説明

検査支援システムを搭載する回路検査装置とその検査支援方法

【課題】交流の検査信号を用いる非接触センサにより導電パターンを検査する検査装置は、導電パターンの切断面同士が極近接して断線であれば、交流の検出信号は断線部分を容量結合した状態で伝搬され、断線不良が判断しづらい。
【解決手段】検査用プローブと検査対象との間の大気圧の空間を不活性ガス雰囲気下に生成し、電子線を照射して不活性ガスのイオンを発生させる。このイオン下で検査プローブに直流検査信号(バイアス電圧及び検査信号電圧)を印加した放電を利用して、検査用プローブと検査対象との電気的な導通を図る検査支援システムであり、このシステムを搭載して、検査信号を印加及び取得して回路配線の導通検査における良不良を判定する回路検査装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された回路配線の導通検査に対する検査支援システムを搭載する回路検査装置とその検査支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造技術やメッキ技術を用いて基板上に形成され、電子部品を実装した際に電子部品間を接続して電子回路を構築するための配線や電極は、検査工程において、それぞれに断線や短絡の有無を検査している。
【0003】
一般的な検査手法としては、検査対象となる回路配線の両端に検査プローブをそれぞれに接触させて、一方のプローブから直流の検査信号を印加し、他方のプローブから回路配線を伝搬した検査信号を検出する導通テストを行う接触式導通検査が知られている。この手法は、回路配線に直接、プローブを接触して検査を行うため外部からのノイズに影響を受けにくく、印加する検査信号が小電流であってもS/N比が高く正確な検出結果を得ることができる長所を有している。
【0004】
しかし、検査プローブは接触抵抗が低くなるように回路配線に接触するため、回路配線が微細化されるほど、その接触による損傷や検査跡が問題となり、例えば、特許文献1には、非接触の2つの検査用センサ電極を有している回路パターン検査装置が提案されている。これらの検査用センサ電極を回路配線の両端にそれぞれ所定間隔を空けて対向するように近接して配置し、回路配線と電気的に容量結合させる。この状態で一端の検査用センサ電極に交流の検査信号を印加し、他端の検査用センサ電極から回路配線を伝搬した交流の検出信号を検出し、得られた検出信号の変化から回路配線における断線や短絡を判断している。
【特許文献1】特開2005−24518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した非接触センサを用いている回路パターン検査装置は、空間を空けて対向するセンサ電極(プローブ)と回路配線の端部又は電極との容量結合を利用しているため、検査信号には、交流(パルス)を用いている。この回路パターン検査装置は、一般的な液晶テレビジョンに用いる液晶パネルのように、比較的基板サイズが大きく、多数の導線パターンが配列されている検査対象であれば、それら導線パターンの端部に非接触で通過させて検査できるため適している。
【0006】
しかし、検査信号に交流を用いているため、導電パターンが切断面同士を極近接した状態で断線していた場合など、容量を有するように断線していた時には、交流の検出信号が断線部分を伝搬してしまう。特に、センサ電極と回路配線の対向面積により検査信号値の大きさが決まるため、極微細な回路配線であれば、検出される信号値の変化が小さくなり、判定しづらく不良を見逃す虞も考えられる。また極微細化された回路配線の場合、発生する磁力線の拡がりから不良のパターンを特定する位置的な分解能を高くすることが難しくなる。
【0007】
そこで本発明は、検査プローブと検査対象とが非接触で且つ、大気圧下でイオンアシストを用いた低い値の検査信号の印加により、十分な検出信号を得ることができ、極微細に形成された検査対象に好適する検査支援システムを搭載する回路検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従う実施形態は、上記目的を達成するために、検査プローブを用いて基板に形成された回路配線の導通検査を行う回路検査装置に搭載され、近接する前記検査プローブと検査対象の回路配線を含む大気圧の空間に不活性ガスによる不活性ガス雰囲気を生成するガス雰囲気生成部と、前記不活性ガス雰囲気内に電子線を照射して、不活性ガスイオンを生成するイオン生成部と、を具備し、前記検査プローブに直流の検査信号を印加した際に、前記不活性ガスイオンの支援により大気圧の空気中の絶縁破壊電圧値よりも低い直流電圧値の前記検査信号で前記検査プローブと前記回路配線の間に放電を発生させて電気的に接続し、前記検査信号が前記検査プローブと前記回路配線の間で送受されることを支援する検査支援システムを提供する。
【0009】
また、基板に両端が列状で露呈するように形成される複数の回路配線のうち、検査対象となる第1の回路配線の一端に近接する第1の検査プローブと、前第1の回路配線の他端に近接する第2の検査プローブと、前記第1の回路配線に隣接する回路配線の他端に近接し且つ前記第2の検査プローブと並設される第3の検査プローブと、を有するプローブ手段と、前記第1乃至第3の検査プローブを、複数の回路配線の両端の列に沿って上方を渡る方向に移動させる移動機構と、前記第1,第2及び第3の検査プローブに直流バイアス電圧をそれぞれに印加するバイアス電源部と、前記第1の検査プローブに、さらに直流の検査信号を重畳する検査信号電源部と、前記第1の検査プローブと前記第1の回路配線の一端を含む大気圧の第1の空間、前記第2の検査プローブと前記第1の回路配線の他端を含む大気圧の第2の空間及び、前記第3の検査プローブと前記第2の回路配線の他端を含む大気圧の第3の空間に、それぞれ不活性ガスによる不活性ガス雰囲気を生成するガス雰囲気生成部と、前記不活性ガス雰囲気内に電子線をそれぞれに照射して、不活性ガスイオンを生成するイオン生成部と、で構成される検査支援システムと、を具備し、前記第1の検査プローブに前記検査信号を印加した際に、前記不活性ガスイオンの支援により前記第1の空間で放電を発生させて電気的に接続し、前記検査信号が前記回路配線に印加されて伝搬し、伝搬された前記検査信号による前記第2の空間及び第3の空間における放電の有無に従う、第2及び第3の検査プローブにおける前記検査信号の取得の有無により、前記検査対象の回路配線の断線及び短絡による不良を検出する回路検査装置を提供する。
【0010】
さらに、検査プローブを用いて基板に形成された回路配線の導通検査を行う回路検査装置に用いられる検査支援方法であって、近接する前記検査プローブと検査対象の回路配線を含む大気圧の空間に不活性ガスによる不活性ガス雰囲気を生成し、前記不活性ガス雰囲気内を電子線に通過させて、不活性ガスイオンを生成し、前記検査プローブに直流の検査信号を印加した際に、前記不活性ガスイオンの支援により、大気圧の空気中の絶縁破壊電圧値よりも低い直流電圧値の前記検査信号で前記空間に放電を発生し電気的に導通させて、前記検査信号が前記検査プローブと前記回路配線の間で送受されることを支援する検査支援方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大気圧の不活性ガス雰囲気下で電子線を用いて、検査プローブと検査対象となる回路配線とが非接触で且つ、低い検査信号電圧により、十分な検出信号を得ることができ、微細に形成された検査対象に好適する検査支援システムを搭載する回路検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、本発明に係る検査支援システムを搭載する回路検査装置の概念について説明する。
この検査支援システムは、不活性ガス雰囲気に電子線を照射してイオンを発生させて、直流の検査信号を印加する検査プローブに作用し、検査対象物と放電による電気的接続を行って、検査対象物における導通検査を行う回路検査装置に用いられる。
【0013】
本検査支援システムは、検査用プローブと検査対象となる例えば、導電体からなる回路配線とを含む大気圧の空間に不活性ガスを供給し、その不活性ガスの雰囲気下に電子線を照射して不活性ガスのイオンを発生させる。このイオン下で検査プローブに信号電圧(バイアス電圧及び検査信号電圧)を印加した放電を利用して、検査用プローブの尖鋭な先端部分と回路配線の一端との電気的な導通を図り、回路配線の他端から給電し一端に伝搬された検査信号を検出して、良/不良を判定する。
【0014】
まず図1(a)を参照して、検査支援システムにおける、大気圧下で照射された電子線によるイオンアシストを用いたプローブと回路配線の電気的な接続について説明する。
電子線管1は、電子放出窓部14が、回路配線3が形成された基板2と対向するように上方に配置される。基板2は、一例として、表面側には回路配線3aが形成され、裏面側には回路配線3aとビアにより電気的に接続される電極3bが形成される構成である。例えば、CPU等の電子部品を実装する回路基板が相当する。
【0015】
電子線管1と回路配線3aとの空間には、どちらにも非接触な検査用プローブ4aが配置される。この例では、検査用プローブは、片持ち梁形式(カンチレバー)であるが、特に限定されるものではなく、両持ちタイプでもよい。プローブ先端には放電し易くするために、尖鋭な突起部位を設けている。
【0016】
また、検査プローブ4bは、電極3bに接触するように配置されている。これらの検査プローブ4a,4bの間には、可変電圧電源(VBR)5と、バイアス電源(VBF)6と電圧検出用抵抗(RL)7が直列接続され、電圧印加回路を形成している。これらの電源5,6は、電極3bが正電位(+)、検査用プローブ4aが負電位(−)となるように接続されている。勿論、電位は正負が逆であってもよい。
【0017】
電圧検出用抵抗(RL)7の両端には、モニタ用の直流電圧計8が設けられている。回路に流れる直流電流が電流計で測定可能なレベルであれば、電流として測定してもよい。また、バイアス電源(直流バイアス電圧VBR)5と可変電圧電源(直流可変電圧VFR)6の接続中点9は、電子線管1の筐体(基準電位)と接続されている。
【0018】
検査プローブ4aと電極3aとの間の空間20には、ガス供給系18のノズル19から一定量の不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン及びヘリウム等)が噴出され、不活性ガス雰囲気を生成している。不活性ガスは、この空間20で一定濃度の雰囲気を生成する必要がある。そこで空間20の近傍には、ガス吸気系21が設けられ、不活性ガスが一定量で流れるように構成されている。
【0019】
ガス供給系(ガス供給機構)18は、後述するガス供給源(ガスボンベ等)と、ガス流量が調整可能なバルブと、ガス供給口部とを備え、これらの部材は配管により接続され構成される。また、ガス吸気系(ガス排気機構)21は、ガス吸気口部と、排気ポンプ等の排気装置とを備え、これらの部材は配管により接続される。供給するガスの濃度を一定にする理由は、空間20が新たな不活性ガスに常に交換され、イオンの発生量を均一化させて、安定した放電を発生させるためである。放電を安定させることにより、検出される信号値のバラツキを抑制させる。不活性ガスの濃度の値は、一義的に限定されるものではなく、検査プローブ4a及び電極3aの構造(対向面積等)や離間距離や印加電圧値で異なるため、その仕様に応じて又は実測して最も適正な値(例えば、ガス流量)を適宜設定すればよい。尚、本実施形態で不活性ガスを用いるのは、検査プローブ4aと検査対処物(電極3a)の表面に損傷を与えないガスとして採用したものであり、他のガスで同様なイオンを発生させることができ、且つ検査プローブ4と検査対処物に損傷を与えなければ、他のガス種であってもよい。尚、ガス吸気系21は、不活性ガスが一定量で流れるならば、必ずしも必要ではない。これらのガス供給系18、ガス吸気系21及び後述するガス給排制御部によりガス雰囲気生成部が構成される。
【0020】
電子線管1は、周知な構成であり、真空密封された筐体11内に、フィラメント12、カソード13及び電子放出窓部14が設けられている。フィラメント12には、電子線管電源17が接続されている。フィラメント12から放出された真空側の電子線15は、電子放出窓部14で絞られ、大気圧の不活性ガス雰囲気下の空間20に大気側の電子線16として放射される。
【0021】
この構成例では、図1(b)に示すように、例えば、電子放出窓部14と電極3aとの距離L1を2.8mmとし、プローブ4aと電極3aとの距離(ギャップ)L2を1mmと設定している。また、電圧計の仕様に基づき、電圧検出用抵抗(RL)7として、100kΩを接続している。
【0022】
ここで、回路配線の良/不良の判断について説明する。
本発明の回路検査装置において、回路配線の良/不良の判断は、回路配線の抵抗値により判定する。つまり、検査対象の回路配線の電極間の抵抗値が略0Ωであれば正常(良)と判断する。一方、回路配線の抵抗値が無限大であれば、断線していると判断する。また、検査対象となる回路配線に隣接する回路配線の抵抗値が略0Ωであれば、(ブリッジとなって)短絡している不良と判断する。
【0023】
図4(a)は、図1(a)と同様な基板2の表裏に設けられた電極3a,3bに対する導通検査を行う状態を示している。この時、表面側の電極3aと検査プローブは非接触であり、裏面側の電極3bは検査プローブが接触している状態である。ここで、電極3a,3b間の配線の抵抗値をRd、検査プローブに掛かる検査信号の電圧をVa、検査装置の検査回路を流れる電流(検出信号の電流)をIa、検査プローブ−電極3a間の抵抗成分Rsとする。
【0024】
信号電圧Va=Ia(Rs+Rd)=Ia・Rs+Ia・Rd
抵抗値Rd=(Va−Ia・Rs)/Ia
となる。本実施形態の導通検査では、抵抗値Rdを検出し、その検出値Rdを予め定めた閾値と比較して回路配線の良否を判定する。この閾値(抵抗値)は、検査に先立って予備検査を行い、正常な回路配線による正常な数値(Rd≒0Ω)を検出して、閾値として設定しておく。
【0025】
また、図4(b)に示すように2つの検査プローブ(給電側と検出側)4a,4bが共に、検査対象の電極3a,3bと非接触の場合には、計算式が異なる。
信号電圧Va=Ia(Rs1+Rs2+Rd)
抵抗値Rd=(Va−Ia(Rs1+Rs2))/Ia
となる。この場合も、この閾値(抵抗値)は、検査に先立って予備検査を行い、正常な回路配線による正常な数値(Rd≒0Ω)を検出して、閾値として設定しておく。尚、図4(a)は、例えば、半導体チップ(集積回路)を実装する回路基板の回路配線が想定され、図4(b)は、例えば、液晶ガラス基板上に形成された導電パターンが想定される。
【0026】
図2には、バイアス電圧VBFと可変電圧VBRの関係により、プローブ4aと電極3aにおける電気的な導通−非導通状態を示している。図3は、可変電圧電源5と測定電圧の関係をバイアス電圧毎に示す図である。
【0027】
図2に示すように実際の測定では、バイアス電源によるバイアス電圧0〜350Vを範囲として50V単位で設定する。可変電圧電源5は、1つのバイアス電圧設定毎に0〜350Vのリニアに可変するように電圧を印加する。また、検出電圧VFは、検査プローブ4aと電極3aとが電気的に接続される状態(放電時)となる閉回路に流れる電流から電圧検出用抵抗(RL)7に発生した電圧を電圧計により測定した電圧である。
【0028】
この検出電圧VFの急峻な増加は、検査プローブ4aと電極3aとが電気的な非導通状態から導通状態になったことを示唆している。図2に示すように、検出電圧VFは、異なるバイアス電圧であっても全体的に、2つの傾きを有するへの字型の特性を有している。例えば、バイアス電圧(VBF)200Vの時、印加する可変電圧が200〜250Vの間に検出電圧VFに急峻な電圧変化が見られる。この後、電圧増加が鈍化して傾きが下がるが、可変電圧が350Vの時には、332Vとなっている。尚、本実施形態として、検査速度を速めるために、即ち応答よくするために、放電を行うのに必要な電圧において、小さい検査信号の電圧変化で放電(検査信号の印加又は検出)されるように、バイアス電圧を設定することが望ましい。具体的には、バイアス電圧を検査信号の電圧よりも大きい値にする。
【0029】
図4(a)は、大気圧下の空間20に電子線ビーム16を照射するイオンアシストについて概念的に示す図であり、図4(b)に大気圧下の不活性ガス雰囲気の空間に電子線ビームを照射するイオンアシストについて概念的に示す図である。これらの時、電子放出窓部14と電極間の距離は、例えば、2〜3mm程度の離間距離とする。
【0030】
図4(a)に示す状態では、大気圧下で電子線ビームを電極に照射すると、電子放出窓部14に対向する電極(回路配線)の大きさが1cmあれば、数μA程度の電流が流れる。しかし、検査対象となる基板上に形成される回路配線は、微細であり、対向する面積が100μm程度であれば、数fA程度となり、本実施形態で所望する検出値レベルには達していない。
【0031】
そこで、図4(b)に示すように、電子放出窓部14に対峙する2つの電極(検査プローブ4aと回路配線)を1mmに近接させて配置して、これらの電極と電子放出窓部14とを含む空間に不活性ガスを流し、不活性ガス雰囲気を形成する。この大気圧下の不活性ガス雰囲気に電子線ビームを照射して、不活性ガスをイオン化させる。ここでは、例えば、窒素ガスを用いて、窒素イオンを発生させる。図2に示したように、電極間に数百Vの電圧を印加することにより、イオンアシストによる放電(グロー放電)が発生して、電極が導通状態となり、電流が流れる。
【0032】
通常の大気圧下の空気中の放電による電気的接続(絶縁破壊)は、周知なように1cmあたり35.5kV/cm程度の印加電圧が必要である。この高電圧を微細な回路配線に印加する場合には、放電による配線表面の焼損や熱による昇華損失等を考慮しなくてはならない。これに対して、本実施形態のイオンアシストを利用することにより、検査信号の印加電圧を数百Vまで低下させることができるため、検査対象の回路配線及び検査プローブへの損傷を防止することができる。
【0033】
次に図5には、第1の実施形態として、検査支援システムを搭載する回路検査装置の概念的な構成例を示し説明する。
この回路検査装置は、検査の制御及び良/不良の判定を行う装置本体1と、探査対象に対して検査信号の送受を行うスカラーロボット32とで構成され、検査対象として集積回路チップ等を実装するための回路基板の回路配線に対して行う導通検査を例として説明する。尚、回路基板の回路配線においては、説明に必要な一部の回路配線のみを図示している。
【0034】
スカラーロボット32は、検査対象となる回路配線や電極に検査信号を印加する検査信号印加部41と、回路配線を伝搬した検査信号を検出する検出センサ部42とを備えている。検査信号印加部41及び検出センサ部42は、検査信号の印加又は検出を行うための後述する検査プローブ4a,4b(4b1,4b2)又は接触端子77を有している。
本実施形態では、検査信号印加部41は、尖鋭な端部を有するカンチレバーからなる検査プローブ4aを備えている。検査プローブ4aは、前述した片持ち梁タイプでも両持ち梁タイプでもよい。
【0035】
同様に、検出センサ部42には、検査プローブ4aと同等な形状を成し、隣接配置される、少なくとも2つの検査用プローブ4b1,4b2を備えている。これらのうち、1つの検査用プローブ4b1は、検査信号印加部41の検査プローブ4aの検査対象となる配線上に位置するように調整される。また、もう1つの検査用プローブ4b2は、検査対象の配線に隣接して設けられた配線上に位置するように配置される。これらの配置は、検査対象となる配線に対して、断線と短絡の不良を検出するためである。
【0036】
尚、この3つの検査プローブ4a,4b(4b1,4b2)を一組として、複数組を検査移動方向(図1におけるX方向)に配置してもよい。これは、コストアップになるが、検査プローブの移動距離を短くすることにより、検査位置の精度を高め易いと共に、並行して同時に検査を実施することにより、検査時間の短縮化を図ることができ、大型の液晶ガラス基板などの導電パターンの導通検査に好適する。
【0037】
さらに、スカラーロボット32は、検査信号を生成し、検査信号印加部41に供給する検査信号印加部43と、検査信号印加部41及び検出センサ部42を任意の方向(XY方向)で回路配線上方を移動させる移動機構44と、検査及びロボットの動作を制御するロボット制御部45と、検出センサ部42により検出された検査信号を出力する検出部47と、装置本体31と制御信号及び検出信号等の送受を行うためのI/O(入出力部)部48と、で構成される。
【0038】
さらに、前述した電子線管を用いて検査を行う際に、イオンアシストの放電による検査信号の送受を実現する検査支援システムが備えられている。この検査支援システムは、スカラーロボット32内に設けられた後述する検査支援部46と、図1に示したような電子線管1を含む不活性ガス雰囲気を生成し、検査時に検査プローブ4による検査信号の印加又は検出を行うための放電が放電しやすくなるように支援する放電支援部49a,49bにより構成される。
【0039】
移動機構44は、図示しない支持体に検査信号印加部41及び検出センサ部42を搭載して、平面上で互いに直交する2軸方向(X−Y方向の2次元平面)に対して、リニアに移動させる構成である。駆動機構44は、例えば、モータ及びボールねじによる機構、モータ及びプーリに巻装されるワイヤによる機構又は、リニアモータによる機構などの種々が考えられる。これ以外にも、公知な駆動機構を採用しても構わない。検出部47は、検出された検査信号に対して、所定の処理(例えば、信号値の増幅及びノイズ除去)を施し、装置本体の判定部53に出力する。
【0040】
また移動機構の支持体には、小型の撮像装置が設けられ、検査信号印加部41及び検出センサ部42と一体的に移動する。これらの撮像装置は、検査信号印加部41及び検出センサ部42特に、検査プローブ4や接触端子77の各先端部分が画角(撮像視野範囲)内に入るように配置される。この画角は、対物レンズにズームレンズの採用又は、焦点距離が異なる対物レンズへの交換などにより、適宜変更することができる。また、さらに、撮像装置に測距機能を持たせて、オートフォーカスを行うと共に、その測距データを利用して、検査プローブと検査対象面との距離を算出する。その算出される距離を一定にさせるサーボ機構を持たせてもよい。このサーボ機構は、測距データに基づき、支持体を上下方向(Z方向)に昇降させることにより、検査中の検査プローブ4と検査対象面(電極面又は回路配線端部の面)とが一定の距離となるように適正に調整する。
【0041】
装置本体31は、スカラーロボット32と信号のやり取りを行うためのI/O部51と、検出部47からの検査信号に基づき、回路配線の良/不良判定を行う判定部53と、装置全体の構成部位を制御し、検査を実施するための制御部54と、キーボード、スイッチパネルによる入力信号をキー入力及び音声による入力を行う入力部55と、制御プログラムや処理に必要な情報が予め入力されているROM56と、検査結果などの書き換える情報を記憶するRAM57と、検査に必要な情報や検査結果を表示する表示部58とを備え、それぞれがバス52を介して情報や信号のやり取りが行われている。判定部53は、別個には設けず、制御部54内の一機能としてもよい。
【0042】
本実施形態の検査対象となる回路基板33は、実装したICチップ(図示せず)を固着するための固定部33aと、ICチップの多数のバンプ電極(半田ボール端子)に対して、それぞれBGA接続するための電極パット35と、電極パット35と回路配線で接続されて基板周辺部に配置された外部接続端子34とが設けられている。
【0043】
本実施形態では、駆動機構44により、検査信号印加部41が外部接続端子34の上方(非接触)を移動し、検出センサ部42が電極パット35の上方(非接触)を移動する。この時、検査信号印加部41と検出センサ部42の移動距離及び検出位置(X方向)が異なっているため、互いに検出位置が合うように設定する。設定方法としては、設計仕様データに基づく数値入力による設定、プレスキャンによる画像情報に基づく設定、又は、予め基板に記載される製造時に位置合わせ等に用いられたマーキングを読み取って設定してもよい。この設定方法は、公知な方法を適宜採用すればよい。
【0044】
図6は、本実施形態の要旨となる検査支援システムのブロック構成例を示す。ここで、図6に示す構成部位のうち、前述した図1に示した構成部位と同等のものには、同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
この検査支援システムは、検査支援部46と放電支援部49a,49bに大別される。検査支援部46は、ロボット制御部45に制御され、ガス雰囲気の生成及び検査のための導通動作を制御する電子管制御部61と、ガス供給系18を制御して不活性ガスを電子線の放射領域に供給させ、ガス吸引系21を制御し不要な不活性ガスを吸引して排気させるガス給排制御部62と、電子管制御部61に制御に従い、電子線管1を駆動する電子線管電源と、で構成される。
【0045】
また、実際に検査プローブ4による放電(検査信号の印加)を行うためのバイアス印加部63と検査信号印加部64が検査プローブ4に接続される。回路配線から検査信号を取得する検査プローブには、バイアス印加部63のみが設けられる。また、検査信号印加部64が接続されていてもよいが、検出時には駆動しない。ここで、バイアス印加部63は、図1において前述したバイアス電源5に相当し、直流バイアス電圧VBRを検査プローブ4に印加する。また、検査信号印加部64は、可変電圧電源6に相当し、直流可変電圧VFRを検査プローブ4に印加する。
【0046】
このように構成された検査支援システムを搭載する回路検査装置による回路配線に対する非接触の導通検査について説明する。
図5に示す回路基板33上には、前述したように電極パット35と外部接続端子34とが接続される回路配線が形成されている。導通検査は、検査信号印加部41の検査プローブ4aと検出センサ部42の検査プローブ4b1が電極パット35と外部接続端子34の上方に位置し、同じ配線上を同時に移動する。
【0047】
この時、放電支援部49a,49bにより不活性ガスの雰囲気が生成され、電子線管1の電子線照射によるイオンが発生され、所謂イオンアシストの状況下で、全検査プローブ4(4a,4b1,4b2)にバイアスが印加されている。放電支援部49a,49bが移動機構44により電極パット35と外部接続端子34の上方に達した際に、検査プローブ4aに検査信号が印加される。
【0048】
この検査信号の印加により放電が起き、外部接続端子34と検査プローブ4aとが電気的に導通し、外部接続端子34の一端側から検査信号が印加される。この検査信号は、電極パット35に向かい回路配線を伝搬する。回路配線に断線不良が無ければ、この電極パット35と、検査プローブ4b1との間で放電(グロー放電)が発生して電気的に導通し、検査信号が検査プローブ4b1に介して検出部47に入力される。
【0049】
また、検査プローブ4b2は、バイアスが印加された状態で隣接する電極パット35上に位置している。ここで、ブリッジ等による短絡不良が無ければ、隣接する電極パット35には検査信号が伝搬されないため、検査プローブ4b2とは放電せず、検査信号は出力されない。検査部47は、I/O部48,51を介して、判定部53に正常であることを示唆する検査判定信号を出力する。
【0050】
一方、検査対象となる電極パット35と、隣接する電極パット35との間に短絡不良が発生していた場合には、隣接する電極パット35に検査信号が伝搬され、検査プローブ4b2との間で放電する。検査プローブ4b2は、検査信号を取得し、検出部47に出力する。検査部47では、検査プローブ4b1及び検査プローブ4b2からそれぞれに検査信号が入力される。検査部47は、判定部53に短絡不良であることを示唆する検査判定信号を出力する。また、検査プローブ4b1が検査対象の回路配線から検査信号を取得しなかった場合には、検査部47は、判定部53に断線不良であることを示唆する検査判定信号を出力する。また、検査対象の回路配線から検査信号を取得せず、しかし隣接する回路配線から検査信号を取得した場合には、検査対象の回路配線が断線不良、隣接する回路配線との短絡不良が起こっていることが示唆される。
【0051】
図7(a)乃至(d)は、本実施形態の回路検査装置における検査信号印加部41と検出センサ部42と、検査対象となる回路配線が異なる回路基板との検査位置について示す図である。ここでは、回路配線(又は電極)と非接触な検査プローブ4a,4bには、それぞれに検査支援システムの放電支援部49a,49bが設けられている。一方、回路配線(又は電極)と接触する検査プローブには、放電支援部49は設けられず、接触端子74と称している。前述した図1に示す検査装置の検査プローブ4や基板2は一例であって、これらの非接触な検査プローブ4a,4bや基板71,75に置き換えることができる。例えば、図1に示す装置構成と、図7(a)の検査プローブ及び放電支援部と、を組み合わせることができる。
【0052】
図7(a)は、検査信号印加部41と検出センサ部42のそれぞれの検査プローブ4a,4bが回路基板71に対して非接触で検査を行う例を示している。この回路基板71は、表面側に検査対象となる電極(又は、回路配線の端部)72,73が形成された基板である。これらの電極を繋ぐ回路配線は、単層基板で基板表面側に設けられた配線でもよいし、多層基板で内部の層に設けられビアにより表面まで引き出された配線であってもよい。 図7(b)は、前述した回路基板71の電極72に対して非接触なプローブ4aと、電極73に接触する接触端子74とで検査を行う例を示している。
【0053】
図7(c)は、それぞれの検査プローブ4a,4bが回路基板75に対して非接触で検査を行う例を示している。この回路基板75は、表面側に検査対象となる電極(又は、回路配線の端部)72が形成され、裏面側に検査対象となる電極(又は、回路配線の端部)76が形成された基板である。これらの電極72,76は、基板内部を通じてビアにより接続される。図7(d)は、前述した回路基板71の電極72に対して非接触なプローブ4aと、電極76に接触する接触端子74とで検査を行う例を示している。
【0054】
このように本実施形態では、検査対象となる両方の電極又は、配線端部が回路基板の表面側または裏面側の一方に露呈するように形成されている回路基板71だけではなく、電極又は配線端部の一方が回路基板の表面側、他方が回路基板の裏面側にそれぞれ露呈するように形成されている回路基板75であっても、導通検査を容易に行うことができる。また、回路基板に形成された配線パターンによって、一方の電極に接触し、他方を非接触で移動させて検査を行うことができる。
【0055】
これは、図8(a)に示すように、例えば、電源供給パターンであった場合には、1つの入力電極78dに対して、複数の出力電極78a,78b,78cが形成される。このような回路配線であれば、入力電極78dに対して接触端子74を接触させて検査してもよい。また、勿論、図8(b)に示すように、入力電極78dに対して非接触な検査プローブ4bを用いてもよい。尚、回路基板77が単層基板であれば、表面又は裏面で露呈した配線の引き廻しにより形成される。また、多層基板であれば、内部の層に設けられた配線で分配され、それぞれ露呈する電極までビアにより接続することもできる。
【0056】
また図8(c)に示すように、回路基板の裏面側に1つの入力電極78dが形成され、その反対面の表面側に複数の出力電極78a,78b,78cが形成される回路基板79であっても、それぞれに非接触の検査プローブ4a,4b(4b1,4b2)を用いて検査を行うことができる。
【0057】
次に、第1の実施形態における回路検査装置を用いた、液晶ガラス基板上に列状に形成されている複数の導電パターンに対する非接触の導通検査について説明する。ここで、回路検査装置の構成部位は、図5に示した構成と同等であり、装置構成の説明は省略する。
【0058】
図9に示す液晶ガラス基板81上には、Y方向に直線的に延設する複数の導電パターン82が形成される。これらの導電パターン82は、X方向に対して等間隔に配置されている。このような導電パターンの導通検査は、検査信号印加部41と検出センサ部42(内1つの検査プローブ)が同一の導電パターン82の両端の上方に位置するように同期させて、一体的に移動する。
【0059】
この時、放電支援部49a,49bにより不活性ガスの雰囲気が生成され、電子線管1によるイオンアシストの状況下で、バイアスが印加されている検査プローブ4aに検査信号が印加される。
【0060】
この時、放電支援部49a,49bにより不活性ガスの雰囲気が生成され、電子線管1の電子線照射によるイオンが発生され、所謂イオンアシストの状況下で、全プローブ4(4a,4b1,4b2)にバイアスが印加されている。放電支援部49a,49bが移動機構44により検査対象となる導電パターン82両端の上方に達した際に、検査プローブ4aに検査信号が印加される。
【0061】
この検査信号の印加により導電パターン82と検査プローブ4aとの間に放電が起き、電気的に導通して導電パターン82の一端側から検査信号が印加される。この検査信号は、導電パターンを他端に伝搬される。断線不良が無ければ、この他端と、他端の上方に配置されるバイアスが印加されている検査プローブ4b1との間で放電(グロー放電)が発生して電気的に導通し、検査信号が検査プローブ4b1に介して検出部47に入力される。また、検査プローブ4b2は、バイアスが印加された状態で隣接する導電パターン上に位置しており、ブリッジ等による短絡不良が無ければ、検査信号が伝搬されないため、隣接する導電パターンの端部との間に放電は発生せず、検査信号は出力されない。
【0062】
検査部47は、I/O部48,51を介して、判定部53に正常であることを示唆する検査判定信号を出力する。一方、隣接する導電パターンと検査対象となる導電パターンとの間に短絡不良が発生していた場合には、隣接する導電パターンに検査信号が伝搬して、検査プローブ4b2との間に放電が発生する。検査プローブ4b2は、検査信号を取得し、検出部47に出力する。検査部47では、検査プローブ4b1及び検査プローブ4b2からそれぞれに検査信号が入力される。検査部47は、判定部53に短絡不良であることを示唆する検査判定信号を出力する。
【0063】
また、検査プローブ4b1が検査対象の導電パターンから検査信号を取得しなかった場合には、検査部47は、判定部53に断線不良であることを示唆する検査判定信号を出力する。また、検査対象の導電パターンから検査信号を取得せず、しかし隣接する導電パターンから検査信号を取得した場合には、検査対象の導電パターンが断線不良、隣接する導電パターンとの短絡不良が起こっていることが示唆される。
【0064】
図10(a)は、ガス供給系18及びガス吸引系21の構成例を示す。
ガス供給系18は、ガス源(ガスボンベ等)84と、ガス流量が調整可能なバルブ85と、ガス供給口部86とを備え、これらの部材は配管により接続されて構成される。ガス流量の適正量は、発生するイオン数に基づくものであり、検査プローブ4による放電の発生し易さにより決定する。ガス流量は、バイアス電圧及び検査信号電圧等ともに併せて適宜調整される。
【0065】
ガス供給口部86は、環形状を成し、供給口86aが円周に沿ってスリット状に開口されている。このスリット状の開口により、電子線の照射領域に均一的に不活性ガスを供給することができる。また、ガス吸引系21においても同様な形状のガス吸気口部87を設ける。スリット状に開口する吸引口87aから吸引された不要な不活性ガスは、バルブ88を介して排気ポンプにより排気される。バルブ85,88は、例えば可変コンダクタンスバルブを用いて、ガスの流量(供給量及び排気量)を調整する。また図10(b)に示すように、供給口/吸引口は、スリット状の開口だけではなく、例えば、多数の孔が等間隔に開口されるシャワーヘッド構造でもよい。
【0066】
次に、図11(a)には、検査支援システムのユニット化された放電支援部100の構成例を示し説明する。尚、本構成例で前述した第1の実施形態に用いた構成部位と同等の構成部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0067】
この放電支援部100は、電子線管1の電子放出窓部14側に取り付けられる。放電支援部100は、電子放出窓部14側から、不活性ガスを供給するガス供給口部86と、放射された電子線を螺旋運動(又は、偏向)及び収束させる回転磁場部91と、絶縁部材92と、イオン生成に寄与しなかった電子をトラップするトラップ部93と、不要となった不活性ガスを吸引するガス吸引口部94と、電子線の運動により発生するX線を吸収する鉛を主とするX線遮蔽部95と、構成部位を一体的に支持し全体をカバーするカバー96とで構成される。
【0068】
回転磁場部91は、環状に並べられる複数の電磁石91a〜91hにより構成され、電磁石駆動部97により、例えば、回転磁場を形成し、その中に電子線を照射して、螺旋運動又は偏向させて、不活性ガス、例えば窒素の分子との衝突回数を多くすることにより、窒素イオンの発生数を増加させることができる。また、回転磁場の強度を調整することにより、電子線が収束して密度が高くなり、収束させた領域だけイオン数を増加させることができる。このため、局所的な放電が可能となり、極微細化された回路配線であっても、適正に所望する検査対象の導通検査が実施できる。図11(a)に構成では、検査プローブ4aの突起部分に電子線を収束させて、検査対象となる回路配線の直上に達した際に、検査信号を印加して導通検査を実施する。
【0069】
トラップ部93は、正の電位を印加して、イオン生成に寄与しなかった余剰の電子をトラップする。また、電子線を運動させた場合には、X線が発生するため、鉛又は鉛を主とする延板を電子線管1と隙間無く設けられる。尚、X線遮蔽部95を漏れるX線があった場合には、別途、2重となるように装置カバーからなる遮蔽部材を設ければよい。
【0070】
この構成例では、検査プローブ4aは別体として挿入された構成であるが、放電支援部と一体的に構成してもよい。
【0071】
尚、この構成例では、電子線管1の電子放出面と検査対象となる電極又は回路配線とが正対向する位置、即ち、電子線の照射方向と直交するように被検査面を配置しているが磁場により電子線の放射方向を偏向することにより、正対向しなくても検査を行うことができる。例えば、極微細で複数が配列された回路配線に対する検査であれば、磁場で電子線を絞り、さらに放射方向を偏向することにより、移動機構を静止させた状態で、幾つかの回路配線に対して、個々に放電することができる。従って、移動機構の移動精度が配線の密度に対して低くても検査を実施することができる。
【0072】
以上説明したように本発明の検査支援システムを搭載する回路検査装置は、直流検査信号を利用した検査の効果と非接触の検査による効果が重畳した効果を得ることができる。即ち、直流検出信号を用いて実施しているため、極近接して断線し容量的に結合可能な断線不良に対しても、正確に良不良判定を行うことができる。また、微細な回路配線に対しても、回路配線毎に検査できるため、不良配線の位置精度が高くなる。また、検査プローブと検査対象との電気的接続が不活性ガスのイオンアシストの放電により行われるため、大気下の絶縁破壊電圧より数倍低い数百Vの電圧により実現でき、検査対象に対して、放電による損傷を防止することができる。また、検査(放電)に使用する検査信号の電圧が低いため、耐圧が低い部材を用いることができ、コストを低く下げることができる。また、耐圧に対する構成及び構造が簡易になる。
【0073】
また、導通検査に用いる検査のための信号をバイアス電圧と検査信号電圧とに分けているため、バイアスにより検査プローブに掛かる電圧を昇圧しておき、検査信号の投入に対して即座に応答して放電し、検査信号を回路配線に印加することができるため、検査対象を特定する位置精度(位置的な分解能)に優れ、且つ検査時間の短縮が容易に実現できる。
【0074】
本発明の検査支援システムを搭載する回路検査装置は、以下の要旨を含む。
【0075】
(1)回路配線の導通検査を非接触の検査プローブで行う回路検査装置であって、
前記検査プローブと前記回路配線とが近接する空間に、大気圧下で不活性ガスによるイオンを生成して、イオンアシストによる放電を発生させて、前記検査プローブと前記回路配線との電気的導通を行い、前記回路配線における断線又は他の回路配線の短絡による不良を検出することを特徴とする回路検査装置。
【0076】
(2)複数の回路配線の導通検査を非接触の検査プローブで行う回路検査装置であって、
前記検査プローブは、検査対象の回路配線に検査信号を印加する第1の検査プローブと、前記検査対象の回路配線を伝搬された前記検査信号を取得する第2の検査プローブと、前記検査対象の回路配線に隣接する回路配線に伝搬された前記検査信号を取得する第3の検査プローブを備えている。
【0077】
(3)一対の検査プローブにより回路配線の導通検査を行う回路検査装置であって、
一方の前記検査プローブは、前記回路配線の一端に非接触で近接し、他方の前記検査プローブは、該回路配線の他端に接触し、
前記一方の検査プローブと前記回路配線の一端とが近接する空間に、大気圧下で不活性ガスによるイオン生成して、イオンアシストによる放電を発生させて、前記検査プローブと前記回路配線とを電気的導通させて検査信号を印加し、該回路配線に伝搬された前記検査信号を取得することにより、前記検査対象の回路配線に対する断線による不良を検出することを特徴とする回路検査装置。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の回路検査装置に搭載される検査支援システムの概念的な構成を示す図である。
【図2】バイアス電圧VBFと可変電圧VBRの関係によるプローブと電極における電気的な導通−非導通状態を示す図である。
【図3】可変電圧と測定電圧の関係をバイアス電圧毎に示す図である。
【図4】異なる基板構造の電極に対する導通検査について説明するための図である。
【図5】第1の実施形態に係る検査支援システムを搭載する回路検査装置の概念的な構成例を示す図である。
【図6】第1の実施形態に係る検査支援システムのブロック構成例を示す図である。
【図7】異なる回路基板の検査位置について説明するための図である。
【図8】多分岐回路配線が形成された回路基板に対する導通検査について説明するための図である。
【図9】第1の実施形態における回路検査装置により液晶ガラス基板の導電パターンの導通検査について説明するための図である。
【図10】ガス供給系及びガス吸引系の構成例について説明するための図である。
【図11】検査支援システムのユニット化された放電支援部の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
1…電子線管、2…基板、3,3a…回路配線、3b…電極、4,4a,4b,4b1,4b2…検査用プローブ、5…可変電圧電源(VBR)、6…バイアス電源(VBF)、7…電圧検出用抵抗(RL)、8…直流電圧計、9…接続中点、10…、11…筐体、12…フィラメント、13…カソード、14…電子放出窓部、15,16…電子線、17…電子線管電源、18…ガス供給系(ガス供給機構、19…ノズル、20…空間、21…ガス吸気系(ガス排気機構)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査プローブを用いて基板に形成された回路配線の導通検査を行う回路検査装置に搭載され、
近接する前記検査プローブと検査対象の回路配線を含む大気圧の空間に不活性ガスによる不活性ガス雰囲気を生成するガス雰囲気生成部と、
前記不活性ガス雰囲気内に電子線を照射して、不活性ガスイオンを生成するイオン生成部と、を具備し、
前記検査プローブに直流の検査信号を印加した際に、前記不活性ガスイオンの支援により大気圧の空気中の絶縁破壊電圧値よりも低い直流電圧値の前記検査信号で前記検査プローブと前記回路配線の間に放電を発生させて電気的に接続し、前記検査信号が前記検査プローブと前記回路配線の間で送受される支援を行うことを特徴とする検査支援システム。
【請求項2】
基板に形成される複数の回路配線のうち、検査対象となる回路配線の一端に近接する第1の検査プローブ及び、前記検査対象となる回路配線の他端に近接する第2の検査プローブと、
前記第1,第2の検査プローブに直流バイアス電圧をそれぞれに印加するバイアス電源部と、
前記第1の検査プローブに、さらに直流の検査信号を重畳する検査信号電源部と、
前記第1の検査プローブと前記回路配線の一端を含む大気圧の第1の空間及び前記第2の検査プローブと、前記回路配線の他端を含む大気圧の第2の空間に、それぞれ不活性ガスによる不活性ガス雰囲気を生成するガス雰囲気生成部と、前記不活性ガス雰囲気内に電子線をそれぞれに照射して、不活性ガスイオンを生成するイオン生成部と、により構成される検査支援システムと、
を具備し、
前記第1の検査プローブに前記検査信号を印加した際に、前記不活性ガスイオンの支援により前記第1の空間に放電を発生させて電気的に接続し、前記検査信号が前記回路配線に印加されて伝搬され、伝搬された前記検査信号による前記第2の空間における放電の有無に従う第2の検査プローブの前記検査信号の取得の有無により、前記検査対象となる回路配線の断線による不良を検出することを特徴とする回路検査装置。
【請求項3】
基板に両端が列状で露呈するように形成される複数の回路配線のうち、検査対象となる第1の回路配線の一端に近接する第1の検査プローブと、前第1の回路配線の他端に近接する第2の検査プローブと、前記第1の回路配線に隣接する回路配線の他端に近接し且つ前記第2の検査プローブと並設される第3の検査プローブと、を有するプローブ手段と、
前記第1乃至第3の検査プローブを、複数の回路配線の両端の列に沿って上方を渡る方向に移動させる移動機構と、
前記第1,第2及び第3の検査プローブに直流バイアス電圧をそれぞれに印加するバイアス電源部と、
前記第1の検査プローブに、さらに直流の検査信号を重畳する検査信号電源部と、
前記第1の検査プローブと前記第1の回路配線の一端を含む大気圧の第1の空間、前記第2の検査プローブと前記第1の回路配線の他端を含む大気圧の第2の空間及び、前記第3の検査プローブと前記第2の回路配線の他端を含む大気圧の第3の空間に、それぞれ不活性ガスによる不活性ガス雰囲気を生成するガス雰囲気生成部と、前記不活性ガス雰囲気内に電子線をそれぞれに照射して、不活性ガスイオンを生成するイオン生成部と、で構成される検査支援システムと、
を具備し、
前記第1の検査プローブに前記検査信号を印加した際に、前記不活性ガスイオンの支援により前記第1の空間で放電を発生させて電気的に接続し、前記検査信号が前記回路配線に印加されて伝搬し、伝搬された前記検査信号による前記第2の空間及び第3の空間における放電の有無に従う、第2及び第3の検査プローブにおける前記検査信号の取得の有無により、前記検査対象の回路配線の断線及び短絡による不良を検出することを特徴とする回路検査装置。
【請求項4】
前記基板に形成される複数の回路配線において、それぞれの一端は、前記基板の表面に露呈するように形成されて前記第1の検査プローブが近接し、それぞれの他端は、前記基板の表面又は裏面のいずれかに露呈するように形成されて、前記第2の検査プローブが近接することを特徴とする請求項2又は3に記載の回路検査装置。
【請求項5】
前記基板に形成されるそれぞれの前記回路配線において、
一端は、前記基板の表面に露呈するように形成されて前記第1の検査プローブが近接し、
前記一端に接続される配線が複数に分岐され、前記基板の表面又は裏面に複数の他端が露呈するように形成され、前記第2の検査プローブが移動されて順次、近接することを特徴とする請求項2又は3に記載の回路検査装置。
【請求項6】
検査プローブを用いて基板に形成された回路配線の導通検査を行う回路検査装置に搭載され、
近接する前記検査プローブと検査対象の回路配線を含む大気圧の空間に不活性ガスを供給して不活性ガス雰囲気を生成するガス雰囲気生成部と、
前記不活性ガス雰囲気内に電子線を照射して、不活性ガスイオンを生成する電子線管と、
磁力により前記不活性ガス雰囲気内を通過する前記電子線の放射方向を偏向又は螺旋に変化させる回転磁場部と、
前記電子線におけるイオン生成に余剰の電子をトラップするトラップ部と、
前記電子線の運動により発生するX線を吸収するX線遮蔽部と、
を具備し、
前記検査プローブに直流の検査信号を印加した際に、前記不活性ガスイオンの支援により前記検査信号で前記検査プローブと前記回路配線の間に放電を発生させて、前記検査プローブと前記回路配線の間を電気的に接続し、前記検査信号の送受を支援することを特徴とする検査支援システム。
【請求項7】
検査プローブを用いて基板に形成された回路配線の導通検査を行う回路検査装置に用いられる検査支援方法であって、
近接する前記検査プローブと検査対象の回路配線を含む大気圧の空間に不活性ガスによる不活性ガス雰囲気を生成し、前記不活性ガス雰囲気内を電子線に通過させて、不活性ガスイオンを生成し、
前記検査プローブに直流の検査信号を印加した際に、前記不活性ガスイオンの支援により、大気圧の空気中の絶縁破壊電圧値よりも低い直流電圧値の前記検査信号で前記空間に放電を発生し電気的に導通させて、前記検査信号が前記検査プローブと前記回路配線の間で送受されることを支援することを特徴とする検査支援方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−292372(P2008−292372A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139511(P2007−139511)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(594157142)オー・エイチ・ティー株式会社 (28)
【Fターム(参考)】