説明

検査装置及び検査方法

【課題】固体浸レンズが対向する被検査対象面から給電可能な検査装置を提供すること。
【解決手段】検査装置は、被検査対象21に対向する対向面11aを有する固体浸レンズ11と、少なくとも固体浸レンズ11の対向面11aにおいて少なくとも被検査対象と対向する領域に形成され、被検査対象21に給電するための導電膜12と、固体浸レンズ11を保持するための給電経路17を形成したレンズホルダ14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子装置の故障又は欠陥を検査する検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの故障又は欠陥箇所を特定するために、半導体デバイスの検査装置として例えばエミッション顕微鏡が使用されている。エミッション顕微鏡は、半導体デバイスの異常動作にともない発生する微弱な発光を検出することによって、故障箇所を特定するものである。半導体デバイスでは、動作時にホットエレクトロンやキャリアの再結合により発光が生じるが、故障箇所においては発光の仕方が良品とは異なる。そこで、エミッション顕微鏡を用いて、半導体デバイスの回路パターンを光学的に拡大観察し、その回路パターン上のどこに発光箇所が位置しているかを発光画像とパターン像とを比較して、故障箇所を特定する。
【0003】
例えば、半導体デバイスのトランジスタにおける故障箇所を検査する場合、半導体デバイスの表面がアルミニウム配線で覆われている半導体デバイスにおいては、表面からでは発光が観察できない。そこで、半導体デバイスの裏面から近赤外光を用いて検査することが行われている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
像分解能は、以下の式1で求められる。例えば、一次光として波長1.3μmの近赤外線及び開口数約0.74の市販の高性能レンズを用いた場合、分解能は約0.9μmとなる。
【0005】
[式1]
d=λ/2NA (d:空間分解能、λ:一次光波長、NA:開口数)
【0006】
近年、半導体デバイスの微細化の進行に伴い、その検査においても高い分解能が要求されている。そこで、例えば特許文献1には、固体浸レンズを観察対象物に密着させることによって分解能を高める対物レンズソケットが開示されている。特許文献1に記載の対物レンズソケットは、対物レンズの鏡筒の先端部に取り付けられるベース部と、固体浸レンズホルダが取り付けられると共に、ベース部に対物レンズの光軸方向に摺動可能に取り付けられる可動部材と、を備え、固体浸レンズホルダを対物レンズの前方に配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−227565号公報
【非特許文献1】竹田忠雄監修、「LSIの総合的な故障解析技術とその実際」、株式会社日本テクノセンター、1999年、86頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下の分析は、本発明の観点から与えられる。
【0009】
パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のディスクリートデバイスの場合、デバイス表面と裏面の両方から電圧を印加する必要がある。また、デバイスのサイズ自体も数mmと非常に小さいものが多い。このようなデバイスに対して、半球又は超半球状の固体浸レンズ又は固浸レンズ(Solid Immersion Lens)(以下「固体浸レンズ」という)を使用する場合、分解能を高めるためには、固体浸レンズをデバイス裏面に密着させる必要がある。また、広い観察視野を得るためには固体浸レンズの直径を少なくとも数mm程度にする必要がある。このため、デバイス面は固体浸レンズによって完全に覆われてしまうことになる。すなわち、固体浸レンズを用いて検査する場合、マニピュレータを用いたデバイス裏面への針立てという方法ではデバイス裏面に対して外部から電圧を印加することはできない。したがって、固体浸レンズ面よりもサイズと同等以下のディスクリートデバイスに対しては、固体浸レンズを用いたエミッション顕微鏡による発光解析は不可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1視点によれば、被検査対象に対向する対向面を有する固体浸レンズと、少なくとも固体浸レンズの対向面において少なくとも被検査対象と対向する領域に形成され、被検査対象に給電するための導電膜と、を備える検査装置が提供される。
【0011】
本発明の第2視点によれば、被検査対象に対向する対向面を有する固体浸レンズと、固体浸レンズに形成され、被検査対象に給電するための導電膜と、を備える検査装置が提供される。導電膜は、固体浸レンズにおいて少なくとも被検査対象と対向する領域以外の領域に形成されると共に、対向面と被検査対象との間に導電性液体を保持した際に導電性液体と電気的に接続されるように形成されている。
【0012】
本発明の第3視点によれば、被検査対象に対向する対向面を有する固体浸レンズと、固体浸レンズを保持するレンズホルダと、被検査対象に給電するためのプローブと、を備える検査装置が提供される。プローブは、レンズホルダに設けられている。
【0013】
本発明の第4視点によれば、被検査対象に対向する固体浸レンズの対向面に形成された導電膜を介して被検査対象に給電する検査方法が提供される。
【0014】
本発明の第5視点によれば、被検査対象と固体浸レンズとの間に導電性液体を介在させ、導電性液体を介して被検査対象に給電する検査方法が提供される。
【0015】
本発明の第6視点によれば、固体浸レンズを保持するレンズホルダに設けられたプローブを介して被検査対象に給電する検査方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下の効果のうち少なくとも1つを有する。
【0017】
本発明においては、固体浸レンズが対向する被検査対象面から給電が可能である。これにより、被検査対象が固体浸レンズの対向面よりも小さいサイズであっても固体浸レンズを用いて検査をすることができる。また、固体浸レンズを被検査対象に密着させることもできるので、分解能を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子装置検査装置の概略断面図。
【図2】図1に示す検査装置の固体浸レンズ部分の概略部分断面図。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電子装置の検査装置における固体浸レンズ部分の概略部分断面図。
【図4】本発明の第3実施形態に係る電子装置の検査装置における固体浸レンズ部分の概略部分断面図。
【図5】本発明の第4実施形態に係る電子装置の検査装置における固体浸レンズ部分の概略部分断面図。
【図6】本発明の第5実施形態に係る電子装置の検査装置における固体浸レンズ部分の概略部分断面図。
【図7】本発明の第6実施形態に係る電子装置の検査装置における固体浸レンズ部分の概略部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記各視点の好ましい形態を以下に記載する。
【0020】
上記第2視点の好ましい形態によれば、固体浸レンズは、被検査対象との間に導電性液体を保持するための切欠部を有する。導電膜は、切欠部が導電性液体を保持した際に導電性液体と電気的に接続される。
【0021】
上記第2視点の好ましい形態によれば、切欠部は、対向面の外縁に沿って形成されている。
【0022】
上記第3視点の好ましい形態によれば、検査装置は、プローブを移動させる移動機構と、プローブが被検査対象に接触したことを検知する検知機構と、をさらに備える。
【0023】
上記第1〜3視点の好ましい形態によれば、検査装置は、固体浸レンズを保持するレンズホルダと、レンズホルダに形成され、導電膜又はプローブに給電するための給電経路と、をさらに備える。
【0024】
上記第1〜3視点の好ましい形態によれば、検査装置は、固体浸レンズを被検査対象に対して押圧するレンズ押具をさらに備える。レンズ押具は導電体である。導電膜と給電経路とは、レンズ押具を介して電気的に接続されている。
【0025】
上記第1〜3視点の好ましい形態によれば、レンズホルダは、固体浸レンズを収容する凹部と、凹部に形成された導電層と、を有する。複数のレンズ押具は、導電層を介して電気的に接続される。
【0026】
上記第1〜3視点の好ましい形態によれば、検査装置は、レンズホルダに形成され、固体浸レンズを直接的に保持するレンズ留具をさらに備える。レンズ留具は導電体である。導電膜又はプローブと給電経路とは、レンズ留具を介して電気的に接続されている。
【0027】
上記第5視点の好ましい形態によれば、固体浸レンズに形成された切欠部において導電性液体を保持する。
【0028】
上記第5視点の好ましい形態によれば、切欠部に形成された導電膜を介して導電性液体に給電する。
【0029】
上記第4〜6視点の好ましい形態によれば、固体浸レンズを保持するレンズホルダに形成された給電経路を介して被検査対象に給電する。
【0030】
上記第4〜6視点の好ましい形態によれば、固体浸レンズを被検査対象に対して押圧するレンズ押具又は固体浸レンズをレンズホルダに保持するレンズ留具を介して導電膜又はプローブに給電する。
【0031】
本発明の第1実施形態に係る電子装置の検査装置について説明する。図1に、本発明の第1実施形態に係る電子装置の検査装置の概略断面図を示す。図2に、図1に示す検査装置の固体浸レンズ部分の概略部分断面図を示す。
【0032】
電子装置の検査装置10は、被検査対象(例えば半導体デバイス)21を観察するための固体浸レンズ11と、被検査対象21に給電するための導電膜12と、固体浸レンズ11を検査時に被検査対象21に押圧するためのレンズ押具13と、固体浸レンズ11を保持するためのレンズホルダ14と、レンズホルダ14から固体浸レンズが落下することを防止するレンズ留具15と、外部電源20と、外部電源20から被検査対象21へ給電するための第1給電経路17と、対物レンズ16と、外部電源20から対物レンズ16までの配線である第2給電経路19と、第1給電経路17と第2給電経路19とを結線するコネクタ18と、を備える。なお、図1及び図2において、外部電源20と被検査対象21を電気的に接続する他方の電流経路の図示は省略してある(図3〜図6においても同様)。
【0033】
固体浸レンズ11は、半球状又は超半球状を有するレンズである。図2に示す形態においては、固体浸レンズ11は、被検査対象である電子装置21に接する対向面11aを有する。固体浸レンズ11は、被検査対象に接して観察するものであれば、その形状は問わない。
【0034】
固体浸レンズ11は、レンズホルダ14に保持されている。レンズホルダ14は、被検査対象21と対物レンズ16との間に設けられる。図2に示す形態においては、固体浸レンズ11は、レンズホルダ14の端部に形成された凹部14aに収容され、レンズホルダ14の先端に設けたレンズ留具15によって落下を防止するように保持される。第1実施形態においては、固体浸レンズ11は、レンズ留具15によって直接的に固定はされていない。
【0035】
導電膜12は、固体浸レンズ11の少なくとも対向面11aにおいて、少なくとも被検査対象と対向する領域に形成する。好ましくは、図2に示すように、導電膜12は、少なくとも固体浸レンズ11の対向面11a全面に形成する。また、導電膜12は、少なくとも、固体浸レンズ11の対向面から、固体浸レンズ11の側面11bに沿って、少なくとも1つのレンズ押具13と接触する位置まで形成する。
【0036】
導電膜12は、赤外波長域の透過率が高いものが好ましい。例えば、導電膜12は、波長1300nmの光を80%以上透過させるものが好ましい。導電膜12の屈折率は、空気の屈折率(n=1)よりも高いと好ましく、例えば2以上であるとより好ましい。導電膜12の厚さは、透過率、屈折率及び導電率に応じて適宜設定されるが、分解能を高めるためには100nm以下であると好ましい。導電膜12の比抵抗は1×10−4Ω・cm以下であると好ましい。導電膜12としては、例えば、酸化インジウム錫(IZO;Indium Zinc Oxide)、酸化亜鉛インジウム(ITO;Indium Tin Oxide)を使用することができる。
【0037】
少なくとも1つのレンズ押具13は、導電体で形成する。導電体で形成されたレンズ押具13は、導電膜12と電気的に接続する。レンズ押具13は、固体浸レンズ11を被検査対象21に対して押圧するように形成してもよい。図2に示す形態においては、レンズ押具13は、レンズホルダ14の凹部14aに形成されている。レンズ押具13の数は限定されない。
【0038】
第1給電経路17は、例えば配線として形成することができ、外部電源20からレンズホルダ14に沿ってレンズ留具13と電気的に接続されている。第1給電経路17は、レンズホルダ14の外部を通ってもよいし、内部を通ってもよい。すなわち、外部電源20からの電流をレンズ押具13を通じて導電膜12に流すようにする。
【0039】
また、レンズホルダ14の少なくとも一部を導電体で形成し、レンズホルダ14自体を第1給電経路17としてもよい。
【0040】
次に、本発明の第1実施形態に係る電子装置の検査方法について説明する。例えば、被検査対象21が半導体デバイスである場合、封止樹脂22を除去して半導体デバイス(例えばシリコン基板)21を露出させる。次に、固体浸レンズ11の対向面11aをレンズ押具13によって被検査対象21の露出面に当接させる。すなわち、対向面11a面に形成された導電膜12が被検査対象21と接触することになる。そして、被検査対象21に対しては、外部電源20から第1給電経路17、レンズ押具13及び導電膜12を介して給電することができる。
【0041】
本発明によれば、固体浸レンズ11を被検査対象21に当接させたとしても、被検査対象21に直接的に給電することができる。これにより、被検査対象21に給電する位置を考慮することなく、固体浸レンズ11の対向面11a(すなわち観察領域)を広く確保することができる。したがって、被検査対象21が固体浸レンズ11の対向面11aの面積よりも小さい場合(例えば被検査対象21がディスクリートデバイスである場合)であっても、検査を実施することができる。
【0042】
また、本発明によれば、波長1.3μmの光を検出する場合、理論分解能を約0.2μmとすることができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態に係る電子装置の検査装置について説明する。図3に、本発明の第2実施形態に係る電子装置の検査装置における固体浸レンズ部分の概略部分断面図を示す。
【0044】
第2実施形態に係る検査装置は、レンズホルダ34の凹部34aに沿って形成された導電層38をさらに備える。導体層38は、複数のレンズ押具33同士を電気的に接続している。これにより、複数のレンズ押具33から導電膜32へ給電することができる。
【0045】
図3に示す上記以外の形態(例えば要素31,32,33,34,35)は、第1実施形態と同様である。
【0046】
次に、本発明の第3実施形態に係る電子装置の検査装置について説明する。図4に、本発明の第3実施形態に係る電子装置の検査装置における固体浸レンズ部分の概略部分断面図を示す。
【0047】
第3実施形態に係る検査装置は、レンズ押具を備えていない。固体浸レンズ41は、レンズ留具45によって直接的に保持されている。第3実施形態におけるレンズ留具45は、導電材料で形成されると共に、第1給電経路47と電気的に接続されている。また、レンズ留具45は、導電膜42と電気的に接続されている。すなわち、レンズ留具45は、導電膜42の形成領域において固体浸レンズ41を保持している。これにより、被検査対象21への給電は、レンズ留具45から、固体浸レンズ41の側面41b及び対向面41aに沿って形成された導電膜42を通じて行われる。
【0048】
レンズ留具45は、弾性を有すると好ましい。レンズ留具45としては、例えば、バネ、導電性ラバー等を使用することができる。
【0049】
図4に示す上記以外の形態(例えば要素41,42,45)は、第1実施形態と同様である。
【0050】
次に、本発明の第4実施形態に係る電子装置の検査装置について説明する。図5に、本発明の第4実施形態に係る電子装置の検査装置における固体浸レンズ部分の概略部分断面図を示す。
【0051】
第4実施形態においては、被検査対象21への給電は導電性液体59を介して行う。
【0052】
第4実施形態における固体浸レンズ51においては、対向面51aにおいて少なくとも被検査対象21と対向する領域には導電膜は形成されていない。図5に示す形態においては、対向面51a全面に導電膜が形成されていない。導電膜52は、対向面51aと被検査対象21との間に導電性液体59を保持した際に、被検査対象21上の導電性液体59と電気的に接触するように形成されている。すなわち、導電膜52は、レンズ留具55と導電性液体59とを電気的に接続できるように形成する。例えば、図5に示すように第3実施形態と同様にしてレンズ留具55から被検査対象21へ給電する場合、導電膜52は、レンズ留具55と接触する部分から、固体浸レンズ51の側面51bの下端(対向面51aとの境界)まで形成することができる。
【0053】
被検査対象21を検査する際、固体浸レンズ51の対向面51aを被検査対象21の露出面に当接させる。このとき、被検査対象21と対向面51aとの間に導電性液体59を介在させる。導電性液体59は、被検査対象21と固体浸レンズ51の対向面51aとの間の空間容積よりも過剰に供給する。被検査対象21と対向面51aとの間から溢れた導電性液体59は、固体浸レンズ51の側面51bと被検査対象21(又は封止樹脂22)との間にも介在することになる。導電膜52は、少なくとも、導電性液体59と接触する固体浸レンズ51の側面51b部分から、固体浸レンズ51の側面51bに沿って、レンズ留具55まで延在するように形成する。
【0054】
導電性液体59の屈折率は、空気の屈折率(n=1)以上であると好ましい。より好ましくは、導電性基体59の屈折率は、固体浸レンズ51の屈折率以上(例えば固体浸レンズ51の材料がSiの場合、3.4以上)である。導電性液体59は、赤外波長域の透過率が高いものが好ましく、例えば、波長1300nmの光を80%以上透過させるものが好ましい。導電性液体59としては、例えば、イオン液体を使用することができる。
【0055】
本実施形態によれば、被検査対象21の露出面が平坦でなくとも良好な電気的接触を維持することができる。例えば、被検査対象21の基板と封止樹脂22との間に段差が形成されると、固体浸レンズ51の対向面51aの平坦度が高いので、対向面51aを被検査対象21に当接させたとしても対向面51aと被検査対象21との間に隙間が生じてしまうことがある。その場合であっても、導電性液体58を介在させることにより被検査対象21に給電することができる。
【0056】
また、対向面51aには導電膜が設けられていないので、空間分解能を高めることができる。さらに、導電膜による赤外光の吸収を避けることができ、発光感度を高めることができる。
【0057】
図5に示す上記以外の形態(例えば要素54,55)は、第3実施形態と同様である。図5に示す形態においては、第3実施形態を基にしたが、第1実施形態のようにレンズ押具から給電する形態であってもかまわない。
【0058】
次に、本発明の第5実施形態に係る電子装置の検査装置について説明する。図6に、本発明の第5実施形態に係る電子装置の検査装置における固体浸レンズ部分の概略部分断面図を示す。
【0059】
第5実施形態においては、第4実施形態と同様に、導電膜62及び導電性液体69を介して被検査対象21に給電する。第5実施形態における固体浸レンズ61は、対向面61aと側面61bがなす角部の少なくとも一部に(対向面61aの外縁もしくは外周の少なくとも一部に)沿って切欠部又は溝部(以下「切欠部」という)61cを有している。好ましくは、固体浸レンズ61は、対向面61aの全周にわたって切欠部61cを有する。切欠部61cは、対向面61aを被検査対象21に当接させた際に、被検査対象21に給電するための導電性液体69を対向面61aと被検査対象21との間に保持できるような形状及び大きさであればよい。
【0060】
導電膜62は、切欠部61cの少なくとも一部に形成されている。導電膜62は、切欠部61cに導電性液体69を保持させて、固体浸レンズ61の対向面61aを被検査対象21に当接させた際に、導電膜62と導電性液体68とが接触するような領域に形成される。一方、導電膜は、対向面には形成されていない。
【0061】
レンズ留具65は導電材料で形成されると共に、第1給電経路67と電気的に接続されている。また、レンズ留具65は、導電膜62と電気的に接続されている。これにより、固体浸レンズ61と被検査対象21との間に存在する導電性液体69を介して被検査対象21に給電することができる。
【0062】
導電性液体69の好適な形態は、第4実施形態と同様である。
【0063】
本実施形態によれば、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態によれば、固体浸レンズ61と被検査対象21との間に導電性液体68を保持しやすくすることができる。
【0064】
図6に示す上記以外の形態(例えば要素64,65)は、第3実施形態と同様である。
【0065】
次に、本発明の第6実施形態に係る電子装置の検査装置について説明する。図7に、本発明の第6実施形態に係る電子装置の検査装置における固体浸レンズ部分の概略部分断面図を示す。
【0066】
第6実施形態における固体浸レンズ71は導電膜を有していない。その代わりとして、検査装置は、被検査対象21に給電するためのプローブ78を有している。プローブ78は、例えば、第1給電経路77に電気的に接続されたレンズ留具75に取り付けることができる。これにより、プローブ78を介して被検査対象21に給電することができる。
【0067】
プローブ78は、被検査対象21の検査面に対して水平方向に移動可能な移動機構又は位置制御機構(例えばマイクロメータ)と、被検査対象21に接触したことを検知する検知機構(例えばタッチセンサ)と、を有すると好ましい。これにより、被検査対象21の破壊を防止することができる。また、プローブ78は、固体浸レンズ71の外縁近くにおいて被検査対象21に接触できるようにすると好ましい。これにより、被検査対象21の検査範囲を広くとることができる。
【0068】
本実施形態によれば、固体浸レンズ71に導電膜を形成する必要がない。これにより、固体浸レンズ71と被検査対象21の密着性を高めることができる。また、導電膜による赤外光の吸収がないので、発光感度を高めることができる。さらに、屈折率を適切に維持することができるので、空間分解能を向上させることができる。
【0069】
図7に示す上記以外の形態(例えば要素71,73,74,75)は、第1実施形態と同様である。
【0070】
上記第1〜第6実施形態は、少なくとも2つの実施形態を組み合わせることもできる。
【0071】
本発明の電子装置の検査装置及び検査方法は、上記実施形態に基づいて説明されているが、上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、上記実施形態に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができることはいうまでもない。また、本発明の請求の範囲の枠内において、種々の開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0072】
本発明のさらなる課題、目的及び展開形態は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の検査装置及び検査方法は、エミッション顕微鏡のみならず、OBIRCH(Optical Beam Induced Resistance Change)法や発熱解析法を用いた検査にも適用可能である。OBIRCH法は、デバイスに対して定常的に電流を流しつつレーザーを被検査対象に対して照射し、レーザーの照射によって生じた電流変化をアンプによって増幅することで、故障箇所を特定する。発熱解析法は、被検査対象に対して電圧を供給しつつ発熱箇所を検出器で検出することで故障箇所を特定する。OBIRCH装置も発熱解析装置も、エミッション顕微鏡と類似した光学系を持つ装置であり、本発明を有用に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10 検査装置
11,31,41,51,61,71 固体浸レンズ
11a,31a,41a,51a,61a,71a 対向面
11b,31b,41b,51b,61b 側面
61c 切欠部
12,32,42,52,62 導電膜
13,33 レンズ押具
14,34,44,54,64,74 レンズホルダ
14a,34a,44a,54a,64a,74a 凹部
15,35,45,55,65,75 レンズ留具
16 対物レンズ
17,37,47,57,67,77 第1給電経路
18 コネクタ
19 第2給電経路
20 外部電源
21 被検査対象
22 封止樹脂
59,69 導電性液体
78 プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象に対向する対向面を有する固体浸レンズと、
少なくとも前記固体浸レンズの前記対向面において少なくとも被検査対象と対向する領域に形成され、被検査対象に給電するための導電膜と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
被検査対象に対向する対向面を有する固体浸レンズと、
前記固体浸レンズに形成され、被検査対象に給電するための導電膜と、を備え、
前記導電膜は、前記固体浸レンズにおいて少なくとも被検査対象と対向する領域以外の領域に形成されると共に、前記対向面と被検査対象との間に導電性液体を保持した際に前記導電性液体と電気的に接続されるように形成されていることを特徴とする検査装置。
【請求項3】
前記固体浸レンズは、被検査対象との間に導電性液体を保持するための切欠部を有し、
前記導電膜は、前記切欠部が導電性液体を保持した際に前記導電性液体と電気的に接続されることを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記切欠部は、前記対向面の外縁に沿って形成されていることを特徴とする請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
被検査対象に対向する対向面を有する固体浸レンズと、
前記固体浸レンズを保持するレンズホルダと、
被検査対象に給電するためのプローブと、を備え、
前記プローブは、前記レンズホルダに設けられていることを特徴とする検査装置。
【請求項6】
前記プローブを移動させる移動機構と、
前記プローブが被検査対象に接触したことを検知する検知機構と、をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記固体浸レンズを保持するレンズホルダと、
前記レンズホルダに形成され、前記導電膜又は前記プローブに給電するための給電経路と、をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記固体浸レンズを被検査対象に対して押圧するレンズ押具をさらに備え、
前記レンズ押具は導電体であり、
前記導電膜と前記給電経路とは、前記レンズ押具を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の検査装置。
【請求項9】
前記レンズホルダは、前記固体浸レンズを収容する凹部と、前記凹部に形成された導電層と、を有し、
複数の前記レンズ押具は、前記導電層を介して電気的に接続されることを特徴とする請求項8に記載の検査装置。
【請求項10】
前記レンズホルダに形成され、前記固体浸レンズを直接的に保持するレンズ留具をさらに備え、
前記レンズ留具は導電体であり、
前記導電膜又は前記プローブと前記給電経路とは、前記レンズ留具を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の検査装置。
【請求項11】
被検査対象に対向する固体浸レンズの対向面に形成された導電膜を介して被検査対象に給電することを特徴とする検査方法。
【請求項12】
被検査対象と固体浸レンズとの間に導電性液体を介在させ、
前記導電性液体を介して被検査対象に給電することを特徴とする検査方法。
【請求項13】
前記固体浸レンズに形成された切欠部において前記導電性液体を保持することを特徴とする請求項12に記載の検査方法。
【請求項14】
前記切欠部に形成された導電膜を介して前記導電性液体に給電することを特徴とする請求項13に記載の検査方法。
【請求項15】
固体浸レンズを保持するレンズホルダに設けられたプローブを介して被検査対象に給電することを特徴とする検査方法。
【請求項16】
前記固体浸レンズを保持するレンズホルダに形成された給電経路を介して被検査対象に給電することを特徴とする請求項11〜15のいずれか一項に記載の検査方法。
【請求項17】
前記固体浸レンズを被検査対象に対して押圧するレンズ押具又は前記固体浸レンズを前記レンズホルダに保持するレンズ留具を介して前記導電膜又は前記プローブに給電することを特徴とする請求項16に記載の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−164007(P2011−164007A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28678(P2010−28678)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】