説明

検査装置及びそれを用いた検査方法

【課題】短時間で効率的に広範囲の構造物表面の検査が可能な検査装置及びそれを用いた検査方法を提供する。
【解決手段】所定の周波数で検査面の打突を行う打突振動子105と、前記打突振動子105と第1距離の位置にて固定される第1受信子107と、前記打突振動子105と前記第1距離より大きい前記第2距離の位置にて固定される第2受信子108と、前記第1受信子107によって検知された検査面の振動に係る物理量から、表面波を抽出する第1フィルタ手段(制御部101)と、前記第2受信子108によって検知された検査面の振動に係る物理量から、表面波を抽出する第2フィルタ手段(制御部101)と、前記第1フィルタ手段と前記第2フィルタ手段によって抽出された物理量との比が、所定値より大きいか否かを判定する判定手段(制御部101)と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物におけるひび割れ深さ及び位置を検査するために用いられる検査装置及びそれを用いた検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造物は、コンクリートの性質上その表面に微細なひび割れが生じやすいが、このひび割れが進展し鉄筋に到達すると、鉄筋が腐食する原因となり、構造物の耐久性や構造物の安全性に影響を及ぼすこととなる。
【0003】
そこで、鉄筋コンクリート構造物においては、維持管理のための定期検査や地震後の健全性評価で、目視による観察やひび割れ幅の調査を行っている。ところで、このような調査は人手によるものであり労力及び時間を要するものであるので、これをより効率的に行うために、鉄筋コンクリート構造物の内部状況を検査・把握するための検査装置が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2003−35703号公報)には、コンクリート構造物の測定面に配置されたダンパと、このダンパを介して前記測定面の振動を電気信号に変換する振動検出器とを備え、前記振動に含まれるほぼ5キロヘルツ以下の周波数の振動成分を前記ダンパを介して前記振動検出器により検出し、その検出出力に基づいてコンクリート構造物の内部を非破壊検査することを特徴とするコンクリート構造物の非破壊検査装置が開示されている。
【特許文献1】特開2003−35703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の検査装置におけるコンクリート構造物の検査では、縦弾性波の減衰をセンシングする方法が採用されているが、このような方法に基づくものでは、コンクリート構造物中のひび割れによる減衰が大きく、ひび割れの近傍で測定を実施する必要があると共に、測定と分析にかなりの時間を要することから、適用範囲が限定されてしまう、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、所定の周波数で検査面の打突を行う打突振動子と、前記打突振動子と第1距離の位置にて、前記打突振動子と相対位置が変わらないように固定されると共に、検査面の振動に係る物理量を検知する第1受信子と、前記打突振動子と前記第1距離より大きい前記第2距離の位置にて、前記打突振動子と相対位置が変わらないように固定されると共に、検査面の振動に係る物理量を検知する第2受信子と、前記第1受信子によって検知された検査面の振動に係る物理量から、表面波の大きさと関連する第1物理量を抽出する第1フィルタ手段と、前記第2受信子によって検知された検査面の振動に係る物理量から、表面波の大きさと関連する第2物理量を抽出する第2フィルタ手段と、前記第1フィルタ手段によって抽出された第1物理量と、前記第2フィルタ手段によって抽出された第2物理量との比を算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された比が、所定値より大きいか否かを判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の検査装置において、前記第1フィルタ手段によって抽出された第1物理量と、前記第2フィルタ手段によって抽出された第2物
理量から、ひび割れ深さを特定するひび割れ深さ特定手段を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の検査装置において、前記第1フィルタ手段によって抽出された第1物理量と、前記第2フィルタ手段によって抽出された第2物理量から、ひび割れ位置を特定するひび割れ位置特定手段を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の検査装置を用いた検査方法であって、前記検査装置をスキャン機構に取り付け、前記スキャン機構を動作させて、前記検査装置によって検査面上をスキャンさせつつ、前記判定手段による判定結果を記録し、当該記録から検査面の位置に応じた状態を取得することを特徴とする検査方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る検査装置及びそれを用いた検査方法によれば、互いの距離が定まっている2つの受信子から取得した、表面波の大きさと関連する物理量の比に基づいて、ひび割れ深さと位置に関する判定を行う構成であるので、ひび割れの近傍で検査を実施する必要はなく、また、分析に要する時間もわずかであり、効率的に広範囲の構造物表面を検査することが可能となる。
【0011】
そして、このような本発明に係る検査装置及びそれを用いた検査方法によれば、ひび割れが鉄筋に到達しているかどうかを簡便に把握できるので、合理的な補修計画を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る検査装置100の概要を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る検査装置100によるコンクリート構造物10表面の検査の様子を示す図である。
【図3】第1受信子107における検出振動波形を略式的に示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る検査装置100におけるデータ処理の流れの概略を示す図である。
【図5】ひび割れによる測定距離と減衰量の変化を説明する図である。
【図6】ひび割れによる減衰量と測定距離の関係を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る検査装置100の測定原理の概略を説明する図である。
【図8】表面波の垂直分布の概略を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る検査装置100を用いた検査方法の概要を模式的に示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る検査装置100を用いた検査方法によって取得されるデータ構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る検査装置の概要を模式的に示す図である。図1において、100は検査装置、101は制御部、102は通信部、105は打突振動子、106は打突子本体部、107は第1受信子、108は第2受信子をそれぞれ示している。また、10は検査装置100の検査対象となるコンクリート構造物を示している。
【0014】
本発明の実施形態に係る検査装置100における制御部101は打突振動子105、第1受信子107及び第2受信子108、通信部102の各部をコントロールすること、及
び、第1受信子107、及び第2受信子108によって取得されたデータを処理することを実行するものである。このために、制御部101は、CPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理機構によって構成されている。制御部101は、図示されている制御部101と接続される各構成と協働・動作する。また、制御部101は、本実施形態の検査装置100における種々の制御処理は、制御部101内のROMなどの記憶手段に記憶保持されるプログラムやデータに基づいて実行されるものである。
【0015】
通信部102は制御部101によって処理されたデータ等を検査装置100外部に通信したり、制御部101に対する制御データを装置外部から受信したりするモジュールであり、有線方式、無線方式のいずれの通信方式を用いることが可能である。
【0016】
打突振動子105は、検査対象であるコンクリート構造物10の表面を打突子本体部106によって所定の周波数(振動数)で打突するものである。本実施形態に係る検査装置100では、打突子本体部106を6.5kHzで振動させて、コンクリート構造物10表面を打突するようにしたが、検査対象のコンクリート構造物10の特性や対象とするひび割れ深さに応じて、打突子本体部106の振動周波数は適宜変更することが好ましい。このような打突振動子105における振動周波数変更の制御などは制御部101によって行い得るように構成する。
【0017】
第1受信子107は打突振動子105と第1距離(L1)の位置にて、打突振動子105と相対位置が変わらないように検査装置100に固定されている。この第1受信子107は位置Pにおいてコンクリート構造物10の表面(検査面)の振動に係る物理量を検知する。
【0018】
また、第2受信子108は打突振動子105と前記第1距離より大きい前記第2距離(L1+L2)の位置にて、打突振動子105と相対位置が変わらないように検査装置100に固定されている。この第2受信子108は位置Qにおいてコンクリート構造物10の表面(検査面)の振動に係る物理量を検知する。
【0019】
第1受信子107及び第2受信子108は規格が共通のものを用い、検査面への接触状態等が同じ条件となるように検査装置100に取り付けられている。本発明の実施形態に係る検査装置100では、第1受信子107及び第2受信子108として加速度センサを用いたが、受信子としては加速度センサに限らず、コンクリート構造物10表面の振動状態を検知するものであれば、マイクロホン或いはレーザー振動計などの非接触型の振動検出センサなどといったものを用いることができる。
【0020】
図2は本発明の実施形態に係る検査装置100によるコンクリート構造物10表面の検査の様子を示す図である。図2に示すように、コンクリート構造物10表面の検査においては、当該表面をスキャンするように、検査装置100を移動させる。そして、このようなスキャン時に、検査装置100においては、打突振動子105を所定の振動周波数で動作させつつ、第1受信子107及び第2受信子108から、コンクリート構造物10表面の振動状態を検知する。第1受信子107及び第2受信子108から受信した検出データは、制御部101によって処理されることで、所定の位置に置いて、所定深さDo以上の
ひび割れが存在するか否かが判定されるようになっている。
【0021】
次に、第1受信子107及び第2受信子108で検知されるデータの処理について説明する。図3は第1受信子107における検出振動波形を略式的に示す図である。
【0022】
図3において、振幅が小さい方の波形は第1受信子107で検出されるP波(縦波成分
)であり、振幅の大きい方の波形は第1受信子107で検出される表面波(成分)である。打突振動子105と第1受信子107との間の距離L1は既知であり、なおかつ打突振動子105がコンクリート構造物10表面を打突する周波数、打突振動子105が打突を開始する時刻t1はコントロールされたものであるので、第1受信子107にP波が到達
する時刻t2、及び、第1受信子107に表面波が到達する時刻t3の概略についてはある程度予想することができる。
【0023】
そこで、本発明の実施形態に係る検査装置100においては、第1受信子107に時刻t2前後に到達する振幅の小さい波についてはデータとして取得せず、第1受信子107
に時刻t3前後に到達する振幅の大きい波の振幅データを、表面波の大きさと関連する物
理量として抽出するようにされている。より具体的には、図3に示す振幅の大きい波の最初の振幅A1を、第1受信子107での測定から抽出される第1物理量A1として取得する。本実施形態に係る検査装置100が、このような物理量を抽出する工程については、フィルタ工程と称することとする。
【0024】
同様に、打突振動子105と第2受信子108との間の距離(L1+L2)は既知であり、なおかつ打突振動子105がコンクリート構造物10表面を打突する周波数、打突振動子105が打突を開始する時刻は制御可能であるので、本実施形態に係る検査装置100においては、第2受信子108に時刻t4前後に到達する振幅の小さい波についてはデ
ータとして取得せず、第2受信子108に時刻t5前後に到達する振幅の大きい波の振幅
データを、第2受信子108における表面波の大きさと関連する第2物理量A2として取
得する。
【0025】
図4は本発明の実施形態に係る検査装置100におけるデータ処理の流れの概略を示す図である。図4においては、ステップS100で、第1受信子107によって振動物理量を取得する。この一例が、図3全体の波形図である。そして、ステップS101では、先に説明したように、この振動物理量取得から表面波に係る第1物理量(A1)を抽出する
。このステップS101における工程が先のフィルタ工程と称するものである。
【0026】
同様に、ステップS102で、第2受信子108によって振動物理量を取得する。そして、ステップS103では、先に説明したように、この振動物理量取得から表面波に係る第2物理量(A2)を抽出する。
【0027】
ステップS104では、(第2物理量A2)/(第1物理量A1)である比を算出する。そして、ステップS105では、ステップS104で算出された比である(第2物理量A2)/(第1物理量A1)が、所定値以下であるか否かが判定される。このようなステップの処理を判定処理と称することとする。もし、(第2物理量A2)/(第1物理量A1)が所定値以下であれば、表面波のエネルギーが第1受信子107と第2受信子108との間で大幅に減衰したこととなるので、第1受信子107と第2受信子108との間に存在する所定深さ以上のひび割れが存在することがわかる。
【0028】
また、ステップS106では、(第2物理量A2)/(第1物理量A1)の比から、ひび割れ深さと、ひび割れの位置を特定する。
【0029】
第2受信子108がひび割れに達した瞬間に、(第2物理量A2)/(第1物理量A1)が変化することから、ひび割れの位置を同時に特定することができる。すなわち、ステップS105における判定処理によれば、ひび割れ深さとその位置とを判定することが可能となる。
【0030】
ここで、本発明に係る検査装置100によって、ひび割れ深さとひび割れ位置を特定す
る方法について、検査対象となるコンクリート構造物をスキャンする様子と関連して説明する。図5はひび割れによる測定距離と減衰量の変化を説明する図であり、図6はひび割れによる減衰量と測定距離の関係を示す図である。
【0031】
打突振動子105と第1受信子107および第2受信子108からなる本発明に係る検査装置100により、ひび割れの位置の特定とひび割れ深さを測定する方法について、図5及び図6に基づいて説明する。
(1)方法:
打突振動子105と第1受信子107および2の間隔を一定にして、コンクリートの表面をスキャンすることで、第1受信子107に対する第2受信子108の減衰量の変化から、ひび割れの位置と深さを特定することができる。
(2)ひび割れ位置(最初の)の特定:
第2受信子108がひび割れの直前(図5の(a)の位置)にあるとき、減衰量は最小になり、ひび割れを通過すると(図5(b)の位置)減衰し始めるため、図6に示すように減衰量にピークが見られ、これによりひび割れ位置を特定できる。
(3)ひび割れ深さの特定:
図5の(b)から(c)の範囲では、減衰量は増加傾向を示し、図5の(c)で最大値となる。発振子の周波数に対するひび割れ深さと減衰量の関係を別途計算した結果から、ひび割れ深さを特定することができる。図5の(c)の位置は、実験によればひび割れからひび割れ深さDの1.5倍の距離だけ離れた位置である。
(4)ひび割れ位置(最後の)の特定:
図5の(c)を過ぎ(d)までの範囲では減衰量は安定しほぼ一定値を示すが、(d)を過ぎると減衰量は徐々に減少し始め、(e)に達すると再び一定値となる。一定値になったところから、最後のひび割れ位置を特定できる。
【0032】
以上のような本発明に係る検査装置によれば、互いの距離が定まっている2つの第1受信子107と第2受信子108から取得した、表面波の大きさと関連する第1物理量A1
と第2物理量A2)の比に基づいて、ひび割れ深さと位置に関する判定を行う構成である
ので、ひび割れの近傍で検査を実施する必要はなく、また、分析に要する時間もわずかであり、効率的に広範囲の構造物表面を検査することが可能となる。また、このような本発明に係る検査装置によれば、ひび割れが鉄筋に到達しているかどうかを簡便に把握できるので、合理的な補修計画を行うことができる。
【0033】
次に、本発明の実施形態に係る検査装置100が用いる測定原理について説明する。図7は本発明の実施形態に係る検査装置100の測定原理の概略を説明する図であり、図8は表面波の垂直分布の概略を示す図である。以下に説明する測定原理においては、ひび割れによる表面波のエネルギーの減衰について論じている。
【0034】
ひび割れ(スリット)による表面波の減衰量は、スリットによって伝搬を阻害された表面波のエネルギーが減衰するとして理論化することができる。上下方向の振幅を持つ表面波の振幅分布は、図8のようになるとされている。
このときの分布式は
【0035】
【数1】

として現すことができる。
【0036】
ここで、λは入力波動の波長、Dはひび割れ(スリット)の深さである。係数Aはスリット深さが波長と等しいとき、振幅が1/4になると仮定すると、A=−1.3863となる。
【0037】
【数2】

【0038】
【数3】

スリット深さがDの時、その深さまでに分布するエネルギー量は、
【0039】
【数4】

である。なお、全エネルギーは、D→∞とすれば良いので、Eo=−λ/2Aである。減
衰量の比率は、
【0040】
【数5】

となる。
スリット通過後は、このエネルギーで再び表面波として振幅分布する。すなわち、
【0041】
【数6】

これから、ひび割れ(スリット)深さDの時、測定した振動の減衰量(dB)は、
【0042】
【数7】

となる。なおuは、ひび割れ(スリット)に関係なく上下方向振動成分を持つ表面波の深さDでの振幅である。
【0043】
次に、これまで説明した検査装置100を用いて検査を行う方法の一例について説明す
る。図9は本発明の実施形態に係る検査装置100を用いた検査方法の概要を模式的に示す図であり、図10は本発明の実施形態に係る検査装置100を用いた検査方法によって取得されるデータ構造を説明する図である。図9において、100はこれまで説明してきた本発明に係る検査装置、200はスキャン機構、210はベース部、220は垂直棹、230は垂直移動部、240は水平棹、250は水平移動部、300はパーソナルコンピュータをそれぞれ示している。
【0044】
スキャン機構200はコンクリート構造物10表面を検査装置100によってスキャンさせるために、コンクリート構造物10表面近傍に取り付けられる装置であり、その水平移動部250に検査装置100を装着することができるように構成されている。
【0045】
スキャン機構200における2つのベース部210は、床面に載置されるものであり、これらベース部210から鉛直上方に延出するようにして2本の垂直棹220が設けられている。また、2本の垂直棹220には、その間に水平棹240を挟持する2つの垂直移動部230が垂直方向に移動可能に設けられている。これら垂直移動部230は、不図示の機構部の動作により、水平棹240の水平状態を保ったまま垂直方向に移動することができるようになっている。
【0046】
また、水平棹240には、不図示の機構部が動作することによって、水平方向に移動自在な水平移動部250が配されている。この水平移動部250には、前述したように検査装置100を取り付けることができるようになっている。
【0047】
以上のようなスキャン機構200によって、水平移動部250に取り付けられた検査装置100は、2つの垂直移動部230の垂直方向の移動、及び水平移動部250の水平方向の移動によって、コンクリート構造物10表面をくまなくスキャンすることができるようになっている。
【0048】
また、スキャン機構200は、垂直移動部230及び水平移動部250に設けられたロータリーエンコーダーなどのセンサ(不図示)によって、それぞれの変位量を検出し、水平移動部250の位置データ、すなわち検査装置100の位置データを取得することができるようになっている。このスキャン機構200からの位置データは、パーソナルコンピュータ300によって取り込まれるようになっている。
【0049】
また、検査装置100の通信部102からは、判定工程によって判定されたコンクリート構造物10の検査データが、パーソナルコンピュータ300に送信されるようになっている。すなわち、パーソナルコンピュータ300の記憶部においては、図10に示すような、コンクリート構造物10表面のひび割れ情報データベースを構築することが可能となる。
【0050】
以上をまとめると、本実施形態に係る検査方法では、検査装置100をスキャン機構200に取り付け、スキャン機構200を動作させて検査装置100によって検査面上をスキャンさせつつ、検査装置100の判定ステップによる判定結果を記録し、この記録から検査面の位置に応じた状態を取得するようにしている。
【0051】
このような本発明に係る検査方法によれば、互いの距離が定まっている2つの受信子から取得した、表面波の大きさと関連する物理量の比に基づいて、判定を行う構成であるので、ひび割れの近傍で検査を実施する必要はなく、また、分析に要する時間もわずかであり、効率的に広範囲の構造物表面を検査することが可能となる。
【0052】
また、上記のような本発明に係る検査方法によれば、ひび割れが鉄筋に到達しているか
どうかを簡便に把握できるので、合理的な補修計画を行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
10・・・コンクリート構造物、100・・・検査装置、101・・・制御部、102・・・通信部、105・・・打突振動子、106・・・打突子本体部、107・・・第1受信子、108・・・第2受信子、200・・・スキャン機構、210・・・ベース部、220・・・垂直棹、230・・・垂直移動部、240・・・水平棹、250・・・水平移動部、300・・・パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数で検査面の打突を行う打突振動子と、
前記打突振動子と第1距離の位置にて、前記打突振動子と相対位置が変わらないように固定されると共に、検査面の振動に係る物理量を検知する第1受信子と、
前記打突振動子と前記第1距離より大きい前記第2距離の位置にて、前記打突振動子と相対位置が変わらないように固定されると共に、検査面の振動に係る物理量を検知する第2受信子と、
前記第1受信子によって検知された検査面の振動に係る物理量から、表面波の大きさと関連する第1物理量を抽出する第1フィルタ手段と、
前記第2受信子によって検知された検査面の振動に係る物理量から、表面波の大きさと関連する第2物理量を抽出する第2フィルタ手段と、
前記第1フィルタ手段によって抽出された第1物理量と、前記第2フィルタ手段によって抽出された第2物理量との比を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された比が、所定値より大きいか否かを判定する判定手段と、を有することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第1フィルタ手段によって抽出された第1物理量と、前記第2フィルタ手段によって抽出された第2物理量から、ひび割れ深さを特定するひび割れ深さ特定手段を有することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記第1フィルタ手段によって抽出された第1物理量と、前記第2フィルタ手段によって抽出された第2物理量から、ひび割れ位置を特定するひび割れ位置特定手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の検査装置を用いた検査方法であって、
前記検査装置をスキャン機構に取り付け、
前記スキャン機構を動作させて、前記検査装置によって検査面上をスキャンさせつつ、前記判定手段による判定結果を記録し、当該記録から検査面の位置に応じた状態を取得することを特徴とする検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−133318(P2011−133318A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292468(P2009−292468)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】