして、流入したエアーに押圧されて、PCR槽51内のサンプル、サンプルの前処理試薬及びPCR試薬(以下、これらを「PCR液」と総称する。)が第2流路60へ流出する。そして、PCR液は、第2流路60を通じてHD槽52へ流入する。制御部25は、PCR液がPCR槽51から流出するに必要な所定の時間が経過した後、第1マイクロアクチュエータ34及び第2マイクロアクチュエータ35を動作させて閉姿勢とすると共に、エアーポンプ40を停止させる。これにより、第1流路59及び第2流路60は、再び閉塞される。
【0082】
好ましくは、HD槽52においてPCR液が加温され、増幅された核酸が一本鎖に変性される(S5)。装置本体11の制御部25には、この核酸変性のための処理ステップが入力されている。この処理ステップに基づいて、制御部25がセラミックヒータ33を動作させる。この処理ステップは、主として加温と保持時間とによって制御され、本実施形態では、HD槽52が、約90℃に加温されて5分間保持される。これにより、PCR液中の核酸が1本鎖に変性される。
【0083】
つづいて、制御部25は、ステッピングモータ37を動作させると共に、エアーポンプ40及び切換バルブ41を動作させる(S6)。ステッピングモータ37が動作されると回転軸88が回転される。回転軸88は、第5流路66が開放される回転位置No.2まで初期位置から90°正転される。回転軸88の回転に伴って、カム89がカムフォロワ85を閉姿勢から開姿勢へ姿勢変化させ、その結果、第5流路66が開放される。エアーポンプ40は、エアーを送出し、切換バルブ41は、そのエアーを第2ジョイント部62へ送出する。このエアーは、内部圧を高めながら第2ジョイント部62から第1試薬槽54内へ流入する。つまり、第1試薬槽54内の空気は、エアーにより圧縮される。流入したエアーに押圧されて、第1試薬槽54内の第1試薬が第5流路66へ流出する。そして、第1試薬は、第5流路66を通じてHD槽52へ流入する。制御部25は、第1試薬が第1試薬槽54から流出するに必要な所定の時間が経過した後、ステッピングモータ37を逆方向へ動作させて回転軸88を初期位置(回転位置No.1)へ逆転すると共に、エアーポンプ40を停止させる。これにより、第5流路66が再び閉塞される。この第5流路66の開閉に伴う回転軸88の正逆転に際して、第6流路67及び第7流路68は開放されない。
【0084】
つづいて、HD槽52においてハイブリダイズが行われる(S7)。装置本体11の制御部25には、予めハイブリダイズのための処理ステップが入力されている。この処理ステップに基づいて、制御部25がセラミックヒータ33を動作させることにより、ハイブリダイズが行われる。ハイブリダイズにおける温度条件は、核酸マイクロアレイ75に固定された核酸プローブの熱変性温度に応じて設定される。例えば、その核酸プローブの熱変性温度が約55〜75℃であれば、HD槽52内が約62℃程度に加温されるように、セラミックヒータ33が制御される。また、ハイブリダイズの時間として1〜30分間程度が設定される。ハイブリダイズにより、PCR液中の検出対象の核酸と、核酸マイクロアレイ75に固定された核酸プローブとがハイブリダイズされる。なお、ハイブリダイズを効率よく行うために、HD槽52内のPCR液を撹拌してもよい。
【0085】
ハイブリダイズを終えると、制御部25は、第1マイクロアクチュエータ34、第2マイクロアクチュエータ35及び第3マイクロアクチュエータ36を動作させると共に、エアーポンプ40及び切換バルブ41を動作させる(S8)。第1マイクロアクチュエータ34、第2アクチュエータ35及び第3マイクロアクチュエータ36は、閉姿勢から開姿勢にそれぞれ姿勢変化される。これに連動して、クリップ76〜78が姿勢変化されて、第1流路59、第2流路60及び第3流路61が開放される。エアーポンプ40は、エアーを送出し、切換バルブ41は、そのエアーを第1流路59へ送出する。このエアーは、第1流路59からPCR槽51内へ流入し、さらに第2流路60からHD槽52へ流入する。流入したエアーに押圧されて、HD槽52内のPCR液及び第1試薬が第3流路61へ流出して、廃液槽53へ排出される。なお、核酸マイクロアレイ75の核酸プローブとハイブリダイズされた核酸は、核酸マイクロアレイ75上に残る。制御部25は、PCR液及び第1試薬が廃液槽53へ排出されるに必要な所定の時間が経過した後、第1マイクロアクチュエータ34、第2マイクロアクチュエータ35及び第3マイクロアクチュエータ36を動作させて閉姿勢とすると共に、エアーポンプ40を停止させる。これにより、第1流路59、第2流路60及び第3流路61は、再び閉塞される。
【0086】
つづいて、制御部25は、ステッピングモータ37を動作させると共に、エアーポンプ40及び切換バルブ41を動作させる(S9)。ステッピングモータ37が動作されると回転軸88が回転される。回転軸88は、第7流路68が開放される回転位置No.4まで初期位置から90°逆転される。回転軸88の回転に伴って、カム91がカムフォロワ87を閉姿勢から開姿勢へ姿勢変化させ、その結果、第7流路68が開放される。エアーポンプ40は、エアーを送出し、切換バルブ41は、そのエアーを第4ジョイント部64へ送出する。このエアーは、内部圧を高めながら第4ジョイント部64から洗浄液槽57内へ流入する。つまり、洗浄液槽57内の空気は、エアーにより圧縮される。流入したエアーに押圧されて、洗浄液槽57内の洗浄液が第4流路64を通じて洗浄液槽56へ流入する。これに伴い、洗浄液槽56内の洗浄液が、第7流路68を通じてHD槽52へ流入する。制御部25は、洗浄液が洗浄液槽56から流出するに必要な所定の時間が経過した後、ステッピングモータ37を逆方向へ動作させて回転軸88を初期位置(回転位置No.1)へ正転すると共に、エアーポンプ40を停止させる。これにより、第7流路68が再び閉塞される。ここでは、洗浄液槽56,57に充填された洗浄液のうち、洗浄液槽56に充填された容量に相当する洗浄液がHD槽52へ流出される。この第7流路68の開閉に伴う回転軸88の正逆転に際して、第5流路66及び第6流路67は開放されない。
【0087】
HD槽52が洗浄液で満たされると、制御部25は、第1マイクロアクチュエータ34、第2マイクロアクチュエータ35及び第3マイクロアクチュエータ36を動作させると共に、エアーポンプ40及び切換バルブ41を動作させる(S10)。なお、洗浄を効率よく行うために、HD槽52に洗浄液が満たされた後、撹拌が行われてもよい。第1マイクロアクチュエータ34、第2アクチュエータ35及び第3マイクロアクチュエータ36は、閉姿勢から開姿勢にそれぞれ姿勢変化される。これに連動して、クリップ76〜78が姿勢変化されて、第1流路59、第2流路60及び第3流路61が開放される。エアーポンプ40は、エアーを送出し、切換バルブ41は、そのエアーを第1流路59へ送出する。このエアーは、第1流路59からPCR槽51内へ流入し、さらに第2流路60からHD槽52へ流入する。流入したエアーに押圧されて、HD槽52内の洗浄液が第3流路61へ流出して、廃液槽53へ排出される。洗浄液と共に、HD槽52に残留した未反応のPCR液も廃液槽53へ排出される。制御部25は、洗浄液が廃液槽53へ排出されるに必要な所定の時間が経過した後、第1マイクロアクチュエータ34、第2マイクロアクチュエータ35及び第3マイクロアクチュエータ36を動作させて閉姿勢とすると共に、エアーポンプ40を停止させる。これにより、第1流路59、第2流路60及び第3流路61は、再び閉塞される。
【0088】
つづいて、制御部25は、ステッピングモータ37を動作させると共に、エアーポンプ40及び切換バルブ41を動作させる(S11)。ステッピングモータ37が動作されると回転軸88が回転される。回転軸88は、第6流路67が開放される回転位置No.3まで初期位置から180°正転される。回転軸88の回転に伴って、カム90がカムフォロワ86を閉姿勢から開姿勢へ姿勢変化させ、その結果、第6流路67が開放される。エアーポンプ40は、エアーを送出し、切換バルブ41は、そのエアーを第3ジョイント部63へ送出する。このエアーは、内部圧を高めながら第3ジョイント部63から第2試薬槽55内へ流入する。つまり、第2試薬槽55内の空気は、エアーにより圧縮される。流入したエアーに押圧されて、第2試薬槽55内の第2試薬が第6流路67へ流出する。そして、第2試薬は、第6流路67を通じてHD槽52へ流入する。制御部25は、第2試薬が第2試薬槽55から流出するに必要な所定の時間が経過した後、ステッピングモータ37を逆方向へ動作させて回転軸88を初期位置へ逆転すると共に、エアーポンプ40を停止させる。これにより、第6流路67が再び閉塞される。
【0089】
なお、この回転軸88の正逆転に際して、回転軸88が初期位置から90°回転した位置(回転位置No.2)において第5流路67が一旦開放されるが、第1試薬槽54からは既に第1試薬が流出されており、また、第1試薬槽54へはエアーが供給されないため、HD槽52へ第1試薬が流出することがない。
【0090】
つづいて、HD槽52においてモノ修飾シクロデキストリンの吸着が行われる(S12)。装置本体11の制御部25には、予めこの吸着のための処理ステップが入力されている。この処理ステップに基づいて、制御部25がセラミックヒータ33を動作させる。モノ修飾シクロデキストリンの吸着における温度条件は、例えば、HD槽52内が約45℃程度に加温されるように、セラミックヒータ33が制御される。また、吸着時間として1〜30分間程度が設定される。モノ修飾シクロデキストリンのインターカレータは、核酸マイクロアレイ75上の二本鎖の核酸塩基結合におけるπスタッキング構造又はその近傍に安定して配置されて所定の蛍光特性を発揮する。また、インターカレータは、モノ修飾シクロデキストリンが第2試薬に溶解されている状態では、シクロデキストリンの疎水性キャビティ内又はその近傍に配置されて水溶性となる。インターカレータの2つの配置状態のうち、二本鎖の核酸塩基結合におけるπスタッキング構造又はその近傍に配置された状態の方が安定である。なお、モノ修飾シクロデキストリンの吸着を効率よく行うために、HD槽52内の第2試薬を撹拌してもよい。
【0091】
モノ修飾シクロデキストリンの吸着を終えると、制御部25は、第1マイクロアクチュエータ34、第2マイクロアクチュエータ35及び第3マイクロアクチュエータ36を動作させると共に、エアーポンプ40及び切換バルブ41を動作させる(S13)。第1マイクロアクチュエータ34、第2アクチュエータ35及び第3マイクロアクチュエータ36は、閉姿勢から開姿勢にそれぞれ姿勢変化される。これに連動して、クリップ76〜78が姿勢変化されて、第1流路59、第2流路60及び第3流路61が開放される。エアーポンプ40は、エアーを送出し、切換バルブ41は、そのエアーを第1流路59へ送出する。このエアーは、第1流路59からPCR槽51内へ流入し、さらに第2流路60からHD槽52へ流入する。流入したエアーに押圧されて、HD槽52内の第2試薬が第3流路61へ流出して、廃液槽53へ排出される。なお、核酸マイクロアレイ75上の二本鎖の核酸塩基結合におけるπスタッキング構造又はその近傍に配置されたモノ修飾シクロデキストリンは、核酸マイクロアレイ75上に残る。制御部25は、第2試薬が廃液槽53へ排出されるに必要な所定の時間が経過した後、第1マイクロアクチュエータ34、第2マイクロアクチュエータ35及び第3マイクロアクチュエータ36を動作させて閉姿勢とすると共に、エアーポンプ40を停止させる。これにより、第1流路59、第2流路60及び第3流路61は、再び閉塞される。
【0092】
つづいて、制御部25は、ステッピングモータ37を動作させると共に、エアーポンプ40及び切換バルブ41を動作させる(S14)。ステッピングモータ37が動作されると回転軸88が回転される。回転軸88は、第7流路68が開放される回転位置No.4まで初期位置から90°逆転される。回転軸88の回転に伴って、カム91がカムフォロワ87を閉姿勢から開姿勢へ姿勢変化させ、その結果、第7流路68が開放される。エアーポンプ40は、エアーを送出し、切換バルブ41は、そのエアーを第4ジョイント部64へ送出する。このエアーは、内部圧を高めながら第4ジョイント部64から洗浄液槽57を通じて洗浄液槽56へ流入する。つまり、洗浄液槽56,57内の空気は、エアーにより圧縮される。これに伴い、洗浄液槽56内の洗浄液が、第7流路68を通じてHD槽52へ流入する。制御部25は、洗浄液が洗浄液槽56から流出するに必要な所定の時間が経過した後、ステッピングモータ37を動作させて回転軸88を初期位置へ回転すると共に、エアーポンプ40を停止させる。これにより、第7流路68が再び閉塞される。ここでは、洗浄液槽56,57に充填された洗浄液のうち、残りの洗浄液(洗浄液槽57に充填された容量に相当する。)がHD槽52へ流出される。この第7流路68の開閉に伴う回転軸88の正逆転に際して、第5流路66及び第6流路67は開放されない。
【0093】
HD槽52が洗浄液で満たされると、制御部25は、第1マイクロアクチュエータ34、第2マイクロアクチュエータ35及び第3マイクロアクチュエータ36を動作させると共に、エアーポンプ40及び切換バルブ41を動作させる(S15)。なお、洗浄を効率よく行うために、HD槽52に洗浄液が満たされた後、撹拌が行われてもよい。第1マイクロアクチュエータ34、第2アクチュエータ35及び第3マイクロアクチュエータ36は、閉姿勢から開姿勢にそれぞれ姿勢変化される。これに連動して、クリップ76〜78が姿勢変化されて、第1流路59、第2流路60及び第3流路61が開放される。エアーポンプ40は、エアーを送出し、切換バルブ41は、そのエアーを第1流路59へ送出する。このエアーは、第1流路59からPCR槽51内へ流入し、さらに第2流路60からHD槽52へ流入する。流入したエアーに押圧されて、HD槽52内の洗浄液が第3流路61へ流出して、廃液槽53へ排出される。洗浄液と共に、HD槽52に残留した未反応の第2試薬も廃液槽53へ排出される。なお、洗浄液が廃液槽53へ排出された後、第1流路59、第2流路60及び第3流路61は、開放された状態で放置されても、閉塞された状態にされてもいずれでもよい。
【0094】
つづいて、制御部25は、光源42からHD槽52へ光を照射して、核酸マイクロアレイ75を検出用カメラ43により撮影する(S16)。光源42から照射される光は、モノ修飾シクロデキストリンのインターカレータの励起波長であり、インターカレータがピレンやフルオレセインの場合には、約200〜400nmの光が照射される。核酸マイクロアレイ75上の二本鎖の核酸塩基結合におけるπスタッキング構造又はその近傍に配置されたインターカレータは、この光の照射を受けて黄緑色や水色などの固有の色彩に発光する。検出用カメラ43が撮影した核酸マイクロアレイ75の像を制御部25が画像処理し、画像中のインターカレータの発光を検出することにより、核酸マイクロアレイ75に吸着したモノ修飾シクロデキストリンを光学的に検出することができる。
【0095】
[変形例]
上記実施形態では、回転軸88に固定された3つのカム89〜91の各大径部が、回転軸88に対して突出する方向が90°毎に異なることとしたが、各カム89〜91の各大径部が回転軸88に対して突出する方向を120°毎に異なる配置としてもよい。このようなカム89〜91の配置による回転軸88の回転位置と各流路の開閉状態との関係を表2に示す。
【0096】
【表2】

【0097】
この変形例では、回転軸88が一定の回転方向、つまり時計周り方向又は反時計回りのいずれかに回転すると、順次到来する各回転位置(No.I〜VI)において、対応するカム89〜91がいずれか1つのカムフォロワ85〜87を開放姿勢へ姿勢変化させて第5流路66、第6流路67又は第7流路68のいずれかを開放するが、各流路が開放される間の回転位置、つまり、回転位置No.I,III,Vにおいて、第5流路66、第6流路67及び第7流路68のすべてが閉塞される。換言すれば、各カム89〜91における各大径部が突出する方向は、回転位置No.II,IV,VIのいずれかである。なお、本変形例では、各回転位置が昇順(I→VIへ)に到来する回転軸88の回転方向を正転と称し、降順(VI→Iへ)に到来する回転軸88の回転方向を逆転と称する。
【0098】
この変形例によれば、前述された第5流路66の開閉(図7のS6)は次のように行われる。制御部25は、ステッピングモータ37を動作させて、回転軸88を回転位置No.I(初期位置)から回転位置No.IIまで60°正転させる。これにより、第5流路66が開放される。そして、前述されたようにして第1試薬槽54内の第1試薬が第5流路66へ流出した後、制御部25は、ステッピングモータ37を動作させて、回転軸88を回転位置No.Iへ60°逆転する。これにより、第5流路66が再び閉塞される。
【0099】
ハイブリダイズ(図7のS7)及び第1試薬の排出(図7のS8)を終えると、前述された第7流路68の開閉(図7のS9)は次のように行われる。制御部25は、ステッピングモータ37を動作させて、回転軸88を回転位置No.Iから回転位置No.VIまで60°逆転させる。これにより、第7流路68が開放される。そして、前述されたようにして洗浄液槽56,57内の洗浄液がHD槽52へ流出した後、制御部25は、ステッピングモータ37を動作させて、回転軸88を回転位置No.VIから回転位置No.Vへ60°逆転させる。これにより、第7流路68が再び閉塞される。
【0100】
洗浄ステップ(図7のS10)を終えると、前述された第6流路67の開閉(図7のS11)は次のように行われる。制御部25は、ステッピングモータ37を動作させて、回転軸88を回転位置No.Vから回転位置No.IVまで60°逆転させる。これにより、第6流路67が開放される。そして、前述されたようにして第2試薬槽55内の第2試薬がHD槽52へ流出した後、制御部25は、ステッピングモータ37を動作させて、回転軸88を回転位置No.IVから回転位置No.Vへ60°正転させる。これにより、第6流路67が再び閉塞される。
【0101】
モノ修飾デキストリンの吸着(図7のS12)及び第2試薬の排出(図7のS13)を終えると、前述された第7流路68の開閉(図7のS14)は次のように行われる。制御部25は、ステッピングモータ37を動作させて、回転軸88を回転位置No.Vから回転位置No.VIまでから60°正転させる。これにより、第7流路68が開放される。そして、前述されたようにして洗浄液槽56,57内の洗浄液がHD槽52へ流出した後、制御部25は、ステッピングモータ37を動作させて、回転軸88を回転位置No.VIから回転位置No.I又は回転位置No.Vのいずれかへ60°正転又は逆転させる。これにより、第7流路68が再び閉塞される。
【0102】
[本実施形態の作用効果]
このように、検出装置10によれば、第1試薬槽54、第2試薬槽55、洗浄液槽56,57とHD槽52とを連結する第5流路66、第6流路67及び第7流路68の開閉が、回転軸88に設けられた3つのカム89〜91の回転位置に基づいて制御されるので、簡易な構造で3つの流路の開閉を実現することができ、カセット12が小型化される。
【0103】
また、各カムフォロワ85〜87が、コイルバネ96等に弾性付勢されて閉姿勢とされているので、各カム89〜91が各カムフォロワ85〜87を弾性付勢に抗して姿勢変化させる回転位置に回転軸88が回転されてなければ、第5流路66、第6流路67及び第7流路68はすべて閉塞された状態にある。これにより、カセット12が保管や搬送される際に、第1試薬槽54、第2試薬槽55、洗浄液槽56,57に充填された試薬や洗浄液がHD槽52へ流出することが防止される。
【0104】
また、各カム89〜91は、回転軸88の回転位置に応じて、各カムフォロワ85〜87のいずれかを開姿勢へ姿勢変化させるので、回転軸88の回転位置によって、第5流路66、第6流路67及び第7流路68のうちの所望の1つの流路を開放させることができる。特に、回転軸88の初期位置に隣接する回転位置において、核酸検出反応に含まれる各ステップのうち、最初の2つのステップであるハイブリダイズ及び洗浄に使用される第1試薬及び洗浄液が流通する第5流路66及び第7流路68を開放させることにより、第1試薬、第2試薬、洗浄液を混合させることなくHD槽52へ供給させることができる。
【0105】
また、各カム89〜91は、回転軸88の初期位置において、各カムフォロワ85〜87をすべて閉姿勢とするので、初期位置では、第5流路66、第6流路67及び第7流路68のすべてが閉塞され、カセット12が保管や搬送される際に、各試薬や洗浄液がHD槽52へ流出することが防止される。
【0106】
また、HD槽52に、核酸マイクロアレイ72が固定されることにより、核酸検出に好適なカセット12が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、検出装置10の装置本体11の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、カセット12の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、カセット12の外観構成を示す平面図である。
【図4】図4は、図3におけるIV−IV断面を示す部分断面である。
【図5】図5は、図3におけるV−V断面を示す部分断面図である。
【図6】図6は、図3におけるVI−VI断面を示す部分断面図である。
【図7】図7は、本実施形態における検出方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
10・・・検出装置
12・・・カセット
37・・・ステッピングモータ(駆動源)
52・・・HD槽
54・・・第1試薬槽
55・・・第2試薬槽
56・・・洗浄液槽
66・・・第5流路
67・・・第6流路
68・・・第7流路
75・・・核酸マイクロアレイ
85〜87・・・カムフォロワ
88・・・回転軸
89〜91・・・カム
96・・・コイルバネ(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検出反応に含まれる各ステップにおいてそれぞれ用いられる複数種の液体をそれぞれ貯留する複数の貯留槽と、
上記検出反応が行われる反応槽と、
上記各貯留槽と上記反応槽とを当該貯留槽に貯留された液体を流通可能にそれぞれ連結し、少なくとも一部に弾性変形可能な変形部をそれぞれ有する複数の流路と、
駆動源からの駆動伝達に基づいて回転する回転軸と、
上記複数の流路に対応して上記回転軸にそれぞれ設けられ、当該回転軸の回転に伴って各々が対応する流路の変形部を弾性変形又は弾性復帰させて当該流路を開閉する複数のカムと、を具備する検出装置。
【請求項2】
上記複数の流路の各変形部をそれぞれ弾性変形させて当該流路を閉塞する第1姿勢と、各変形部をそれぞれ弾性復帰させて当該流路を開放する第2姿勢とに姿勢変化する複数のカムフォロワと、
上記各カムフォロワを第1姿勢にそれぞれ弾性付勢する弾性部材とを、更に具備する請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
上記複数のカムは、上記回転軸の回転位置に応じて、一部のカムが当該カムに従動するカムフォロワを第2姿勢へ姿勢変化させる請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
上記複数のカムは、上記回転軸の所定の回転位置において、当該カムに従動するカムフォロワをすべて第1姿勢とする請求項2又は3のいずれかに記載の検出装置。
【請求項5】
上記カムフォロワをすべて第1姿勢とする上記回転位置に隣接する回転位置において、上記検出反応において第1番目及び第2番目に使用される各液体が流通する各流路に対応する各カムフォロワをそれぞれ第1姿勢とすべく、上記複数のカムが回転軸に配置された請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
上記反応槽に、核酸マイクロアレイが固定された請求項1から5のいずれかに記載の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−2899(P2009−2899A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166303(P2007−166303)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(591108178)秋田県 (126)
【出願人】(503366841)株式会社アイカムス・ラボ (27)
【出願人】(503228963)株式会社セーコン (5)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】