説明

検査システム及び検査方法

【課題】液晶パネルの寿命検査にかかる時間を短縮するとともに、より現実に近い条件での検査を可能にする。
【解決手段】液晶パネルPに光を照射する照射部13と、液晶パネルPの比抵抗値を測定する比抵抗測定部11と、基準となる寿命を有する基準液晶パネルPrに対して前記光と同等の光を照射した時に、基準液晶パネルPrの比抵抗値が所定の値だけ変化するのに要する基準期間を記憶する記憶部16と、液晶パネルPの比抵抗値が所定の値だけ変化するのに要した第1期間と基準期間とを比較することにより、液晶パネルの良否を判断する演算部18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルから不良品を検出するための検査システム及び検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルの耐光性寿命の検査には、現在、数ヶ月程度を要しており、より早く液晶パネルの寿命を見極める技術が望まれている。検査期間を短縮する手法の1つとして、実際の使用状況よりも過酷な条件による負荷をかけて試験を行い、その結果から長期間の使用後における劣化を予測する、いわゆる加速試験が知られている。例えば、特許文献1では、レーザ光を用いた加速試験法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−93438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、加速試験では現実の使用状況とは異なる条件で負荷をかけるため、現実とは異なる結果がでる可能性が懸念される。これは、照射する光の波長によって、液晶分解機構の違い等があるためである。
よって、より現実に即した予測を実現するためには、加速手法を用いず、プロジェクタ用などの実際の光源を用いて液晶パネルが劣化するまで試験をするのが望ましいが、この方法では、2000〜10000時間程度の非常に長い時間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、液晶パネルの検査にかかる時間を短縮するとともに、より現実に近い条件での検査を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る検査システムは、液晶パネルに光を照射する照射部と、前記液晶パネルの比抵抗値を測定する比抵抗測定部と、比較値を記憶する記憶部と、前記比抵抗値と前記比較値とに基づいて、前記液晶パネルの良否を判断する演算部と、を備えるものである。
【0007】
本発明によれば、液晶パネルのVT特性の変化と相関し、さらにVT特性の変化よりも変化の速度が速い比抵抗値を用いることにより、液晶パネルの検査にかかる時間を短縮することができる。このため、現実に近い条件での検査を行うことが可能となる。
【0008】
前記比較値は比抵抗値の基準変化率であり、前記基準変化率は、基準となる寿命を有する基準液晶パネルに対して前記光と同等の基準光を基準期間照射することによる、前記基準液晶パネルの比抵抗値の変化率とすることができる。
これにより、あらかじめ基準液晶パネルに光を照射した際の比抵抗値を測定するだけで、容易かつ現実に即した比較値を得ることができる。
【0009】
また、前記比抵抗測定部は、前記照射部により前記液晶パネルに光が照射される第1期間に対応して前記液晶パネルの第1比抵抗値を測定し、前記照射部により前記液晶パネルに光が照射される第2期間に対応して前記液晶パネルの第2比抵抗値を測定し、前記演算部は、前記第1期間と前記第2期間との合計期間における前記液晶パネルの比抵抗値の変化率である実測変化率を算出するものである。
これにより、あらかじめ基準液晶パネルの光照射時間と比抵抗値の関係を測定しておけば、容易かつ正確に液晶パネルの検査を行うことができる。
【0010】
また、前記比較値は比抵抗値の基準変化率であり、前記基準変化率は、基準となる寿命を有する基準液晶パネルに対して前記光と同等の基準光を基準期間照射することによる、前記基準液晶パネルの比抵抗値の変化率であり、前記比抵抗測定部は、前記照射部により前記液晶パネルに光が照射される第1期間に対応して前記液晶パネルの第1比抵抗値を測定し、前記照射部により前記液晶パネルに光が照射される第2期間に対応して前記液晶パネルの第2比抵抗値を測定し、前記演算部は、前記第1期間と前記第2期間との合計期間における前記液晶パネルの比抵抗値の変化率である実測変化率を算出し、前記基準期間と前記合計期間が同等である場合、前記実測変化率が前記基準変化率を上回るか否かによって前記液晶パネルの良否を判断するものである。
これにより、あらかじめ基準液晶パネルの光照射時間と比抵抗値の関係を測定しておけば、容易かつ正確に液晶パネルの検査を行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る検査システムは、前記比抵抗測定部と前記照射部とを制御する制御部を備える。
これにより、液晶パネルの検査を自動的に効率よく行うことができる。
【0012】
また、前記比抵抗測定部は、前記液晶パネルの画素外の領域に設けられた比抵抗測定用電極と、前記液晶パネルの対向電極の間に電圧を供給し、流れる電流を測定することにより、前記液晶パネルの比抵抗を測定するようにしてもよい。
これにより、液晶パネルの画素外の領域に比抵抗測定用電極を設けるだけで、簡易に比抵抗の測定を行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る検査システムは、前記液晶パネルを設置する第1設置部と、前記液晶パネルを設置する第2設置部と、前記液晶パネルを前記第1設置部と前記第2設置部との間で搬送する搬送部と、を含み、前記第1設置部に設置されている前記液晶パネルに前記照射部から前記光が照射され、前記第2設置部に設置されている前記液晶パネルの比抵抗値が前記比抵抗測定部により測定されるものである。
これにより、液晶パネルの検査を1つの装置で自動的に効率よく行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る検査システムは、前記液晶パネルの液晶層を透過する光を検出する受光部を含み、前記液晶パネルが前記照射部から前記液晶パネルに照射される照射光を透過するものであり、前記受光部が前記透過光を受光する位置に配置されるものである。
これにより、透過型の液晶パネルのVT特性を測定することができる。
【0015】
また、本発明に係る検査システムは、前記液晶パネルの液晶層を透過する光を検出する受光部を含み、前記液晶パネルが前記照射部から前記液晶パネルに照射される照射光を反射するものであり、前記受光部が前記反射光を受光する位置に配置されるものである。
これにより、反射型の液晶パネルのVT特性を測定することができる。
【0016】
本発明に係る検査システムは、液晶パネルに光を照射する照射部と、前記液晶パネルの比抵抗値を測定する比抵抗測定部と、基準となる寿命を有する基準液晶パネルに対して前記光と同等の基準光を照射した時に、前記基準液晶パネルの比抵抗値が所定変化率だけ変化するのに要する基準期間を記憶する記憶部と、前記液晶パネルの比抵抗値が前記所定変化率だけ変化するのに要した第1期間と、前記基準期間とを比較することにより、前記液晶パネルの良否を判断する演算部と、を備えるものである。
本発明によれば、基準液晶パネルの比抵抗値が所定変化率だけ変化するのに要する基準期間を測定しておくだけで、短い時間で容易かつ現実に即した液晶パネルの良否判定を行うことができる。
【0017】
本発明に係る検査システムは、液晶パネルに光を照射する照射部と、前記液晶パネルの比抵抗値を測定する比抵抗測定部と、前記液晶パネルのVT特性を測定するVT測定部と、を備え、基準となる寿命を有する基準液晶パネルに対して前記光と同等の基準光を照射した時に、前記基準液晶パネルの比抵抗値が所定変化率だけ変化するのに要する基準期間と、前記基準液晶パネルに対して前記光と同等の基準光を照射した時に、前記基準液晶パネルのVT特性が前記所定変化率だけ変化するのに要する基準寿命期間を記憶する記憶部と、前記液晶パネルの比抵抗値が前記所定変化率だけ変化するのに要した第1期間と、前記基準期間と前記基準寿命期間に基づいて、前記液晶パネルのVT特性が前記所定変化率だけ変化するのにかかる寿命期間を算出し、前記寿命期間と前記基準寿命期間とを比較することにより、前記液晶パネルの良否を判断する演算部と、を備える
本発明によれば、基準液晶パネルの比抵抗値が所定変化率だけ変化するのに要する基準期間と、基準液晶パネルのVT特性が所定変化率だけ変化するのに要する基準寿命期間を測定しておくことにより、短い時間で容易かつ現実に即した液晶パネルの良否判定を行うことができると共に、液晶パネルの寿命期間も算出することができる。
【0018】
本発明に係る検査方法は、第1期間において液晶パネルに照射部から光を照射する第1工程と、前記第1工程のあと、前記液晶パネルの第1比抵抗値を測定する第2工程と、前記第2工程のあと、第2期間において前記液晶パネルに前記光を照射する第3工程と、前記第3工程のあと、前記液晶パネルの第2比抵抗値を測定する第4工程と、前記第4工程のあと、前記第1期間と前記第2期間との合計期間における前記液晶パネルの比抵抗値の変化率である実測変化率を算出し、前記液晶パネルの良否を判断する第5工程と、を含む。
本発明によれば、液晶パネルのVT特性の変化と相関し、さらにVT特性の変化よりも変化の速度が速い比抵抗値を用いることにより、液晶パネルの検査にかかる時間を短縮することができる。このため、現実に近い条件での検査を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1による、検査システムの構成を示す図である。
【図2】液晶パネルの構造を簡略化して示したものである。
【図3】液晶パネルの画素外の領域に設けた比抵抗測定用電極を示す図。
【図4】VT特性の測定結果を示すグラフ。
【図5】照射時間と、VT特性及び比抵抗の関係を示すグラフ。
【図6】照射時間と、比抵抗の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例】
【0021】
図1は、実施の形態1による、検査システム10の構成を示す図である。図に示すように、検査システム10は、比抵抗測定部11、VT測定部12、照射部13、保管部14、搬送部15、記憶部16、制御部17、及び演算部18を備えている。
【0022】
図2は、液晶パネルの構造を簡略化して示したものである。図に示すように、液晶パネルは、液晶層21、液晶層21を挟むように設けられた配向膜22、配向膜22の外側にそれぞれ設けられた画素電極23と対向電極(共通電極)24、2枚のガラス基板25、及び偏光板26を備えている。配向膜22は、液晶分子をより規則的に並べることができるものであれば特に限定されないが、図の例では、表面に一定方向の溝が形成されており、液晶分子がこの溝に沿って並ぶよう構成されている。これにより液晶層21の液晶分子を配向させることができる。画素電極23と対向電極24の間に電気信号を印加すると、電圧に応じて配向している液晶分子の基板25に対する角度が変わり、光の透過率が変化する。2枚の偏光板26は互いに偏光方向が直交しており、液晶層21を通過することにより、光の振動方向が出射側の偏光板26の偏光方向と同じになった場合にのみ光を透過させる。
【0023】
なお、液晶パネルの後面からバックライトにより光を照射して透過した光で表示を行う透過型液晶パネルと、光を液晶パネルの表面にあて、液晶パネル内で光を反射させて反射光で表示を行う反射型液晶パネルがあるが、本発明はどちらのタイプの液晶パネルにも適用できる。
【0024】
図1を用いて検査システム10の各部の機能について説明する。
比抵抗測定部11は、液晶パネルの比抵抗の測定を行うユニットである。比抵抗測定部11には、液晶パネルの比抵抗を測定するための比抵抗測定器111が備えられている。比抵抗測定部11では、液晶パネルに電圧を印加し、それに対する応答電流値を測定して比抵抗を求める。比抵抗測定のための電極は、例えば図3に示すように、液晶パネルの画素外の領域に設けた比抵抗測定用電極50と、液晶パネルの対向電極(図示せず)とを用いるようにしてもよい。両電極間に電圧を印加し、比抵抗測定器111において、印加電圧とその時に流れる電流を測定し、測定した電圧と電流から液晶パネル内の液晶の比抵抗を測定することができる。
【0025】
VT測定部12は、液晶パネルのVT特性(電圧−透過率特性)の測定を行うユニットである。VT測定部12には、液晶パネルに電圧を印加するための電圧供給装置121、液晶パネルの透過率を測定するための、光源122及び受光センサ123が備えられている。VT測定部12では、電圧供給装置121によって液晶パネルに電圧を印加した状態で、光源122から液晶パネルに照射し、受光センサ123によって液晶パネルを透過した光の光量を測定することにより、印加電圧に対応した液晶パネルの透過率を測定する。光源122は、実際の製品で用いられるのと同種のものや、紫外光、可視光等を発光する光源を用いることができる。
なお、図1に示す例は透過型の液晶ディスプレイの検査に対応したものであり、受光センサ123を光源122と同じ側に配置し、液晶パネル内で反射した光の光量を測定するようにすれば、反射型の液晶パネルの検査に対応することができる。
【0026】
照射部13は、光源131から出射される光を液晶パネルに照射するユニットである。液晶パネルへの照射時間は、記憶部16に記憶されており、照射部13では、所定の時間が過ぎると、制御部17によって光源131が消灯される。また、照射される光の強度も記憶部16に記憶されており、制御部17によって調節される。光源131は実際の製品で用いられるのと同種のものが望ましいが、光の種類としては、紫外光、可視光等を用いることができる。
【0027】
保管部14は、検査対象の液晶パネルを保管するためのユニットである。保管部14には、検査対象となる液晶パネルの他に、後述する参照データ取得用の良品の液晶パネルも格納されている。
【0028】
搬送部15は、液晶パネルを、保管部14から照射部13、VT測定部12、比抵抗測定部11へ移動させるための操作ユニットである。搬送部15はロボットアーム等の搬送手段とその駆動装置を備え、液晶パネルを各ユニット間で移動可能に構成されている。
【0029】
記憶部16は、照射部13における光照射時間、VT測定部12における測定結果、比抵抗測定部11における比抵抗値の測定結果等を記憶する。
【0030】
制御部17は、搬送部15による液晶パネルの移動、比抵抗測定部11およびVT測定部12における測定処理、照射部13における照射等を制御する。
【0031】
演算部18は、比抵抗測定部11及びVT測定部12において測定された結果を基に演算を行い、液晶パネルが良品か不良品かを判定する。
【0032】
次に、検査システム10を用いた液晶パネルの不良品検出のための検査方法について説明する。
まず、検査対象の液晶パネルの検査を行うに先立ち、良品の測定を行い、良、不良の判断のための参照データを取得する。以下良品の測定処理の流れを説明する。
まず、制御部17の制御により、搬送部15が良品の液晶パネルPrを保管部14から照射部13へ移動する。次に、照射部13において、液晶パネルPrへ光照射を行う。照射時間は、記憶部16に予め記憶されており、所定の時間の照射後、制御部17により自動的に照射が終了する。光の照射が終了すると、制御部17の制御により、搬送部15が液晶パネルPrをVT測定部12へ移動する。
【0033】
次に、VT測定部12において、液晶パネルPrのVT特性(電圧−透過率特性)の測定を行う。具体的には、電圧供給装置121からの入力電圧周波数を30Hzとし、入力電圧範囲を0〜5Vの間で0.05Vきざみで変化させる条件で測定する。各々の入力電圧における透過率の測定結果は記憶部16に保存する。特に、中間調(入力電圧1.5V)における透過率の測定結果は記憶部16に記憶する。図4は、VT特性の測定結果をグラフにしたものである。
【0034】
VT特性の測定が終了したら、制御部17の制御により、搬送部15が液晶パネルPrを比抵抗測定部11へ移動する。続いて、比抵抗測定部11において、液晶パネルPrの比抵抗の測定を行う。具体的には、入力電圧周波数を30Hz、入力電圧5Vの条件で測定する。測定した比抵抗は記憶部16に保存する。
【0035】
次に、演算部18において、測定した中間調における透過率と比抵抗を、それぞれの初期値で除算する。初期値は、それぞれ照射ゼロ時間における中間調での透過率と比抵抗の値である。
以上の、照射→VT測定→比抵抗測定→初期値で除算、の処理を繰り返し行い、中間調での透過率が初期値の半分になるまで、すなわち除算結果が0.5になるまで処理を繰り返す。処理を繰り返すごとに液晶パネルPrへの照射時間は増加していく。図5は、照射時間と、中間調での透過率(VT)及び比抵抗をそれぞれの初期値で除算した値の関係をグラフにしたものである。
【0036】
次に、演算部18において、比抵抗の値が初期値の50%になるまでに要した照射時間(図5に示す期間A)、中間調透過率の値が初期値の50%になるまでに要した照射時間(図5に示す期間B)、及び期間B/期間Aの値(期間Cとする。)を求め、記憶部16へ記憶する。次に、制御部17の制御により、搬送部15が液晶パネルPrを比抵抗測定部11から保管部14へ移動する。
以上で、液晶パネルの良、不良の判断のための参照データの取得処理が終了する。なお、ここでは、中間調透過率と比抵抗の値が初期値の50%になるまでの時間を求めるようにしたが、この変化率はどのような値でもかまわない。ここでは、仮に中間調透過率が初期の50%になるまでの期間を液晶パネルの寿命と考え設定している。
【0037】
次に、検査対象の液晶パネルPの良否の検査の手順について説明する。なお、下記の各ユニットにおける処理は、制御部17により制御される。
まず、搬送部15によって、検査対象の液晶パネルPを保管部14から照射部13へ移動する。
【0038】
次に、照射部13において、液晶パネルPへの光照射を行う。照射時間は参照データ取得のために良品の液晶パネルPrに照射した時間と同じであり、記憶部16に予め記憶されている。所定の時間の照射後、制御部17により自動的に照射が終了し、光の照射が終了すると、搬送部15が液晶パネルPを比抵抗測定部11へ移動する。
【0039】
続いて、比抵抗測定部11において、液晶パネルPの比抵抗の測定を行う。測定条件は、良品の液晶パネルPrの条件と同じであり、入力電圧周波数30Hz、入力電圧5Vの条件で測定する。測定した比抵抗は記憶部16に保存する。
【0040】
次に、演算部18において、測定した比抵抗を初期値で除算する。初期値は照射ゼロ時間における比抵抗の値である。
以上の、照射→比抵抗測定→初期値で除算、の処理を繰り返し行い、比抵抗が初期値の半分になるまで、すなわち除算結果が0.5になるまで処理を繰り返す。処理を繰り返すごとに液晶パネルPへの照射時間は増加していく。図6は、照射時間と、比抵抗を初期値で除算した値の関係をグラフにしたものである。
【0041】
次に、演算部18において、比抵抗の値が初期値の50%になるまでに要した照射時間(図6に示す期間A’)、及び液晶パネルPの推定寿命Dを求める。推定寿命Dは下記の式(1)により求める。
D=C×A’…(1)
ただし、Cは上述の期間B/期間Aの値である。
【0042】
さらに、演算部18において、液晶パネルPの良、不良の判定を行う。具体的には、D≧期間Bであれば良品、D<期間Bであれば不良品と判定する。判定後、判定結果を記憶部16へ記憶し、搬送部15が液晶パネルPを比抵抗測定部11から保管部14へ移動する。
【0043】
なお、良品、不良品の判定結果は、液晶パネルに予め付与されている製造番号に対応させて記憶部16に記憶するようにしてもよい。また、判定結果をディスプレイ(図示せず)に表示するようにしてもよい。このときそれぞれの液晶パネルの推定寿命Dも共に表示してもよい。
【0044】
ここで、液晶パネルへの光照射により、VT特性及び比抵抗が低下する理由について説明する。ここでは、フッ素系の液晶材料を用いた場合を例に説明する。液晶に光を照射すると、フッ素系液晶化合物が光励起され、フッ素イオンの脱離が生じる。フッ素イオンが脱離することにより液晶化合物同士のポリマー化が生じる。すなわち、光を照射し続けることにより液晶のポリマー化が進み、ポリマー成分が液晶パネルの配向膜に付着することにより、配向膜による液晶の配向を規制する力が低下していく。このため、液晶パネルのVT特性が低下する。
【0045】
また、フッ素イオンなどのイオン性物質は液晶の比抵抗を低下させる。そして、比抵抗の低下はVT特性の低下よりも早く起こる。よって、本実施形態のように、光照射時間に対するVT特性と比抵抗の変動の相関を予め測定しておくことにより、比抵抗を用いてVT特性の低下の状態を予測することが可能となる。すなわち、良品の参考値よりも比抵抗の低下速度が遅ければ良品であり、速ければ不良品である。例えば、本実施形態では、VT特性が50%低下するまでに要する光照射時間と比抵抗が50%低下するまでに要する光照射時間の比を測定しておき、各々の製品について、この比を用いて良否を判定している。上述したように、比抵抗の低下の速度のほうがVT特性の低下の速度よりも速いので、VT特性そのものを測定するよりも、格段に早く不良品検査を行うことができる。
【0046】
なお、本実施形態では、良品の液晶パネルPrの比抵抗の値が初期値の50%になるまでに要した照射時間(基準期間)を記憶部16に記憶しておき、検査対象の液晶パネルPの比抵抗の値が初期値の50%になるまでに要した照射時間(第1期間)と比較することにより液晶パネルPの良否を判断しているが、例えば、良品と検査品の比抵抗値の変化率を比較するようにしてもよい。
【0047】
すなわち、参考用の液晶パネルPrに一定時間(基準期間)光照射した時の比抵抗の変化率(基準変化率)を測定して記憶部16に記憶しておく。比抵抗測定部11では、検査品の液晶パネルPに基準期間光を照射したときの比抵抗の変化率(実測変化率)を求める。そして演算部18において、この実測変化率が基準変化率を上回るか否かによって液晶パネルPの良否を判断するようにしてもよい。
【0048】
また、図5に示すような、参考用の液晶パネルPrにおける照射時間と比抵抗値の推移の関係を記憶部16に記憶しておくことにより、比抵抗測定部11おいて、検査品の液晶パネルPに対し、ある期間光照射したときの比抵抗値を測定し、演算部18において参考品に同等の時間光照射した際の比抵抗値と比較し、検査品の比抵抗値の方が大きければ良品と判定し、小さければ不良品を判定するようにしてもよい。この時、1点のみの測定(第1期間のみ)で比較することもできるが、2点以上の測定(第1期間、第2期間)において測定した値を用いて比較すれば、より正確に良否判定を行うことができる。
【0049】
なお、本発明による手法はフッ素系の液晶に限らずシアノ系液晶など、他の系の材料を用いた液晶についても適用できる。シアノ系液晶の場合、光照射によりシアノ基の脱離、転移、アミン生成等により、VT特性及び比抵抗が低下する。そして、この場合にも比抵抗の低下のほうがVT特性の低下よりも進行が速い。
【符号の説明】
【0050】
10 検査システム、11 比抵抗測定部、111 比抵抗測定器、12 VT測定部、121 電圧供給装置、122 光源、123 受光センサ、13 照射部、131 光源、14 保管部、15 搬送部、16 記憶部、17 制御部、18 演算部、21 液晶層、22 配向膜、23 画素電極、24 対向電極、25 ガラス基板、26 偏光板、50 比抵抗測定用電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルに光を照射する照射部と、
前記液晶パネルの比抵抗値を測定する比抵抗測定部と、
比較値を記憶する記憶部と、
前記比抵抗値と前記比較値とに基づいて、前記液晶パネルの良否を判断する演算部と、を備えることを特徴とする検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の検査システムにおいて、
前記比較値は比抵抗値の基準変化率であり、
前記基準変化率は、基準となる寿命を有する基準液晶パネルに対して前記光と同等の基準光を基準期間照射することによる、前記基準液晶パネルの比抵抗値の変化率である、ことを特徴とする検査システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の検査システムにおいて、
前記比抵抗測定部は、前記照射部により前記液晶パネルに光が照射される第1期間に対応して前記液晶パネルの第1比抵抗値を測定し、前記照射部により前記液晶パネルに光が照射される第2期間に対応して前記液晶パネルの第2比抵抗値を測定し、
前記演算部は、前記第1期間と前記第2期間との合計期間における前記液晶パネルの比抵抗値の変化率である実測変化率を算出するものである、ことを特徴とする検査システム。
【請求項4】
請求項1に記載の検査システムにおいて、
前記比較値は比抵抗値の基準変化率であり、
前記基準変化率は、基準となる寿命を有する基準液晶パネルに対して前記光と同等の基準光を基準期間照射することによる、前記基準液晶パネルの比抵抗値の変化率であり、
前記比抵抗測定部は、前記照射部により前記液晶パネルに光が照射される第1期間に対応して前記液晶パネルの第1比抵抗値を測定し、前記照射部により前記液晶パネルに光が照射される第2期間に対応して前記液晶パネルの第2比抵抗値を測定し、
前記演算部は、前記第1期間と前記第2期間との合計期間における前記液晶パネルの比抵抗値の変化率である実測変化率を算出し、前記基準期間と前記合計期間が同等である場合、前記実測変化率が前記基準変化率を上回るか否かによって前記液晶パネルの良否を判断する、ことを特徴とする検査システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の検査システムにおいて、
前記比抵抗測定部と前記照射部とを制御する制御部を備える、ことを特徴とする検査システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の検査システムにおいて、
前記比抵抗測定部は、
前記液晶パネルの画素外の領域に設けられた比抵抗測定用電極と、前記液晶パネルの対向電極の間に電圧を供給し、流れる電流を測定することにより、前記液晶パネルの比抵抗を測定する、ことを特徴とする検査システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の検査システムにおいて、
前記液晶パネルを設置する第1設置部と、
前記液晶パネルを設置する第2設置部と、
前記液晶パネルを前記第1設置部と前記第2設置部との間で搬送する搬送部と、を含み、
前記第1設置部に設置されている前記液晶パネルに前記照射部から前記光が照射され、前記第2設置部に設置されている前記液晶パネルの比抵抗値が前記比抵抗測定部により測定されるものである、ことを特徴とする検査システム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の検査システムにおいて、
前記液晶パネルの液晶層を透過する光を検出する受光部を含み、
前記液晶パネルが前記照射部から前記液晶パネルに照射される照射光を透過するものであり、前記受光部が前記透過光を受光する位置に配置されるものである、ことを特徴とする検査システム。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の検査システムにおいて、
前記液晶パネルの液晶層を透過する光を検出する受光部を含み、
前記液晶パネルが前記照射部から前記液晶パネルに照射される照射光を反射するものであり、前記受光部が前記反射光を受光する位置に配置されるものである、ことを特徴とする検査システム。
【請求項10】
液晶パネルに光を照射する照射部と、
前記液晶パネルの比抵抗値を測定する比抵抗測定部と、
基準となる寿命を有する基準液晶パネルに対して前記光と同等の基準光を照射した時に、前記基準液晶パネルの比抵抗値が所定変化率だけ変化するのに要する基準期間を記憶する記憶部と、
前記液晶パネルの比抵抗値が前記所定変化率だけ変化するのに要した第1期間と、前記基準期間とを比較することにより、前記液晶パネルの良否を判断する演算部と、を備えることを特徴とする検査システム。
【請求項11】
液晶パネルに光を照射する照射部と、
前記液晶パネルの比抵抗値を測定する比抵抗測定部と、
前記液晶パネルのVT特性を測定するVT測定部と、を備え、
基準となる寿命を有する基準液晶パネルに対して前記光と同等の基準光を照射した時に、前記基準液晶パネルの比抵抗値が所定変化率だけ変化するのに要する基準期間と、前記基準液晶パネルに対して前記光と同等の基準光を照射した時に、前記基準液晶パネルのVT特性が前記所定変化率だけ変化するのに要する基準寿命期間を記憶する記憶部と、
前記液晶パネルの比抵抗値が前記所定変化率だけ変化するのに要した第1期間と、前記基準期間と前記基準寿命期間に基づいて、前記液晶パネルのVT特性が前記所定変化率だけ変化するのにかかる寿命期間を算出し、前記寿命期間と前記基準寿命期間とを比較することにより、前記液晶パネルの良否を判断する演算部と、を備えることを特徴とする検査システム。
【請求項12】
第1期間において液晶パネルに照射部から光を照射する第1工程と、
前記第1工程のあと、前記液晶パネルの第1比抵抗値を測定する第2工程と、
前記第2工程のあと、第2期間において前記液晶パネルに前記光を照射する第3工程と、
前記第3工程のあと、前記液晶パネルの第2比抵抗値を測定する第4工程と、
前記第4工程のあと、前記第1期間と前記第2期間との合計期間における前記液晶パネルの比抵抗値の変化率である実測変化率を算出し、前記液晶パネルの良否を判断する第5工程と、を含むことを特徴とする検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−164445(P2010−164445A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7323(P2009−7323)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】