説明

検査依頼システム端末装置

【課題】専門的な知識を必要とすることなく、人為的な確認ミスを防止することができ、更には、運用作業の効率化が可能な検査依頼システム、及びそれを構成する検査依頼端末装置を提供する。
【解決手段】第1の検査依頼端末装置は、被検者属性入力手段、検査依頼項目入力手段、紐付け用識別子の発生手段、検査材料の表示指示手段、紐付け用識別子の符号化手段、符号化された紐付け用識別子情報と、被検者属性を検体貼付用ラベルに印刷する手段、被検者属性、検査依頼項目、及び紐付け用識別子を符号化して依頼票として記録する手段を備える。第2の検査依頼端末装置は、依頼票の符号化された被検者属性情報、検査依頼項目情報、及び紐付け用識別子情報を読み取り、復元して元の各情報を取り込む手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査依頼システム及びそれを構成する検査依頼端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査を必要とする各医療機関から、外部の検査機関に検査依頼を行うシステムとして、通信回線を利用したシステムが公知である(特許文献1,2)。しかし、これらのシステムは、大規模の医療機関を念頭においており、診療所等の小規模な医療機関にとっては導入をすることが困難であった。
【0003】
小規模の医療機関での従来の検査依頼方法は、検査依頼書を手書きにて記入して、システムでOCR解析、キーイン入力によるテキスト化して依頼情報を電子化する取込方法であった。しかし、検査依頼書には被検者氏名と依頼内容、ラベルには被検者氏名を記入する。それには、検体容器の種類単位に手書きにてラベルに記入して用意する作業、依頼書に記入する作業があり、非常に手間と誤記入等があり確認作業が必要であった。又、集荷担当者が検査受領時には検査依頼内容に則した検体容器の専門的知識及び被検者氏名確認、検査依頼内容の確認が必要であった。
【特許文献1】特開2001−84325号公報
【特許文献2】特開2005−182507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、診療所等の小規模な医療機関や、移動検診車のように、通信回線を利用する過大な検査依頼システムを利用することのできない医療機関であっても、専門的な知識を必要とすることなく、人為的な確認ミスを防止することができ、更には、運用作業の効率化が可能な検査依頼システム、及びそれを構成する検査依頼端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
[1]被検者属性を入力する手段、
検査依頼項目を入力する手段、
予め端末装置に紐付け用識別子の範囲を与えておき、被検者単位に検査依頼する都度、その範囲内の紐付け用識別子の1つを発生させる手段、
各検査依頼項目に必要な検査材料を表示指示する手段、
紐付け用識別子を符号化する手段、
符号化された紐付け用識別子情報と、被検者属性の少なくとも1つを検査項目に必要な検査材料毎に検体貼付用ラベルに印刷する手段、
被検者属性、検査依頼項目、及び紐付け用識別子を符号化して依頼票として記録する手段
を備えることを特徴とする、第1の検査依頼端末装置;
[2]依頼票の符号化された被検者属性情報、検査依頼項目情報、及び紐付け用識別子情報を読み取り、復元して元の各情報を取り込む手段
を備えることを特徴とする、第2の検査依頼端末装置;
[3]前記[1]の第1の検査依頼端末装置と、前記[2]の第2の検査依頼端末装置とを含む、検査依頼システム;
[4]被検者属性を印刷表示する手段、
検査依頼項目を印刷表示する手段、
符号化された紐付け用識別子情報と、被検者属性の少なくとも1つを、検査項目に必要な検査材料毎に検体貼付用ラベルに印刷表示する手段、
被検者属性、検査依頼項目、及び紐付け用識別子を符号化して記録する手段
を備えることを特徴とする一体型依頼票
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、「物(検体)」と「情報(依頼情報)」とを紐付し、顧客と受領側の相互間で専門的な知識がなくても、人為的な確認ミスを防止する効果と共に、運用作業の効率化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の検査依頼システムは、医療機関等の検査依頼を行う施設で主に使用する第1の検査依頼端末装置(以下、第1の端末装置と略称することがある)と、登録衛生検査所等の検査業務を実施する施設で主に使用する第2の検査依頼端末装置(以下、第2の端末装置と略称することがある)とを少なくとも含む。
以下、主に添付図面に沿って、本発明の検査依頼システム、及びそれを構成する本発明の各端末装置を説明する。
【0008】
図1は、本発明の検査依頼システムの概要を示す説明図である。図2は、本発明の検査依頼システムを用いた処理フローを示す説明図である。図3及び図4は、それぞれ、本発明の第1及び第2の端末装置を用いた処理フローを示す説明図である。図5は、本発明の好適態様において、所望により実施することのできるマスタ更新方法の処理フローを示す説明図である。
【0009】
図1に示すように、本発明の検査依頼システムは、独立した、第1の端末装置1と第2の端末装置2とを含む。第1の端末装置は、検査依頼に必要な情報(例えば、被検者属性、検査依頼項目)を入力することにより、それらの情報を所定の形式でプリンタ14から検査依頼票3として出力することができる。この際、第1の端末装置は、被検者単位に検査依頼する都度、紐付け(関連付け)用識別子の1つを発生させ、更に、その紐付け用識別子を符号化することができる。符号化された紐付け用識別子情報も、前記検査依頼票に表示することができる。
【0010】
本明細書における「符号化」としては、本発明で符号化を行う各種情報(例えば、被検者属性、検査依頼項目、紐付け用識別子など)に適用することができる限り、特に限定されるものではなく、例えば、バーコード化(一次元バーコード化、二次元バーコード化等)、マーク化、テキスト(数字、文字を含む)化、電子タグ化を挙げることができる。
【0011】
この検査依頼票には、被検者属性(入力した情報の全部又はその一部)をそのまま印刷表示する領域31、必要な検査材料と検査依頼項目(入力した情報の全部又はその一部)をそのまま印刷表示する領域32、被検者属性と検査依頼項目と紐付け用識別子とを符号化して印刷表示する領域33に加え、検体貼付用ラベルを印刷表示する領域34が設けられている一体型依頼票や、あるいは、検体貼付用ラベルを印刷表示する領域と、それ以外の領域(以下、非ラベル領域と称する)とが、別々に印刷表示される分離型依頼票が含まれる。
また、所望により、検査依頼票に印刷表示可能な項目としては、例えば、検査依頼コメント35、そのコメントを符号化した情報36、検査依頼の控え情報(例えば、提出日、患者属性情報、検査依頼項目、レセプトコンピータコード等)を挙げることができる。
【0012】
検体貼付用ラベルは、検査材料毎に、符号化した紐付け用識別子情報と、被検者属性を印刷表示することができる。印刷表示可能な被検者属性としては、例えば、図1に示すように、被検者氏名、提出日、顧客コードなどを挙げることができる。
前記分離型依頼票における非ラベル領域は、視覚的に認識可能な印刷による表示以外にも、例えば、電子的に記録することも可能であり、更には、印刷表示と電子的記録とを併用することも可能である。電子的な記録方法としては、例えば、RFID(Radio Frequency IDentification)への書き込みを挙げることができる。
【0013】
図2に示すように、医療機関等の検査依頼を行う施設では、被検者(患者)の診察の後、第1の端末装置により検査依頼を実施し、検査依頼票(好ましくは一体型依頼票)を発行する。なお、具体的な入力手順については、図3に沿って後述する。検査依頼票の検体貼付用ラベル(氏名等の被検者属性、符号化された紐付け用識別子が表示)を種類別容器にそれぞれ貼付した後、被検者から試料採取(例えば、採血)する。残った依頼票(回収用依頼票)、すなわち、検体貼付用ラベルを使用(剥がす、切り離す等)した後の一体型依頼票や、分離型依頼票の一方は、検体と一緒に集材(集荷)される。この際、各検体は、依頼票の被検者氏名と検体容器の種類毎に照合確認される。
本発明においては、検体貼付用ラベルに表示する紐付け用識別子情報の符号化手段としては、一次元バーコード、RFIDが好ましく、回収用依頼票に表示(又は記録)する依頼情報(被検者属性、検査依頼項目、及び紐付け用識別子)の符号化手段としては、二次元バーコード、RFIDが好ましい。
【0014】
図1及び図2に示すように、検体及び回収用依頼票が搬入された登録衛生検査所等の検査施設では、受付が行われ、回収用依頼票に表示された符号化情報を、第2の端末装置の読み取り手段21で読み込み、符号化されていた依頼情報(被検者属性、検査依頼項目、及び紐付け用識別子)を第2の端末装置に取り込む。前記読み取り手段は、符号化情報に応じて適宜選択することができ、例えば、バーコードに対してはスキャナーを、テキスト又はマークに対しては、OCR(optical character reader)又はOMR(optical marker reader)を、電子タグ化された情報に対してはリーダ・ライタを、それぞれ、使用することができる。第2の端末装置に取り込まれた依頼情報は、例えば、パソコン22上で必要に応じて依頼修正した後、ホストコンピュータに伝送することができる。ホストコンピュータに伝送された依頼情報と、各検体の符号化された紐付け用識別子情報に基づいて、各検体は仕分けされ、各工程で検査される。
【0015】
以上、本発明の検査依頼システムについて説明したが、各端末装置について更に説明する。
本発明の第1の端末装置は、依頼情報の入力手段として、被検者属性を入力する手段と、検査依頼項目を入力する手段とを少なくとも含む。
【0016】
前記被検者属性としては、例えば、顧客コード、医療機関顧客名称、氏名、カルテ番号、被検者ID番号、性別、入院外来情報、年齢、生年月日、科名、病棟名、採取日、採取時間、担当医名などが挙げられる。
被検者属性の入力方法としては、図3に示すように、例えば、新規に入力する方法や、過去に入力・登録された被検者属性を再度利用して検索する方法、被検者診察カード13等から属性情報を取り込む方法(例えば、カードリーダー12)を挙げることができ、更には、レセプトコンピュータ等の外部システムから被検者属性をテキスト化して取り込み引用する方法、OCR又はOMRを利用して手書きの被検者属性をテキスト化又はマークを読み取る方法が挙げられる。なお、被検者属性を取り込み又は読みとる際には、所望により、検査依頼項目を同時に取り込み又は読みとることができる。
新規に入力する場合には、例えば、タッチパネル入力形式のシステム端末装置11や、パソコンを使用することができる。また、過去データを再度利用する場合には、予めコンピュータに登録されている被検者の、例えば、氏名、カルテ番号、患者IDにより、検索することができる。検索により表示された候補被検者の中から選択し、必要に応じて内容修正した後、被検者として登録する。
【0017】
検査依頼項目の入力方法としては、例えば、検査分野別で構成されている各々の検査項目を選択して登録する方法や、検査名称検索で各々の検査項目を一括して選択する方法を挙げることができる。後者の方法では、一般的な検査依頼項目セット以外にも、例えば、医療機関の顧客専用検査依頼項目セットを予め登録しておくこともできる。
【0018】
第1の端末装置を用いた典型的な処理フローを、図3に沿って説明する。
まず、検査依頼メニューを選択した後、被検者属性を入力する。この場合、新規に入力する方法と、過去登録データを検索する方法とを選択することができる。続いて、検査依頼項目を選択した後、依頼一覧画面等により検査依頼の確認を行い、必要であれば、先の工程に戻って修正を行う。検査依頼の確認ができたところで、検査依頼票の発行指示を行うことにより、検査依頼票が打ち出される。
【0019】
本発明の第2の端末装置は、所望により、被検者属性を修正及び/又は取り消しする手段、検査依頼項目を修正及び/又は取り消しする手段、保存登録された依頼情報を更に上位のホストコンピュータに伝送送信する手段、第1の端末装置用のマスタ更新情報を可搬電子記録媒体(例えば、SDカード、USBメモリ)4に書き込み更新する手段などを備えることができる。
なお、第2の端末装置が、マスタ更新情報の書き込み更新手段を備える場合には、第1の端末装置に、マスタ情報(例えば、検査項目コード、セット検査コード)を管理して、更新情報を可搬電子記録媒体で取り込み指示する手段を設けることが好ましい。
【0020】
第2の端末装置を用いた典型的な処理フローを、図4に沿って説明する。
まず、依頼票読み込みメニューを選択した後、依頼票の符号化情報を読み込み、符号化されている依頼情報を第2の端末装置に取り込む。必要に応じて、依頼情報(被検者属性、検査依頼項目)の修正、削除を行った後、上位のホストコンピュータに伝送する。
【0021】
第1の端末装置のマスタ情報を更新する典型的な処理フローを、図5に沿って説明する。
まず、ホストコンピュータのマスタ更新情報を第2の端末装置にダウンロードした後、第2の端末装置において、可搬電子記録媒体にマスタ更新情報を書き込む。マスタ更新情報を記録した可搬電子記録媒体を第1の端末装置にセットし、マスタ情報を更新する。
【0022】
以上、本発明の検査依頼システムの基本的構成について説明したが、所望により、各種オプションを追加することができる。
例えば、レセプト処理に関する機能として、例えば、端末装置使用先顧客のレセプトコンピュータコードと検査項目とを紐付けする手段、各検査項目依頼で保険点数(実施料、判断料)を計算して表示指示する手段を、第1の端末装置に設けることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の検査依頼システムは、臨床検査の用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の検査依頼システムの概要を示す説明図である。
【図2】本発明の検査依頼システムを用いた処理フローを示す説明図である。
【図3】本発明の第1の端末装置を用いた処理フローを示す説明図である。
【図4】本発明の第2の端末装置を用いた処理フローを示す説明図である。
【図5】マスタ更新方法の処理フローを示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者属性を入力する手段、
検査依頼項目を入力する手段、
予め端末装置に紐付け用識別子の範囲を与えておき、被検者単位に検査依頼する都度、その範囲内の紐付け用識別子の1つを発生させる手段、
各検査依頼項目に必要な検査材料を表示指示する手段、
紐付け用識別子を符号化する手段、
符号化された紐付け用識別子情報と、被検者属性の少なくとも1つを検査項目に必要な検査材料毎に検体貼付用ラベルに印刷する手段、
被検者属性、検査依頼項目、及び紐付け用識別子を符号化して依頼票として記録する手段
を備えることを特徴とする、第1の検査依頼端末装置。
【請求項2】
依頼票の符号化された被検者属性情報、検査依頼項目情報、及び紐付け用識別子情報を読み取り、復元して元の各情報を取り込む手段
を備えることを特徴とする、第2の検査依頼端末装置。
【請求項3】
請求項1に記載の第1の検査依頼端末装置と、請求項2に記載の第2の検査依頼端末装置とを含む、検査依頼システム。
【請求項4】
被検者属性を印刷表示する手段、
検査依頼項目を印刷表示する手段、
符号化された紐付け用識別子情報と、被検者属性の少なくとも1つを、検査項目に必要な検査材料毎に検体貼付用ラベルに印刷表示する手段、
被検者属性、検査依頼項目、及び紐付け用識別子を符号化して記録する手段
を備えることを特徴とする一体型依頼票。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−108332(P2010−108332A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280856(P2008−280856)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(591122956)三菱化学メディエンス株式会社 (45)
【Fターム(参考)】